(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術によれば、地盤の含水率をある程度低下させることは可能である。しかし、透水係数の小さい粘性土では、排水ポンプで排出できる地下水の量が少なく、脱水効率が悪い。
【0006】
また、含水率が高い掘削土を現場内に仮置きして含水率を下げる場合、掘削現場が余裕のある広いエリアであれば良いが、都市部等の狭小地では仮置きヤードを十分に確保できないことから、掘削作業に支障を来たす恐れがある。
【0007】
このような観点から、本発明は、掘削対象地盤の含水率を下げることができる地盤改良方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明は、掘削対象となる地盤の含水率を下げる地盤改良方法であって、前記地盤の中に
多数の貫通孔を有する管材を
水平方向及び該水平方向に対する垂直方向に配置し、
前記垂直方向に配置した管材は前記水平方向の管材の上部に接続され、前記水平方向の管材内に加熱手段を挿入して前記地盤を加熱することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、加熱手段の発熱による熱が管材を介して地盤へ伝導し、伝導熱により地盤内の水分が蒸発する。この蒸発により、地盤の含水率を下げることができる。従って、掘削土の仮置きスペースの無い狭小地でも、掘削土の仮置き場を必要とすることなく地盤の掘削を行うことができる。又は、掘削土の仮置き時間を短縮することができる。
【0010】
また、水平管内で加熱手段が発熱すると、水平管の貫通孔から熱が地盤へ伝導する。水平管の上部に垂直方向の管材(「縦管」ともいう)の開口が位置する場合、水平管の貫通孔から外部へ伝導する熱が、縦管の内部を上方へ向かって伝導すると共に、縦管の貫通孔から地盤へ伝導する。このため、地盤を広範囲に渡って加熱することができる。従って、地盤の含水率を効率良く低下させることができる。
【0011】
前記加熱手段をスチームヒータとし
、前記スチームヒータから排出されたスチームが前記水平方向の管材の前記貫通孔を介して前記地盤内および前記垂直方向の管材内へ排出されるようにしてもよい。加熱手段をスチームヒータとした場合、電熱棒等の電力による加熱手段を用いるよりも、コストが低く、素早い加熱が可能となり、より広範囲に地盤を加熱することができる
。
【0012】
前記垂直方向の管材に、前記地盤に空気を圧入する圧入手段を挿入し、当該圧入手段により地盤に圧入した空気で地盤に亀裂を生じさせるようにしてもよい。
このように縦管に空気を圧入すると、縦管の貫通孔から圧縮空気が吹出し、地盤に多くの亀裂が生じる。このように地盤に多くの亀裂ができると、水平管や縦管の貫通孔から外部へ伝導した熱及びこの熱による蒸発水分が、亀裂を通って地上へ向かうので、より早く地盤の水分を蒸発させることができる。つまり、地盤の水分を素早く蒸発させることが可能になる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、掘削対象地盤の含水率を下げることができるので、掘削土の仮置きスペースの無い都市部等の狭小地でも、掘削土の仮置き場を必要とすることなく地盤の掘削を行うことができる。或いは、掘削土の仮置き時間を短縮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態の構成>
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0016】
図1(a)及び(b)に示すように、本実施形態に係る地盤改良方法は、掘削対象となる地盤10の含水率を下げるために実施されるものであり、水平状態の横管(水平方向の管材)11と、横管11に挿入されたスチームヒータ管12aと、横管11に対して垂直に配置された縦管(垂直方向の管材)14とを使用する。横管11及び縦管14は、地盤10の中に配置し、スチームヒータ管12aの基端には、スチームヒータ本体12を連結した。
【0017】
横管11及び縦管14は、両端が開口した筒状を成し、周回壁に多数の貫通孔を有している。スチームヒータ管12aは、両端が開口したU字型の筒状を成し、周回壁に多数の貫通孔を有している。
【0018】
但し、横管11は、先端が閉塞したタイプのものでもよい。また、1つのスチームヒータ本体12に1本のスチームヒータ管12aが連結された構成としたが、1つのスチームヒータ本体12が大型のものであって、これに複数本のスチームヒータ本体12が連結されている構成であってもよい。
なお、スチームヒータ管12a及びスチームヒータ本体12により加熱手段が構成されている。但し、加熱手段としては、スチームヒータ管12a以外に、電熱棒等の電力による加熱装置であってもよい。
【0019】
また、
図1(a)に示すように、横管11は、所定間隔L1で配置されている。この配置に伴ってスチームヒータ管12aの基端に連結されたスチームヒータ本体12も所定間隔L1に対応した間隔で配置されている。
【0020】
また、各横管11の上方には、所定間隔で複数本の縦管14が配列されている。
【0021】
地盤10の含水率は、処分場の受入れ基準値よりも高い土壌であるとする。また、地盤10は、法面10aを有する。
なお、地盤10が予めこのような法面10aを有する地形で無い場合、地盤10に所定サイズの穴を掘り、この穴の斜面を法面10aとする。
【0022】
このような地盤10の建築工事に係る掘削範囲において、建設工事のための掘削を行う前に、法面10aの下方位置において、周知の筒状のケーシングを有するボーリング装置(図示せず)によって、法面10aから所定位置まで削孔する。次に、ボーリングロッドを引き抜き、横管11をケーシング内に挿入し、削孔に用いられたケーシングを引き抜いて横管11を地盤10中に残置する。これによって、
図1(a)及び(b)に示すように、横管11が地盤10の中に配置される。
【0023】
次に、横管11の上方の地面からボーリングによって、横管11に対して垂直方向(又は鉛直方向)に横管11の位置まで削孔し、この削孔に用いられるケーシング内に縦管14を挿入し、削孔に用いたケーシングを引き抜いて縦管14として残置する。この動作を複数回行うと、
図1(a)及び(b)に示すように、複数本の縦管14が横管11の上方に垂直状態で配置される。
【0024】
次に、横管11の中に、その先端までスチームヒータ管12aをU字側から挿入し、スチームヒータ管12aの一端をスチームヒータ本体12に接続する。これによって、地盤改良方法を実施するための準備が完了する。その後、横管11、スチームヒータ管12a、縦管14を引き抜き、地盤10を掘削する。
【0025】
<実施形態の動作>
この後、スチームヒータ本体12から矢印Y1で示すように高熱のスチームを、スチームヒータ管12aの管内へ連続して噴出する。この噴出によりスチームが管内を通って矢印Y2で示すように先端から大気へ排出される。
【0026】
この際、スチームヒータ管12a内を通過するスチームは、
図1(b)に多数の波線で示すように、スチームヒータ管12aの多数の貫通孔から排出され、更に横管11の多数の貫通孔を介して地盤10内及び縦管14の管内へ排出される。縦管14の管内へ排出されたスチームは、管内を通過して上端の開口から大気へ排出される。この際、縦管14内を通過するスチームは、
図1(b)に多数の波線で示すように、縦管14の多数の貫通孔から地盤10内へ排出される。
【0027】
地盤10内へ排出された高熱のスチームによる熱は、地盤10内を伝導しながら地盤10を加熱して水分を蒸発させる。この蒸発により地盤10の含水率が低下して乾くので、所定時間、地盤10を加熱すれば、地盤10の含水率が低下して処分場の受入れ基準値よりも低くなる。
【0028】
<実施形態の効果>
本実施形態の地盤改良方法では、掘削対象となる地盤10の含水率を下げるために、地盤10の中に管材としての横管11を配置し、横管11内に加熱手段としてのスチームヒータ管12aを挿入して地盤10を加熱するようにした。
【0029】
この方法によれば、加熱手段の発熱による熱が横管11を介して地盤10へ伝導し、伝導熱により地盤10内の水分が蒸発するので、地盤10の含水率を下げることができる。従って、掘削土の仮置きスペースの無い狭小地でも、掘削土の仮置き場を必要とすることなく地盤10の掘削を行うことができる。
【0030】
又は、地盤10の加熱により、地盤10の含水率が処分場の受入れ基準値よりも低くならなかった場合でも、地盤10内の水分は蒸発しているので、この蒸発した掘削土を仮置きすれば、仮置き時間を短縮することができる。
【0031】
また、横管11は周壁に多数の貫通孔を有する有孔管であり、この場合、加熱手段としてスチームヒータ管12aを用いれば、電力による加熱装置を用いるよりも、コストが低く、素早い加熱が可能となり、より広範囲に地盤10を加熱することができる。
【0032】
また、横管11を水平方向に配置し、横管11の上部(又は上方)に当該横管11に対して垂直方向に複数の縦管14を配置してもよい。
この配置によれば、水平な横管11内でスチームヒータ管12aが発熱すると、横管11の貫通孔を介して熱が地盤10へ伝導する。この際、横管11の上部に複数の縦管14の開口が位置するので、横管11の貫通孔から外へ伝導する熱が、縦管14の内部を上方へ向かって伝導すると共に、縦管14の貫通孔から地盤10へ伝導する。このため、地盤10を広範囲に渡って加熱することができ、地盤10の含水率を効率良く低下させることができる。
【0033】
<実施形態の変形例1>
図2は本発明の実施形態の変形例1に係る地盤改良方法を説明するための、地盤10の断面図である。この
図2は
図1(b)の断面図に対応している。
本変形例1の地盤改良方法が、上述した実施形態の地盤改良方法と異なる点は、
図2に示すように掘削対象となる地盤10が、左右に法面10a,10bを備える断面台形状であり、この地盤10に真直ぐなスチームヒータ管12b及び横管11aを用いるようにした点にある。
【0034】
スチームヒータ管12bは、両端が開口した真直ぐな筒状を成し、周回壁に多数の貫通孔を有する管材である。また、横管11aは、
図1に示したU字型のスチームヒータ管12aを入れる横管11よりも小径の管材である。横管11aには直線状のスチームヒータ管12bが挿入される。
なお、地盤10は、本例では断面台形状としたが、対向端面が切り立った壁面状やえぐれた壁面状であってもよい。
【0035】
このような断面台形状の地盤10に対して地盤改良方法を適用する場合には、右側の法面10aの下方位置から、ボーリング装置(図示せず)によって水平方向に左側の法面10bに突き抜けるように削孔を行い、横管11aをケーシング内に挿入し、削孔に用いられたケーシングを引き抜いて、横管11aとして残置する。これによって、
図2に示すように、横管11aの中に水平状態に、右側の法面10aから左側の法面10bを突き抜ける状態で配置される。
【0036】
次に、横管11aの上方側において、上述した実施形態と同様に複数本の縦管14を配置する。
次に、横管11aの中に、この横管11aを突き抜ける状態にスチームヒータ管12bを挿入し、このスチームヒータ管12bをスチームヒータ本体12に連結する。
【0037】
この後、スチームヒータ本体12から矢印Y1で示すように高熱のスチームを、スチームヒータ管12bの管内へ連続して噴出すると、スチームが管内を通って矢印Y3で示すように先端から大気へ排出される。この際、上述の実施形態と同様に、スチームが、スチームヒータ管12b及び横管11aの多数の貫通孔を介して地盤10内及び縦管14の管内へ排出される。この排出されたスチームは、更に、縦管14内を通過して大気へ排出されると共に、縦管14の多数の貫通孔から地盤10内へ排出される。
【0038】
横管11a及び縦管14の多数の貫通孔から、地盤10内へ排出された高熱のスチームによって、地盤10が加熱されて水分が蒸発する。従って、本変形例1の地盤改良方法によっても、上述した実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。
【0039】
なお、本変形例1の地盤改良方法においても、加熱手段が電熱棒等の電力による加熱装置であってもよい。
また、上述の実施形態及び変形例1においては、地盤10の中に横管11,11aを水平状態に配置し、縦管14を水平な横管11,11aに対して垂直に配置するようにしたが、横管11,11aを傾斜状態に配置してもよい。
【0040】
この傾斜状態の配置の場合、縦管14はこの下端開口が、傾斜状態の横管11,11aの表面に近接、又は開口縁が一部当接する状態に鉛直状態(
図2と同様な垂直状態)に配置する。又は、縦管14も傾斜状態に配置し、この傾斜状態の縦管14の下端開口が、傾斜状態の横管11,11aに近接、又は開口縁が一部当接する状態に配置してもよい。この場合、斜めの縦管14の上端開口は、
図1又は
図2同様に大気に連通した状態とする。
【0041】
<実施形態の変形例2>
図3は本発明の実施形態の変形例2に係る地盤改良方法に用いられる圧入手段21の構成を示す断面図である。
本変形例2の地盤改良方法が、上述した実施形態及び変形例1の地盤改良方法と異なる点は、
図3に示すように、縦管14に圧入手段21を用いた点にある。
【0042】
圧入手段21は、圧縮空気を空気噴出口から噴出するコンプレッサ21aと、コンプレッサ21aの空気噴出口に連結された空気噴出管21bと、空気噴出管21bに所定間隔開けた上下位置に空気が封入排出されるように一体に取り付けられた上パッカー21c及び下パッカー21dとを備えて構成されている。空気噴出管21bは、上パッカー21c及び下パッカー21dが萎んだ状態で縦管14に挿入され、コンプレッサ21aから空気が噴出されることで、上パッカー21c及び下パッカー21dが空気で膨らんで、縦管14の上方及び下方の内壁に嵌合される状態となる。
【0043】
このような圧入手段21を組み付けた縦管14の内部には、所定間隔離間した上パッカー21cと下パッカー21dとによって閉塞空間21eが形成される。但し、閉塞空間21eは、縦管14の壁面に多数の貫通孔が形成されているので、完全な閉塞空間ではなく、半閉塞空間となっている。
【0044】
また、圧入手段21の縦管14への組み付けは、
図1又は
図2に示す各々の縦管14に対して上記のように行う。以降、
図2に示す縦管14を代表して説明する。
本変形例2の地盤改良方法を実施する場合、
図3に示すように、縦管14に空気噴出管21bを挿入して下方内壁に下パッカー21dが、上方内壁に上パッカー21cが位置する状態に、圧入手段21を縦管14に組み付ける。
【0045】
この後、コンプレッサ21aを起動して圧縮空気を、矢印Y4で示すように空気噴出管21bから閉塞空間21eへ噴出する。この噴出された圧縮空気は、矢印Y4a〜Y4cで示すように多数の貫通孔から地盤10へ勢い良く噴出される。この空気の噴出によって地盤10に図示せぬ亀裂が多数発生する。
【0046】
次に、縦管14から圧入手段21を取り外した後、スチームヒータ本体12からスチームヒータ管12bを介して高熱のスチームを噴出する。この噴出されたスチームは、横管11a及び縦管14の多数の貫通孔を介して地盤10へ排出される。更に、その排出された高熱のスチームは、地盤10に発生した多数の亀裂を通って排出される。つまり、高熱のスチームによる熱と、この熱により地盤10が加熱されて水分が蒸発した蒸発水分とが、多数の亀裂を通って大気側(地上側)等の低圧力側へ排出される。
【0047】
但し、圧入手段21を縦管14へ組み付ける前に、地盤10に対して次の処理を行うとより亀裂を発生し易くなる。即ち、
図2に示すスチームヒータ本体12から矢印Y1で示すように高熱のスチームを噴出して地盤10を加熱し、地盤10を含水率の高い状態から、含水率がある程度低い状態に乾かしておく。例えば、地盤10の土壌を人が手で圧縮すれば固まる程度に乾かしておく。この有る程度乾いた状態により、亀裂が発生し易くなる。
【0048】
このように、本変形例2の地盤改良方法によれば、縦管14に、地盤10に空気を圧入する圧入手段としての圧入手段21を挿入し、この圧入手段21により地盤10に圧入した空気で、地盤10に多くの亀裂を生じさせるようにした。
このように地盤10に多くの亀裂を生じさせると、横管11aや縦管14の貫通孔から外部へ伝導した熱及びこの熱による蒸発水分が、亀裂を通って地上へ向かうので、より早く地盤10の水分を蒸発させることができる。つまり、地盤10の水分を素早く蒸発させて乾かすことが可能となる。
【0049】
このよう亀裂を発生させる地盤10としては、特に、透水係数の小さい粘性土が対象となる。粘性土は、水が透過しにくいので上記の蒸発水分も透過しにくく乾燥させづらい。しかし、多数の亀裂ができることで蒸発水分がその亀裂を通るので乾燥させ易くなる。