特許第6291190号(P6291190)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱日立パワーシステムズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6291190-粉粒体の供給システム、及び燃焼装置 図000002
  • 特許6291190-粉粒体の供給システム、及び燃焼装置 図000003
  • 特許6291190-粉粒体の供給システム、及び燃焼装置 図000004
  • 特許6291190-粉粒体の供給システム、及び燃焼装置 図000005
  • 特許6291190-粉粒体の供給システム、及び燃焼装置 図000006
  • 特許6291190-粉粒体の供給システム、及び燃焼装置 図000007
  • 特許6291190-粉粒体の供給システム、及び燃焼装置 図000008
  • 特許6291190-粉粒体の供給システム、及び燃焼装置 図000009
  • 特許6291190-粉粒体の供給システム、及び燃焼装置 図000010
  • 特許6291190-粉粒体の供給システム、及び燃焼装置 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6291190
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】粉粒体の供給システム、及び燃焼装置
(51)【国際特許分類】
   F23K 3/00 20060101AFI20180305BHJP
   B65G 65/30 20060101ALI20180305BHJP
   B02C 25/00 20060101ALI20180305BHJP
   F23K 1/00 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
   F23K3/00 302
   B65G65/30 C
   B02C25/00 B
   F23K1/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-177421(P2013-177421)
(22)【出願日】2013年8月29日
(65)【公開番号】特開2015-45463(P2015-45463A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2016年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】上川 由貴
(72)【発明者】
【氏名】岡▲崎▼ 洋文
(72)【発明者】
【氏名】馬場 彰
(72)【発明者】
【氏名】三宅 盛士
【審査官】 渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−098917(JP,A)
【文献】 特開2000−282109(JP,A)
【文献】 実開平04−009636(JP,U)
【文献】 特開昭57−117422(JP,A)
【文献】 特開2011−025982(JP,A)
【文献】 特開平05−246550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23K 3/00
B02C 25/00
B65G 65/30
F23K 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の種類の粉粒体を貯蔵可能な貯蔵部と、
前記貯蔵部へ前記粉粒体を供給する供給部と、
前記貯蔵部の排出口に設けられ前記貯蔵部から前記粉粒体を排出する排出部と、
前記排出部から排出された前記粉粒体を搬送する搬送部と、
前記貯蔵部の壁面に設けられ、前記粉粒体の圧力、流動方向、流動速度、摩擦力、及び前記圧力の脈動周波数のうち少なくとも1つを検出する検知部と、
前記供給部と前記検知部とに接続された制御装置と、
前記制御装置に接続された表示部とを備え、
前記制御装置は、前記粉粒体についての計算パラメータが格納された情報格納部と、前記計算パラメータを用いて前記貯蔵部の内部での前記粉粒体の挙動を計算して求める計算部とを備え、
前記表示部は、前記検知部が検出した値と、前記計算部の計算結果とを表示し、
前記計算部は、前記計算パラメータが修正されると、修正された前記計算パラメータを用いて、前記貯蔵部の内部での前記粉粒体の挙動を再度計算して求める、
ことを特徴とする粉粒体の供給システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記検知部が検出した値と前記計算部の計算結果とを基に、前記計算パラメータを修正する補正部をさらに備え、
前記計算部は、前記補正部が修正した前記計算パラメータを用いて、前記貯蔵部の内部での前記粉粒体の挙動を再度計算して求める請求項1に記載の粉粒体の供給システム。
【請求項3】
前記情報格納部は、前記供給部が前記貯蔵部へ前記粉粒体を供給するスケジュールを格納し、
前記制御装置は、前記計算部の計算結果を基に、前記スケジュールを変更し、
前記供給部は、変更された前記スケジュールに従って、前記貯蔵部へ前記粉粒体を供給する請求項1または2に記載の粉粒体の供給システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記計算部の計算結果を基に、前記供給部が前記貯蔵部へ前記粉粒体を供給する位置を変更する請求項1または2に記載の粉粒体の供給システム。
【請求項5】
請求項1または2に記載の粉粒体の供給システムと、
前記供給システムから供給された前記粉粒体を粉砕する粉砕機と、
前記粉砕機が粉砕した前記粉粒体を燃焼する火炉と、
前記供給システムの前記制御装置と、前記粉砕機とに接続された制御部とを備え、
前記制御部は、前記供給システムの前記計算部の計算結果を基に、前記粉砕機の粉砕条件を変更する、
ことを特徴とする燃焼装置。
【請求項6】
請求項1または2に記載の粉粒体の供給システムと、
前記供給システムから供給された前記粉粒体を粉砕する粉砕機と、
前記粉砕機が粉砕した前記粉粒体を噴出するバーナと、
前記バーナが噴出した前記粉粒体を燃焼する火炉と、
前記供給システムの前記制御装置と、前記バーナへ空気を供給するファンとに接続された制御部とを備え、
前記制御部は、前記供給システムの前記計算部の計算結果を基に、前記バーナへ供給する空気の量を変更する、
ことを特徴とする燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多種類の粉粒体を供給する粉粒体の供給システムと、それを備える燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発電用のボイラでは、排出する二酸化炭素量の削減のため、化石燃料に代わり木材や農業廃棄物のような植物由来の成分、いわゆるバイオマスを燃料として利用することが増加している。バイオマスを利用すると、排出した二酸化炭素は再び植物に吸収され、地球上で循環するので、大気中の二酸化炭素の濃度を増やさないものとみなされる。
【0003】
バイオマスの利用方法の1つに、ボイラに用いる複数の粉砕機のうちの一部にバイオマスを粉砕する構造を付与し、この一部の粉砕機で粉砕したバイオマスと、残りの粉砕機で粉砕した石炭とをボイラ内で燃焼する方法(以下、「本方式」と記す)がある。本方式では、バイオマスと石炭のそれぞれに適した粉砕条件を、それぞれの粉砕機に与えることができる。また、バイオマスの供給が少ない場合には、粉砕機の設定を変えることで、バイオマスを粉砕する粉砕機で石炭を粉砕することも可能である。本方式では、粉砕機の上流側に貯蔵部(ホッパ)を接続し、バイオマスの搬入状況に応じて、バイオマスや石炭等の粉粒体の固体燃料をホッパに貯蔵し、ホッパから排出した固体燃料を粉砕機に供給する。粉砕機の設定やボイラの燃焼条件は、ホッパから排出される際の固体燃料の性状に合わせて調整する。
【0004】
粉粒体の固体燃料は、粒度や比重、摩擦係数により流動性が異なり、流動速度が異なる。例えば、一般に、比重の大きい石炭は流動性が高くホッパから早く排出し、比重の小さいバイオマスは流動性が低くホッパから遅く排出する。このため、ホッパに貯蔵した固体燃料は、貯蔵した順に排出されるとは限らない。例えば、バイオマス、石炭の順にホッパに貯蔵した場合では、バイオマス、石炭の順にホッパから排出されるとは限らない。石炭は、ホッパの排出口に到達するのが早いので、バイオマスの全てが排出し終わる前に排出口に到達し、バイオマスと混合されてホッパから排出される(すなわち、ホッパから排出される固体燃料は、バイオマス、バイオマスと石炭との混合物、及び石炭の順に時間とともに変化する)。このため、ホッパの下流側に設置される粉砕機やボイラでは、バイオマスの貯蔵量と排出速度から計算される時刻よりも前に石炭が排出し始めるので、粉砕機の設定やボイラの燃焼条件をバイオマスと石炭が混合した状態に合わせることが必要となる。そこで、ホッパから排出される前に固体燃料の性状(固体燃料の種類と混合比率)を予測できれば、粉砕機の設定やボイラの燃焼条件の調整が容易となる。
【0005】
ホッパから排出される粉粒体の性状を予測する技術の例は、特許文献1、2に開示されている。何れの技術も、粉粒体のシミュレーション技術を利用して貯蔵部(ホッパ)での粉粒体の挙動を予測し、貯蔵部の下部での粉粒体の性状を把握する技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−272904号公報
【特許文献2】特開2000−282109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、2に開示されている技術では、主に高炉内での鉄鉱石とコークス層の流動を対象として、粉粒体の数値シミュレーション技術を適用している。この場合には、鉄鉱石とコークスの層を順番に降下させることが重要である。
【0008】
特許文献1、2の技術では、それぞれの粒子についての、比重(作用する重力)、粒子や壁面との摩擦力、供給時の粒子径や空隙率に代表される入力条件を与える。この入力条件に基づき、数値シミュレーションを実施し、粉粒体の位置を計算する。
【0009】
しかし、バイオマスは個々の粒子によって比重等が大きく変動するので、代表値で与えた入力条件でバイオマス全体の性質を表すことが難しい。また、バイオマスは、形状が一定でないうえ、ホッパ内での流動により粒子が圧密したり分解したりすると、入力条件で与えた粒子径、比重、及び摩擦力が変化する。このため、バイオマスは、数値シミュレーションで求めた挙動と実際の挙動との差異が大きくなる。
【0010】
粉砕機の設定やボイラの燃焼条件は、ホッパから排出される固体燃料の性状(固体燃料の種類と混合比率)を基に決められるので、ホッパの排出口での固体燃料の粉粒体の性状を精度よく予測することは、粉砕機や燃焼装置を安定的に運転制御するために重要なことである。また、粉粒体が固体燃料以外の場合でも、ホッパの下流に接続された装置を安定的に運転制御するためには、ホッパの排出口での粉粒体の性状を精度よく予測することが重要である。
【0011】
本発明は、多種類の粉粒体を貯蔵する貯蔵部(ホッパ)を備え、貯蔵部の排出口での粉粒体の性状を精度よく予測でき、粉砕機や燃焼装置を安定的に運転制御できる粉粒体の供給システムを提供することを目的とする。また、このような粉粒体の供給システムを備える燃焼装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による粉粒体の供給システムは、次のような特徴を持つ。複数の種類の粉粒体を貯蔵可能な貯蔵部と、前記貯蔵部へ前記粉粒体を供給する供給部と、前記貯蔵部に設けられ、前記粉粒体の圧力、流動方向、流動速度、摩擦力、及び前記圧力の脈動周波数のうち少なくとも1つを検出する検知部と、前記供給部と前記検知部とに接続された制御装置と、前記制御装置に接続された表示部とを備える。前記制御装置は、前記粉粒体についての計算パラメータが格納された情報格納部と、前記計算パラメータを用いて前記貯蔵部の内部での前記粉粒体の挙動を計算して求める計算部とを備える。前記表示部は、前記検知部が検出した値と、前記計算部の計算結果とを表示する。前記計算部は、前記計算パラメータが修正されると、修正された前記計算パラメータを用いて、前記貯蔵部の内部での前記粉粒体の挙動を再度計算して求める。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、多種類の粉粒体を貯蔵する貯蔵部(ホッパ)を備え、貯蔵部の排出口での粉粒体の性状を精度よく予測でき、粉砕機や燃焼装置を安定的に運転制御できる粉粒体の供給システムを提供することができる。また、このような粉粒体の供給システムを備える燃焼装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例1による粉粒体の供給システムの模式図。
図2】実施例1における制御装置の構成と処理を模式的に示すブロック図。
図3A】貯蔵部への粉粒体の供給スケジュールの一例を示す図。
図3B図3Aの供給スケジュールから求めた、供給システムの出口での粉粒体の性状の一例を示す図。
図3C図3A図3Bから求めた、貯蔵部の粉粒体の貯蔵量を示す図。
図4A】変更した、貯蔵部への粉粒体の供給スケジュールの一例を示す図。
図4B図4Aの供給スケジュールから求めた、供給システムの出口での粉粒体の性状の一例を示す図。
図4C図4A図4Bから求めた、貯蔵部の粉粒体の貯蔵量を示す図。
図5】貯蔵部内のバイオマスの粉粒体に圧密層が形成されている場合の粉粒体の供給システムの模式図。
図6】本発明の実施例2による燃焼装置の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、多種類の粉粒体を供給する粉粒体の供給システムと、それを備える燃焼装置に関し、粉粒体を貯蔵する貯蔵部の内部(特に、供給システムの出口(または貯蔵部の排出口))での粉粒体の性状を精度よく求めて予測し、この予測に基づき供給システムや燃焼装置を制御する装置に関する。本発明の主な適用先として、固体燃料を燃焼するボイラに、石炭とバイオマスのように異なる種類の固体燃料の粉粒体を供給する供給システムが例示できる。本発明による供給システムは、石炭とバイオマス以外の固体燃料、例えば灰や汚泥からなる固体燃料を供給する供給システムにも適用できる。さらに、本発明による供給システムは、固体燃料以外の粉粒体、例えば穀物などの食料や化学材料を供給する供給システムに適用することもできる。
【0016】
本発明による粉粒体の供給システムの特徴を、より詳しく述べる。
【0017】
本供給システムは、粉粒体の貯蔵部(ホッパ)内における粉粒体の挙動を、実際の挙動との差異が小さくなるように数値シミュレーションで求め、貯蔵部の内部での粉粒体の性状(種類と混合比率)を精度よく予測することができる。このような粉粒体の供給システムを備える燃焼装置では、貯蔵部の排出口から実際に排出された粉粒体が、供給システムの下流に設けられた粉砕機や燃焼装置に供給されるよりも前に、粉砕機の粉砕条件(例えば、粉砕加圧力、粉砕速度、分級器の回転数、導入空気量、及び温度)や粉砕機の下流にあるボイラの燃焼条件(例えば、空気量配分、及び運転負荷)の調整を始めることができる。
【0018】
また、本供給システムは、貯蔵部内での粉粒体の流動状態を、貯蔵部の全体で排出口へ向かう流れが均等に生じる、いわゆるマスフローの状態に保つことで、貯蔵した順に粉粒体が排出されるようにすることができる。本発明による供給システムの貯蔵部のように、多種類の固体燃料からなる粉粒体を層状に貯蔵して排出する貯蔵部では、貯蔵された粉粒体がマスフローの状態を形成しながら流動して排出することが重要である。しかし、バイオマスと石炭のように比重や摩擦力が異なる粉粒体を層状に貯蔵すると、互いの流動性の違いや圧密により、流動性の高い粉粒体が先に流動し、流動性の低い粉粒体が貯蔵部内に留まる、いわゆるファンネルフローの状態になりやすい。ファンネルフローの状態では、貯蔵部から排出される粉粒体の性状を予測するのが困難であり、好ましくない。
【0019】
従来の粉粒体の供給システムでは、粉粒体の比重、粉粒体の粒子と壁面との摩擦力、粉粒体の粒子同士の摩擦力、粒子径、及び空隙率等の計算パラメータが与えられ、これらの計算パラメータを用いて、貯蔵部の内部での粉粒体の分布や、貯蔵部の排出口での粉粒体の性状(種類と混合比率)を求める。この場合、計算パラメータは、対象の粉粒体を代表するものである必要がある。バイオマスは、個々の粒子によって比重等の変動が大きく、代表値で与えた計算パラメータでバイオマス全体の性質を表すことが難しい。また、バイオマスは、形状が一定でないうえ、貯蔵部内での流動により粒子が圧密したり分解したりすると、計算パラメータで与えた粒子径、比重、及び摩擦力が変化する。このため、バイオマスは、数値シミュレーションで求めた挙動(流動状態や分布や性状)と実際の挙動との差異が大きくなる。
【0020】
本発明による粉粒体の供給システムでは、粉粒体の圧力、流動方向、流動速度、摩擦力、及び粉粒体の圧力の脈動周波数のうち少なくとも1つを検出する検知部を貯蔵部の壁面に備える。さらに、計算パラメータ(粉粒体の比重、粉粒体の粒子と壁面との摩擦力、粉粒体の粒子同士の摩擦力、粒子径、及び空隙率等)を格納する情報格納部と、計算パラメータを用いて貯蔵部内における粉粒体の流動状態や分布や性状を数値シミュレーションで求める計算部と、検知部の出力と計算部の計算結果とを比較して計算パラメータを修正する補正部を備える。このような構成により、本供給システムは、数値シミュレーションで求めた粉粒体の挙動と実際の粉粒体の挙動との差異を小さくすることができ、貯蔵部の排出口での粉粒体の性状を精度よく予測できる。2回目以後の計算では、補正部で修正された計算パラメータを用いて数値シミュレーションを行い、その結果にさらに補正を行うので、より精度よく粉粒体の性状を予測できる。
【0021】
なお、本発明による粉粒体の供給システムは、補正部を備えなくてもよい。この場合には、作業者が、表示された検知部の出力と計算部の計算結果とを比較して、計算パラメータを修正する。
【0022】
本供給システムは、数値シミュレーションにより、粉粒体を貯蔵する貯蔵部の内部(特に、供給システムの出口(または貯蔵部の排出口))での粉粒体の性状(種類と混合比率)を予測する。このため、貯蔵部の排出口から実際に排出された粉粒体が、供給システムの下流にある粉砕機や燃焼装置に供給されるよりも前に、粉砕機の粉砕条件(例えば、粉砕加圧力、粉砕速度、分級器の回転数、導入空気量、及び温度)や粉砕機の下流にあるボイラの燃焼条件(例えば、空気量配分、及び運転負荷)の調整を始めることができる。このため、時定数の長い粉砕加圧力、導入空気量、温度、及び運転負荷の調整を事前に行うことができ、粉砕機や燃焼装置を安定的に運転制御することが容易である。
【0023】
また、本発明による粉粒体の供給システムは、数値シミュレーションの結果に基づいて、貯蔵部への粉粒体の供給スケジュールや貯蔵部における粉粒体の供給位置を変更する制御装置を備える。制御装置の処理により、貯蔵部内での粉粒体の流動状態を、貯蔵部の全体で排出口へ向かう流れが均等に生じる、いわゆるマスフローの状態に保つことができ、粉粒体を貯蔵した順に排出することができる。
【0024】
例えば、貯蔵部内にバイオマスの粉粒体が存在し、石炭の粉粒体をその上部に供給して貯蔵する場合で、当初の計画を元に数値シミュレーションをしたところ、計算結果からバイオマスの粉粒体の圧密が想定される場合には、石炭の粉粒体の供給時期を遅らせることで石炭の重量を減らし、バイオマスの圧密を緩和することができる。このようにして、貯蔵部内での粉粒体の流動状態がファンネルフローの状態になるのを抑制することができ、マスフローの状態に保つことができる。
【0025】
また、例えば、貯蔵部内の下層で既に圧密層が形成されて粉粒体の流動が阻害されている場合には、圧密層が形成された箇所の上部に粉粒体を偏って供給する。このようにして、貯蔵部の壁面と圧密層との間の摩擦力よりも、圧密層に作用する重力を大きくすることで、重力による圧密層の排出を促進することができる。
【0026】
以下、本発明の実施例による粉粒体の供給システムと燃焼装置を説明する。実施例1では粉粒体の供給システムについて、実施例2では粉粒体の供給システムを備える燃焼装置について説明する。
【実施例1】
【0027】
図1は、本発明の実施例1による粉粒体の供給システムの模式図である。図1には、一例として、下流側に接続された燃焼装置(図示せず)に固体燃料の粉粒体を供給する供給システムを示している。本実施例では、固体燃料として、石炭とバイオマスを用いる。ただし、本発明による粉粒体の供給システムは、石炭とバイオマス以外の固体燃料、例えば灰や汚泥からなる固体燃料を供給する供給システムにも適用でき、さらには、固体燃料以外の粉粒体、例えば穀物などの食料や化学材料を供給する供給システムにも適用できる。
【0028】
本実施例の粉粒体の供給システムは、固体燃料の粉粒体を貯蔵し排出する貯蔵部(ホッパ)2と、貯蔵部2へ固体燃料の粉粒体を供給する供給部1と、貯蔵部2の排出口に設けられ貯蔵部2から粉粒体を排出するための排出部3と、排出部3により貯蔵部2から排出された粉粒体を搬送する搬送部4と、制御装置7と、表示部8を備える。貯蔵部2は、複数の種類の粉粒体を貯蔵可能である。固体燃料の粉粒体は、上流側から、供給部1、貯蔵部2、排出部3、及び搬送部4の順に流れる。
【0029】
貯蔵部2は、後述する検知部9(9a、9b)を壁面に備える。検知部の数は1つでも複数でもよく、本実施例では、貯蔵部2は2つの検知部9a、9bを備える。貯蔵部2の下部は、粉粒体の排出方向に垂直な断面積が排出方向に向かって小さくなるように(すなわち、排出方向に向かって先細りするように)、形状が変化している。
【0030】
供給部1は、貯蔵部2へ供給する粉粒体の量を計測できる供給量計測部5を備え、後述する粉粒体の供給スケジュールに従って貯蔵部2へ粉粒体を供給する。搬送部4は、貯蔵部2から排出された粉粒体の量を計測できる排出量計測部6を備える。供給量計測部5と排出量計測部6は、供給または排出する粉粒体の重量と速度を計測し、供給するまたは排出された粉粒体の量を求めることができる。供給部1と搬送部4は、粉粒体を搬送するコンベアで構成することができる。排出部3は、粉粒体を排出するフィーダで構成することができる。貯蔵部2から排出された粉粒体の量を計測する機能は、排出部3に設けてもよい。
【0031】
制御装置7は、供給部1、排出部3、搬送部4、供給量計測部5、排出量計測部6、及び検知部9a、9bと信号線(点線で図示)で接続され、後述する数値シミュレーションと補正処理を実行する。供給部1、排出部3、搬送部4、供給量計測部5、排出量計測部6、及び検知部9a、9bのそれぞれは、計測信号を制御装置7に送信し、制御装置7から受信した信号に基づいて運転することができる。
【0032】
表示部8は、制御装置7に接続され、制御装置7が受信した各計測信号(検知部9a、9bの出力も含む)、制御装置7の制御情報、及び後述する数値シミュレーションの結果についての情報を表示する。
【0033】
なお、図1では、貯蔵部2が、下部にバイオマスの粉粒体10を、その上部に石炭の粉粒体11を重ねて貯蔵している状態を示す。貯蔵部2の内部でのこれらの粉粒体10、11の挙動(流動状態や分布や性状)は、粉粒体10、11の供給状況と排出状況により変動する。
【0034】
本実施例の粉粒体の供給システムは、貯蔵部2の内部での粉粒体10、11の挙動を数値シミュレーションとその結果の補正により把握し、粉粒体を貯蔵する貯蔵部2の内部(特に、供給システムの出口(または貯蔵部2の排出口))での粉粒体の性状(種類と混合比率)を求めて予測する。以下に、数値シミュレーションとその結果の補正方法について示す。
【0035】
図2は、制御装置7の構成と処理を模式的に示すブロック図である。図2では、制御装置7の構成とともに、粉粒体を貯蔵する貯蔵部の内部での粉粒体の性状を、制御装置7が求める処理の流れを示す。
【0036】
制御装置7は、入力設定部22、入力部21、情報格納部24、情報照合部23、計算部25、及び補正部27を備え、検知部9と表示部8に接続される。なお、制御装置7は補正部27を備えなくてもよく、この場合には補正部27が行う処理は作業者が実行する。
【0037】
入力設定部22は、制御装置7へデータや情報を入力するための入力手段である。
【0038】
入力部21は、入力設定部22で入力されたデータや情報を受け取る。入力設定部22で入力されたデータには、粉粒体の供給スケジュールが含まれる。粉粒体の供給スケジュールとは、供給部1が貯蔵部2へ粉粒体を供給するスケジュールであり、粉粒体の種類、粉粒体の供給量(重量や体積)、及び粉粒体の供給時刻と供給時間(供給する時間の長さ)を含む。入力部21が受け取ったデータや情報は、入力設定部22で修正することも可能である。
【0039】
情報格納部24には、予め、供給する粉粒体についての計算パラメータが格納されている。計算パラメータは、入力設定部22で入力することができる。計算パラメータには、上述したように、粉粒体の比重、粉粒体の粒子と壁面との摩擦力(摩擦係数)、粉粒体の粒子同士の摩擦力(摩擦係数)、粒子径、及び空隙率が含まれる。また、情報格納部24は、入力部21が受け取ったデータ(例えば、粉粒体の供給スケジュール)や情報を格納する。
【0040】
情報照合部23は、入力部21が受け取った粉粒体の種類に応じた計算パラメータを情報格納部24から取得し、取得した計算パラメータを計算部25に出力する。
【0041】
計算部25は、受け取った計算パラメータを用いて、貯蔵部2の内部での粉粒体の挙動(流動状態や分布や性状)を数値シミュレーションにより求め、求めた数値シミュレーションの結果を補正部27へ出力する。粉粒体の流動状態には、粉粒体の流動速度、貯蔵部2の壁面に対する粉粒体の圧力、及びこの圧力の脈動周波数が含まれる。
【0042】
補正部27は、後述するように、検知部9の検出値と数値シミュレーションの結果を基に、計算パラメータを修正する。上述したように、制御装置7が補正部27を備えない場合には、この処理は作業者が実行する。この場合には、図2には示していないが、検知部9の検出値と数値シミュレーションの結果を表示部8に表示し、作業者は、表示部8に表示された検知部9の検出値と数値シミュレーションの結果とを比較して、計算パラメータを修正する。
【0043】
計算部25は、補正部27(または作業者)によって修正された計算パラメータを用いて、貯蔵部2の内部での粉粒体の挙動(流動状態や分布や性状)を数値シミュレーションにより再度求め、数値シミュレーションの結果を補正する。
【0044】
補正部27(または作業者)は、計算パラメータの修正が不要であると判断すると、補正された数値シミュレーションの結果を表示部8に出力する。数値シミュレーションの結果には、粉粒体を貯蔵する貯蔵部の内部(特に、供給システムの出口(または貯蔵部の排出口))での粉粒体の性状(種類と混合比率)、分布、及び流動状態が含まれる。粉粒体の流動状態には、粉粒体の流動速度、貯蔵部2の壁面に対する粉粒体の圧力、及びこの圧力の脈動周波数が含まれる。補正部27(または作業者)は、例えば、前回求めた値と今回求めた値との差の絶対値が予め定めた閾値以下であると、計算パラメータの修正が不要であると判断することができる。
【0045】
表示部8は、数値シミュレーションの結果である粉粒体の挙動、例えば、供給システムの出口(貯蔵部2の排出口)での粉粒体の種類と混合比率の予測結果を表示する。
【0046】
計算部25で実行する数値シミュレーションでの計算方法には、例えば、個々の粒子間について運動方程式を立て、これらを連立方程式として解き、粒子の挙動を計算する方法(粒子要素法)がある。また、計算時間を短縮し、実用的な時間で計算結果を得る方法として、Smoothed Particle要素法や粉体オートマトン法がある。
【0047】
Smoothed Particle要素法は、粉粒体の多数の粒子を含む粉体要素を定義し、この粉体要素の運動をラグランジュ的に追跡する方法である。この方法では、定義した粉体要素に対し、異なる粉体要素や(貯蔵部2の)壁面に対する粒子の運動、及び粉体要素内での個々の粒子の運動をモデル化し、質量と運動量の保存式を立てて、粒子の挙動を計算する。この方法では、粉粒体の集合単位で計算するため、個々の粉粒体の連立方程式を計算する粒子要素法に比べて、計算時間が短くなる。
【0048】
また、粉体オートマトン法では、予め貯蔵部2の内部を格子状に分割し、分割した格子(セル)内についての粒子の流入や排出を、対象のセルと、このセルと境界を接するセルとの相関関係により判定する方法である。例えば、対象のセルからこのセルと下方向で境界を接するセルへ粒子が移動する場合には、下方向のセルでの粉粒体の有無、対象のセルと境界を接するセルの粉粒体との摩擦力、壁面との摩擦力、及び粉粒体自体に作用する重力を基に判定する。セル毎に順次判定をすることで、粉粒体の移動を計算する。この方法では、対象のセルと、このセルと境界を接するセルとの関係のみを考慮して(正確には、(粒子と壁面との関係も考慮して)、粒子の移動を計算するため、連立方程式を計算する粒子要素法に比べると計算時間が短くなる。
【0049】
何れの方法でも、粉粒体やその集合体の比重、粒子同士の摩擦係数、粒子と壁面との摩擦係数、貯蔵部2への供給時の粒子径及び空隙率を表す計算パラメータが必要である。これらの計算パラメータは、代表値またはその分布が情報格納部24に予め格納されて、使用される。しかし、これらの計算パラメータは、実際の粉粒体の性質を代表することが困難であり、これが数値シミュレーションの結果に誤差が生じる要因の1つである。
【0050】
本実施例の供給システムは、上述したように、下記の1)検知部9を備え、下記の2)補正部27を備えるか補正部27の処理を作業者が実行することで、数値シミュレーションから求めた粉粒体の挙動(流動状態や分布や性状)と実際の粉粒体の挙動との誤差を低減し、粉粒体の性状の実用的な予測が可能であることを特徴とする。
1)貯蔵部2の壁面に設けられ、粉粒体の圧力、流動方向、流動速度、摩擦力、及び粉粒体の圧力の脈動周波数のうち少なくとも1つを検出する検知部9(検知部の数は1つでも複数でもよい)。
2)検知部9の出力と計算部25が実行した数値シミュレーションの結果とを比較し、情報格納部24に格納された計算パラメータを修正する補正部27。
【0051】
検知部9には、例えば、粉粒体の重量や動きによって生じる貯蔵部2の壁面の圧力とその変動を検出する圧力センサや歪ゲージを用いることができる。また、粉粒体の流動方向や摩擦力を検知するために、貯蔵部2の内壁面に沿って設けた板と貯蔵部2の壁面との間での引っ張り力を検出する歪ゲージを用いることができる。何れの場合も、貯蔵部2の壁面に沿って検知部9を設けることが望ましい。検知部9を粉粒体に向かう方向に突出させる場合には、摩耗を考慮し、検知部9の突出長さを短くしたり、検知部9を耐摩耗材で構成したりすることが望ましい。また、粉粒体に向かう方向に突出させると、粉粒体の固着を促進させる可能性があるので、検知部9に振動を定期的に加える等の、粉粒体の固着を防ぐ措置をすることが望ましい。
【0052】
検知部9の設置位置の例としては、図1に示すように、貯蔵部2の形状が変化し始める部分(粉粒体の排出方向に垂直な断面積が排出方向に向かって小さくなり始める部分)の下部に検知部9aを設けたり、排出部3の近傍に検知部9bを設けたりすることができる。大型の貯蔵部2を用いる場合は、複数の検知部9を設けることが望ましい。
【0053】
貯蔵部2の形状が変化し始める部分は、粉粒体の流れ方向が変わることにより、粉粒体の滞留や固着が起きやすい。また、排出部3の近傍は、粉粒体の圧力が高く、粉粒体の流れが早いことから、粉粒体の流れに変動が生じやすい場所である。数値シミュレーションでは、滞留、固着、及び流れの変動のように粉粒体の空隙率や摩擦力が変化する現象のモデル化が難しく、このような現象が起きやすい場所で特に誤差が出やすい。また、粉粒体がバイオマスの場合には、滞留や固着が起きると吸湿や発熱により粉粒体が変質する可能性が高まるため、変質し難い石炭の粉粒体に比べて、滞留や固着に対してより注意を払う必要がある。従って、本実施例のように、粉粒体の滞留や固着が起きやすい場所や粉粒体の流れに変動が生じやすい場所に検知部9を設け、数値シミュレーションの結果との差異を確認することで、貯蔵部2の内部での粉粒体の流れを適切に把握することが可能となる。
【0054】
補正部27(または作業者)が実行する計算パラメータの修正方法の例として、次のような方法がある。まず、検知部9が検知した貯蔵部2の壁面に対する粉粒体の圧力の平均値を求める(検知部9が複数ある場合には、それぞれの検知部について求める)。次に、計算部25が実行した数値シミュレーションの結果のうち、検知部9が検知したのと同一箇所での貯蔵部2の壁面に対する粉粒体の圧力の平均値を求める(検知部9が複数ある場合には、それぞれの検知部に対応する圧力の平均値を求める)。そして、これらの平均値の差異を求め、数値シミュレーションの結果と検知部9が検知した値とが一致するように、計算パラメータ(例えば、粉粒体の比重)を変える。
【0055】
また、貯蔵部2の壁面に対する粉粒体の圧力は、粉粒体の動作に合わせて脈動する。検知部9で検知した脈動周波数よりも数値シミュレーションで求めた脈動周波数が低い場合には、摩擦力の設定が過大と考えられる。そこで、このような場合には、例えば、設定した摩擦力(摩擦係数)を小さくするという計算パラメータの修正方法がある。粉粒体の流動速度に対しても、検知部9で検知した値よりも数値シミュレーションで求めた値が大きい場合には、設定した摩擦力を小さくすることが望ましい。また、摩擦力の測定値から検知部9の近傍での粉粒体の性状を求めることができるので、検知部9で検知した摩擦力から求めた粉粒体の性状を用いて計算パラメータを修正し、数値シミュレーションの結果を補正することができる。
【0056】
以上の説明では、個別の測定値に対応した計算パラメータの修正方法の一例を示した。複数の測定値について数値シミュレーションの結果との比較が可能な場合には、複数の測定値のそれぞれに対応した複数の計算パラメータを同時に変更し、数値シミュレーションの結果を補正することができる。
【0057】
上述のように、本実施例の粉粒体の供給システムは、検出部9を備え、補正部27を備える、または補正部27の処理を作業者が実行することで、情報格納部24に格納した計算パラメータを修正して数値シミュレーションの結果を補正することができ、数値シミュレーションから求まる粉粒体の挙動(流動状態や分布や性状)と、実際の粉粒体の挙動との差異を抑制できる。さらに、以後の計算では、補正部27(または作業者)が修正した計算パラメータを用いて数値シミュレーションを行うので、さらに精度よく粉粒体の性状を求めて予測できるとともに、数値シミュレーションに必要な計算コストを低減することができる。
【0058】
数値シミュレーションとその結果の補正により、制御装置7は、粉粒体を貯蔵する貯蔵部の内部での粉粒体の性状(種類と混合比率)を予測することで、粉粒体が実際に排出されて供給システムの下流に設けられた機器に供給される前に、粉粒体の性状に合わせて機器の操作条件を調整できる。また、制御装置7は、供給システムの排出部3の動作速度を調整して、粉粒体の排出量の変動を抑制することができる。例えば、制御装置7は、粉粒体の排出速度が粉粒体の混合比率に応じて予め定めた一定速度になるように、排出部3の動作速度を制御して、粉粒体の排出量の変動を抑制することができる。
【0059】
さらに、制御装置7は、供給システムへ粉粒体を供給する供給スケジュールを調整することも可能である。供給部1は、変更された供給スケジュールに従って、貯蔵部2へ粉粒体を供給する。
【0060】
図3Aは、入力部21が受け取った、貯蔵部2への粉粒体の供給スケジュールの一例を示す図である。図3Bは、図3Aに示した粉粒体の供給スケジュールを基に数値シミュレーションで求めた、供給システムの出口(貯蔵部2の排出口)での粉粒体の性状(種類と混合比率)の一例を示す図である。図3Cは、図3Aに示した粉粒体の供給スケジュールと図3Bに示した供給システムの出口での粉粒体の性状とから求めた、貯蔵部2の粉粒体の貯蔵量を示す図である。図3A図3Cにおいて、横軸は時刻を表す。縦軸は、図3Aは貯蔵部2への粉粒体の供給速度を、図3Bは貯蔵部2からの粉粒体の排出速度を、図3Cは貯蔵部2の粉粒体の貯蔵量を表す。
【0061】
図3Aに示すように、供給スケジュールによると、6時から10時まではバイオマスの粉粒体10を貯蔵部2へ供給し、11時から16時までは石炭の粉粒体11を貯蔵部2へ供給する。貯蔵部2からの粉粒体の排出は、図3Bに示すように、9時から開始する。バイオマスの粉粒体10と石炭の粉粒体11は、ともに2t/hの速度で供給され、2t/hの速度で排出されるものとする。
【0062】
図3Bでは、予測線Aによって、排出される粉粒体の混合比率を示している。すなわち、排出される粉粒体は、9時〜12時頃まではバイオマスの粉粒体10の割合が100%であり、12時頃〜15時ではバイオマスの粉粒体10と石炭の粉粒体11が混合しており次第に石炭の粉粒体11の割合が増加していき、15時〜17時では石炭の粉粒体11の割合が100%である。予測線Aは、計算部25が実行した数値シミュレーションの結果から求めることができる。
【0063】
図3Cでは、予測線Aによって、貯蔵部2が貯蔵する粉粒体の混合比率を示している。図3Cの予測線Aは、図3Bの予測線Aと同様に、計算部25が実行した数値シミュレーションの結果から求めることができる。
【0064】
また、貯蔵部2内の粉粒体の量が少ない場合には排出速度の変動が大きくなるため、なるべく一定量以上の粉粒体を貯蔵部2内に貯蔵することが望ましい。一方で、粉粒体の量が多すぎると、貯蔵部2の下部で粉粒体が圧密され、排出不良を起こす可能性がある。このため、貯蔵部2が貯蔵する粉粒体の量に対して上限値と下限値を決め、この範囲内の量の粉粒体を貯蔵部2が貯蔵するように供給システムを運転することが望ましい。図3A図3Cに示した例の場合では、貯蔵部2は、粉粒体の排出開始時(9時)には6tの粉粒体を貯蔵し、排出終了時(17時)には2tの粉粒体を貯蔵する。
【0065】
石炭の粉粒体11がバイオマスの粉粒体10よりも流動性がよい場合には、先に供給されたバイオマスの粉粒体10の全てが排出される前に、石炭の粉粒体11が貯蔵部2の排出口に到達して排出される。例えば、図3Bの例では、予測線Aで示すように、12時頃にはバイオマスの粉粒体10に石炭の粉粒体11が混ざって排出され始め、全てのバイオマスの粉粒体10が排出されるのは15時となる。
【0066】
制御装置7は、図3Bに示したような、数値シミュレーションの結果(補正後の結果)から求めた貯蔵部2から排出される粉粒体の性状(種類と混合比率)を基に、予め定めた条件に従い、粉粒体の供給スケジュールを変更することができる。制御装置7は、例えば、粉粒体が混合して排出される時間の長さが第1の所定時間以上の場合には、後から供給される粉粒体の供給時刻を第2の所定の時間だけ遅らせるという条件に従い、複数の種類の粉粒体(本実施例ではバイオマスの粉粒体10と石炭の粉粒体11と)が混合して排出される時間が短くなるように、貯蔵部2への粉粒体の供給スケジュールを変更する。
【0067】
図4Aは、変更した、貯蔵部2への粉粒体の供給スケジュールの一例を示す図である。図4Bは、図4Aに示した粉粒体の供給スケジュールを基に数値シミュレーションで求めた、供給システムの出口(貯蔵部2の排出口)での粉粒体の性状(種類と混合比率)の一例を示す図である。図4Cは、図4Aに示した粉粒体の供給スケジュールと図4Bに示した供給システムの出口での粉粒体の性状とから求めた、貯蔵部2の粉粒体の貯蔵量を示す図である。図4A図4Cにおいて、横軸と縦軸は、図3A図3Cと同じである。
【0068】
図4Aに示すように、変更した供給スケジュールでは、バイオマスの粉粒体10の供給に変更はないが、石炭の供給開始時間を1時間遅らせて12時からとし、バイオマスの粉粒体10と石炭の粉粒体11とが混合する時間が短くなるようにした。
【0069】
図4Bでは、予測線Bによって、排出される粉粒体の混合比率を示している。すなわち、排出される粉粒体は、9時〜12時半頃ではバイオマスの粉粒体10の割合が100%であり、12時半頃〜15時ではバイオマスの粉粒体10と石炭の粉粒体11が混合しており次第に石炭の粉粒体11の割合が増加していき、15時〜17時では石炭の粉粒体11の割合が100%である。予測線Bは、計算部25が実行した数値シミュレーションの結果から求めることができる。図4B図3Bからわかるように、供給スケジュールの変更により、バイオマスの粉粒体10と石炭の粉粒体11とが混合して排出される時間を短くすることができた。これにより、排出される粉粒体の性状を把握することが容易になるとともに、粉粒体の供給システムの下流にある粉砕機の粉砕条件や粉砕機の下流にあるボイラの燃焼条件の調整が容易になる。
【0070】
図4Cでは、予測線Bによって、貯蔵部2が貯蔵する粉粒体の混合比率を示している。図4Cの予測線Bは、図4Bの予測線Bと同様に、計算部25が実行した数値シミュレーションの結果から求めることができる。図4C図4Bからわかるように、供給スケジュールの変更により、石炭の粉粒体11を供給し始めるときの貯蔵部2内のバイオマスの粉粒体10の貯蔵量を減らし、バイオマスの粉粒体10と石炭の粉粒体11とが混合して貯蔵部2に貯蔵される時間を短くすることができた。
【0071】
次に、数値シミュレーションの結果から粉粒体の粒子の圧密層が形成されると想定される場合の対応例と、既に圧密層が形成されている場合の対応例を示す。
【0072】
まず、粉粒体の粒子の圧密層が形成されると想定される場合の対応例について説明する。図3Aに示した粉粒体の供給スケジュールを実行する場合において、10時に数値シミュレーションを実行したところ、石炭の粉粒体11を供給する11時以降に、バイオマスの粉粒体10の下部で圧密層が形成され、この圧密層の流動が特に遅くなることがわかったとする。圧密層が形成されて粉粒体の一部の流動が遅くなると、これに伴い、他の部分の流動が早まり、上部の粉粒体が先に排出される、いわゆるファンネルフローが形成されやすくなる。このファンネルフローが形成されると、下部と上部の粉粒体の層が同時に排出される混合状態が長く続く。さらに、粉粒体の層の崩落に伴う排出速度の変動が大きくなり、また圧密層が固着しやすくなるなど、排出不良が生じやすくなる。このため、一般にファンネルフローの形成は望ましくなく、排出口へ向かう粉粒体の流れが貯蔵部2の全体で均等に生じる、いわゆるマスフローの状態を維持することが望ましい。
【0073】
この場合には、例えば図4Aで示したように、石炭の粉粒体11の供給を1時間遅らせれば、貯蔵部2内の粉粒体の重量が減ることから、粉粒体の圧密を緩和し、圧密層の形成を抑制できる。すなわち、石炭の粉粒体11の供給を遅らせるように粉粒体の供給スケジュールを変更することで、ファンネルフローの形成を抑制し、マスフローの状態を維持することができる。
【0074】
次に、貯蔵部2内に既に圧密層が形成され、粉粒体の流動が阻害されている場合の対応例について説明する。圧密層の形成は、検知部9の検出値から把握することができる。
【0075】
図5は、貯蔵部2内のバイオマスの粉粒体10に圧密層30が形成されている場合の粉粒体の供給システムの模式図である。図5において、図1と同一の符号は図1と同一の構成要素を示し、これらの要素については説明を省略する。
【0076】
図5に示すように、貯蔵部2の形状が変化し始める部分(粉粒体の排出方向に垂直な断面積が排出方向に向かって小さくなり始める部分)とその下部の近傍で、貯蔵部2の壁面に沿って、バイオマスの粉粒体10の圧密層30が形成されている。この圧密層30は、検知部9aによって、形成されたことが把握できる。
【0077】
この場合には、図5に示すように、供給部1が貯蔵部2へ粉粒体を供給する位置を変更し、圧密層30の上方に粉粒体を偏って供給することで、貯蔵部2の壁面と圧密層30との間の摩擦力よりも、圧密層30に加わる重力を大きくする。圧密層30の上方に供給された粉粒体の作用により圧密層30を下方へ押し動かし、圧密層30の排出を促進することができる。
【0078】
供給部1は、貯蔵部2に対して移動可能であり、移動することで、貯蔵部2へ粉粒体を供給する位置を変更することができる。または、供給部1は、貯蔵部2へ粉粒体を供給するための突出部を有し、突出部の長さを変えることで、貯蔵部2へ粉粒体を供給する位置を変更することができる。
【0079】
制御装置7は、予め定めた条件に従い、供給部1を移動させたり、供給部1の突出部の長さを変えたりして、供給部1の貯蔵部2への粉粒体の供給位置(水平方向の位置)を変更することができる。例えば、制御装置7は、数値シミュレーションで求めた圧密層30の位置や検知部9が検知した圧密層30の位置に合わせて貯蔵部2へ粉粒体を供給するという条件に従い、貯蔵部2の中央部から壁面に近い周辺部へ、粉粒体の供給位置を変更することができる(図1図5を参照)。
【0080】
以上示したように、本実施例の粉粒体の供給システムは、数値シミュレーションの結果に基づいて、貯蔵部2への粉粒体の供給スケジュールや貯蔵部2における粉粒体の供給位置を変更する制御装置7を備えることで、貯蔵部2内での粉粒体の流動状態をマスフローの状態に保つことができ、供給された順に粉粒体を排出することができる。
【実施例2】
【0081】
図6は、本発明の実施例2による燃焼装置の模式図である。本実施例による燃焼装置は、実施例1で説明した粉粒体の供給システムを備える。図6において、図1と同一の符号は図1と同一の構成要素を示し、これらの要素については説明を省略する。
【0082】
本実施例による燃焼装置は、粉粒体の供給システムと、粉砕機41と、火炉40と、制御部45を備え、供給システムの貯蔵部2から排出された粉粒体が供給され、この粉粒体を燃焼する。
【0083】
燃料である粉粒体は、供給システムの貯蔵部2から排出されて搬送部4によって粉砕機41へ供給される。粉砕機41は、供給された粉粒体を粉砕した後、粉砕した粉粒体を火炉40へ供給する。火炉40は、粉砕機41からの粉粒体を火炉40内に噴出するバーナ42と、バーナ42の上部に設置された空気供給口43とを備え、燃料である粉粒体がバーナ42を介して供給されるとともに、燃焼用空気が空気供給口43から供給され、バーナ42により粉粒体を燃焼する。
【0084】
制御部45は、粉粒体の供給システムの制御装置7に接続され、供給システムの数値シミュレーションの結果(例えば、粉粒体の性状)を受け取ることができる。さらに、制御部45は、粉砕機41に接続され、粉砕機41の粉砕条件を変更することができる。また、制御部45は、粉砕機41とバーナ42へ空気を供給するファン44に接続され、粉砕機41やバーナ42へ供給する空気量を制御して、粉砕機41と火炉40を制御する。
【0085】
粉粒体の供給システムの制御装置7は、数値シミュレーションの結果に基づいて、供給システムの出口(貯蔵部2の排出口)での粉粒体の性状(種類と混合比率)を予測する。制御装置7の数値シミュレーションの結果や粉粒体の性状の予測結果は、制御部45に伝達される。制御部45は、伝達されたこれらの結果を基にして、供給システムに接続された粉砕機41の粉砕条件(例えば、粉砕加圧力、粉砕速度、分級器の回転数、導入空気量、及び温度)を変更することができる。
【0086】
例えば、異なる複数の種類の粉粒体(本実施例では、バイオマス10と石炭11)が混合されて粉砕機41に供給される場合には、粉砕機41の粉砕条件を1種類の粉粒体だけに合わせると、粉粒体の滑りや噛み込み、及び過大な粉砕負荷や過小な粉砕負荷による異常振動が生じる可能性が高まる。このため、粉粒体の性状(種類と混合比率)を正確に予測することが望まれている。
【0087】
従来の粉粒体の供給システムでは、数値シミュレーションによる予測精度が低く、粉粒体の性状を正確に予測することが困難であるため、予め設定した誤差時間を用い、粉粒体の性状が変化する前に粉砕条件をより安定な条件に変える必要がある。この場合には、粉砕機41の粉砕動力が増加するなどのために、燃焼装置の経済性が低下する可能性がある。
【0088】
一方、本実施例の燃焼装置では、供給システムの制御装置7が、粉粒体の性状が変化する時刻を粉粒体が供給されるよりも前に、より正確に把握することができ、粉粒体の性状の変化や変化が起こる時刻を燃焼装置の制御部45に伝達することができる。燃焼装置の制御部45は、供給システムの制御装置7からの情報を基に粉砕機41と火炉40を制御するので、燃焼装置の経済性の低下を抑制できる。
【0089】
また、制御部45は、粉粒体の供給システムの制御装置7から伝達された数値シミュレーションの結果や粉粒体の性状の予測結果を基にして、バーナ42へ供給する空気量を変更することができ、火炉40の燃焼条件(例えば、空気量配分、及び運転負荷)を制御することができる。バーナ42に供給する空気量を変更することにより、バーナ42の保炎状態を最適化し、安定した火炎を得ることができる。さらに、粉砕条件が低下し、燃焼状態も低下することが見込まれる場合には、事前に油等の助燃装置を準備しておき、燃焼装置を安定に稼働することが可能である。
【0090】
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形例を含む。例えば、上記の実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備える態様に限定されるものではない。
【0091】
また、各図面において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを記載しており、必ずしも製品として必要な全ての制御線や情報線を記載しているとは限らない。実際の製品では、殆ど全ての構成要素が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0092】
1…供給部、2…貯蔵部、3…排出部、4…搬送部、5…供給量計測部、6…排出量計測部、7…制御装置、8…表示部、9、9a、9b…検知部、10…バイオマスの粉粒体、11…石炭の粉粒体、21…入力部、22…入力設定部、23…情報照合部、24…情報格納部、25…計算部、27…補正部、30…圧密層、40…火炉、41…粉砕機、42…バーナ、43…空気供給口、44…ファン、45…制御部。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5
図6