特許第6291132号(P6291132)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6291132-ブルートンチロシンキナーゼ阻害剤 図000063
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6291132
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】ブルートンチロシンキナーゼ阻害剤
(51)【国際特許分類】
   C07D 403/04 20060101AFI20180305BHJP
   A61K 31/4545 20060101ALI20180305BHJP
   A61K 31/4155 20060101ALI20180305BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20180305BHJP
   A61K 31/454 20060101ALI20180305BHJP
   A61K 31/415 20060101ALI20180305BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20180305BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20180305BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20180305BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20180305BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20180305BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20180305BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20180305BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20180305BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
   C07D403/04CSP
   A61K31/4545
   A61K31/4155
   A61K31/5377
   A61K31/454
   A61K31/415
   A61P43/00 111
   A61P37/08
   A61P37/06
   A61P35/02
   A61P35/00
   A61P37/02
   A61P29/00 101
   A61P11/06
   A61P19/02
【請求項の数】6
【全頁数】53
(21)【出願番号】特願2017-510721(P2017-510721)
(86)(22)【出願日】2015年5月7日
(65)【公表番号】特表2017-514914(P2017-514914A)
(43)【公表日】2017年6月8日
(86)【国際出願番号】CN2015078453
(87)【国際公開番号】WO2015169233
(87)【国際公開日】20151112
【審査請求日】2016年11月7日
(31)【優先権主張番号】201410191608.7
(32)【優先日】2014年5月7日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516333687
【氏名又は名称】北京▲賽▼林泰医▲藥▼技▲術▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】▲韓▼ 永信
(72)【発明者】
【氏名】祝 力
(72)【発明者】
【氏名】校 登明
(72)【発明者】
【氏名】彭 勇
(72)【発明者】
【氏名】▲羅▼ ▲鴻▼
【審査官】 黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/025976(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/068527(WO,A1)
【文献】 特表2010−504324(JP,A)
【文献】 特表2009−536617(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/082598(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(III)で表される化合物、その薬学的に許容される塩、溶媒和物または多形体。
【化1】
(式(III)中
【化2】
は、
【化3】
から選ばれ
は、
【化4】
から選ばれ、RはH及びC1−6アルキル基から選ばれ、
、Hから選ばれる。)
【請求項2】
Gは
【化5】
ら選ばれる、請求項1に記載の化合物、その薬学的に許容される塩、溶媒和物または多形体。
【請求項3】
前記化合物は、
【化6】
から選ばれる、請求項1に記載の化合物、その薬学的に許容される塩、溶媒和物または多形体。
【請求項4】
治療有効量の請求項1〜のいずれか1項に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物または多形体、及び任意の薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか1項に記載の化合物、その薬学的に許容される塩、溶媒和物または多形体の、異種免疫疾患、炎症性疾患、喘息、関節炎、リウマチ性関節炎、全身性エリテマトーデス、癌(例えば、B細胞増殖症)、好ましくは慢性リンパ球性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、または慢性リンパ性白血病を治療または予防するための薬物の製造における使用。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか1項に記載の化合物、その薬学的に許容される塩、溶媒和物または多形体の、哺乳動物(特にヒト)におけるBTK過剰活性化に関連する疾患を予防または治療するための薬物の製造における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炎症、異常B細胞増殖に関連した自己免疫疾患(例えば、リウマチ性関節炎)及び癌などを治療するように、ブルートンチロシンキナーゼ(Bruton’s tyrosine kinase,BTK)を選択的且つ不可逆的に阻害する阻害剤として単独で用いられる、または他の治療薬と併用される、一連の複数置換された複素5員環系化合物に関する。本発明は、式(III)で表される化合物を含有する薬物組成物及びその製造方法、医薬の製造における前記化合物の使用、並びに、本発明の化合物を用い、哺乳動物(特に、ヒト)におけるBTK過剰活性化に関連する疾患を予防もしくは治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロテインキナーゼは、人体内に存在する酵素のうち最も大きなファミリーであり、はるかに500種類を超える種類のタンパク質を含む。特に、チロシンキナーゼは、タンパク質のチロシン残基のフェノール部位をリン酸化させる。チロシンキナーゼファミリーには、細胞の増殖、移行及び分化を制御するメンバーが含まれる。キナーゼの異常な活性化は、癌、自己免疫疾患及び炎症疾患を含む、多くのヒト疾患に関与する。
【0003】
BTKは、チロシンキナーゼリンのTecファミリーに属するメンバーであり、初期B細胞の形成及び成熟B細胞の活性化と生存においてキー調節剤として確認された(Khanら、Immunity 1995 3:283;Ellmeierら、J.Exp.Med.2000 192:1611)。B細胞は、B細胞レセプター(BCR)のシグナル伝達を介して広範囲の生物学的結果の原因となり、これらの結果がB細胞の発育段階に依存する。BCRシグナルの大きさ及び持続時間について、精確的な調整が行わなければならない。異常なBCRによって介されるシグナル伝達は、調節解除された(deregulated)B細胞の活性化及び/又は病原性自己抗体の形成の原因となり、複数種類の自己免疫疾患及び/又は炎症性疾患につながっている。
【0004】
自己免疫及び炎症性疾患にBTKが役割を果たしているという証拠は、BTK−欠損マウスモデルによって提供された。全身性エリテマトーデス(SLE)の前臨床でのネズミモデルにおいて、BTK−欠損マウスは、疾患の進展を顕著に改善することが示されている。また、BTK−欠損マウスは、コラーゲン誘発性関節症に対して耐性を有する(Jansson and Holmdahl,Clin.Exp.Immunol.1993 94:459)。マウス関節症モデルにおいてBTKの選択的な阻害剤が有する用量依存効果(dose−dependent effect)が既に確認された(Panら、Chem.Med.Chem.2007 2:58:61)。
【0005】
BTKは、B細胞以外に、病気プロセスに関与可能な細胞によって発現される。例えば、BTKは、肥満細胞(マスト細胞)によって発現され、且つBTK欠損骨髄由来の肥満細胞は、損害を被った抗原誘発性脱粒子(degranulation)を示す(Iwakiら、J.Biol.Chem.2005 280:40261)。koreha、BTKがアレルギー反応及び喘息といった病理学的肥満細胞反応の治療に有効であることを示している。また、そのうちBTKの活性化に欠陥を有するXLA患者に由来する単球が、刺激後にTNFα産生の低下を示す(Horwoodら、J.Exp.Med.2003 197:1603)。従って、TNFα介在炎症は、BTKの低分子阻害剤により阻害することが可能である。また、BTKは、アポトーシスにおいて役割を果たすことが既に報告されており(IslamとSmith、Immunol Rev.2000 178:49)、よってBTK阻害剤は、あるB細胞リンパ腫瘍及び白血病の治療に有効である(Feldhahnら、J.Exp.Med.2005 201:1837)。
【0006】
2012年6月16日に、Pharmacyclicsバイオ製薬会社は、ブルートンチロシンキナーゼ阻害剤(BTK)であるIbrutinib(PCI−32765)が慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫瘍(CLL/SLL)の治療に用いられる2つの最も新しいIb/II期臨床試験の結果(PCYC−1102及びPCYC−1108)を発表した。その試験結果によれば、再発・難治性のCLL患者61人、及び治療を受けたことがないCLL患者31人において、高い活性を示し且つ耐性に優れ、さらに、試験期間に有害事象により投与停止した患者はいなかった。
【0007】
明らかなように、Ibrutinibの優れた臨床結果は、BTKの高選択的な低分子阻害剤が、グローバル医薬品開発の分野においてまた一つのホットスポットとなることを示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Khanら、Immunity 1995 3:283;Ellmeierら、J.Exp.Med.2000 192:1611
【非特許文献2】Jansson and Holmdahl,Clin.Exp.Immunol.1993 94:459
【非特許文献3】Panら、Chem.Med.Chem.2007 2:58:61
【非特許文献4】Iwakiら、J.Biol.Chem.2005 280:40261
【非特許文献5】Horwoodら、J.Exp.Med.2003 197:1603
【非特許文献6】IslamとSmith、Immunol Rev.2000 178:49
【非特許文献7】Feldhahnら、J.Exp.Med.2005 201:1837
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、式(III)で表される、一連の化合物及びその薬学的に許容される塩、溶媒和物、エステル、酸及びプロドラッグ、これらの化合物を含む薬物組成物、並びに、BTK過剰活性化に関連する疾患及び障害に対するこの種類の化合物による治療方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1態様によれば、式(III)で表される化合物、その薬学的に許容される塩、溶媒和物、活性代謝産物、多形体(polymorph)、エステル、異性体またはプロドラッグを提供する。
【0011】
【化1】
【0012】
ここで、Yは、無置換若しくは置換のアルキル基から選ばれ、または4員、5員、6員のシクロアルキル環であり、且つR15はHまたは低級アルキル基から選ばれ、
または、YとR15は、互いに結合して一つの4員、5員または6員のヘテロ環を形成してもよく、
Gは、H、
【0013】
【化2】
【0014】
から選ばれ、ここで、
、R、Rは、それぞれ独立に、H、ハロゲン、−COOH、無置換若しくは置換の低級アルキル基、及び、無置換若しくは置換の低級シクロアルキル基から選ばれ、
は、H、−C1−8アルキル基、−(CH3−7シクロアルキル基、−(CH2−9ヘテロシクロアルキル基、−(CH−OH、−(CH−(CHOH)−H、−(CH−O−(CHCH、−(CH−S−(CHCH、−(CH−NH、−(CH−NH(C1−8アルキル基)、−(CH−N(C1−8アルキル基)、および−C(O)C1−8アルキル基から選ばれる。
nは、0、1、2、3又は4である。
【0015】
【化3】
【0016】
は、好ましくは、
【0017】
【化4】
【0018】
から選ばれ、
【0019】
【化5】
【0020】
は、より好ましくは、
【0021】
【化6】
【0022】
から選ばれ、
【0023】
【化7】
【0024】
は、更により好ましくは、
【0025】
【化8】
【0026】
から選ばれる。
【0027】
Gは、好ましくは、
【0028】
【化9】
【0029】
(Rは、H、−COOH、及び、ハロゲン、−OH、−O−低級アルキル基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、ヘテロシクロアルキルアミノ基、アルカノイルオキシ基、アルキルスルホニルアミノ基で任意に置換された低級アルキル基から選ばれる。);
【0030】
【化10】
【0031】
(Rは、H及び低級アルキル基から選ばれる。)から選ばれ、
Gは、より好ましくは、
【0032】
【化11】
【0033】
から選ばれる。
【0034】
は、好ましくは、H、Me、Et、
【0035】
【化12】
【0036】
から選ばれ、より好ましくは、H、Me、Etから選ばれる。
【0037】
本発明の幾つかの実施形態によれば、本発明により提供される、式(III)で表される化合物は、以下のものである。
【0038】
【化13】
【0039】
本発明の第2態様によれば、前記第1態様に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、活性代謝産物、多形体、エステル、異性体、またはプロドラッグを提供し、それらは、薬物として用いられる。
【0040】
本発明の第3態様によれば、治療有効量の前記第1態様に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、活性代謝産物、多形体、エステル、異性体またはプロドラッグ、及び任意の薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物を提供する。
【0041】
本発明の第4態様によれば、異種免疫疾患、炎症性疾患、喘息、関節炎、リウマチ性関節炎、全身性エリテマトーデス、癌(例えば、B細胞増殖症)、好ましくは慢性リンパ球性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、または慢性リンパ性白血病を治療する方法であって、治療を必要とされる哺乳動物(特にヒト)に有効量の前記第1態様に係る化合物、その薬学的に許容される塩、溶媒和物、活性代謝産物、多形体、エステル、異性体、またはプロドラッグを投与することを含む、方法を提供する。
【0042】
本発明の第5態様によれば、哺乳動物(特にヒト)における、BTK過剰活性化に関連する疾患を治療する方法であって、治療を必要とされる患者に、有効量の前記第1態様に係る化合物、その薬学的に許容される塩、溶媒和物、活性代謝産物、多形体、エステル、異性体、またはプロドラッグを投与することを含む、方法を提供する。
【0043】
本発明の第6態様によれば、前記第1態様に記載の化合物、その薬学的に許容される塩、溶媒和物、活性代謝産物、多形体、エステル、異性体、またはプロドラッグの、異種免疫疾患、炎症性疾患、喘息、関節炎、リウマチ性関節炎、全身性エリテマトーデス、癌(例えば、B細胞増殖症(B−cell histiocytosis))、好ましくは慢性リンパ球性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、または慢性リンパ性白血病を予防または治療するための薬物の製造における使用を提供する。
【0044】
本発明の第7態様によれば、前記第1態様に記載の化合物、その薬学的に許容される塩、溶媒和物、活性代謝産物、多形体、エステル、異性体、またはプロドラッグの、哺乳動物(特にヒト)におけるBTK過剰活性化に関連する疾患を予防または治療するための薬物の製造における使用を提供する。
【0045】
本発明の第8態様によれば、前記第1態様に記載の化合物、その薬学的に許容される塩、溶媒和物、活性代謝産物、多形体、エステル、異性体またはプロドラッグを、BTKと接触させる接触ステップを含む、BTK活性を阻害する方法を提供する。前記接触ステップは、インビボ(in vivo)試験またはインビトロ(in vitro)試験を含む。
【発明の効果】
【0046】
本発明の第1態様の化合物、その薬学的に許容される塩、溶媒和物、活性代謝産物、多形体、エステル、異性体またはプロドラッグの、BTKへの阻害活性は、ITKへの阻害活性に較べてより高いものであり、良好な選択性を有することを示している。
【0047】
本発明の第1態様の化合物、その薬学的に許容される塩、溶媒和物、活性代謝産物、多形体、エステル、異性体またはプロドラッグは、腫瘍に対して高い阻害有効性を有し且つ低毒性である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】本発明の化合物及び対照化合物による関節炎評価得点の比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明は、必要とする被治療者に対し、治療有効量の化合物を少なくとも一つ含む組成物を投与することによって、前記被治療者におけるブルートンチロシンキナーゼを阻害する方法を提供する。いくつかの実施形態において、必要とする被治療者は、自己免疫性疾患(例えば、エリテマトーデス、及び炎症性腸疾患)、異種免疫の症状または疾患(例えば、移植片対宿主病)、炎症性疾患(例えば、喘息)、癌(例えば、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)、血栓塞栓疾患(例えば、心筋梗塞)を患った個体である。
【0050】
いくつかの実施形態において、式(III)の構造を有する本発明の前記化合物の何れも、ブルートンチロシンキナーゼにおけるシステイン残基と共有結合を形成する。
【0051】
いくつかの実施形態において、本発明に記載の方法に用いられる不可逆的BTK阻害剤化合物は、BTKまたはBTKホモログキナーゼ活性を阻害し、その体外でのIC50は、10μM未満(例えば、1μM未満、100nM未満、10nM未満、1nM未満、0.5nM未満)である。
【0052】
本発明は、式(III)の構造を有する化合物を説明したものである。また、本明細書は、これらの化合物の薬学的に許容される塩、薬学的に許容される溶媒和物、薬物活性代謝産物、および薬学的に許容されるプロドラッグについて説明した。また本発明は、本発明に記載の化合物、その薬学的に許容される塩、薬学的に許容される溶媒和物、薬物活性代謝産物もしくは薬学的に許容されるプロドラッグ中の少なくとも一つを含む薬物組成物を提供した。いくつかの実施形態において、本発明に記載の化合物が酸化可能な窒素原子を含む場合、当該窒素原子は、当該技術分野で周知の方法により、N−酸化物に変換され得る。さらに、いくつかの実施形態において、式(III)で表される構造を有する化合物の異性体、および化学的に保護された形の化合物を提供した。
【0053】
一部の化学用語
特段の定義がなされていない限り、本明細書中で使用した全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般的に理解しているのと同じ意味を持つ。特段の説明がない限り、本願で引用したすべての特許、特許出願、公開資料は、引用の方式により本明細書に援用される。本明細書において、ある用語に対し複数の定義がある場合、本章の定義を基準とする。URLまたはその他のこれら識別子(識別記号)またはアドレスを引用した場合、このような識別子は、変化する可能性があり、且つ、インターネット上のある特定情報は、消えることもあるが、インターネット検索またはその他の適切な参考資料により等価情報を取得することができると理解すべきである。得られた参考資料は、このような情報の入手可能性および普及性(public dissemination)を表明する。
【0054】
前記の概要説明および後文の詳細な説明は、例示的なものであり、且つ解釈するためのものに過ぎなく、本発明の対象に何ら制限もないことと理解すべきである。特段の説明がない限り、本願で単数を使用した場合、複数も含まれる。別途の明確な説明がない限り、本明細書および特許請求の範囲に用いられた単数形式には、それにより指定されたものの複数形式も含まれていると、理解すべきである。また、特段の説明がない限り、本文で用いた「または(又は)」、「若しくは(もしくは)」は、「及び/又は(および/または)」を意味することと理解すべきである。また、本文で用いた用語「含む」、およびその他の形、例えば、「含まれる」、「含み」、「含」、「含有」、「備える」、「有する」などは、限定的なものではない。
【0055】
標準的な化学用語の定義は、CareyとSundbergの「ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY4TH ED.」 Vols.A(2000)and B(2001)、Plenum Press、New York)などの文献著作から見つけることができる。特段の説明がない限り、例えば、質量スペクトル、NMR、HPLC、タンパク質化学、生物化学、組換えDNA技術、および薬理学の方法のような当該技術分野の通常の方法を使用する。また具体的な定義を提出していない限り、本明細書での分析化学、有機合成化学、医学および薬物化学等の化学に関する命名、および実験室的手法および技術は、当業者にとって周知のものである。標準的な技術は、化学合成、化学分析、薬物製造、製剤、薬物送達、および患者の治療に用いられることができる。標準的な技術は、組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、および組織培養と転換(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション法)に用いられることができる。例示的には、製造メーカーの説明書が添付されたキット、または当該技術分野で周知の方法や本発明に記載の方法に従って反応および精製を実施することができる。通常、前記技術および手順は、当該技術分野で周知の方法により、および普通の文献や、より具体的な文献に記載されている通常の方法により実行され、これらの文献は、本発明に援用されおよび検討される。
【0056】
左から右に書かれた通常の化学式により置換基を説明する場合、当該置換基は、右から左に書かれて得たものと化学的に同じ置換基を含む。限定的なものではない例として、CHOは、OCHと同じであることが挙げられる。
【0057】
特段の説明がない限り、本発明で用いた汎用的化学用語、例えば、「アルキル(基)」、「アミン」、「アリール(基)」は、それらの任意に置換されたフォームと同じであるが、これらに限定されるものではない。例えば、本明細書に用いられる「アルキル(基)」は、任意に置換されたアルキル(基)を含む。
【0058】
本明細書に記載の化合物は、一つのまたは複数の立体異性中心を有してもよく、且つ各の異性中心は、RまたはSの立体配置またはその組み合せの形で存在してもよい。同様に、本明細書に記載の化合物は、一つのまたは複数の二重結合を有し、且つ各の二重結合は、E(トランス)またはZ(シス)の立体配置またはその組み合せの形で存在してもよい。一つの特定の立体異性体、構造異性体、ジアステレオマー、エナンチオマーまたはエピマーは、すべての可能な立体異性体、位置異性体、ジアステレオマー、エナンチオマーまたはエピマー、およびその混合物を含むことと理解すべきである。したがって、本明細書に記載の化合物には、全ての立体配置が異なる立体異性体、構造異性体、ジアステレオマー、エナンチオマーまたはエピマー、およびその相応する混合物が含まれる。特定の立体異性体を転換し、または特定の立体異性体を原状に維持するための技術、および立体異性体混合物を分割するための技術は、当該技術分野によく知られており、当業者は、具体的な状況に応じて適切な方法を選択することができる。例えば、「Fumiss et al. (eds.)、VOGEL’S ENCYCLOPEDIA OF PRACTICAL ORGANIC CHEMISTRY 5.sup.TH ED., Longman Scientific and Technical Ltd., Essex, 1991, 809−816; and Heller, Acc. Chem. Res. 1990, 23, 128」を参照する。
【0059】
本発明に記載の方法、および組成物は、本発明に記載の特定の方法、技術方案、細胞系、構築体、および試薬に限定されるものではなく、この点について変更することができる。また、本発明に用いる用語は、単に具体的な実施形態を説明するために用いられ、本発明に記載の方法および組成物の範囲を限定するものではなく、当該範囲は、添付の特許請求の範囲のみで限定されると理解すべきである。
【0060】
説明および開示のために、本発明に言及されたすべての出版物および特許文献は、援用の形式でその全ての内容が本明細書に組み込まれている。例えば、出版物に記載の構築体および方法は、本発明に記載の方法、組成物、および化合物と併用して用いられてもよい。本発明に言及された出版物の、本出願日の前に開示された内容のみを提供する。本発明で引用した出版物は、本発明の出願日前に開示されて内容のみに関し、これら出版物の内容により、本発明の内容が既に開示されたと解釈してはいけない。
【0061】
本文に用いられる用語の「部分」、「構造的部分」、「化学的部分」、「基」、「化学基」は、分子における特定の部分または官能基を意味する。化学的部分は、一般的に、分子に挿入された、または付加された化学的実体と考えられる。
【0062】
用語「結合」または「単結合」は、結合により2つの原子または2つの部分を接続し、より大きい構造部分を得る化学結合を意味する。
【0063】
用語「触媒基」は、その役割により反応の活性化エネルギー障壁を低下して、触媒機能を助ける化学的官能基を意味する。
【0064】
用語「任意に選択/任意に」は、後述する事情や状況が発生する、または発生しないことが可能であることを意味する。当該用語は、後述する事情や状況が発生する場合と、発生しない場合を含む。例えば、このような定義によれば、「任意に置換されたアルキル基」は、「無置換のアルキル基」(置換基により置換されていないアルキル基)と、「置換のアルキル基」(置換基により置換されたアルキル基)を意味する。なお、任意に置換された基は、非置換(置換されなかった)基(例えば、CHCH)、完全置換(完全に置換された)基(例えば、CFCF)、単置換基(CHCHF)、または完全置換と単置換との間の置換度(例えば、CHCHF、CFCH、CFHCHF等)のいずれであっても構わない。当業者は、一つまたは複数の置換基を含む任意の基について、任意のスペース的に存在し得ない及び/又は合成し得ない置換または置換モードを導入できないことを、よく理解できる(例えば、置換アルキル基は、任意に置換されたシクロアルキル基を含み、この逆に、シクロアルキル基は、任意に置換されたアルキル基を含むように定義され、このように繰り返す)。したがって、前記の置換基は、最大分子量が約1,000ドルトンで、さらに一般的に最大分子量が約500ドルトンである(大分子置換基が明らかに必要の場合、例えば、ポリペプチド、多糖、ポリグリコール、DNA、およびRNA等を除く)と理解される。
【0065】
本明細書に記載のC1−xは、C1−2、C1−3…C1−xを含む。
【0066】
用語「アルキル基」とは、本分野における通常の意味を有する。
【0067】
用語「ヘテロアルキル基」とは、任意に置換されたアルキル基において、一つまたは複数の骨格鎖の炭素原子(及びそれに連結する水素原子)がそれぞれ独立にヘテロ原子(即ち、酸素、窒素、硫黄、珪素、燐、錫またはそれらの組合せなどの炭素以外の他の原子であるが、これらに限定されない)に置換されたものを意味する。
【0068】
用語「低級へテロアルキル基」の「低級」とは、1〜8個の炭素原子、好ましくは1〜6個、または1〜5個、または1〜4個、または1〜3個、または1〜2個の炭素原子を含有する前記低級へテロアルキル基を意味する。
【0069】
本発明に記載の化合物のアルキル基は、「C1−4アルキル基」またはそれと類似なものに指定されてもよい。例えば、「C1−4アルキル基」は、アルキル基鎖に1〜4個の炭素原子を有することを示し、即ち、前記アルキル基鎖は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソ−ブチル基、sec−ブチル基、およびtert−ブチル基から選ばれる。したがって、C1−4アルキル基は、C1−2アルキル基及びC1−3アルキル基を含む。アルキル基は、無置換または置換のアルキル基であってもよい。例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、2−メチル−1−プロピル、2−メチル−2−プロピル、2−メチル−1−ブチル、3−メチル−1−ブチル、2−メチル−3−ブチル、2,2−ジメチル−1−プロピル、2−メチル−1−ペンチル、3−メチル−1−ペンチル、4−メチル−1−ペンチル、2−メチル−2−ペンチル、3−メチル−2−ペンチル、4−メチル−2−ペンチル、2,2−ジメチル−1−ブチル、3,3−ジメチル−1−ブチル、2−エチル−1−ブチル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソアミル、ネオペンチル、tert−ペンチル、およびヘキシル、並びに、より長いアルキル、例えば、ヘプチル、およびオクチル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明によって定義されている基において、例えば、数値範囲を有する「アルキル基」である「C−Cアルキル基」または「C1−6アルキル基」は、1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子、4個の炭素原子、5個の炭素原子または6個の炭素原子で構成されるアルキル基を示す。本明細書に記載のアルキル基は、数値範囲を規定しない場合も含んでいる。アルキル基としては、炭素原子数1〜6個の「低級アルキル基」である「C1−6アルキル基」が挙げられる。
【0070】
用語「非環状アルキル基」とは、環状アルキル基ではなく、即ち、少なくとも一個の炭素原子を含む直鎖状または分岐鎖状アルキル基を意味する。非環状アルキル基は、完全飽和でもよく、または非環状のアルケン及び/又はアルキンを含んでいてもよい。非環状アルキル基は、任意に置換されてもよい。
【0071】
用語「アルキレン基」とは、上記で定義した1価のアルキル基から誘導された2価基であることを意味する。例としては、メチレン(−CH−)、エチレン(−CHCH−)、プロピレン(−CHCHCH−)、イソプロピレン(−CH(CH)CH−)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
用語「アルケニル(基)」とは、アルキル基の1種類であり、ここで、アルキル基の開始部分の2個の原子が二重結合を形成し、当該二重結合がアリール基の構成部分ではないことを意味する。つまり、アルケニル基は、−C(R)=C(R)−Rから始め、その中で、Rは、アルケニル基のその他の部分であり、各のRは、同一であっても異なっていてもよい。アルケニル基は、2〜10個の炭素原子を有することができる。アルケニル基は、2〜6個の炭素原子を有する「低級アルケニル基」であってもよい。
【0073】
「アルケニレン(基)」とは、上記で定義した1価のアルケニル基から誘導された2価基であることを意味する。例としては、エテニレン(−CH=CH−)、およびプロペニレン異性体(例えば、−CHCH=CH−、および−C(CH)=CH−)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
「アルキニル(基)」とは、アルキル基の1種類であり、ここで、アルキル基の開始部分の2個の原子が三重結合を形成したことを意味する。つまり、アルキニル基は、原子
【0075】
【化14】
【0076】
から始め、その中で、Rは、アルキニル基のその他の部分であり、各のRは、同一であってもよく異なっていてもよい。アルキニル基部分における「R」は、分岐鎖状、直鎖状または環状であってもよい。アルキニル基は、2〜10個の炭素原子を有してもよい。アルキニル基は、2〜6個の炭素原子を有する「低級アルキニル基」であってもよい。
【0077】
用語「アルキニレン(基)」とは、上記で定義した1価のアルキニル基から誘導された2価基であることを意味する。例としては、エチニレン基(−C≡C−)、およびプロピニレン基(−CHC≡C−)等を挙げるが、これらに限定されない。
【0078】
用語「アルコキシル基」は、(アルキル)O−基を意味し、ここで、アルキル基は本発明に定義されたものである。
【0079】
用語「アミド」は、−C(O)NHRまたは−NHC(O)Rを有する化学部分を意味し、ここで、Rは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基及びヘテロ脂肪環基から選ばれる。アミド部分は、アミノ酸またはペプチド分子と、本発明に記載の化合物との間に結合を形成することができ、これによってプロドラッグを形成する。
【0080】
用語「エステル」は、式−COORを有する化学部分を意味し、ここで、Rは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、およびヘテロ脂環基から選ばれる。本発明に記載の化合物における任意のヒドロキシまたはカルボキシ側鎖は、エステル化され得る。
【0081】
用語「環(シクロ)」は、任意の共有結合閉環構造を意味する。環(シクロ)は、例えば、炭素環、ヘテロ環、芳香環、および非芳香環を含む。環(シクロ)は、任意に置換されてもよい。環(シクロ)は、単環または多環であってもよい。
【0082】
用語「員環」は、任意の環構造を含んでいてもよい。用語「員」は、環を構成する骨格原子の数を示す。したがって、例えば、ピリジンおよびチオピランは6員環であり、シクロペンチル基およびピロールは5員環である。
【0083】
用語「炭素環基」または「炭素環」は、環において環を構成する原子のいずれも炭素原子であることを意味する。炭素環は、アリール基およびシクロアルキル基を含む。当該用語により、炭素環と、環骨格に炭素原子と異なる原子を少なくとも一つ含有するヘテロ環とが区別される。ヘテロ環は、ヘテロアリール基およびヘテロシクロアルキル基を含む。炭素環およびヘテロ環は、任意に置換されてもよい。
【0084】
用語「芳香/芳香族/芳香基」とは、平面環が非局在化π電子系を備え、且つ、4n+π電子を含有し、ここで、nは整数である。芳香環は、5、6、7、8、9、または10個以上の原子から構成されてもよい。芳香化合物は、任意に置換されてもよい。用語「芳香/芳香族/芳香基」は、炭素環アリール基、およびヘテロ環アリール基を含む。当該用語は、単環または縮合多環基を含む。
【0085】
用語「アリール基」とは、芳香環において環を構成する各原子がいずれも炭素原子であることを意味する。アリール環は、5、6、7、8、9、または10個以上の原子から構成されてもよい。アリール基は、任意に置換されてもよい。アリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントラセニル基、フルオレニル基、およびインデニル基等を挙げるが、これらに限定されない。構造によって、アリール基は、1価の基または2価の基であってもよく、即ち、アリーレン基であってもよい。
【0086】
用語「シクロアルキル(基)」は、単環基または多環基を意味し、それは、炭素および水素のみを含有し、且つ飽和、一部不飽和または完全不飽和のものであってもよい。シクロアルキル基は、3〜10個の環原子を有する基を含む。シクロアルキル基の具体例として、
【0087】
【化15】
【0088】
などが挙げられる。構造によって、シクロアルキル基は、1価の基または2価の基であってもよい。シクロアルキル基は、3〜8個の炭素原子を有する「低級シクロアルキル基」であってもよい。
【0089】
用語「ヘテロ環」は、1〜4個のヘテロ原子を有するヘテロアリール基、及びヘテロ脂環式基を意味する。前記へテロ原子の何れもO、S、Nから選ばれ、ここで、各へテロ環基がその環構造に4〜10個の原子を有し、前提条件としては、前記基の環において2つの隣接するOまたはS原子を含まない。本明細書において、ヘテロ環における炭素原子の数が規定された場合、当該環には少なくとも一つのその他のヘテロ原子が存在しなければならない。「C1−6ヘテロ環」等の表現様式は、単に当該環における炭素原子数を指すだけであり、当該環における全原子数を意味しない。ヘテロ環は、環において余分のヘテロ原子を有してもよいと理解し得る。「4〜6員ヘテロ環」等の表現様式は、環に含まれる全原子数を意味する。2個またはより多くのヘテロ原子を有するヘテロ環において、それらの2個またはより多くのヘテロ原子は、互いに、同一であってもよく異なっていてもよい。ヘテロ環は、任意に置換されてもよい。ヘテロ環の接続は、ヘテロ原子、または炭素原子を介して接続され得る。非芳香族ヘテロ環基は、それらの環構造において4原子のみを有する基を含み、しかしながら、芳香族ヘテロ環基は、それらの環構造において少なくとも5個の原子を有しなければならない。前記のヘテロ環基は、ベンゾ縮合環系を含む。4員のヘテロ環基の具体例は、アゼチジニル基(アゼチジンから誘導されたもの)である。5員ヘテロ環基の具体例はチアゾリル基である。6員ヘテロ環基の具体例はピリジニル基である。10員ヘテロ環基の具体例はキノリル基である。非芳香ヘテロ環基の具体例は、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロフラニル、ジヒドロチオピラニル、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、チオキサニル、ピペラジニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル(thietanyl)、ホモピペリジニル(homopiperidinyl)、オキセパニル(oxepanyl)、チエパニル(thiepanyl)、オキサゼピニル(oxazepinyl)、ジアゼピニル、チアゼピニル(thiazepinyl)、1,2,3,4−テトラヒドロピリジニル、2−ピロリニル、3−ピロリニル、インドリニル、2H−ピラニル、4H−ピラニル、ジオキサニル、1,3−ジオキソラニル、ピラゾリニル、ジチアニル、ジチオラニル、ジヒドロフラニル、ジヒドロチエニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサニル、3−アザビシクロ[4.1.0]ヘプタニル、3H−インドリル、およびキノリジニルである。芳香族ヘテロ環の具体例は、ピリジニル、イミダゾリル、ピリミジル、ピラゾリル、トリアゾリル、ピラジニル、テトラゾリル、フラニル、チエニル、イソオキサゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、ピロリル、キノリル、イソキノリル、インドリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチアゾリル、インダゾリル、インドリジニル、フタラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、イソインドリル、プテリジニル、プリニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、フラザニル(furazanyl)、ベンゾフラザニル、ベンゾチエニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル、およびフロピリジニルである。
【0090】
用語「ヘテロアリール(基)」は、任意に置換された1価のアリール基を意味し、それは、約5個〜約20個の骨格の環形成原子を含み、ここで、一つまたは複数の環形成原子はヘテロ原子であり、前記ヘテロ原子は、独立に酸素、窒素、硫黄、燐、珪素、セレン、および錫から選ばれるが、これらに限定されていなく、且つ、その前提条件としては、前記基の環が2つの隣接したOまたはS原子を含まない。環において2つまたはより多くのヘテロ原子が現れる実施形態で、前記2つ若しくはより多くのヘテロ原子は、互いに同じであってもよく、または、前記2つ若しくはより多くの原子の中の一部または全部が互いに相違であってもよい。用語「ヘテロアリール基」は、任意に置換された、少なくとも一つのヘテロ原子を有する1価の縮合または非縮合ヘテロアリール基を含む。なお、用語「ヘテロアリール基」は、5個〜約12個の骨格の環形成原子を有する縮合または非縮合ヘテロアリール基、及び5個〜約10個の骨格の環形成原子を有する縮合または非縮合へテロアリール基を含む。炭素原子またはヘテロ原子を介してヘテロアリール基と結合することができる。したがって、例を挙げて言えば、イミダゾールは、その任意の炭素原子(イミダゾール−2−イル、イミダゾール−4−イルまたはイミダゾール−5−イル)、またはその窒素原子(イミダゾール−1−イルまたはイミダゾール−3−イル)を介して親分子に接続することができる。同様に、その任意のまたは全部の炭素原子及び/又は任意のまたは全部のヘテロ原子を介してヘテロアリール基をさらに置換することができる。縮合ヘテロアリール基は、芳香族ヘテロ環から縮合された縮合環2〜4個を含んでもよく、その他の独立環は、脂環式環、ヘテロ環、芳香環、芳香族ヘテロ環またはそれらの任意の組み合せであってもよい。単環ヘテロアリール基の非限定的な具体例としては、ピリジニルがあり、縮合環ヘテロアリール基としては、ベンゾイミダゾリル(benzimidazolyl)、キノリニル(quinolinyl)、アクリジニル(acridinyl)がある。また、非縮合のビスヘテロアリール基としては、ビピリジニル(bipyridinyl)がある。ヘテロアリール基の他の例としては、フラニル(furanyl)、チオフェン(thienyl)、オキサゾリル(oxazolyl)、アクリジニル(acridinyl)、フェナジニル(phenazinyl)、ベンゾイミダゾリル(benzimidazolyl)、ベンゾフラニル(benzofuranyl)、ベンゾオキサゾリル(benzoxazolyl)、ベンゾチアゾリル(benzothiazolyl)、ベンゾチアジアゾリル(benzothiadiazolyl)、ベンゾチエニル(benzothiophenyl)、ベンゾオキサジアゾリル(benzoxadiazolyl)、ベンゾトリアゾール(benzotriazolyl)、イミダゾリル(imidazolyl)、インドリル(indolyl)、イソオキサゾリル(isoxazolyl)、イソキノリニル(isoquinolinyl)、インドリジニル(indolizinyl)、イソチアゾリル(isothiazolyl)、イソインドリル(isoindolyl)、オキサジアゾリル(oxadiazolyl)、インダゾリル(indazolyl)、ピリジニル(pyridyl)、ピリダジニル(pyridazyl)、ピリミジル(pyrimidyl)、ピラジニル(pyrazinyl)、ピロリル(pyrrolyl)、ピラゾリル(pyrazolyl)、プリニル(purinyl)、フタラジニル(phthalazinyl)、プテリジニル(pteridinyl)、キノリニル(quinolinyl)、キナゾリニル(quinazolinyl)、キノキサリニル(quinoxalinyl)、トリアゾリル(triazolyl)、テトラゾリル(tetrazolyl)、チアゾリル(thiazolyl)、トリアジニル(triazinyl)、およびチアジアゾリル(thiadiazolyl)等、およびそれらの酸化物、例えば、ピリジル−N−オキシド(pyridyl−N−oxide)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
用語「非芳香族へテロ環」、「ヘテロシクロアルキル基」、または「ヘテロ脂環基(heteroalicyclic)」は、非芳香族環における環を構成する一つまたは複数の原子が、ヘテロ原子であることを意味する。「非芳香族ヘテロ環」または「ヘテロシクロアルキル基」は、シクロアルキル基に窒素、酸素、および硫黄から選ばれる少なくとも一つのヘテロ原子を含むことを意味する。前記の基は、アリール基またはヘテロアリール基と縮合することができる。ヘテロシクロアルキル基は、3、4、5、6、7、8、9、または10個以上の原子から構成されてもよい。ヘテロシクロアルキル環は、任意に置換されてもよい。いくつかの実施形態において、非芳香族ヘテロ環は、一つまたは複数のカルボニル基またはチオカルボニル基を含み、例えば、オキソまたはチオ含有の基等である。ヘテロシクロアルキル基の例としては、ラクタム、ラクトン、環状イミド、環状チオアミド、環状カルバメート、テトラヒドロチオピラン、4H−ピラン、テトラヒドロピラン、ピペリジン、1,3−ダイオキシン、1,3−ジオキサン、1,4−ダイオキシン、1,4−ジオキサン、ピぺラジン、1,3−オキサチアン、1,4−オキサチイン、1,4−オキサチアン、テトラヒドロ−1,4−チアジン、2H−1,2−オキサジン、マレイミド、ヘキサヒドロ-1,3,5−トリアジン、テトラヒドロチオフェン、テトラヒドロフラン、ピロリン、ピロリジン、ピロリドン(pyrrolidone)、ピロリジオン(pyrrolidione)、ピラゾリン、ピラゾリジン、イミダゾリン、イミダゾリジン、1,3−ジオキソール、1,3−ジオキソラン、1,3−ジチオール、1,3−ジチオラン、イソキサゾリン、イソオキサゾリジン、オキサゾリン、オキサゾリジン、オキサゾリジノン、チアゾリン、チアゾリジン、および1,3−オキサチオラン等が挙げられるが、これらに限定されない。ヘテロシクロアルキル基の説明的な具体例は、非芳香族ヘテロ環とも呼ばれ、
【0092】
【化16】
【0093】
などを含む。
【0094】
用語「ハロゲン」、「ハロゲン化」、「ハロ」または「ハライド」は、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素を意味する。
【0095】
用語「スルフィニル(基)」は、−S(=O)−Rを意味する。
【0096】
用語「スルホニル(基)」は、−S(=O)−Rを意味する。
【0097】
用語「スルホンアミド」、及び「スルホニルアミノ(基)」は、−S(O)NH−および−NHS(=O)−基を意味する。
【0098】
用語「シアノ(基)」は、−CN基を意味する。
【0099】
一部の薬物の用語
用語「ブルトン型チロシンキナーゼ」は、「ホモ・サピエンス(Homo sapiens)」に由来するブルトン型チロシンキナーゼを意味し、それは、既に、例えば米国特許第6326469号(GenBank登録番号NP_000052)に開示された。
【0100】
用語「ブルトン型チロシンキナーゼホモログ」は、ブルトン型チロシンキナーゼのオルソログ(ortholog)を指し、例えば、マウス(GenBank登録番号AAB47246)、イヌ(GenBank登録番号XP_549139)、ラット(GenBank登録番号NP_001007799)、ニワトリ(GenBank登録番号NP_989564)、またはゼブラ・フィッシュ(zebra fish)(GenBank登録番号XP_698117)に由来するオルソログ(ortholog)、および前記のいずれか1つの融合タンパク質を意味し、それは、一つまたは複数のブルトン型チロシンキナーゼ基質(例えば、アミノ酸配列「AVLESEEELYSSARQ」を有するペプチド基質)に対してキナーゼ活性を示す。
【0101】
用語「予防の」、「予防」、および「防止(防ぐ)」は、自己免疫疾患、異種免疫疾患、炎症性疾患、血栓塞栓性障害、および癌(例えば、びまん性大細胞性B細胞リンパ腫、慢性リンパ球リンパ節腫瘍、およびB細胞前リンパ球性白血病等)の発生または悪化の可能性を減少することを含む。
【0102】
本明細書で用いられる用語「主体」、「患者」または「個体」は、哺乳動物および非哺乳動物を含む、疾患、症状または病症状態などを患っている個体を意味する。哺乳動物の例としては、哺乳動物クラスの任意のメンバーが含まれ、例えば、ヒト、ヒトではない霊長類動物(例えば、チンパンジー、および他の猿類、およびサル類);牛、馬、羊、ヤギ、豚などの家畜;ウサギ、犬および猫などの飼育動物;ラット、マウスおよびモルモットなどの齧歯類動物を含む実験用動物が含まれるが、これらに限定されない。非哺乳動物の例としては、鳥類および魚類などが含まれるが、これらに限定されない。本明細書の方法および組成物の一実施形態において、前記哺乳動物はヒトである。
【0103】
用語「治療(する)」およびその他の類似の等価用語は、疾患または症状を緩和、軽減または改善すること、他の症状を防止すること、症状の根底を成す代謝原因を改善または防止すること、疾患または状態を阻害すること、例えば疾患または状態の進行を阻害すること、疾患または状態を緩和すること、疾患または状態を好転させること、その疾患または状態に起因する状態を緩和すること、または疾患または症状を停止させることを含み、なお、当該用語は、予防の目的も含む。さらに、これらの用語は、治療効果及び/又は予防効果を達成することを含む。前記治療効果とは、治療中の基礎疾患(潜在疾患)の根絶(治癒)または改善を意味する。また、基礎疾患に関連する生理学的症状の1つまたは2つ以上を根絶または改善することも、治療効果に含まれ、例えば、患者が依然として基礎疾患の影響を受けているが、患者状況の改善が観察されることを指す。予防効果に関しては、特定の疾患のリスクがある患者に、前記組成物を投与することができ、または、この疾患の診断がまだ為されていない状況で、当該疾患の一つまたは複数の生理症状が現れた患者に、前記組成物を投与することができる。
【0104】
用語「有効量」、「治療有効量(治療的に有効な量)」または「薬学的有効量(医薬的に有効な量)」は、服用後、治療しようとする疾患または病症の1種以上の症状をある程度に緩和させることができる少なくとも1種の薬物または化合物の用量を意味する。その結果は、徴候、症状、または疾患の原因の減少及び/又は緩和、または生物体系における任意の望ましい変化として表現される。例えば、治療のための「有効量」は、臨床的に著しい症状緩和効果を提供するために要する本明細書に開示された化合物を含む組成物の用量である。例えば、投与量の逐次追加試験の技術を利用して、任意の個体の病症に適した有効量を測定することができる。
【0105】
用語「服用(する)」、「投与(する)」、「投薬(する)」などは、化合物または組成物を生物作用を需要とする部位に輸送できる方法である。これらの方法は、経口投与、経十二指腸投与、非経口投与(静脈内、皮下、筋肉内、血管内または輸液を含む)、局所投与(topical administration)または直腸投与の方法を含む。当業者は、本明細書の前記化合物に適用できる方法およびその方法の投与技術を熟知している。例えば、「Goodman and Gilman,The Pharmacological Basis of Therapeutics,current ed.; Pergamon、およびRemington’s,Pharmaceutical Sciences (current edition),Mack Publishing Co.,Easton,Pa」に検討された内容を参照する。好ましい実施形態において、本明細書で検討されている化合物および組成物は、経口で投与される。
【0106】
用語「許容される(許容し得る)」とは、治療を受けている被験者の一般的な健康状態に対して、長期的の有害な影響を及ぼさないことを意味する。
【0107】
用語「薬学的に許容される(薬学的に許容し得る)」は、本明細書の化合物の生物活性または性質に影響を与えない物質(例えば、担体または希釈剤)を意味し、また、相対的に無毒なことを意味する。すなわち、前記物質は、個体に投与された場合、不良な生物反応、または不良な形態で組成物に含まれた任意の組成成分と相互作用を起さない。
【0108】
用語「薬物組成物(医薬組成物)」は、少なくとも1つの薬学的に許容される化学成分が任意に混合された生物活性化合物を意味し、ここで、前記薬学的に許容される化学成分として、例えば担体、安定剤、希釈剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、及び/又は賦形剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0109】
用語「担体」は、化合物を細胞または組織に容易に導入することに寄与する、比較的無毒な化合物または試薬を意味する。
【0110】
用語「作動薬(アゴニスト)」は、他の分子の活性または受容体部位の活性を増強させる分子を意味する。例えば、化合物、薬物、酵素活性剤、またはホルモン調整剤が挙げられる。
【0111】
用語「拮抗剤(アンタゴニスト)」は、他の分子の活性または受容体の部位の活性を削除または抑制する分子を意味する。例えば、化合物、薬物、酵素阻害剤、またはホルモン調整剤が挙げられる。
【0112】
用語「調整(する)」/「調節(する)」は、ターゲットと直接または間接的に相互作用して、ターゲットの活性を改変することを意味する。例えば、ターゲットの活性を増加したり、ターゲットの活性を抑制したり、ターゲットの活性を制限したり、またはターゲットの活性を延長することが含まれる。
【0113】
用語「調整剤」は、ターゲットと直接または間接的に相互作用する分子を意味する。前記の相互作用は、作動薬(アゴニスト)と拮抗剤(アンタゴニスト)の相互作用が含まれるが、これに限定されない。
【0114】
用語「薬学的に許容される塩」は、指定された化合物の遊離酸および遊離塩基の生物学的効果を維持し、且つ、生物学的にまたはその他の面で悪影響がない塩を意味する。本明細書に記載の化合物は、酸性または塩基性の基を有してもよく、したがって無機塩基または有機塩基、および無機酸または有機酸の中のいずれかと反応することによって、薬学的に許容される塩を形成することができる。これらの塩は、本発明の化合物の最終的な分離および精製の過程においてその場で調製するか、または、本発明の化合物の遊離塩基形と好適な有機酸または無機酸とを単独に反応させ、且つこのように形成された塩を分離することによって調製することができる。薬学的に許容される塩の具体例には、本明細書に記載の化合物と、無機酸または有機酸または無機塩基または有機塩基との反応によって調製された塩を含まれる。このような塩は、アセテート、アクリレート、アジペート、アルギネート、アスパルテート、ベンゾエート、ベンゼンスルホネート、ビスルフェート、ビスルフィット、臭化物、ブチレート、ブチン−1,4−ジオエート、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、カプリレート、クロロベンゾエート、塩化物、シトレート、シクロペンタンプロピオネート、デカノエート、ジグルコネート、リン酸二水素塩、ジニトロベンゾエート、ドデシルスルフェート、エタンスルホネート、ホルメート、フマル酸塩、グルコヘプタノエート、グリセロホスフェート、グリコレート、ヘミスルフェート、ヘプタノエート、ヘキシン−1,6−ジオエート(hexyne−1,6−dioate)、ヒドロキシベンゾエート、γ−ヒドロキシブチレート、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホネート、ヨウ化物、イソブチレート、ラクテート、マレエート、マロネート、メタンスルホネート、マンデレート、メタホスフェート、メトキシベンゾエート、メチルベンゾエート、リン酸一水素塩、1−ナフタレンスルホネート、2−ナフタレンスルホネート、ニコチネート、ニトレート、パルモエート、ペクチネート(pectinate)、ペルスルフェート、3−フェニルプロピオネート、ホスフェート、ピクレート、ピバレート、プロピオネート、ピロスルフェート、ピロホスフェート、プロピオレート、フタレート、フェニルアセテート、フェニルブチレート、プロパンスルホネート、サリチレート、スクシネート、スルフェート、スルフィット、スクシネート、スベレート、セバケート、スルホネート、タルトレート、チオシアネート、トシレート、ウンデコネート(undeconate)、およびキシレンスルホネートを含む。その他の酸(例えば、シュウ酸)は、それ自体が薬学的に許容されるものではないが、本発明の化合物およびこれらの薬学的に許容される酸付加塩を調製するための中間体として用いることができる(Bergeら、J.Pharm.Sci.1977、66,1−19における実施例を参照)。なお、遊離酸基を含んでいてもよい本明細書に記載の化合物は、好適な塩基(例えば薬学的に許容される金属カチオンの水酸化物、炭酸塩または炭酸水素塩)と反応するか、またはアンモニアと反応するか、または薬学的に許容される有機第1級アミン、第2級アミン、または第3アミンと反応することができる。代表的なアルカリ塩またはアルカリ土類塩は、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、およびアルミニウム塩などが挙げられる。塩基の説明的な具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化コリン(choline hydroxide)、炭酸ナトリウム、およびIV’(C1−4アルキル)などが含まれる。塩基付加塩の形成に有用な代表的な有機アミンとしては、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、およびピペラジンなどが含まれる。なお、本明細書に記載の化合物は、これらが含有し得る任意の塩基性窒素含有基の四級化物をも含むことと理解すべきである。このような四級化反応によって水溶性または油溶性または分散性のある生成物を得ることができる。例えば、上記のBergeらの文献を参照する。
【0115】
用語「溶媒和物」は、本発明の化合物と溶剤分子とを組み合せて形成された溶剤化物を意味する。いくつかの実施形態において、このような溶媒和物は、一水和物であり、例えば、水を溶剤とし、本発明の化合物と水とにより形成された一水和物である。
【0116】
用語「多形体(ポリモーフ(polymorph)、結晶多形体)」または「ポリモルフィズム(polymorphism)」は、本発明の化合物が異なる結晶格子形で存在することを意味する。
【0117】
用語「エステル」は、誘導された本発明の化合物がカルボン酸およびヒドロキシを含有する化合物に由来することを意味する。その中の化合物のいずれが本発明の前記化合物であってもよい。
【0118】
用語「互変異性体」は、一つの水素原子またはプロトンの移行により、本発明の前記の化合物からその他の化合物に変換したことを意味する。
【0119】
用語「薬学的に許容される誘導体もしくはプロドラッグ」は、任意の薬学的に許容される本発明の前記化合物の塩、エステルまたはエステル塩、および直接的にもしくは間接的に患者へ治療効果を与える薬学活性代謝産物または残存物を意味する。特に注目された薬学的な誘導体およびプロドラッグは、それらを患者に投与した場合、本発明で示された化合物の薬学的な活性を向上させ(例えば、経口投与により化合物をさらに血液に容易に吸収させるもの)、または化合物の生体内における代謝吸収(例えば、大脳またはリンパ系)を強化させる。
【0120】
「増強(する)/向上(させる)」などという等価用語は、所望な効果の効力を増大し、または所望な効果の継続時間を延長することを意味する。従って、治療剤効果を増強することを示する場合、用語「増強」は、治療剤の系統への作用効果または持続時間を高めるまたは延長する能力を意味する。
【0121】
用語「効果増強の用量(作用を有効に増強できる量)」は、他の治療剤の需要とする系への作用効果を十分に高めるに要する量を意味する。
【0122】
用語「薬物の組み合わせ」、「他の治療を行う」、「他の治療剤を投与(する)」などは、一つを超える活性成分を混合、または組み合わせて得た薬物治療である。これは、活性成分の固定的組み合わせと非固定的組み合わせを含む。用語「固定的組み合わせ」は、単体または単一の剤型の形態で患者に少なくとも1種の本明細書に記載の化合物、および少なくとも1種の併用剤を同時に投与することを意味する。用語「非固定的組み合わせ」は、単体の形態で患者に少なくとも1種の本明細書に記載の化合物、および少なくとも1種の併用剤を同時に投与し、組み合わせて投与し、または、可変な時間間隔で順次投与することを意味し、ここで、このような投与は、患者体内に有効レベルの二種または多種の化合物を提供する。これらは、カクテル治療に採用することも可能であり、例えば、3種またはより多い活性成分を投与する。
【0123】
用語「連合投与」と「…と組み合わせて投与」、「共同投与」およびこれらの同義語などは、選択された治療薬を同じ患者に投与し、且つ、同じまたは異なる投与経路または同じまたは異なる投与回数を介して薬物を投与することを含む治療策を意味する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の化合物と他の薬物を連合投与する。これらの用語は、動物に2種またはより多い薬物を投与して動物体内に前記薬物及び/又はその代謝物質を同時に存在させる意味を包含する。これらの用語は、異なる組成物を同時に投与し、異なる時間に異なる組成物を投与する、及び/又は異なる活性成分を含有する1種の組成物の投与を含む。従って、いくつかの実施形態において、本発明の化合物と他の薬物を1種の組成物に混合して投与する。
【0124】
用語「代謝物」とは、化合物代謝の際に形成した前記化合物の誘導体を意味する。
【0125】
用語「活性代謝物質」とは、化合物代謝の際に形成した前記化合物の、活性を有する誘導体を意味する。
【0126】
用語「代謝の(代謝的)」とは、生体が特定の物質を転換させるすべての工程(加水分解反応および酵素触媒反応が含まれるが、これらに限定されない)を意味する。従って、酵素は、化合物に特異的な構造変化を発生させることができる。例えば、シトクロームP450は、複数の酸化還元反応を触媒し、ウリジン二リン酸グルクロニル転移酵素(uridine diphosphate glucuronyl transferase)は、活性化されたグルクロン酸分子が芳香族アルコール、脂肪族アルコール、カルボン酸、アミンと遊離スルフヒドリル基(free sulphydryl groups)への転移を触媒する。代謝に関するより多くの情報は、「The Pharmacological Basis of Therapeutics、9th Edition、McGraw−Hill(1996)」を参照することができる。
【0127】
用語「マイケル(Michael)受容体部分」は、マイケル反応に関与する官能基を意味し、その中で、マイケル受容体部分の一部と供給体部分との間に、新たな共有結合が形成される。前記のマイケル受容体部分は、求電子性の部分であるが、「供給体部分」は、求核性の部分である。式(III)の「G」基は、マイケル受容体部分の非制限的な具体例である。
【0128】
用語「求核体(nucleophile)」または「求核性の」は、電子豊富化合物またはその部分を意味する。求核体の具体例としては、分子のシステイン残基、例えば、BTKのCys 481が挙げられるが、これらに限定されていない。
【0129】
用語「求電子体」または「求電子の」は、電子欠乏分子または電子不足分子またはその部分を意味する。求電子体の具体例としては、Michael受容体部分が挙げられるが、これに限定されていない。
【0130】
用語「生物利用度」は、本発明に開示された化合物、例えば、式(III)で表される化合物を投与した後、検討中の動物またはヒトの体循環へ配達された化合物の占める重量パーセントを意味する。薬物を静脈内に投与する場合、総暴露量(total exposure)(AUC (0−∞))は、通常、100%の生物学的利用率(F%)に限定される。
【0131】
用語「経口投与生物学的利用率」は、医薬組成物を経口投与する場合、静脈注射に対する本発明に開示された化合物、例えば、式(III)で表される化合物が吸収されて体循環に到達した程度を意味する。
【0132】
用語「血漿濃度」は、本発明に開示された化合物、例えば、式(III)で表される化合物が治療を受けている者の血液の血漿成分における濃度を意味する。理解できることは、新陳代謝、及び/又はその他の治療薬との可能な相互作用の変異性によって、式(III)の化合物の血漿濃度は、治療を受けている者の間で明らかに異なることもある。本発明に開示された一つの実施形態によれば、式(III)の化合物の血漿濃度は、治療を受けている者の間で異なってもよい。同様に、数値について、例えば、最大血漿濃度(Cmax)、または最大血漿濃度に達する時間(Tmax)、または血漿濃度時間グラフ下総面積(AUC(0−∞))は、治療を受けている者の間で異なってもよい。このような利用率により、「治療有効量」を構成する式(III)の化合物の必要量は、治療を受けている者同士の間で異なっている。
【0133】
用語「ターゲット活性」は、調整剤で選択的に調整できる生物活性を意味する。ある例示的なターゲット活性は、結合親和性、シグナル伝達、酵素活性、腫瘍成長、炎症または炎症に関連する過程、および疾患または病症に関連する一つまたは複数の症状の改善を含むが、これらに限定されない。
【0134】
用語「ターゲットタンパク質」は、選択的結合化合物により結合できるタンパク質分子または一部のタンパク質を意味する。いくつかの実施形態において、ターゲットタンパク質は、BTKである。
【0135】
用語「IC50」は、このような効果の測定分析において得られる最大効果の50%を阻害する量を意味する。例えば、BTK阻害の特定測定化合物の量、濃度またはドーズ量(投与量)を意味する。
【0136】
化合物
本発明に記載のBTK阻害剤化合物は、BTKを選択的に阻害し、且つアミノ酸配列においてシステイン481残基フラグメントを有するキナーゼである。不可逆的ブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤化合物は、チロシンキナーゼをリン酸性化する形などで、ターゲット・チロシンキナーゼの活性部位を選択的に・不可逆的に阻害する。
【0137】
不可逆的なブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤類の化合物は、様々な病症(例えば、自己免疫性疾患、炎症性疾患、アレルギー性疾患、B細胞増殖性疾患または血栓疾患等)を治療するための薬物の製造に用いられることができる。本発明に記載の阻害剤化合物は、マイケル受容体部分を含む。
【0138】
本発明は、式(III)で表される化合物、その薬学的に許容される塩、溶媒和物、活性代謝産物、多形体、エステル、異性体、またはプロドラッグを提供する。
【0139】
【化17】
【0140】
ここで、Yは、無置換若しくは置換のアルキル基から選ばれ、または、4員、5員、6員のシクロアルキル環であり、且つR15はHまたは低級アルキル基から選ばれ、
または、YとR15は、互いに結合して一つの4員、5員または6員のヘテロ環を形成してもよく、
Gは、H、
【0141】
【化18】
【0142】
から選ばれ、
ここで、
、R、Rは、それぞれ独立に、H、ハロゲン、−COOH、無置換若しくは置換の低級アルキル基、及び無置換若しくは置換の低級シクロアルキル基から選ばれ、
は、H、−C1−8アルキル基、−(CH3−7シクロアルキル基、−(CH2−9ヘテロシクロアルキル基、−(CH−OH、−(CH−(CHOH)−H、−(CH−O−(CHCH、−(CH−S−(CHCH、−(CH−NH、−(CH−NH(C1−8アルキル基)、−(CH−N(C1−8アルキル基)、および−C(O)C1−8アルキル基から選ばれる。
nは、0、1、2、3又は4である。
【0143】
また、本発明は、上記化合物の合成方法を提供する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の化合物は下記の方法により調製することができる。下記の方法および実施例は、これらの方法を説明するためのものである。これらのスキームおよび実施例は、本発明を制限させるものとして任意の形で解釈されてはならない。当業者に知られている標準合成技術を用いて本明細書に記載の化合物を合成してもよく、または、当該技術分野での公知の方法および本明細書に記載の方法を組み合わせて用いてもよい。
【実施例】
【0144】
合成方法および実施例
スキーム 1
【0145】
【化19】
【0146】
本発明の式(III)で表される化合物は、スキーム1に記載の合成経路により製造することが可能である。スキーム1における反応により得られる反応生成物は、何れも従来技術により分離および精製してもよく、前記従来の技術は、濾過、蒸留、結晶化、クロマトグラフィー分離等を含むが、これらに限定されない。合成に必要な開始原料は、自分で合成してもよく、または商業機関(商業的供給源)から購入して得られ、例えば、アルドリッチ(Adrich)、またはシグマ(Sigma)が挙げられるが、これらに限定されない。これらの原料は、物理定数およびスペクトルデータなどの通常の手段により特徴付けられてもよい。本発明に記載の化合物は、合成方法により単一の異性体または異性体の混合物を得ることができる。
【0147】
開始原料1は、商業経路から直接購入し、または有機合成して得られる。例えば、水酸化ナトリウムなどの塩基を、エタノールと水の混合溶液において70℃で1時間反応させ、原料1を加水分解して中間体2を得る。中間体2を、直接塩化チオニル中で還流させて中間体3を得、次の合成反応に直接に用いる。塩基(例えば、NaH)の作用下で、マロノニトリルと中間体3とを、テトラヒドロフラン溶液において氷浴で反応させ、中間体4を得る。硫酸ジメチルでメチル化して中間体5を得る。ヒドラジン水和物と中間体5とを反応させて重要な中間体6を得、これが、本発明の式(III)で表される化合物を合成するための重要な入り口である。塩基(例えば、炭酸セシウムのDMF)の作用下で、p−トルエンスルホニルにより保護されたN−Bocピペリジノール(またはピリジノール)と中間体6とがSN反応を行って、中間体7を得る。中間体7を加水分解して(例えば、濃硫酸/塩基/過酸化水素水、またはDEPO)、比較的高い収率で中間体12を得ることができる。最後、トリフルオロ酢酸で脱保護し、塩化アクリロイルと反応させて最終生成物13を得る。
【0148】
必要な治療効果の投与量を得るために、好適には、静脈投与の場合、0.01〜3mg/kg(体重)、好ましくは0.1〜1mg/kg(体重)の本発明の化合物を、経口投与の場合、0.1〜8mg/kg(体重)、好ましくは0.5〜3mg/kg(体重)の本発明の化合物を、それぞれの状況下で一日あたり1〜3回投与する。本発明により製造される化合物は、静脈内注射、皮下注射、筋肉内注射、直腸投与、点鼻投与、吸入投与、経皮投与または経口投与、エアロゾルによる投与が可能であり、特に吸入投与が好ましい。これらを、錠剤、腸溶性被覆錠剤、カプセル剤、散剤、懸濁剤、液剤、定量エアゾール又は坐剤など通常の薬剤に製造することも可能である。適宜であれば、トウモロコシデンプン、ラクトース、スクロース、微結晶性セルロース、ステアリン酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、クエン酸、酒石酸、水、水/エタノール、水/グリセロール、水/ソルビトール、水/ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、セチルステアリルアルコール、カルボキシメチルセルロース、または硬化脂肪といった脂肪物質、またはこれらの混合物など、従来の不活性担体及び/又は希釈剤を1種類又は複数種類添加する。
【0149】
実施例1
(R)−5−アミノ−3−(4−フェノキシフェニル)−1−(1−(ビニルスルホニル)ピペリジン−3−イル)−1H−ピラゾール−4−ホルムアミド
【0150】
【化20】
【0151】
ステップA:4−フェノキシ安息香酸メチル
【0152】
【化21】
【0153】
常温で、200mLのDMFを仕込んだフラスコに4−ヨード安息香酸メチル(80g、1.0当量)およびフェノール(34.5g、1.2当量)を添加し、その後、反応混合物にKCO(84g、2.0当量)、ヨウ化銅(11.6g、20%)、およびN,N−ジメチルグリシン(12.6g、40%)を加えた。添加終了後、反応混合物を110℃で一晩攪拌した。反応終了後、室温まで冷却し、水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を、水及び飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離して白色の固体産物(45g、65%)を得た。
H NMR(400MHz,CDCl)δ7.99−8.01(m,2H),7.37−7.41(m,2H),7.17−7.21(m,1H),7.05−7.08(m,2H),6.97−7.00(m,2H),3.90(s,3H)。
【0154】
ステップB:4−フェノキシ安息香酸
【0155】
【化22】
【0156】
常温で、100mLのエタノール溶剤を仕込んだフラスコに4−フェノキシ安息香酸メチル(20g、1.0当量)を加えた後、水酸化ナトリウム(7g、2.0当量)の水溶液(50mL)を徐々に加えた。添加完了後、反応混合物を70℃で攪拌しながら15分間反応させた。反応終了後、室温まで冷却し、回転することでエタノール溶剤を蒸発させ、希塩酸でpHを2〜3に調整し、混合液を室温で5分間攪拌し、析出した白色の固体を回収して乾燥させて、産物(16g、85%)として得た。
H NMR(400MHz,CDCl)δ8.06−8.09(m,2H),7.39−7.43(m,2H),7.19−7.23(m,1H),7.07−7.10(m,2H),7.00−7.03(m,2H)。
【0157】
ステップC:4−フェノキシベンゾイルクロリド
【0158】
【化23】
【0159】
氷浴で、50mLの塩化チオニルを仕込んだフラスコに、4−フェノキシ安息香酸(8g、1.0当量)を徐々に加えた。添加完了後、反応混合物を70℃で3時間還流させた。反応終了後、室温まで冷却し、回転することで塩化チオニル溶剤を蒸発させ、トルエン溶液を添加して、再び回転して溶剤を蒸発させた。このように2回繰り返して油状の産物(8.65g、98%)を得、更なる精製の必要がなく、直接に次の反応に用いることができる。
H NMR(400MHz,CDCl)δ8.07−8.09(m,2H),7.41−7.45(m,2H),7.23−7.27(m,1H),7.08−7.11(m,2H),7.00−7.02(m,2H)。
【0160】
ステップD:2−(ヒドロキシ(4−フェノキシフェニル)メチレン)マロノニトリル
【0161】
【化24】
【0162】
氷浴で、マロノニトリル(2.7g、1.1当量)の乾燥したテトラヒドロフラン(250mL)溶液を仕込んだ三つ口フラスコに、水素化ナトリウム(1.64g、60%、1.1当量)を徐々に加えた。添加完了後、室温まで昇温して10分間撹拌し、その後0℃に冷却させた。反応混合物に、4−フェノキシベンゾイルクロリド(8.65g、1.0当量)のテトラヒドロフラン溶液を加えた。添加完了後、反応混合液を室温で一晩攪拌しながら反応させた。反応終了後、水を少し加えて反応をクエンチし、回転することでテトラヒドロフランを蒸発させ、酢酸エチルで抽出し、有機層を、水及び飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離して灰色の固体産物(3.6g、37%)を得た。
H NMR(400MHz,DMSO)δ7.60−7.64(m,2H),7.40−7.44(m,2H),7.16−7.20(m,1H),7.05−7.07(m,2H),6.92−6.96(m,2H)。
【0163】
ステップE:2−(メトキシ(4−フェノキシフェニル)メチレン)マロノニトリル
【0164】
【化25】
【0165】
室温で、ジオキサンと水を体積比率1:1で混合した溶液(50mL)に、2−(ヒドロキシ(4−フェノキシフェニル)メチレン)マロノニトリル(3.6g、1.0当量)を加えた後、硫酸ジメチル溶液(2.6g、1.5当量)を徐々に加えた。添加完了後、反応混合液を80℃まで昇温して、攪拌しながら3時間反応させた。反応終了後、回転することで反応液を除去し、水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を、水及び飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離して無色の油状産物(2.7g、72%)を得た。
H NMR(400MHz,CDCl)δ7.48−7.51(m,2H),7.41−7.45(m,2H),7.25−7.27(m,1H),7.07−7.11(m,4H),3.99(s,3H)。
【0166】
ステップF:5−アミノ−3−(4−フェノキシフェニル)−1H−ピラゾール−4−アセトニトリル
【0167】
【化26】
【0168】
室温で、50mLのエタノール溶剤に、2−(メトキシ(4−フェノキシフェニル)メチレン)マロノニトリル(1g、1.0当量)を加えた後、ヒドラジン水和物(0.5g、85%、2.0当量)を徐々に加えた。添加完了後、反応混合物を90℃まで昇温して4時間還流させた。反応終了後、室温まで冷却した。回転することで溶剤を蒸発させた。反応液に50mLの水を加え、室温で5分間攪拌した。析出した白色の固体を回収して乾燥させて、所要の産物(1.0g、99%)として得た。
H NMR(400MHz,DMSO)δ7.78−7.81(m,2H),7.40−7.44(m,2H),7.16−7.20(m,1H),7.06−7.11(m,4H),6.26(brs,2H)。
【0169】
ステップG:(R)−3−(5−アミノ−4−シアノ−3−(4−フェノキシフェニル)−1H−ピラゾール−1−イル)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル
【0170】
【化27】
【0171】
(S)−3−(トシルオキシ)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル:氷浴で、50mLのジクロルメタン溶液に、(S)−3−ヒドロキシピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル(3g、1.0当量)を加えた後、p−トルエンスルホニルクロリド(3.4g、1.2当量)、4−ジメチルアミノピリジン(0.1g、10%)、及びトリエチルアミン(3.0g、2.0当量)を徐々に加えた。添加完了後、反応混合液を室温まで昇温して一晩攪拌した。有機層を、水および飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離して白色固体の産物(4.9g、93%)を得た。
H NMR(400MHz,CDCl)δ7.80(d,J=8.0Hz,2H),7.34(d,J=8.0Hz,2H),4.46(brs,1H),3.54−3.58(m,1H),3.31−3.40(m,3H),2.45(s,3H),1.80−1.88(m,1H),1.65−1.79(m,2H),1.47−1.52(m,1H),1.43(s,9H)。
【0172】
室温で、30mLの乾燥したDMF溶液に、(S)−3−(トシルオキシ)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル(0.77g、1.2当量)、及び5−アミノ−3−(4−フェノキシフェニル)−1H−ピラゾール−4−アセトニトリル(0.5g、1.0当量)を加えた後、反応混合液に固体の炭酸セシウム(1.18g、2.0当量)を加えた。添加完了後、反応系を80℃まで昇温して5時間撹拌した。反応終了後、室温まで冷却し、水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を、水および飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離して白色の固体産物7(0.25g、30%)を得た。
H NMR(400MHz,CDCl)δ7.85−7.88(m,2H),7.33−7.37(m,2H),7.09−7.14(m,1H),7.03−7.06(m,4H),4.52(brs,2H),4.19−4.29(m,1H), 4.01−4.18(m,1H),3.80−3.89(m,1H),3.02−3.19(m,1H),2.81(t,J=12.8Hz,1H),2.20−2.31(m,1H),2.07−2.18(m,1H),1.83−1.92(m,1H),1.76−1.81(m,1H),1.44(s,9H)。
【0173】
ステップH:(R)−3−(5−アミノ−4−ホルムアミド−3−(4−フェノキシフェニル)−1H−ピラゾール−1−イル)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル
【0174】
【化28】
【0175】
室温で、5mLのDMSO溶液に、(R)−3−(5−アミノ−4−シアノ−3−(4−フェノキシフェニル)−1H−ピラゾール−1−イル)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル(0.2g、1.0当量)及び固体の炭酸カリウム(0.18g、3.0当量)を加えた。その後、反応系に過酸化水素(8mL、30%)を添加した。添加完了後、反応系を60℃まで昇温して5時間撹拌した。反応終了後、室温まで冷却した。水を加え、ジクロルメタンで抽出した。有機層を、水および飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離して白色固体の産物(0.2g、97%)を得た。
H NMR(400MHz,CDCl)δ7.48−7.52(m,2H),7.35−7.39(m,2H),7.13−7.17(m,1H),7.04−7.08(m,4H),5.54(s,2H),5.19(brs,2H),4.19−4.28(m,1H),4.07−4.15(m,1H),3.81−3.90(m,1H),3.03−3.21(m,1H),2.75(t,J=11.6Hz,1H),2.09−2.29(m,2H),1.81−1.92(m,1H),1.51−1.68(m,1H),1.45(s,9H)。
【0176】
ステップI:(R)−アミノ−3−(4−フェノキシフェニル)−1−(ピぺリジン−3−イル)−1H−ピラゾール−4−ホルムアミド
【0177】
【化29】
【0178】
室温で、20mLのジクロルメタン溶液に、(R)−3−(5−アミノ−4−ホルムアミド−3−(4−フェノキシフェニル)−1H−ピラゾール−1−イル)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル(0.2g、1.0当量)を加えた。その後、トリフルオロ酢酸(1mL)を徐々に添加した。添加完了後、反応混合液を室温で攪拌しながら2時間反応させた。水を加え、ジクロルメタンで抽出し、有機層を、水及び飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離して白色の固体産物(0.1g、63%)を得た。
H NMR(400MHz,CDCl)δ7.26−7.34(m,4H),7.10−7.13(m,1H),6.93−7.01(m,4H),6.49(s,2H),5.25(brs,2H),4.65−4.72(m,1H),3.71−3.82(m,1H),3.42−3.51(m,1H),3.21−3.29(m,1H),2.80−2.91(m,1H),1.91−2.06(m,4H)。m/z=378[M+1]
【0179】
ステップJ:(R)−5−アミノ−3−(4−フェノキシフェニル)−1−(1−(ビニルスルホニル)ピペリジン−3−イル)−1H−ピラゾール−4−ホルムアミド
【0180】
【化30】
【0181】
氷浴で、10mLのジクロルメタン溶液に、(R)−5−アミノ−3−(4−フェノキシフェニル)−1−(ピぺリジン−3−イル)−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エステル(0.85g、1.0当量)、及びトリエチルアミン(45mg、2.0当量)を加えた後、ビニルスルホニルクロリド(28mg、1.0当量)を徐々に加えた。添加終了後、反応混合液を氷浴で直接に5分間攪拌した。反応終了後、水を加え、ジクロルメタンで抽出し、有機層を、水及び飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離して白色の固体産物(0.08g、85%)を得た。
H NMR(400MHz,CDCl)δ7.49−7.52(m,2H),7.35−7.39(m,2H),7.14−7.18(m,1H),7.04−7.09(m,4H),6.58−6.62(m,1H),6.35(d,J=16.4Hz,1H),5.70−5.77(m,2.5H),5.48(s,0.5H),5.20(brs,2H),4.82(d,J=12.8Hz,0.5H),4.61−4.68(m,0.5H),4.11−4.19(m,0.5H),4.01(d,J=12.8Hz,0.5H),3.82−3.94(m,1H),3.55−3.68(m,0.5H),3.00−3.19(m,1H),2.64−2.78(m,0.5H),2.30−2.42(m,1H),2.14−2.22(m,1H),1.91−2.01(m,1H),1.60−1.69(m,1H)。m/z=468[M+1]
【0182】
実施例2
(R)−5−アミノ−3−(4−フェノキシフェニル)−1−(1−(ビニルスルホニル)ピロリジン−3−イル)−1H−ピラゾール−4−ホルムアミド
【0183】
【化31】
【0184】
実施例2の合成は、(S)−3−(トシルオキシ)ピロリジン−1−カルボン酸tert−ブチルを用い、実施例1に記載のステップと類似したステップで完成させた。
HNMR(400MHz,CDCl)δ7.48(d,J=8.4Hz,2H),7.39(t,J=7.6Hz,2H),7.18(t,J=7.6Hz,1H),7.06−7.09(m,4H),6.51(dd,J=16.8,10.0Hz,1H),6.25(d,J=16.4Hz,1H),5.89(d,J=10.0Hz,1H),5.52(s,2H),5.10−5.30(brs,2H),4.67−4.71(m,1H),3.73−3.82(m,2H),3.51−3.60(m,2H),2.50−2.58(m,1H),2.37−2.44(m,1H).m/z=454[M+1]
【0185】
実施例3
(R、E)−5−アミノ−3−(4−フェノキシフェニル)−1−(1−(4−ジメチルアミノ−2−ブテノイル)ピロリジン−3−イル)−1H−ピラゾール−4−ホルムアミド
【0186】
【化32】
【0187】
実施例3の合成は、(R)−5−アミノ−3−(4−フェノキシフェニル)−1−(ピぺリジン−3−イル)−1H−ピラゾール−4−ホルムアミドを用い、実施例1に記載のステップと類似したステップで完成させた。
HNMR(400MHz,CDCl)δ7.47−7.50(m,2H),7.37(t,J=7.6Hz,2H),7.15(t,J=7.6Hz,1H),7.04−7.08(m,4H),6.88−6.97(m,1H),6.27(dd,J=17.2,11.6Hz,1H),5.55(s,1H),5.51(s,1H),5.15−5.35(brs,2H),4.63−4.71(m,1H),3.90−4.06(m,3H),3.57−3.75(m,1H),3.07−3.10(m,2H),2.68−2.77(m,0.5H),2.53−2.58(m,0.5H),2.28−2.45(m,1H),2.26(s,3H),2.24(s,3H).m/z=475[M+1]
【0188】
実施例4
(R,E)−5−アミノ−3−(4−フェノキシフェニル)−1−(1−(4−モルホリノ―2−ブテノイル)ピロリジン−3−イル)−1H−ピラゾール−4−ホルムアミド
【0189】
【化33】
【0190】
実施例4の合成は、(R)−5−アミノ−3−(4−フェノキシフェニル)−1−(ピペリジン−3−イル)−1H−ピラゾール−4−ホルムアミドを用い、実施例1に記載のステップと類似したステップで完成させた。
H NMR(400MHz,CDCl)δ7.47−7.50(m,2H),7.37(t,J=8.4Hz,2H),7.16(t,J=7.6Hz,1H),7.05−7.09(m,4H),6.88−6.95(m,1H),6.27−6.36(m, 1H),5.52(s,1H),5.47(s,1H),5.13−5.37(brs,2H),4.57−4.77(m,1H),3.89−4.09(m,3H),3.61−3.76(m,5H),3.13−3.18(m,2H),2.69−2.79(m,0.5H),2.36−2.60(m,5.5H).m/z=517[M+1]
【0191】
実施例5
(R,E)−5−アミノ−3−(4−フェノキシフェニル)−1−(1−(4−ピペリジン−2−ブテノイル) ピロリジン)−3−イル)−1H−ピラゾール−4−ホルムアミド
【0192】
【化34】
【0193】
実施例5の合成は、(R)−5−アミノ−3−(4−フェノキシフェニル)−1−(ピぺリジン−3−イル)−1H−ピラゾール−4−ホルムアミドを用い、実施例1に記載のステップと類似したステップで完成させた。
H NMR(400MHz,CDCl)δ7.45−7.48(m,2H),7.35(t,J=7.6Hz,2H),7.14(t,J=7.6Hz,1H),7.03−7.06(m,4H),6.84−6.92(m,1H),6.41−6.52(m,1H),5.54(s,1H),5.51(s,1H),5.12−5.30(brs,2H),4.62−4.74(m,1H),3.85−4.14(m,3H),3.69−3.78(m,0.5H),3.59−3.66(m,0.5H),3.24−3.36(m,2H),2.55−2.79(m,5H),2.28−2.44(m,1H),1.66−1.79(m,4H),1.44−1.57(m,2H).m/z=515[M+1]
【0194】
実施例6
(R,E)−5−アミノ−3−(4−フェノキシフェニル)−1−(1−(4−ピロリジニル−2−ブテノイル) ピロリジン−3−イル)−1H−ピラゾール−4−ホルムアミド
【0195】
【化35】
【0196】
実施例6の合成は、(R)−5−アミノ−3−(4−フェノキシフェニル)−1−(ピペリジン−3−イル)−1H−ピラゾール−4−ホルムアミドを用い、実施例1に記載のステップと類似したステップで完成させた。
H NMR(400MHz,CDCl)δ7.47−7.50(m,2H),7.37(t,J=7.6Hz,2H),7.15(t,J=7.6Hz,1H),7.04−7.08(m,4H),6.86−6.97(m,1H),6.46(d,J=15.2Hz,1H),5.71(s,1H),5.58(s,1H),5.12−5.37(brs,2H),4.60−4.85(m,1H),3.86−4.14(m,3H),3.60−3.78(m,1H),3.35−3.54(m,2H),2.69−2.86(m,4.5H),2.51−2.64(m,0.5H),2.25−2.46(m,1H),1.81−1.96(m,4H).m/z=501[M+1]
【0197】
実施例7
(R,E)−5−アミノ−3−(4−フェノキシフェニル)−1−(1−(2−ブテノイル)ピロリジン−3−イル)−1H−ピラゾール−4−ホルムアミド
【0198】
【化36】
【0199】
実施例7の合成は、(R)−5−アミノ−3−(4−フェノキシフェニル)−1−(ピぺリジン−3−イル)−1H−ピラゾール−4−ホルムアミドを用い、実施例1に記載のステップと類似したステップで完成させた。
H NMR(400MHz,CDCl)δ7.47−7.50(m,2H),7.35−7.39(m,2H),7.14−7.18(m,1H),7.05−7.09(m,4H),6.92−6.98(m,1H),6.11(dd,J=14.0,24.4Hz,1H),5.55(s,1H),5.51(s,1H),5.22(brs,2H),4.62−4.70(m,1H), 3.88−4.04(m,3H),3.64−3.70(m,1H),2.30−2.87(m,2H),1.86−1.90(m,3H).m/z=432[M+1]
【0200】
実施例8
(R,E)−5−アミノ−3−(4−フェノキシフェニル)−1−(1−(4−メチル−2−ペンテノイル)ピロリジン−3−イル)−1H−ピラゾール−4−ホルムアミド
【0201】
【化37】
【0202】
実施例8の合成は、(R)−5−アミノ−3−(4−フェノキシフェニル)−1−(ピぺリジン−3−イル)−1H−ピラゾール−4−ホルムアミドを用い、実施例1に記載のステップと類似したステップで完成させた。
HNMR(400MHz,CDCl)δ7.48−7.51(m,2H),7.35−7.39(m,2H),7.14−7.17(m,1H),7.04−7.09(m,4H),6.92(dd,J=6.4,14.8Hz,1H),6.02(dd,J=15.2,24.8Hz,1H),5.52(s,1H),5.48(s,1H),5.20(brs,2H),4.60−4.70(m,1H),3.90−4.04(m,3H),3.60−3.74(m,1H),2.30−2.88(m,3H),1.04−1.07(m,6H).m/z=460[M+1]
【0203】
実施例9
(R,E)−5−アミノ−3−(4−フェノキシフェニル)−1−(1−(4−メトキシブタ−2−エノイル)ピロリジン−3−イル)−1H−ピラゾール−4−ホルムアミド
【0204】
【化38】
【0205】
実施例9の合成は、(R)−5−アミノ−3−(4−フェノキシフェニル)−1−(ピぺリジン−3−イル)−1H−ピラゾール−4−ホルムアミドを用い、実施例1に記載のステップと類似したステップで完成させた。
H NMR(400MHz,CDCl)δ7.47−7.50(m,2H),7.35−7.39(m,2H),7.13−7.17(m,1H),7.05−7.09(m,4H),6.94(dd,J=4.0,14.8Hz,1H),6.36(dd,J=7.2,23.2Hz,1H),5.55(s,1H),5.52(s,1H),5.23(brs,2H),4.62−4.74(m,1H),3.97−4.11(m,5H),3.60−3.78(m,1H),3.41&3.38(s,3H),2.30−2.78(m,2H).m/z=462[M+1]
【0206】
実施例10
(R,E)−5−アミノ−3−(4−フェノキシフェニル)−1−(1−(4−カルボキシル−3−ブテニル)ピロリジン−3−イル)−1H−ピラゾール−4−ホルムアミド
【0207】
【化39】
【0208】
実施例10の合成は、(R)−5−アミノ−3−(4−フェノキシフェニル)−1−(ピぺリジン−3−イル)−1H−ピラゾール−4−ホルムアミドを用い、実施例1に記載のステップと類似したステップで完成させた。
H NMR(400MHz,CDCl)δ7.44(d,J=8.0Hz,2H),7.34(t,J=8.0Hz,2H),7.10−7.20(m,3H),7.10−7.04(m,4H),6.87−6.94(m,1H),5.92(d,J=14.8Hz,1H),5.40−5.56(brs,2H),4.97−5.04(m,1H),3.46−3.58(m,1H),3.16−3.38(m,2H),2.95−3.10(m,1H),2.35−2.55(m,2H),2.19−2.33(m,2H).m/z= 448[M+1]
【0209】
実施例11
(R,Z)−5−アミノ−1−(1−(4−カルボキシブタ−2−エノイル)ピロリジン−3−イル)−3−(4−フェノキシフェニル)−1H−ピラゾール−4−ホルムアミド
【0210】
【化40】
【0211】
実施例11の合成は、(R)−5−アミノ−3−(4−フェノキシフェニル)−1−(ピペリジン−3−イル)−1H−ピラゾール−4−ホルムアミドを用い、実施例1に記載のステップと類似したステップで完成させた。
H NMR(400MHz,CDCl)δ7.46(d,J=8.4Hz,2H),7.38(t,J=8.0Hz,2H),7.16(t,J=7.2Hz,1H),7.05−7.08(m,4H),6.37−6.55(m,1H),5.40−5.60(brs,2H),5.12−5.30(brs,2H),4.73−4.83(m,1H),3.99−4.23(m,3H),3.70−3.85(m,1H),2.67−2.77(m,0.5H),2.43−2.62(m,1.5H).m/z=462[M+1]
【0212】
実施例12
(R,E)−5−アミノ−1−(1−(4―ブロモブタ−2−エノイル)ピロリジン−3−イル)−3−(4−フェノキシフェニル)−1H−ピラゾール−4−ホルムアミド
【0213】
【化41】
【0214】
実施例12の合成は、(R)−5−アミノ−3−(4−フェノキシフェニル)−1−(ピペリジン−3−イル)−1H−ピラゾール−4−ホルムアミドを用い、実施例1に記載のステップと類似したステップで完成させた。
H NMR(400MHz,CDCl)δ7.48−7.50(m,2H),7.35−7.39(m,2H),7.14−7.18(m,1H),7.69−7.09(m,5H),6.34(dd,J=10.8,22.0Hz,1H),5.2−5.6(brs,4H),4.61−4.73(m,1H),3.90−4.12(m,5H),3.62−3.76(m,1H),2.30−2.78(m,2H).m/z=510[M+1]
【0215】
実施例13
(R,E)−4−(3−(5−アミノ−4−カルバモイル−3−(4−フェノキシフェニル)−1H−ピラゾール−1−イル)ピロリジン−1−イル)−4−オキソブタ−2―エン−1−ホルミルアセタート
【0216】
【化42】
【0217】
実施例13の合成は、(R)−5−アミノ−3−(4−フェノキシフェニル)−1−(ピペリジン−3−イル)−1H−ピラゾール−4−ホルムアミドを用い、実施例1に記載のステップと類似したステップで完成させた。
H NMR(400MHz,CDCl)δ7.47−7.50(m,2H),7.35−7.39(m,2H),7.14−7.18(m,1H),7.05−7.09(m,4H),6.88−6.93(m,1H),6.32(dd,J=14.8,22.8Hz,1H),5.52(s,1H),5.48(s,1H),5.21(brs,2H),4.61−4.75(m,3H),3.93−4.07(m,3H),3.61−3.76(m,1H),2.30−2.80(m,2H),2.10(s,3H).m/z=490[M+1]
【0218】
実施例14
(R,E)−5−アミノ−3−(4−フェノキシフェニル)−1−(1−(4−(メタンスルホニルアミノ)ブタ−2−エノイル)ピロリジン−3−イル)−1H−ピラゾール−4−ホルムアミド
【0219】
【化43】
【0220】
実施例14の合成は、(R)−5−アミノ−3−(4−フェノキシフェニル)−1−(ピペリジン−3−イル)−1H−ピラゾール−4−ホルムアミドを用い、実施例1に記載のステップと類似したステップで完成させた。
H NMR(400MHz,CDCl)δ7.48−7.52(m,2H),7.35−7.39(m,2H),7.14−7.18(m,1H),7.05−7.08(m,4H),6.85−6.93(m,1H),6.38(dd,J=14.8,21.2Hz,1H),5.55(s,1H),5.50(s,1H),5.21(brs,2H),4.60−4.74(m,2H),3.92−4.07(m,5H),3.61−3.78(m,1H),2.98&2.97(s,3H),2.30−2.86(m,2H).m/z=525[M+1]
【0221】
実施例15
(R,E)−5−アミノ−1−(1−(4−ヒドロキシブタ−2−エノイル)ピロリジン−3−イル)−3−(4−フェノキシフェニル)−1H−ピラゾール−4−ホルムアミド
【0222】
【化44】
【0223】
実施例15の合成は、(R)−5−アミノ−3−(4−フェノキシフェニル)−1−(ピペリジン−3−イル)−1H−ピラゾール−4−ホルムアミドを用い、実施例1に記載のステップと類似したステップで完成させた。
H NMR(400MHz,CDCl)δ7.45−7.48(m,2H),7.35(t,J=8.0Hz,2H),7.14(t,J=7.6Hz,1H),7.03−7.06(m,4H),6.97−7.01(m,1H),6.33−6.43(m,1H),5.56(s,1H),5.48(s,1H),5.20−5.41(brs,2H),4.62−4.72(m,1H), 4.33−4.36(m,2H),3.89−4.11(m,3H),3.60−3.74(m,1H),2.67−2.77(m,0.5H),2.49−2.62(m,0.5H),2.26−2.44(m,1H).m/z=448[M+1]
【0224】
実施例16
(R)−5−アミノ−3−(4−フェノキシフェニル)−1−(1−ブタ−2−イナミドピロリジン−3−イル)−1H−ピラゾール−4−ホルムアミド
【0225】
【化45】
【0226】
実施例16の合成は、(R)−5−アミノ−3−(4−フェノキシフェニル)−1−(ピペリジン−3−イル)−1H−ピラゾール−4−ホルムアミドを用い、実施例1に記載のステップと類似したステップで完成させた。
H NMR(400MHz,CDCl)δ7.48−7.51(m,2H),7.35−7.39(m,2H),7.14−7.17(m,1H),7.05−7.08(m,4H),5.65(s,1H),5.62(s,1H),5.30(brs,2H),4.70−4.73(m,1H),3.95−4.15(m,2H),3.78−3.87(m,1.5H),3.58−3.61(m,0.5H),2.57−2.65(m,1H),2.34−2.39(m,1H),2.00&1.97(s,3H).m/z=430[M+1]
【0227】
実施例17
(R)−5−アミノ−3−(4−フェノキシフェニル)−1−(1−(プロピオロイル)ピロリジン−3−イル)−1H−ピラゾール−4−ホルムアミド
【0228】
【化46】
【0229】
実施例17の合成は、プロピオール酸、及び(R)−5−アミノ−3−(4−フェノキシフェニル)−1−(ピペリジン−3−イル)−1H−ピラゾール−4−ホルムアミドを用い、HOBtとEDCIを介してDMF中で縮合することで完成させた。
H NMR(400MHz,CDCl)δ7.48−7.50(m,2H),7.35−7.39(m,2H),7.14−7.17(m,1H),7.05−7.08(m,4H),5.63(s,1H),5.61(s,1H),5.30(brs,2H),4.72−4.75(m,1H),3.82−4.14(m,3.5H),3.61−3.64(m,0.5H),3.08&3.04(s,1H),2.58−2.66(m,1H),2.35−2.41(m,1H).m/z=416[M+1]
【0230】
実施例18
(R)−5−アミノ−1−((1s,4s)−4−ブタ−2−イナミドシクロヘキシル)−3−(4−フェノキシフェニル)−1H−ピラゾール−4−ホルムアミド
【0231】
【化47】
【0232】
実施例18の合成は、実施例1に記載のステップと類似したステップで完成させた。
H NMR(400MHz,CDCl)δ7.50−7.52(m,2H),7.36−7.40(m,2H),7.14−7.18(m,1H),7.04−7.10(m,4H),6.09(d,J=8.0Hz,1H),5.44(s,2H),5.22(brs,2H),4.22−4.25(m,1H),3.86−3.88(m,1H),1.61−2.13(m,8H),1.94(s,3H).m/z=458[M+1]
【0233】
生物学的活性試験
化合物の生物学的活性
BTKの体外(インビトロ)阻害活性(IC50値の測定)
本明細書に係る化合物のBTKの半数阻害濃度(IC50値)は、酵素活性試験および細胞機能試験の何れにおいても測定した。酵素活性試験では、当該化合物のBTK活性に対する阻害能力を測定すると共に、細胞機能試験では、化合物の細胞におけるBCR誘発性カルシウム流に対する阻害作用を測定した。
【0234】
均一系時間分解蛍光技術(HTRF:Homogeneous Time−Resolved Fluorescence)方法によりBTKのキナーゼ活性の検出用プラットフォームを確立し、化合物の活性を測定した。化合物を、1mMから始めて100%のDMSOを用いて3倍の段階稀釈(合計11個の濃度)を行い、各濃度で4μLを取って反応緩衝液(50mM HEPES、pH7.4、10mM MgCl、1mM EGTA、0.01% Tween−20、0.005% BAS、2mM DTT)96μLに加え、その後、混合液2.5μLを取って384ウェルプレート(OptiPlate−384、PerkinElmerから購入)に加え、その後、BTK(Millipore社から購入)5μLを加えた。遠心分離し、均一混合した。さらにATP(最終濃度がK値である)と、TK petide(HTRF(登録商標) KinEASE(商標)−TK、Cisbio社から購入)との混合物2.5μLを加え、反応を開始させる(全反応体積は10μLである)。384ウェルプレートをインキュベーターに入れて23℃で120分間培養し、その後、それぞれ、Eu3+クリプタートで標識した抗リン酸化チロシン抗体(Cisbio社から購入)5μL、ストレプトアビジン(Streptavidin)−XL−665(HTRF(登録商標) KinEASE(商標)−TK、Cisbio社から購入)5μLを入れて反応を停止させた。インキュベーターで1時間インキュベートした後、Envision(PerkinElmer社から購入)にて蛍光値を読み取った(励起波長320nmとし、615nmおよび665nmで検出した。酵素活性は、665nmおよび615nmにおいての蛍光値の割合によって決定された)。各化合物に対して、酵素活性は、11個の濃度の条件下で測定し、IC50値は、GraFit6.0ソフトウェア(Erithacus Software)によって得た。
【0235】
カルシウム流蛍光法試験(Calcium flux fluorescence−based assays)は、Fluo−4 Direct(商標) Calcium Assay Kits(Invitrogen社から購入)を用い、FlexStation III(Molecular Devices社から購入)で、製造元の指示に従って完成した。具体的なステップは、以下の通りである。10%のウシ胎仔血清(Hyclone社から購入)を添加したRPMI−1640媒質(medium)(Invitrogen社から購入)でRamos細胞を培養して、遠心分離による洗浄を行った後、再度低血清培地で96ウェルプレート(Corning社から購入)に敷き(1X10細胞/45μL/ウェル)、その後、45μLの蛍光着色料(Invitrogen社から購入)を加えて37℃で1時間インキュベートした。被検化合物は、DMSOで3倍の段階稀釈を行い、その後低血清培地で100倍に希釈した。その後、当該希釈後の混合物10μLを取って上記96ウェルプレート(Corning社から購入)に加え(DMSOの最終濃度は0.1%)、且つインキュベーター(37℃、5%のCO)に入れ、30分間インキュベートした。化合物処理された細胞を、ヤギ抗ヒトIgM抗体(10μg/mL、SouthernBiotech社から購入)で刺激し、且つFlexStation IIIで蛍光値(494nmで励起、516nmで90秒検出したもの)を読み取った。各化合物のデータに対して、GraphPad Prism 5(GraphPad Software)を用いてフィッティング処理して、それぞれのIC50値を計算した。
【0236】
選択された一部の化合物の生物学的データ
本明細書に記載の生物学的方法により、上記に調製された一部の化合物に対して分析した。その結果を次の表1に示す。
【0237】
【表1-A】
【表1-B】
【表1-C】
【表1-D】
【表1-E】
【0238】
マウス皮下腫瘍異種移植モデルにおける有効性の測定
SPF級のCB−17SCIDマウス(雌、4〜5週齢)を用いた。各マウスの左右両側の腋下部に、無血清培地で懸濁させたOCI−LY−10細胞懸濁液0.1ml(5.0×10cells含有、30%Matrigel)を皮下注射した。腫瘍の平均体積が100mmを超えたら、通し番号によって各マウスに番号をつけ、それらの腫瘍の大きさ及び体重をそれぞれ測定した。腫瘍の体積によって、小から大というようにランダムに群わけ、各群の動物の平均体重を同じレベルとなるように調整した。群わけの当日に経口投与を開始し、期間中、週に2回、腫瘍の体積及び体重を測定した。相対腫瘍増殖率(T/C)及び腫瘍増殖抑制率(TGI)を主な検出指標とした。
【0239】
腫瘍体積は、次式により計算される。
V=0.5×a×b
ここで、Vは腫瘍体積であり、aとbはそれぞれ腫瘍の長さと幅である。腫瘍体積によって相対腫瘍体積(relative tumor volume,RTV)を計算する。その計算式は、RTV=V/Vであり、ここで、Vは、群分けて投与時に測定した腫瘍体積であり、Vは、毎回測定時の腫瘍体積である。
【0240】
相対腫瘍増殖率は、次式により計算される。
T/C(%)=TRTV/CRTV*100%
(TRTV:治療群RTV;CRTV:陰性対照群RTV)
【0241】
腫瘍増殖抑制率は、次式により計算される。
TGI(%)=(1−(治療群腫瘍体積−治療群の群わけ時の腫瘍体積)/(対照群腫瘍体積−対照群の群わけ時の腫瘍体積))*100%
【0242】
結果は、表2に示すとおりである。
【0243】
【表2】
【0244】
マウスの毒性試験
CD−1(ICR)マウス 20匹(雄)(北京維通利華実験動物技術有限会社から購入、約5週齢、体重の範囲が18〜24g)を4群に分け、1群あたり5匹とした。溶媒(20%のスルホブチルエーテルβ-シクロデキストリン溶液)、実施例9の懸濁液(1000mg/kg)、及び実施例16の懸濁液(1000mg/kg)をそれぞれ経口胃ゾンデで、1日1回、7日間連続投与した。毎日体重を測り、動物の健康状況を観察した。プロセス全体において、全ての動物に絶食させない。
【0245】
7日連続で投与した後、すべての動物には健康異常はみられなかった。次の表3には、マウスの平均体重のデータを示している。表3から、動物の体重は何れも増加し、それらの変化も類似したことが分かる。表4には、溶媒対照群の体重に対する投与群マウスの平均体重の変化の百分率を示しており、これにより、実施例9と実施例16の投与群は溶媒対照群と近い結果(相違は2%未満)を示し、毒性を示しない。
【0246】
【表3】
【0247】
キナーゼ選択性の検出
BTKについての方法と類似した方法でITKへの体外(インビトロ)阻害活性を測定した。
【0248】
実施例9の化合物のBTKへの阻害活性は非常に高く、IC50の値が1.9nMであり、その阻害活性が、臨床的に承認された薬物である文献中の記載化合物Ibrutinib/PCI−32765と同じレベルにある。同様の方法により、ITK(BTKのホモログであるTecキナーゼであり、主にT細胞で発現される)の酵素学的検出用プラットフォームを確立して、実施例9の化合物のITKに対する阻害能力を検出した。その結果、ITKに対する阻害活性を示すIC50値は1000nMより大きかった。BTK及びITKに対する阻害能力の選択性を計算し、治療濃度域(therapeutic window)が1000倍も大きかった。文献中の記載化合物であるPCI−32765の選択性は100倍程度であり、即ち、実施例9の化合物の選択性は、PCI−32765よりはるかに高かった。具体的な結果は、次の表5に示す。
【0249】
【表4】
【0250】
関節炎マウスモデルにおける薬力学効果の検出
方法:II型コラーゲン誘発性マウス関節炎モデルの確立
DBA/1マウス(雄、6〜8週齢)を1週間適応的に飼育した後、各マウスの尾根部に、ウシII型コラーゲン及びフロイント完全アジュバントの乳化液(ウシII型コラーゲン100μg及び不活化結核菌200μg含有)0.1mLを皮下注射し、約4週間後、マウスの関節炎の発症が開始したら群わけ、各マウスの関節炎評価得点によってランダムに群わけた直後に投与した。4週間連続で投与して、期間中、1日おき、各マウスに対して関節炎評価を行い、且つ体重を測定した。関節炎の評価基準は、以下の通りである。
0点:正常;
1点:足首関節に紅斑や軽度の腫脹あり;
2点:足首関節から足指関節または掌関節にかけて、紅斑や軽度の腫脹あり;
3点:足首関節から中足骨関節または掌関節にかけて、紅斑や中程度の腫脹あり;
4点:足首関節から足趾関節を含めて足全体に腫脹紅斑や重度の腫脹または関節強直である。
【0251】
上述した基準によって各足に対して採点を行い、最多得点は16点である。
【0252】
具体的な結果は、図1に示すとおりである。その結果は、II型コラーゲン誘発性関節炎マウスモデルにおいて、実施例9の化合物を投与した後、マウスの炎症が顕著に緩解されたことを示した。統計結果により、関節炎の緩解程度は薬物の投与量に顕著に依存しており、且つ、投与量が極めて低い(0.3mg/kg)場合でも、実施例9の化合物はマウスの関節炎に対する良好な治療効果を有し、炎症が顕著に緩解された。並行に比較した結果から、0.3mg/kgの実施例9の化合物による治療効果は、3mg/kgのPCI−32765による治療効果に相当し、実施例9の化合物はかなり高い治療濃度域を有することが分かる。
図1