【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、セリングリセロリン脂質(PS)の混合物を含有する調製物、及び発作(例えばてんかん性発作)の治療及び/又は予防方法を開示する。任意で、好ましくは、当該PS混合物は、PSが結合したエイコサペンタエン酸(EPA)及びPSが結合したドコサヘキサエン酸(DHA)を含有する。
【0022】
好ましくは、(a)PSに結合した全脂肪酸におけるPSに結合したEPAのパーセンテージと、(b)PSに結合した全脂肪酸におけるPSに結合したDHAのパーセンテージとの間の比率((a)/(b))は、約0.2〜約5、又は0.4〜約5、より好ましくは当該比率は1を上回り、尚もより好ましくは当該比率は約1〜約4、又は約1.1〜約3、そして最も好ましくは約1.4〜約3である。
【0023】
好ましくは、前記調製物中に存在するPSのパーセンテージ(w/w)は、10%、20%、又は30%を上回り、より好ましくは35%又は40%を上回り、尚もより好ましくは、45%又は50%を上回り、最も好ましくは、55%を上回る。好ましくは、前記調製物中の全リン脂質に対するPSのパーセンテージ(w/w)は、20%、30%、又は35%を上回り、より好ましくは40%又は45%であり、より好ましくは50%又は55%を上回り、尚もより好ましくは、60%を上回り、最も好ましくは、65%を上回る。好ましくは、前記調製物は、更に、ホスファチジン酸及びリゾホスファチジン酸を含有し、前記調製物中のホスファチジン酸及びリゾホスファチジン酸の全重量に対する、前記調製物中のPSの重量比は、1:1〜10:1、より好ましくは1.5:1〜8:1、尚もより好ましくは2:1〜5:1、そして最も好ましくは2.5:1〜4:1である。
【0024】
好ましくは、前記調製物中のPSに結合した全脂肪酸に対する、前記調製物中のPSに結合したエイコサペンタエン酸(EPA)、パルミチン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)、オレイン酸、及びリノール酸の各脂肪酸のパーセンテージは、EPAのパーセンテージがパルミチン酸のパーセンテージ以上であり、パルミチン酸のパーセンテージがDHAのパーセンテージを上回り、DHAのパーセンテージがオレイン酸のパーセンテージを上回り、そしてオレイン酸のパーセンテージがリノール酸のパーセンテージを上回るように設定される。
【0025】
好ましくは、前記調製物中のPSに結合した全脂肪酸含量に対する、前記調製物中のPSに結合したEPAのパーセンテージは、18%〜45%、好ましくは22%〜40%、より好ましくは26%〜36%、そして最も好ましくは27%〜34%である。好ましくは、前記調製物中のPSに結合した全脂肪酸に対する、前記調製物中のPSに結合したパルミチン酸のパーセンテージは、14%〜42%、好ましくは18%〜40%、より好ましくは20%〜30%、そして最も好ましくは21%〜26%である。好ましくは、前記調製物中のPSに結合した全脂肪酸含量に対する、前記調製物中のPSに結合したDHAのパーセンテージは、6%〜25%、好ましくは8%〜22%、より好ましくは11%〜20%、そして最も好ましくは12%〜17%である。好ましくは、前記調製物中のPSに結合した全脂肪酸含量に対する、前記調製物中のPSに結合したオレイン酸のパーセンテージは、1%〜15%、好ましくは2%〜13%、より好ましくは4%〜11%、そして最も好ましくは5%〜8%である。好ましくは、前記調製物中のPSに結合した全脂肪酸含量に対する、前記調製物中のPSに結合したリノール酸のパーセンテージは、0.1%〜6%、好ましくは0.5%〜4%、より好ましくは1%〜3%、そして最も好ましくは1.5%〜2%である。
【0026】
また、本発明は、更に、所定のパーセンテージ(w/w)でホスファチジルコリン(PC)を含有する調製物も提供する。好ましくは、PCのパーセンテージ(w/w)は、調製物に対して10%を下回る。好ましくは、調製物に対するPCのパーセンテージは、0.01%〜8%、より好ましくは0.05%〜6%、尚もより好ましくは0.1%〜4%、最も好ましくは1%〜3.5%である。
【0027】
本発明は、治療有効量の上記PS調製物のいずれかを対象に提供することによる、発作の治療及び/又は予防方法を提供する。より好ましくは、治療有効量は、1日用量として提供される。
【0028】
好ましくは、前記方法は、てんかんに罹患した対象における発作の治療及び/又は予防に関する。より好ましくは、前記方法は、複雑部分てんかん、痙攣性全般てんかん及び/又は非痙攣性全般てんかんに罹患した対象における発作の治療及び/又は予防に関する。
【0029】
本発明は、治療有効量の上記PS調製物のいずれかを、治療有効量のAEDと共に、対象に提供することによる、発作の治療及び/又は予防方法を提供する。より好ましくは、治療有効量は、1日用量として提供される。最も好ましくは、本発明のPS調製物は、送達単位中にAEDと一緒に提供される。
【0030】
好ましくは、AEDは、バルプロ酸(例えばDepakote)、フェルバメート(Felbamate)(例えばFelbatol)、フェノバルビタール又は任意の他のバルビツール酸塩(例えばプリミドン)、ゾニサミド、クロバザム、トリレプタル(Oxcarbazepine)及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0031】
発明の詳細な説明
第一の側面において、本発明は、セリングリセロリン脂質(PS)の混合物を含有する調製物、及び発作(例えばてんかん性発作)の治療及び/又は予防方法を開示する。任意で、及び好ましくは、当該PS混合物は、PSに結合したエイコサペンタエン酸(EPA)及びPSに結合したドコサヘキサエン酸(DHA)を含有する。
【0032】
好ましくは、(a)PSに結合した全脂肪酸におけるPSに結合したEPAのパーセンテージと、(b)PSに結合した全脂肪酸におけるPSに結合したDHAのパーセンテージとの間の比率((a)/(b))は、約0.2〜約5、又は0.4〜約5、より好ましくは当該比率は1を上回り、尚もより好ましくは当該比率は約1〜約4、又は約1.1〜約3、そして最も好ましくは約1.4〜約3である。
【0033】
好ましくは、前記調製物中に存在するPSのパーセンテージ(w/w)は、10%、20%、又は30%を上回り、より好ましくは35%又は40%を上回り、尚もより好ましくは、45%又は50%を上回り、最も好ましくは、55%を上回る。好ましくは、前記調製物中の全リン脂質に対するPSのパーセンテージ(w/w)は、20%、30%、又は35%を上回り、より好ましくは40%又は45%であり、より好ましくは50%又は55%を上回り、尚もより好ましくは、60%を上回り、最も好ましくは、65%を上回る。好ましくは、前記調製物は、更に、ホスファチジン酸及びリゾホスファチジン酸を含有し、前記調製物中のホスファチジン酸及びリゾホスファチジン酸の全重量に対する、前記調製物中のPSの重量比は、1:1〜10:1、より好ましくは1.5:1〜8:1、尚もより好ましくは2:1〜5:1、そして最も好ましくは2.5:1〜4:1である。
【0034】
好ましくは、前記調製物中のPSに結合した全脂肪酸に対する、前記調製物中のPSに結合したエイコサペンタエン酸(EPA)、パルミチン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)、オレイン酸、及びリノール酸の各脂肪酸のパーセンテージは、EPAのパーセンテージがパルミチン酸のパーセンテージ以上であり、パルミチン酸のパーセンテージがDHAのパーセンテージを上回り、DHAのパーセンテージがオレイン酸のパーセンテージを上回り、そしてオレイン酸のパーセンテージがリノール酸のパーセンテージを上回るように設定される。
【0035】
好ましくは、前記調製物中のPSに結合した全脂肪酸含量に対する、前記調製物中のPSに結合したEPAのパーセンテージは、18%〜45%、好ましくは22%〜40%、より好ましくは26%〜36%、そして最も好ましくは27%〜34%である。好ましくは、前記調製物中のPSに結合した全脂肪酸に対する、前記調製物中のPSに結合したパルミチン酸のパーセンテージは、14%〜42%、好ましくは18%〜40%、より好ましくは20%〜30%、そして最も好ましくは21%〜26%である。好ましくは、前記調製物中のPSに結合した全脂肪酸含量に対する、前記調製物中のPSに結合したDHAのパーセンテージは、6%〜25%、好ましくは8%〜22%、より好ましくは11%〜20%、そして最も好ましくは12%〜17%である。好ましくは、前記調製物中のPSに結合した全脂肪酸含量に対する、前記調製物中のPSに結合したオレイン酸のパーセンテージは、1%〜15%、好ましくは2%〜13%、より好ましくは4%〜11%、そして最も好ましくは5%〜8%である。好ましくは、前記調製物中のPSに結合した全脂肪酸含量に対する、前記調製物中のPSに結合したリノール酸のパーセンテージは、0.1%〜6%、好ましくは0.5%〜4%、より好ましくは1%〜3%、そして最も好ましくは1.5%〜2%である。
【0036】
また、本発明は、更に、所定のパーセンテージ(w/w)でホスファチジルコリン(PC)を含有する調製物も提供する。好ましくは、PCのパーセンテージ(w/w)は、調製物に対して10%を下回る。好ましくは、調製物に対するPCのパーセンテージは、0.01%〜8%、より好ましくは0.05%〜6%、尚もより好ましくは0.1%〜4%、最も好ましくは1%〜3.5%である。
【0037】
本発明は、治療有効量の上記PS調製物のいずれかを対象に提供することによる、発作の治療及び/又は予防方法を提供する。より好ましくは、治療有効量は、1日用量として提供される。
【0038】
好ましくは、前記方法は、てんかんに罹患した対象における発作の治療及び/又は予防に関する。より好ましくは、前記方法は、複雑部分てんかん、痙攣性全般てんかん及び/又は非痙攣性全般てんかんに罹患した対象における発作の治療及び/又は予防に関する。
【0039】
本発明は、治療有効量の上記PS調製物のいずれかを、治療有効量のAEDと共に、対象に提供することによる、発作の治療及び/又は予防方法を提供する。より好ましくは、治療有効量は、1日用量として提供される。最も好ましくは、本発明のPS調製物は、送達単位中にAEDと一緒に提供される。
【0040】
好ましくは、AEDは、バルプロ酸(例えばDepakote)、フェルバメート(Felbamate)(例えばFelbatol)、フェノバルビタール又は任意の他のバルビツール酸塩(例えばプリミドン)、ゾニサミド、クロバザム、トリレプタル(Oxcarbazepine)及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0041】
本発明において、発作、てんかん性発作又は発作性疾患の治療は、発作の頻度の減少、発作又は総合的疾患(overall disorder)の重症度の緩和、発作又は総合的疾患の治療、発作又は総合的疾患の治癒、患者を安定化させるのに必要なAED用量の減少、AED治療に起因する副作用の程度の減少、発作の回数又は重症度の低下の達成、発作の治療に要する入院の頻度の減少、発作に起因する入院の期間の減少、発作を経験している患者の生活の質の改善、又は発作に伴う併存疾患若しくは注意欠陥性多動性障害若しくは認識機能障害等の総合的疾患の重症度の低下、又は幼児の脳の適切な発達の促進、の1つ以上を含む。
【0042】
本発明において、「発作性疾患の改善」又は「発作を改善する」とは、発作の回数の減少及び/又は発作の重症度の低下(発作症状の安定化)、及び/又は対象における無発作状態の維持、及び/又は疾患、障害及び/又は病理的状態に付随する望ましくない症状の緩和、及び/又は症状の兆候の発症前の予防、及び/又は発作に起因する不可逆的なダメージの遅延、及び/又は疾患又は障害の重症度の低下、及び/又は疾患又は障害の治癒、及び/又は付随して発症する疾患又は障害(例えば遺伝的に及び/又は形質的に疾患に罹りやすい個人において)の予防、又は上記の組み合わせとして記載される。例えば、発作又は総合的疾患に罹患した対象において、本発明の脂質調製物の使用によって、改善が期待される。
【0043】
「発作」は、任意の非間代又は間代発作を意味し、てんかん、てんかん性疾患、聴原発作疾患(audiogenic seizure disorder)、てんかん症候群及び関連する症状に起因する発作を含む。高熱、ナトリウム又はグルコースの血中レベルの異常、薬物乱用、特定の医薬、高血圧、フェニルケトン尿症、及び尿毒症に起因する発作、並びに急性発作疾患、例えば脳腫瘍及び/又は脳損傷に起因し、間代発作疾患に転化するものも含まれる。
【0044】
「てんかん性疾患」又は「てんかん」は、再発性てんかん性発作を特徴とする慢性の神経症状を意味する。「てんかん」は、てんかん性疾患と見做され得る慢性再発性てんかん性発作を含む症状を意味する。てんかん性発作は、てんかん性疾患と関連していない、又は他の症候群若しくは関連する症状に起因する、任意の発作の症状を包含するものと理解されるべきである。
【0045】
てんかん性発作の種類の非限定的な例は、部分発作(例えば単純部分発作、複雑部分発作、二次性全般性発作に進展する部分発作、部分基本発作(partial elementary seizure)、部分(精神運動性)複雑発作又は側頭葉てんかん)、全般性発作(痙攣性及び非痙攣性;例えば欠神発作、非定型欠神発作、ミオクローヌス発作、間代発作、強直発作、強直間代発作、無緊張発作(失立)、二次性全般性発作及び他の間代性の分類できない発作)がある。
【0046】
てんかん症候群及び関連する症状の非限定的な例は、良性家族性新生児発作、早期ミオクローヌス脳症、大田原症候群、幼児期の移動性部分発作、ウェスト症候群、幼児期の良性ミオクローヌスてんかん、良性家族性及び非家族性小児発作、Dravet症候群、HH症候群、非進行性脳症のミオクローヌス状態、中心側頭スパイクを伴う良性小児てんかん、早発性良性の小児後頭葉てんかん (Panayiotopoulosタイプ) 、遅発性小児後頭葉てんかん (Gastautタイプ) 、ミオクローヌス欠神てんかん、ミオクローヌス失立発作を伴うてんかん、レノックス・ガストー症候群、ランドー・クレフナー症候群、徐波睡眠 (LKS以外の) 中の連続スパイク徐波を伴うてんかん、小児期欠神てんかん、進行性のミオクローヌスてんかん、変り易い表現型を伴う特発性全般てんかん、若年性欠神てんかん、若年性ミオクローヌスてんかん、全般性強直間代性発作だけを伴うてんかん、反射てんかん、特発性光過敏性後頭葉てんかん、他の視覚感受性てんかん、原発性読書てんかん、驚愕てんかん、常染色体優性夜間前頭葉てんかん、家族性側頭葉てんかん、熱性発作プラスを伴う全般てんかん、病巣が変り易い家族性焦点てんかん、症候性 (又はおそらく症候性) 焦点てんかん、辺縁系てんかん、海馬硬化症を伴う近心側頭葉てんかん、特定の病因により定義される近心側頭葉てんかん、位置及び病因により定義される他のタイプ、新皮質てんかん、ラスムッセン症候群、位置及び病因により定義される他のタイプ、てんかんの診断を要しないてんかん性発作を伴う症状、良性新生児性発作、熱性発作、反射性発作、アルコール離脱発作、薬物又は他の化学物質により誘導される発作、外傷直後又は早期の発作、単発発作又は発作の単独のクラスター、殆ど反復しない発作(オリゴてんかん)が挙げられる。
【0047】
少なくとも幾つかの態様において、本発明のPS調製物は、更に、抗発作薬、例えばAEDを含有する。少なくとも幾つかの態様において、本方法は、任意で、AED及び本発明のリン脂質組成物を一緒に又は別個に投与することを含み得る。
【0048】
発作、発作障害、てんかん性発作又はてんかんの治療又は予防用の薬物の非限定的な例として、限定されないが、ナトリウムチャンネルブロッカー(例えばフェニトイン、カルバマゼピン、フォスフェニトイン、ゾニサミド、ラモトリギン、オキシカルバゼピン、エスリカルバゼピン、ラコサミド、ヴィムパット、ヴァルポレート、ルフィナミド)、カルシウムチャンネルブロッカー(例えばエトスキシミド、ザロンチン)、GABA受容体アゴニスト(例えばクロバザム、クロナゼパム、フェノバルビタール、バルビツレート、及びプリミドン、ベンゾジアズ、プロガビド、オンフィ)、GABA再取り込み阻害剤(例えばチアガビン)、GABAトランサミナーゼ阻害剤(例えばヴィガバトリン)、潜在的なGABAの作用メカニズムを有するAED(例えばガバペンチン、プレガバリン、バルプロエート、デパコート)、グルタメートブロッカー(例えばフェルバメート、フェルバトール、トピラメート及びペラムパネル)、神経カリウムチャンネルオープナー(例えばエゾバビン)、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(例えばヴァルポレート)、カルボン酸アンヒドラーゼ阻害剤(例えばアセタゾラミド、トピラメート、ゾニサミド)、性ホルモン(例えばプロゲステロン)、シナプス小胞タンパク質2A(SV2A)結合剤(例えばレヴェチラセタム)が挙げられる。
【0049】
少なくとも幾つかの態様における本発明の調製物又は方法は、発作の頻度の減少、発作又は総合的疾患(overall disorder)の重症度の緩和、発作又は総合的疾患の治療、発作又は総合的疾患の治癒、患者を安定化させるのに必要なAED用量の減少、AED治療に起因する副作用の程度の減少、発作の回数又は重症度の低下の達成、発作の治療に要する入院の頻度の減少、発作に起因する入院の期間の減少、発作を経験している患者の生活の質の改善、又は発作に伴う併存疾患若しくは注意欠陥性多動性障害若しくは認識機能障害等の総合的疾患の重症度の低下、又は幼児の脳の適切な発達の促進に関する。
【0050】
少なくとも幾つかの態様における本発明の方法は、それを必要とする対象に、本発明の少なくとも幾つかの態様に係るPS調製物を投与することによる、発作の頻度の低下、発作又は総合的疾患の重症度の改善、発作又は総合的疾患の治療、発作又は総合的疾患の治癒、患者を安定化するのに必要なAED用量の減少、AED治療によって引き起こされる副作用の程度の減少、発作の回数又は重症度の減少の達成、又は発作を治療するのに必要な入院頻度の減少、発作による入院期間の減少、発作を経験している患者の生活の質の改善、又は発作に伴う併存疾患若しくは注意欠陥性多動性障害若しくは認識機能障害等の総合的疾患の重症度の低下、又は幼児の脳の適切な発達の促進に関する。
【0051】
任意で、前記調製物中に存在するPSの重量パーセントは、約10〜90%、好ましくは10〜70%、好ましくは20〜70%、より好ましくは30〜60%、最も好ましくは40〜55%である。
【0052】
少なくとも幾つかの態様において、本発明の調製物の1日用量は、任意で、対象に75〜600mg、好ましくは75〜450mg、より好ましくは75〜300mg、より好ましくは75〜225mg、最も好ましくは75〜150mgのPSを提供する。1日用量は、各日の用量が複数回に分けられてもよく、或いは各日に単一のボーラスとして提供されてもよい。
【0053】
少なくとも幾つかの態様において、本発明の調製物の1日用量は、任意で、対象に20〜172mg、好ましくは21.5〜129mg、より好ましくは21.5〜86mg、最も好ましくは21.5〜43mgのEPAを提供する。1日用量は、各日の用量が複数回に分けられてもよく、或いは各日に単一のボーラスとして提供されてもよい。
【0054】
少なくとも幾つかの態様において、本発明の調製物の1日用量は、任意で、対象に8〜68mg、好ましくは8〜51mg、より好ましくは8〜34mg、最も好ましくは8〜17mgのDHAを提供する。1日用量は、各日の用量が複数回に分けられてもよく、或いは各日に単一のボーラスとして提供されてもよい。
【0055】
少なくとも幾つかの態様において、本発明は、栄養、医薬、又は栄養補給組成物、又は機能性食品若しくは医用食品を含み、また、そのような組成物及び食品の製造にも関する。
【0056】
本発明の更なる側面は、栄養、医薬、又は栄養補給組成物、又は機能性食品若しくは医用食品において使用するための本発明の調製物を提供する。
【0057】
本発明の尚も更なる態様において、本発明の調製物を含有する、栄養、医薬、又は栄養補給組成物、又は機能性食品若しくは医用食品を提供する。
【0058】
本発明の他の態様において、前記調製物は、医薬として許容される助剤、及び任意で他の治療剤との混合物である、医薬組成物として提供される。当該助剤は、当該組成物の他の成分と適合し、その投与対象に対して有害ではないという意味で「許容され」なければならない。
【0059】
他の態様において、前記組成物は、投与経路に従って選択される用量送達形態である。
【0060】
本発明の組成物を投与する適切な経路は、経口、口腔、舌下投与、栄養チューブを介した投与、局所、経皮又は非経口(皮下、筋肉内、静脈内及び皮膚内を含む)投与である。一つの態様において、前記化合物は経口投与される。
【0061】
非経口投与において、適切な組成物は、水性又は非水性滅菌注射組成物を含む。当該組成物は、密封バイアルやアンプル等の単位用量又は複数用量容器で提示されてもよく、滅菌液体担体、例えば水を使用前に添加することだけを要する凍結乾燥条件下で保存されてもよい。経皮投与において、例えばゲル、パッチ又はスプレーが想定され得る。
【0062】
他の態様において、本発明は、カプセル、錠剤、ピル、グミ、流動オイル、粉末、顆粒、ワックス、ペースト、水性乳剤、及び他の標的投与に使用出来る形態で投与され得る。
【0063】
本発明の少なくとも幾つかの態様における1日用量は、カプセル、錠剤、シロップ、グミ、及び他の公知の送達系として投与される場合、任意で、1日あたり1、2、3、4、5、6、7又は8個の送達単位を含む。
【0064】
本発明に記載される栄養組成物は、限定されないが、人乳人工脂肪、乳児用調製粉乳、乳製品、粉乳、飲料、アイスクリーム、ビスケット、大豆製品、パン、ペーストリー、ソース、スープ、調理済み食品、冷凍食品、香辛料、菓子、油及び油脂、マーガリン、スプレッド、フィリング、シリアル、インスタント食品、離乳食、幼児用食品、バー、スナック、キャンディー及びチョコレート製品が挙げられる。
【0065】
本発明の機能性食品は、限定されないが、乳製品、アイスクリーム、ビスケット、大豆製品、パン、ペーストリー、ケーキ及びパン、インスタント食品、ソース、スープ、調理済み食品、冷凍食品、香辛料、菓子、油及び油脂、マーガリン、スプレッド、フィリング、シリアル、インスタント食品、飲料、シェーク、離乳食、バー、スナック及びチョコレート製品を含む、任意の機能性食品であってもよい。
【0066】
本発明の栄養組成物は、食品又は食品の一部と見做され得る何らかの物質であり得る、疾患又は障害の予防及び治療を含む医学的又は健康的利益を提供し得る、何らかの栄養補助物であっても良い。そのような栄養補助組成物は、限定されないが、食品添加物、食品補給物、リン脂質混合物、他の供給源由来のホスファチジルセリン、栄養補助食品、遺伝子組み換え食品、例えば野菜、植物製品、及び加工食品、例えばシリアル、スープ及び飲料、及び刺激性機能食品、医用食品及び薬用食品を含む。栄養補給物は、ソフトゲルカプセル、錠剤、シロップ、グミ、キャンディー、及び他の公知の栄養補給物送達系の形態で送達され得る。
【0067】
本発明における医用食品は、通常の食品だけでは不十分な異質な栄養的要求が有る疾患の栄養管理を目的として特に製剤化されたものである。
【0068】
前記組成物の用量及び投与計画は、達成すべき治療効果(例えば発作の重症度や頻度の減少、発作疾患の重症度の緩和等)に依存し得て、具体的な剤形、投与経路、及び前記組成物が投与される個人の年齢や症状等により変化し得る。
【0069】
少なくとも幾つかの態様において、本発明は、(医薬として)許容される助剤及び任意で他の治療剤と混合された、本発明の医薬組成物を提供する。当該助剤は、当該組成物の他の成分と適合し、その投与対象に対して有害ではないという意味で「許容され」なければならない。
【0070】
一つの態様において、本発明の医薬組成物は、1つ以上の医薬活性剤を更に含有する。
【0071】
前記医薬及び栄養補助組成物は、薬学分野で周知の任意の方法によって調製され得る。そのような方法は、任意の助剤と成分との協調をもたらす工程を含む。助剤、あるいは補助成分(accessory ingredient)は、当該分野で既知のものを含み、例えば、担体、充填材、結合剤、希釈剤、乾燥剤、崩壊剤、潤滑剤、着色料、香料、抗酸化剤及び水和剤等を含む。
【0072】
本発明の医薬及び栄養補助組成物は、更に、食物繊維、芳香、風味成分、及び物理的及び官能的特性を調整する成分を含有し得る。
【0073】
前記組成物は、密封バイアルやアンプル等の単位用量又は複数用量容器で提示されてもよく、滅菌液体担体、例えば水を使用前に添加することだけを要する凍結乾燥条件下で保存されてもよい。
【0074】
本発明の調製物は、他のリン脂質、例えばホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルグリセロール(PG)及びホスファチジン酸(PA)等を含み、これらのリン脂質のグリセロール部分のsn−1又はsn−2部位のいずれか又は両方に、脂肪酸アシルが共有結合している。上記極性脂質のいずれかの脂肪酸結合プロフィールは、本願PSの脂肪酸結合プロフィールと同一であっても異なっていてもよい。
【0075】
本発明において「グリセロリン脂質」と「リン脂質」は置換可能に用いられ、下記一般式の脂質を包含すると理解されるべきである。
【化1】
式中、Xは、セリン、コリン、エタノールアミン、イノシトール、グリセロール及び水素のいずれかを表し、R1及びR2は、同一でも異なっていてもよく、独立して、水素又はアシル基のいずれかを表し、当該アシル基は、飽和、単不飽和、又は多不飽和アシル基(PUFA)から選択される。本発明において、上記式において表示されているsn−1及びsn−2部位は、グリセロール骨格上の各炭素原子を表し、ここでR1及びR2は、対応する位置で置換される水素又はアシル基である。
【0076】
本発明において、「リソホスファチジン酸」は、Xが水素であり、同じくR1又はR2のいずれかも水素であるときに用いられる。
【0077】
本発明において、「置換」、「結合」、「連結」は、置換可能に使用され、本発明のリン脂質のグリセロリン脂質骨格に共有結合した脂肪酸アシルを包含すると理解されたい。上記のように、脂肪酸は、sn−1又はsn−2部位に結合し得る。
【0078】
本発明において、「脂肪酸」は、飽和した、又は1つ(単不飽和脂肪酸)若しくは2つ以上(多不飽和脂肪酸)の不飽和結合を有する、長い非分岐脂肪酸尾部(鎖)を有するカルボン酸を包含するものと理解されたい。「脂肪酸アシル」は、−C(=O)−R基を意味し、ここでRは、飽和した、又は1つ(単不飽和脂肪酸)若しくは2つ以上(多不飽和脂肪酸)の不飽和結合を有する、長い非分岐脂肪酸尾部を包含するものと理解されたい。
【0079】
ω、オメガ、n−X(Xは数字)は、置換可能に用いられ、脂肪酸のカルボキシル基から最も遠い炭素原子を指すと理解されたい。
【0080】
飽和脂肪酸の非限定的な例は:酪酸(ブタン酸、C4:0)、カプリン酸(ヘキサン酸、C10:0)、ラウリン酸(ドデカノン酸、C12:0)、ミリスチン酸(テトラデカノン酸、C14:0)、パルミチン酸(ヘキサデカノン酸、C16:0)、ステアリン酸(オクタデカノン酸、C18:0)、アラキドン酸(エイコサノン酸、C20:0)、ベヘン酸(ドコサノン酸、C22:0)が挙げられる。
【0081】
不飽和脂肪酸の非限定的な例は:ミリストレイン酸(C14:1、ω−5)、パルミトレイン酸(C16:1、ω−7)、オレイン酸(C18:1、ω−9)、リノール酸(C18:2、ω−6)、リノレン酸(C18:3)[アルファ−リノレン酸(C18:3、ω−3)、ガンマ−リノレン酸(C18:3、ω−6)]、エイコセン酸(C20:1、ω−9)、アラキドン酸(C20:4、ω−6)、エイコサペンタエン酸(C20:5、ω−3)、エルカ酸(C22:1、ω−9)ドコサペンタエン酸(C22:5、ω−3)及びドコサヘキサエン酸(C22:6、ω−3)、ネルボン酸(C24:1、ω−9)を含む。
【0082】
「PSに結合した脂肪酸」は、リン脂質骨格のsn−1又はsn−2部位に(グリセロール酸素原子を介して)脂肪酸アシルが結合しているPSを包含すると理解されたい。一つの態様において、sn−1に1つの脂肪酸が結合しており、そしてsn−2は、無置換(例えばグリセロール酸素上に水素原子を有する)、又は飽和、単不飽和及び多不飽和脂肪酸から選択されるアシル基で置換され、当該アシル基は、sn−1における置換基と同一であってもなくても良い。他の態様において、sn−2に1つの脂肪酸が結合しており、そしてsn−1は、無置換(例えばグリセロール酸素上に水素原子を有する)、又は飽和、単不飽和及び多不飽和脂肪酸から選択されるアシル基で置換され、当該アシル基は、sn−2における置換基と同一であってもなくても良い。
【0083】
ホスファチジルセリンは、しばしばセリングリセロリン脂質、ホスファチジルセリン、及びPSとも表記される。
【0084】
ホスファチジルコリンは、しばしばコリングリセロリン脂質、ホスファチジルコリン、及びPCとも表記される。
【0085】
本発明の調製物は、本発明において開示される脂肪酸結合パターンを有する2つ以上のセリングリセロリン脂質結合物の混合物を典型的には含有する。
【0086】
本発明の調製物は、限定されないが、葉酸、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、ヌクレオチド、抗酸化剤等を含む、他の化合物と組み合わせて投与され得る。
【0087】
本発明の組成物(医薬、栄養補助、栄養、医用食品等)又は製品(例えば機能性食品)は、本分野で公知の他の治療方法と組み合わせられ得る(組み合わせ療法)。従って、本発明の組成物又は製品を使用した発作(てんかん性発作等)又はてんかん又はてんかん性疾患の治療は、任意で、てんかん性発作又は機能不全の治療用の公知の薬物と組み合わせられ得る。
【0088】
本発明は、本願で開示される特定の例、プロセス工程及び材料に限定されず、そのようなプロセス工程や材料は幾らか変化し得ることを理解されたい。また、本発明において使用される用語は、特定の態様を記載する目的で使用され、限定を意図しないことを理解されたい。本発明の範囲は、特許請求の範囲又はそれと同等のもののみによって限定され得る。
【0089】
本発明において、特段の明示が無い限り、単数形の表記は、複数の指示を含む。
【0090】
本発明において、文脈が他に要求しない限り、「含む」という言葉やそのバリエーションは、言及されている数字又は工程又は数字の群又は複数の工程を含むことを示唆しており、何らかの他の数字又は工程又は数字の群又は複数の工程を排除しないことを理解されたい。
【0091】
本発明における調製物は、酵素的、化学的、又は分子生物学的方法を介して任意で調製され得るが、好ましくは、哺乳類供給源に由来しないリン脂質を好ましくは含有する。要するに、PSは、酵素的プロセス、例えば酵素的エステル交換/エステル化、続いて頭部基のセリンへの変換(PLD酵素を使用して)によるPSに結合したEPA又はDHAの取得等による、天然のリン脂質/レシチンのEPA又はDHAによる富化等によって、EPA又はDHAを富化し得る。
【0092】
他の酵素経路は、EPA又はDHAに富む海産物由来レクチン(例えばオキアミ、魚、海藻、イカ)、又は卵リン脂質等の天然のリン脂質供給源を取得し、それらの頭部基をセリンに変換することである。この方法によって取得されるPSの脂肪酸組成は、選択する供給源(魚、オキアミ、海藻、大豆等)のEPA又はDHA組成によって規定される。
【0093】
そのような調製方法は、WO2005/038037に記載されている。
【0094】
あるいは、本発明の少なくとも1つの態様に係るPS調製物は、GMO(遺伝子改変生物)/生物工学方法によって調製されてもよく、例えば、EPA又はDHAを含有するリン脂質生産生物を提供して、EPA又はDHAに富むリン脂質を取得する。遺伝子改変植物又は微生物を使用して、動物供給源の使用を避けるのが好ましい。
【0095】
従って、本発明の少なくとも幾つかの態様に係るセリングリセロリン脂質結合物の混合物は、好ましくは、天然、合成、半合成供給源、又はそれらの任意の組み合わせから調製される。本発明の一つの態様において、前記天然の供給源は、植物(例えば大豆及び藻類)、非哺乳動物(例えばオキアミ、魚(ニシンやブルーホワイティング等))、又は微生物(例えば細菌)供給源又はそれらの任意の組み合わせに由来する。
【0096】
尚も更なる態様において、前記脂質調製物の生産は、酵素的代謝を含む。