(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態の記録装置は、フルラインタイプのインクジェット記録装置としての適用例である。
【0011】
図1は、フルラインタイプのインクジェット記録装置(以下、「プリンタ」ともいう)10の概念的な構成例の説明図である。
【0012】
プリンタ10は、パーソナルコンピュータなどの形態のホスト装置12に接続されており、このホスト装置12からプリンタ10に画像情報などが送られる。プリンタ10には、インクを吐出可能な4つの記録ヘッド22(22K、22C、22M、22Y)が記録媒体としてのロール紙Pの搬送方向(矢印A方向)に並ぶように配置されている。記録ヘッド22K、22C、22M、22Yは、それぞれブラック、シアン、マゼンタ、イエローのインクを吐出するための記録ヘッドである。それぞれの記録ヘッド22には、電気熱変換素子(ヒータ)やピエゾ素子などの吐出エネルギー発生素子を用いて、複数の吐出口から対応するインクを吐出する構成となっている。電気熱変換素子を用いて場合には、その発熱によりインクを発泡させ、その発泡エネルギーを利用して吐出口からインクを吐出することができる。これらの吐出口は、矢印Aの搬送方向と交差(本例の場合は、直交)する方向に配列されている。これらの記録ヘッド22は所謂長尺なラインヘッドであり、矢印Aの搬送方向と交差(本例の場合は、直交)する方向に延在する。これらの記録ヘッド22の長さは、プリンタ10において記録可能な記録媒体の最大の幅(
図1の紙面に直交する方向の長さ)よりもやや長い。また、これらの記録ヘッド22は、画像の記録動作中は所定の記録位置に位置決めされている。
【0013】
記録ヘッド22の回復動作(インクの吐出状態を良好に維持する動作)のために、プリンタ10には回復ユニット400が組み込まれている。回復ユニット400には、それぞれの記録ヘッド22K、22C、22M、22Yにおける吐出口の形成面(吐出口形成面)からインクを除去するためのキャッピング機構50が備えられている。キャッピング機構50は、それぞれの記録ヘッド22K、22C、22M、22Y毎に独立して設けられている。キャッピング機構50には、吐出口形成面をワイピングするためのワイパー、そのワイパーを保持するワイパー保持部材、ワイパーに付着したインクを除去するためのインク除去部材、および吐出口面に密着するキャップ等が備えられている。
【0014】
ロール紙Pは、供給ユニット24から供給されて、プリンタ10に組み込まれた搬送機構26によって矢印A方向に搬送される。搬送機構26は、ロール紙Pを載置して搬送する搬送ベルト26a、この搬送ベルト26aを回転させるための搬送モータ26b、および搬送ベルト26aに張力を与えるローラ26cなどから構成されている。搬送機構26は、搬送ローラを用いてロール紙Pを搬送する構成であってもよく、またユニット化した搬送ユニットを構成するものであってもよい。後述する具体的な構成例において、搬送機構26は、供給ユニット24を含み、かつ搬送ローラを用いてロール紙Pを搬送する搬送ユニットとして構成されている。
【0015】
ロール紙Pに画像を記録する際には、搬送中のロール紙Pにおける記録開始位置が記録ヘッド22Kの下に到達した後に、記録データ(画像情報)に基づいて、記録ヘッド22Kにおける複数の吐出口からブラックインクを選択的に吐出する。同様に記録ヘッド22C、記録ヘッド22M、記録ヘッド22Yの順に、各色のインクを吐出してカラー画像をロール紙Pに記録する。プリンタ10には、それぞれの記録ヘッド22(22K、22C、22M、22Y)にインクを供給するインクタンク28(28K、28C、28M、28Y)が備えられている。さらに、プリンタ10には、それぞれの記録ヘッド22K、22C、22M、22Yに対するインクの供給動作および回復動作をするための各種ポンプ(
図3等参照)などが備えられている。
【0016】
図2は、プリンタ10の制御系のブロック構成図である。
【0017】
ホストPC12から送信された記録データやコマンドなどの情報は、インターフェイスコントローラ102を介してCPU100に受信される。CPU100は、プリンタ10の記録データの受信、記録動作、ロール紙Pのハンドリング等のプリンタ10における制御の全般(後述する、記録ヘッド22の昇降動作に対応する制御も含む)を掌る演算処理装置である。CPU100は、受信したコマンドを解析した後に、記録データの各色成分のイメージデータをイメージメモリ106にビットマップ展開して描画する。CPU100は、各種センサ(後述のフォトインタラプタセンサ606(
図18参照)も含む)と接続されている。
【0018】
画像を記録する場合には、まず、出力ポート114とモータ駆動部116を介してキャッピングモータ122およびヘッド昇降モータ118を駆動制御して、それぞれの記録ヘッド22を対応するキャッピング機構50から離して記録位置に移動させる。キャッピングモータ122は、キャッピング機構50を
図1中の矢印B1,B2方向に移動させるためのモータであり、ヘッド昇降モータ118は、記録ヘッド22を
図1中の矢印C1,C2方向の昇降させるためのモータである。その後、出力ポート114とモータ駆動部116を介して、ロール紙Pを繰り出すためのロールモータ(図示せず)、および定速度でロール紙Pを搬送するための搬送モータ26b等を駆動制御して、ロール紙Pを矢印A方向に搬送する。一定速度で搬送されるロール紙Pに対してインクを吐出し始めるタイミング(記録タイミング)は、不図示の先端検知センサ(図示せず)によるロール紙Pの先端の検出タイミングに基づいて決定される。CPU100は、ロール紙Pの搬送に同期して、インク色毎に対応する記録データをイメージメモリ106から順次に読み出し、この読み出したデータを記録ヘッド制御回路112を介して対応する記録ヘッド22K、22C、22M、22Yに転送する。
【0019】
CPU100は、プログラムROM104に記憶された処理プログラムに基づいて処理を実行する。プログラムROM104には、制御フローに対応する処理プログラム及びテーブルなどが記憶されている。ワークRAM108は、作業用のメモリなどとして使用される。CPU100は、それぞれの記録ヘッド22のクリーニング動作や回復動作時には、出力ポート114とモータ駆動部116を介してポンプモータ124を駆動制御し、インクの加圧および吸引等を行わせる。
【0020】
図3は、プリンタ10に組み込まれるエンジンユニット200の斜視図であり、そのエンジンユニット200は、樹脂製のエンジンフレーム20の中に、ヘッドユニット300、回復ユニット400、ポンプユニット500を1つにまとめた構成となっている。
図4および
図5は、エンジンフレーム20を異なる方向から見た斜視図である。記録ヘッド22を含むヘッドユニット300は、エンジンフレーム20に一体的に形成されたレール部20a、20b、20cによって、矢印C1,C2方向に昇降可能に支持されている。キャッピング機構50を含む回復ユニット400は、エンジンフレーム20に一体的に形成されたレール部20d、20eによって、矢印B1,B2方向にスライド可能に支持されている。
【0021】
回復ユニット400のキャッピング機構50がヘッドユニット300の記録ヘッド22をキャッピングしているキャッピング位置にあるときから、画像の記録を開始する場合には、まず、ヘッドユニット300を矢印C1方向に上昇させる。これにより、記録ヘッド22がキャッピング機構50から離間して、キャッピング機構50によるキャッピングが解除される。ヘッドユニット300が最上位のヘッド基準位置にまで上昇したことは、センサ(後述のフォトインタラプタセンサ606(
図18参照))によって検知される。それを検知した後、ヘッド基準位置とキャッピング位置との間のワイピング位置までヘッドユニット300を矢印C2方向に下降させる。ヘッドユニット300は、ヘッド昇降モータ118の回転方向および回転量に応じて、ロール紙Pに対して近接および離間する方向に昇降される。ヘッドユニット300をワイピング位置まで下降させた後、後述するように、回復ユニット400に備わるワイパーを矢印D1方向にスライドさせ、そのワイパーによってヘッドユニット300に備わる記録ヘッド22の吐出口面をワイピングする。
【0022】
その後、ヘッドユニット300が最上位のヘッド基準位置に達したことをセンサが検知するまで、ヘッドユニット300を上昇させる。その後、ワイパーを矢印D2方向に移動させて元の待機位置に戻してから、回復ユニット400を矢印B2方向に移動させて、キャッピング機構50を記録ヘッド22の直下の位置からずらす。その間、ヘッドユニット300は矢印C2方向に下降し、記録ヘッド22が画像を記録するための、キャッピング位置よりも下方に位置する記録位置までに下降する。
【0023】
この記録位置における記録ヘッド22からインクを吐出することにより、前述したように、矢印A方向に連続的に搬送されるロール紙Pに対して画像を記録する。画像の記録終了後は、ヘッドユニット300を上昇させ、それが最上位のヘッド基準位置にまで上昇下ことをセンサによって検知した後に、ヘッドユニット300を下降させる。その間、回復ユニット400を矢印B1方向の元の位置にまで移動させておき、ヘッドユニット300がキャッピング位置まで下降することにより、記録ヘッド22がキャッピング機構50によってキャッピングされる。
【0024】
図6は、ヘッドユニット300を吐出口側から見た斜視図である。
図7、
図8、
図9、および
図10は、それぞれ、
図6のVII,VIII,IX,X矢視図である。ヘッドホルダ302には、長ネジ307(
図8参照)とナット308(
図10参照)によって、記録ヘッド22(22K,22C,22M,22Y)が並列的に取り付けられている。
【0025】
図11は、ヘッドユニット300を上方から見た斜視図であり、このヘッドユニット300には、
図12のように、カートリッジタイプのインクタンク28(28K、28C、28M、28Y)が着脱可能に収容される。これらのインクタンク(以下、「インクカートリッジ」ともいう)28が収容される収容部は、仕切り板312によって仕切られている。
図13は
図12のXIII矢視図、
図14(a)は、1つの仕切り板312の斜視図、
図14(b)は、その仕切り板312の断面図である。仕切り板312は、2つの部材315,316を貼り合わせた構成であり、
図14(b)のように、それらの部材315,316の間に信号線313を通すことができるようになっている。信号線313は、記録ヘッド22と記録装置側の基板とを電気的に接続するためのものである。
図15(a)は
図12のXVa矢視図、
図15(b)は、1つの仕切り板の部分を
図15(a)のXVb−XVb線に沿って断面した拡大図である。
【0026】
図16(a)は、ヘッドユニット300に備わるスライド軸受け305の斜視図、
図16(b),(c),(d),(e)は、ぞれぞれ、
図16(a)のXVIb、XVIc,XVId,XVIe矢視図である。スライド軸受け305は、エンジンフレーム20のガイドレール(第一案内部)20a,20b,20c(
図4参照)に対して矢印C1,C2方向にスライド自在にガイドされるように、ヘッドユニット300の定位置に取り付けられる。
【0027】
スライド軸受け(第二案内部)305は、
図16(b)のように、直径Dの仮想の円周上に位置する外周面を有する略円形の平面形状であり、ガイドレール20a,20b,20cとスライド自在に嵌合する幅Wの溝部305aが形成されている。ヘッドホルダ302には、
図8のように、ガイドレール20aにスライド自在に嵌合するための2つのスライド軸受け305が取り付けられ、また
図7のように、ガイドレール20bにスライド自在に嵌合するための2つのスライド軸受け305が取り付けられる。また、ヘッドホルダ302には、
図9のように、ガイドレール20cにスライド自在に嵌合するための1つのスライド軸受け305が取り付けられる。スライド軸受け305には爪部305dが形成されている。ヘッドホルダ302におけるスライド軸受け305の取り付け位置に形成された穴302b(
図7,8,9参照)に対して、爪部305dが弾性的に嵌合することにより、スライド軸受け305がヘッドホルダ302の定位置に取り付けられる。スライド軸受け305は、爪部305dによって、前述した
図16(b)の直径Dの中心の軸線(ガイドレールの長さ方向(ヘッドホルダ302の移動方向)と交差(本例の場合は、直交)する軸線)を中心として回動可能に穴302bに取り付けられる。さらに、スライド軸受け305は、ヘッドホルダ302の凸部302c(
図7,8,9参照)がスライド軸受け305の凹部305cに位置することによって、回動範囲が所定の範囲に規制される。
【0028】
このように本例においては、計5つのスライド軸受け305がガイドレール20a,20b,20cに対応して係合するように備えられている。ガイドレール20bに対応する
図7の2つのスライド軸受け305と、ガイドレール20cに対応する
図9の1つのスライド軸受け305と、によって、特に、ヘッドユニット300の側面の位置が規定される。また、ガイドレール20aに対応する
図8の2つのスライド軸受け305によって、特に、ヘッドユニット300の矢印C1,C2方向の移動軸が規制される。このように、ヘッドユニット300と共に移動可能な計5つのスライド軸受け305と、スライド軸受け305と共にヘッドユニット300を移動させるための3つのガイドレール20a,20b,20cと、によって、ヘッドユニット300の姿勢が規定される。
【0029】
図17は、ヘッドユニット300を矢印C1,C2方向に昇降させる駆動部600の斜視図である。駆動部600におけるヘッド昇降モータ118は、与えられるパルス数に応じて回転数(回転角)を制御可能なパルスモータである。ヘッド昇降モータ118の回転力は、ピニオン602、アイドラギア603、リードスクリュー604のギア部604aに伝達されて、リードスクリュー604のリードスクリュー部604bを回転させる。リードスクリュー部604bは雄ネジ形状であり、それと合致する雌ネジ形状の部分をもつナットユニット700がリードスクリュー604に螺合している。ナットユニット700は、その回転(リードスクリュー604の回転軸まわりの回転)のみエンジンフレーム20に拘束されるため、リードスクリュー604が回転することにより、そのリード角にしたがってナットユニット700が矢印C1,C2方向に昇降する。
【0030】
ナットユニット700が、
図18のように、ヘッドホルダ302の開口302aに嵌り込むことにより、ナットユニット700とヘッドユニットとが固定される。そして、リードスクリュー604が回転することによりナットユニット700が昇降し、ナットユニット700の昇降に伴い、ナットユニット700と固定されたヘッドユニット300が昇降する。駆動部600のヘッド昇降モータ118はエンジンフレ−ム20にビス止めされ、アイドラギア603はエンジンフレーム20の軸部20f(
図4参照)に嵌め込まれる。リードスクリュー604は、エンジンフレーム20の穴部20g(
図4参照)と、その下方の孔部20h(
図19参照)と、に差し込まれて、回転自在に支持される。
【0031】
エンジンフレーム20の穴20hに差し込まれたリードスクリュー604に対しては、その下方に位置するプランジャ650によって常に上向き(矢印C1方向)のスラスト力が与えられる。プランジャ650は、
図20(a),(b)のように、ピストン651、アウター652、および圧縮バネ653を含み、圧縮バネ653によってリードスクリュー604に対して上向きのスラスト力が与えられている。圧縮バネ653は、昇降するヘッドユニット300(インクカートリッジ28を含む)の自重量以上のバネ力を持っているため、ヘッドユニット300の自重によってリードスクリュー604が下方(矢印C2方向)に落ち込むことはない。したがって、リードスクリュー604に対して、常に上向きのスラスト力を与えることができる。これは、リードスクリュー604がセルフロックのかかる適切なリード角を持っていて、ナットユニット700がリードスクリュー604以外のものから上下方向(矢印C1,C2)方向の力を受けたとしても、リードスクリュー604が回転しないからである。
【0032】
アイドラギア603およびリードスクリュー604の取り付け後に、ギアカバー605(
図18参照)を被せてビス止めすることにより、アイドラギア603およびリードスクリュー604を抜け止めする。リードスクリュー604には常に上向きのスラスト力が与えられているため、そのリードスクリュー604のスラスト方向の位置はギアカバー605の底面によって規定される。また、ギアカバー605にはフォトインタラプタセンサ606(
図18参照)が取り付けられおり、ヘッドホルダ302のセンサフラグ部302d(
図18参照)を検知することにより、前述のヘッド基準位置を検知することができる。
【0033】
図21(a),(b)は、ナットユニット700の詳細図である。ナットユニット700において、雌ネジ形状をもつナット701に対しては、ラッチ702とスライダストッパ704がピン705によって矢印E1,E2方向に回転自在に取り付けられている。ピン705は、その軸線がヘッドホルダ302の移動方向と交差(本例の場合は、直交)する軸線を有する軸である。ラッチ702には、スライダ703が矢印F1,F2方向にスライド自在に支持されており、そのスライダ703は、圧縮バネ706によって矢印F1方向に付勢されている。スライダストッパ704には、
図22(a),(b)のようにバネ部704aが形成されており、そのバネ部704aによって、スライダストッパ704が常に矢印E1方向に付勢されている。
【0034】
図21は、ヘッドユニット300をエンジンフレーム20内に取り付ける前におけるナットユニット700の状態を示す。この状態において、ラッチ702は矢印E1方向に回動されて傾いており、スライダ703はスライダストッパ704によって矢印F2方向のスライド位置に保持されており、圧縮バネ706は縮んだ状態にある。ナットユニット700がこの状態にあるときに、ヘッドホルダ302とナットユニット700とを干渉させることなく、エンジンフレーム20の上方から、その内部にヘッドユニット300を矢印C2方向に進入させることができる。
【0035】
さらに、ヘッドユニット300を矢印C2方向に進入させることにより、
図23(a),(b)のように、ヘッドホルダ302の開口302aにおける傾斜部302hと、ラッチ702の傾斜部702aと、が合致して、ラッチ702の矢印E2方向に回動する。その後、ヘッドユニット300を少し持ち上げることにより、スライダ703がヘッドホルダ302の開口302aの下縁部によって持ち上げられる。スライダ703が持ち上げられることにより、スライダ703の段差部703bと、スライダストッパ704のストッパ部704bと、が離れ、スライダストッパ704は、バネ部704aの付勢力によって矢印E1方向に戻る。この結果、
図24(a),(b)のように、スライダ703が圧縮バネ706によって矢印F1方向に下がり、ナットユニット700は、圧縮バネ706のバネ力を伴ってヘッドホルダ302の開口302a内にロックされる。
【0036】
図24のように、エンジンフレーム20にヘッドユニット300を取り付けて、そのヘッドユニット300のヘッドホルダ302にナットユニット700をロックした後、リードスクリュー604の回転に応じてヘッドユニット300を昇降させることができる。リードスクリュー604の回転によってヘッドユニット300を矢印C1方向に上昇させる際には、ヘッドユニット300のヘッドホルダ302とナットユニット700が
図24のロック状態を保ったまま移動する。同様に、リードスクリュー604の回転によってヘッドユニット300を矢印C2方向に下降させる際には、ヘッドユニット300のヘッドホルダ302とナットユニット700が
図24のロック状態を保ったまま移動する。ヘッドユニット300がキャッピング機構50(例えば、キャップ)によって、矢印C1方向の力を受けた場合には、ナット701に対してヘッドユニット300が上方に変位する。すなわち、ナット701の上面701a(
図24(b)参照)に対して、ヘッドホルダ302の開口302aの上縁部の面302i(
図24(b)参照)が上方に変位し、かつ圧縮バネ706が縮めるようにヘッドユニット300が矢印C1方向に変位する。このようなヘッドユニット300の変位については後述する。
【0037】
サービスなどでのためにヘッドユニット300の交換が必要になった場合には、次のようにして、ヘッドユニット300を外すことができる。まず、スライダ703の穴703aにマイナスドライバを差し込み、スライダ703を矢印C1方向に持ち上げつつ矢印E1方向に押し込むことによって、スライダ703を
図21の状態に戻す。これにより、ヘッドユニット300を矢印C1方向に抜き出すことができる。スライダ703の取り付けは、前述したように、
図21,
図23,
図24に示す順序で行う。
【0038】
次に、前述した(1)ヘッド基準位置、(2)ワイピング位置、(3)キャッピング位置、および(4)記録位置におけるヘッドユニット300の位置決め方法について説明する。
【0039】
(1)ヘッド基準位置
図26,
図27,および
図28は、それぞれ、ヘッドユニット300がヘッド基準位置に位置決めされているときの
図25のX−X線,Y−Y線,およびZ−Zに沿う断面図である。
【0040】
ヘッドユニット300がエンジンフレーム20の最上部のヘッド基準位置まで移動したことは、ヘッドホルダ302におけるセンサフラグ部302d(
図18参照)がフォトセンサ606を遮光することにより検知される。ヘッドユニット300がヘッド基準位置に移動したとき、リードスクリュー604は、プランジャユニット650によって上方(矢印C1方向)へ付勢された状態に保たれる。
【0041】
ガイドレール20bには、
図26のように、幅広のガイド部20b−1,20b−2,20b−3,20b−4と、幅狭の非ガイド部20b−11,20b−12,20b−13が形成されている。ガイド部20b−1,20b−2,20b−3,20b−4は、ヘッドユニット300のヘッドホルダ302に取り付けられたスライド軸受け305における幅Wの溝部305aに接して、スライド軸受け305を介してヘッドユニット300を位置決めする。非ガイド部20B−11,20b−12,20b−13は、スライド軸受け305の溝部305aに接触せずに、ヘッドユニット300を位置決めしない。同様に、ガイドレール20aには、
図27のように、幅広のガイド部20a−1,20a−2,20a−3,20a−4と、幅狭の非ガイド部20a−11,20a−12,20a−13が形成されている。ガイドレール20cには、
図28のように、幅広のガイド部20c−1,20c−2,20c−3と、幅狭の非ガイド部20c−11,20c−12が形成されている。このように、ガイドレール20a,20b,20cは、その長さ方向において異なる位置の断面形状が異なる。
【0042】
ヘッドユニット300がヘッド基準位置に移動したときは、
図26のように、ガイドレール20bに対応する2つのスライド軸受け305がガイドレール20bのガイド部20b−3,20b−4に接する。さらに、
図27のように、ガイドレール20aに対応する2つのスライド軸受け305がガイドレール20aのガイド部20a−3,20a−4に接する。さらに、
図28のように、ガイドレール20cに対応する1つのスライド軸受け305がガイドレール20cのガイド部20c−3に接する。
図42(a)は、ヘッド基準位置におけるスライド軸受け305とガイドレール20a,20b,20cとの位置関係を表す概念図である。このように、ヘッド基準位置においては、計5つのスライド軸受け305の全てがガイドレール20a,20b,20cのガイド部に接し、これらのスライド軸受け305を介してヘッドユニット300が位置決めされる。その際、それぞれのスライド軸受け305における溝部305aは、少なくとも一部がガイドレール20a,20b,20cのガイド部に接すればよく、他の部分は非ガイド部と対向してもよい。
【0043】
(2)ワイピング位置
ワイピング位置は、
図29,
図30,
図31のようにヘッド基準位置よりも1段階下の位置である。ヘッドホルダ302のセンサフラグ部302dによって遮光されているフォトセンサ606が透過状態となったときから、ヘッド昇降モータ118を所定数の駆動パルスで駆動することにより、ヘッドユニット300がワイピング位置に移動する。このとき、リードスクリュー604はプランジャユニット650によって上方へ付勢された状態で保たれているため、ワイピング位置に正確に停止することができる。
【0044】
ワイピング位置においては、ヘッド基準位置のときと同様に、
図29,
図30,
図31のように、計5つのスライド軸受け305の全てがガイドレール20a,20b,20cのガイド部に接する。したがって、これらのスライド軸受け305を介してヘッドユニット300がワイピング位置に位置決めされる。その際、それぞれのスライド軸受け305における溝部305aは、少なくとも一部がガイドレール20a,20b,20cのガイド部に接すればよく、他の部分は非ガイド部と対向してもよい。
図42(b)は、ワイピング位置におけるスライド軸受け305とガイドレール20a,20b,20cとの位置関係を表す概念図である。
【0045】
このワイピング位置において、キャッピング機構50のワイパー52は、その先端が記録ヘッド22の吐出口面に対して所定量L(
図30参照)進入する状態のまま、矢印D1方向に移動することにより、記録ヘッド22の吐出口面をワイピングする。ワイピング動作の終了後は、前述したように、ヘッドユニット300をヘッド基準位置へ移動させ、ワイパー52を矢印D2方向に移動させて、元の待機位置に戻す。
【0046】
(3)キャッピング位置
キャッピング位置は、
図32,
図33,
図34のようにヘッド基準位置よりも2段階下の位置である。ヘッドホルダ302のセンサフラグ部302dによって遮光されているフォトセンサ606が透過状態となったときから、ヘッド昇降モータ118を所定数の駆動パルスで駆動することにより、ヘッドユニット300がキャッピング位置に移動する。
【0047】
キャッピング位置において、キャッピング機構50のキャップが記録ヘッド22の吐出口形成面に密着して、記録ヘッド22を確実にキャッピングするためには、キャップを上方に付勢するためにキャップに仕込まれたバネを押し潰さなければならない。ヘッドユニット300に駆動力を伝達するナットユニット700の圧縮バネ706(
図24(a)参照)は、キャップに仕込まれたバネよりも弱い。そのため、ヘッドユニット300がキャッピング位置に移動したときに、ラッチ702とスライダ703との間の隙間G(
図24(b)参照)が小さくなって、キャップに仕込まれたバネが圧縮される。このとき、リードスクリュー604受ける力は、プランジャユニット650によって付勢されている力と同一の上方向(矢印C1方向)であるため、ヘッドユニット300はキャッピング位置に正確に停止する。
【0048】
キャッピング位置においては、
図32のように、ガイドレール20bに対応する2つのスライド軸受け305がガイドレール20bのガイド部20b−2,20b−4に接する。また、
図33のように、ガイドレール20aに対応する2つのスライド軸受け305がガイドレール20aのガイド部20a−2,20a−4に接する。また、
図34のように、ガイドレール20cに対応する1つのスライド軸受け305がガイドレール20cのガイド部20c−2に接する。
図43(a)は、キャッピング位置におけるスライド軸受け305とガイドレール20a,20b,20cとの位置関係を表す概念図である。このように、キャッピング位置においては、計5つのスライド軸受け305の全てがガイドレール20a,20b,20cのガイド部に接し、これらのスライド軸受け305を介してヘッドユニット300が位置決めされる。その際、それぞれのスライド軸受け305における溝部305aは、少なくとも一部がガイドレール20a,20b,20cのガイド部に接すればよく、他の部分は非ガイド部と対向してもよい。
【0049】
また、キャップからの力によるヘッドホルダ302の過度の撓みや傾きを防ぐために、
図43(b)のように、キャッピング位置において上側のスライド軸受け305と接するレール20aのガイド部20a−4の部分20a−5が矢印B2方向に大きくなっている。このように矢印B2方向に断面が大きくなっている部分20a−5によって、ヘッドユニット300の上部がB1方向に過度に撓んだり傾いたりすることがないように、ヘッドホルダ302を支えることができる。すなわち、部分20a−5は、ガイドレール20bに対応する2つのスライド軸受け305と共に、スライド軸受け305を介してヘッドホルダ302を支えることができ、これにより、安定したキャッピングを行うことができる。
【0050】
(4)記録位置
記録位置は、
図35,
図36,
図37のようにヘッド基準位置よりも3段階下の位置である。ヘッドホルダ302のセンサフラグ部302dによって遮光されているフォトセンサ606が透過状態となったときから、ヘッド昇降モータ118を所定数の駆動パルスで駆動することにより、ヘッドユニット300が記録位置に移動する。
【0051】
記録位置においては、記録精度を確保するために、ヘッドユニット300が搬送機構26(
図1参照)におけるロール紙Pの搬送面と所定の間隔を保つように、ヘッドユニット300を位置決めしなければならない。搬送機構26の具体的な構成例において、その搬送機構26は、
図38のように、搬送ローラを用いてロール紙Pを搬送する搬送ユニット800を構成している。また、この搬送ユニット800は、
図1における供給ユニット24としての機能を含む構成となっている、したがって、本例の場合には、ヘッドユニット300と搬送ユニット800の搬送面801との間を所定の間隔に保たなければならない。
【0052】
搬送ユニット800の搬送面801には、4つの凸部(第一突き当て部)801aが設けられている。また、ヘッドユニット300におけるヘッドホルダ302の底面の2箇所と、
図39のようにヘッドホルダ302に回動自在に取り付けられているブリッジ303の底面303a,303b(
図41参照)と、の計4箇所に第二突き当て部が形成されている。これらの第二突き当て部は、4つの凸部(第一突き当て部)801aの各々に対応する。
図39および
図40のように、これらの第二突き当て部に対して4つの凸部801aがそれぞれ当接することによって、ヘッドユニット300と搬送ユニット800の搬送面801との間が所定の間隔に保たれる。
【0053】
図41は、ヘッドホルダに取り付けられているブリッジの説明図である。
図41(a)はブリッジ303の斜視図である。
図41(b)は、ブリッジ303を
図41(a)のXLIaから見た図である。
図41(c)は、ブリッジ303を
図41(b)のXLIcから見た図である。
図41(d)は、ブリッジ303を
図41(a)のXLIdから見た図である。
【0054】
ブリッジ303は、B1方向に関してヘッドホルダ302の下流側に設けられている。なお、ブリッジ303に構成される2箇所の第二突き当て部以外の2箇所の第二突き当て部は、B1方向に関してヘッドホルダ302の上流側に設けられている。また、ブリッジ303の2箇所の第二突き当て部である底面303aと底面303bとは、搬送機構26におけるロール紙Pを搬送するための搬送面部の、搬送方向Aに関して交差する方向の両端部に設けられている。
図41のように、搬送方向Aに関して交差する方向におけるブリッジ303の中央部には回転支点303cが設けられている。搬送方向Aに関して交差する方向におけるヘッドホルダ302の底面の中央部は、ブリッジ303の回転支点303cに突き当たる。このような突き当たった状態において、ヘッドホルダ302に対してブリッジ303が回転支点303cを中心として揺動、あるいはブリッジ303に対してヘッドホルダ302が回転支点303cを中心として揺動する。これにより、4つの凸部801aがそれぞれの突き当て面に対してガタ付きなく突き当たる。
【0055】
ヘッドユニット300が記録位置に移動したときには、ヘッドユニット300に駆動力を伝達するナットユニット700の圧縮バネ706に与圧を与えることができるように、
図24(b)における隙間Gが小さくする。例えば、隙間Gを2.5mmから1mmに小さくして、圧縮バネ706に与圧を与える。このように圧縮バネ706に与圧を与えるように、ヘッドユニット300を記録位置に移動させるときのヘッド昇降モータ118の駆動パルス数が設定されている。記録位置においてリードスクリュー604が受ける力は、プランジャユニット650によって付勢されている力と同一方向(矢印C1方向)であるため、ヘッドユニット300を記録位置に正確に停止させることができる。
【0056】
記録位置においては、
図35のように、ガイドレール20bに対応する2つのスライド軸受け305の内、下側のスライド軸受け305はガイド部20b−1に接し、上側のスライド軸受け305は非ガイド部20c−12と対向する。また、記録位置においては、
図36のように、ガイドレール20aに対応する2つのスライド軸受け305の内、下側のスライド軸受け305はガイド部20a−1に接し、上側のスライド軸受け305は非ガイド部20a−12と対向する。また、記録位置においては、
図37のように、ガイドレール20cに対応する1つのスライド軸受け305はガイド部20c−1に接する。このように、記録位置においては、計5つのスライド軸受け305の内、3つのスライド軸受け305のそれぞれがガイドレール20a,20b,20cのガイド部に接し、他の2つのスライド軸受け305のそれぞれはガイドレール20a,20bに接しない。
図43(c)は、記録位置におけるスライド軸受け305とガイドレール20a,20b,20cとの位置関係を表す概念図である。このように、ヘッドユニット300は、3つのスライド軸受け305を介してガイドレール20a,20b,20cに位置決めされる。それらの3つのスライド軸受け305における溝部305aは、少なくとも一部がガイドレール20a,20b,20cのガイド部に接すればよく、他の部分は非ガイド部と対向してもよい。
【0057】
また、他の2つのスライド軸受け305がガイドレール20a,20bに接せずに拘束されないことにより、搬送ユニット800の搬送面801の4つの凸部801aに対して、それらに対応する突き当て面に確実が突き当たる。また、4つの凸部801aと対向するヘッドホルダ302の底面とブリッジ303の底面303a,303bの計4つの突き当て面は四角形を成し、その四角形の内側に、矢印C1,C2方向におけるナットユニット700の力線が位置する。そのため、それらの4つの突き当て面は、対応する4つの突部802aから浮くことなく、それらの突部802aに確実に突き当たって接地する。
【0058】
このように記録位置においては、3つのスライド軸受けが対応するガイドレールに接触し、一方、ヘッド基準位置、ワイピング位置、およびキャッピング位置においては、5つのスライド軸受けが対応するガイドレールに接触する。このように、ヘッドユニットの移動範囲内におけるヘッドユニットの複数の停止位置(ヘッド基準位置、ワイピング位置、キャッピング位置、および記録位置)の内、記録位置においてガイドレールに接触するスライド軸受けの数が最小となる。つまり、記録ヘッドを含むヘッドユニットが複数の停止位置のそれぞれに停止したときにおけるスライド軸受けとガイドレールとの互いの接触領域は、ヘッドユニットが記録位置に停止したときに最小となる。このように、記録位置においては、スライド軸受けとガイドレールとの接触によるヘッドユニットの拘束力を小さくして、ヘッドユニットを搬送ユニット側の凸部に突き当てることにより、ヘッドユニットを記録位置に確実に位置決めすることができる。
【0059】
以上のように、スライド軸受け305とガイドレール20a,20b,20cとによって、ヘッドユニット300を(1)ヘッド基準位置、(2)ワイピング位置、(3)キャッピング位置、および(4)記録位置に位置決めすることができる。また、ヘッドユニット300の昇降範囲(移動範囲)において、スライド軸受け305は、ガイドレール20a,20b,20cの非ガイド部と対向する位置を通過するため、ガイドレール20a,20b,20cに対して常に同じ状態では接触しない。このようにヘッドユニットの移動位置に応じて、ガイドレールに対するスライド軸受けの接触領域を変化させることにより、特に、スライド軸受けの摩耗を抑制して、その耐久性の向上および記録装置全体の低コスト化を実現することができる。
【0060】
(他の実施形態)
記録ヘッドの移動方向は、上述した実施形態のような昇降方向に限定されず、記録ヘッドと記録媒体との対向方向などに応じて任意に設定可能である。また、記録ヘッドの停止位置は、ヘッド基準位置、ワイピング位置、キャッピング位置、および記録位置に特定されず、少なくとも記録位置を含めばよい。記録ヘッドの停止位置は、記録ヘッドに対する種々の処理を実行するための位置として、任意に設定することができる。これらの停止位置以外における記録ヘッドの移動位置においては、記録ヘッドの高い位置決め精度が要求されない。したがって、それらの移動位置におけるガイドレールとスライド軸受との接触面積(接触量)を小さくすることにより、記録ヘッドに要求される高精度の位置決めを確保しつつ、スライド軸受けの磨耗を抑制することができる。
【0061】
また、スライド軸受けは、ガイドレールの長さ方向と直交する軸線を中心として回動自在に取り付けることにより、スライド軸受けの位置がガイドレールに対して追従することになり、記録ヘッドの移動をスムーズなものとすることができる。そのスライド軸受けの回動中心は、ガイドレールの長さ方向と直交する軸線であればよく、スライド軸受けとガイドレールとの接触面の形状などに応じて、適宜設定することができる。また、スライド軸受けは、記録ヘッドあるいは記録ヘッドを含むヘッドユニットに一体的に設けてもよい。
【0062】
なお、本明細書でいう「記録」(画像形成とも称する)は、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみに特定されない。例えば、有意無意を問わず、また人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成、または媒体の加工を行う場合も含むものである。
【0063】
また、「記録媒体」(シートとも称する)は、ロール紙だけでなくカット紙も含むものである。さらに、「記録媒体」は、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも含むものである。
【0064】
さらに、「インク」とは、上記「記録」の定義と同様に広く解釈されるべきものである。例えば、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成または記録媒体の加工、或いはインクの処理(例えば記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を含む。