【実施例】
【0052】
実施例1:
コージエライト膜材料の調製
実施例1(a):湿式粉砕
湿式粉砕のみを使用したこの比較例では、市販の製品(Aveka Inc.社(米国ミネソタ州ウッドベリ所在)製)のメジアン粒径d50は、粉砕前には11.6μmであり(比較例)、24時間および132時間の湿式粉砕後はそれぞれ2.9μmおよび1.8μmに縮小していた(
図2参照)。しかしながら、さらに135時間湿式粉砕した後には、粒径は変化しなかった。得られた粒子を乾燥し、400メッシュのふるいに通した。粉砕したコージエライト材料は、乾燥した際に、凝集塊を形成した。
図1は、湿式粉砕したコージエライト粒子を乾燥し、400メッシュのふるいに通した後の粒径分布を示している。
図1は、湿式粉砕およびその後にふるいにかけることによって調製された10〜400μmの粒子の重要画分が、乾燥粉末中に存在したことを示している。
【0053】
図2は、湿式粉砕(ボールミル粉砕)時間の関数としてのコージエライト材料の粒径分布の変化を示すグラフである。2ポンド(907.2g)のコージエライト粉末を1.5ガロン(5.678L)のセラミックジャーに加えた。次に、1.0ガロン(3.785L)の脱イオン水および12ポンド(5.443kg)の3/8インチ(0.953cm)のイットリア安定化ジルコニア媒体を加えた。合計粉砕時間は267時間であった。24時間、132時間および267時間の粉砕後のコージエライトの粒径をモニタした。
【0054】
実施例1(b):ジェットミル粉砕
ジェットミル粉砕のみを使用したこの比較例では、11.6μmの平均粒径を有する市販のコージエライト材料(Aveka Inc.社(米国ミネソタ州ウッドベリ所在)製)をジェットミル粉砕した。得られた状態のままのコージエライトを、小さいスクリュー供給機を使用して1分あたり10gの速度でマイクロナイザー(Sturtavent Inc.社(米国マサチューセッツ州ハノーバー所在)から市販される)に連続的に供給した。得られたままの状態のコージエライトの粒径測定から次のデータを得た:d10=1.7μm、d50=10.6μm、d90=28.6μm。マイクロナイザーの粉砕圧力を126psi(868.8kPa)の圧縮空気に設定した。マイクロナイザーの渦ファインダによって、材料が粉砕チャンバ内に保持される時間量を決定した。材料が粉砕チャンバ内に保持される時間量を最大にして、粒子の衝突回数を最大にするため、渦ファインダを最大侵入(75%)に設定した。粉砕を達成した後、材料は粉砕チャンバの外の気流へと運ばれた。空気は布フィルターバッグを通じて排気され、粒子状物質は布フィルターバッグの真下のステンレス鋼の回収パンへと落下した。
【0055】
マイクロナイザーに通した後の比較用コージエライトのメジアン粒径(d50)の測定値は、4.5μmであった。次に、同一の粉砕条件を用いて2度目の通過をさせることによってこの材料を微粉化した。2度目の通過後、メジアン粒径の測定値は、3.5μmであった。次に、3度目の通過をさせるためにこの工程を繰り返したが、粒径はごくわずかしか縮小しなかった。
図3は、この比較例における、ジェットミル粉砕の前(○)および後(△)の粒径分布を示すグラフである。ジェットミル粉砕法は、粒径を縮小し、粒径分布を狭めた。
【0056】
しかしながら、湿式粉砕のみを行った後の粒径(実施例1(a)の場合)またはジェットミル粉砕のみを行った後の粒径(実施例1(b)の場合)は、1μm以下の細孔径を有するコージエライト膜を製造するのに十分には小さくなかった。
【0057】
実施例1(c):摩擦粉砕
摩擦粉砕のみを使用するこの比較例では、摩擦粉砕に循環アトラクター(circulation attractor)を使用した。6ポンド(2.722kg)のコージエライト粉末および9ポンド(4.082kg)の脱イオン水を合わせてスラリーを形成した。スラリーを、0.65mmの外径(O.D.)を有する8.1ポンド(3.674kg)のイットリア安定化ジルコニアの丸剤を含む、摩擦粉砕機の粉砕チャンバ(アルミナで内張りされたモデルHML−1.5VSD、SPX Process Equipment社(米国ウィスコンシン州デラバン所在)から購入)に通して連続的に循環させた。コージエライトスラリーの粒径を、粉砕の間、30分ごとにモニタした。目的の粒径に達したときに粉砕を停止した。
【0058】
図4は、摩擦粉砕の間の粉砕時間の経時によるコージエライト粒子の粒径分布の変化を示すグラフである。ライン1は入手したときの粒径を示しており、ライン2は0.5時間の粉砕後の粒径を示しており、ライン3は1.5時間の粉砕後の粒径を示しており、ライン4は2.5時間の粉砕後の粒径を示しており、ライン5は3.5時間の粉砕後の粒径を示している。3.5時間粉砕した後、d50値は11.6μmから1.9μmに低下し、132時間の湿式粉砕によって達成された寸法と同様であった。
【0059】
実施例1(d):摩擦粉砕とその後のジェットミル粉砕
本明細書に記載の粉砕法の実施の形態では、摩擦粉砕とその後のジェットミル粉砕を含む2段階ミル粉砕法を用いた。実施例1(c)に従って摩擦粉砕を達成した。得られたスラリーをパイレックス(登録商標)の大きい焼き型に注ぎ、週末にかけてオーブンで乾燥させた。乾燥した塊を20メッシュのふるいに通し、すべての塊が20メッシュ(850μm)より小さいことを確実にした。次に、乾燥した塊をマイクロナイザーに通して砕き、実施例1(b)に従ってジェットミル粉砕した。20メッシュ以下の塊を、小さいスクリュー供給機を使用して1分あたり10gの速度でマイクロナイザーに連続的に供給した。マイクロナイザーの粉砕圧力を126psi(868.8kPa)の圧縮空気に設定した。マイクロナイザーの渦ファインダによって、材料が粉砕チャンバ内に保持される時間量を決定した。材料が粉砕チャンバ内に保持される時間量を最大にして、粒子の衝突回数を最大にするため、渦ファインダを最大侵入(75%)に設定した。粉砕を達成した後、材料は粉砕チャンバの外の気流へと運ばれた。空気は布フィルターバッグを通じて排気され、粒子状物質は布フィルターバッグの真下のステンレス鋼の回収パンへと落下した。
【0060】
図5は、3.5時間の摩擦粉砕後(●)およびジェットミル粉砕でさらに処理した(■)の粒子のd50を示すグラフである。
図5は、ジェットミル粉砕によってさらに処理した後のコージエライト材料の粒径分布の変化を示している。ジェットミル粉砕後には一部の凝集塊が破砕され、粒径分布はさらに狭くなり、d50は1.4μmに低下したことがわかる。摩擦粉砕とその後のジェットミル粉砕の2段階ミル粉砕法を使用することにより、湿式粉砕、ジェットミル粉砕または摩擦粉砕のみを使用して達成される粒径と比較して、より小さい粒径が得られた。
【0061】
実施例2:
粉砕したコージエライトからの支持されていないコージエライト膜の調製
実施例1(d)に従ってコージエライト粒子を調製した。11.6μmのメジアン粒径を有する市販の粉砕コージエライト材料を出発材料として使用した。次に、この出発材料を摩擦粉砕およびその後のジェットミル粉砕を使用する2段階ミル粉砕法で粉砕し、狭い粒径分布および1〜2μmのメジアン粒径を有する細かく粉砕したコージエライト材料を形成した。
【0062】
得られたコージエライトスラリー(実施例1(d)に従って調製した)をペトリ皿に注ぎ、続いて120℃で一晩乾燥することによって、支持されていないコージエライト膜を調製した。乾燥した膜コーティングをペトリ皿からはがし、1℃/分の加熱速度で、1150℃で2時間焼成した。
図6は、Hgポロシメトリーで測定した、摩擦粉砕とその後のジェットミル粉砕の2段階ミル粉砕法によって調製された、支持されていないコージエライト膜の細孔径分布を示すグラフである。膜は、0.3μmのメジアン細孔径とともに、狭い細孔径分布を有することが
図6から分かる。
【0063】
実施例3:多孔質のモノリスコージエライト支持体の調製
この実施例は、本発明の実施の形態に用いられるコージエライト支持体について記載する。この実施例に用いられるモノリスコージエライト支持体(バッチコード(B))は、断面積にわたり均一に分散された、平均直径1mmの249本の丸みを帯びたチャネルを備えた、1インチ(2.54cm)の外径および2インチ(5.08cm)の長さのコージエライトでできていた。バッチコード(C)の支持体は、水銀ポロシメトリーで測定して、1.8〜2.4μmのメジアン細孔径および43〜44%の細孔率を有していた。
【0064】
図7は、多孔質のモノリスコージエライト支持体の内部チャネルの表面形状のSEM画像を示している。支持体は、狭い細孔径分布およびごく限られた広表面の細孔を有していることが分かる。表面粗さの結果は、24.6μmの平均PV値、2.1μmのrms値、および1.5μmのRa値を示している。
【0065】
実施例4:
スリップキャスティング
図8は、本明細書に記載される実施の形態におけるモノリス基材に無機膜を施すために用いられる装置400の実施の形態を示す図である。押出成形したモノリスコージエライト支持体100がコージエライト膜の堆積に用いられる。堆積前に、遊離した粒子または破片を除去するために、支持体は、脱イオン水で洗い流されるか、強制空気を吹きつけられる。洗浄された支持体は、120℃のオーブンで5〜24時間の乾燥に供される。
【0066】
一部の事例では、膜コーティングの前に、清潔にした支持体を前処理した。前処理工程は、いわゆる細孔充填材料を用いて支持体の細孔を塞栓することを含む。細孔充填材料の例は、その全体が本明細書に組み込まれる、Corning Incorporated社に譲渡された米国特許出願公開第2008/0299349号明細書に開示されている。細孔充填材料は、タンパク質粒子、スキムミルク中のタンパク質の凝集塊、デンプン粒子または合成ポリマー粒子など、その後の膜焼成工程の間に燃やし尽くすことができる幾つかの特定の有機材料である。
【0067】
図8に示すフローコーター400を使用して、前処理されていない、または前処理された支持体100上にコーティングを達成した。
図8は、フローコーター400を示しており、ここで、コーティング溶液200は、真空下、支持体100を備えたフローコーター400に入る。コーティング溶液200は、
図8に矢印で示されるように、支持体100を通って引き出され、支持体100のチャネルに膜が施される。その全体が本明細書に組み込まれる、Corning Incorporated社に譲渡された米国特許出願公開第2008/0237919号明細書に、同様のフローコーティング装置が記載されている。コーティングされた支持体を120℃で5時間乾燥し、次いで、0.5〜2℃/分の加熱速度(例えば、1℃/分)で、1100〜1200℃で0.5〜5時間(例えば1150℃で2時間)焼成した。スリップキャスティングの工程は、コーティング、乾燥および焼成を含んでいた。実施の形態では、所望のコーティング厚さを得るために、これらの工程のいずれかを繰り返してもよい。
【0068】
実施例5:膜の調製
実施例5(a):多孔質のモノリスコージエライト支持体上へのアルミナ膜の調製−比較例
実施例5(a)は比較例であり、多孔質のモノリスコージエライト支持体の実施の形態上へのアルミナ膜のコーティングについて記載する。この実施例に用いられる2つのモノリスコージエライト支持体(バッチコードBおよびバッチコードD)は、断面積にわたり均一に分散された平均直径1.8mmの125本の丸みを帯びたチャネルを備えた、1インチ(2.54cm)の外径および2インチ(5.08cm)の長さを有するコージエライトでできていた。バッチコード(B)の支持体は、水銀ポロシメトリーで測定して、10.0μmのメジアン細孔径および56.7%の細孔率を有している。バッチコード(D)の支持体は、水銀ポロシメトリーで測定して、11.4μmのメジアン細孔径および57.6%の細孔率を有している。チャネルに脱イオン水を通して支持体を洗い流し、120℃のオーブンで完全に乾燥させた。
【0069】
40重量%の固体濃度および8重量%のPEG(ポリエチレン・グリコール)濃度を有するアルミナスリップを調製した。アルミナAA−3(住友化学株式会社製)は、メジアン粒径2.7〜3.6μmの狭い粒径分布を有している。最初に、0.36gの4,5−ジヒドロキシ−1,3−ベンゼンジスルホン酸二ナトリウム(タイロン)を、114.7gの脱イオン水の入った500mlのプラスチックジャーに加え、そこに120gのアルミナ粉末を加えた。約1分間撹拌し、ジャーを氷浴内に設置し、10秒間オンおよび30秒間オフの間隔で30回、超音波処理した。次に、処理したスリップを、78.26gの20重量%PEGおよび2.70gの1%DC−B消泡剤のエマルション溶液(Dow−Corning社製)と混合した。15〜20時間のボールミル粉砕の後、スリップを、細かいふるいを通してフラスコに注ぎ、続いて真空ポンプを使用して脱気した。
【0070】
膜コーティングの前に、コージエライト支持体をGreat Value(商標)スキムミルクを用いて前処理した。支持体をテフロン(登録商標)テープで注意深く包み、細孔充填材料(スキムミルク)が支持体の外部と直接接触することを防いだ。20秒間浸漬し、支持体をスキムミルクから取り出した。振とう、またはN
2の吹き込み、または回転によって、内部チャネルから過剰のスキムミルクを除去した。前処理した支持体を周囲条件で5時間、続いて60℃で10時間、乾燥させた。
【0071】
図8に示すフローコーターを使用して、バッチコード(D)およびバッチコード(B)の支持体のチャネルの内部にアルミナ膜を施した。浸漬時間は20秒であった。コーティングされた支持体を525rpmの速度で60秒間回転させ、チャネル内の過剰のアルミナスリップを除去し、120℃で2時間乾燥し、1℃/分の加熱速度で1380℃で2時間焼成した。
【0072】
得られたアルミナ膜を走査電子顕微鏡法(SEM)によって特徴付けした。
図9AおよびBは、コージエライト無機基材に施したアルミナ無機膜の比較例の走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。
図9(AおよびB)は、バッチコード(B)(
図9A)およびバッチコード(D)(
図9B)のコージエライト支持体上にコーティングされたアルミナ膜を示すSEM画像である。
図9AおよびBは、バッチコード(B)およびバッチコード(D)のコージエライト支持体上にコーティングされたアルミナ膜が亀裂を生じたことを示している。亀裂は矢印で示されている。
【0073】
実施例5(b):コージエライト膜スリップの調製
コージエライトスリップは水性であり、粉砕したコージエライト粉末を脱イオン水、分散剤、ポリマー結合剤および消泡剤と混合し、10〜20時間ボールミル粉砕することによって調製した。スリップは水性の懸濁液に限定しなかった。実施の形態では、有機溶媒系のスリップも同様に膜コーティングに使用することができる。スリップ中の固形分は3〜25重量%の範囲であり、ポリマー結合剤の濃度は4重量%であった。
【0074】
43〜44%の細孔率および2.1μmのメジアン細孔径を有するモノリスコージエライト(バッチコード(C))上にコージエライトスラリー(実施例1(d)に従って調製された)をスリップキャスティングすることによって、支持されたコージエライト膜を調製した。30gの粉砕したコージエライト材料を475gの脱イオン水、0.09gのタイロンおよび119gの20%のPEG(ポリエチレン・グリコール、MW=20,000(Fluka社製))溶液と混合し、続いて一晩ボールミル粉砕することによって、5重量%の固形分を含むコージエライトスラリーを調製した。
【0075】
実施例5(b)(2):コージエライト膜スリップの調製の追加の実施例
追加の実施例として、5%の固形分を含む5%スリップの300gのバッチの調製法を以下に示す。最初に、0.05gのタイロン(4,5−ジヒドロキシ−1,3−ベンゼンジスルホン酸二ナトリウム、Fluka社製)を237.5gの脱イオン水を入れた500mlのプラスチックジャーに加え、次いで、そこに15.0gの粉砕コージエライト粉末を加えた。約1分間振とうし、ジャーを氷浴内に設置し、10秒間オンおよび30秒間オフの間隔で30回、超音波処理した。次に、処理したスリップを、59.4gの20重量%PEG(ポリエチレン・グリコール、MW=20,000、Fluka社製)および4.3gの1%DC−B消泡剤エマルション溶液(Dow−Corning社から市販されている)と混合した。15〜20時間のボールミル粉砕後、スリップを細かいふるいに通してフラスコ内に注ぎ、続いて真空ポンプを使用して脱気した。
【0076】
実施例5(c):モノリスコージエライト基材(前処理なし)上へのコージエライト膜のスリップキャスティング
図8に示す装置を使用して、本明細書に記載される実施の形態におけるモノリス基材にコージエライト膜を施した。押出成形したモノリスコージエライト支持体100をコージエライト膜の堆積用に使用した。堆積前に、支持体を脱イオン水で洗い流すか、または強制空気を吹き付けて、遊離した粒子または破片を除去した。洗浄した支持体を、120℃のオーブンで5〜24時間乾燥させた。コーティングされた支持体を120℃で5時間乾燥し、次いで、0.5〜2℃/分(例えば、1℃/分)の加熱速度で、1100〜1200℃で0.5〜5時間(例えば1150℃で2時間)焼成した。スリップキャスティングの工程は、コーティング、乾燥および焼成を含んでいた。実施の形態では、所望のコーティング厚さを得るために、これらの工程のいずれかを繰り返してもよい。
【0077】
例えば、チャネルに脱イオン水を通して支持体を洗い流し、120℃のオーブンで完全に乾燥させた。それぞれ、3%、5%および10%の固形分を含む、3種類のコージエライトスリップを調製した。実施例5(b)および5(b)(2)に記載された手順と同一の手順を使用して、異なる量のコージエライト材料、脱イオン水、ポリマー結合剤、分散剤および消泡剤を混合することによって、スリップを調製した。15〜20時間のボールミル粉砕後、スリップをふるいにかけ、真空引きした。支持体をフローコーターに取り付け、3%、5%および10%の異なる固形分を含むスリップを用いてコーティングした。コーティング後、コーティングされた支持体を取り外し、525rpmで1分間回転させた。次いで、それらを120℃で2時間乾燥し、1150℃で2時間焼成した。二重コーティングしたサンプルでは、焼成前に、1回目のコーティングと同じスリップを使用してそれらを再びコーティングした。
【0078】
図10は、モノリスコージエライト膜基材100のチャネル表面(
図10A)および断面(
図10B)のSEM画像を示している。
図10Aは、モノリスコージエライト基材100の内部構造、チャネル壁上の膜コーティング101、および壁102を示している。
図10Bは、基材上の膜101の断面画像を示している。膜101は、厚さが均一であり(
図10Bの白矢印を参照)、約7μmの厚さを有していたことが分かる。
【0079】
図10は、実施例1(d)および実施例5(b)(1)または5(b)(2)に従った10%スリップを使用して、前処理されていないコージエライト支持体上に生成した二重コーティングしたコージエライト膜を示している(すなわち、コージエライトモノリス基材上にコージエライト膜が2回コーティングされた)。膜は亀裂していなかった。表面粗さを4点で測定し、その平均PV値は11.9μm、rms値は0.98μm、Ra値は0.77μmであった。Ra値は、支持体のみのものと比較して、大幅に低下した。
【0080】
実施例5(d):前処理したモノリスコージエライト基材上へのコージエライト膜のスリップキャスティング
この実施例では、市販のスキムミルクを前処理に使用した。浸漬コーティング、スリップキャスティングまたは他の方法によって、スキムミルク溶液をセラミック支持体の細孔内に吸収させた。前処理の間、支持体の開放チャネルの内表面のみがスキムミルク溶液と接触する。支持体を溶液と一定時間接触させた後、支持体を溶液から取り出した。前処理した支持体を、室温で24時間、または室温より高温だが120℃未満の温度で5〜20時間、または室温で5〜10時間乾燥し、次いで、それより高温だが120℃未満の温度で5〜10時間乾燥した。
【0081】
次に、実施例1(d)および実施例5(b)(1)または5(b)(2)に従ってコーティングを施した。コーティングされた支持体を120℃で5時間乾燥し、次いで、0.5〜2℃/分(例えば、1℃/分)の加熱速度で、1100〜1200℃で0.5〜5時間(例えば1150℃で2時間)焼成した。スリップキャスティングの工程は、コーティング、乾燥および焼成を含んでいた。実施の形態では、所望のコーティング厚さを得るために、これらの工程のいずれかを繰り返してもよい。例えば、スリップキャスティングの工程を2回繰り返す場合、それはダブルキャスティングまたは二重コーティングしたコージエライト膜と呼ぶことができる。スリップキャスティングの工程を3回繰り返す場合、それは、トリプルキャスティングまたは三重コーティングしたコージエライト膜などと呼ぶことができる。
【0082】
図11は、5%スリップ(
図11A)、および10%スリップ(
図11Bおよび11C)を使用して前処理したコージエライト基材100(バッチコード(B))上に、実施例1(d)および実施例5(b)(1)または5(b)(2)に従って生成したコージエライト膜モノリスの表面形状のSEM画像を示している。
図11Aは、5%スリップを使用して、前処理したコージエライト支持体上に生成した二重コーティングしたコージエライト膜のSEM画像である。
図11Bは、10%スリップを使用して、前処理したコージエライト支持体上に生成した二重コーティングしたコージエライト膜のSEM画像であり、膜の厚さが約10μmであることを示している。
図11Cは、10%スリップを使用して生成した膜(
図11Bに示す)の断面図である。
図11Aは、モノリスコージエライト基材100の断面における内部構造、チャネル壁上の膜コーティング101、および壁102を示している。
図11Bは、膜101の拡大画像を示している。膜101は均一であり、亀裂がないことが分かる。
【0083】
図12AおよびBは、上記実施例1(d)および実施例5(b)(1)または5(b)(2)に従って生成された、2.3インチ(5.84cm)×4インチ(10.16cm)の1mmチャネルのコージエライト支持体(バッチコードA)上にコーティングされた焼成コージエライト膜の追加の実施例のチャネルの表面Aおよび断面BのSEM画像を示している。Aの支持体は、水銀ポロシメトリーで測定して、46%の細孔率および3.9μmのメジアン細孔径を有していた。膜コーティングの前に支持体をスキムミルクで前処理した。10%スリップを使用してコージエライト膜をコーティングした。膜を乾燥し、1150℃で焼成した。膜は15μmの厚さを有し、亀裂していなかった。
【0084】
図13は、水銀ポロシメトリーで測定した、Aのコージエライト支持体(バッチコードA)上にコーティングされたコージエライト膜の実施の形態(
図12に示す)の細孔径分布を示している。2つのピークが観測された。大きいピークはコージエライト支持体の細孔径を表し、小さいピークは0.3〜0.4μmの細孔径を有するコージエライト膜を示している。
【0085】
図14は、水銀ポロシメトリーで測定した、1インチ(2.54cm)×2インチ(5.08cm)の1mmチャネルのバッチコード(A)のコージエライト支持体上にコーティングされた別のコージエライト膜(2.2μmのメジアン粒径を有するコージエライト材料から調製した15%スリップを使用したこと以外は、
図12に示されるものと同じ)の細孔径分布を示している。
図14は、このコージエライト膜の細孔径が0.4〜0.6μmであったことを示している。
【0086】
図15は、それぞれ、0.3〜0.4μm(A)および0.4〜0.6μm(B)の細孔径を有する2つのコージエライト膜の表面形状を比較している。この図から、より粗いコージエライト粒子から0.4〜0.6μmの膜が作られ、最終的なコージエライト膜モノリス支持体に、より大きい細孔径を生じたことが分かる。
【0087】
実施例6:10μm細孔のコージエライト基材上のコージエライト膜
高浸透性の膜基材用の潜在的候補として、1層のコージエライトコーティングを、水銀ポロシメトリーで測定して、10.0μmのメジアン細孔径および56.7%の細孔率を有する、1インチ(2.54cm)×2インチ(5.08cm)のコージエライト基材上に生成した(バッチコードB)。基材は平均直径2mmの125本の丸みを帯びたチャネルを備えていた。
【0088】
2.5μmのメジアン粒径を有する15%コージエライトの固形分を含むコージエライトスリップを調製した。同一のコーターを使用して、コーティング2回および焼成1回を行った基材上に膜コーティングを施した。120℃で2時間の乾燥後、コーティングされた部品を1150℃で2時間焼成した。
【0089】
図16A(低倍率)およびB(高倍率)は、10.0μmのメジアン細孔径および56.7%の細孔率を有するコージエライト基材上に生成したコージエライトコーティングのチャネルの上方から見たSEM画像を示している。図示するように、滑らかで亀裂がないコージエライトコーティングの層が基材上に堆積された。
図17は、Hgポロシメトリーで測定した、支持されているコージエライトコーティングの細孔径分布を示している。強いピークは、約10μmの細孔径を有する基材の細孔径分布を表している。弱いピークは、0.5μmのメジアン細孔径を有するコージエライトコーティングによるものである。
【0090】
さらなる表面形状の測定は、基材をコージエライトコーティングでコーティングした後に、表面の滑らかさの顕著な改善を示唆した。粗さRa値は4.1μmから1.3μmに低下し、rms値は5.422μmから1.900μmに低下し、PV値は40.477μmから11.918μmに低下した。
【0091】
実施例7:コージエライト膜コージエライト支持体上へのポリマーコーティング
コージエライト支持体上にコーティングされたコージエライト膜はまた、さまざまな用途のためのポリマー膜堆積用の基材としても使用することができる。例として、最初に、0.3〜0.4μmの細孔径を有するコージエライト膜を、1インチ(2.54cm)×2インチ(5.08cm)の1mmチャネルのコージエライト支持体(バッチコードA)上にコーティングした。次に、得られたコージエライトコーティングされた支持体上に、0.1%の界面活性剤SDSを含むDENO/D400エマルション溶液を3回コーティングした。DENO/D400は、1,2,7,8−ジエポキシオクタンであるDENO(Aldrich Chemical社製)、および、O,O’−ビス(2−アミノプロピル)ポリプロピレン・グリコールであるD400(Huntsman Petrochemical Corp社製)の2種類の反応物質を含む架橋ポリマーコーティング、または膜である。最適な架橋結合を達成するため、DENO:D400の分子の比は2:1である。乾燥および硬化後、得られたポリマー膜は0.6gの重量を有し、少なくとも10分間真空を保持していた。すなわち、ポリマー膜は封止を形成していた。
【0092】
本発明の精神および範囲から逸脱することなく、さまざまな変更およびバリエーションがなされうることは当業者にとって明白であろう。