特許第6290983号(P6290983)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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6290983コージエライトモノリスにおけるコージエライト膜
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6290983
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】コージエライトモノリスにおけるコージエライト膜
(51)【国際特許分類】
   B01D 71/02 20060101AFI20180226BHJP
   B01D 69/04 20060101ALI20180226BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20180226BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20180226BHJP
   C04B 35/195 20060101ALI20180226BHJP
   C04B 38/06 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
   B01D71/02
   B01D69/04
   B01D69/10
   B01D69/12
   C04B35/195
   C04B38/06 D
【請求項の数】8
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-131424(P2016-131424)
(22)【出願日】2016年7月1日
(62)【分割の表示】特願2013-512223(P2013-512223)の分割
【原出願日】2011年5月25日
(65)【公開番号】特開2016-196001(P2016-196001A)
(43)【公開日】2016年11月24日
【審査請求日】2016年7月13日
(31)【優先権主張番号】61/348,051
(32)【優先日】2010年5月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】ジョエル イー クリントン
(72)【発明者】
【氏名】ケネス ジェイ ドルーリー
(72)【発明者】
【氏名】ユンフォン グゥ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル イー サウンダーズ
【審査官】 池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/153828(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/005745(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/058205(WO,A1)
【文献】 特開2002−293656(JP,A)
【文献】 特開2006−239679(JP,A)
【文献】 特開2001−300273(JP,A)
【文献】 特開2003−176127(JP,A)
【文献】 特開2007−261849(JP,A)
【文献】 特開2003−047880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00−71/82
C01B 33/20−39/54
C04B 35/00−35/84
C04B 38/00−38/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コージエライト膜モノリスの製造方法であって、
第1の端部と、第2の端部と、多孔質のチャネル壁によって画成された表面を有する複数の内部チャネルとを有するコージエライトハニカムモノリス基材であって、前記複数の内部チャネルが、前記第1の端部から前記第2の端部まで該コージエライトハニカムモノリス基材を通じて延在している、コージエライトハニカムモノリス基材を形成する工程、および、
膜モノリスを形成するために、前記多孔質のチャネル壁の表面に、コージエライト粒子のスラリーを施す工程、
を含み、
前記コージエライト粒子は、摩擦粉砕およびジェットミル粉砕を含む2段階ミル粉砕法によって、1〜3μmの平均粒径を有するように調製される、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記スラリーが水性であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記スラリーが非水性であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
前記多孔質のチャネル壁の表面に前記スラリーを施す前に、細孔充填材料を用いて前記コージエライトハニカムモノリス基材を前処理することを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の製造方法。
【請求項5】
前記細孔充填材料がスキムミルクであることを特徴とする請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
前記多孔質のチャネル壁の表面に、前記コージエライト粒子の前記スラリーを2層以上施すことを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載の製造方法。
【請求項7】
前記膜モノリスに、少なくとも1層のポリマー層を施す工程をさらに含むことを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の製造方法。
【請求項8】
前記少なくとも1層のポリマー層が、1,2,7,8−ジエポキシオクタンおよびO,O’−ビス(2−アミノプロピル)ポリプロピレン・グリコールを反応物質とする架橋ポリマーコーティングまたは膜からなることを特徴とする請求項7記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、その内容は信頼に値し、参照することによりその全体が本明細書に取り込まれる、2010年5月25日出願の米国仮特許出願第61/348051号の米国法第35章第119条(e)に基づく優先権の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、流体分離用のコージエライト膜を備えたコージエライトモノリス基材の製造方法、およびそのように作られたコージエライトモノリス膜に関する。
【背景技術】
【0003】
コージエライト材料から作られたフィルタを含めたセラミックフィルタは、現在、産業液体ろ過用途および発電所の煙道ガスおよび燃焼エンジン排気などの流体排気流から粒子状物質を除去するために使用されている。例として、ディーゼルエンジンの排気ガスに由来する未燃焼の炭素質粒子を除去するために用いられるセラミックスートフィルタが挙げられる。例えば、ディーゼル微粒子フィルタ、すなわちDPFは、多孔質のチャネル壁またはウェブによって囲まれ、隔てられた、多数の平行なチャネルによって形成されるハニカム構造からなり、チャネルの一部はフィルタの入口で遮断または塞栓され、残りのチャネルはフィルタの出口で塞栓されている。ろ過されるべき排ガスは、塞栓されていない入口チャネルから入り、チャネル壁を通過し、塞栓されていない出口チャネルを通じてフィルタから出るが、粒子状物質は、排ガスがフィルタを縦走する際に、入口チャネル壁の表面または内部に捕捉される。
【0004】
コージエライトは、ガソリン微粒子フィルタ(GPF)として、基材として、または触媒反応および流体の分離のための支持体としても使用されている。膜またはコーティングは、コージエライトハニカムモノリス構造の表面に施用されうる。膜は、耐火性のセラミックまたはガラス材料の薄層の形状を成していて差し支えなく、スラリーコーティングによってハニカム基材のチャネルに施用されうる。これらの膜は多孔質でありうる。これらの膜またはコーティングは基材の効用にとって重要でありうる。例えばこれらの膜またはコーティングは、モノリス基材の目的の用途にとって重要であろう物理的または化学的特性を提供しうる。膜、膜の製造方法、および膜を有するセラミックモノリスが本明細書において提供され、前記膜モノリスは所望の特徴をもたらす物理的および化学的特性を有する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、流体を分離するためのコージエライト膜を有するコージエライトモノリス基材の製造方法、およびそのように製造されたコージエライトモノリス膜に関する。本明細書に開示される実施の形態では、コージエライト膜モノリス基材は、1μm未満の細孔径を有する。実施の形態では、コージエライト膜モノリス基材は、小さい細孔径を有する滑らかな表面を提供する。これらの膜モノリス基材は、膜モノリス基材上へのポリマー膜の施用を必要とする用途を含めた、ある特定の用途にとって好ましい。膜モノリス基材上に施用されたポリマー膜がモノリス構造全体にわたって真空を保持できることが必要とされる用途では、小さい細孔径および亀裂を有しない滑らかな表面が望ましい。
【0006】
追加の特徴および利点は、下記の詳細な説明において記載され、一部には、その説明から当業者にとって容易に明らかとなり、あるいは、下記の詳細な説明、特許請求の範囲、ならびに添付の図面を含めた本明細書に記載される実施の形態を実施することによって認識されよう。
【0007】
前述の概要および下記の詳細な説明は、単に典型例であって、特許請求の範囲に記載される発明の性質および特徴を理解するための概観または枠組みを提供することが意図されていることが理解されるべきである。添付の図面はさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれてその一部を構成する。図面は、1つ以上の実施の形態を示し、その説明と共に、さまざまな実施の形態の原理および操作を説明する役割をする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】湿式粉砕し、その後ふるいにかけることによって調製された、10〜400μmの粒子の重要画分が、図2に示す湿式粉砕によって得られた乾燥粉末中に存在したことを示すグラフ。
図2】比較例における湿式ボールミル粉砕時間の関数としてのコージエライト材料の粒径分布の変化を示すグラフ。
図3】この比較例における、ジェットミル粉砕前(○)および後(△)の粒径分布を示すグラフ。
図4】摩擦粉砕の間の粉砕時間に伴うコージエライト粒子の粒径分布の変化を示すグラフ。
図5】3.5時間の摩擦粉砕後(●)およびジェットミル粉砕によってさらに処理した後(■)の粒径分布の変化を示すグラフ。
図6】Hgポロシメトリーによって測定した、摩擦粉砕に続いてジェットミル粉砕を行う2段階ミル粉砕法で調製した、支持されていないコージエライト膜の細孔径分布を示すグラフ。
図7A】多孔質のモノリスコージエライト支持体の内部チャネルの表面形状の低解像度のSEM画像を示す図。
図7B】多孔質のモノリスコージエライト支持体の内部チャネルの表面形状の高解像度のSEM画像を示す図。
図8】本明細書に記載のモノリス基材に無機膜を施すのに用いられる装置の実施の形態を示す図。
図9A】コージエライト無機基材に施したアルミナ無機膜の比較例の走査型電子顕微鏡写真(SEM)を示す図。
図9B】コージエライト無機基材に施したアルミナ無機膜の比較例の走査型電子顕微鏡写真(SEM)を示す図。
図10A】における、モノリスコージエライト基材100上に実施例1(d)に従って作ったコージエライト膜の実施の形態の、チャネルの表面のSEM画像を示す図。
図10B】における、モノリスコージエライト基材100上に実施例1(d)に従って作ったコージエライト膜の実施の形態の、断面のSEM画像を示す図。
図11A】5%スリップを使用したコージエライト膜の表面形状を示す、コージエライト膜でコーティングされた、前処理したコージエライトモノリス基材の断面のSEM画像を示す図。
図11B】10%スリップを使用したコージエライト膜の表面形状を示す、コージエライト膜でコーティングされた、前処理したコージエライトモノリス基材の断面のSEM画像を示す図。
図11C図11Bの10%スリップ膜でできた膜の厚さを示す断面のSEM画像を示す図。
図12A】2.3インチ(5.84cm)×4インチ(10.16cm)の1mmチャネルのバッチコード(A)のコージエライト支持体上にコーティングされた焼成コージエライト膜の実施の形態のSEM画像であり、チャネルの表面の図。
図12B】2.3インチ(5.84cm)×4インチ(10.16cm)の1mmチャネルのバッチコード(A)のコージエライト支持体上にコーティングされた焼成コージエライト膜の実施の形態の2枚のSEM画像であり、断面図。
図13】水銀ポロシメトリーで測定した、バッチコード(A)のコージエライト支持体(図12に示す)にコーティングされたコージエライト膜の実施の形態の細孔径分布を示す図。
図14】1インチ(2.54cm)×2インチ(5.08cm)の1mmチャネルのバッチコード(A)のコージエライト支持体上にコーティングされたコージエライト膜の別の実施の形態の細孔径分布を示す図。
図15A】0.3〜0.4μmの細孔径を有する、本明細書に記載のコージエライト膜の実施の形態の表面形状を示した図。
図15B図15Aとの比較のため、0.4〜0.6μmの細孔径を有する、本明細書に記載のコージエライト膜の実施の形態の表面形状を示した図。
図16A】10μm細孔のDHXコージエライト基材の内部チャネルにコーティングされたコージエライト膜の実施の形態のチャネル表面を上から見た、低倍率のSEM画像を示す図。
図16B】10μm細孔のDHXコージエライト基材の内部チャネルにコーティングされたコージエライト膜の実施の形態のチャネル表面を上から見た、高倍率のSEM画像を示す図。
図17】10μmの細孔径を有するコージエライト基材の実施の形態にコーティングされたコージエライト膜の細孔径分布を示すグラフ図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書に記載される実施の形態では、コージエライト膜でコーティングされた、膜モノリスを形成する、コージエライトモノリス基材が提供される。実施の形態では、膜モノリスのコージエライト膜は亀裂を有しない。実施の形態では、コージエライト基材に施用されたコージエライト膜は、1μm以下、0.5μm以下、または0.1μm〜1μmのメジアン細孔径を有する。コージエライト膜モノリスは、液体の精密ろ過用途に使用することができ、その後の無機または有機膜の堆積のための膜モノリス基材としても使用することができる。その後無機または有機膜でコーティングされた膜モノリス基材は、触媒反応などの用途、または、例えばオクタンによるガソリン成分の分離のためのパーベーパレイションなどの分離などに用いられうる。
【0010】
下記の詳細な説明では、本明細書の一部を形成する添付の図面について言及され、素子、システムおよび方法の幾つかの特定の実施の形態が例として示されている。他の実施の形態も意図されており、それらは、本開示の範囲または精神から逸脱することなくなされうることが理解されるべきである。したがって、下記の詳細な説明は限定的な意味に解釈されるべきではない。
【0011】
本明細書で使用する科学及び技術用語はすべて、他に特に規定されない限り、当技術分野で通常使用される意味を有する。本明細書で提供する定義は、本明細書で頻繁に用いられるある特定の用語の理解を促進するためのものであり、本開示の範囲を限定することは意味しない。
【0012】
本明細書では、ある方法との関連である物品を「提供する」とは、生成、購入、組立、供給、または、その物品が該方法に用いることができるようにその物品を入手する他の方法を意味する。
【0013】
本明細書では、「有する」、「有している」、「含む」、「含んでいる」、「備える」、「備えている」などは、オープンエンドの意味で用いられ、一般には、「含むがそれらに限定されない」ことを意味する。
【0014】
定義
モノリス基材:本開示の目的では、モノリス基材は、基材表面に膜を施すのに適した成形セラミックである。成形セラミックは、形作られ、押出成形され、鋳造されて差し支えなく、任意の形状または寸法でありうる。例えば、あるモノリス基材は、コージエライトから形成されたフィルタでありうる。あるいは、例えば、あるモノリス基材はハニカムフィルタでありうる。
【0015】
膜モノリス:本開示の目的では、膜モノリス(または膜モノリス基材)は、基材表面に施された無機膜の層を少なくとも1つ有するモノリス基材である。基材の同一表面に2層以上の無機膜が施用されてもよい。膜は、無機または有機、若しくはその両方でありうる。例えば、膜モノリスは、ハニカムモノリス基材の表面にコージエライト膜が施された、コージエライトから形成されたハニカムモノリス基材の形状をしたフィルタでありうる。
【0016】
多孔質の無機膜モノリスは、産業上の液体ろ過分離に幅広く使用されており、気体分離および触媒反応に用いられている。これらの膜モノリスは、第1の端部、第2の端部、および、多孔質の壁によって画成された表面を有し、第1の端部から第2の端部までモノリス基材を通じて延在する、複数の内部チャネルを備えうる。それらは、モノリス基材の表面に施された膜を有しうる。例えば、モノリス基材のチャネルの表面は、膜モノリスを形成する、多孔質の無機膜でコーティングされうる。
【0017】
これらの多孔質の無機膜モノリスの特定の特徴は、最終的な製品の機能を最適化するために重要である。例えば、その全体が本明細書に組み込まれる、Corning Incorporated社に譲渡された、「コーティングされた微粒子フィルタおよび方法(Coated Particulate Filter and Method)」という発明の名称の米国特許出願第12/626,100号明細書は、背圧の上昇を抑制するとともに、より良好なろ過効率を目的とした無機膜の薄層を有するGPFについて開示しいている。米国特許出願第12/626,100号明細書に記載される無機膜は、1μm以上のメジアン細孔径を有する。
【0018】
膜モノリスは、その上に堆積された1つ以上の無機層を有しうる。アルミナ、チタニア、ジルコニア、ジルコン、およびゼオライトを含めたさまざまな無機膜が検討されており、アルミナ、チタニアおよびムライトの支持体に施用されている。
【0019】
セラミック材料の中でもとりわけ、コージエライトは、低い熱膨張係数を有し、低い焼成温度を要件とする。コージエライトは、自動触媒コンバーター、DPF、多孔質のセラミック膜支持体、および耐火性製品などの用途に用いられ、検討されている。しかしながら、コージエライトモノリス基材上に無機膜を生成する方法についての研究は限定されていた。
【0020】
Dongらは、管状のコージエライト支持体上に2層のコージエライト膜を調製した(Yingcha Dong, Bin Lin, et al., Cost-effective tubular cordierite micro-filtration membranes processed by co-sintering, Journal of Alloys and Compounds, 477 (2009) L35-L40)。同時焼成した2層のコージエライト膜は、亀裂がなく、その平均細孔直径は1.55μmおよび2.17μmであり、合計の厚さは60μmであった。
【0021】
ある特定の用途では、1〜2μmの細孔径は、提案された基材用途には大きすぎる。例えば、「芳香族および脂肪族化合物を分離するためのポリマーコーティングした無機膜(Polymer-Coated Inorganic Membrane for Separating Aromatic and Aliphatic Compounds)」という発明の名称の米国特許出願第11/890,634号明細書(公開番号:2008/0035557)は、シリカ膜を有し、かつ、そのシリカ膜の上にポリマーコーティングも有する無機シリカモノリスについて開示しており、このポリマーは、ガソリンによく見られる芳香族および脂肪族化合物を(気相において)分離する。
【0022】
米国特許出願第11/890,634号明細書に開示されるような用途は、ポリマーコーティングした無機膜モノリス基材が真空状態を維持することを必要とする。この要件を達成するため、理論に拘泥するものではないが、無機膜モノリス基材のメジアン細孔径が、関連したポリマーの凝集ポリマーの大きさとほぼ等しいかそれ未満であることが必要とされうる。加えて、無機膜基材が、モノリスの膜表面に、ポリマー膜に不連続をもたらし、真空の要件を妨げるであろう漏れを生じさせる亀裂または不連続を有しないことが必要とされうる。したがって、真空を維持することができるポリマーコーティングした支持体を提供するため、無機モノリス基材の表面に施された無機膜の特性は、真空に耐えることができるポリマー層の用途に適合しなければならない。すなわち、このような用途では、膜モノリスは、望ましい細孔径および望ましい細孔径分布を有していなければならず、またその膜モノリスは、該膜モノリスに施されたポリマー膜層に漏れを生じさせるであろう重大な亀裂または不連続を有してはならない。
【0023】
無機膜支持体の特性は、下層の支持体の特性および無機膜層の特性に応じて決定して差し支えない。これらの特性は、下層のモノリス基材と施用された無機膜との適合性、下層のモノリス基材の表面の細孔径および粗さ、ならびに、膜モノリス基材上の無機膜表面の細孔率および粗さを含む。これらの特性は、モノリス基材上に無機膜を堆積させるのに用いられる技法の影響を受けうる。
【0024】
本明細書に記載される実施の形態では、膜モノリスの膜コーティング表面は亀裂を有しない。セラミック材料の亀裂の低減には多くの方法が存在する。例えば、モノリス基材に施されたセラミック膜層における亀裂を低減するためには、膜とモノリス基材の物理的特性を適合させることが望ましいであろう。例えば、同様の材料同士は、熱膨張特性を含めた同様の物理的特性を有する。本明細書に記載される実施の形態では、モノリス基材の材料はコージエライトであり、膜材料もコージエライトである。これらの材料は同一であることから、それらは同一(または同様)の熱膨張率(CTE)特性を有する。加えて、コージエライト膜は、低い焼成温度を要件とし、安い生産コストをもたらす。
【0025】
コージエライトは、自動触媒コンバーター、DPF、多孔質のセラミック膜支持体、および耐火性製品などの用途に用いられ、検討されている。しかしながら、コージエライトモノリス基材上に無機膜を生成する方法についての研究は限られていた。本明細書に記載される実施の形態では、コージエライトモノリス基材上への施用に適したコージエライト膜、および特定の用途に適したコージエライト膜が提供される。例えば、連続した(漏れのない)層に膜モノリスを施さなければならないポリマーを支持するために膜モノリスが用いられる場合には、小さい細孔径を有するコージエライト膜モノリスを開発することが有利でありうる。例えば1μm未満の細孔径を有する膜を提供することが有利であろう。あるいは、例えば、コージエライト無機膜基材のメジアン細孔径は、1μm以下、0.6μm以下、0.5μm以下、または0.1〜1μmでありうる。明確にするために、本明細書で用いられる「大きさ/寸法/サイズ」とは、細孔の断面の直径について言及することが意図されており、細孔の断面が円形ではない場合には、円形ではない細孔と同一の断面積を有する仮想の円の直径について言及することが意図されていることに留意されたい。加えて、図13および14に示すように、細孔径は分布として測定される。メジアン細孔径は細孔径分布のd50の測定値である。
【0026】
コージエライトは、ケイ酸マグネシウムアルミニウムである。モノリス基材コージエライト材料の正確な組成は、望ましい特徴を有するコージエライト材料を生成するように変更されてもよい。マグネシウム、アルミニウムおよびシリカ原料の粒径を変化させることによって、例えば、コージエライト材料の細孔径を制御して差し支えなく、コージエライトの細孔率も制御されて差し支えなく、コージエライト材料の細孔径分布もまた制御されて差し支えない。加えて、細孔形成剤がコージエライトバッチに含まれていてもよい。実施の形態では、コージエライトモノリス基材は、例えば、1.5〜15μm、1.5〜12μm、1.5〜10μm、1.5〜5μm、1.5〜4.5μm、1.5〜4.3μm、1.8〜15μm、1.8〜12μm、1.5〜10μm、1.8〜8μm、1.8〜6μm、1.8〜5μm、1.8〜4.3μmまたは1.8〜3.9μmの細孔径を有しうる。実施の形態では、コージエライトモノリス基材は、35〜60%、35〜55%、35〜50%、35〜48%、35〜46%、40〜60%、40〜55%、40〜50%、40〜48%、40〜46%、43〜60%、43〜55%、43〜50%、43〜48%または43〜46%、60%未満、55%未満、50%未満、48%未満、または46%未満の細孔率を有しうる。
【0027】
コージエライトモノリス材料の例を表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
表1に示す配合を表2に示す。
【0030】
【表2】
【0031】
表2に示す配合は液体添加として蒸留水も含みうる。表1および2に示すようなコージエライト基材の製造方法は、例えば、2009年4月14日に出願し、2010年5月27日に公開された米国特許出願公開第2010/0129600号明細書(例えば、バッチコードAおよびCに関する、p.6の表2における実施例C2およびC3を参照のこと)および、2007年6月28日に出願した国際出願公開第2009/005679号パンフレット(例えば、バッチコードDおよびバッチコードBに対応する、表2の実施例6を参照)に記載されており、これらは、参照することによりそれらの全体が本明細書に取り込まれる。同様のコージエライト材料の製造方法およびコージエライト材料に関する追加の情報は、例えば、本願と同一の譲受人に譲渡され、参照することによってその全体が本明細書に組み込まれる、2010年5月28日に出願の米国特許出願第12/789,833号および同第12/789,945号の各明細書に記載されている。
【0032】
本明細書に記載される実施の形態では、膜コージエライト材料の組成も、望ましい特徴を有する膜を生成するように変更されて差し支えない。例えば、コージエライト粒子は、膜モノリスの表面に施されるスラリーの生成に使用されうる。これらのコージエライト粒子は、所望の用途に適した粒径を有する膜スラリーを生成するように処理されうる。
【0033】
本明細書に記載される実施の形態では、米国ミネソタ州ウッドベリ所在のAveka Inc.社から、11.6μmのメジアン粒径を有し、広い粒径分布を有するコージエライト材料を購入した。しかしながら、11.6μmのメジアン粒径を有するこの材料物質は、所望の細孔径を有する最終的な膜をもたらさなかった。無機膜基材の細孔は、ランダム粒子充填によって形成される。粒子充填メカニズムに基づいて、本明細書に記載される実施の形態に従った、コージエライト膜の形成に用いられるコージエライト粒子は、0.8〜4μm以下のメジアン粒径を有しなくてはならない。例えば、4μmのメジアン粒径を有するコージエライト粒子は、1μmの細孔径を有する膜を生じたことから、実施の形態では、4μm未満の平均粒径を有するコージエライト粒子が、コージエライト膜の形成に用いられうる。実施の形態では、コージエライト膜の形成に用いられるコージエライト粒子の比較的狭い粒径分布は、より予測通りの膜を生じうる。
【0034】
本明細書に記載される実施の形態のコージエライトモノリス基材への施用に適したコージエライト原料を調製するため、広範な試験が行われた。湿式粉砕は、ボールミル粉砕または摩擦粉砕によって達成されうる。ボールミル粉砕は、従来からの粉砕法である;しかしながら、この方法は効率的ではなく、非常に細かいコージエライト材料を得るには、粉砕に非常に長い時間を要する。加えて、この方法を使用する場合、達成可能な粒径には下限が存在する。米国特許第4,810,681号明細書は、5μm以下の平均粒径を有する細かいコージエライト粉末を鋳造および焼成することを含む、緻密なコージエライトの製造方法について開示している。摩擦粉砕(撹拌ボールミル粉砕)は湿式ボールミル粉砕よりも効率的である。この技法は、RabeらによるAttrition milling of silicon nitride powder under conditions for minimal impurity pickup, Ceramics International, vol. 18, No.3, 1992, pp. 161-166および、CaerucciらによるProcess parameters in attrition milling of cordierite powders, J. Materials Synthesis and Processing, Vol. 6, No. 2, 1998, pp. 115-121に記載されている。これらの湿式法は、得られたコージエライト膜における凝集塊の形成につながる。凝集塊は得られたコージエライト膜に欠陥を生じうる。
【0035】
しかしながら、摩擦粉砕とその後のジェットミル粉砕工程との組合せは、コージエライトモノリス基材上にコージエライト膜を形成するのに適した狭い粒径分布を有する非常に細かいコージエライト膜材料(例えば、1〜4μmまたは1〜3μmのメジアン粒径を有する)をもたらす、より効率的な工程をもたらすことが分かった。これらの方法は、実施例1および図1〜5に記載されている。
【0036】
本明細書に記載される実施の形態では、1層の膜がモノリス基材の表面に提供される。追加の実施の形態では、2層以上の膜がモノリス基材の表面に提供される。モノリス基材の表面に1層以上の膜を提供するため、粉砕した細かいコージエライト材料(例えば、1〜4μmのメジアン粒径を有する)を含む液体のスリップまたはスラリーが、1つ以上のコーティング工程においてモノリス基材の表面に施される。例えば、2層の膜がモノリス基材の表面に提供されて差し支えなく、3層の膜がモノリスの表面に提供されて差し支えなく、4層の膜が基材表面に提供されて差し支えなく、もしくは、5層の膜が基材表面に提供され差し支えない。
【0037】
実施の形態では、単一の膜層または複数の膜層を施すため、膜のそれぞれの施用は、スリップ中にコージエライト材料をある割合で含むスリップを使用してもよい。実施の形態では、コージエライトのスリップは水性であって差し支えなく、粉砕したコージエライト粉末を脱イオン水、分散剤、ポリマー結合剤および消泡剤と混合し、10〜20時間、ボールミル粉砕によって混合することにより調製されうる。ポリマー結合剤は当技術分野で知られており、例えば、ポリエチレン・グリコール(PEG)である。実施の形態では、スリップは水系または水性の懸濁液である。追加の実施の形態では、有機溶媒系のスリップも同様に膜コーティングに使用されうる。
【0038】
例えば、スリップは、1重量%の粉砕したコージエライト粉末を使用して調製されうる。あるいは、例えば、2%のスリップが用いられて差し支えなく、3%のスリップが用いられて差し支えなく、4%のスリップが用いられて差し支えなく、5%のスリップが用いられて差し支えなく、6%のスリップが用いられて差し支えなく、7%のスリップが用いられて差し支えなく、8%のスリップが用いられて差し支えなく、9%のスリップが用いられて差し支えなく、10%のスリップが用いられて差し支えなく、11%のスリップが用いられて差し支えなく、12%のスリップが用いられて差し支えなく、13%のスリップが用いられて差し支えなく、14%のスリップが用いられて差し支えなく、15%のスリップが用いられて差し支えなく、16%のスリップが用いられて差し支えなく、17%のスリップが用いられて差し支えなく、18%のスリップが用いられて差し支えなく、19%のスリップが用いられて差し支えなく、20%のスリップが用いられて差し支えなく、21%のスリップが用いられて差し支えなく、22%のスリップが用いられて差し支えなく、23%のスリップが用いられて差し支えなく、24%のスリップが用いられて差し支えなく、または25%のスリップが用いられて差し支えなく、もしくは、これらのスリップのいずれかの範囲または組合せが用いられてもよい。ポリマー結合剤を含む追加の原料もスリップに取り込まれうる。例えば、実施の形態では、1〜20重量%のポリマー結合剤がスリップ配合物に含まれうる。追加の実施の形態では、1〜10重量%のポリマー結合剤がスリップ材料に含まれて差し支えなく、あるいは1〜5%のポリマー結合剤がスリップ配合物に含まれていてもよい。
【0039】
実施の形態では、スリップは、モノリス基材の表面に成形またはコーティングまたは施用される。追加の実施の形態では、浸漬コーティングまたは他のスリップキャスティングの技法が用いられうる。スリップは、図8に示すようにフローコーター400を使用してモノリスの一表面または複数の表面に施用されうる。図8はフローコーター400を示しており、コーティング溶液200は、真空下で、チャネルを有する支持体100を備えたフローコーター400に入る。コーティング溶液200は、図8の矢印によって示されるように、支持体100を経由して引き出され、支持体100のチャネルに膜が施される。
【0040】
実施の形態では、複数層の膜が基材に施されて差し支えなく、実施の形態では、これらの複数の層は異なる粒径特性を有しうる。例えば、より大きい粒径を有する、最初の層の膜が、コージエライトモノリス基材に施されて差し支えない。その後の層は、逐次的に、より小さい粒径を有するものが施されて、結果的に、所望のメジアン細孔径を有するコージエライト膜モノリスを生じうる。逐次的により小さい粒径を有する、複数の層のコージエライト膜の施用は、より大きい細孔径を有するモノリス基材からコージエライト膜モノリスを形成可能にしうる。例えば、中間の平均粒径(例えば4μmを超える)を有する最初の膜の施用は、所望の平均粒径(例えば4μm以下)を有する追加の膜層の施用を支持する下層を生じうる。実施の形態では、複数の層のコージエライト膜の使用は、出発材料として、より大きい細孔径を有するコージエライトモノリス基材の使用を可能にする。
【0041】
モノリス基材は、スリップの施用前に前処理されうる。例えば、実施の形態では、スリップを施す前に、モノリス支持体が前処理される。実施の形態では、前処理の工程は、細孔充填材料を使用して支持体の細孔を塞栓することを含む。実施の形態では、細孔充填材料は、タンパク質粒子、スキムミルク中のタンパク質凝集塊、デンプン粒子または合成ポリマー粒子などの特定の有機材料である。これらの材料は、膜が滑らかな表面を形成するように、膜モノリスの細孔を塞ぐのに用いられうる。次に、後の焼成工程の間に、細孔充填材料は燃え尽きる。細孔充填材料の例は、その全体が本明細書に組み込まれる、Corning Incorporated社に譲渡された米国特許出願公開第2008/0299349号明細書に開示されている。
【0042】
ひとたびスリップがモノリス基材に施されると、コーティングされたモノリスは、乾燥および焼成されて、連続した無機膜層を生成しうる。実施の形態では、膜モノリスは、未処理のモノリス基材の表面より滑らかな表面を有する。図10に示す、粉砕コージエライト材料の10重量%スラリーを施用、乾燥、および焼成された、スキムミルクで前処理された本明細書に記載の膜モノリス(バッチコード(B))モノリス基材の実施の形態の滑らかさと比較した、図7に示す、コージエライトモノリス基材(バッチコード(B))のコージエライト材料の例から測定された滑らかさが表2に示されている。
【0043】
【表3】
【0044】
表2に示すように、膜モノリスは、PV(ピークから谷までの測定値)、rms(粗さの二乗平均平方根)およびRa(粗さの平均値)の計算値で判断して、顕著に滑らかである。
【0045】
実施の形態では、コージエライト膜モノリスのPVは、例えば、5〜30μm、5〜25μm、5〜20μm、10〜30μm、10〜25μm、10〜20μm、11〜30μm、11〜25μmまたは11〜20μmでありうる。実施の形態では、rmsで測定および計算した粗さは、例えば、0.5〜3μm、0.5〜2.5μm、または0.5〜2μmでありうる。実施の形態では、Raで測定および計算した粗さは、例えば、0.5〜2μmまたは0.5〜1.5μmでありうる。
【0046】
実施の形態では、コージエライトモノリス基材に施したコージエライト膜の厚さは、コージエライト膜材料の粒径によって制限される。厚さは、単一層のコージエライト膜または複数層のコージエライト膜から測定されてもよい。例えば、1〜4μmのメジアン直径を有するコージエライト粒子から調製されたコージエライト膜は、2〜5μmの厚さの下限値を有しうる。厚過ぎるコージエライト膜は崩壊または亀裂する可能性がある。実施の形態では、コージエライトモノリス基材に施したコージエライト膜の厚さは、例えば、2〜25μm、2〜20μm、2〜18μm、2〜15μm、2〜12μm、2〜10μmまたは2〜8μm、5〜25μm、5〜20μm、5〜18μm、5〜15μm、5〜12μm、5〜10μmまたは5〜8μmでありうる。
【0047】
コージエライト膜の細孔率は、支持されていないコージエライト膜調製物から測定されてもよい。0.5〜0.6μmの膜は、例えば、55%の細孔率を有しうる。0.3〜0.4μmの膜は、58%の細孔率を有しうる。実施の形態では、コージエライト膜の細孔率は、例えば、30〜65%、40〜65%、50〜65%、55〜65%、30〜60%、40〜60%、45〜60%、50〜60%、または55〜60%でありうる。
【0048】
加えて、膜モノリスのメジアン細孔径(水銀ポロシメトリーで測定)は、本明細書に記載される実施の形態では、0.1〜1μmの範囲であるが(図13および図14を参照)コーティングされていないモノリスのメジアン細孔径は1μmを超えていた(表1参照)。実施の形態では、コーティングされたコージエライト膜基材は、その後のポリマー膜の堆積を可能にするのに十分に細かい細孔を有する。追加の実施の形態では、ポリマーコーティングされた膜基材は真空を保持しうる。すなわち、コージエライト膜基材の膜表面に施されたポリマー膜は封止を形成しうる。
【0049】
本開示の第1の態様は、コージエライトモノリス基材;および、コージエライト膜モノリスを形成する、前記コージエライトモノリス基材の表面のコージエライト膜;を備えたコージエライト膜モノリスであり、前記コージエライト膜モノリスは1μm未満のメジアン細孔径を有し、前記コージエライト膜モノリスは0.1〜1μmのメジアン細孔径を有し、前記コージエライト膜モノリスは0.3〜0.6μmのメジアン細孔径を有し、または、前記コージエライト膜モノリスは0.6μm未満のメジアン細孔径を有する。本開示の第2の態様は、コージエライト膜が0.1〜1μmのメジアン細孔径を含む、第1の態様のコージエライト膜モノリスである。本開示の第3の態様は、コージエライト膜が0.6μm未満のメジアン細孔径を含む、第1の態様のコージエライト膜モノリスである。本開示の第4の態様は、コージエライト膜が単一層のコージエライト膜を含む、第1の態様のコージエライト膜モノリスである。本開示の第5の態様は、コージエライト膜が2層以上のコージエライト膜を含む、第1の態様のコージエライト膜モノリスである。本開示の追加の態様は、コージエライト膜が、2層のコージエライト膜または3層のコージエライト膜または4層のコージエライト膜または5層のコージエライト膜を含む、第1の態様のコージエライト膜モノリスである。本開示の第6の態様は、コージエライトモノリス基材が5〜25μmの厚さを含むコージエライト膜を有する、第4または第5の態様のコージエライト膜モノリスである。第7の態様では、コージエライト膜が30〜60%の細孔率を含む、第4または第5の態様のコージエライト膜モノリスが提供される。第8の態様では、コージエライトモノリス基材が1.5〜5μmのメジアン細孔径を含む、第4または第5の態様のコージエライト膜モノリスが提供される。本開示の追加の態様は、コージエライトモノリス基材が、1〜10μm、1.5〜10μm、1〜5μm、1〜4μm、1.5〜5μm、1.5〜4μm、1.8〜2.4μm、1.8〜4μm、または1.8〜3.9μmの細孔径を有する、第1の態様のコージエライト膜モノリスである。本開示の第9の態様は、コージエライトモノリス基材が、60%未満、50%未満、40〜50%または35〜60%の細孔率を有する、第1の態様のコージエライト膜モノリスである。本開示の追加の態様は、コージエライトモノリス基材が、40〜60%、40〜47%、43〜47%、43〜4%、または43%〜46%の細孔率を有する、第1の態様のコージエライト膜モノリスである。本開示の第10の態様は、コージエライト膜モノリスが、5〜20μm、または10〜15μmのピークから谷までの表面粗さを有する、第1の態様のコージエライト膜モノリスである。本開示の追加の態様は、コージエライトモノリス基材が、二乗平均平方根粗さ(rms)で測定して、1〜6、1〜5、1.5〜5または1.5〜2.5μmの表面粗さを有する、第1の態様のコージエライト膜モノリスである。本開示の第11の態様は、コージエライト膜モノリスが、5〜20μm、または10〜15μmのピークから谷までの表面粗さを有する、第1の態様のコージエライト膜モノリスである。本開示の追加の態様は、コージエライト膜モノリスが10〜12μmのピークから谷までの表面粗さを有する、第1の態様のコージエライト膜モノリスである。本開示の第12の態様は、コージエライト膜モノリスが、0.5〜1μmまたは0.5〜2μmのrms表面粗さを有する、第1の態様のコージエライト膜モノリスである。本開示の追加の態様は、コージエライト膜モノリスが、1μm未満または0.75μm〜1μmのrms表面粗さを有する、第1の態様のコージエライト膜モノリスである。本開示の第13の態様は、コージエライト膜モノリスが、0.5〜1μmまたは0.5〜1.5μmの粗さ平均(Ra)の表面粗さを有する、第1の態様のコージエライト膜モノリスである。本開示の追加の態様は、コージエライト膜モノリスが、1μm未満または0.75〜1μmの粗さ平均(Ra)の表面粗さを有する、第1の態様のコージエライト膜モノリスである。本開示の第14の態様は、コージエライトモノリス基材上のコージエライト膜に施されたポリマー層をさらに含む、第1の態様のコージエライト膜モノリスである。本開示の第15の態様は、コージエライトモノリス基材上のコージエライト膜に施されたポリマー層が、コージエライト膜モノリスを封止するか、または、真空を保持することができる、第14の態様のコージエライト膜モノリスである。追加の態様では、コージエライトモノリス基材の表面のコージエライト膜表面が亀裂していない、第1の態様のコージエライト膜モノリスが提供される。
【0050】
追加の態様では、本開示は、1〜3μmまたは1〜2.5μmの平均粒径を有するコージエライト粒子のスラリーをコージエライトモノリス基材に施すことを含む、コージエライト膜モノリスの製造方法を提供する。別の態様では、本開示は、1〜4μmまたは1〜3μmまたは1〜2.5μmの平均粒径を有するコージエライト粒子のスラリーをコージエライトモノリス基材に施すことを含む、コージエライト膜モノリスの製造方法を提供し、前記スラリーは、3%〜25%のコージエライト粒子または3%〜20%または3%〜15%のコージエライト粒子を含む。さらなる態様では、本開示は、1〜3μmまたは1〜2.5μmの平均粒径を有するコージエライト粒子のスラリーをコージエライトモノリスに施すことを含む、コージエライト膜モノリスの製造方法を提供し、前記コージエライト粒子のスラリーは水性または非水性である。さらなる態様では、本開示は、1〜3μmまたは1〜2.5μmの平均粒径を有するコージエライト粒子のスラリーをコージエライトモノリスに施すことを含む、コージエライト膜モノリスの製造方法を提供し、前記コージエライトモノリスは、コージエライト粒子のスラリーを施す前に、細孔充填材を用いて前処理される。さらなる態様では、本開示は、1〜3μmまたは1〜2.5μmの平均粒径を有するコージエライト粒子のスラリーをコージエライトモノリスに施すことを含むコージエライト膜モノリスの製造方法を提供し、前記コージエライト粒子は、摩擦粉砕およびジェットミル粉砕を含む2段階ミル粉砕法によって調製される。さらなる態様では、本開示は、1〜3μmの平均粒径を有するコージエライト粒子のスラリーをコージエライトモノリスに施すことを含むコージエライト膜モノリスの製造方法を提供し、前記コージエライト粒子は1〜2.5μmの平均粒径を有する。
【0051】
本発明の好ましい実施の形態について詳細な言及がなされ、その例が添付の図面に示されている。可能な場合はいつでも、同一または同様の部分の言及には、同一の参照番号が図面全体にわたって用いられる。
【実施例】
【0052】
実施例1:コージエライト膜材料の調製
実施例1(a):湿式粉砕
湿式粉砕のみを使用したこの比較例では、市販の製品(Aveka Inc.社(米国ミネソタ州ウッドベリ所在)製)のメジアン粒径d50は、粉砕前には11.6μmであり(比較例)、24時間および132時間の湿式粉砕後はそれぞれ2.9μmおよび1.8μmに縮小していた(図2参照)。しかしながら、さらに135時間湿式粉砕した後には、粒径は変化しなかった。得られた粒子を乾燥し、400メッシュのふるいに通した。粉砕したコージエライト材料は、乾燥した際に、凝集塊を形成した。図1は、湿式粉砕したコージエライト粒子を乾燥し、400メッシュのふるいに通した後の粒径分布を示している。図1は、湿式粉砕およびその後にふるいにかけることによって調製された10〜400μmの粒子の重要画分が、乾燥粉末中に存在したことを示している。
【0053】
図2は、湿式粉砕(ボールミル粉砕)時間の関数としてのコージエライト材料の粒径分布の変化を示すグラフである。2ポンド(907.2g)のコージエライト粉末を1.5ガロン(5.678L)のセラミックジャーに加えた。次に、1.0ガロン(3.785L)の脱イオン水および12ポンド(5.443kg)の3/8インチ(0.953cm)のイットリア安定化ジルコニア媒体を加えた。合計粉砕時間は267時間であった。24時間、132時間および267時間の粉砕後のコージエライトの粒径をモニタした。
【0054】
実施例1(b):ジェットミル粉砕
ジェットミル粉砕のみを使用したこの比較例では、11.6μmの平均粒径を有する市販のコージエライト材料(Aveka Inc.社(米国ミネソタ州ウッドベリ所在)製)をジェットミル粉砕した。得られた状態のままのコージエライトを、小さいスクリュー供給機を使用して1分あたり10gの速度でマイクロナイザー(Sturtavent Inc.社(米国マサチューセッツ州ハノーバー所在)から市販される)に連続的に供給した。得られたままの状態のコージエライトの粒径測定から次のデータを得た:d10=1.7μm、d50=10.6μm、d90=28.6μm。マイクロナイザーの粉砕圧力を126psi(868.8kPa)の圧縮空気に設定した。マイクロナイザーの渦ファインダによって、材料が粉砕チャンバ内に保持される時間量を決定した。材料が粉砕チャンバ内に保持される時間量を最大にして、粒子の衝突回数を最大にするため、渦ファインダを最大侵入(75%)に設定した。粉砕を達成した後、材料は粉砕チャンバの外の気流へと運ばれた。空気は布フィルターバッグを通じて排気され、粒子状物質は布フィルターバッグの真下のステンレス鋼の回収パンへと落下した。
【0055】
マイクロナイザーに通した後の比較用コージエライトのメジアン粒径(d50)の測定値は、4.5μmであった。次に、同一の粉砕条件を用いて2度目の通過をさせることによってこの材料を微粉化した。2度目の通過後、メジアン粒径の測定値は、3.5μmであった。次に、3度目の通過をさせるためにこの工程を繰り返したが、粒径はごくわずかしか縮小しなかった。図3は、この比較例における、ジェットミル粉砕の前(○)および後(△)の粒径分布を示すグラフである。ジェットミル粉砕法は、粒径を縮小し、粒径分布を狭めた。
【0056】
しかしながら、湿式粉砕のみを行った後の粒径(実施例1(a)の場合)またはジェットミル粉砕のみを行った後の粒径(実施例1(b)の場合)は、1μm以下の細孔径を有するコージエライト膜を製造するのに十分には小さくなかった。
【0057】
実施例1(c):摩擦粉砕
摩擦粉砕のみを使用するこの比較例では、摩擦粉砕に循環アトラクター(circulation attractor)を使用した。6ポンド(2.722kg)のコージエライト粉末および9ポンド(4.082kg)の脱イオン水を合わせてスラリーを形成した。スラリーを、0.65mmの外径(O.D.)を有する8.1ポンド(3.674kg)のイットリア安定化ジルコニアの丸剤を含む、摩擦粉砕機の粉砕チャンバ(アルミナで内張りされたモデルHML−1.5VSD、SPX Process Equipment社(米国ウィスコンシン州デラバン所在)から購入)に通して連続的に循環させた。コージエライトスラリーの粒径を、粉砕の間、30分ごとにモニタした。目的の粒径に達したときに粉砕を停止した。
【0058】
図4は、摩擦粉砕の間の粉砕時間の経時によるコージエライト粒子の粒径分布の変化を示すグラフである。ライン1は入手したときの粒径を示しており、ライン2は0.5時間の粉砕後の粒径を示しており、ライン3は1.5時間の粉砕後の粒径を示しており、ライン4は2.5時間の粉砕後の粒径を示しており、ライン5は3.5時間の粉砕後の粒径を示している。3.5時間粉砕した後、d50値は11.6μmから1.9μmに低下し、132時間の湿式粉砕によって達成された寸法と同様であった。
【0059】
実施例1(d):摩擦粉砕とその後のジェットミル粉砕
本明細書に記載の粉砕法の実施の形態では、摩擦粉砕とその後のジェットミル粉砕を含む2段階ミル粉砕法を用いた。実施例1(c)に従って摩擦粉砕を達成した。得られたスラリーをパイレックス(登録商標)の大きい焼き型に注ぎ、週末にかけてオーブンで乾燥させた。乾燥した塊を20メッシュのふるいに通し、すべての塊が20メッシュ(850μm)より小さいことを確実にした。次に、乾燥した塊をマイクロナイザーに通して砕き、実施例1(b)に従ってジェットミル粉砕した。20メッシュ以下の塊を、小さいスクリュー供給機を使用して1分あたり10gの速度でマイクロナイザーに連続的に供給した。マイクロナイザーの粉砕圧力を126psi(868.8kPa)の圧縮空気に設定した。マイクロナイザーの渦ファインダによって、材料が粉砕チャンバ内に保持される時間量を決定した。材料が粉砕チャンバ内に保持される時間量を最大にして、粒子の衝突回数を最大にするため、渦ファインダを最大侵入(75%)に設定した。粉砕を達成した後、材料は粉砕チャンバの外の気流へと運ばれた。空気は布フィルターバッグを通じて排気され、粒子状物質は布フィルターバッグの真下のステンレス鋼の回収パンへと落下した。
【0060】
図5は、3.5時間の摩擦粉砕後(●)およびジェットミル粉砕でさらに処理した(■)の粒子のd50を示すグラフである。図5は、ジェットミル粉砕によってさらに処理した後のコージエライト材料の粒径分布の変化を示している。ジェットミル粉砕後には一部の凝集塊が破砕され、粒径分布はさらに狭くなり、d50は1.4μmに低下したことがわかる。摩擦粉砕とその後のジェットミル粉砕の2段階ミル粉砕法を使用することにより、湿式粉砕、ジェットミル粉砕または摩擦粉砕のみを使用して達成される粒径と比較して、より小さい粒径が得られた。
【0061】
実施例2:粉砕したコージエライトからの支持されていないコージエライト膜の調製
実施例1(d)に従ってコージエライト粒子を調製した。11.6μmのメジアン粒径を有する市販の粉砕コージエライト材料を出発材料として使用した。次に、この出発材料を摩擦粉砕およびその後のジェットミル粉砕を使用する2段階ミル粉砕法で粉砕し、狭い粒径分布および1〜2μmのメジアン粒径を有する細かく粉砕したコージエライト材料を形成した。
【0062】
得られたコージエライトスラリー(実施例1(d)に従って調製した)をペトリ皿に注ぎ、続いて120℃で一晩乾燥することによって、支持されていないコージエライト膜を調製した。乾燥した膜コーティングをペトリ皿からはがし、1℃/分の加熱速度で、1150℃で2時間焼成した。図6は、Hgポロシメトリーで測定した、摩擦粉砕とその後のジェットミル粉砕の2段階ミル粉砕法によって調製された、支持されていないコージエライト膜の細孔径分布を示すグラフである。膜は、0.3μmのメジアン細孔径とともに、狭い細孔径分布を有することが図6から分かる。
【0063】
実施例3:多孔質のモノリスコージエライト支持体の調製
この実施例は、本発明の実施の形態に用いられるコージエライト支持体について記載する。この実施例に用いられるモノリスコージエライト支持体(バッチコード(B))は、断面積にわたり均一に分散された、平均直径1mmの249本の丸みを帯びたチャネルを備えた、1インチ(2.54cm)の外径および2インチ(5.08cm)の長さのコージエライトでできていた。バッチコード(C)の支持体は、水銀ポロシメトリーで測定して、1.8〜2.4μmのメジアン細孔径および43〜44%の細孔率を有していた。
【0064】
図7は、多孔質のモノリスコージエライト支持体の内部チャネルの表面形状のSEM画像を示している。支持体は、狭い細孔径分布およびごく限られた広表面の細孔を有していることが分かる。表面粗さの結果は、24.6μmの平均PV値、2.1μmのrms値、および1.5μmのRa値を示している。
【0065】
実施例4:スリップキャスティング
図8は、本明細書に記載される実施の形態におけるモノリス基材に無機膜を施すために用いられる装置400の実施の形態を示す図である。押出成形したモノリスコージエライト支持体100がコージエライト膜の堆積に用いられる。堆積前に、遊離した粒子または破片を除去するために、支持体は、脱イオン水で洗い流されるか、強制空気を吹きつけられる。洗浄された支持体は、120℃のオーブンで5〜24時間の乾燥に供される。
【0066】
一部の事例では、膜コーティングの前に、清潔にした支持体を前処理した。前処理工程は、いわゆる細孔充填材料を用いて支持体の細孔を塞栓することを含む。細孔充填材料の例は、その全体が本明細書に組み込まれる、Corning Incorporated社に譲渡された米国特許出願公開第2008/0299349号明細書に開示されている。細孔充填材料は、タンパク質粒子、スキムミルク中のタンパク質の凝集塊、デンプン粒子または合成ポリマー粒子など、その後の膜焼成工程の間に燃やし尽くすことができる幾つかの特定の有機材料である。
【0067】
図8に示すフローコーター400を使用して、前処理されていない、または前処理された支持体100上にコーティングを達成した。図8は、フローコーター400を示しており、ここで、コーティング溶液200は、真空下、支持体100を備えたフローコーター400に入る。コーティング溶液200は、図8に矢印で示されるように、支持体100を通って引き出され、支持体100のチャネルに膜が施される。その全体が本明細書に組み込まれる、Corning Incorporated社に譲渡された米国特許出願公開第2008/0237919号明細書に、同様のフローコーティング装置が記載されている。コーティングされた支持体を120℃で5時間乾燥し、次いで、0.5〜2℃/分の加熱速度(例えば、1℃/分)で、1100〜1200℃で0.5〜5時間(例えば1150℃で2時間)焼成した。スリップキャスティングの工程は、コーティング、乾燥および焼成を含んでいた。実施の形態では、所望のコーティング厚さを得るために、これらの工程のいずれかを繰り返してもよい。
【0068】
実施例5:膜の調製
実施例5(a):多孔質のモノリスコージエライト支持体上へのアルミナ膜の調製−比較例
実施例5(a)は比較例であり、多孔質のモノリスコージエライト支持体の実施の形態上へのアルミナ膜のコーティングについて記載する。この実施例に用いられる2つのモノリスコージエライト支持体(バッチコードBおよびバッチコードD)は、断面積にわたり均一に分散された平均直径1.8mmの125本の丸みを帯びたチャネルを備えた、1インチ(2.54cm)の外径および2インチ(5.08cm)の長さを有するコージエライトでできていた。バッチコード(B)の支持体は、水銀ポロシメトリーで測定して、10.0μmのメジアン細孔径および56.7%の細孔率を有している。バッチコード(D)の支持体は、水銀ポロシメトリーで測定して、11.4μmのメジアン細孔径および57.6%の細孔率を有している。チャネルに脱イオン水を通して支持体を洗い流し、120℃のオーブンで完全に乾燥させた。
【0069】
40重量%の固体濃度および8重量%のPEG(ポリエチレン・グリコール)濃度を有するアルミナスリップを調製した。アルミナAA−3(住友化学株式会社製)は、メジアン粒径2.7〜3.6μmの狭い粒径分布を有している。最初に、0.36gの4,5−ジヒドロキシ−1,3−ベンゼンジスルホン酸二ナトリウム(タイロン)を、114.7gの脱イオン水の入った500mlのプラスチックジャーに加え、そこに120gのアルミナ粉末を加えた。約1分間撹拌し、ジャーを氷浴内に設置し、10秒間オンおよび30秒間オフの間隔で30回、超音波処理した。次に、処理したスリップを、78.26gの20重量%PEGおよび2.70gの1%DC−B消泡剤のエマルション溶液(Dow−Corning社製)と混合した。15〜20時間のボールミル粉砕の後、スリップを、細かいふるいを通してフラスコに注ぎ、続いて真空ポンプを使用して脱気した。
【0070】
膜コーティングの前に、コージエライト支持体をGreat Value(商標)スキムミルクを用いて前処理した。支持体をテフロン(登録商標)テープで注意深く包み、細孔充填材料(スキムミルク)が支持体の外部と直接接触することを防いだ。20秒間浸漬し、支持体をスキムミルクから取り出した。振とう、またはN2の吹き込み、または回転によって、内部チャネルから過剰のスキムミルクを除去した。前処理した支持体を周囲条件で5時間、続いて60℃で10時間、乾燥させた。
【0071】
図8に示すフローコーターを使用して、バッチコード(D)およびバッチコード(B)の支持体のチャネルの内部にアルミナ膜を施した。浸漬時間は20秒であった。コーティングされた支持体を525rpmの速度で60秒間回転させ、チャネル内の過剰のアルミナスリップを除去し、120℃で2時間乾燥し、1℃/分の加熱速度で1380℃で2時間焼成した。
【0072】
得られたアルミナ膜を走査電子顕微鏡法(SEM)によって特徴付けした。図9AおよびBは、コージエライト無機基材に施したアルミナ無機膜の比較例の走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。図9(AおよびB)は、バッチコード(B)(図9A)およびバッチコード(D)(図9B)のコージエライト支持体上にコーティングされたアルミナ膜を示すSEM画像である。図9AおよびBは、バッチコード(B)およびバッチコード(D)のコージエライト支持体上にコーティングされたアルミナ膜が亀裂を生じたことを示している。亀裂は矢印で示されている。
【0073】
実施例5(b):コージエライト膜スリップの調製
コージエライトスリップは水性であり、粉砕したコージエライト粉末を脱イオン水、分散剤、ポリマー結合剤および消泡剤と混合し、10〜20時間ボールミル粉砕することによって調製した。スリップは水性の懸濁液に限定しなかった。実施の形態では、有機溶媒系のスリップも同様に膜コーティングに使用することができる。スリップ中の固形分は3〜25重量%の範囲であり、ポリマー結合剤の濃度は4重量%であった。
【0074】
43〜44%の細孔率および2.1μmのメジアン細孔径を有するモノリスコージエライト(バッチコード(C))上にコージエライトスラリー(実施例1(d)に従って調製された)をスリップキャスティングすることによって、支持されたコージエライト膜を調製した。30gの粉砕したコージエライト材料を475gの脱イオン水、0.09gのタイロンおよび119gの20%のPEG(ポリエチレン・グリコール、MW=20,000(Fluka社製))溶液と混合し、続いて一晩ボールミル粉砕することによって、5重量%の固形分を含むコージエライトスラリーを調製した。
【0075】
実施例5(b)(2):コージエライト膜スリップの調製の追加の実施例
追加の実施例として、5%の固形分を含む5%スリップの300gのバッチの調製法を以下に示す。最初に、0.05gのタイロン(4,5−ジヒドロキシ−1,3−ベンゼンジスルホン酸二ナトリウム、Fluka社製)を237.5gの脱イオン水を入れた500mlのプラスチックジャーに加え、次いで、そこに15.0gの粉砕コージエライト粉末を加えた。約1分間振とうし、ジャーを氷浴内に設置し、10秒間オンおよび30秒間オフの間隔で30回、超音波処理した。次に、処理したスリップを、59.4gの20重量%PEG(ポリエチレン・グリコール、MW=20,000、Fluka社製)および4.3gの1%DC−B消泡剤エマルション溶液(Dow−Corning社から市販されている)と混合した。15〜20時間のボールミル粉砕後、スリップを細かいふるいに通してフラスコ内に注ぎ、続いて真空ポンプを使用して脱気した。
【0076】
実施例5(c):モノリスコージエライト基材(前処理なし)上へのコージエライト膜のスリップキャスティング
図8に示す装置を使用して、本明細書に記載される実施の形態におけるモノリス基材にコージエライト膜を施した。押出成形したモノリスコージエライト支持体100をコージエライト膜の堆積用に使用した。堆積前に、支持体を脱イオン水で洗い流すか、または強制空気を吹き付けて、遊離した粒子または破片を除去した。洗浄した支持体を、120℃のオーブンで5〜24時間乾燥させた。コーティングされた支持体を120℃で5時間乾燥し、次いで、0.5〜2℃/分(例えば、1℃/分)の加熱速度で、1100〜1200℃で0.5〜5時間(例えば1150℃で2時間)焼成した。スリップキャスティングの工程は、コーティング、乾燥および焼成を含んでいた。実施の形態では、所望のコーティング厚さを得るために、これらの工程のいずれかを繰り返してもよい。
【0077】
例えば、チャネルに脱イオン水を通して支持体を洗い流し、120℃のオーブンで完全に乾燥させた。それぞれ、3%、5%および10%の固形分を含む、3種類のコージエライトスリップを調製した。実施例5(b)および5(b)(2)に記載された手順と同一の手順を使用して、異なる量のコージエライト材料、脱イオン水、ポリマー結合剤、分散剤および消泡剤を混合することによって、スリップを調製した。15〜20時間のボールミル粉砕後、スリップをふるいにかけ、真空引きした。支持体をフローコーターに取り付け、3%、5%および10%の異なる固形分を含むスリップを用いてコーティングした。コーティング後、コーティングされた支持体を取り外し、525rpmで1分間回転させた。次いで、それらを120℃で2時間乾燥し、1150℃で2時間焼成した。二重コーティングしたサンプルでは、焼成前に、1回目のコーティングと同じスリップを使用してそれらを再びコーティングした。
【0078】
図10は、モノリスコージエライト膜基材100のチャネル表面(図10A)および断面(図10B)のSEM画像を示している。図10Aは、モノリスコージエライト基材100の内部構造、チャネル壁上の膜コーティング101、および壁102を示している。図10Bは、基材上の膜101の断面画像を示している。膜101は、厚さが均一であり(図10Bの白矢印を参照)、約7μmの厚さを有していたことが分かる。
【0079】
図10は、実施例1(d)および実施例5(b)(1)または5(b)(2)に従った10%スリップを使用して、前処理されていないコージエライト支持体上に生成した二重コーティングしたコージエライト膜を示している(すなわち、コージエライトモノリス基材上にコージエライト膜が2回コーティングされた)。膜は亀裂していなかった。表面粗さを4点で測定し、その平均PV値は11.9μm、rms値は0.98μm、Ra値は0.77μmであった。Ra値は、支持体のみのものと比較して、大幅に低下した。
【0080】
実施例5(d):前処理したモノリスコージエライト基材上へのコージエライト膜のスリップキャスティング
この実施例では、市販のスキムミルクを前処理に使用した。浸漬コーティング、スリップキャスティングまたは他の方法によって、スキムミルク溶液をセラミック支持体の細孔内に吸収させた。前処理の間、支持体の開放チャネルの内表面のみがスキムミルク溶液と接触する。支持体を溶液と一定時間接触させた後、支持体を溶液から取り出した。前処理した支持体を、室温で24時間、または室温より高温だが120℃未満の温度で5〜20時間、または室温で5〜10時間乾燥し、次いで、それより高温だが120℃未満の温度で5〜10時間乾燥した。
【0081】
次に、実施例1(d)および実施例5(b)(1)または5(b)(2)に従ってコーティングを施した。コーティングされた支持体を120℃で5時間乾燥し、次いで、0.5〜2℃/分(例えば、1℃/分)の加熱速度で、1100〜1200℃で0.5〜5時間(例えば1150℃で2時間)焼成した。スリップキャスティングの工程は、コーティング、乾燥および焼成を含んでいた。実施の形態では、所望のコーティング厚さを得るために、これらの工程のいずれかを繰り返してもよい。例えば、スリップキャスティングの工程を2回繰り返す場合、それはダブルキャスティングまたは二重コーティングしたコージエライト膜と呼ぶことができる。スリップキャスティングの工程を3回繰り返す場合、それは、トリプルキャスティングまたは三重コーティングしたコージエライト膜などと呼ぶことができる。
【0082】
図11は、5%スリップ(図11A)、および10%スリップ(図11Bおよび11C)を使用して前処理したコージエライト基材100(バッチコード(B))上に、実施例1(d)および実施例5(b)(1)または5(b)(2)に従って生成したコージエライト膜モノリスの表面形状のSEM画像を示している。図11Aは、5%スリップを使用して、前処理したコージエライト支持体上に生成した二重コーティングしたコージエライト膜のSEM画像である。図11Bは、10%スリップを使用して、前処理したコージエライト支持体上に生成した二重コーティングしたコージエライト膜のSEM画像であり、膜の厚さが約10μmであることを示している。図11Cは、10%スリップを使用して生成した膜(図11Bに示す)の断面図である。図11Aは、モノリスコージエライト基材100の断面における内部構造、チャネル壁上の膜コーティング101、および壁102を示している。図11Bは、膜101の拡大画像を示している。膜101は均一であり、亀裂がないことが分かる。
【0083】
図12AおよびBは、上記実施例1(d)および実施例5(b)(1)または5(b)(2)に従って生成された、2.3インチ(5.84cm)×4インチ(10.16cm)の1mmチャネルのコージエライト支持体(バッチコードA)上にコーティングされた焼成コージエライト膜の追加の実施例のチャネルの表面Aおよび断面BのSEM画像を示している。Aの支持体は、水銀ポロシメトリーで測定して、46%の細孔率および3.9μmのメジアン細孔径を有していた。膜コーティングの前に支持体をスキムミルクで前処理した。10%スリップを使用してコージエライト膜をコーティングした。膜を乾燥し、1150℃で焼成した。膜は15μmの厚さを有し、亀裂していなかった。
【0084】
図13は、水銀ポロシメトリーで測定した、Aのコージエライト支持体(バッチコードA)上にコーティングされたコージエライト膜の実施の形態(図12に示す)の細孔径分布を示している。2つのピークが観測された。大きいピークはコージエライト支持体の細孔径を表し、小さいピークは0.3〜0.4μmの細孔径を有するコージエライト膜を示している。
【0085】
図14は、水銀ポロシメトリーで測定した、1インチ(2.54cm)×2インチ(5.08cm)の1mmチャネルのバッチコード(A)のコージエライト支持体上にコーティングされた別のコージエライト膜(2.2μmのメジアン粒径を有するコージエライト材料から調製した15%スリップを使用したこと以外は、図12に示されるものと同じ)の細孔径分布を示している。図14は、このコージエライト膜の細孔径が0.4〜0.6μmであったことを示している。
【0086】
図15は、それぞれ、0.3〜0.4μm(A)および0.4〜0.6μm(B)の細孔径を有する2つのコージエライト膜の表面形状を比較している。この図から、より粗いコージエライト粒子から0.4〜0.6μmの膜が作られ、最終的なコージエライト膜モノリス支持体に、より大きい細孔径を生じたことが分かる。
【0087】
実施例6:10μm細孔のコージエライト基材上のコージエライト膜
高浸透性の膜基材用の潜在的候補として、1層のコージエライトコーティングを、水銀ポロシメトリーで測定して、10.0μmのメジアン細孔径および56.7%の細孔率を有する、1インチ(2.54cm)×2インチ(5.08cm)のコージエライト基材上に生成した(バッチコードB)。基材は平均直径2mmの125本の丸みを帯びたチャネルを備えていた。
【0088】
2.5μmのメジアン粒径を有する15%コージエライトの固形分を含むコージエライトスリップを調製した。同一のコーターを使用して、コーティング2回および焼成1回を行った基材上に膜コーティングを施した。120℃で2時間の乾燥後、コーティングされた部品を1150℃で2時間焼成した。
【0089】
図16A(低倍率)およびB(高倍率)は、10.0μmのメジアン細孔径および56.7%の細孔率を有するコージエライト基材上に生成したコージエライトコーティングのチャネルの上方から見たSEM画像を示している。図示するように、滑らかで亀裂がないコージエライトコーティングの層が基材上に堆積された。図17は、Hgポロシメトリーで測定した、支持されているコージエライトコーティングの細孔径分布を示している。強いピークは、約10μmの細孔径を有する基材の細孔径分布を表している。弱いピークは、0.5μmのメジアン細孔径を有するコージエライトコーティングによるものである。
【0090】
さらなる表面形状の測定は、基材をコージエライトコーティングでコーティングした後に、表面の滑らかさの顕著な改善を示唆した。粗さRa値は4.1μmから1.3μmに低下し、rms値は5.422μmから1.900μmに低下し、PV値は40.477μmから11.918μmに低下した。
【0091】
実施例7:コージエライト膜コージエライト支持体上へのポリマーコーティング
コージエライト支持体上にコーティングされたコージエライト膜はまた、さまざまな用途のためのポリマー膜堆積用の基材としても使用することができる。例として、最初に、0.3〜0.4μmの細孔径を有するコージエライト膜を、1インチ(2.54cm)×2インチ(5.08cm)の1mmチャネルのコージエライト支持体(バッチコードA)上にコーティングした。次に、得られたコージエライトコーティングされた支持体上に、0.1%の界面活性剤SDSを含むDENO/D400エマルション溶液を3回コーティングした。DENO/D400は、1,2,7,8−ジエポキシオクタンであるDENO(Aldrich Chemical社製)、および、O,O’−ビス(2−アミノプロピル)ポリプロピレン・グリコールであるD400(Huntsman Petrochemical Corp社製)の2種類の反応物質を含む架橋ポリマーコーティング、または膜である。最適な架橋結合を達成するため、DENO:D400の分子の比は2:1である。乾燥および硬化後、得られたポリマー膜は0.6gの重量を有し、少なくとも10分間真空を保持していた。すなわち、ポリマー膜は封止を形成していた。
【0092】
本発明の精神および範囲から逸脱することなく、さまざまな変更およびバリエーションがなされうることは当業者にとって明白であろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図13
図14
図15A
図15B
図16A
図16B
図17