(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6290925
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】入れ子式ピンのための隣接カットの最大仕様の制限をなくすこと
(51)【国際特許分類】
E05B 19/08 20060101AFI20180226BHJP
E05B 19/00 20060101ALI20180226BHJP
E05B 27/10 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
E05B19/08
E05B19/00 A
E05B27/10
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-551682(P2015-551682)
(86)(22)【出願日】2013年12月4日
(65)【公表番号】特表2016-502010(P2016-502010A)
(43)【公表日】2016年1月21日
(86)【国際出願番号】US2013072945
(87)【国際公開番号】WO2014107254
(87)【国際公開日】20140710
【審査請求日】2016年10月14日
(31)【優先権主張番号】224111
(32)【優先日】2013年1月3日
(33)【優先権主張国】IL
(73)【特許権者】
【識別番号】500270217
【氏名又は名称】マル−ティー−ロック テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エフィ ベン−アハロン
(72)【発明者】
【氏名】イツハク カイザー
(72)【発明者】
【氏名】ツビ フレンケル
【審査官】
藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】
特表2005−530072(JP,A)
【文献】
特表2006−507435(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/026381(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00 − 85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入れ子式プラグピンを有するシリンダ錠プラグ(81)を備えるシリンダ錠(80)と一緒の使用のためのキー装置(10)であって、それぞれの入れ子式プラグピンが、シアーライン(30)まで、前記シリンダ錠(80)内に位置する対応するドライバピン(82)に向かって移動可能である内側
ピン(24)および外側ピン
(26)を備え
、前記内側ピン(24)が前記外側ピン(26)の内側にはめ込まれている、キー装置(10)において、
複数のキーカットステーション(18)を有するキー組み合わせ面(16)を、入れ子式キーカット(14)を各キーカットステーション(18)に形成するために備える、全体として細長い軸部(12)であって、前記キーカットステーション(18)が、シリンダ錠プラグの入れ子式プラグピンの入れ子式ピンと接合するための隣接するキーカットの最大深さを定義する入れ子最大隣接カット仕様(MACS)を有している、全体として細長い軸部(12)を備え、
前記入れ子MACSが次式で表され、
【数1】
ここで、ID=内
側ピン(24)の外径
CR=キーの根元(キーカット(14)の底部(「根元」)の長さ)
DI=深さの増分
CA=カット角(キーカット(14)を作成するために使用される切削工具ヘッドの角度)であり、
非MACS入れ子式キーカット(20)が、前記入れ子MACSの定義によって制限されないキーカットであって、前記キーカットステーション(18)の少なくとも1つに、所定の入れ子式プラグピンの
前記内側ピン(24)と接合するために形成されたキーカットとして定義され、前記細長い軸部(12)内に、前記所定の入れ子式プラグピンの
前記外側ピン(26)と接合するための別のキーカット(20A)を形成するための材料を残しておくのに必要な寸法とされていることを特徴とするキー装置(10)。
【請求項2】
請求項1に記載のキー装置(10)において、
前記非MACS入れ子式キーカット(20)は前記細長い軸部(12)内に形成された少なくとも1つの溝を備え、前記溝は前記所定の入れ子式プラグピンの前記内側ピン(24)と相互作用するように配置されている、キー装置(10)。
【請求項3】
請求項1に記載のキー装置(10)において、
前記非MACS入れ子式キーカット(20)すなわち特殊入れ子式キーカット(20)は前記入れ子MACSで定義される深さよりも深い深さを有する、キー装置(10)。
【請求項4】
請求項1に記載のキー装置(10)において、
前記非MACS入れ子式キーカット(20)すなわち特殊入れ子式キーカット(20)が、前記所定の入れ子式プラグピンの前記内側ピン(24)と接合するために形成されている、キー装置(10)。
【請求項5】
請求項1に記載のキー装置(10)において、
前記キー組み合わせ面(16)は支持面(32)を有し、その上に前記入れ子式キーカット(14)を少なくとも部分的に形成可能であり、および、前記非MACS入れ子式キーカット(20)すなわち特殊入れ子式キーカット(20)が前記支持面(32)内に形成されている、キー装置(10)。
【請求項6】
請求項5に記載のキー装置(10)において、
前記非MACS入れ子式キーカット(20)は、前記外側ピン(26)と接合するための前記別のキーカットを形成するための材料を、前記支持面(32)から離れて残しておくのに必要な寸法とされている、キー装置(10)。
【請求項7】
請求項2に記載のキー装置(10)において、
前記溝が凹形である、キー装置(10)。
【請求項8】
請求項7に記載のキー装置(10)において、
前記非MACS入れ子式キーカット(20)は、前記細長い軸部(12)の長手方向軸と整列しているまたは平行である、キー装置(10)。
【請求項9】
請求項7に記載のキー装置(10)において、
前記非MACS入れ子式キーカット(20)は、前記細長い軸部(12)の長手方向軸に対して傾斜している、キー装置(10)。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載のキー装置(10)において、
前記細長い軸部(12)は、その上に形成された入れ子式キーカットを、前記非MACS入れ子式キーカット(20)から離れた前記キーカットステーション(18)において有している、キー装置(10)。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか一項に記載のキー装置(10)において、
前記細長い軸部(12)は、前記非MACS入れ子式キーカット(20)の前記キーカットステーション(18)に形成された前記別のキーカット(20A)を、前記所定の入れ子式プラグピンの前記外側ピン(26)と接合するために有している、キー装置(10)。
【請求項12】
錠およびキーの組み合わせであって、
シリンダ錠(80)を備え、該シリンダ錠が、
キー溝を有する回転可能なプラグ(81)であって、該プラグ(81)が、入れ子式プラグピンであってそれぞれの入れ子式プラグピンが内側ピン(24)および外側ピン(26)を備える入れ子式プラグピンを備え、該内側ピン(24)および外側ピン(26)が、シアーライン(30)まで、前記シリンダ錠(80)内に位置する対応するドライバピン(82)に向かって移動可能であり、前記内側ピン(24)が前記外側ピン(26)の内側にはめ込まれている、キー溝を有する回転可能なプラグ(81)、および、
請求項1に記載のキー装置(10)
を備える、錠およびキーの組み合わせ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に錠装置に関し、より詳細には、入れ子式ピンのためのキーカットの最大の隣接カットの仕様をなくすことに関する。
【背景技術】
【0002】
当技術分野でよく知られているように、シリンダ錠は、一般に、錠シリンダのハウジング内での回転のために配置されたプラグを含む。プラグピンは、プラグ内に摺動配置され、および、駆動ピンに対して移動するように構成されており、これらのピンは、シリンダハウジング内に形成されたボア内に配置され、および、プラグの回転の軸に向かってばね付勢されている。適切にカットされたキーの、プラグ内に設けられたキー溝内への挿入は、プラグピンをドライバピンに対して移動させ、および、すべてのピンをプラグの外周部により画定されるシアーラインに沿って整列させ、これにより、ラッチまたはロック機構の動作を引き起こすためのプラグの回転を可能にする。
【0003】
すべてのプラグピンをシアーラインに正しく移動させるキーカットの組み合わせは、一般的にビッティングと呼ばれている。錠/鍵製造業者は、典型的にはビッティングを、機能性と耐久性のある安全なキーを依然として維持しつつ多くの可能な組み合わせの数を持つように画定する。キーカットは、可能な限り浅いカットから可能な限り深いカットに至る深さの範囲を有する。別のパラメータは、キーカット間の間隔、すなわち、1つのカットの中心から隣接するカットの中心までの距離である。各キーカットは、1つのプラグピンを、プラグピンステーションとも呼ばれる、個別のプラグピンの位置において移動させるように設計されている。各プラグピンは、プラグ内に形成された個別のボア内で移動する。
【0004】
一部のキーは、入れ子式ピンと相互作用するために作られている。このような場合、各入れ子式プラグピンは互いに独立して移動する2本以上のピンを有している。入れ子式プラグピンのため、キー内に形成されたキーカットはある程度、互いにオーバーラップする。各キーカットは、入れ子式ピンを構成するピンのうちの異なる1つをシアーラインまで移動させる。
【0005】
キーカットは、キーブランクにカットを加工する、キーカットまたは複製マシンによって、通常は作られる。加工作業は、通常、傾斜した側面を有する、キーブランク中にカットする切削工具によって行われる。キーカットは、このように傾斜した側面を有している。これは、カットをキーブランクに型押しする工具についても同様である。
【0006】
錠/鍵メーカーは一般に最大隣接カット仕様(MACS)を定義している。すなわち、キーカットの深さが隣接するカット位置間で大きな差を有することは通常可能でない。MACSに違反するキーカットは使用できないキーカットであることを明確に記述している、例えばIngersoll-Rand社に譲渡された米国特許出願第20090277239号および第20090301144号を参照されたい。
【0007】
MACSの一般的な考え方について
図1を参照して説明し、入れ子式の場合については
図1Aを参照して後で説明する。異なる長さのプラグピン4と5をシアーライン6へ移動させるための2つの隣接するキーカット2および3をもつキー1が示されている。(破線で示したように)より深いカット7がキーカット3の代わりに作られたとしたらどんなことが起きるかを調べてみよう。キー切削工具は傾斜している側面を有しているため、ツールの幅はより深いカットの中心位置を越えて横方向に延び、そして、鍵材料を隣接する浅いカットから除去する。その結果、プラグピン4は、浅いカットを意図しているが正しい深さには置かれず、むしろ、隣接するキーカットを切断することによって切り取られた材料のため、必要なよりも(破線8で示すように)深く置かれる。プラグピン4は、シアーライン6ではなく、むしろライン9(図中の破線)に配置され、プラグは回らない。MACSの制限のもう1つの理由は、キーの容易な挿入または引き抜きを確実にするためである。キーがシリンダ錠に挿入されると、プラグピンはカット間の傾斜を昇り降りする。角度があまりに急な場合、ピンが傾斜に乗るトラブルとなることがあり、キーが詰まる場合がある。
【0008】
本発明の限定ではなく、MACSは、上の理由で、一般的には次のように計算することができる。
【0009】
【数1】
【0010】
ここで、SP=ピンの間隔(キーによって操作されるプラグピン間の間隔)
CR=キーの根元(キーカットの底部(「根元」)の長さ)
DI=深さの増分
CA=カット角(キーカットを作成するために使用される切削工具ヘッドの角度)
ここで
図1Aを参照すると、シリンダ錠プラグの入れ子式プラグピン(入れ子MACSと呼ぶ)の入れ子式ピン(例えば、内側および外側ピン)についてMACSが示されている。内側および外側のピンの各々は、面取り部を、すなわち円錐形の先端を有する。これは、各ピンの軸が軸先端の直径よりも大きい外径を有することを意味する。
【0011】
この定義によって本発明は限定されないが、入れ子式ピンのMACSを以下のように計算することができる。
【0012】
【数2】
【0013】
ここで、ID=内側の入れ子式ピンの外径
入れ子MACSは隣接するカットの可能な深さについて制限を設定し、それによって、可能なキーカットの組み合わせの数を低減する。
【0014】
従来技術において、非入れ子式ピンのためのMACSを増加させる努力がなされてきた。例えば、スウェーデンのASSA OEM ABに譲渡された米国特許出願20120240646号(PCT出願PCT/SE2010/051405に対応)では、キーカットの役割をする溝の円錐角度が変更されている。換言すると、MACSについての上の式は依然として適用されており、この文献では、単にカット角CAを変更している。すべてのキーカットが、依然として同一のMACS定義によって定義されおよび制限されている。
【発明の概要】
【0015】
本発明は、以下にさらに詳細に記載されるように、入れ子式ピンのためのキーカットの最大の隣接カットの仕様をなくすための方法および構造を提供することを目的とする。従来技術は、MACSを決定する際に対称な円錐角切削工具を使用してどのようにキーカットを作るかの想定の下で努力してきた。本発明は、1つまたはもっと多い入れ子式キーカットを、従来技術の入れ子式ピンのためのMACSの根底をなしている想定に反する方法で作り、それにより、MACSの制限を排除することに成功した。これにより、例えば、従来技術の入れ子MACS定義よりも深いキーカットを作ることが可能になる。所定の入れ子式ピンのための非MACSキーカットは、その所定の入れ子式ピンのための入れ子MACS定義によって限定されることがないキーカットとして定義される。
【0016】
かくして、本発明の実施形態に従ったキー装置(キーブランクまたはキー)が提供され、該キー装置は、(例えば軸方向に離間した)複数のキーカットステーションを有するキー組み合わせ面を、入れ子式キーカットを各キーカットステーションに形成するために備える、全体として細長い軸部であって、各キーカットステーションが、シリンダ錠プラグの入れ子式プラグピンのピンと接合するための隣接する入れ子式キーカットの最大深さを定義する入れ子最大隣接カット仕様(MACS)を有している、全体として細長い軸部、および、前記キーカットステーションの少なくとも1つに、所定の入れ子式プラグピンの第1のピンと接合するために形成された非MACSキーカットであって、前記細長い軸部内に、前記所定の入れ子式プラグピンの第2のピンと接合するための別のキーカットを形成するための材料を残しておくのに必要な寸法とされている非MACSキーカットを備える。
【0017】
一実施形態において、キーは、MACSに従った通常のキーカットに加えて1つまたはもっと多い非MACSキーカットの両方を有している。別の実施形態において、キーは、MACSに従ったキーカットを有することなく、1つまたはもっと多い非MACSキーカットだけを有する。
【0018】
本発明の実施形態は、以下の非限定的な特徴のうち1つまたはもっと多くを含むことができる。例えば、非MACSキーカットは、MACSよりも大きな寸法(例えば、より深い深さ)を有していてよい。非MACSキーカットは、所定の入れ子式プラグピンの内側ピンと接合するために形成される。非MACSキーカットは、第1のピンをシアーラインにおいて支持するための寸法とされる。キー組み合わせ面は支持面を有し、その上に入れ子式キーカットを少なくとも部分的に形成可能であり、および、非MACSキーカットが支持面上に形成される。非MACSキーカットは、入れ子式プラグピンの別のピンと接合するための別のキーカットを形成するための材料を、支持面から離れて残しておくのに必要な寸法とされている。非MACSキーカットは、細長い軸部内に形成された長手方向の凹状の溝を含むことができる。
【0019】
細長い軸部上で非MACSキーカットから離れてキーカットステーションに入れ子式キーカットを作ることにより、キーブランクをキー中に形成してもよい。細長い軸部は、非MACSキーカットのキーカットステーションに所定の入れ子式プラグピンの第2のピンと接合するために形成された別のキーカットを有していてよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明は、以下の詳細な説明から図面と併せてより完全に、理解されおよび十分に理解されるであろう。
【
図1】隣接するキーカット用のMACS制限を示す従来技術のキーの簡略化した図である。
【
図1A】入れ子式ピンの内側および外側ピン用のMACS制限を示す従来技術のキーの簡略化した図である。
【
図2A】入れ子式プラグピンの1つまたはもっと多いピン(この場合は、外側ピン)のための非心支持構造をもつキー装置であって、本発明の実施の形態に従い構成され動作するキー装置の簡略な絵画化した上面図であり、非MACSキーカットおよび他のキーカットをその上に形成されて有するキーを示す。
【
図2B】上記キー装置の簡略な絵画化した上面図であり、その端部に内向きのテーパが付いた非MACSキーカットをその上に形成されて有するキーブランクを示す。
【
図2C】上記キー装置の簡略な絵画化した上面図であり、
図2Bのそれよりも広い非MACSキーカットをその上にその端部まで形成されて有し、その端部が中央の突起部で終了するキーブランクを示す。
【
図3A】入れ子式プラグピンの1つまたはもっと多いピン(この場合は、外側ピン)のための非心支持構造をもつキー装置であって、本発明の実施の形態に従い構成され動作するキー装置の簡略な絵画化した上面図を示す。
【
図3B】入れ子式プラグピンの1つまたはもっと多いピン(この場合は、外側ピン)のための非心支持構造をもつキー装置であって、本発明の実施の形態に従い構成され動作するキー装置の簡略な絵画化した上面図を示す。
【
図3C】入れ子式プラグピンの1つまたはもっと多いピン(この場合は、外側ピン)のための非心支持構造をもつキー装置であって、本発明の実施の形態に従い構成され動作するキー装置の簡略な絵画化した上面図を示す。
【
図3D】キーブランクであって該キーブランクの細長い軸部の長手方向軸に対して傾斜した非MACSキーカットをもつキーブランクの簡略化した上面図である。
【
図4】
図2A〜3Cのキー装置のいずれかの簡略断面図であり、入れ子式プラグピンの外側ピンのための支持面において支持されている入れ子式プラグピンを、
図3A中のIV−IV線に沿って切断して示している。
【
図5】
図2A〜3Cのキー装置の、
図3A中のIV−IV線に沿った断面の簡略断面図であり、
図4のそれよりも長い内側ピンを有し、および、入れ子式プラグピンの内側ピンおよび外側ピンの両方のための中心支持構造上に作られたキーカットをもつ入れ子式プラグピンを示している。
【
図6】
図2A〜3Cのキー装置の、
図3A中のVI−VI線に沿った断面の簡略断面図であり、
図5のそれと同様に
図4のそれよりも長い内側ピンを有し、今度は、外側ピンのための非心支持構造上に作られたキーカット、および、内側ピンのための中心支持構造上に作られたキーカットであって
図4のそれよりも深いが
図4中の外側ピンのためのキーカットと同じ深さのキーカットをもつ入れ子式プラグピンを示している。
【
図7A】本発明のキー装置によって移動させることが可能な1つの入れ子式ピンの簡略な絵画化した図である。
【
図7B】本発明のキー装置によって移動させることが可能な別の1つの入れ子式ピンの簡略な絵画化した図である。
【
図8A】シリンダ錠に挿入された、プラグピンがシアーラインまで移動した状態の、本発明に従った
図2A〜3Cのキー装置の簡略断面図である。
【
図8B】シリンダ錠に挿入された、プラグピンがシアーラインまで移動した状態の、本発明に従った
図3Dのキー装置の簡略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
ここで、本発明の非限定的な実施形態に従って構成され動作するキー装置10を示している
図2A〜Cを参照する。
【0022】
本明細書および特許請求の範囲を通じて、用語「キー装置」が、キーブランク、または、その上にキーカットが形成されたキーブランクから作られたキーを指すことに留意されたい。キー装置10は、
図2B、2C、3Bおよび3C中ではキーブランクとして示されている。
【0023】
キー装置10は、全体として細長い軸部(キーブレード)12を含み、該軸部は、その上に形成されたキーカット14(
図2Aおよび3A)をもつ面を有し、該キーカットは、当技術分野で知られているように、キー組み合わせ面16を画定する。キーカット14が入れ子式プラグピンと接合するために切断され、この用語は、お互いに対して移動する少なくとも1つの内側ピンと少なくとも1つの外側ピンを含む、どのようなタイプのピンも包含する。
【0024】
キー装置10は、対称なキー組み合わせ面をもつリバーシブルキーを画定することができる。(
図4〜6は、リバーシブルキーを示している。)これとは別に、キー装置10は、単一のキー組み合わせ面、または異なるキー組み合わせ面を有していてよい。
【0025】
キー組み合わせ面16は、複数のキーカットステーション18(
図3Aおよび
図3B)を、入れ子式キーカット14を各キーカットステーション18において形成するために有している。キーカットステーション18は、互いに軸方向に離間されてもよく、これとは別に他の方向に離間されてもよい。各キーカットステーション18は、(
図4で見られる)入れ子最大隣接カット仕様(MACS)を有しており、シリンダ錠プラグの入れ子式プラグピンの入れ子式ピンと
図1Aを参照して上で説明したように接合するために、該仕様が、隣接するキーカットの最大深さを規定する。
【0026】
本発明の実施形態によれば、非MACSキーカット(特殊キーカットとも呼ぶ)20は、1つまたはもっと多いキーカットステーション18に形成されている(
図2A〜3Cおよび
図6)。キーカット20は、所定の入れ子式ピン22のための入れ子MACS定義によって制限されないことから、「非MACSキーカット20」と呼ばれ、他の従来のキーカットを作るために使用される入れ子MACS定義に反する方法で形成される。
図6に見られるように、非MACSキーカット20は、一方が他方にネストされている2つのピンを有する入れ子式ピン22と接合するように構成されている。より具体的には、非MACSキーカット20は、この所定の入れ子式ピン22の第1のピン24(図示の実施形態において、これは内側ピン24である)と接合する。細長い軸部12は、この所定の入れ子式ピン22の第2のピン26(図示の実施形態において、これは外側ピン26である)と接合するための非MACSキーカット20のキーカットに形成された別のキーカット20Aを有する(すなわち、キーカット20Aと非MACSキーカット20は、同一の所定の入れ子式プラグピンを構成する別々の入れ子式ピンと相互作用する)。図示の実施形態では、MACSによって定義される深さよりも深い深さを非MACSキーカット20が有していることが、
図4と
図6を比較することで容易にわかる。これとは別に、非MACSキーカット20がMACSよりも深いことは必要でない。非MACSキーカット20は、細長い軸部12内に、キーカット20Aを形成するための材料を残しておくのに必要な寸法と(ように構成)されている。非MACSキーカットは、第1のピン24をシアーライン30(
図6,8)において支持するための寸法とされている。
【0027】
本発明の別の実施形態では、非MACSキーカット20は、入れ子式ピンの外側ピンと接合するように作られてもよい。
【0028】
本発明の非限定的な実施形態では、
図2A〜3Cに見られるように、キー組み合わせ面16は支持面32を含み、その上に、入れ子式キーカット14を少なくとも部分的に形成可能である。非MACSキーカット20は、支持面32内にもまた形成される。限定ではないが、支持面32は、面16より上でも、下でも、または同一平面でもよい。図では、軸方向溝34が支持面32の近傍でキー組み合わせ面16内に形成されているが、本発明はこのような溝を必要としない。図示の非MACSキーカット20は、細長い軸部12に形成された長手方向の凹状の溝を含んでいる。この構成は、シリンダ錠におけるキーの容易な挿入または除去を可能にし、そのために、キーカット間のランプ上にプラグピンが容易に載り降りするようになる。
【0029】
上記実施形態では、キーまたはキーブランクの細長い軸部の長手方向軸に対して非MACSキーカットが整列されるかまたは平行である。
図3Dは代替案を示しており、ここでは、非MACSキーカット20Dがキーブランクの細長い軸部の長手方向軸線に対して傾斜している。
【0030】
本発明の重要な意義の1つは、ここで説明したように、
図4〜6を比較することによってよく理解され得る。
【0031】
図4は、内側キーカット36Cによって支持されている入れ子式プラグピンの内側ピン36、および、内側キーカット36Cの上方に形成された外側キーカット38Cによって支持されている外側ピン38を示している。外側ピン38が外側キーカット38Cの肩部39によって支持されていることに注意されたい。キーカット36Cと38Cの両方が、支持面32の上方に形成されている。
【0032】
図5は、
図4の内側ピン36よりも長い内側ピン40を有する入れ子式プラグピンを示している。非MACSキーカットを作る代わりに、伝統的な方法で形成されたキーカット41が、特別に長い内側ピン40を支持する試みで作られている。これは
図4で見られた外側キーカットの肩部を破壊することになり、そのために、内側および外側キーカットが混ざって1つのキーカット41になる。その結果、外側ピン38はもはやシアーラインに配置されない。
【0033】
図6において、内側ピン24は、
図5の特別に長い内側ピン40と同じ長さを有する。しかしながら、非MACSキーカット20は内側ピン24のための支持面上に形成されており、ところが、外側ピン26は非心支持面(すなわち
図2A〜3C中の支持面32の両側、縦方向の両側ではなく横方向の両側の上に残された材料)上に支持されている。入れ子式ピンのすべてのピンがシアーラインに正しく配置されており、および、MACSの深さが増している。これによって、可能なキーの組み合わせを増加させる。
【0034】
図7Aおよび
図7Bは、本発明のキー装置によって移動させることができる入れ子式ピンの2つの非限定的な例を示す。
図7Aにおいて、入れ子式内側ピン71および入れ子式外側ピン72は全体般的に円形である。外側ピン72は、円錐部73とリム74を有する。
図7Bにおいて、内側ピン75は非円形(例えば、チゼル)端部76を有し、外側ピン78内に形成されたスロット77内で移動するように拘束されており、内側ピン75は外側ピン72に対して回転することができない。外側ピン78は、外側ピン78が回転することを防ぐ、1つまたはもっと多いラグ79を有する。
【0035】
図8Aは、発明のいずれかの実施形態(キー装置10など)による、シリンダ錠80に挿入されたキー装置を、本発明の実施形態に従って示している。非MACSキーカット20がプラグ81の入れ子式プラグピン(内側ピン24および外側ピン26)をシアーライン30まで、ドライバピン82もまたシアーライン30まで移動した状態で移動させることがわかる。
【0036】
図8Bは、発明のいずれかの実施形態(キー装置10など)による、シリンダ錠90に挿入されたキー装置を、本発明の別の実施形態に従って示している。シリンダ錠90は、
図7Bの入れ子式ピンおよび
図3Dの非MACSキーカット20Dを採用している。非MACSキーカット20Dがプラグ91の入れ子式内側ピン75および入れ子式外側ピン78をシアーライン30まで、ドライバピン92もまたシアーライン30まで移動した状態で移動させることがわかる。