特許第6291231号(P6291231)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6291231-防虫消臭剤 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6291231
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】防虫消臭剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/18 20060101AFI20180305BHJP
   A01N 25/34 20060101ALI20180305BHJP
   A01N 53/06 20060101ALI20180305BHJP
   A01N 53/10 20060101ALI20180305BHJP
   A01N 35/06 20060101ALI20180305BHJP
   A01N 27/00 20060101ALI20180305BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20180305BHJP
   C01B 39/14 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
   A01N25/18 102B
   A01N25/34 A
   A01N53/06 110
   A01N53/10 100
   A01N35/06
   A01N27/00
   A01P7/04
   C01B39/14
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-248208(P2013-248208)
(22)【出願日】2013年11月29日
(65)【公開番号】特開2015-105244(P2015-105244A)
(43)【公開日】2015年6月8日
【審査請求日】2016年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】714008950
【氏名又は名称】白元アース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100069903
【弁理士】
【氏名又は名称】幸田 全弘
(74)【代理人】
【識別番号】100101166
【弁理士】
【氏名又は名称】斎藤 理絵
(74)【代理人】
【識別番号】100157509
【弁理士】
【氏名又は名称】小塩 恒
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 圭介
【審査官】 水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−074765(JP,A)
【文献】 特開平11−332449(JP,A)
【文献】 特開2006−174805(JP,A)
【文献】 特開2003−183103(JP,A)
【文献】 特開2004−149370(JP,A)
【文献】 依田眞,技術開発ニュース,2004年,No. 110,29−30
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
A01P
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温揮散性防虫剤を保持する第1のシート状基材と、
消臭脱臭剤を含有する第2のシート状基材を有し、
前記消臭脱臭剤は、カルシウム、カリウムおよびナトリウムからなる群より選択される、少なくとも1種の金属カチオンを有する細孔径3〜10ÅのA型ゼオライトであり、
前記常温揮散性防虫剤は、ピレスロイド系防虫剤、ナフタレンおよび樟脳からなる群より選択される、少なくとも1種であり、
前記第2のシート状基材は、前記消臭脱臭剤を含有する、繊維状物質から形成されたものであること
を特徴とする防虫消臭剤。
【請求項2】
前記繊維状物質は、
その内部に、ゼオライト粒子が分散された状態にあること
を特徴とする請求項に記載の防虫消臭剤。
【請求項3】
前記繊維状物質は、
天然セルロース、再生セルロース、バクテリアセルロース、化学修飾セルロース、絹、羊毛、ポリアクリルアミド、麻、コラーゲンおよび木毛からなる群より選択される、少なくとも1種であること
を特徴とする請求項又はに記載の防虫消臭剤。
【請求項4】
前記繊維状物質は、
天然セルロースであること
を特徴とする請求項又はに記載の防虫消臭剤。
【請求項5】
前記ゼオライトは、
前記繊維状物質中で結晶化されていること
を特徴とする請求項〜4のいずれかに記載の防虫消臭剤。
【請求項6】
前記ゼオライトの細孔径は、
3〜4Åであること
を特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の防虫消臭剤。
【請求項7】
前記金属カチオンは、
ナトリウムであること
を特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の防虫消臭剤。
【請求項8】
前記第1のシート状基材は、
紙、織布、不織布、樹脂フィルム、及びこれらを積層したものから選択されること
を特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の防虫消臭剤。
【請求項9】
前記ピレスロイド系防虫剤は、
メトフルトリン、トランスフルトリン、プロフルトリン、及びエムペントリンから選択されること
を特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の防虫消臭剤。
【請求項10】
前記第1のシート状基材と前記第2のシート状基材は、
容器に収納されていること
を特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の防虫消臭剤。
【請求項11】
前記第1のシート状基材と第2のシート状基材は、
一つの容器内に区分けされて収納されていること
を特徴とする請求項10に記載の防虫消臭剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、防虫消臭剤に関するものである。
より具体的には、洋服タンス、引き出し、クローゼット、プラスチック製衣装ケースなどの収納空間に配置される防虫消臭剤であって、この収納空間内に収納される衣類などを防虫するとともに、収納空間の内部を消臭する防虫消臭剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、洋服タンス、引き出し、クローゼット、プラスチック製衣装ケースなどの収納空間内に収納される衣類などを防虫する防虫剤がある。
このような防虫剤として、防虫剤などの揮散性薬剤を不織布などのシート状基材に保持させたシート状の防虫剤がある。
【0003】
さらに、収納空間の内部を消臭する消臭剤として、消臭剤を、シート状基材に保持させたシート状の消臭剤がある。
【0004】
さらにまた、特許第3903232号公報(特許文献1)においては、
活性炭、シリカゲル、活性アルミナ、ゼオライト、セラミックから選ばれた1つ以上の組み合わせからなる消臭脱臭剤を、シート状基材に5〜200g/m担持させ、
このシート状基材とは別のシート状基材に、ピレスロイド系防虫剤を5〜300mg/m担持させ、
その各シート状基材を積層したこと
を特徴とする防虫消臭脱臭シートが提案されている。
【0005】
この防虫消臭脱臭シートは、防虫、消臭脱臭の両機能が、同時に発揮できるものとされている(段落0006)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3903232号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載された防虫消臭脱臭シートは、消臭脱臭剤が、対象臭気のみならず、防虫剤(ピレスロイド系防虫剤)も吸着してしまうため、防虫および消臭脱臭効果において不十分であるという問題があった。
【0008】
さらに、シート状基材に消臭脱臭剤を担持させるに際して、各種溶剤、バインダーおよび接着剤を使用した場合には、これらが消臭脱臭剤の表面に存在する微細な孔(細孔)を塞いでしまい、吸着性能を著しく阻害するという問題もあった。
【0009】
この発明はかかる現状に鑑み、防虫効果と消臭脱臭効果の両効果を、同時かつ十分に発揮できるシート状の防虫消臭剤を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、この発明にかかる請求項1に記載の発明は、
常温揮散性防虫剤を保持する第1のシート状基材と、
消臭脱臭剤を含有する第2のシート状基材を有し、
前記消臭脱臭剤は、カルシウム、カリウムおよびナトリウムからなる群より選択される、少なくとも1種の金属カチオンを有する細孔径3〜10ÅのA型ゼオライトであり、
前記常温揮散性防虫剤は、ピレスロイド系防虫剤、ナフタレンおよび樟脳からなる群より選択される、少なくとも1種であり、
前記第2のシート状基材は、前記消臭脱臭剤を含有する、繊維状物質から形成されたものであること
を特徴とする防虫消臭剤である。
【0011】
この発明の請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載の防虫消臭剤において、
前記繊維状物質は、
その内部に、ゼオライト粒子が分散された状態にあること
を特徴とするものである。
【0012】
この発明の請求項3に記載の発明は、
請求項1又は2に記載の防虫消臭剤において、
前記繊維状物質は、
天然セルロース、再生セルロース、バクテリアセルロース、化学修飾セルロース、絹、羊毛、ポリアクリルアミド、麻、コラーゲンおよび木毛からなる群より選択される、少なくとも1種であること
を特徴とするものである。
【0013】
この発明の請求項4に記載の発明は、
請求項又はに記載の防虫消臭剤において、
前記繊維状物質は、
天然セルロースであること
を特徴とするものである。
【0014】
この発明の請求項5に記載の発明は、
請求項〜4のいずれかに記載の防虫消臭剤において、
前記ゼオライトは、
前記繊維状物質中で結晶化されていること
を特徴とするものである。
【0015】
この発明の請求項6に記載の発明は、
請求項1〜5のいずれかに記載の防虫消臭剤において、
前記ゼオライトの細孔径は、
3〜4Åであること
を特徴とするものである。
【0016】
この発明の請求項7に記載の発明は、
請求項1〜6のいずれかに記載の防虫消臭剤において、
前記金属カチオンは、
ナトリウムであること
を特徴とするものである。
【0017】
この発明の請求項8に記載の発明は、
請求項1〜7のいずれかに記載の防虫消臭剤において、
前記第1のシート状基材は、
紙、織布、不織布、樹脂フィルム、及びこれらを積層したものから選択されること
を特徴とするものである。
【0018】
この発明の請求項9に記載の発明は、
請求項1〜のいずれかに記載の防虫消臭剤において、
前記ピレスロイド系防虫剤は、
メトフルトリン、トランスフルトリン、プロフルトリン、及びエムペントリンから選択されること
を特徴とするものである。
【0019】
この発明の請求項10に記載の発明は、
請求項1〜9のいずれかに記載の防虫消臭剤において、
前記第1のシート状基材と前記第2のシート状基材は、
容器に収納されていること
を特徴とするものである。
【0020】
この発明の請求項11に記載の発明は、
請求項10に記載の防虫消臭剤において、
前記第1のシート状基材と第2のシート状基材は、
一つの容器内に区分けされて収納されていること
を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
この発明の防虫消臭剤は、常温揮散性防虫剤を保持する第1のシート状基材と、消臭脱臭剤を含有する第2のシート状基材、好ましくは消臭脱臭剤を含有する繊維状物質から形成された第2のシート状基材から成るものであって、前記消臭脱臭剤として、特定のゼオライトを選択・使用している。
したがって、前記常温揮散性防虫剤を吸着することなく、カビ臭・汗臭などの対象臭気のみを吸着するので、防虫効果と消臭脱臭効果の両効果を同時かつ十分に発揮できる。
【0022】
特に、この発明の防虫消臭剤では、前記第2のシート状基材として、好ましくは前記消臭脱臭剤(ゼオライト)を含有する繊維状物質から形成され、前記繊維状物質の内部に前記消臭脱臭剤が分散した状態にあるものを選択・使用する。
したがって、この場合には、前記第2のシート状基材の調製に際して、各種溶剤や、バインダー、接着剤を使用しないか、又はその使用量を最小限に抑えることができるので、消臭脱臭剤の表面に存在する微細な孔(細孔)を塞いでしまい、吸着性能を著しく阻害するという問題がない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、この発明の防虫消臭剤の一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明にかかる防虫消臭剤を実施するための形態を、詳細に説明するが、この発明は、これらに限定されるものではない。
【0025】
この発明の防虫消臭剤1は、常温揮散性防虫剤を保持する第1のシート状基材2と、消臭脱臭剤を含有する第2のシート状基材3から構成されるものである。
【0026】
この発明において、前記第1のシート基材2に使用される基材としては、例えば、紙、織布、不織布、樹脂フィルム、及びこれらを積層したものが挙げられる。
【0027】
前記常温揮散性防虫剤としては、ピレスロイド系防虫剤、防虫効果のある植物精油、ナフタレン、樟脳又はパラジクロロベンゼンなどが挙げられる。
【0028】
前記ピレスロイド系防虫剤としては、
例えば、メトフルトリン、トランスフルトリン、プロフルトリン、アレスリン、dl・d−T80−アレスリン、d・d−T80−アレスリン、バイオアレスリン、フタルスリン、レスメトリン、d−T80−フラメトリン、ペルメトリン、フェノトリン、フェンバレレート、エスフェンバレレート、d・d−T80−プラレトリン、テフルスリン、シペルメトリン、シフェノトリン、フェンプロパトリン、フェンフルスリン、エムペントリン、テラレスリン、d−T80−フタルスリン、エトフェンプロックス、イミプロトリンなど
が挙げられる。
これらの中では、防虫効果に優れ、低汚染性で、薬効の持続性に優れるとともに、安全性にも優れていることから、メトフルトリン、トランスフルトリン及びプロフルトリン、エムペントリンが好ましい。
【0029】
前記防虫効果のある植物精油としては、
α−ピネン、オイゲノール、ツヨン、チモール、ヒノキチオール、シンナミックアルデヒドおよびヘキシルシンナムアルデヒドなどを成分とするものや、ナツメグ油、チョウジ油、セージ油、タイム油、ラベンダー油、バジル油、ヒノキ油など
が挙げられる。
【0030】
前記第1のシート状基材2に前記常温揮散性防虫剤を保持させる方法については、前記常温揮散性防虫剤の防虫成分の揮散性が損なわれない限り、特に制限はない。
例えば、前記常温揮散性防虫剤を、そのまま又は各種樹脂、バインダー、溶剤等と任意に組み合わせて、各種版を使った印刷、含浸、浸漬、スプレー塗布、滴下、基材への練り込み等の公知の方法によって基材に保持させることができる。
【0031】
なお、前記第1のシート状基材2には、さらに、この発明の目的及び効果である防虫および消臭脱臭効果を阻害しない範囲で、各種添加剤を任意に添加することができる。
かかる添加剤としては、例えば、効力増強剤、揮散率向上剤、安定化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、変色防止剤などを挙げることができる。
【0032】
前記第2のシート状基材3は、消臭脱臭剤を含有するものであって、好ましくは消臭脱臭剤を含有する繊維状物質から形成されたものである。
【0033】
この発明において、前記消臭脱臭剤として、細孔径3〜10Å、好ましくは3〜4Åであるゼオライトが選択される。
この発明では、このような特定のゼオライトを選択・使用するため、常温揮散性防虫剤が吸着されることなく、カビ臭の原因物質であるジェオスミン、2,4,6−トリクロロアニソール、2−メチルイソボルネオールなど、汗臭の原因物質である酢酸、アンモニア、イソ吉草酸などの対象臭気のみが吸着される。
【0034】
前記ゼオライトとして、好ましくはA型ゼオライトが選択される。
前記A型ゼオライトは、例えば、カルシウム、リチウム、カリウム、ナトリウムおよびマグネシウムなどの金属カチオンを有するものであってもよい。
【0035】
なお、前記金属カチオンの中には、例えば、銅などのように、前記常温揮散性防虫剤の薬剤安定性に影響を与えるものがある。
前記金属カチオンは、前記常温揮散性防虫剤の薬剤安定性への影響が少ないことから、好ましくはカルシウム、カリウムおよびナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種で、より好ましくはナトリウムである。
【0036】
銀イオン、銅イオンなど、金属イオンには、その抗菌効果によって、細菌の増殖による悪臭の発生を防止するものがあるので、この発明の防虫および消臭脱臭効果を損なわない範囲で、ゼオライトに前記金属イオンを担持させて、より高い抗菌効果および制臭効果を付与してもよい。
【0037】
この発明において、前記第2のシート基材3に使用される基材としては、例えば、紙、織布、不織布、樹脂フィルム、及びこれらを積層したものが挙げられる。
好ましくは、これらのうち、繊維状物質に包含されるものが選択される。
【0038】
この発明において、前記第2のシート状基材3に消臭脱臭剤として、前記特定のゼオライトを含有させる方法は、例えば、前記消臭脱臭剤を、そのまま又は各種樹脂、バインダー、溶剤等と任意に組み合わせて、各種版を使った印刷、含浸、浸漬、スプレー塗布、滴下、基材への練り込み等の公知の方法によって基材に保持させることができる。
なお、前記特定のゼオライトを含有する原料を用い、周知の抄紙方法やスパンレース、ニードルパンチ、エアレイドなどの公知の製法によって、紙、不織布などのシート状に形成する方法を採用することもできる。
【0039】
この発明において、前記第2のシート状基材3としては、前記消臭脱臭剤を含有する繊維状物質から形成されたものを選択することが好ましい。
【0040】
この発明において、前記繊維状物質として、
天然セルロース(パルプ、ケナフ、木綿、麻)、再生セルロース(セロハン、セルロースビーズ、レーヨン、セルローススポンジなど)、木綿、バクテリアセルロースおよびセルロースを化学修飾したエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体、更には絹、羊毛、麻、ポリビニルアルコール、架橋型ポリビニルアルコール、キチン、キトサン、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルホルマールなどの天然、あるいは人工の親水性高分子、ポリアクリルアミドなどの高吸水性高分子ゲル、コラーゲン、木毛など
が挙げられる。
【0041】
この発明において、前記繊維状物質に消臭脱臭剤として、前記特定のゼオライトを含有させる方法は各種溶剤や、バインダー、接着剤を使用しないか、又はその使用量を最小限に抑えることができるものである限り特に限定されない。
例えば、前記繊維状物質にゼオライト粒子を含浸、浸漬、練り込みなどにより分散させる方法などを採用することができる。
【0042】
このような方法によれば、各種溶剤やバインダー、接着剤を使用しないか、又はその使用量を最小限に抑えてゼオライトを保持したシート状基材が得られるため、シート状基材において、ゼオライトの細孔が各種溶剤や、バインダー、接着剤によって塞がれることによってゼオライトの吸着性能が阻害されるという問題がない。
【0043】
前記繊維状物質をシート状に形成して第2のシート状基材3を得る方法は、特に限定されない。
例えば、前記繊維状物質を用いて、周知の抄紙方法やスパンレース、ニードルパンチ、エアレイドなどの公知の製法によって、紙、不織布などのシート状に形成する方法を採用することができる。
前記消臭脱臭剤を含有する繊維状物質から形成された第2のシート状基材3としては、市販品を用いることもできる。
このような市販品として、レンゴー社製のセルガイア(登録商標)、凸版印刷社製のFS−ZEO(登録商標)、日本バイリーン社製の機能性粉体担持不織布などが挙げられる。
【0044】
この発明において、防虫消臭剤は、前記常温揮散性防虫剤の揮散終了ないし効力期間を目視で判るように、色調変化する等のインジケータ機能を有するものとしてもよい。
例えば、前記第1のシート状基材に、インジケータ機能を付与してもよいし、あるいは第1のシート状基材や第2のシート状基材とは別に、インジケータ機能を有する第3のシート状基材4を設けるようにしてもよい。
【0045】
この発明において、防虫消臭剤の製造に際しては、前記のシート状基材2,3を積層してもよい。
さらに、同一の容器5の同一の収納部に収納してもよく、同一の容器5の異なる収納部に、それぞれ収納してもよい。
なお、通気性の観点から、前記シート状基材2,3を、同一容器の異なる収納部にそれぞれ収納するのが好ましい。
前記容器5としては、プラスチック成形容器、紙器、袋状物などが挙げられる。
【実施例】
【0046】
以下、具体的な実施例及び製造例によって、この発明の防虫消臭剤をより詳細に説明する。
なお、この発明は、これらの実施例及び製造例に限定されるものではない。
【0047】
1)製造例;防虫消臭剤の製造
図1に示すように、常温揮散性防虫剤を紙に含浸して得た第1のシート状基材2、細孔径3〜4Åのゼオライトを含む繊維材料を、シート状に形成して得た第2のシート状基材3、インジケータ機能を有する第3のシート状基材4をプラスチック製の容器5で覆い、防虫消臭剤を製造した。
【0048】
2)評価例1;各種消臭脱臭剤の吸着量の確認
下記表1に示される各種常温揮散性防虫剤及び各種消臭脱臭剤を用いて、下記調製方法に基づいて試料を調製し、各種試料について、常温揮散性防虫剤及び消臭脱臭剤を共存させた場合に、消臭脱臭剤が常温揮散性防虫剤を吸着する量を、下記測定方法に基づいて測定した。
その結果を、表2に示す。
なお、表2において、実施例1の常温揮散性防虫剤の消臭脱臭剤への吸着量は、比較例1の常温揮散性防虫剤の消臭脱臭剤への吸着量を100としたときの相対値、実施例2の常温揮散性防虫剤の消臭脱臭剤への吸着量は、比較例2の常温揮散性防虫剤の消臭脱臭剤への吸着量を100としたときの相対値、実施例3の常温揮散性防虫剤の消臭脱臭剤への吸着量は、比較例3の常温揮散性防虫剤の消臭脱臭剤への吸着量を100としたときの相対値、実施例4の常温揮散性防虫剤の消臭脱臭剤への吸着量は、比較例4の常温揮散性防虫剤の消臭脱臭剤への吸着量を100としたときの相対値である。
【0049】
【0050】
3)調製方法
常温揮散性防虫剤50mg を30mm×30mmのパルプ紙に含浸させたものと、消臭脱臭剤(ゼオライト含有量500mg)とを、ガラス容器に入れ密封し、試料を調製した。
【0051】
4)測定方法
試料を温度50℃の環境下に3日間静置し、その後、消臭脱臭剤が含有している防虫成分量(防虫剤吸着量)をガスクロマトグラフィーにより定量し、消臭脱臭剤に吸着した常温揮散性防虫剤の吸着量を求めた。
【0052】
【表2】
【0053】
<結 果>
上記の結果から、いずれの常温揮散性防虫剤及び消臭脱臭剤の組み合わせにおいても、実施例におけるものの方が、比較例におけるものよりも防虫剤成分の消臭脱臭剤への吸着が少ないことが確認された。
したがって、この発明の防虫消臭剤は、常温揮散性防虫剤を保持する第1のシート状基材と、消臭脱臭剤を含有する第2のシート状基材を有するもの、すなわち、常温揮散性防虫剤及び消臭脱臭剤を共存させたものであるが、消臭脱臭剤として特定の細孔径を有するゼオライトが使用しているので、常温揮散性防虫剤が消臭脱臭剤に吸着されることなく、防虫効果を十分に発揮できることが分かる。
【0054】
5)評価例2;消臭性能の評価
NaA型ゼオライト(細孔径3〜4Å)担持パルプ紙(実施例5)を裁断して、このゼオライトを25mg含有する5cm角のパルプ紙を製造し、これを試料とした。
得られた試料を、5Lのテドラーバッグに入れた。
バッグ内に、対象臭気として汗臭の原因となる臭気ガスである酢酸又はアンモニアを入れ、経時でのバッグ内ガス濃度を、ガス検知管を用いて測定した。
なお、CuA型ゼオライト(細孔径3〜5Å)含有インクを塗布したパルプ紙(比較例5)を裁断して、このゼオライトを25mg含有する5cm角のパルプ紙を製造し、これを試料として、前記同様に、経時でのバッグ内ガス濃度を測定した。
その結果を表3及び4に示す。
【0055】
【表3】
【0056】
【表4】
【0057】
<結 果>
上記結果から、臭気ガスとして、酢酸又はアンモニアいずれを対象とした場合にも、実施例において使用した消臭脱臭剤の方が、比較例において使用した消臭脱臭剤よりも消臭性能が優れていることが確認された。
したがって、この発明の防虫消臭剤は、各種溶剤やバインダー、接着剤を使用することなくゼオライトを保持したシート状基材を使用しているので、ゼオライトの細孔が各種溶剤や、バインダー、接着剤によって塞がれることによってゼオライトの吸着性能が阻害されるという問題がなく、消臭効果を十分に発揮できることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
この発明の防虫消臭剤は、消臭脱臭剤として特定のゼオライトを選択するので、常温揮発性防虫剤を吸着することなく、対象臭気(カビ臭や、汗臭など)のみを吸着する。
したがって、防虫効果と消臭脱臭効果の両効果を同時かつ十分に発揮できるので、防虫消臭剤のさらなる普及を図ることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 防虫消臭剤
2 第1のシート状基材
3 第2のシート状基材
4 第3のシート状基材(インジケータ)
5 容器
図1