(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ボタンの上端は前記凸部の上端よりも下方に配置されており、かつ、前記ボタンの下端は前記凸部の下端よりも上方に配置されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のヘッドレスト。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
本実施の形態において符号1は、ヘッドレストを構成するヘッドレストピラーを示す。このヘッドレストピラー1は、
図1,
図3,
図6に示すように、左右に離間する一対の支柱1a,1aと、これら一対の支柱1a,1aの上端部間に架設される横軸部1bと、を有する。
これら一対の支柱1a,1aと横軸部1bとは一体形成されており、これら一対の支柱1a,1aと横軸部1bとの中間に位置する部位は屈曲形状を成している。
また、前記一対の支柱1a,1aと横軸部1bとのうち、少なくとも横軸部1bは断面正円状に形成されている。
【0019】
また、横軸部1bには、
図1,
図6,
図9に示すように、ロックブラケット4が支持されている。このロックブラケット4は、ロック機構を構成するためのものであり、基端部が、横軸部1bに、上方に突出するとともに、前方に傾斜するようにして固定されている。
このロックブラケット4は左右方向の厚さが薄く、かつ上下方向に長尺な金属製の板状体であり、突端部5には、ラチェット部35が形成されている。
また、基端部に、アーチ型の軸受け面を形成することによって、前記横軸部1bを把持するようにして、この横軸部1bに設けられている。また、この基端部は横軸部1bに対して溶接等により強固に接合固定されている。
【0020】
さらに、ロックブラケット4には、
図9に示すように、前記ラチェット部35よりもヘッドレストピラー1側に、前記ラチェット部35の前後方向長さよりも短く設定された長孔4a,4bが形成されている。他方の長孔4bよりも下側には、さらに正円状の孔4cが形成されている。これら一方および他方の長孔4a,4bと孔4cは、前記ロックブラケット4を左右に貫通するようにして形成されている。
【0021】
また、横軸部1bには、複数の付勢部材3,3を取り付けるための取付部2,2が固定されている。
複数の付勢部材3,3は、ヘッドレストフレーム9とヘッドレストピラー1の横軸部1bとの間に設けられるものであり、ヘッドレストフレーム9を横軸部1bに引き寄せる方向に付勢している。なお、これら付勢部材3はコイルバネとされている。
【0022】
取付部2,2は、フック状に形成されており、コイルバネである付勢部材3,3の横軸部1b側端部の下端部を引掛けることができる。前記ロックブラケット4の左右両側に、ロックブラケット4から離間し、かつロックブラケット4から等しい間隔で配置されている。これに伴って、前記付勢部材3,3の横軸部1b側端部も、横軸部1bの長さ方向に互いに離間して配置されている。
なお、取付部2,2は、横軸部1bに対して溶接等により強固に接合固定されている。また、これら取付部2,2は、斜め上向きで後方に向かって突出している。
【0023】
さらに、横軸部1bには、ヘッドレストを構成する前記ヘッドレストフレーム9が、前後方向に位置調整可能に取り付けられている。なお、本実施の形態のヘッドレストフレー
ム9は、前記ヘッドレストピラー1の横軸部1bの中心軸を回動中心として、前後方向に回動自在とされている
【0024】
また、このヘッドレストフレーム9は、乗員の頭部を受けるものであり、中空状に形成されている。そして、ヘッドレストフレーム9は、クッションパッドとなるウレタン等の樹脂と一体化される。
内部には、ヘッドレストフレーム9のヘッドレストピラー1に対する移動を可能とする可動機構が収容されている。すなわち、ヘッドレストフレーム9は、可動機構をカバーしており、外部から可動機構への荷重や衝撃を軽減したり、クッションパッドとなる樹脂が内部に浸入することを防いだりしている。
【0025】
また、ヘッドレストフレーム9は、第一フレーム10と、第二フレーム19と、化粧縁部材28,28と、ボタン32とを備えている。
第一フレーム10および第二フレーム19は、周縁部が互いに噛み合うように構成されるとともに、第一フレーム10の周縁部に沿って配置される複数の引掛け爪部15…と、第二フレーム19の周縁部に沿って配置される複数の引掛け凹部25…とを互いに係合させてなる嵌合構造を有している。そして、これら第一フレーム10と第二フレーム19とを嵌合させて組み合わせることで内部に空洞ができるように構成されている。
なお、第一フレーム10と第二フレーム19は嵌合構造を有することによって確実に組み合わせることができるが、組み立て時に、より嵌合しやすくするために、これら第一フレーム10と第二フレーム19との間に位置決め手段を設けるようにしても良い。
【0026】
前記第一フレーム10は、シートバックの前後方向の前側に配置されて乗員の頭部を直接受ける部分であり、
図1,
図5,
図6等に示すように、可動機構を保持している。
この第一フレーム10は、前面壁部11と、周壁12と、膨出部13,13と、底壁14と、凸部16と、把持部17,17等を有している。また、前面壁部11と、周壁12と、膨出部13,13と、底壁14とは、
図6,
図9等に示すように、前記横軸部1b付近から、この横軸部1bよりも前方にかけて配置されている。
【0027】
前面壁部11は、
図2に示すように第一フレーム10の大部分を占めるようにして設けられており、
図9に示すように上下方向の中央付近で前方に湾曲している。
この前面壁部11の周縁部に沿って前記周壁12と、膨出部13,13と、底壁14とが一体形成されている。
【0028】
周壁12は、前面壁部11および膨出部13,13の周縁部に沿って設けられており、これら前面壁部11および膨出部13,13から後方に延出することによって、ヘッドレストフレーム9を中空状にするためのスペースを形成している。
この周壁12には、
図1,
図6に示すようなボタン32を取り付けるためのボタン取付部12aが側方に突出するようにして一体形成されている。ボタン取付部12aの突出方向側端面には、ボタン32のボタン保持部34を、ボタン取付部12aに嵌め込むための切欠部12bが形成されている。
【0029】
膨出部13,13は、
図2および
図9等に示すように、第一フレーム10下部の左右両側に、それぞれ左右外側および前方に膨出するようにして設けられている。これら膨出部13,13には、前記ヘッドレストピラー1の支柱1a,1aと横軸部1bとの中間に位置する部位が収容される。
【0030】
底壁14は、前記前面壁部11および膨出部13,13の下縁部に沿って、かつ前記周壁12と連続的に設けられており、第一フレーム10の底面を形成している。
この底壁14には、
図6に示すような化粧縁部材28,28を嵌め込むための切欠部1
4a,14aが形成されている。
【0031】
凸部16は、前記前面壁部11に一体形成されるとともに、前面壁部11の背面側から後方に向かって突出する複数の凸形状部分を指している。
複数の凸形状部分として、凸部16A,16Aと、凸部16B,16Bとが、前記前面壁部11の背面側に設けられている。
【0032】
凸部16A,16Aは、
図1および
図6に示すように、前記前面壁部11の背面側において、左右方向に間隔をあけて、かつ上下方向に配置される2本の凸形状部分を指している。これら2本の凸部16A,16Aは大きさが略等しくなるように形成されている。
図1において左側に位置する一方の凸部16Aは互いに対向する壁160a,160bを有し、右側に位置する他方の凸部16Aは互いに対向する壁161a,161bを有する。
一方および他方の凸部16A,16Aは、前記可動機構と並設されるものであり、一方の凸部16Aの壁160bと、他方の凸部16Aの壁161aとは互いに対向している。
【0033】
また、これら2本の凸部16A,16Aは、これら凸部16A,16Aに交差する連結部162によって連結されている。本実施の形態においては、連結部162によって、2本の凸部16A,16Aのうち、前記ロックブラケット4よりも上方で連結されており、より詳細には、上端部同士が連結されている。
これら2本の凸部16A,16Aと連結部162とは一体形成されており、これら凸部16A,16Aと連結部162との中間に位置する部位は屈曲形状を成している。すなわち、2本の凸部16A,16Aと連結部162とは、第一フレーム10の背面側を正面から見た際に略逆U字状に形成されている。
また、後述するが、これら凸部16A,16Aは、
図1および
図6に示すように、これら凸部16A,16Aと一体形成されるとともに前記可動機構の被保持部39およびガイド部材65側に突出する突出部163a〜163d、ヘッドレストピラー1の横軸部1b側に突出する突出部163e,163fを備えている。
【0034】
凸部16B,16Bは、
図1および
図6に示すように、前記2本の凸部16A,16Aよりも左右の外側に離間して配置されている。一方の凸部16Bの突端部には、左右方向に貫通するとともに、後述するガイド部材65が挿通される孔部165が形成されており、他方の凸部16Bの突端部には、後述するガイド部材65の端部が挿入されるとともに、このガイド部材65の先端部を受けるストッパー部166が形成されている。
【0035】
前記凸部16A,16Aおよび連結部162と、凸部16B,16Bとは、第一フレーム10の製造段階で前面壁部11と一体に成形されており、これに伴って、該各凸部16A,16A、16B,16Bおよび連結部162が位置する部位の前面壁部11の正面側には、
図2に示すように、それぞれ凹部が形成された状態となっている。
【0036】
把持部17,17は、
図1および
図6に示すように、前記横軸部1bを把持するためのものであり、第一フレーム10の下端部に設けられている。また、アーチ型に形成されることによって、下方に向かって開放された状態となっており、このアーチ型部分で前記横軸部1bを把持している。このように把持部17,17で横軸部1bを把持することによって、前記ヘッドレストフレーム9を前記横軸部1bに対して前後方向に回動自在とすることができる。
また、これら把持部17,17と、前記2本の凸部16A,16Aとは連結されている。すなわち、凸部16Aの下方に把持部17が配置され、これら凸部16Aと把持部17とが一体形成された状態になっている。
【0037】
把持部17,17は、
図6および
図9に示すように、前記横軸部1bよりも下方に延出している。これによって、例えば把持部17,17が下方に延出していない場合に比して、安定的に横軸部1bを把持できるので好ましい。
さらに、把持部17,17には、これら把持部17,17の左右外側面から外側に向かって段差を形成する段差部17a,17aがそれぞれ設けられている。これによって把持部17,17を横方向に太くすることができ、より安定的に横軸部1bを把持できるので好ましい。
【0038】
また、前記凸部16A,16Aと一体形成された把持部17,17は、
図1および
図6に示すように、これら把持部17,17と一体形成されるとともに、前記可動機構としての横軸部1b側に突出する前記突出部163e,163fを備えている。
これら突出部163e,163fは、一見すると凹状に形成されたような形態となっているが、把持部17,17の第二フレーム19側面から前記横軸部1b側に向かって、かつ把持部17,17の内方に向かって突出している形態とされている。突出部163e,163fが形成された部分は剛性の高い部分となるので、把持部17,17自体の強度を高めることができる。これによって、把持部17,17の破損を抑制し、ヘッドレストフレーム9を、前記横軸部1b上に安定的に支持するのに貢献することができる。
【0039】
さらに、把持部17,17は、前記横軸部1bに取り付けられた取付部2,2よりも横軸部1b中央側に配置されている。また、把持部17,17の外側端部は、取付部2,2に近接するようにして配置されている。すなわち、ヘッドレストフレーム9と横軸部1bとを接続する役割を果たす把持部17,17が、取付部2,2間に設けられているので、これら取付部2,2によってヘッドレストフレーム9自体の左右位置を規制することができる。
また、このように取付部2,2間に把持部17,17が設けられる場合に限られず、逆に、把持部17,17間に取付部2,2が設けられていても、これら取付部2,2によってヘッドレストフレーム9の左右位置を規制できるようになっている。
【0040】
また、一方の把持部17と他方の把持部17との間は、下方に向かって開放された下部開放部18とされている。
この下部開放部18は、ヘッドレスト組み立て時において、第一フレーム10を、ロックブラケット4が固定された状態のヘッドレストピラー1に取り付ける際に、前記ロックブラケット4が挿入される挿入口として機能する。
【0041】
前記第二フレーム19は、シートバックの前後方向の後側に配置されて、第一フレーム10によって保持される可動機構を被覆する。
この第二フレーム19は、後面壁部20と、周壁21と、膨出部23,23と、底壁24等を有している。
【0042】
後面壁部20は、
図3および
図4に示すように、第二フレーム19の大部分を占めるようにして設けられており、前記第一フレーム10の凸部16A,16Aに沿うように前傾している。
この後面壁部20の周縁部に沿って前記周壁21と、膨出部23,23と、底壁24とが一体形成されている。
【0043】
また、後面壁部20の正面側の下部中央には、前方に突出する突出支持部20aが設けられている。この突出支持部20aは、前記横軸部1bの中央部と、この横軸部1bよりも下方に位置する第一フレーム10の底壁14との間に差し込まれる。これによって、前記把持部17,17と上下に互い違いとなるようにして横軸部1bを挟み込むような位置関係となるので、ヘッドレストフレーム9がヘッドレストピラー1から脱落することを確
実に防ぐことができる。
【0044】
また、後面壁部20には、
図4に示すように、この後面壁部の外側面から後方に向かって突出する後方突出部26が設けられている。この後方突出部26は、ヘッドレストフレーム9の左右方向中央に設けられている。これによって、例えば後方突出部26が、ヘッドレストフレーム9の左右方向中央よりも左側または右側にずれて配置される場合と比較して、左右のバランスが良く、ヘッドレストフレーム9の剛性でも有利である。
この後方突出部26のヘッドレストフレーム9内部側には、
図3に示すように、凹部26aが形成されており、この凹部26aは、前記可動機構のうち、この後面壁部20側に変位する部分が入り込む空間とされている。
【0045】
さらに、後面壁部20には、
図4に示すように、前記後方突出部26とは別の、前記取付部2,2用の後方突出部27,27が設けられている。
これら後方突出部27,27のヘッドレストフレーム9内部側には、
図3に示すように、凹部27a,27aがそれぞれ形成されており、これら凹部27a,27aには、取付部2,2が収容される。
【0046】
周壁21は、後面壁部20および膨出部23,23の周縁部に沿って設けられており、これら後面壁部20および膨出部23,23から前方に延出することによって、ヘッドレストフレームを中空状にするためのスペースを形成している。
この周壁21には、
図1に示すボタン32を取り付けるためのボタン取付部21aが側方に突出するようにして一体形成されている。ボタン取付部21aの突出方向側端面には、ボタン32のボタン保持部34を、ボタン取付部21aに嵌め込むための切欠部21bが形成されている。
【0047】
膨出部23,23は、
図3および
図4に示すように、第二フレーム19下部の左右両側に、それぞれ左右外側および後方に膨出するようにして設けられている。これら膨出部23,23には、前記ヘッドレストピラー1の支柱1a,1aと横軸部1bとの中間に位置する部位が収容される。
【0048】
底壁24は、前記後面壁部20および膨出部23,23の下縁部に沿って、かつ前記周壁21と連続的に設けられており、第二フレーム19の底面を形成している。
この底壁24には、
図6に示すような化粧縁部材28,28を嵌め込むための切欠部24a,24aが形成されている。
【0049】
前記化粧縁部材28,28は、
図3および
図6に示すように、互いに嵌合される前記第一フレーム10と第二フレーム19の底壁14,24に、前記ヘッドレストピラー1の一対の支柱1a,1aの位置に対応して設けられる。
前記底壁14に形成された切欠部14a,14aと、前記底壁24に形成された切欠部24a,24aは、第一フレーム10と第二フレーム19とを組み合わせることによって、底壁14,24に長孔状の開口部を2つ形成できるようになっている。
そして、これら2つの長孔状の開口部に化粧縁部材28,28がそれぞれ取り付けられ、長孔状の開口部の縁部を化粧することができる。
化粧縁部材28は、前記支柱1aが挿通されるスリット29と、周壁部30と、鍔部31とを備えている。
【0050】
スリット29は、前後方向に長くなる長孔状に形成されている。このスリット29によって、ヘッドレストフレーム9の前後方向への回動に伴って移動する化粧縁部材28が支柱1aに接触することを防げるので、ヘッドレストを前後方向にスムーズに回動させることができる。
【0051】
周壁部30は、前記スリット29の周縁に配置されるとともに、スリット29を形成するものであり、前記底壁14,24に形成された長孔状の開口部に差し込まれて嵌合される。
【0052】
鍔部31は、前記周壁部30の下端部に一体形成されており、前記底壁14,24の下面に当接するものである。
すなわち、この鍔部31は、前記底壁14,24に形成された長孔状の開口部よりも大径となるように形成されており、化粧縁部材28が、長孔状の開口部からヘッドレストフレーム9内部に没入することを防ぐことができる。
【0053】
前記ボタン32は、
図1に示すように、互いに嵌合される前記第一フレーム10と第二フレーム19の周壁12,21のボタン取付部12a,21aに設けられる。
前記ボタン取付部12aに形成された切欠部12bと、前記ボタン取付部21aに形成された切欠部21bは、第一フレーム10と第二フレーム19とを組み合わせることによって、ボタン取付部12a,21aの突出方向側端面に長孔状の開口部を形成できるようになっている。
そして、この長孔状の開口部にボタン32が取り付けられ、このボタン32で前記可動機構を操作できる。
前記ボタン32は、ボタン本体33と、前記ボタン保持部34とからなる。
【0054】
ボタン保持部34は、ボタン本体33が挿入される筒状部34aを備えている。なお、
図1におけるボタン保持部34は断面図で示されている。
この筒状部34aのヘッドレストフレーム9外部側端部周縁には、前記長孔状の開口部よりも大径に形成された鍔部34bが設けられている。
また、この筒状部34aの鍔部34bとは反対側には、ボタン本体33の内側端部が当接する当接板部34cが設けられている。この当接板部34cには、後述する被保持部39を挿通させるための挿通孔が形成されている。
さらに、筒状部34aのヘッドレストフレーム9内部側端部には、ボタン取付部12a,21aの内周部に形成される引掛けリブ12c,21cに係止する係止部34dが設けられている。
【0055】
ボタン本体33は、後述するロック部材38の被保持部39のボタン32側端部が取付固定されるものであり、前記ボタン保持部34の筒状部34aに挿入され、この筒状部34aに沿って進退自在とされている。
【0056】
なお、本実施の形態においては、前記第一フレーム10をシートバックの前後方向の前側に配置し、前記第二フレーム19をシートバックの前後方向の後側に配置するものとしたが、これに限られるものではない。すなわち、これら第一フレーム10と第二フレーム19とを、左右に配置しても良いし、上下に配置しても良く、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0057】
次に、ヘッドレストフレーム9のヘッドレストピラー1に対する移動を可能とする可動機構について説明する。
可動機構は、
図1,
図5〜
図7,
図9に示すように、前記ヘッドレストフレーム9を、前記ロックブラケット4に対して前後方向に複数の位置でロックするロック機構と、前記ヘッドレストフレーム9の前後方向への移動をガイドするガイド機構と、を備えている。なお、ヘッドレストフレーム9の前後方向への移動は、上述のように前後方向に回動することを指しており、ロック機構によって回動方向に複数の位置で、ヘッドレストフレーム9をロックすることができる。
【0058】
ロック機構は、前記ラチェット部35と、ロック部材38と、前記被保持部39に対して、前記係合部40を前記ラチェット部35に向かって付勢する付勢力と、前記係合部40を前記凹溝37の底部37aに向かって付勢する付勢力とを付与する付勢手段と、を有する。なお、このロック機構は、ヘッドレストフレーム9を所定の位置でロックするだけでなく、ロックを解除する機能も併せて備えている。
【0059】
ガイド機構は、ガイド凹部64と、ガイド部材65と、を有する。
また、前記ヘッドレストピラー1やロックブラケット4、ヘッドレストフレーム9には、これらロック機構およびガイド機構を動作させるために必要な、または、これらロック機構およびガイド機構の動作をより良好にするために必要な構成が具備されているものとする。
【0060】
まず、ロック機構について説明する。
ラチェット部35は、
図5,
図7,
図9等に示すように、前記ロックブラケット4に保持されるものである。本実施の形態において、このラチェット部35は、前記ロックブラケット4の突端部5に一体形成されており、前記ヘッドレストフレーム9の移動方向に沿って交互に配置される複数の係合歯36…および複数の凹溝37…を備えている。
これら複数の係合歯36…は前方に傾斜しており、複数の凹溝37…にはロック部材38が挿入される。つまり、ロック部材38は凹溝37に挿入され、係合歯36に引っ掛かるように構成されている。すなわち、ラチェット部35は、前記ヘッドレストフレーム9の前方への移動を許容し、後方への移動を規制するラチェット構造を備えていることになる。
なお、前記凹溝37も、前記係合歯36の傾斜に沿って延在するようにして形成されており、凹溝37の延在方向の最深部が底部37aとされている。ロック部材38は、この凹溝37の底部37aに到達するまで深く挿入されるようになっている。
【0061】
また、前記ロックブラケット4は、
図5,
図7に示すように、前記ラチェット部35よりもロックブラケット4の突出方向先端側にラチェット部35から離間して配置されるとともに、ロックブラケット4の突端部5の前端と後端とを連結する連結部6を備えている。
この連結部6は、ロックブラケット4の突端部5に一体形成されており、ロックブラケット4の突端部5の前端側に設けられる前端部7と、突端部5の後端側に設けられる後端部8とを有する。
そして、連結部6は、これら前端部7および後端部8によって支持されることによってラチェット部35から離間して配置できるようになっている。すなわち、この連結部6は、前記ラチェット部35の上方にアーチ状に設けられている。
【0062】
また、前記複数の係合歯36…のうち、最後端に位置する係合歯36の後端面36aと、連結部6の後端部8のラチェット部側面8aは互いに対向しており、この連結部6のラチェット部側面8aは、前記係合歯36の後端面36aに沿って設けられている。
また、連結部6の後端部8は、
図3,
図4,
図9(d)に示すように、前記ヘッドレストフレーム9の第一フレーム10の最前傾時に、このヘッドレストフレーム9の第二フレーム19に最も近接するように設定されており、連結部6の後端部8のラチェット部35側面は、前方に傾斜する複数の係合歯36…に対応して前方に傾斜している。
さらに、連結部6の後端部8は、ラチェット部35側面だけでなく、第二フレーム19側面も前方に傾斜しているため、後端部8自体が前傾している。したがって、ロックブラケット4の突端部5の後端は角が削られたような状態となる。すなわち、ヘッドレストフレーム9の第二フレーム19に最も近接するように設定される連結部6の後端部8が、ヘッドレストフレーム9の最前傾時に、このヘッドレストフレーム9の背面側に大きく突出
することを防ぐことができるので、ヘッドレストが前後方向に大型化することを抑制でき、ヘッドレストのコンパクト化に貢献できる。
また、このような連結部6の後端部8と対向する位置に、前記第二フレーム19の後方突出部26が設けられている。そして、この後方突出部26の凹部26aに、連結部6の後端部8とロックブラケット4の後端側とが入り込み、収容されるようになっている。
【0063】
ロック部材38は、
図1,
図5〜
図7,
図9に示すように、前記ヘッドレストフレーム9に保持されるとともに左右方向に配置される被保持部39と、この被保持部39に平行するようにして配置されるとともに前記ヘッドレストフレーム9の移動に伴って前記複数の係合歯36…および連結部6の後端部8に噛み合う係合部40と、これら被保持部39と係合部40とを連結する連結部41とから構成されている。
なお、本実施の形態において、これら被保持部39と、係合部40と、連結部41とは一体形成されており、略J字型となるように構成されている。すなわち、ロック部材38は、一本の金属棒を屈曲加工することにより、前記被保持部39の他端部から係合部40の他端部にかけて折り返すようにして形成されている。
また、被保持部39および係合部40の先端部はテーパ状に形成されている。
また、被保持部39は、前記ボタン32付近から他方の凸部16Aの壁161b付近までの長さを有する長尺部分とされており、係合部40は、前記他方の凸部16Aの壁161b付近からロックブラケット4付近までの長さを有する短尺部分とされている。
【0064】
前記被保持部39は、この被保持部39のボタン32側の他端部が前記ボタン本体33に取付固定されている。すなわち、この被保持部39を操作する前記ボタン32は、この被保持部39の他端部側に設けられている。
また、この被保持部39は、この被保持部39のボタン32側の他端部が前記ボタン本体33に取付固定されているため、ボタン本体33が前記ボタン保持部34の筒状部34aに沿って進退するのに応じて、前記ヘッドレストフレーム9によって保持されながら左右方向、すなわち自身の長さ方向に沿って移動できるように設定されている。
これに伴って、係合部40も左右方向、すなわち自身の長さ方向に沿って移動できるようになっている。このように移動可能に設定された係合部40を、前記ラチェット部35側に移動して前記係合歯36および連結部6の後端部8に噛み合わせることによって、前記ヘッドレストフレーム9を、前記ロックブラケット4に対して前後方向に複数の位置でロックすることができる。
また、係合部40を、前記ラチェット部35とは反対側に移動して前記係合歯36および連結部6の後端部8に噛み合わない状態とすることによって、前記ヘッドレストフレーム9のロックを解除することができる。
なお、係合部40は、被保持部39と共に左右方向に配置され、前記ラチェット部35側に移動して係合歯36および連結部6の後端部8に噛み合うものである。したがって、この係合部40は、
図5,
図7,
図9に示すように、ラチェット部35内に挿入されるだけでなく、前記連結部6によって周囲を囲まれることにもなる。これによって、ラチェット部35に挿入されたロック部材38は、連結部6によって上方の位置や、前方および後方の位置を規制できる。
【0065】
また、前記被保持部39は、後述する付勢部材42の一端部42aが取り付けられる被取付部39aを有しており、この被取付部39aは、前記被保持部39と一体形成されている。この被取付部39aは環状部39bと、孔部39cとから構成されている。すなわち、被取付部39aは、中央に貫通孔が形成された環状体とされている。
この被取付部39aは、前記被保持部39の一部をプレス加工するとともに穴あけ加工することによって前記被保持部39と一体形成されている。したがって、この被取付部39aは、
図5に示すように、前記被保持部39よりも肉薄に形成されているので、前記孔部39cを形成しやすい。また、このように被取付部39aは前記被保持部39をプレス
加工することによって一体形成されているので、例えば別部材を被保持部39に一体的に取り付ける場合に比して軽量化を図ることができる。
また、この被取付部39aは、前記被保持部39に対して、この被保持部39の中心軸と離れる方向にずらして配置されている。より詳細には、前記環状部39bが、
図5,
図7に示すように、被保持部39の中心軸と、係合部40の中心軸40aとを結ぶ線(図中の一転鎖線)に沿って配置されている。この被取付部39aに取り付けられる付勢部材42の一端部42a(後述する)は、前記被保持部39の中心軸に対して直交する方向にずらして配置されることになる。ただし、これに限定されるものではなく、ロック機構を確実に動作させることができる範囲で、本実施の形態とは異なる角度に適宜変更してもよい。
そして、このような被保持部39は、左右方向に延在する中心軸の軸周りに回動可能とされており、これに伴って、前記係合部40は、この被保持部39の軸周りの回動に連動して前記凹溝37の底部37aに当接または離間する方向に移動可能とされている。
【0066】
前記ヘッドレストフレーム9の一方および他方の凸部16A,16Aには、
図6,
図7に示すように、これら一方および他方の凸部16A,16Aを左右方向に貫通するとともに、前記被保持部39が挿通される挿通孔63がそれぞれ形成されている。すなわち、これら挿通孔63は、前記被保持部39によって、前記壁160a,160bを左右に貫通する位置と、前記壁161a,161bを左右に貫通する位置とにそれぞれ形成されている。
挿通孔63は、
図6,
図7に示すように、前記被取付部39aが挿通される逃げ部63a,63aを備えており、これら逃げ部63a,63aは、正円状の挿通孔63本体の中心部を介して互いに相反する方向に延在するように形成されている。
【0067】
また、前記一方の凸部16Aの壁160a,160bおよび他方の凸部16Aの壁161a,161bにそれぞれ形成される挿通孔63…は、各挿通孔63…の本体は左右方向に対向するようにして配置されているが、これら挿通孔63…のうち隣り合う挿通孔63,63の逃げ部63a,63a同士は、側面視において向きが異なるようにして前記一方および他方の凸部16A,16Aに形成されている。
隣り合う挿通孔63,63の逃げ部63a,63a同士は、
図6および
図7に示すように、前記挿通孔63に挿通された被保持部39の中心軸と、前記係合部40が後述する係合部用長孔62の一端部(前端)側に位置する場合の中心軸40aとを結ぶ線に沿って配置される第一パターンと、前記被保持部39の中心軸と、前記係合部40が後述する係合部用長孔62の他端部(後端)側に位置する場合の中心軸40aとを結ぶ線に沿って配置される第二パターンのうち、いずれかのパターンに従って配置されている。
本実施の形態においては、前記他方の凸部16Aの壁161bに形成された挿通孔63は、第二パターンに従って配置されており、壁161aに形成された挿通孔63は、第一パターンに従って配置されている。また、前記一方の凸部16Aの壁160bに形成された挿通孔63は、第二パターンに従って配置されており、壁160aに形成された挿通孔63は、第一パターンに従って配置されている。
したがって、これら挿通孔63…に前記被保持部39を挿通させる際には、被保持部39を中心軸の軸周りに回動させて、前記被取付部39aの向きを変えながら挿通させることになる。
【0068】
また、被保持部39は、
図1に示すように、前記凸部16A,16Aに形成された各挿通孔63に挿通されることにより、これら凸部16A,16Aで両持ち保持されることになる。特に、これら凸部16A,16Aの一方の壁160bと他方の壁161aとの間で両持ち保持されることになるので、被保持部39のうちの最も荷重がかかる部分を確実に保持でき好ましい。
【0069】
さらに、前記一方および他方の凸部16A,16Aは、
図1および
図6に示すように、これら凸部16A,16Aのそれぞれと一体形成されるとともに前記可動機構としての被保持部39側(すなわち、凸部16Aの内部側)に突出する前記突出部163a,163bを備えている。
これら突出部163a,163bは、ヘッドレストフレーム9の製造段階で、凸部16A,16Aと一体成形されており、これに伴って、これら突出部163a,163bが位置する部位の凸部16Aの第二フレーム19側面には凹部が形成された状態となっている。そして、これら突出部163a,163bは、
図2に示すように、凸部16Aに対応して前面壁部11の正面側に形成される凹部側に突出した状態となっている。このように突出部163a,163bが形成された部分は剛性の高い部分となるので、一方および他方の凸部16A,16A自体の強度を高めることができるとともに、前記被保持部39を安定的に支えることができる。
なお、図示はしないが、これら突出部163a,163bの内部は、前記被保持部39だけでなく、前記被取付部39aも挿通させることができるように空洞状に形成されており、この空洞部の左右に、前記挿通孔63,63がそれぞれ形成されている。
【0070】
係合部40は、他方の凸部16Aを左右に貫通するようにして設けられている。この他方の凸部16Aの壁161a,161bには、それぞれ、係合部用長孔62,62が形成されている。これら2つの係合部用長孔62,62は、左右方向に並んで配置された状態となっている。
また、壁161aに形成された係合部用長孔62は、前記ラチェット部35に対向するようにして配置されている。
【0071】
さらに、係合部用長孔62,62は、前記第一フレーム10と第二フレーム19との合わせ面、すなわち前記凸部16A,16Aの第二フレーム19側面を越えない範囲に納まる。つまり、係合部用長孔62は、前記第一フレーム10の前面壁部11から、前記凸部16A,16Aの第二フレーム19側面までの間に設けられている
これによって、ロック部材38の係合部40も、係合部用長孔62と同様の範囲内に設けられることになり、係合部40の動作範囲も、同様の範囲内に収めることができるので、ヘッドレストフレーム9の前後方向のコンパクト化を図ることができる。
【0072】
係合部用長孔62は、
図5〜
図7に示すように湾曲している。この係合部用長孔62が湾曲する方向は、前記被保持部39を軸にして係合部40を回転させる方向と等しくなるように設定されている。すなわち、回転する係合部40の軌道に沿うようにして湾曲している。このように係合部用長孔62が湾曲して形成されることによって、前記ヘッドレストフレーム9の移動に伴って係合部40が係合歯36を乗り越える際の動作を許容することが可能となっている。
【0073】
また、係合部40は、
図7に示すように、付勢手段によって、この係合部用長孔62の延在方向下方に押し付けられた状態が通常の状態であり、係合部40が係合歯36を乗り越える際に係合部用長孔62の延在方向上方に持ち上がるように設定されている。したがって、係合部用長孔62の延在方向は、前記通常の状態に対して、付勢手段によって係合部40を付勢する方向とは反対の方向に設定されていることになる。
【0074】
また、このような係合部用長孔62に挿通される係合部40は、
図7に示すように、前記凹溝37…と係合部用長孔62の双方に接することにより、前記凹溝37…に固定されている。さらに、前記凹溝37…と係合部用長孔62が、側面視において交差するようにして配置されている。
すなわち、ヘッドレストフレーム9自体は、前記横軸部1bとの間に設けられた前記複数の付勢部材3,3によって横軸部1b側に常に引き寄せられている状態となっている。
したがって、ロック部材38の被保持部39も、常に横軸部1b側に引き寄せられている状態となっている。
さらに、係合部40と被保持部39は連結部41を介して連結されているから、係合部40も横軸部1b側に引き寄せられるが、この係合部40は、前記付勢手段によって係合部用長孔62の延在方向下方に常に押し付けられている。つまり、係合部用長孔62を含むヘッドレストフレーム9が横軸部1b側に付勢されており、係合部用長孔62の延在方向下方の縁部が前記係合部40の前方側に強固に当接することになる。これに伴って、係合部40は、係合歯36および連結部6の後端部8のラチェット部側面8aに強固に当接して、これら係合歯36および連結部6の後端部8のラチェット部側面8aに噛み合うことになる。さらに、係合部40は、付勢手段によって凹溝37の底部37aに当接することになる。
このようにして係合部40は、互いに交差する凹溝37…と係合部用長孔62の双方に接することになる。この時、係合部40は、前記凹溝37の底部37aに位置している。さらに、係合部40の中心軸40aは、
図7に示すように、側面視において、前記係合部40と凹溝37とが接する部位P1と、前記係合部40と係合部用長孔62とが接する部位P2とを結ぶ仮想線V1よりも凹溝37の底部37a側に位置している。
【0075】
さらに、この係合部40の中心軸40aは、ヘッドレストフレーム9を移動させて係合部40を複数の係合歯36…のいずれに係合させた場合であっても、これら部位P1,P2と、前記係合部40と凹溝37の底部37aとが接する部位P3とを互いに結ぶ三角形状の仮想線V2の範囲内に収まるように設定されている。なお、
図7において仮想線V2は、仮想線V1を含んでいる。
【0076】
付勢手段は、
図1,
図5〜
図7,
図9に示すように、一端部42aが前記被取付部39aに取り付けられるとともに、他端部42bが前記ヘッドレストフレーム9側に取り付けられる付勢部材42とされている。より詳細には、本実施の形態の付勢部材42の他端部42bは、前記被取付部39aよりも下方かつ後方に位置するガイド部材65(後述する)に取り付けられている。したがって、この付勢部材42は、上下方向に配置されることになる。なお、この付勢部材42は、一端部42aが取り付けられた被取付部39aと、他端部42bが取り付けられたガイド部材65とを互いに引き寄せる方向に付勢するコイルバネ、すなわち、引張バネとされている。
また、この付勢部材42の一端部42aおよび他端部42bは、フック状に形成されている。
【0077】
また、この付勢部材42は、前記ロックブラケット4よりも、操作部である前記ボタン32側に取り付けられている。すなわち、この付勢部材42は、前記一方の凸部16Aと、前記ボタン取付部12aおよび前記ボタン32側の周壁12との間に形成されたスペースを利用して、第一フレーム10に保持させることができる。
さらに、付勢部材42は、前記ロックブラケット4よりも、操作部である前記ボタン32側に取り付けられているため、例えば前記ボタン32のボタン本体33を前記ボタン保持部34に対して着脱可能に組み付けた場合には、ボタン本体33を取り外せば、ヘッドレストフレーム9内の付勢部材42の組み付け状態の確認が可能となることから、メンテナンス性が向上する。また、前記ボタン本体32を透明もしくは半透明の材料で形成すれば、ボタン本体33をボタン保持部34に取り付けた状態のままでも、ヘッドレストフレーム9内の付勢部材42の組み付け状態の確認が可能となる。
【0078】
付勢部材42は、前記被保持部39に対して、前記係合部40を前記ラチェット部35に向かって付勢する付勢力と、前記係合部40を前記凹溝37の底部37aに向かって付勢する付勢力とを付与できる。すなわち、この付勢部材42は一つで二つの性質を持っていることになる。
このように付勢部材42に二つの性質を持たせるために、前記被保持部39の被取付部39aは、
図1および
図5に示すように、後述するガイド部材65の被取付部65aよりも前記被保持部39の一端部側に配置されるとともに、後述するガイド部材65の被取付部65aよりも前方に配置されている。つまり、この付勢部材42は、垂直面に対して傾けて取り付けられており、下方に位置する他端部42bが、上方に位置する一端部42aよりもラチェット部35から離間して設けられた状態となる。
また、付勢部材42は、通常の状態よりも伸長させた状態で、前記被保持部39の被取付部39aと、後述するガイド部材65の被取付部65aとの間に架設されている。
すなわち、この付勢部材42は引張バネであるため、伸長させた状態では常に元の状態に戻ろうとする力が作用する。この力を利用して、前記係合部40を前記ラチェット部35に向かって付勢できるとともに、前記係合部40を前記凹溝37の底部37aに向かって付勢できる。これによって、前記係合部40を、常にロック状態となるように付勢することができる。
【0079】
なお、前記被取付部39aと一方の凸部16Aの壁160aとの間隔は、前記ボタン本体33と当接板部34cとの間隔よりも長くなるように設定されている。これによって、前記ボタン32を押して被保持部39を軸方向にスライドさせた際に、前記被取付部39aが一方の凸部16Aの壁160aに接触する前に、前記ボタン本体33が前記当接板部34cに接触するため、前記被取付部39aと一方の凸部16Aの壁160aとの接触を防ぐことができる。
本実施の形態においては、前記被取付部39aと一方の凸部16Aの壁160aとの間隔は、例えば15mm程度とされており、前記ボタン本体33と当接板部34cとの間隔は、例えば13mm程度とされている。
なお、前記係合部40の先端部が、前記ラチェット部35から離脱するまでの長さは、前記ボタン本体33と当接板部34cとの間隔よりも短くなるように設定されている。つまり、前記ボタン32を押して被保持部39を軸方向にスライドさせた時に、前記ボタン本体33が当接板部34cに当接するまでの間に、前記係合部40をラチェット部35から離脱させることができる。これによって、確実にロック解除を行うことができる。
【0080】
以上のようなロック機構によれば、前記係合部40が、前記ヘッドレストフレーム9の前後方向への移動に伴って複数の係合歯36…に噛み合うため、前記ヘッドレストフレーム9を、前後方向に複数の位置で段階的に調整できる。
また、前記付勢部材42によって係合部40を間接的にラチェット部35に向かって付勢するので、この係合部40を複数の凹溝37…に差し込むことができる。さらに、前記被保持部39を操作することによって係合部40をラチェット部35から離間する方向に移動させれば、この係合部40を、前記付勢部材42による付勢力によって、ラチェット部35に噛み合う方向に戻すことができる。すなわち、前記ヘッドレストフレーム9を、前記ロックブラケット4に対して前後方向に複数の位置でロックおよびロック解除することができる。
【0081】
なお、本実施の形態においては、前記付勢部材42を上下方向に配置するとしたが、前記ラチェット部35の凹溝37の開口方向が本実施の形態の構造と異なる場合は、付勢部材42を、前記ラチェット部35の凹溝37の開口方向と同じ方向にわたって取り付けると、ヘッドレストフレーム9内にコンパクトに納めることができる。
【0082】
続いて、ガイド機構について説明する。
ガイド機構のガイド凹部64は、
図9に示すように、前記ロックブラケット4の側面に、前記ヘッドレストフレーム9の移動方向に沿って長尺に形成されるものである。
本実施の形態において、このガイド凹部64は、前記ロックブラケット4を左右の厚さ方向に貫通して形成されることによって前記ラチェット部35と、水平面に直角な同一平
面上に設けられている。
【0083】
なお、前記ガイド凹部64は、前記ヘッドレストフレーム9の移動方向に沿って長尺に形成されている。このガイド凹部64の短手方向の長さは、ガイド部材65の直径よりも若干大きい程度に設定されている。これによって、ガイド部材65が、前記ガイド凹部64に沿って移動する際に、このガイド凹部64の延在方向以外の方向に大きく動くことを防ぐことができる。
これによって、このガイド部材65によるヘッドレストフレーム9のガイドを安定的に行うことができる。
【0084】
なお、本実施の形態では、ロックブラケット4を貫通するガイド凹部64としたが、ロックブラケット4を貫通しないガイド凹部としても良い。
この場合、ロックブラケット4を貫通しないガイド凹部は、一部が前記ラチェット部35と、水平面に直角な同一平面上に設けられることになる。
また、ガイド凹部64を、ロックブラケット4を貫通するもの、ロックブラケット4を貫通しないもののいずれにしても、このガイド凹部64は、前記ラチェット部35よりも、ロックブラケット4の基端部側に設けられている。
【0085】
ガイド機構のガイド部材65は、金属製の軸部材であり、
図1,
図5,
図6,
図9に示すように、前記ヘッドレストフレーム9に保持されるとともにガイド凹部64に係合し、前記ヘッドレストフレーム9の移動に伴ってガイド凹部64に沿って移動する。
本実施の形態では、前記ガイド凹部64はロックブラケット4を貫通して形成されているため、このガイド凹部64に挿通されている。
なお、このガイド部材65は金属製であるため、熱等の影響を受けにくい。
【0086】
また、このガイド部材65は、前記付勢部材42の他端部42bが取り付けられる被取付部65aを有しており、この被取付部65aは、前記ガイド部材65と一体形成されている。この被取付部65aは環状部65bと、孔部65cとから構成されている。すなわち、被取付部65aは、中央に貫通孔が形成された環状体とされている。
この被取付部65aは、前記ガイド部材65の一部をプレス加工するとともに穴あけ加工することによって前記ガイド部材65と一体形成されている。
また、本実施の形態では、前記付勢部材42は、前記ロックブラケット4よりも前記ボタン32側に取り付けられているため、この被取付部65aも前記ガイド部材65の前記ボタン32側に設けられている。
【0087】
また、このガイド部材65は、前記ガイド凹部64に挿通される方向に長尺に形成されており、このガイド部材65のうち前記ガイド凹部64が形成されたロックブラケット4を挟んで両側に位置する部分が、前記ヘッドレストフレーム9よって保持されている。
すなわち、前記ヘッドレストフレーム9の凸部16A,16Aには、ガイド部材65が挿通される孔部66…がそれぞれ形成されている。これら孔部66…は、前記ガイド部材65によって、前記壁160a,160bを左右に貫通する位置と、前記壁161a,161bを左右に貫通する位置とにそれぞれ形成されている。
【0088】
また、ガイド部材65は、
図1,
図6,
図9に示すように、前記凸部16A,16Aに形成された各孔部66…に挿通されることにより、これら凸部16A,16Aで両持ち保持されることになる。特に、これら凸部16A,16Aの一方の壁160bと他方の壁161aとの間で両持ち保持されることになるので、ガイド部材65のうちの最も荷重がかかる部分の一つを確実に保持できて好ましい。
【0089】
さらに、前記一方の凸部16Aおよび他方の凸部16Aは、
図1,
図2,
図6に示すよ
うに、これら凸部16A,16Aのそれぞれと一体形成されるとともに前記可動機構としてのガイド部材65側に突出する前記突出部163c,163dを備えている。
これら突出部163c,163dは、ヘッドレストフレーム9の製造段階で、凸部16A,16Aと一体成形されており、これに伴って、これら突出部163c,163dが位置する部位の凸部16Aの第二フレーム19側面には凹部が形成された状態となっている。そして、これら突出部163c,163dは、
図2に示すように、凸部16Aに対応して前面壁部11の正面側に形成される凹部側に突出した状態となっている。
また、突出部163c,163dにはガイド部材65を挿通させるための孔が形成されており、この孔は、前記孔部66…と略等しい形状に設定されるとともに連続して設けられている。このように突出部163c,163dが形成された部分は剛性の高い部分となるので、一方および他方の凸部16A,16A自体の強度を高めることができるとともに、前記ガイド部材65を安定的に支えることができる。
【0090】
また、ガイド部材65の両端部は、
図1,
図6,
図8に示すように、このガイド部材65が貫通する前記凸部16A,16Aよりも左右の外側に離間して配置される前記他の凸部16B,16Bによって、それぞれ保持されている。すなわち、これら他の凸部16B,16Bには、上述のようにガイド部材65用の孔部165およびストッパー部166がそれぞれ形成されており、孔部165に、ガイド部材65が挿通されるとともに、ストッパー部166にガイド部材65の端部が挿入されている。
前記孔部165は、
図8に示すように、前記被取付部65aが挿通される逃げ部165a,165aを備えており、これら逃げ部165a,165aは、正円状の孔部165本体の中心部を介して互いに相反する方向に延在している。これによって、ガイド部材65を孔部165に挿通させる際に、前記被取付部65aも逃げ部165a,165aに確実に挿通させることができる。
なお、ガイド部材65の両端部はテーパ形状とされており、凸部16Aに形成された各孔部66…と、凸部16Bに形成された孔部165およびストッパー部166に挿入しやすくなっている。
【0091】
ガイド部材65は、前記ストッパー部166によって軸受けされており、このストッパー部166よりも先に移動することが規制されている。また、ガイド部材65の前記被取付部65a側に位置する端部は、前記第一フレーム10と第二フレーム19とを組み合わせた時に前記凸部16Bの外側に近接して設けられる前記第二フレーム19の周壁21によって移動が規制されることになる。
【0092】
さらに、このガイド部材65のうち、このガイド部材65が貫通する凸部16A,16Aを挟んで左右の外側に位置する部分と、前記ヘッドレストピラー1の横軸部1bとの間には、前記ガイド部材65を横軸部1bに引き寄せる方向に付勢する前記付勢部材3,3がそれぞれ設けられている。すなわち、上述したように、付勢部材3,3の横軸部1b側端部が前記取付部2,2に引掛けられている。したがって、これら付勢部材3,3のヘッドレストフレーム9側端部はガイド部材65に引掛けられている。
また、付勢部材3,3のうち、前記ボタン32側の付勢部材3のヘッドレストフレーム9側端部は、前記一方の凸部16Aと、前記ガイド部材65の被取付部65aとの間に設けられている。
【0093】
ガイド部材65は、このように前記凸部16A,16Aから離間して配置される凸形状やビード等によって両端部を保持されることによって、付勢部材3,3のヘッドレストフレーム9側端部を引掛けることができるので好ましい。すなわち、ガイド部材65のうち、付勢部材3,3が引掛けられる部位は、凸部16Aと凸部16Bとによって両持ち保持される状態となっているので、付勢部材3,3が引掛けやすいだけでなく、付勢部材3,3を確実に保持できる。
また、このように凸部16Aと凸部16Bとによって両持ち保持されて剛性の高い状態のガイド部材65に対して、前記被取付部65aを介して、前記付勢部材42の他端部42bを取り付けることができる。
【0094】
次に、ヘッドレストの組立方法について説明する。なお、ヘッドレストフレーム9や可動機構を構成する各部・各パーツは予め加工成形されているものとする。
まず、ヘッドレストピラー1の横軸部1bに、取付部2,2と、ロックブラケット4とを固定する。そして、第一フレーム10の下部開放部18にロックブラケット4を挿入するようにして、この第一フレーム10を横軸部1bに取り付ける。この時、把持部17,17によって横軸部1bを把持する。
【0095】
続いて、ガイド部材65を、一方の凸部16Bの孔部165から挿入し、凸部16A,16Aの孔部66…とロックブラケット4に形成されたガイド凹部64に挿通させ、さらに他方の凸部16Bのストッパー部166まで挿入する。また、ガイド部材65の被取付部65aは、前記一方の凸部16Bの孔部165の逃げ部165a,165aを挿通させるようにする。
そして、付勢部材3,3を、ガイド部材65と取付部2,2との間に取り付ける。
【0096】
続いて、ロック部材38の被保持部39を、前記他方の凸部16Aの壁161bに形成された挿通孔63から、前記一方の凸部16Aの壁160aに形成された挿通孔63に向かって挿通させ、先端部がボタン取付部12aに到達するまで確実に差し込む。
また、ボタン取付部12aにはボタン保持部34およびボタン本体33を収容しておき、被保持部39の先端部が差し込まれた時に、この先端部がボタン本体33に取り付けられるようにする。
なお、
図7に示すように、一方の凸部16Aの壁161bに形成された挿通孔63の逃げ部63a,63aは、前記第一パターンに従って配置され、この壁161bに対向する壁161aに形成された挿通孔63の逃げ部63a,63aは前記第二パターンに従って配置されており、互いに向きが異なる。
さらに、他方の凸部16Aの壁160bに形成された挿通孔63の逃げ部63a,63aも、第一パターンに従って配置され、この壁160bに対向する壁160aに形成された挿通孔63の逃げ部63a,63aも第二パターンに従って配置されており、互いに向きが異なる。
このため、被保持部39を各挿通孔63…に挿通させる際は、この被保持部39を軸周りに交互に回動させながら、壁161bに形成された挿通孔63から、壁160aに形成された挿通孔63に向かって、前記被取付部39aを挿通させるようにする。
【0097】
さらに、被保持部39の挿入に伴って、この被保持部39と連結部41を介して連結された係合部40も、前記他方の凸部16Aに形成された係合部用長孔62,62に挿通させる。また、この係合部40の先端部を前記ラチェット部35にも挿通させ、前記係合歯36に係合させるようにする。
【0098】
続いて、前記付勢部材42の一端部42aを、前記被保持部39の被取付部39aに取り付けるとともに、他端部42bを、前記ガイド部材65の被取付部65aに取り付けるようにする。
そして、この付勢部材42の付勢力によって、前記ロック部材38自体が前記ボタン32側に引き寄せられ、前記係合部40が前記ラチェット部35の凹溝37の底部37aに押し付けられることになる。
【0099】
続いて、
図6に示すように、化粧縁部材28,28を、第一フレーム10の底壁14に形成された切欠部14a,14aに取り付ける。その後、第二フレーム19を、第一フレ
ーム10と嵌合するように組み合わせる。このように第二フレーム19を第一フレーム10に嵌合させることによって、ボタン32が、第一フレーム10および第二フレーム19のボタン取付部12a,21aに取り付けられ、化粧縁部材28,28が、第一フレーム10および第二フレーム19の底壁14,24に取り付けられることになる。
さらに、ガイド部材65は、第二フレーム19の周壁21によって軸方向への移動を規制される。
また、突出支持部20aが、前記横軸部1bの中央部と、この横軸部1bよりも下方に位置する第一フレーム10の底壁14との間に差し込まれることになる。
以上のようにしてヘッドレストを組み立てることができる。
このようなヘッドレストは、前記ヘッドレストフレーム9と一体化されるとともに発泡樹脂等からなるクッションパッド(図示せず)によって覆われる。
【0100】
次に、以上のように構成されたヘッドレストの動作について説明する。
ヘッドレストの動作は、
図9に示すように、前記ヘッドレストピラー1の横軸部1bに対して前後方向に回動自在に取り付けられたヘッドレストフレーム9の前後方向への回動に基づくものである。
また、ヘッドレストフレーム9は、前記付勢部材3,3によって横軸部1b側に引き寄せる方向に付勢されている。したがって、
図9(a)に示すように、ヘッドレストフレーム9が後方に引き寄せられるとともに、前記ロック部材38の係合部40が、ラチェット部35の凹溝37のうち、最も後方にある凹溝37に挿入され、連結部6の後端部8に噛み合っている状態が、ヘッドレストフレーム9の通常位置とされている。
【0101】
まず、通常位置からヘッドレストフレーム9を前方に移動させる際は、ヘッドレストフレーム9に対して、このヘッドレストフレーム9を前方に傾ける方向に力を加える。
これによって、係合部40が、
図9(b)に示すように、ラチェット部35に挿入されたまま、最後方の凹溝37の底部37aから離れて、最後方の係合歯36の後端面36aに沿って上方にスライドしていくことになる。
【0102】
この時、係合部40は、前記付勢部材42による回転方向の付勢力に逆らって、係合部用長孔62の延在方向の上方へと移動する。すなわち、係合部40には、前記付勢部材42によって、より強い付勢力が付与されている。
これに伴って、前記被保持部39も軸周りに回動することになり、前記被取付部39aも被保持部39とともに回動することになる。この時の被取付部39aには、前記付勢部材42によって、より強い付勢力が付与されている。
【0103】
係合部40は、最後方の係合歯36の後端面36aに沿って上方にスライドしつつ、係合部用長孔62の延在方向の上方へと移動し、最後方の係合歯36の上端部に到達する。
そして、係合部40が、最後方の係合歯36の上端部を乗り越えた時、この係合部40は、前記付勢部材42の付勢力によって、後方から2番目の凹溝37の底部37aに向かって自動的に移動し、
図9(c)に示すように、この2番目の凹溝37の底部37aに嵌まるとともに、最後方の係合歯36に噛み合う。
また、これに伴って、前記被保持部39および被取付部39aは、前記付勢部材42による強い付勢力が解除された状態、すなわち、通常の状態に戻ることになる。
【0104】
また、係合部用長孔62の延在方向の上方へと移動していた係合部40は、最後方の係合歯36の上端部を乗り越えた時に、係合部用長孔62の延在方向の下方へと移動する。
すなわち、係合部40は、2番目の凹溝37の底部37aに嵌まり、最後方の係合歯36に噛み合うのと同時に、係合部用長孔62の延在方向の下方へと移動する動作を行う。
【0105】
以上のようにして、段階的にヘッドレストフレーム9を前方へと移動させることができ
る。ヘッドレストフレーム9を、前記ロックブラケット4に対して前後方向に複数の位置でロックすることができる。
図9(d)に示すように、係合部40が最前方の凹溝37に挿入され、最前方の係合歯36に噛み合っている状態が、ヘッドレストフレーム9の前後方向への移動の最前位置である。
【0106】
このように最前位置に移動したヘッドレストフレーム9を通常位置へと戻す場合は、前記ボタン32を押して被保持部39を軸方向にスライドさせる。すなわち、前記付勢部材42を伸長させる方向にロック部材38自体を移動させる。
係合部40は、被保持部39のスライドに連動してラチェット部35から離脱する。
【0107】
この時、係合部40は、ラチェット部35のいずれの係合歯36にも連結部6の後端部8にも噛み合っていない状態となるので、付勢部材3,3によって後方付勢されているヘッドレストフレーム9は最後部へと移動する。
係合部40は、ヘッドレストフレーム9が最後部へと戻った後に、付勢部材42の付勢力によって再びラチェット部35に挿入され、
図9(a)に示すように、最後方にある凹溝37に挿入され、連結部6の後端部8に噛み合う。すなわち、通常位置へと戻ることになる。
【0108】
また、ヘッドレストフレーム9の動作に伴って、ガイド部材65も、ガイド凹部64の延在方向に沿って移動している。
すなわち、ヘッドレストフレーム9の通常位置においては、
図9(a)に示すように、ガイド部材65はガイド凹部64の延在方向の後端に位置している。また、ヘッドレストフレーム9の最前位置においては、
図9(d)に示すように、ガイド部材65はガイド凹部64の延在方向の前端付近に位置している。
【0109】
なお、ヘッドレストフレーム9を、最前位置よりも前方に移動させようとすると、係合部40は最前方の凹溝37の底部37aから離れて、連結部6の前端部7に沿って上方にスライドしていくことになる。また、係合部40は、係合部用長孔62の延在方向の上方へと移動することになる。
この状態で、さらにヘッドレストフレーム9を前方に移動させようとした場合は、係合部40と係合部用長孔62の延在方向の上端との間に強い力が加わる前に、ガイド部材65がガイド凹部64の延在方向の前端に当接する。これによって、ヘッドレストフレーム9が前方に移動できないように規制できるので、係合部40と係合部用長孔62の延在方向の上端との間に強い力が加わることを防ぐことができる。
以上のようにしてヘッドレストを動作させることができる。
【0110】
本実施の形態によれば、前記ロック機構は第一フレーム10によって保持され、第二フレーム19によって覆われているので、このロック機構を前記ヘッドレストフレーム9内に収容できるとともに、前後方向に移動する第一フレーム10の動作に合わせて、ロック機構を動作させることができる。これによって、例えば、これら第一フレーム10とロック機構とを別々に動作させる場合とは異なり、ヘッドレストフレーム9の動作の安定性を確保することができる。
さらに、前記第一フレーム10によってロック機構を保持できるので、例えば第一フレーム10と第二フレーム19のそれぞれにロック機構を保持させて、これら第一フレーム10と第二フレーム19とを組み合わせる場合に比して、組み付け性や作業性を向上させることができる。
【0111】
さらに、前記第一フレーム10によってロック機構を保持した状態では、これら第一フレーム10とロック機構とを同時にヘッドレストピラー1に組み付けることができるので
、例えば第一フレーム10とロック機構とを、それぞれ別々にヘッドレストピラー1に組み付ける場合に比して、組み付け性や作業性をより向上させることができる。
【0112】
また、前記付勢部材42は、前記被保持部39を中心軸の軸周りに回動させる方向に付勢する付勢力を付与するように設定されており、付勢部材42の一端部42aが取り付けられる被取付部39aが、軸周りに回動可能な被保持部39に対して、この被保持部39の中心軸と離れる方向にずらして配置されているので、前記付勢部材42によって被保持部39を常に軸周りに回転させる方向に付勢できる。
これによって、前記被保持部39の軸周りの回動に連動して凹溝37の底部37aに当接または離間する方向に移動可能な係合部40を、凹溝37の底部37aに当接する方向に付勢できるので、前記係合部40を凹溝37の底部37a側に押し付けることができ、係合部40と複数の係合歯36…との良好な噛み合わせ状態が得られる。さらに、前記被保持部39を操作することによって係合部40を凹溝37の底部37aから離間する方向に移動させれば、この係合部40を、前記付勢部材42による付勢力によって、凹溝37の底部37aに当接する方向に戻すことができる。
したがって、前記付勢部材42には、前記係合部40をラチェット部35に噛み合う方向に付勢する性質と、前記係合部40を凹溝37の底部37aに当接させる方向に付勢する性質との、2つの性質を持たせることができる。
【0113】
また、前記被取付部39aは、前記被保持部39と一体形成されているので、例えば被保持部39と被取付部39aとを別部材で構成する場合に比して、この被取付部39aの剛性を向上できるとともに、この被取付部39aに一端部42aが取り付けられる付勢部材42を安定して支持できる。
【0114】
また、前記付勢部材42の一端部42aが被取付部39aに取り付けられるとともに、他端部42bがヘッドレストフレーム9側に取り付けられているので、この付勢部材42による付勢力を被保持部39に対して安定的に作用させることができる。
また、この付勢部材42は上下方向に配置されているので、左右方向に配置された被保持部39とは交差する方向に配置されることになる。これによって、例えば付勢部材42を、被保持部39と同様に左右方向に配置する場合に比して、この付勢部材42をヘッドレストフレーム9内に収容するためのスペースを確保しやすくなる。さらに、ヘッドレストの左右方向の小型化を図ることができる。
【0115】
また、隣り合う挿通孔63,63の逃げ部63a,63a同士は、側面視において向きが異なるようにして一方および他方の凸部16A,16Aに形成されているので、例えば逃げ部63a,63a同士が側面視において重なり合うように配置される場合とは異なり、被保持部39が逃げ部63a,63a側に移動することを抑制できるので、この被保持部39のガタつきを抑制できる。
【0116】
また、前記ロック部材38は、前記被保持部39の他端部(先端部)から係合部40の他端部(先端部)にかけて折り返すようにして形成されているので、ロック部材38自体の左右方向の長さが必要以上に長くなることを抑制できる。また、前記付勢部材42は、ロックブラケット4よりも操作部である前記ボタン32側に取り付けられているので、ボタン32とは反対側のスペースを利用して付勢部材42を取り付ける必要がなくなる。これによって、ヘッドレストフレーム9内の限られたスペースを有効活用が可能となる。