特許第6290988号(P6290988)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6290988
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】マイクロ構造体製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 37/00 20060101AFI20180226BHJP
【FI】
   A61M37/00 505
   A61M37/00 530
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-144857(P2016-144857)
(22)【出願日】2016年7月22日
(65)【公開番号】特開2017-104490(P2017-104490A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2016年7月22日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0174066
(32)【優先日】2015年12月8日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】516220457
【氏名又は名称】ラファス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】キム,ホン ケ
(72)【発明者】
【氏名】キム,チュン トン
(72)【発明者】
【氏名】ペ,チュン ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ヤン キ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ソ ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ト ヒョン
【審査官】 落合 弘之
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第2653186(EP,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0240201(US,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2014−0051648(KR,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1285085(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 37/00
B29L 31/00
A61F 13/00
B32B 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底層(34)が露出された状態で形成されたパッチ製造用シート(30)を提供する段階と、
前記パッチ製造用シート(30)を第1工程基板(50)および第2工程基板(60)上に提供する段階と、
前記第1工程基板(50)に提供されたパッチ製造用シート(30)に対してのみその底層(34)上の互いに離隔された複数の地点に粘性組成物をスポット状に配置するか、前記第1工程基板(50)に提供されたパッチ製造用シート(30)と前記第2工程基板(60)に提供されたパッチ製造用シート(30)すべてに対してその底層(34)上の互いに離隔された複数の地点に粘性組成物をスポット状に配置する段階と、
前記第2工程基板(60)に提供された前記パッチ製造用シート(30)を前記第1工程基板(50)に提供されたパッチ製造用シート(30)上にスポット状に配置された前記粘性組成物に接触させるか、前記第2工程基板(60)に提供されたパッチ製造用シート(30)上にスポット状に配置された前記粘性組成物を前記第1工程基板(50)に提供されたパッチ製造用シート(30)上にスポット状に配置された前記粘性組成物に接触させる段階と、
前記第1工程基板(50)と前記第2工程基板(60)の間の垂直方向距離を相対的に離隔させて前記粘性組成物を引っ張り、前記引っ張られた粘性組成物を凝固させる段階と、
前記凝固された粘性組成物を切断する段階と、を含み、
前記底層(34)が露出された状態で形成されたパッチ製造用シート(30)を提供する段階は、
支持層(31)と粘着剤層(32)と剥離フィルム(33)を含むパッチ製造用シート(30)を提供する段階と、
前記パッチ製造用シート(30)の前記剥離フィルム(3)の一部を除去して粘着剤層(32)を露出させる段階と、
前記露出された粘着剤層(32)に対応する大きさと形状で製造された底層(34)を前記露出された粘着剤層(32)に付着する段階と、を含むマイクロ構造体製造方法。
【請求項2】
前記底層(34)が付着されたパッチ製造用シート(30)を第1工程基板(50)および第2工程基板(60)に提供する段階では、シート保管基板40に保管された底層(34)が付着されたパッチ製造用シート(30)をロボットアームで真空吸着して第1工程基板(50)および第2工程基板(60)に移動させる、請求項1に記載のマイクロ構造体製造方法。
【請求項3】
前記底層(34)が付着されたパッチ製造用シート(30)には孔が形成され、
前記底層(34)が付着されたパッチ製造用シート(30)はその孔が前記シート保管基板40に垂直方向に形成されたバー(41)に貫通されて前記シート保管基板(40)上に積層式で保管され、
前記ロボットアームが前記底層(34)が付着されたパッチ製造用シート(30)を真空吸着した後で垂直移動する時、前記バー(41)が前記底層(34)が付着されたパッチ製造用シート(30)の垂直移動をガイドする、請求項2に記載のマイクロ構造体製造方法。
【請求項4】
粘着剤層(32)が露出された状態で形成されたパッチ製造用シート(30)を提供する段階と、
前記パッチ製造用シート(30)を第1工程基板(50)および第2工程基板(60)に提供する段階と、
前記第1工程基板(50)に提供されたパッチ製造用シート(30)に対してのみその粘着剤層(32)上の互いに離隔された複数の地点に粘性組成物をスポット状に配置するか、前記第1工程基板(50)に提供されたパッチ製造用シート(30)と前記第2工程基板(60)に提供されたパッチ製造用シート(30)すべてに対してその粘着剤層(32)上の互いに離隔された複数の地点に粘性組成物をスポット状に配置する段階と、
前記第2工程基板(60)に提供された前記パッチ製造用シート(30)を前記第1工程基板(50)に提供されたパッチ製造用シート(30)上にスポット状に配置された前記粘性組成物に接触させるか、前記第2工程基板(60)に提供されたパッチ製造用シート(30)上にスポット状に配置された前記粘性組成物を前記第1工程基板(50)に提供されたパッチ製造用シート(30)上にスポット状に配置された前記粘性組成物に接触させる段階と、
前記第1工程基板(50)と前記第2工程基板(60)の間の垂直方向距離を相対的に離隔させて前記粘性組成物を引っ張り、前記引っ張られた粘性組成物を凝固させる段階と、
前記凝固された粘性組成物を切断する段階と、を含み、
前記粘着剤層(32)を構成する粘着剤は親水性物質であり、前記粘着剤層(32)が露出された状態で形成されたパッチ製造用シート(30)を提供する段階は、
支持層(31)と粘着剤層(32)と剥離フィルム(33)を含むパッチ製造用シート(30)を提供する段階と、
前記パッチ製造用シート(30)の前記剥離フィルム(3)の一部を除去して粘着剤層(32)を露出させる段階と、を含む、マイクロ構造体製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は送風方式を利用してマイクロニードルのようなマイクロ構造体を製造する方法に関するものである。より具体的には、本発明は従来のマイクロ構造体製造方法でマイクロ構造体形成の基盤となる底層を形成する工程を改善した、送風方式を利用してマイクロニードルのようなマイクロ構造体を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
疾病の治療のための多くの薬物および生理活性物質などが開発されたが、薬物および生理活性物質を身体内に伝達することにおいて、生物学的障壁(biological barrier、例えば、皮膚、口腔粘膜および脳−血管障壁など)通過問題および薬物伝達の効率問題は依然として改善されるべき点として残っている。
【0003】
薬物および生理活性物質は一般的に錠剤剤形またはカプセル剤形で経口投与されるが、多くの薬物が胃腸管で消化または吸収されるか肝のメカニズムによって消失するなどの理由で、前記のような投与方法だけでは有効に伝達することができない。その上、いくつかの薬物は腸の粘膜を通過して有効に拡散することができない。また、患者の順応度も問題となる(例えば、特定間隔で薬物を服用しなければならなかったり、薬を服用することができない重い患者の場合など)。
【0004】
薬物および生理活性物質の伝達においてさらに他の一般的な技術は、従来の注射針(needle)を利用することである。この方法は。経口投与に比べて効果的である反面、注射部位での痛みおよび皮膚の局部的な損傷、出血および注射部位での疾病感染などを引き起こす問題点がある。
【0005】
前記経口投与および皮下注射の問題点を解決するために、パッチ剤を通じた経皮投与方法が利用される。パッチ剤を使用した経皮投与は副作用が少なく、患者の順応度が高く、薬物の血中濃度を一定に維持することが容易であるという長所を有する反面、皮膚を透過できる薬物が制限的であるため薬物伝達効率が低いという問題点があった。
【0006】
前記のような問題点を解決するために、マイクロニードル(microneedle)を含む様々のマイクロ構造体が開発された。現在まで開発されたマイクロニードルは主に生体内薬物伝達、採血、体内分析物質の検出などに使用されてきた。
【0007】
マイクロニードルは既存のニードルとは異なり、痛みのない皮膚貫通と外傷がないことを特徴とし、無痛皮膚貫通は最小針鋭性のための上端部(top)の直径が重要である。また、マイクロニードルは皮膚中の最も強力な障害物である10−20μmの角質層(stratum corneum)を貫通しなければならないため、十分な物理的硬度を有することが要求される。また、毛細血管まで到達することによって薬物伝達の効率性を高めるための適正長さも考慮されなければならない。
【0008】
従来、In−planeタイプのマイクロニードル(「Silicon−processed Microneedles」、Journal of microelectrochemical systems 8、1999)が提案された以後、多様な類型のマイクロニードルが開発された。エッチング方法を利用したout−of−planeタイプのソリッドマイクロニードル(アメリカ特許出願公開第2002138049号「Microneedle devices and methods of manufacture and use thereof」(特許文献1))製作方法は、50−100μm直径、500μmの長さでソリッドシリコンマイクロニードルを製作するが、無痛皮膚貫通の実現ができなく、目的部位に薬物および美容成分を伝達することが困難であった。
【0009】
一方、アメリカ、ジョージア大学のプラウスニツ(Prausnitz)は、ガラスをエッチングするかフォトリソグラフィ(photolithography)で鋳型を作って生分解性ポリマーマイクロニードルの製作方法を提案したことがある(Biodegradable polymer microneedles:Fabrication、mechanics and transdermal drug delivery、Journal of Controlled Release 104、2005、5166)。また、2006年にはフォトリソグラフィ方法を通じて製作した鋳型の終端にカプセル形態で製作された物質を搭載して生分解性ソリッドマイクロニードルを製作する方法が提案された(Polymer Microneedles for Controlled−Release Drug Delivery、Pharmaceutical Research 23、2006、1008)。この方法を使用すると、カプセル形態で製作可能な薬物の搭載が自由であるという長所があるものの、薬物搭載量が多くなるとマイクロニードルの硬度が弱くなるため多量の投薬が必要な薬物には適用に限界があった。
【0010】
2005年には吸収型マイクロニードルがナノデバイスアンドシステムズ社によって提案された(日本特許出願公開第2005154321号(特許文献2);および「Sugar Micro Needles as Transdermic Drug Delivery System」、Biomedical Microdevices 7、2005、185)。このような、吸収型マイクロニードルは、皮膚内に挿入されたマイクロニードルを除去せずに薬物伝達または美容に使用しようとするものである。この方法では、鋳型にマルトース(maltose)と薬物を混合した組成物を加え、これを凝固させてマイクロニードルを製作した。前記日本特許はマイクロニードルを吸収型に製作して薬物の経皮吸収を提案しているが、皮膚貫通時に痛みが伴われた。また、鋳型製作の技術的限界によって、痛みが伴われない適切な上端部直径を有しつつ効果的な薬物伝達に要求される水準の長さ、すなわち、mm以上の長さを有したマイクロニードルを製作することが不可能であった。
【0011】
2008年アメリカ、ジョージア大学のプラウスニツ(Prausnitz)で製作した生分解性マイクロニードルはポリジメチルシロキサン(Polydimethylsiloxane:PDMS)鋳型でポリビニルピロリドン(Polyvinylpyrrolidone:PVP)とメタクリル酸(Methacrylic acid:MAA)を混合した物質を使用して製作された(Minimally Invasive Protein Delivery with Rapidly Dissolving Polymer Microneedles、Advanced Materials 2008、1)。また、カルボキシルメチルセルロースをピラミッド構造の鋳型に入れてマイクロニードルを製作したりもした(Dissolving microneedles for transdermal drug delivery、Biomaterials 2007、1)。しかし、鋳型を使用して製作する方法は、マイクロニードルの直径と長さを調節するために複雑な過程を経て新しい鋳型とフレームを製作しなければならないという限界を有しており、鋳型内に物質を入れてマイクロニードルを製作する工程が複雑であり、長時間が要されるという短所が存在する。
【0012】
2008年には、日本のMukai et al.が登録したUS特許を通じてピン構造を使用してskin needleを製作する装備および方法について発表した(アメリカ特許登録US20080157421A1(特許文献3))。この方法は基板上のベースで加熱、粘性物の引っ張り力を利用してpinに引っ張る方法を使用している。この方法は、熱によって溶けるか粘性を有する物質をpin構造物を使用して引っ張る方法を使用したため、所望のパターンに合わせてpin構造を新しく製作しなければならない過程が必要となり、生産費用が増加し、加熱工程により熱に敏感な多様なバイオ医薬品(ホルモン、ワクチン、その他蛋白質医薬品など)の搭載が難しいという限界を克服できずにいる。
【0013】
一方、皮膚は表皮から角質層(<20μm)、外皮(epidermis)(<100μm)および真皮(dermis)(300〜2,500μm)で構成されている。したがって、特定皮膚層に痛みなしに薬物および生理活性物質を伝達するためには、マイクロニードル上端部直径を30μm以内、有効長さは200〜2,000μm、皮膚貫通のための十分な硬度を有するように製作することが薬物と皮膚美容成分の伝達に効果的である。また、生分解性ソリッドマイクロニードルを通じて薬物および生理活性物質などを伝達するためには、マイクロニードル製造工程の中で高熱処理、有機溶媒処理など薬物および生理活性物質の活性を破壊できる工程を排除することができなければならない。
【0014】
従来ソリッドマイクロニードルは、製造方法上の限界によってシリコン、ポリマー、金属、ガラスなどの素材に限定され、モールディング技術を通した製作方法を利用することによって、複雑で長期にわたる製作時間による薬物の変成、不充分な硬度、薬物の損失が発生するなどの短所を有していた。したがって、皮膚貫通時の無痛を実現できるほど細い直径と皮膚深くまで浸透できる十分な長さを有しながらも素材に特に制限なく十分な硬度を実現し、薬物の損失を最小化できるマイクロニードルの製造方法に対する要求は依然として続いている。
【0015】
前述したような従来技術の問題点を解決するために、本発明者は大韓民国特許出願第10−2010−0130169(発明の名称:マイクロ構造体製造方法(特許文献4))において、完全に新規のマイクロ構造体製造方法を提示したことがある。前記マイクロ構造体製造方法は概略的に図1に図示されたものと同じである。これを簡略に説明すると次のとおりである。
【0016】
まず、底層形成段階では、第1基板10に第1粘性物質11を塗布した後、これを乾燥(凝固)して底層を形成する。このとき、凝固を円滑にするために基板に向かって送風を実施することができる。ここで、第1基板10は平板状に形成され、その素材に特に制限はない。例えば、ポリマー、有機化学物質、金属、セラミック、半導体などの物質で基板が製造され得る。ただし、医薬用として用いられるマイクロニードルを製作する場合には、人体に無害な素材で第1基板10が製造されることが好ましい。第1基板10に第1粘性物質11を塗布して凝固させて底層を形成する段階(図1のaおよびb段階)の後、第2粘性物質12をスポッティングしてベース構造層を形成する。ベース構造層の形成においても底層の場合と同様に送風による凝固を実施することができる。ベース構造層はその上にスポッティングされるさらに他の粘性物質、すなわち第3粘性物質13が医薬品などの機能性物質であるとき、人体に入ることになる医薬品成分の量を精密に調節する目的で底層上にスポッティングされて形成される層であり、場合によっては省略が可能である(図1のcおよびd段階)。ベース構造層形成後、人体に浸透することになるマイクロニードルの材料となる第3粘性物質13がベース構造層上にスポッティングされる(図1のe段階)。ベース構造層が省略される場合に、第3粘性物質13は底層上にスポッティングされ得る。
【0017】
このような状態で、同様の方式で底層が形成された第2基板20が図1のf段階に図示されるように、その底層を下へ向けた状態で下降移動して第3粘性物質13に接触し、図1のgおよびh段階に図示されるように、上昇移動して第3粘性物質13を引っ張る。引っ張られた第3粘性物質13は送風などの方式で凝固する。その後、図1のI段階に図示されるように、第3粘性物質13が完全凝固された状態で引っ張られた第3粘性物質がカッティングされてマイクロニードル構造体が生成される。
【0018】
このような本発明者の既存のマイクロ構造体製造方法によれば、十分な硬度を実現しながらも機能性物質の損失を減らすことができ、前述した従来技術の問題を相当部分解決することが可能であった。
【0019】
ところで、前記したような本発明者の既存のマイクロ構造体製造方法においては、皮膚に粘着され得るパッチ形態の製品に底層上に形成されたマイクロニードル構造を付着させるために第1および第2基板10、20から底層を分離する過程で底層が損傷したり、またはマイクロニードル構造が損傷することが発生した。
【0020】
また、底層の厚さが一定に維持されない短所があった。底層の厚さが意図した厚さより厚糸、同一長さの引っ張りを実施した時、底層上にスポッティングされて引っ張り形成される第3粘性物質13からなるマイクロニードルの上下の長さが意図した上下の長さより短くなることがあり、この場合、マイクロニードルの上端部が角質層に到達できないため、薬物伝達効率性が減少するおそれがある。また、同時にマイクロニードル上端部の断面直径が大きくなり得るため(同じ容量の粘性物質がスポッティングされたが上下に延びる長さが減少して現れる現象)、皮膚付着時に痛みを誘発するおそれがある。反対に、底層の厚さが意図した厚さより薄いと同一長さの引っ張りを実施した時、マイクロニードルの断面直径が意図した断面直径より減少する可能性がある。そうすると、上下の長さが意図した上下の長さより長くなって物理的な硬度が減少することがあるため、皮膚透過に適合した直径と強度を有することができない可能性があり、結局は薬物伝達効率性が減少するおそれがある。
【0021】
また、底層の厚さは均一に維持されなければならない。底層の厚さが均一に形成されない場合、マイクロニードルの位置によりマイクロニードルの断面直径と上下の長さが異なり得るため、前記言及した通り、物理的硬度および上下の長さが均一でなくなるおそれがあり、結局は皮膚に付着した時、使用者に痛みを誘発したり、薬物伝達効率性が減少され得る。
【0022】
ところで、前述した本発明者のマイクロ構造体製造方法では、底層は、第1粘性物質11を第1基板10上に塗布した後凝固させて形成して、その後、直ちに底層上に第2および第3粘性物質12、13をスポッティングするため、底層の厚さが意図した厚さに形成されたかを検査する時間的な余裕なしに、すぐ次の段階が進行される。したがって、底層の厚さが意図した厚さからはずれた場合にも、すぐに不良判定をすることができず、底層上にマイクロニードル構造を形成する段階を経てから不良判定が可能な問題点があった。
【0023】
さらに、もう一つの問題点は工程時間が長くなるということである。これも底層の形成に関連される。通常、粘性物質を乾燥させて層を形成させるためには、少なくとも1時間〜数時間以上の時間が要されるため、底層の形成のための第1粘性物質11の塗布に引き続き行われる送風などによる凝固過程により、生産性が落ちる問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002138049号明細書
【特許文献2】特開2005−154321号公報
【特許文献3】米国特許第20080157421号明細書
【特許文献4】大韓民国特許出願第10−2010−0130169号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明は前述した従来技術の問題点を解決することを目的とする。
【0026】
より具体的には、本発明は底層を基板から分離した後、粘着剤が塗布されたパッチ支持層上に付着させる工程を別途遂行する必要がないマイクロ構造体製造方法を提供することを目的とする。
【0027】
また、本発明はマイクロニードルが形成される基盤となる底層の厚さを一定に形成することができ、その厚さの均一性の可否を工程進行前に検査できるようにするマイクロ構造体製造方法を提供することを目的とする。
【0028】
また、本発明はマイクロニードルが形成される基盤となる底層の製造のために要される工程時間を大幅に減少させることができるマイクロ構造体製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
前記目的を達成するための本発明の代表的な構成は次のとおりである。
【0030】
本発明の一実施例に係るマイクロ構造体製造方法は、上部に底層34が露出された状態で形成されたパッチ製造用シート30を提供する段階と;前記パッチ製造用シート30を第1工程基板50および第2工程基板60上に提供する段階と;前記第1工程基板50に提供されたパッチ製造用シート30または前記第1工程基板50および第2工程基板60すべてに提供されたパッチ製造用シート30の底層34上の互いに離隔された複数の地点に粘性組成物をスポット状に配置する段階と;第2工程基板60に提供された前記パッチ製造用シート30または第2工程基板60に提供されたパッチ製造用シート30上にスポット状に配置された前記粘性組成物を第1工程基板50に提供されたパッチ製造用シート30上にスポット状に配置された前記粘性組成物に接触させる段階と;前記第1工程基板50と前記第2工程基板60の間の垂直方向距離を相対的に離隔させて前記粘性組成物を引っ張り、前記引っ張られた粘性組成物を凝固させる段階と;前記凝固された粘性組成物を切断する段階を含む。
【0031】
前述したような段階で構成される本発明に係るマイクロ構造体製造方法において、前記上部に底層34が露出された状態で形成されたパッチ製造用シート30を提供する段階は、支持層31と粘着剤層32と剥離フィルム33を含むパッチ製造用シート30を提供する段階と;前記パッチ製造用シート30の前記剥離フィルム33の一部を除去して粘着剤層32を露出させる段階と;前記露出された粘着剤層32に対応する大きさと形状で製造された底層34を前記露出された粘着剤層32に付着する段階を含む。
【0032】
一方、前記底層34が付着されたパッチ製造用シート30を第1工程基板50および第2工程基板60に提供する段階では、シート保管基板40に保管された底層34が付着されたパッチ製造用シート30をロボットアームで真空吸着して第1工程基板50および第2工程基板60に移動させることができる。
【0033】
保管状態であるパッチ製造用シート30をロボットアームで真空吸着して基板上に移動させる構成についてより具体的に詳察すると、前記底層34が付着されたパッチ製造用シート30には孔が形成され、前記底層34が付着されたパッチ製造用シート30はその孔が前記シート保管基板40に垂直方向に形成されたバー41に貫通されて前記シート保管基板40上に積層式で保管され得る。このような保管状態で前記ロボットアームが前記底層34が付着されたパッチ製造用シート30を真空吸着した後で垂直移動する時、前記バー41が前記底層34が付着されたパッチ製造用シート30の垂直移動をガイドすると、安全かつ精密にパッチ製造用シート30を把持して移動させることが可能である。
【0034】
本発明の他の実施例に係るマイクロ構造体製造方法は、上部に粘着剤層32が露出された状態で形成された一つ以上のパッチ製造用シート30を提供する段階と;前記パッチ製造用シート30を第1工程基板50および第2工程基板60に提供する段階と;前記第1工程基板50および/または第2工程基板60に提供された前記パッチ製造用シート30の粘着剤層32上の互いに離隔された複数の地点に粘性組成物をスポット状に配置する段階と;第2工程基板60に提供された前記パッチ製造用シート30または第2工程基板60に提供された前記パッチ製造用シート30の粘着剤層32上にスポット状に配置された前記粘性組成物を第1工程基板50上にスポット状に配置された前記粘性組成物に接触させる段階と;前記第2工程基板60を前記第1工程基板50に対して相対移動させて前記粘性組成物を引っ張り、前記引っ張られた粘性組成物を凝固させる段階と;前記凝固された粘性組成物を切断する段階を含む。ここで、重要なことは、前記粘着剤層32を構成する粘着剤が親水性物質でなければならないということである。
【0035】
本実施例の段階のうち、前記上部に粘着剤層32が露出された状態で複数個形成されたパッチ製造用シート30を提供する段階は、支持層31と粘着剤層32と剥離フィルム33を含むパッチ製造用シート30を提供する段階と;前記パッチ製造用シート30の剥離フィルム33の一部を除去して粘着剤層32を露出させる段階を含む。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、背景技術の部分に説明した従来技術の問題点が解決される。
【0037】
より具体的には、本発明によれば底層を基板から分離した後、粘着剤が形成されて皮膚に付着されるパッチに付着させる工程を別途遂行する必要がないマイクロ構造体製造方法が提供される。
【0038】
また、本発明によれば、マイクロニードルが形成される基盤となる底層の厚さを一定に形成することができ、その厚さの均一性の可否を工程進行前に検査できるようにするマイクロ構造体製造方法が提供される。
【0039】
また、本発明によれば、マイクロニードルが形成される基盤となる底層の製造のために要される工程時間を大幅に減少させることができるマイクロ構造体製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明者が開発した従来技術のマイクロ構造体製造工程を図示する図面である。
図2】本発明の一実施例に係るパッチ製造用シートの製造工程を図示する図面である。
図3】本発明の一実施例に係るパッチ製造用シートの製造工程のうち底層をパッチ製造用シートの露出された粘着剤層に集団的に付着する方式を説明する図面である。
図4】本発明の一実施例により製造されたパッチ製造用シートがマイクロ構造体製造工程に投入される前の状態で保管されて前記製造工程に投入される方式を説明する図面である。
図5】本発明の一実施例に係るパッチ製造用シート上にマイクロ構造体が形成される工程を図示する図面である。
図6】本発明の他の実施例に係るパッチ製造用シートの製造工程を図示する図面である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
後述する本発明に対する詳細な説明は、本発明が実施され得る特定実施例を例示として図示する添付図面を参照する。このような実施例は当業者が本発明を実施できるほど充分に詳細に説明される。本発明の多様な実施例は互いに異なるが相互排他的である必要はないということが理解されるべきである。例えば、本明細書に記載されている特定形状、構造および特性は本発明の精神と範囲を逸脱せず一実施例から他の実施例に変更されて具現され得る。また、それぞれの実施例内の個別構成要素の位置または配置も本発明の精神と範囲を逸脱せず変更され得ることが理解されるべきである。したがって、後述する詳細な説明は限定的な意味として用いられるもではなく、本発明の範囲は特許請求の範囲の請求項が請求する範囲およびそれと均等なすべての範囲を包括するものとして理解されるべきである。図面において類似の参照符号は多様な側面にわたって同一または類似の構成要素を表わす。
【0042】
以下では、本発明が属する技術分野で通常の知識を有した者が本発明を容易に実施できるようにするために、本発明の好ましい実施例に関して添付された図面を参照して詳細に説明することにする。
【0043】
図2は本発明に係る方法で用いられるパッチ製造用シート30製造工程を図示する。
【0044】
図2にはパッチ製造用シート30を上から見た様子と断面図が図示されている。パッチ製造用シート30の構成要素として支持層31が提供される。支持層31は薬物または生理活性物質が透過できなく、透湿性と伸縮性が優秀な材質で構成され、例えば、紙、不織布、織布、天然または合成ゴム、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートグリコール、エチレンビニルアルコール、ポリエチレン、ポリエステルおよびナイロンの中から選択される一つ以上の素材で構成されるフィルムが使用され得る。
【0045】
支持層31の表面には粘着剤層32が位置する。粘着剤層32に用いられる粘着剤は医薬的に使用が可能な減圧性粘着性成分で構成され、水系または有機溶媒物質が使用され得る。このような粘着性高分子物質としては、アクリレート重合体、ビニルアセテート−アクリレート共重合体などのアクリル系樹脂、ポリイソブチレン、ポリスチレンまたはポリブタジエン共重合体樹脂、またはロジン系樹脂、ポリテルペン樹脂、石油系樹脂、テルペンフェノール樹脂、シリコン重合体、天然または合成ゴム類またはこれらの混合物が使用され得る。前記粘着性高分子物質は単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0046】
粘着剤層32の表面には剥離フィルム33が形成される。図2に図示された通り、概略的に二重楕円形(このような形状に制限されるものではない)の切断線が剥離フィルム33に形成されたまま剥離フィルム33が粘着剤層32に付着されていると、切断線が形成されて残りの部分と分離され得る剥離フィルム33の部分、例えば、二重楕円形のうち中の小さい楕円の部分を容易に分離可能である。
【0047】
上に説明したような構造のパッチ製造用シート30を提供することを製造工程の最初の段階とすれば、あらかじめ形成された剥離フィルム33の切断線を利用して剥離フィルム33の中央部を除去することが2番目の段階であり、これは図2の左側から2番目の図に該当する。剥離フィルム33の中央部が除去されるとその部位で粘着剤層32が露出された状態となる。
【0048】
次に、露出された粘着剤層32に底層34が覆われる。底層34という用語は、マイクロ構造体が形成される底という意味で用いられる。底層34は粘着剤層32の粘着剤と接触して堅固な結合状態を維持する。底層34はその上にマイクロ構造体が形成されるように親水性表面を有する任意のフィルムであり得る。好ましくは、底層34は一定かつ均一な厚さを有して表面上に親水性基を有する任意のフィルムであり得る。さらに好ましくは、底層34は曲面部位に密着できるように適正水準の伸縮性を有する親水性高分子重合体フィルムであり得る。
【0049】
前述した従来技術と同様に底層34がマイクロ構造体形成工程で親水性粘性物質の塗布と引き続く乾燥工程によって形成されずに、マイクロ構造体形成工程と別途の工程であらかじめ製造されてパッチ製造用シート30に付着され得るという点が本発明の特徴中の一つである。
【0050】
本発明に係る方法において、底層34が個別的にパッチ製造用シート30に形成された複数個の露出された粘着剤層32に結合されるように実施されることもあり得るが、工程に要される時間を短縮するために、また、結合の正確性を高めるために図3に図示された方法によって底層34と露出された粘着剤層32の結合がなされることもあり得る。
【0051】
図3で底層34はパッチ製造用シート30と同じ大きさで製作されたシート上に形成されている。底層34の形状と大きさは露出された粘着剤層32の形状と大きさに対応し、シート上の位置もパッチ製造用シート30の露出された粘着剤層32に対応する。このような状態で底層34が形成されたシートを準備した後、このようなシートを上下反転させて底層34が下を向く状態で露出された粘着剤層32を有するパッチ製造用シート30に接触させる。前述したような底層34の形状、大きさ、位置の対応状態が正確になされた状況で底層34が形成されたシートをパッチ製造用シート30に接触させると、各底層34は対応する露出された粘着剤層32に結合され、このような結合状態は粘着剤層32の粘着結合力によって堅固に維持される。その後、底層34が形成されたシートをパッチ製造用シート30から接触解除すると複数個の底層34が一度に正確にパッチ製造用シート30に形成されたすべての露出された粘着剤層32に結合され得る。
【0052】
一方、前述した方式で底層34が複数個形成されたシートを反転させて露出された粘着剤層32を有するパッチ製造用シート30に接触させた後、加圧装置を使用して前記底層34が複数個形成されたシートの反転されたシート面(底層が形成されている面の反対側面)を加圧させることによって接触状態をより確実にさせることもできる。前記加圧装置は例えば、ローラー型または平板型であり得る。このような加圧方式を用いると確実な接触状態形成が保障できるだけでなく、均一な厚さで形成されることが重要な底層34を全体的に一定の圧力で加圧することによって、マイクロ構造体製造工程に投入される前にパッチ製造用シート30に結合される底層34の厚さに存在する可能性のある非均一性を一定程度除去する機能も合わせて遂行する。
【0053】
底層34は、前述したような本発明に係るパッチ製造用シート30の製造工程に提供される以前に、その厚さなどがあらかじめ決定された基準に符合するように製造されたかの可否を検査する品質管理(QC)過程を経ることができる。これによって、マイクロ構造体形成の基盤となる底層の厚さがあらかじめ決定された基準を満足させないことによって発生され得るマイクロ構造体の欠陥を事前に予防することができる。
【0054】
底層34が結合されて形成されたパッチ製造用シート30は、複数個製造されて一つずつ順次敵にまたは複数個が同時にマイクロ構造体形成工程に提供され得る。例えば、図4に図示したような状態でマイクロ構造体形成工程に提供され得る。図4を参照すれば、複数個のパッチが形成されているパッチ製造用シート30の上下にそれぞれ一つずつの孔が提供され、これをそれぞれ貫通するバー41によって正確に位置設定された状態でシート保管基板40上に複数個が積層された状態でマイクロ構造体形成工程に提供され得る。
【0055】
このような状態でマイクロ構造体形成工程に提供されると、マイクロ構造体形成工程の最初の段階として例えば、真空吸着部42を含むロボットアームが下降して保管されたパッチ製造用シート30の上部面を真空吸着して上昇する時に、個別パッチ製造用シート30は上下部に形成された孔によってバー41に沿ってガイドされて上昇移動しながら保管された状態から離れることになる。前記ロボットアームは上下左右の移動を行わせるアクチュエータ43が制御部によって制御されながらマイクロ構造体形成工程の基板が設定された位置に正確にパッチ製造用シート30を伝達することが可能である。一方、前述した通り、パッチ製造用シート30が複数個積層された状態で工程に提供されることの他にも多様な形態の工程提供方式が適用可能であることが理解されるべきである。例えば、パッチ製造用シート30が単層でシート保管基板40上に保管された状態で工程に提供されるように実施されることもある。
【0056】
本発明に係るパッチ製造用シート30上のマイクロ構造体形成工程が図5に図示される。
【0057】
まず、シート保管基板40上に保管されて底層34が結合された状態のパッチ製造用シート30にロボットアームが接近して真空吸着部を利用してパッチ製造用シート30を把持する(a段階)。
【0058】
その次に、ロボットアームはマイクロ構造体形成工程が進行される位置に移動し、下降して第1工程基板50上に底層34が結合された状態のパッチ製造用シート30を積載させる(b段階)。
【0059】
その次に、ベース構造層形成段階が進行される。ベース構造層は粘性物質と底層34が結合された状態のパッチ製造用シート30上にスポッティングされることによって形成される。本実施例に係るマイクロニードルのように医学的用途で用いられるマイクロ構造体を製造する場合、粘性物質は「生体適合性または生分解性物質」であることが好ましい。ここで、「生体適合性物質」とは、人体に毒性がなく、化学的に不活性の物質を意味する。そして、「生分解性物質」は、生体内で体液、酵素または微生物などによって分解され得る物質を意味する。
【0060】
また、本実施例によれば粘性物質は適合した溶媒に溶解されて粘性を示すことが好ましい。すなわち、粘性を示す物質中には熱によって溶融された状態で粘性を示すものがあるが、溶媒に溶解されて粘性を示すこともあり得る。
【0061】
粘性物質としては、ヒアルロン酸とその塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、セルロースポリマー(cellulose polymer)、デキストラン、ゼラチン、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリソルベート、プロピレングリコール、ポビドン、カルボマー(carbomer)、ガッチガム(gum ghatti)、グアガム、グルコマンナン、グルコサミン、ダンマルガム(dammer resin)、レンネットカゼイン(rennet casein)、ローカストビーンガム(locust bean gum)、微小繊維状セルロース(microfibrillated cellulose)、サイリウムシードガム(psyllium seed gum)、ザンサンガム、アラビノガラクタン(arabino galactan)、アラビアガム、アルギン酸、ゼラチン、ジェランガム(gellan gum)、カラギナン、カラヤガム(karaya gum)、カードラン(curdlan)、キトサン、キチン、タラガム(tara gum)、タマリンドガム(tamarind gum)、トラガカントガム(tragacanth gum)、ファーセルラン(furcelleran)、ペクチン(pectin)またはプルラン(pullulan)などがある。
【0062】
より好ましくは、本発明で利用される粘性物質はヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、アルキルセルロースおよびカルボキシルメチルセルロースであり、最も好ましくはカルボキシルメチルセルロースである。
【0063】
また、前述した粘性物質を溶解する溶媒は特に制限されず、水、炭素数1−4の無水または含水低級アルコール、アセトン、エチルアセテート、クロロホルム、1、3−ブチレングリコール、ヘキサン、ジエチルエーテルまたはブチルアセテートを溶媒として利用することができ、好ましくは水または低級アルコールであり、最も好ましくは水である。
【0064】
ベース構造層形成段階では図5の(i)および(d)段階でのように、底層34を含んで形成されるパッチ製造用シート30の上部に露出された底層34上の互いに離隔された地点にベース構造層35を形成する粘性物質をスポッティングし、これを凝固させてベース構造層35を形成する。このとき、粘性物質の凝固を円滑にするために送風を実施することができる。図5の(d)段階で矢印表示は送風が実施されることを表現したものである。
【0065】
ベース構造層35形成のために用いられる粘性物質の量が多くなるほどベース構造層35の直径は広くなる。そして、後述するように、ベース構造層35の上に機能性物質を含む粘性組成物を多くスポッティングするためには、ベース構造層35の直径を大きく形成することが好ましい。なぜなら、ベース構造層35の直径が小さい状態で多い量の粘性組成物をスポッティングすると、粘性組成物がベース構造層35外にあふれてしまい、これは生体内に伝達しようとする機能性物質の損失をもたらすためである。一方、粘性物質の凝固を通じてベース構造層35を形成した後その上に再びベース構造層35の形成のための粘性物質をスポッティングして凝固する方法を繰り返すことによって、ベース構造層35を所望の高さだけ形成することもできる。
【0066】
図5の実施例ではベース構造層35を形成し、その上に粘性組成物をスポッティングして機能性物質層36を形成するようにしているが、場合によっては二重にスポッティングを実施してベース構造層35と機能性物質層36の二つの層を底層34上に形成せずに機能性物質層36の単一層を底層34上に形成するようにする形態の実施も可能である。
【0067】
粘性組成物中に薬物が混合される場合、ベース構造層35形成段階を省略し、機能性物質層36だけでマイクロニードルを形成すると、薬物がマイクロニードル全体に均一に分布される。この場合、マイクロニードルの下端に含有された薬物が皮膚に吸収されるひまもなく底層34上に残留することになることによって薬物投与量が減少するおそれがあるため、薬物の吸収率を最大化させるためにベース構造層35を形成させることが好ましい。反面、粘性組成物に薬物が含有されないかまたは投与量を統制すべき必要性が相対的に低い場合、工程の簡素化および効率性増大のためにベース構造層35形成段階を省略することができる。
【0068】
図5の(e)段階ではベース構造層35上に機能性物質を含む粘性組成物をスポッティングして機能性物質層36を形成する。ここで、粘性組成物は前述した粘性物質と機能性物質を混合して作ることができる。特に、本実施例のように、マイクロニードルの場合には粘性組成物が皮膚内に浸透するため、生体適合性および生分解性が優秀な粘性物質が用いられることが好ましい。ここで、機能性物質とは、皮膚内に浸透して薬理効果のような特定機能を行う物質、例えば、化学薬物、蛋白質医薬、ペプチド医薬、遺伝子治療用核酸分子およびナノ粒子美容成分(例えば、シワ改善剤、皮膚老化抑制剤および皮膚美白剤)などを含む。
【0069】
図5の(f)段階では第2工程基板60とここに積載されたパッチ製造用シート30が用いられる。第2工程基板60に積載されたパッチ製造用シート30にも同様の方式で底層34があらかじめ形成されている。
【0070】
第2工程基板60上のパッチ製造用シート30の積載も第1工程基板50上へのパッチ製造用シート30の積載と同様にロボットアームによってなすことができる。ロボットアームはシート保管基板40上に一つずつまたは複数個が積層式で保管されたパッチ製造用シート30を吸着支持して第2工程基板60上のあらかじめ決定された正確な位置に積載させることができる。図5の(f)段階に図示された通り、第2工程基板60とその上に積載されたパッチ製造用シート30は上下反転されて第1工程基板50およびその上に積載されたパッチ製造用シート30上に移動する。このような上下反転時にもパッチ製造用シート30が積載された位置が変更されないようにするために、第2工程基板60は真空吸着構造などの構造を含むことができる。真空吸着構造の他にもパッチ製造用シート30の積載された位置を維持できるすべての構造が本発明の範囲に含まれるということが理解されるべきである。
【0071】
図5の(g)段階で第2工程基板60が下降して第2工程基板60に積載されたパッチ製造用シート30が第1工程基板50上にスポッティングされた機能性物質層36に接触する。より正確には、第2工程基板60に積載されたパッチ製造用シート30の底層34が第1工程基板50に積載されたパッチ製造用シート30の底層34上に形成されたベース構造層35をベースにする機能性物質層36に接触する。一方、本発明では第2工程基板60に積載されたパッチ製造用シート30上にも第1工程基板50に積載されたパッチ製造用シート30と同様に粘性組成物がスポッティングされるように実施可能である。この場合、第2工程基板60の反転に続く下降がなされると、第2工程基板60に提供されたパッチ製造用シート30上にスポッティングされた粘性組成物が第1工程基板50に提供されたパッチ製造用シート30上にスポッティングされた粘性組成物、すなわち機能性物質層36に接触することになる。
【0072】
図5の(g)および(h)段階に該当する引っ張りおよび凝固段階では、第2工程基板60を第1工程基板50に対して相対的に移動(または第1工程基板を第2工程基板に対して移動)させて機能性物質層36を引っ張り、この状態で凝固させる。引っ張りおよび凝固の条件は本発明が先行技術として言及する大韓民国特許出願第10−2010−0130169(発明の名称:マイクロ構造体製造方法)の明細書に詳しく説明されており、本発明の相応する段階での引っ張りおよび凝固の実施は前記大韓民国特許出願の明細書に記載された条件により実施され得る。
【0073】
機能性物質層36の引っ張りおよび完全凝固の後、図5の(i)段階に図示されるように、機能性物質層36の直径が最小となる部分が切断される。このような切断は機能性物質層36が凝固された状態で第1工程基板50と第2工程基板60の相対的移動をさらに進行させることによってなされる。凝固された状態での追加引っ張りによって機能性物質層36の最小直径部位は良好に切断され得ることが本発明者の繰返し実験結果明らかになった。これによって、第1工程基板50上に積載されたパッチ製造用シート30と第2工程基板60上に積載されたパッチ製造用シート30すべてにマイクロニードル構造体が形成される。
【0074】
図5と関連して説明した工程が完了して第1工程基板50および第2工程基板60それぞれからパッチ製造用シート30を除去すると、マイクロ構造体(マイクロニードル)が形成されたパッチ製造用シート30が提供され得る。
【0075】
このようなマイクロ構造体が形成されたパッチ製造用シート30はシート上に形成されたマイクロ構造体を保護するためのパッケージング処理を行った後すぐに商品化され得る。
【0076】
従来技術では基板から底層を分離する過程で底層が非常に薄く、構造的に軟弱であるという理由によって底層自体の破損または底層上に形成されたマイクロ構造体の破損がしばしば発生した。反面、本発明に係る方法では今後パッチ製品として用いられる時にパッチ製品の本体をなすことになる支持層31がパッチ製造用シート30上に複数個形成され、その上に底層34があらかじめ結合された状態でマイクロ構造体製造工程に提供され、その堅固な基盤上にマイクロ構造体が形成されるため、マイクロ構造体形成工程が完了した後、基板からの分離過程で底層34やマイクロ構造体が破損される危険は殆どない。
【0077】
次に、図6と関連し、本発明の他の実施例が説明される。図6の実施例は底層34が別途形成されないという側面で前述した実施例と差がある。
【0078】
前述した通り、底層34はマイクロ構造体が形成される底としての機能を遂行する構成要素であり、その上にマイクロ構造体が形成されるように親水性表面を有する任意のフィルムであり得る。また、このような底層34は前述した実施例でパッチ製造用シート30の構成要素である剥離フィルム33に形成された切断線に沿って剥離フィルム33の中央部を除去し、これによって露出された粘着剤層32上に付着された。
【0079】
本実施例では底層34を別途形成しない代わりに、粘着剤層32をなす粘着物質をその上にマイクロ構造体の形成を可能にする親水性物質で構成することに特徴がある。
【0080】
図2の実施例との対比のために図6には前述した図2と関連された実施例が上部に、本実施例が下部に図示されている。
【0081】
図2の実施例でパッチ製造用シート30の製造段階が、1段階のシートの提供、2段階の剥離フィルム33中央部の除去および3段階の底層34の結合からなっていることに反して、図6の実施例ではパッチ製造用シート30の製造段階が1段階のシートの提供、2段階の剥離フィルム33中央部の除去のみからなっている。
【0082】
このように、粘着剤層32をなす粘着物質をその上にマイクロ構造体の形成を可能にする親水性物質で構成する場合、パッチ製造用シート30の製造段階が単純化される利点がある。
【0083】
本実施例で使用され得る粘着剤層32をなす親水性粘着物質は親水性基を有する粘着性高分子物質である。好ましくは、本実施例で使用され得る粘着剤層32をなす親水性粘着物質は医薬的に使用が可能であり、圧力感受性を有する親水性粘着性高分子物質であり得る。例えば、アクリレート重合体、ビニルアセテート−アクリレート共重合体などのアクリル系樹脂を含有する市販製品が使用され得る。
【0084】
このように底層34を別途形成しないパッチ製造用シート30はベース構造層35を形成した後、その上にマイクロニードルとなる機能性物質を積層してベース構造層35と機能性物質層36の二重層で実施することができ、機能的にベース構造層35が省略されるように実施することもできる。
【符号の説明】
【0085】
30:パッチ製造用シート
31:支持層
32:粘着剤層
33:剥離フィルム
34:底層
35:ベース構造層
36:機能性物質層
40:シート保管基板
41:バー
42:真空吸着部
43:アクチュエータ
50:第1工程基板
60:第2工程基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6