(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6291071
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】内側支柱サポータ
(51)【国際特許分類】
A61F 13/06 20060101AFI20180305BHJP
A41D 13/06 20060101ALI20180305BHJP
A61F 13/00 20060101ALI20180305BHJP
A41D 13/05 20060101ALI20180305BHJP
A61F 5/02 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
A61F13/06 A
A41D13/06
A61F13/00 355S
A41D13/05 156
A61F5/02 N
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-547681(P2016-547681)
(86)(22)【出願日】2015年8月28日
(86)【国際出願番号】JP2015004363
(87)【国際公開番号】WO2016038837
(87)【国際公開日】20160317
【審査請求日】2017年2月27日
(31)【優先権主張番号】特願2014-184664(P2014-184664)
(32)【優先日】2014年9月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】595032428
【氏名又は名称】福田 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100081776
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏
(72)【発明者】
【氏名】福田 博司
【審査官】
北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−247384(JP,A)
【文献】
特表2006−512173(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/044894(WO,A1)
【文献】
英国特許出願公開第2385529(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/00 − 13/14
A41D 13/05
13/06
A61F 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
踵骨内側から内果の足関節の下部の内側に当接する被固定部と、該被固定部と一体的に形成され該内果の足関節の上部に延びる内反阻止部とからなる板状の支柱と、
該足関節の上部及び該支柱の該内反阻止部を共に固定しない状態で該被固定部を該踵骨内側から該内果の該足関節の下部の内側に押し付け固定する固定部材と、
を有することを特徴とする内側支柱サポータ。
【請求項2】
前記支柱の前記内反阻止部は、前記足関節の上部が前後方向に揺動しても該足関節の上部が該内反阻止部から飛び出ない十分な横幅を有する請求項1に記載の内側支柱サポータ。
【請求項3】
前記固定部材は帯状のバンテージである請求項1または2に記載の内側支柱サポータ。
【請求項4】
前記支柱と前記バンテージの一端部とは固定されている請求項3に記載の内側支柱サポータ。
【請求項5】
前記バンテージは足関節に巻回して足関節を固定する帯状の本体部と巻回された該本体部の後端部を該後端部より先端側の該本体部の表側に締結する締結手段とを有するバンテージであって、
前記本体部は長手方向に伸び踵がはまり込むスリットを持つ中央帯部と、
前記中央帯部から先端側に延び少なくとも足首を1周して踵がはまり込んだ該中央帯部に連結するに十分の長さを持つ先端帯部と、
前記中央帯部から後端側に延び少なくとも踵がはまり込んだ該中央帯部から延び足首を1周する長さを持つ後端帯部と、
からなる請求項3または請求項4に記載の内側支柱サポータ。
【請求項6】
前記被固定部と前記バンテージとの当接部分には着脱自在の固定手段をもつ請求項3から請求項5のうちのいずれかに記載の内側支柱サポータ。
【請求項7】
前記被固定部は足関節の内側に対面する面に緩衝材をもち該緩衝材が足関節の内側に当接する請求項1から請求項6のいずれかに記載の内側支柱サポータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は足関節の内反を制限する内側支柱サポータに関する。
【背景技術】
【0002】
足首を内側にひねると足首の外側の靭帯である前距腓靭帯、脛腓靭帯、後距腓靭帯が伸びまたは損傷し足関節内反捻挫が起こる。この足関節内反捻挫の初期治療は患部を動かさず安静させ、患部を冷やし血流を緩やかにして腫れや内出血を防ぎ、患部に適度な圧迫を与え腫れや炎症を制御し、患者を仰向けにして患部を心臓よりも高い位置することにより患部への血流の流入を抑え炎症を抑制する、RICE処置が行われる。
【0003】
その後の治療には外側の靭帯の伸びまたは損傷を原因として発生する足首の内反を制限し足関節を正常な位置で固定するために足関節用のサポータが多くの場合に用いられる。
【0004】
足関節用のサポータの一例として実開平3−101930号公報に記載のものを説明する。この足関節用サポータは足のくるぶしを含む足関節の上方及び下方に装着されるサポータ体とこのサポータ体の外側に固定されたひねり防止用のステーと巻回固定用のベルトからなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平3−101930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の足関節用サポーターは足関節の内反を制限すると同時に足の底背屈運動も制限される傾向があった。
【0007】
そこで、本発明は足関節の内反を制限しつつ底背屈運動を制限しない足関節サポータを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の内側支柱サポータは、踵骨内側から内果の足関節の下部の内側に当接する被固定部と、該被固定部と一体的に形成され該内果の足関節の上部に延びる内反阻止部とからなる板状の支柱と、該足関節の上部及び該支柱の該内反阻止部を共に固定しない状態で該被固定部を該踵骨内側から該内果の該足関節の下部の内側に押し付け固定する固定部材と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の内側支柱サポータはその支柱の被固定部が固定部材で足のくるぶしの下方部分に固定され足関節の下方部分と一体化される。支柱の内反阻止部は足関節の下方部分から上方に位置し足関節のくるぶしの上方部分の内側に位置している。このため足関節の上方部分が内側に傾く足関節の内反は支柱の内反阻止部で阻止される。一方、足関節の上部は足関節の下部とくるぶしを介して前後方向に揺動可能である。この足関節の上部も支柱の内反阻止部も共に固定部材で固定されていない。このため足関節の上部は支柱の内反阻止部に拘束されること無く前後方向の揺動、すなわち底背屈運動が可能である。
【0010】
本発明の内側支柱サポータは板状の支柱とこの支柱を足関節の下方に固定する固定部材とからなる。支柱は板状で、足関節の下方部分の内側、すなわち、踵骨内側から内果の足関節の内側に当接固定される被固定部とこの被固定部と一体的に形成され足関節の上方、すなわち内果の上方に延びる内反阻止部とからなる。この板状の支柱は従来の足関節用サポータの支柱(ステー)と同じものでも良い。従来の支柱の下方部分が本発明の被固定部になり上方部分が本発明の内反阻止部となる。
【0011】
支柱の下方部分の被固定部は足関節の下方部分の内側に固定されるものであるため足関節の内側の形状に沿ったもので、十分な当接面積のあるものが好ましい。支柱の上方部分の内反阻止部は内反を阻止できる十分な高さを持つと共に足関節上部の揺動に対しても、足関節の上部が内反阻止部から飛び出ない十分な横幅を持つものである必要がある。
【0012】
本発明の固定部材は支柱の被固定部を足関節の下方部分に固定するものである。足関節の上方部分をも固定するものは使用できない。足関節の下方部分のみの固定で支柱の被固定部を足関節の下方部分に固定するものであれば本発明の固定部材として使用できる。なお、固定部材と支柱は,少なくとも使用時には一体的に固定されているものが好ましい。固定されることにより支柱の被固定部はより確実に足関節の下方部分の内側に固定される。
【0013】
具体的に本発明の固定部材として足関節の下方部分のみを固定する袋状、足袋状あるいはベルト状の固定手段を採用できる。ベルト状の固定手段として、帯状のバンテージが好ましい。この帯状のバンテージの一端部と支柱とは着脱自在、あるいは一体的に固定されているのが好ましい。また帯状のバンテージは、足関節に巻回して足関節を固定する帯状の本体部と巻回された本体部の後端部をこの後端部より先端側の本体部の表側に締結する締結手段とを有するものが好ましい。さらにこの本体部は、長手方向に伸び踵がはまり込むスリットを持つ中央帯部とこの中央帯部から先端側に延び少なくとも足首を1周して踵がはまり込んだこの中央帯部に連結するに十分の長さを持つ先端帯部と、中央帯部から後端側に延び少なくとも踵がはまり込んだ中央帯部から延び足首を1周する長さを持つ後端帯部とからなるものであるのが好ましい。帯状のバンテージのスリットに踵がはまり込むことによりバンテージがによる足関節の固定がより確実になり、支柱の足関節下方部への固定が確実になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の内側支柱サポータはその支柱の被固定部が固定部材で足のくるぶしの下方部分に固定され足関節の下方部分と一体化される。支柱の内反阻止部は足関節の下方部分から上方に位置し足関節のくるぶしの上方部分の内側に位置している。このため足関節の上方部分が内側に傾く足関節の内反は支柱の内反阻止部で阻止される。一方、足関節の上部は足関節の下部とくるぶしを介して前後方向に揺動可能である。この足関節の上部も支柱の内反阻止部も共に固定部材で固定されていない。このため足関節の上部は支柱の内反阻止部に拘束されること無く前後方向の揺動、すなわち底背屈運動が可能である。支柱の内反阻止部は十分に広い横幅を持つため足関節の底背屈運動のどの位置に置いても内反訴支部は足関節の内反を阻止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態の内側支柱サポータの支柱の正面図と側面図とA−A断面図とB−B断面図とを示す。
【
図2】実施形態の内側支柱サポータの帯状のバンテージの平面図を示す。
【
図3】
図2に示す帯状のバンテージの締結手段の平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態の内側支柱サポータを、
図1〜
図3に示す。この内側支柱サポータは、
図1に示す支柱1と
図2に示す帯状のバンテージ10と
図3に示す面ファスナ17とからなる。
【0017】
支柱1は、プラスチック製の曲板2とスポンジで形成された上部緩衝材4(a)と下部緩衝材4(b)と、鉤状のオスの面ファスナ3とからなる。曲板2は
図1の平面図から解るように上部は幅広の長方形状で下部は下端に向かって幅が狭くなる形状になっている。この曲板2はその側面図から解るように上端部分が図面上で左斜め方向にそり下端部分がわずかに右方向にそった逆S字形状となっている。さらにこの曲板2はそれらの断面図から分かるように断面が円弧状に曲がった曲り板となっている。曲板2の大きさは長手方向15.2cm、上部の幅方向が5.2cm、厚さ2mmである。
【0018】
この曲板2の内側の上方を含む部分に上部緩衝材4(a)が少し間隔を隔てて下方部分に下部緩衝材4(b)が固定されている。曲板2の外側の下方に面ファスナ3が固定されている。上部緩衝材4(a)は長手方向8.3cm、幅方向5.2cm、厚さ5mmである。下部緩衝材4(b)は長手方向6cm、幅方向5.2cm、厚さ5mmである。面ファスナ3は長手方向が7cm、幅方向の最大の長さが4.7cmで幅方向の最小の長さが2cmである。
【0019】
この曲板2の上部緩衝材4(a)は足関節の踝の上の部分に当接し、下部緩衝材4(b)は踝の下方部分に当接固定されるもので、部緩衝材4(a)と下部緩衝材4(b)との間に踝が位置するようになっている。
【0020】
この曲板2は上記構成を持つもので、部緩衝材4(b)とこれを保持する曲板の部分及び面ファスナ3を含む部分が本発明の被固定部を構成し、上部緩衝材4(a)とこれを保持する曲板の部分が本発明の内反阻止部を構成する。
【0021】
帯状のバンテージ10は
図2に示す帯状の本体部11と
図3に示す面ファスナ17とからなる。
【0022】
帯状の本体部11は長手方向に80.5cm、幅方向に5.1cm、厚さ1mmからなる。この帯状の本体部11の表面全面に多数の細かい輪をもつメスの面ファスナが設けられている。このメスの面ファスナは長手方向に80.5cm、幅方向に4.4cm、厚さ1mmからなる。
【0023】
帯状の本体部11は先端帯部12、中央帯部13および後端帯部14の3つの帯部で形成されている。先端帯部12は、長手方向に56.2cm、幅方向に5.1cm、厚さ1mmからなる。先端帯部12の端部に面ファスナ16が設けられている。この面ファスナ16は、長手方向に7.3cm、幅方向4.4cm、厚さ1mmからなる。
【0024】
中央帯部13は、長手方向に9.3cm、幅方向に5.1cm、厚さ1mmからなる。装着時に踵がはまり込むスリット15をもつ。このスリット15は中央帯部13の長手方向と平行である9.3cmの切れ目であり、中央帯部13の幅方向の中央に配置される。
【0025】
後端帯部14は、長手方向に15cm、幅方向に5.1cm、厚さ1mmからなる。
【0026】
面ファスナ17は、表面にオスの面ファスナを有し、その下底が4.8cmで上底が3cmであり、高さが4cmとなる概ね台形形状である。
【0027】
実施形態の内側支柱サポータは、上記の構成からなる。
【0028】
次に、この内側支柱サポータの装着の一例を、
図4を用いて説明する。この内側支柱サポータを足関節に装着する前に、まず、支柱1の曲板2の外側の下方に固定された面ファスナ3に帯状のバンテージ10の先端に固定された面ファスナ16を押し当て、
図4の(イ)に示すように支柱1の下方から帯状のバンテージ10が真っ直ぐに延びる状態にする。この後、
図4の(イ)のように、支柱1がもつ曲板2に接着された上部緩衝材4(a)と下部緩衝材4(b)との間の空間に足関節のくるぶしが当たるように上部緩衝材4(a)をくるぶしの上方に、下部緩衝材4(b)をくるぶしの下方に位置するように足関節の内側に当接させ、帯状の本体部11を下側に伸ばす。次に(ロ)に示すように、先端帯部12を土踏まずから踵の間の足裏を巻回して足の外側へ回す。次に、(ハ)に示すように、先端帯部12を足の外側から足首の前方を巻回する。次に、(ニ)に示すように、先端帯部12を足首の前方から支柱1の被固定部を固定しつつ足首の後方へ巻回する。次に、(ホ)に示すように、先端帯部12を足首の後方から足の外側を通して足首の前方へ巻回する。次に、(ヘ)に示すように、先端帯部12を足首の前方から被固定部の下方を固定しつつ巻回する。その後、中央帯部13のスリット15に踵を引っ掛け、踵を通して足の外側へ回し、後端帯部14を足首の前方から被固定部に巻回し、帯状の本体部11が巻回された状態を本体部11の表側で面ファスナ17を用いて締結する。
【0029】
足首の内反を制限する支柱1の上方から中央の部分の内反阻止部は全く固定されない。従って、底背屈運動に応じて内反阻止部は自在に足の前後方向に揺動できるため、内反阻止部が底背屈運動を制限しない。更に、下部緩衝材4(b)が足関節と滑るため底背屈運動を行い易い。
【0030】
その結果、実施形態の内側支柱サポータは足関節の内反を制限する一方で底背屈運動を全く制限しない。
<使用評価>
【0031】
本願出願人の運営する整形外科クリニックを受診された24例の新鮮足関節内反捻挫を、本実施例の内側支柱サポータを用いて治療した。軽症の10例には、当初からこの内側支柱サポータを装着した。その他の14例には、5日から3週間の程度のcast固定を行なった後、この内側支柱サポータを装着した。すべての症例で、この内側支柱サポータは入浴時、シャワー時等に足関節から外した以外常時装着した。そして、足関節外果周囲の腫れと圧痛が消失した時点で、この内側支柱サポータを活動時のみ装着とした。
【0032】
受傷後3か月時点で、軽症の10例全例とその他の14例中12例を、元の活動レベルに復帰させることができた。これまでのサポータではこのような良好な結果は得られていない。
【符号の説明】
【0033】
1 支柱
2 曲板
3 支柱面ファスナ
4(a) 上部緩衝材
4(b) 下部緩衝材
10 帯状のバンテージ
11 帯状の本体部
12 先端帯部
13 中央帯部
14 後端帯部
15 スリット
16 先端面ファスナ
17 面ファスナ