【実施例1】
【0027】
図1は、本発明の実施例1による粉粒体の供給システムの模式図である。
図1には、一例として、下流側に接続された燃焼装置(図示せず)に固体燃料の粉粒体を供給する供給システムを示している。本実施例では、固体燃料として、石炭とバイオマスを用いる。ただし、本発明による粉粒体の供給システムは、石炭とバイオマス以外の固体燃料、例えば灰や汚泥からなる固体燃料を供給する供給システムにも適用でき、さらには、固体燃料以外の粉粒体、例えば穀物などの食料や化学材料を供給する供給システムにも適用できる。
【0028】
本実施例の粉粒体の供給システムは、固体燃料の粉粒体を貯蔵し排出する貯蔵部(ホッパ)2と、貯蔵部2へ固体燃料の粉粒体を供給する供給部1と、貯蔵部2の排出口に設けられ貯蔵部2から粉粒体を排出するための排出部3と、排出部3により貯蔵部2から排出された粉粒体を搬送する搬送部4と、制御装置7と、表示部8を備える。貯蔵部2は、複数の種類の粉粒体を貯蔵可能である。固体燃料の粉粒体は、上流側から、供給部1、貯蔵部2、排出部3、及び搬送部4の順に流れる。
【0029】
貯蔵部2は、後述する検知部9(9a、9b)を壁面に備える。検知部の数は1つでも複数でもよく、本実施例では、貯蔵部2は2つの検知部9a、9bを備える。貯蔵部2の下部は、粉粒体の排出方向に垂直な断面積が排出方向に向かって小さくなるように(すなわち、排出方向に向かって先細りするように)、形状が変化している。
【0030】
供給部1は、貯蔵部2へ供給する粉粒体の量を計測できる供給量計測部5を備え、後述する粉粒体の供給スケジュールに従って貯蔵部2へ粉粒体を供給する。搬送部4は、貯蔵部2から排出された粉粒体の量を計測できる排出量計測部6を備える。供給量計測部5と排出量計測部6は、供給または排出する粉粒体の重量と速度を計測し、供給するまたは排出された粉粒体の量を求めることができる。供給部1と搬送部4は、粉粒体を搬送するコンベアで構成することができる。排出部3は、粉粒体を排出するフィーダで構成することができる。貯蔵部2から排出された粉粒体の量を計測する機能は、排出部3に設けてもよい。
【0031】
制御装置7は、供給部1、排出部3、搬送部4、供給量計測部5、排出量計測部6、及び検知部9a、9bと信号線(点線で図示)で接続され、後述する数値シミュレーションと補正処理を実行する。供給部1、排出部3、搬送部4、供給量計測部5、排出量計測部6、及び検知部9a、9bのそれぞれは、計測信号を制御装置7に送信し、制御装置7から受信した信号に基づいて運転することができる。
【0032】
表示部8は、制御装置7に接続され、制御装置7が受信した各計測信号(検知部9a、9bの出力も含む)、制御装置7の制御情報、及び後述する数値シミュレーションの結果についての情報を表示する。
【0033】
なお、
図1では、貯蔵部2が、下部にバイオマスの粉粒体10を、その上部に石炭の粉粒体11を重ねて貯蔵している状態を示す。貯蔵部2の内部でのこれらの粉粒体10、11の挙動(流動状態や分布や性状)は、粉粒体10、11の供給状況と排出状況により変動する。
【0034】
本実施例の粉粒体の供給システムは、貯蔵部2の内部での粉粒体10、11の挙動を数値シミュレーションとその結果の補正により把握し、粉粒体を貯蔵する貯蔵部2の内部(特に、供給システムの出口(または貯蔵部2の排出口))での粉粒体の性状(種類と混合比率)を求めて予測する。以下に、数値シミュレーションとその結果の補正方法について示す。
【0035】
図2は、制御装置7の構成と処理を模式的に示すブロック図である。
図2では、制御装置7の構成とともに、粉粒体を貯蔵する貯蔵部の内部での粉粒体の性状を、制御装置7が求める処理の流れを示す。
【0036】
制御装置7は、入力設定部22、入力部21、情報格納部24、情報照合部23、計算部25、及び補正部27を備え、検知部9と表示部8に接続される。なお、制御装置7は補正部27を備えなくてもよく、この場合には補正部27が行う処理は作業者が実行する。
【0037】
入力設定部22は、制御装置7へデータや情報を入力するための入力手段である。
【0038】
入力部21は、入力設定部22で入力されたデータや情報を受け取る。入力設定部22で入力されたデータには、粉粒体の供給スケジュールが含まれる。粉粒体の供給スケジュールとは、供給部1が貯蔵部2へ粉粒体を供給するスケジュールであり、粉粒体の種類、粉粒体の供給量(重量や体積)、及び粉粒体の供給時刻と供給時間(供給する時間の長さ)を含む。入力部21が受け取ったデータや情報は、入力設定部22で修正することも可能である。
【0039】
情報格納部24には、予め、供給する粉粒体についての計算パラメータが格納されている。計算パラメータは、入力設定部22で入力することができる。計算パラメータには、上述したように、粉粒体の比重、粉粒体の粒子と壁面との摩擦力(摩擦係数)、粉粒体の粒子同士の摩擦力(摩擦係数)、粒子径、及び空隙率が含まれる。また、情報格納部24は、入力部21が受け取ったデータ(例えば、粉粒体の供給スケジュール)や情報を格納する。
【0040】
情報照合部23は、入力部21が受け取った粉粒体の種類に応じた計算パラメータを情報格納部24から取得し、取得した計算パラメータを計算部25に出力する。
【0041】
計算部25は、受け取った計算パラメータを用いて、貯蔵部2の内部での粉粒体の挙動(流動状態や分布や性状)を数値シミュレーションにより求め、求めた数値シミュレーションの結果を補正部27へ出力する。粉粒体の流動状態には、粉粒体の流動速度、貯蔵部2の壁面に対する粉粒体の圧力、及びこの圧力の脈動周波数が含まれる。
【0042】
補正部27は、後述するように、検知部9の検出値と数値シミュレーションの結果を基に、計算パラメータを修正する。上述したように、制御装置7が補正部27を備えない場合には、この処理は作業者が実行する。この場合には、
図2には示していないが、検知部9の検出値と数値シミュレーションの結果を表示部8に表示し、作業者は、表示部8に表示された検知部9の検出値と数値シミュレーションの結果とを比較して、計算パラメータを修正する。
【0043】
計算部25は、補正部27(または作業者)によって修正された計算パラメータを用いて、貯蔵部2の内部での粉粒体の挙動(流動状態や分布や性状)を数値シミュレーションにより再度求め、数値シミュレーションの結果を補正する。
【0044】
補正部27(または作業者)は、計算パラメータの修正が不要であると判断すると、補正された数値シミュレーションの結果を表示部8に出力する。数値シミュレーションの結果には、粉粒体を貯蔵する貯蔵部の内部(特に、供給システムの出口(または貯蔵部の排出口))での粉粒体の性状(種類と混合比率)、分布、及び流動状態が含まれる。粉粒体の流動状態には、粉粒体の流動速度、貯蔵部2の壁面に対する粉粒体の圧力、及びこの圧力の脈動周波数が含まれる。補正部27(または作業者)は、例えば、前回求めた値と今回求めた値との差の絶対値が予め定めた閾値以下であると、計算パラメータの修正が不要であると判断することができる。
【0045】
表示部8は、数値シミュレーションの結果である粉粒体の挙動、例えば、供給システムの出口(貯蔵部2の排出口)での粉粒体の種類と混合比率の予測結果を表示する。
【0046】
計算部25で実行する数値シミュレーションでの計算方法には、例えば、個々の粒子間について運動方程式を立て、これらを連立方程式として解き、粒子の挙動を計算する方法(粒子要素法)がある。また、計算時間を短縮し、実用的な時間で計算結果を得る方法として、Smoothed Particle要素法や粉体オートマトン法がある。
【0047】
Smoothed Particle要素法は、粉粒体の多数の粒子を含む粉体要素を定義し、この粉体要素の運動をラグランジュ的に追跡する方法である。この方法では、定義した粉体要素に対し、異なる粉体要素や(貯蔵部2の)壁面に対する粒子の運動、及び粉体要素内での個々の粒子の運動をモデル化し、質量と運動量の保存式を立てて、粒子の挙動を計算する。この方法では、粉粒体の集合単位で計算するため、個々の粉粒体の連立方程式を計算する粒子要素法に比べて、計算時間が短くなる。
【0048】
また、粉体オートマトン法では、予め貯蔵部2の内部を格子状に分割し、分割した格子(セル)内についての粒子の流入や排出を、対象のセルと、このセルと境界を接するセルとの相関関係により判定する方法である。例えば、対象のセルからこのセルと下方向で境界を接するセルへ粒子が移動する場合には、下方向のセルでの粉粒体の有無、対象のセルと境界を接するセルの粉粒体との摩擦力、壁面との摩擦力、及び粉粒体自体に作用する重力を基に判定する。セル毎に順次判定をすることで、粉粒体の移動を計算する。この方法では、対象のセルと、このセルと境界を接するセルとの関係のみを考慮して(正確には、(粒子と壁面との関係も考慮して)、粒子の移動を計算するため、連立方程式を計算する粒子要素法に比べると計算時間が短くなる。
【0049】
何れの方法でも、粉粒体やその集合体の比重、粒子同士の摩擦係数、粒子と壁面との摩擦係数、貯蔵部2への供給時の粒子径及び空隙率を表す計算パラメータが必要である。これらの計算パラメータは、代表値またはその分布が情報格納部24に予め格納されて、使用される。しかし、これらの計算パラメータは、実際の粉粒体の性質を代表することが困難であり、これが数値シミュレーションの結果に誤差が生じる要因の1つである。
【0050】
本実施例の供給システムは、上述したように、下記の1)検知部9を備え、下記の2)補正部27を備えるか補正部27の処理を作業者が実行することで、数値シミュレーションから求めた粉粒体の挙動(流動状態や分布や性状)と実際の粉粒体の挙動との誤差を低減し、粉粒体の性状の実用的な予測が可能であることを特徴とする。
1)貯蔵部2の壁面に設けられ、粉粒体の圧力、流動方向、流動速度、摩擦力、及び粉粒体の圧力の脈動周波数のうち少なくとも1つを検出する検知部9(検知部の数は1つでも複数でもよい)。
2)検知部9の出力と計算部25が実行した数値シミュレーションの結果とを比較し、情報格納部24に格納された計算パラメータを修正する補正部27。
【0051】
検知部9には、例えば、粉粒体の重量や動きによって生じる貯蔵部2の壁面の圧力とその変動を検出する圧力センサや歪ゲージを用いることができる。また、粉粒体の流動方向や摩擦力を検知するために、貯蔵部2の内壁面に沿って設けた板と貯蔵部2の壁面との間での引っ張り力を検出する歪ゲージを用いることができる。何れの場合も、貯蔵部2の壁面に沿って検知部9を設けることが望ましい。検知部9を粉粒体に向かう方向に突出させる場合には、摩耗を考慮し、検知部9の突出長さを短くしたり、検知部9を耐摩耗材で構成したりすることが望ましい。また、粉粒体に向かう方向に突出させると、粉粒体の固着を促進させる可能性があるので、検知部9に振動を定期的に加える等の、粉粒体の固着を防ぐ措置をすることが望ましい。
【0052】
検知部9の設置位置の例としては、
図1に示すように、貯蔵部2の形状が変化し始める部分(粉粒体の排出方向に垂直な断面積が排出方向に向かって小さくなり始める部分)の下部に検知部9aを設けたり、排出部3の近傍に検知部9bを設けたりすることができる。大型の貯蔵部2を用いる場合は、複数の検知部9を設けることが望ましい。
【0053】
貯蔵部2の形状が変化し始める部分は、粉粒体の流れ方向が変わることにより、粉粒体の滞留や固着が起きやすい。また、排出部3の近傍は、粉粒体の圧力が高く、粉粒体の流れが早いことから、粉粒体の流れに変動が生じやすい場所である。数値シミュレーションでは、滞留、固着、及び流れの変動のように粉粒体の空隙率や摩擦力が変化する現象のモデル化が難しく、このような現象が起きやすい場所で特に誤差が出やすい。また、粉粒体がバイオマスの場合には、滞留や固着が起きると吸湿や発熱により粉粒体が変質する可能性が高まるため、変質し難い石炭の粉粒体に比べて、滞留や固着に対してより注意を払う必要がある。従って、本実施例のように、粉粒体の滞留や固着が起きやすい場所や粉粒体の流れに変動が生じやすい場所に検知部9を設け、数値シミュレーションの結果との差異を確認することで、貯蔵部2の内部での粉粒体の流れを適切に把握することが可能となる。
【0054】
補正部27(または作業者)が実行する計算パラメータの修正方法の例として、次のような方法がある。まず、検知部9が検知した貯蔵部2の壁面に対する粉粒体の圧力の平均値を求める(検知部9が複数ある場合には、それぞれの検知部について求める)。次に、計算部25が実行した数値シミュレーションの結果のうち、検知部9が検知したのと同一箇所での貯蔵部2の壁面に対する粉粒体の圧力の平均値を求める(検知部9が複数ある場合には、それぞれの検知部に対応する圧力の平均値を求める)。そして、これらの平均値の差異を求め、数値シミュレーションの結果と検知部9が検知した値とが一致するように、計算パラメータ(例えば、粉粒体の比重)を変える。
【0055】
また、貯蔵部2の壁面に対する粉粒体の圧力は、粉粒体の動作に合わせて脈動する。検知部9で検知した脈動周波数よりも数値シミュレーションで求めた脈動周波数が低い場合には、摩擦力の設定が過大と考えられる。そこで、このような場合には、例えば、設定した摩擦力(摩擦係数)を小さくするという計算パラメータの修正方法がある。粉粒体の流動速度に対しても、検知部9で検知した値よりも数値シミュレーションで求めた値が大きい場合には、設定した摩擦力を小さくすることが望ましい。また、摩擦力の測定値から検知部9の近傍での粉粒体の性状を求めることができるので、検知部9で検知した摩擦力から求めた粉粒体の性状を用いて計算パラメータを修正し、数値シミュレーションの結果を補正することができる。
【0056】
以上の説明では、個別の測定値に対応した計算パラメータの修正方法の一例を示した。複数の測定値について数値シミュレーションの結果との比較が可能な場合には、複数の測定値のそれぞれに対応した複数の計算パラメータを同時に変更し、数値シミュレーションの結果を補正することができる。
【0057】
上述のように、本実施例の粉粒体の供給システムは、検出部9を備え、補正部27を備える、または補正部27の処理を作業者が実行することで、情報格納部24に格納した計算パラメータを修正して数値シミュレーションの結果を補正することができ、数値シミュレーションから求まる粉粒体の挙動(流動状態や分布や性状)と、実際の粉粒体の挙動との差異を抑制できる。さらに、以後の計算では、補正部27(または作業者)が修正した計算パラメータを用いて数値シミュレーションを行うので、さらに精度よく粉粒体の性状を求めて予測できるとともに、数値シミュレーションに必要な計算コストを低減することができる。
【0058】
数値シミュレーションとその結果の補正により、制御装置7は、粉粒体を貯蔵する貯蔵部の内部での粉粒体の性状(種類と混合比率)を予測することで、粉粒体が実際に排出されて供給システムの下流に設けられた機器に供給される前に、粉粒体の性状に合わせて機器の操作条件を調整できる。また、制御装置7は、供給システムの排出部3の動作速度を調整して、粉粒体の排出量の変動を抑制することができる。例えば、制御装置7は、粉粒体の排出速度が粉粒体の混合比率に応じて予め定めた一定速度になるように、排出部3の動作速度を制御して、粉粒体の排出量の変動を抑制することができる。
【0059】
さらに、制御装置7は、供給システムへ粉粒体を供給する供給スケジュールを調整することも可能である。供給部1は、変更された供給スケジュールに従って、貯蔵部2へ粉粒体を供給する。
【0060】
図3Aは、入力部21が受け取った、貯蔵部2への粉粒体の供給スケジュールの一例を示す図である。
図3Bは、
図3Aに示した粉粒体の供給スケジュールを基に数値シミュレーションで求めた、供給システムの出口(貯蔵部2の排出口)での粉粒体の性状(種類と混合比率)の一例を示す図である。
図3Cは、
図3Aに示した粉粒体の供給スケジュールと
図3Bに示した供給システムの出口での粉粒体の性状とから求めた、貯蔵部2の粉粒体の貯蔵量を示す図である。
図3A〜
図3Cにおいて、横軸は時刻を表す。縦軸は、
図3Aは貯蔵部2への粉粒体の供給速度を、
図3Bは貯蔵部2からの粉粒体の排出速度を、
図3Cは貯蔵部2の粉粒体の貯蔵量を表す。
【0061】
図3Aに示すように、供給スケジュールによると、6時から10時まではバイオマスの粉粒体10を貯蔵部2へ供給し、11時から16時までは石炭の粉粒体11を貯蔵部2へ供給する。貯蔵部2からの粉粒体の排出は、
図3Bに示すように、9時から開始する。バイオマスの粉粒体10と石炭の粉粒体11は、ともに2t/hの速度で供給され、2t/hの速度で排出されるものとする。
【0062】
図3Bでは、予測線Aによって、排出される粉粒体の混合比率を示している。すなわち、排出される粉粒体は、9時〜12時頃まではバイオマスの粉粒体10の割合が100%であり、12時頃〜15時ではバイオマスの粉粒体10と石炭の粉粒体11が混合しており次第に石炭の粉粒体11の割合が増加していき、15時〜17時では石炭の粉粒体11の割合が100%である。予測線Aは、計算部25が実行した数値シミュレーションの結果から求めることができる。
【0063】
図3Cでは、予測線Aによって、貯蔵部2が貯蔵する粉粒体の混合比率を示している。
図3Cの予測線Aは、
図3Bの予測線Aと同様に、計算部25が実行した数値シミュレーションの結果から求めることができる。
【0064】
また、貯蔵部2内の粉粒体の量が少ない場合には排出速度の変動が大きくなるため、なるべく一定量以上の粉粒体を貯蔵部2内に貯蔵することが望ましい。一方で、粉粒体の量が多すぎると、貯蔵部2の下部で粉粒体が圧密され、排出不良を起こす可能性がある。このため、貯蔵部2が貯蔵する粉粒体の量に対して上限値と下限値を決め、この範囲内の量の粉粒体を貯蔵部2が貯蔵するように供給システムを運転することが望ましい。
図3A〜
図3Cに示した例の場合では、貯蔵部2は、粉粒体の排出開始時(9時)には6tの粉粒体を貯蔵し、排出終了時(17時)には2tの粉粒体を貯蔵する。
【0065】
石炭の粉粒体11がバイオマスの粉粒体10よりも流動性がよい場合には、先に供給されたバイオマスの粉粒体10の全てが排出される前に、石炭の粉粒体11が貯蔵部2の排出口に到達して排出される。例えば、
図3Bの例では、予測線Aで示すように、12時頃にはバイオマスの粉粒体10に石炭の粉粒体11が混ざって排出され始め、全てのバイオマスの粉粒体10が排出されるのは15時となる。
【0066】
制御装置7は、
図3Bに示したような、数値シミュレーションの結果(補正後の結果)から求めた貯蔵部2から排出される粉粒体の性状(種類と混合比率)を基に、予め定めた条件に従い、粉粒体の供給スケジュールを変更することができる。制御装置7は、例えば、粉粒体が混合して排出される時間の長さが第1の所定時間以上の場合には、後から供給される粉粒体の供給時刻を第2の所定の時間だけ遅らせるという条件に従い、複数の種類の粉粒体(本実施例ではバイオマスの粉粒体10と石炭の粉粒体11と)が混合して排出される時間が短くなるように、貯蔵部2への粉粒体の供給スケジュールを変更する。
【0067】
図4Aは、変更した、貯蔵部2への粉粒体の供給スケジュールの一例を示す図である。
図4Bは、
図4Aに示した粉粒体の供給スケジュールを基に数値シミュレーションで求めた、供給システムの出口(貯蔵部2の排出口)での粉粒体の性状(種類と混合比率)の一例を示す図である。
図4Cは、
図4Aに示した粉粒体の供給スケジュールと
図4Bに示した供給システムの出口での粉粒体の性状とから求めた、貯蔵部2の粉粒体の貯蔵量を示す図である。
図4A〜
図4Cにおいて、横軸と縦軸は、
図3A〜
図3Cと同じである。
【0068】
図4Aに示すように、変更した供給スケジュールでは、バイオマスの粉粒体10の供給に変更はないが、石炭の供給開始時間を1時間遅らせて12時からとし、バイオマスの粉粒体10と石炭の粉粒体11とが混合する時間が短くなるようにした。
【0069】
図4Bでは、予測線Bによって、排出される粉粒体の混合比率を示している。すなわち、排出される粉粒体は、9時〜12時半頃ではバイオマスの粉粒体10の割合が100%であり、12時半頃〜15時ではバイオマスの粉粒体10と石炭の粉粒体11が混合しており次第に石炭の粉粒体11の割合が増加していき、15時〜17時では石炭の粉粒体11の割合が100%である。予測線Bは、計算部25が実行した数値シミュレーションの結果から求めることができる。
図4Bと
図3Bからわかるように、供給スケジュールの変更により、バイオマスの粉粒体10と石炭の粉粒体11とが混合して排出される時間を短くすることができた。これにより、排出される粉粒体の性状を把握することが容易になるとともに、粉粒体の供給システムの下流にある粉砕機の粉砕条件や粉砕機の下流にあるボイラの燃焼条件の調整が容易になる。
【0070】
図4Cでは、予測線Bによって、貯蔵部2が貯蔵する粉粒体の混合比率を示している。
図4Cの予測線Bは、
図4Bの予測線Bと同様に、計算部25が実行した数値シミュレーションの結果から求めることができる。
図4Cと
図4Bからわかるように、供給スケジュールの変更により、石炭の粉粒体11を供給し始めるときの貯蔵部2内のバイオマスの粉粒体10の貯蔵量を減らし、バイオマスの粉粒体10と石炭の粉粒体11とが混合して貯蔵部2に貯蔵される時間を短くすることができた。
【0071】
次に、数値シミュレーションの結果から粉粒体の粒子の圧密層が形成されると想定される場合の対応例と、既に圧密層が形成されている場合の対応例を示す。
【0072】
まず、粉粒体の粒子の圧密層が形成されると想定される場合の対応例について説明する。
図3Aに示した粉粒体の供給スケジュールを実行する場合において、10時に数値シミュレーションを実行したところ、石炭の粉粒体11を供給する11時以降に、バイオマスの粉粒体10の下部で圧密層が形成され、この圧密層の流動が特に遅くなることがわかったとする。圧密層が形成されて粉粒体の一部の流動が遅くなると、これに伴い、他の部分の流動が早まり、上部の粉粒体が先に排出される、いわゆるファンネルフローが形成されやすくなる。このファンネルフローが形成されると、下部と上部の粉粒体の層が同時に排出される混合状態が長く続く。さらに、粉粒体の層の崩落に伴う排出速度の変動が大きくなり、また圧密層が固着しやすくなるなど、排出不良が生じやすくなる。このため、一般にファンネルフローの形成は望ましくなく、排出口へ向かう粉粒体の流れが貯蔵部2の全体で均等に生じる、いわゆるマスフローの状態を維持することが望ましい。
【0073】
この場合には、例えば
図4Aで示したように、石炭の粉粒体11の供給を1時間遅らせれば、貯蔵部2内の粉粒体の重量が減ることから、粉粒体の圧密を緩和し、圧密層の形成を抑制できる。すなわち、石炭の粉粒体11の供給を遅らせるように粉粒体の供給スケジュールを変更することで、ファンネルフローの形成を抑制し、マスフローの状態を維持することができる。
【0074】
次に、貯蔵部2内に既に圧密層が形成され、粉粒体の流動が阻害されている場合の対応例について説明する。圧密層の形成は、検知部9の検出値から把握することができる。
【0075】
図5は、貯蔵部2内のバイオマスの粉粒体10に圧密層30が形成されている場合の粉粒体の供給システムの模式図である。
図5において、
図1と同一の符号は
図1と同一の構成要素を示し、これらの要素については説明を省略する。
【0076】
図5に示すように、貯蔵部2の形状が変化し始める部分(粉粒体の排出方向に垂直な断面積が排出方向に向かって小さくなり始める部分)とその下部の近傍で、貯蔵部2の壁面に沿って、バイオマスの粉粒体10の圧密層30が形成されている。この圧密層30は、検知部9aによって、形成されたことが把握できる。
【0077】
この場合には、
図5に示すように、供給部1が貯蔵部2へ粉粒体を供給する位置を変更し、圧密層30の上方に粉粒体を偏って供給することで、貯蔵部2の壁面と圧密層30との間の摩擦力よりも、圧密層30に加わる重力を大きくする。圧密層30の上方に供給された粉粒体の作用により圧密層30を下方へ押し動かし、圧密層30の排出を促進することができる。
【0078】
供給部1は、貯蔵部2に対して移動可能であり、移動することで、貯蔵部2へ粉粒体を供給する位置を変更することができる。または、供給部1は、貯蔵部2へ粉粒体を供給するための突出部を有し、突出部の長さを変えることで、貯蔵部2へ粉粒体を供給する位置を変更することができる。
【0079】
制御装置7は、予め定めた条件に従い、供給部1を移動させたり、供給部1の突出部の長さを変えたりして、供給部1の貯蔵部2への粉粒体の供給位置(水平方向の位置)を変更することができる。例えば、制御装置7は、数値シミュレーションで求めた圧密層30の位置や検知部9が検知した圧密層30の位置に合わせて貯蔵部2へ粉粒体を供給するという条件に従い、貯蔵部2の中央部から壁面に近い周辺部へ、粉粒体の供給位置を変更することができる(
図1と
図5を参照)。
【0080】
以上示したように、本実施例の粉粒体の供給システムは、数値シミュレーションの結果に基づいて、貯蔵部2への粉粒体の供給スケジュールや貯蔵部2における粉粒体の供給位置を変更する制御装置7を備えることで、貯蔵部2内での粉粒体の流動状態をマスフローの状態に保つことができ、供給された順に粉粒体を排出することができる。