特許第6291109号(P6291109)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6291109
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】フィルタ
(51)【国際特許分類】
   B01D 46/10 20060101AFI20180305BHJP
   B01D 46/52 20060101ALI20180305BHJP
   B01D 39/20 20060101ALI20180305BHJP
   F24F 7/00 20060101ALI20180305BHJP
   F24F 13/28 20060101ALI20180305BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
   B01D46/10 A
   B01D46/52 A
   B01D39/20 A
   F24F7/00 A
   F24F13/28
   F24F7/06 C
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-83967(P2017-83967)
(22)【出願日】2017年4月20日
【審査請求日】2017年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100118625
【弁理士】
【氏名又は名称】大畠 康
(74)【代理人】
【識別番号】100144200
【弁理士】
【氏名又は名称】奥西 祐之
(72)【発明者】
【氏名】金光 和珠
(72)【発明者】
【氏名】池田 宗弘
【審査官】 宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−163014(JP,A)
【文献】 実公昭58−013933(JP,Y1)
【文献】 特開2000−329472(JP,A)
【文献】 特開2003−302078(JP,A)
【文献】 特開2003−299930(JP,A)
【文献】 特開2000−061226(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103913047(CN,A)
【文献】 米国特許第06270546(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 46/10
B01D 39/20
B01D 46/52
F24F 7/00
F24F 7/06
F24F 13/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを循環させてワークの熱処理を行うクリーンオーブンに設けられる金属製のフィルタであって、
熱処理されるワークが配置される熱処理室側に突出する金属製のフィルタ部材を備える頂部と、
前記頂部に連続して形成される金属製のフィルタ部材を備える側部と、を備えていることを特徴とする、フィルタ。
【請求項2】
前記頂部及び前記側部はそれぞれ、金属製のフレーム部材を備え、プレート形状を有しており、
前記フレーム部材は、前記フィルタ部材の外周に溶接によって取り付けられている、請求項1記載のフィルタ。
【請求項3】
前記側部は、前記頂部の外周部全体から連続して形成されている、請求項1又は2に記載のフィルタ。
【請求項4】
前記側部の端部にはフランジが形成されている、請求項1〜3のいずれか1つに記載のフィルタ。
【請求項5】
前記頂部は、プレート形状のフィルタ部材がガス流れ方向に折り返しされている折り返し形状を有している、請求項1〜4のいずれか1つに記載のフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体部品や精密材料等の乾燥や焼成等に使用されるクリーンオーブンに用いられるフィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、クリーンオーブンには、特許文献1に示されるように、微細なダスト(パーティクル)を取り除くHEPAフィルタが設けられている。
【0003】
ここで、特許文献2に示されるように、HEPAフィルタは、ガラス繊維やセラミックファイバーで濾材が作成されているため、温度変化によって発塵し、それによって、クリーンオーブンの熱処理室にパーティクルが持ち込まれるという課題が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−156089号公報
【特許文献2】特開平5−208112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そして、特許文献2では、温度変化を抑制するために、専用のヒータを設けることが開示されている。しかし、設備が大がかりとなり、コストが増加するという課題がある。
【0006】
そこで、本発明では、コストの増加を抑制しながら、熱処理室内に持ち込まれるパーティクルの量を低減できるクリーンオーブンに用いられるフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ガスを循環させてワークの熱処理を行うクリーンオーブンに設けられる金属製のフィルタであって、
熱処理されるワークが配置される熱処理室側に突出する頂部と、
前記頂部に連続して形成される側部と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
前記構成によれば、金属製のフィルタを採用することによって、フィルタの発塵を抑制し、熱処理室内に持ち込まれるパーティクルの量を低減できる。また、金属製のフィルタでパーティクルの捕集効率を向上させようとするとフィルタによる圧力損失が大きくなるが、フィルタが頂部と頂部に連続して形成される側部とを備えることによって、ガスの流通面積を増加させることができ、捕集効率を上げた金属製フィルタを採用することができる。その結果、特許文献2に示されるヒータ等を設けるというような設備の大がかりな変更を行わないで、コストの増加を抑制したクリーンオーブンに用いられるフィルタを提供できる。
【0009】
本発明は、さらに、次のような構成を備えるのが好ましい。
(1)前記頂部及び前記側部はそれぞれ、金属製のフィルタ部材と金属製のフレーム部材とを備え、プレート形状を有しており、
前記フレーム部材は、前記フィルタ部材の外周に溶接によって取り付けられている。
(2)前記側部は、前記頂部の外周全体から連続して形成されている。
(3)前記側部の端部にはフランジが形成されている。
(4)前記頂部は、プレート形状のフィルタ部材がガス流れ方向に折り返しされている折り返し形状を有している。
【0010】
前記構成(1)によれば、頂部及び側部はプレート形状を有することによって、プレートとして取扱が容易であり、フィルタの組立も容易となる。また、フィルタ部材とフレーム部材とは、共に金属でできているので、熱膨張差によりフィルタ部材が弛むことを抑制できる。そして、フィルタ部材とフレーム部材とが同じ材質(例えばステンレス鋼)であれば、熱膨張率が同じとなり、より好ましい。さらに、フィルタ部材が金属でできており、フレーム部材が溶接によって取り付けられているので、フィルタ部材とフレーム部材との連結部における漏れやダストの発生を防止できる。
【0011】
前記構成(2)によれば、側部は、頂部の外周全体から連続して形成され、その結果、 頂部及び側部で立体形状を形成するので、フィルタの取扱や取付を容易とできる。
【0012】
前記構成(3)によれば、側部にフランジが形成されているので、側部をクリーンオーブンの内部フレームに取り付けるのを容易とできる。
【0013】
前記構成(4)によれば、頂部が折り返し形状を有することによって、ガスの流通面積をさらに増加させることができ、捕集効率を上げた金属製のフィルタを採用することができる。
【発明の効果】
【0014】
要するに、本発明によると、コストの増加を抑制しながら、熱処理室内に持ち込まれるパーティクルの量を低減できる、クリーンオーブンに用いられるフィルタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係るクリーンオーブンの概略構成図である。
図2】フィルタの概略斜視図である。
図3A】頂部の概略図である。
図3B図3AのIII-III断面図である。
図4】フィルタの変形例を示す概略斜視図である。
図5】フィルタの変形例を示す概略斜視図である。
図6】フィルタの変形例を示す概略斜視図である。
図7】フィルタの変形例を示すクリーンオーブンの概略構成図である。
図8図7のフィルタの斜視図である。
図9図8のIX矢視透視図である。
図10図8のX矢視透視図である。
図11】フィルタの変形例を示す概略斜視図である。
図12】金属製のフィルタとHEPAフィルタとの両方が設けられるクリーンオーブンの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係るクリーンオーブン10の概略構成図である。図1に示されるように、クリーンオーブン10は、熱処理されるワークWが配置され、ガスが流入するガス入口21と、ガスが流出するガス出口22と、を有する熱処理室2と、ガス入口21を形成する内部フレーム23に溶接で取り付けられるフィルタ4と、フィルタ4を通過する前のガスが存在するフィルタ前空間5と、ガス出口22から流出したガスをフィルタ前空間5に送る循環流路6と、を備えている。図1において、ガスの流れは白抜き矢印で示されている。
【0017】
図2は、フィルタ4の概略斜視図である。図1及び図2に示されるように、フィルタ4は、熱処理室2側に突出する頂部41と、頂部41の外周部全体から連続して形成される側部42〜45と、を備えている。
【0018】
図3Aは、頂部41の概略図である。図3Aに示されるように、頂部41は、矩形状のプレート形状を有しており、金属製のフィルタ部材41aと金属製のフレーム部材41bとを備えている。フレーム部材41bは、図3Bに示されるように、フィルタ部材41aの外周に溶接によって取り付けられている。
【0019】
側部42〜45も頂部41と同様、それぞれ矩形状のプレート形状を有しており、金属製のフィルタ部材とフィルタ部材の外周に溶接によって取り付けられているフレーム部材とを備えている。なお、側部42〜45は、頂部41のフレーム部材41bから連続して形成されている。ここで、連続というのは、溶接や締結部材で接合されて一体化されている場合も含まれる。そして、フィルタ4は全体として直方体形状を有している。
【0020】
クリーンオーブン10は、次のように作動するようになっている。
【0021】
まず、クリーンオーブン10の扉(図示せず)が開閉され、ワークWが熱処理室2内の所定位置に配置される。そして、ヒータ及びファン(図示せず)を作動させると、ヒータで加熱されたガスは、ファンによって、フィルタ4を通過して清浄化された上で、ガス入口21を通り、熱処理室2に送られる。なお、ガスは、クリーンオーブン10内を満たす気体であり、空気や窒素等の他どのような気体でもよい。また、ここでは、ワークWとして、棚状のカセットに平置きされたガラス基板が略図で示されているが、どのようなものでもよい。なお、図1において、ガスの流れは白抜き矢印で示されている。
【0022】
加熱されたガスは、熱処理室2において、配置されたワークWを加熱する。ワークWを加熱したガスは、ガス出口22において、循環流路6に流れる。循環流路6内のガスは、フィルタ前空間5に流れ、再度、フィルタ4を通過して清浄化された上で、ガス入口21を通って熱処理室2に流入する。
【0023】
前記構成のクリーンオーブン10によれば、次のような効果を発揮できる。
【0024】
(1)フィルタ4は、金属製のフィルタであるので、温度変化があってもHEPAフィルタのように発塵せず、熱処理室内に持ち込まれるパーティクルの量を低減できる。
【0025】
(2)金属製のフィルタ4でパーティクルの捕集効率を向上させようとするとフィルタによる圧力損失が大きくなるが、フィルタ4が頂部41と頂部41に連続して形成される側部42〜45とを備えることによって、ガスの流通面積を増加させることができ、捕集効率を上げた金属製フィルタ4を採用することができる。その結果、特許文献2に示されるヒータ等を設けるというような設備の大がかりな変更を行わないで、コストの増加を抑制したクリーンオーブン10を提供できる。
【0026】
(3)頂部41及び側部42〜45はプレート形状を有することによって、プレートとして取扱が容易であり、フィルタ4の組立も容易となる。また、フィルタ部材41aとフレーム部材41bとは、共に金属でできているので、熱膨張差によりフィルタ部材41aが弛むことを抑制できる。さらに、フィルタ部材41aが金属でできており、フレーム部材41bが溶接によって取り付けられているので、フィルタ部材41aとフレーム部材41bとの連結部における漏れやダストの発生を防止できる。
【0027】
(4)側部42〜45は、頂部41の外周部全体から連続して形成され、その結果、頂部41及び側部42〜45で立体形状を形成するので、フィルタ4の取扱や取付を容易とできる。
【0028】
上記実施形態では、フィルタ4の頂部41及び側部42〜45は矩形状であり、フィルタ4は全体として直方体形状を有しているが、図4に示されるように、フィルタ4の頂部411が円板形状であり、側部412が頂部411の外周部全体から連続して形成されて円弧形状を有し、フィルタ4が全体として円柱形状を有してもよい。
【0029】
上記実施形態では、フィルタ4の側部42〜45は矩形状のプレート形状を有しているが、図5に示されるように、側部42〜45の端部にフランジ42c〜45cが形成されてもよい。このような構成を有することにより、フランジ42c〜45cによって、側部42〜45をクリーンオーブン10の内部フレーム23に取り付けるのを容易とできる。また、フランジを内部フレームに溶接で取り付けるのではない場合には、フランジと内部フレームとの間にパッキンを挟むことによって、フランジと内部フレームとの間のシール性を向上させることができる。
【0030】
なお、フランジ42c〜45cは、側部42〜45の端部から外方に突出するように形成されているが、フランジは、側部の端部から内方に突出するように形成されてもよい。また、図6に示されるように、フランジは、フィルタ4が全体として円柱形状を有する場合にも適用でき、フランジ412cは、側部412の端部から外方に突出するように形成されている。そして、円柱形状のフィルタ4に形成されるフランジも直方体形状のものと同様、側部412の端部から内方に突出するように形成されてもよい。
【0031】
また、図7は、フィルタ4の変形例を示すクリーンオーブンの概略構成図である。図8図7のフィルタ4の斜視図であり、図9図8のIX矢視透視図であり、図10図8のX矢視透視図である。図7図10に示されるように、頂部413は、プレート形状のフィルタ部材がガス流れ方向に折り返しされている折り返し形状を有している。頂部413が折り返し形状を有することによって、ガスの流通面積をさらに増加させることができ、捕集効率を上げた金属製のフィルタを採用することができる。
【0032】
なお、頂部413の折り返し形状と直交する位置で対向している2つの側部431、451はフィルタ部材ではなく、金属製の板材で構成されていてもよく、他の対向している2つの側部421、441は、頂部413と連続するように構成されている。また、頂部413と側部431、451とは、溶接で接合されている。
【0033】
側部431、451を板材で構成することによって、頂部413を折り返し形状としながらも、側部431、451で頂部413を支持することができ、フィルタ4の構造強度を向上させることができる。また、頂部413と側部431、451とを溶接することによって、頂部413と側部431、451との間の漏れを防止し、さらに頂部413と側部431、451との接合部からのパーティクルの発生を防止できる。さらに、ガスの流通面積を増加させるには、図11に示されるように、プレートを加工し、頂部41及び/又は側部42〜45のフィルタ部材41aの表面を凹凸状としてもよい。
【0034】
上記実施形態では、クリーンオーブン10は、フィルタとして、金属製のフィルタのみ有しているが、金属製のフィルタとHEPAフィルタとの両方を有してもよい。図12は、金属製のフィルタとHEPAフィルタとの両方が設けられるクリーンオーブンの概略構成図である。
【0035】
図12に示されるように、金属製のフィルタ4のガス流れの上流側にHEPAフィルタとしてフィルタ9が配置される。フィルタ9は、シール部材3を介してクリーンオーブン10の内部フレーム24に固定される。クリーンオーブン10の内部空間において、シール部材3は、フィルタ4の内部フレーム23への溶接部4aより内方側に位置するようになっている。内部フレーム24は、内部フレーム23のガス流れの上流側に位置しており、内部フレーム23より内方側に突出している。シール部材3は、例えば、ニトリルゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム等のゴム部材でできたOリングやシート部材(パッキン)である。フィルタ9の発塵によるパーティクルは、フィルタ4によって捕集される。このように、金属製のフィルタ4とHEPAフィルタのフィルタ9の両方を設ける場合には、HEPAフィルタからのパーティクルを捕集できるよう、フィルタ4は、フィルタ9のガス流れの下流側に配置することが好ましい。
【0036】
特許請求の範囲に記載された本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、各種変形及び変更を行うことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明では、コストの増加を抑制しながら、熱処理室内に持ち込まれるパーティクルの量を低減できる、クリーンオーブンに用いられるフィルタを提供できるので、産業上の利用価値が大である。
【符号の説明】
【0038】
2 熱処理室
21 ガス入口 22 ガス出口 23 内部フレーム 24 内部フレーム
3 シール部材
4 フィルタ 4a 溶接部
41 頂部 42〜45 側部
41a フィルタ部材 41b フレーム部材
411 頂部 412 側部 413 頂部
421 側部 431 側部 441 側部 451 側部
42c〜45c フランジ
412c フランジ
5 フィルタ前空間
6 循環流路
9 フィルタ
10 クリーンオーブン
W ワーク
【要約】
【課題】コストの増加を抑制しながら、熱処理室内に持ち込まれるパーティクルの量を低減できる、クリーンオーブンに用いられるフィルタを提供する。
【解決手段】ガスを循環させてワークの熱処理を行うクリーンオーブン10に設けられる金属製のフィルタ4であって、熱処理されるワークWが配置される熱処理室2側に突出する頂部41と、頂部41に連続して形成される側部42〜45と、を備えていることを特徴とする。
【選択図】図1
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12