特許第6291237号(P6291237)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6291237
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】ボールペン
(51)【国際特許分類】
   B43K 7/00 20060101AFI20180305BHJP
【FI】
   B43K7/00 100
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-253946(P2013-253946)
(22)【出願日】2013年12月9日
(65)【公開番号】特開2015-112731(P2015-112731A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年9月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100118315
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 博道
(74)【代理人】
【識別番号】100120488
【弁理士】
【氏名又は名称】北口 智英
(72)【発明者】
【氏名】福本 剛生
【審査官】 吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−240189(JP,A)
【文献】 特開平11−034573(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01800893(EP,A1)
【文献】 国際公開第2008/105227(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 1/00−8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筆記ボールと、
先端をかしめたカシメ部により前記筆記ボールを保持するホルダーと、
前記ホルダーにインクを供給するインク供給部と、
前記インク供給部を内部に収納する軸本体と、
前記軸本体の先端に連設し、かつ、筆記時にホルダーが突出する先軸とを備え、
前記先軸は、鋸歯状に入り組んでいる前半部と後半部とが異なる材質の二色成形により形成されていることを特徴とするボールペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、描線の幅を変更可能なボールペンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボールペンのボールペン先端の傾動を可能とするボールペンに関する技術としては、特許文献1に示すように、軸筒本体と口先部材との間に弾性体を介在させ、筆記の際の力によって弾性体を撓ませて、ボールペン先端を傾動させるようにしたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−331789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された発明は、ボールペン先端の撓み量が軸筒本体と口先部材との間隙によって制限されることや、ゴム・エラストマー等の弾性体の変質により、がたつきや筆感の変化が生ずるという問題点があった。
そこで、本願発明は、筆記の際の力の入れ具合によって、ペン先部の撓み量が変化でき、がたつきの生ずることのなく、安定した筆感を得ることが可能なボールペンの提供を第1の課題とする。
また、筆記の際の力の入れ具合によって、顕著に描線の太さを変えることを可能とすべく、ボールペン先端の角度によって、1つの筆記先端で異なる太さの描線を筆記することを可能とするボールペンの提供を第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
各発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、以下の点を特徴とする。なお、符号は、発明の実施の形態において用いた符号を示し、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
(第1の発明)
本発明のうち第1の発明は、筆記ボール30と、先端をかしめたカシメ部23により筆記ボール30を保持するホルダー21と、ホルダー21にインクを供給するインク供給部40と、インク供給部40を内部に収納する軸本体11と、軸本体11の先端に連設し、かつ、筆記時にホルダー21が突出する先軸12とを備え、先軸12は、鋸歯状に入り組んでいる前半部15と後半部16とが二色成形により形成されていることを特徴とするボールペンである。
【0006】
軸本体11は、内部にインクを直接収容することが可能であってもよいし、インクが充填されたリフィルを内部に収容する構造であってもよい。インク供給部40は、コレクター41等の中間部材によって軸本体11に収容されたインクをホルダー21に供給するものであってもよいし、リフィル等の軸本体11とは別体のインク収容管に収容されたインクをホルダー21に供給するものであってもよい。
ホルダー21は、筆記時にその先端側が先軸12から露出し、後端側はこの先軸12の内部に位置してインク供給部40と連通している。ホルダー21の先端内部には図示しないボールハウスが形成され、このボールハウスに筆記ボール30が抱持されている。ホルダー21は、ステンレス鋼などの金属材料やポリアセタールなどの樹脂材料を切削加工や射出成形することにより形成することができる。
【0007】
本発明によれば、筆記の際の力の入れ具合によって、鋸歯状に入り組んでいる二色成形部分が撓むため、万年筆のような筆感を得ることができる。また、ボールペンチップ20とアウター60の構成は、ボールペン先端の角度によって、1つの筆記先端で異なる太さの描線を筆記することを可能にしている。したがって、筆記の際の力の入れ具合によって、ボールペン先端の筆記面に対する角度を微妙に調節することで、顕著に描線の太さを変えることができるとともに、筆跡の表現力を向上させることができる。
なお、ここで述べる二色成形とは2種類以上の部品を一体成形することを示し、同種材料同士の成形や、部品同士が接着しない多重成形で形成されることも含まれる。
【0008】
(第2の発明)
本発明のうち第2の発明は、第1の発明における二色成形を継手50に施したものである。すなわち、先軸12は、軸本体11に固定される継手50と、継手50に固定され、かつ、ホルダー21の外周を覆うアウター60とから構成され、継手50は、鋸歯状に入り組んでいる前半部15と後半部16とが二色成形により形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、第1の発明と同様に、筆記の際の力の入れ具合によって、筆記先端の筆記面に対する角度を微妙に調節することができるため、顕著に描線の太さを変えることができるとともに、筆跡の表現力も向上させることができる。
【0009】
(第3の発明)
本発明のうち第3の発明は、第2の発明において、継手50は、アウター60と一体形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、第1の発明と同様に、筆記の際の力の入れ具合によって、筆記先端の筆記面に対する角度を微妙に調節することができるため、顕著に描線の太さを変えることができるとともに、筆跡の表現力も向上させることができる。
(第4の発明)
本発明のうち第4の発明は、第2の発明において、継手50は、軸本体11と一体形成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、第1の発明と同様に、筆記の際の力の入れ具合によって、筆記先端の筆記面に対する角度を微妙に調節することができるため、顕著に描線の太さを変えることができるとともに、筆跡の表現力も向上させることができる。
(第5の発明)
本発明のうち第5の発明は、前記の特徴に加えて、インク供給部40とホルダー21との間には内部継手14が介在していることを特徴とする。
ホルダー21はインク供給部40に直接接続されていてもよいが、内部継手14を介在させることは、特に、ホルダー21とインク供給部40との径の差が大きいときに有効となる。
【発明の効果】
【0011】
本願発明は、上述のように構成されているので、筆記の際の力の入れ具合によって、鋸歯状に入り組んでいる二色成形部分を撓ませることができ、万年筆のような筆感を得ることができる。
また、ボールペン先端の角度によって、1つの筆記先端で異なる太さの描線を筆記することができる。したがって、筆記の際の力の入れ具合によって、ボールペン先端の筆記面に対する角度を微妙に調節することで、描線の太さを変えることができるため、「トメ」「ハネ」「ハライ」を容易かつ高品位で筆記することができ、筆跡の表現力も向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施の形態のボールペンの(A)正面図及び(B)縦断面図である。
図2】第1の実施の形態のボールペンの先端部の縦断面図である。
図3】第1の実施の形態のボールペンに用いられる継手の(A)斜視図及び(B)縦断面図である。
図4】第1の実施の形態のボールペンの先軸の斜視図である。
図5】本発明の第2の実施の形態のボールペンの(A)正面図及び(B)縦断面図である。
図6】第2の実施の形態のボールペンの先端部の縦断面図である。
図7】第2の実施の形態のボールペンに用いられる継手及びアウターの後半部の(A)斜視図及び(B)縦断面図である。
図8】第2の実施の形態のボールペンに用いられる継手及びアウターの(A)斜視図及び(B)縦断面図である。
図9】第2の実施の形態のボールペンの先軸の斜視図である。
図10】本発明の第3の実施の形態のボールペンの(A)正面図及び(B)縦断面図である。
図11】第3の実施の形態のボールペンの先端部の縦断面図である。
図12】第3の実施の形態のボールペンに用いられる軸本体及び継手の縦断面図である。
図13】第3の実施の形態のボールペンの先軸の斜視図である。
図14】本発明に係るボールペンで筆記した文字と従来の筆記具で筆記した文字である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を、第1、第2及び第3の実施の形態に分けて説明する。なお、本明細書において、ボールペン1及びその構成部品についての「前方」とは筆記ボール30をボールペン1の先端とした場合の先端側をいい、「後方」とはその反対側をいうものとする。
(第1の実施の形態)
本実施の第1の形態に係るボールペン1の外観を図1(A)に示す。このボールペン1は、図1(B)及び図2に示すように、筆記ボール30及び先端をかしめたカシメ部23により筆記ボール30を保持するホルダー21を有するボールペンチップ20と、ボールペンチップ20のホルダー21にインクを供給するインク供給部40と、インク供給部40を内部に収納する軸筒10とを備えている。
【0014】
軸筒10は、図1(B)に示すように、インク収容部13を備えた軸本体11と、軸本体11の先端に設けられた先軸12とからなる。先軸12は、軸本体11の先端部に固定される継手50と、継手50に固定されるアウター60とから構成されている。また、先軸12内部には、インク供給部40とボールペンチップ20とをつなぐ内部継手14が内蔵されている。さらに、前記インク収容部13には、図示しないインクが充填されている。
インク供給部40は、図1(B)に示すように、複数のフィンが外周に形成された略筒状のコレクター41と、コレクター41の先端を縮径して形成された先端保持部42と、この先端保持部42の先端に装着されたゴム弾性材料からなる先端コマ44とを有する。コレクター41の後端部はインク収容部13と接している。図2に示すように、先端コマ44には、後方内部に先端保持部42が、前方内部に内部継手14が嵌入されている。コレクター芯43は、棒状のポリエステルファイバーから形成されており、その後端側はインク収容部13内に突出しており(図1(B)参照)、その中央部はコレクター41と先端保持部42と先頭コマ44を軸方向に貫通し、その先端側は、内部継手14の後端部から内部継手14のほぼ半分の位置まで挿入されている。
【0015】
ボールペンチップ20は、図2に示すように、円筒形のホルダー21と、ホルダー21に保持される筆記ボール30とを備えている。ホルダー21の先端側には、先端に向かって先細となる略円錐状のテーパー部22が形成されているとともに、テーパー部22の小口を内方に押圧して縮径変形されたカシメ部23が形成されている。そして、テーパー部22の内側に抱持される筆記ボール30の先端部が、カシメ部23の先端縁から露出するようになっている。ホルダー21はステンレス鋼などの金属製やポリアセタールなどの樹脂製のパイプ材を加工して形成することができる。また、ホルダー21の内部には、ホルダー21の後端部から突出する棒状の中芯25が挿入されている。中芯25はコレクター芯43と同様にポリエステルファイバーにより形成され、その後端はコレクター芯43の先端部に嵌め込まれるとともに、その先端は筆記ボール30の直後に達しており、コレクター芯43に浸透したインクを吸収して筆記ボール30にインクを供給する。さらに、ボールペンチップ20は、後端側からほぼ2/3程度が内部継手14に嵌入された状態で、内部継手14に保持される。
【0016】
なお、コレクター芯43及び中芯25は、使用するインクの粘度等の性状に応じて、適切なポリエステルファイバーの気孔率や表面形状を選択して形成される。
継手50は、円筒状の継手固定部51と継手固定部51に連設する略円錐形状の継手テーパー部52から構成される合成樹脂製の部品である。また、継手50は、後端から先端に向けて孔が形成されており、継手固定部51の内面には後方挿入孔53が設けられ、継手テーパー部52の中央付近の内面には、後方挿入孔53よりも小径の中央挿入孔54が設けられ、継手テーパー部52の先端付近の内面には、中央挿入孔54とほぼ同径の先方挿入孔55が設けられている。
【0017】
また、継手50は二次成形により形成された部品であり、図3(A)及び(B)に示すように、一次成形体である後半部16と二次成形体である前半部15とが鋸歯状に入り組むように形成されている。ここで、後半部16は、継手固定部51の後端から先方挿入孔55の後方側約1/3までの部分と、この部分の先端から継手テーパー部52の略中央にかけての外周部8箇所に等配された後半凹部16bとから構成されている。なお、隣り合う後半凹部16bの間は、後半突出部16aとなっている。前半部15は、継手テーパー部52の先端から先方挿入孔55の前方側約2/3までの部分である環状部15bと、環状部15bから後方に向けて延出し、かつ、後半凹部16bに対応するように形成された前半突出部15aとから構成されている。そして、後半突出部16aと、後半凹部16bに収まる前半突出部15aとが互い違いに入り組むように接合することで、前半部15と後半部16は一体化される。
【0018】
なお、撓りを得るべく、二次成形体である前半部15は熱可塑性エラストマーを使用することが望ましい。
図1(B)及び図2に示すように、この継手50には、後方からインク供給部40とインク供給部40に嵌入された内部継手14が挿入される。この際、後方挿入孔53には先端コマ44が嵌入されており、中央挿入孔54には内部継手14が挿入されている。そして、継手固定部51が、軸本体11の先端付近の内面に嵌入されることで、継手50は、軸本体11に固定される。
アウター60は、図2に示すように、円筒状のアウター固定部61と、このアウター固定部61に連設する略円錐形状のアウターテーパー部62とから構成された合成樹脂製の部品である。アウターテーパー部62の先端には面取りされたアウター先端部66が設けられている。また、アウター60には、後端から先端に向けて孔が形成されており、アウター固定部61の内面には後部挿入孔63が設けられ、アウターテーパー部62の先端付近の内面には、後部挿入孔63よりも小径の前部挿入孔64が設けられている。アウター固定部61は、継手50の前方挿入孔55に嵌入されることで、継手50に固定される。そして、アウター60は、ボールペンチップ20に覆い被さる。この際、後部挿入孔63には内部継手14の先端部が挿入され、前部挿入孔64には、内部継手14から突出しているボールペンチップ20が嵌入される。アウター60の先端付近は、図4に示すように、筆記ボール30と、筆記ボール30を覆うカシメ部23と、アウター先端部66のみが露出しており、筆記ボール30とアウター先端部66が同時に筆記面に当接した場合、筆記面と、筆記ボール30と、カシメ部23と、アウター先端部66に囲まれた部分に空間が生じるように配置されている。
【0019】
このボールペン1は、前半部15と後半部16との接合部付近が変形し、継手50が撓りやすい構造となっているため、筆記の際の力の入れ具合によって、アウター60を軸本体11の中心軸から傾けることができる。そのため万年筆のような筆感を得ることができる。
また、アウター60を軸本体11の中心軸から傾けることで、筆記ボール30とアウター先端部66が筆記面に当接すれば、筆記面と、筆記ボール30と、カシメ部23と、アウター先端部66に囲まれた空間に、筆記ボール30の表面に付着しているインクや、筆記ボール30の回転に伴い図示しないボールハウスから流出するインクが、毛細管現象により拡散される。したがって、筆記ボール30によって描かれる線よりも太い線を描くことが可能となる。すなわち、継手50の撓みにより、筆記先端の筆記面に対する角度を微妙に調節することできるため、描線の太さを変えることができる。
【0020】
(第2の実施の形態)
本実施の第2の形態に係るボールペン1の外観を図5(A)に示す。第2の実施の形態は、継手50及びアウター60とを一体に成形したものである。なお、第2の実施の形態は、先軸12の構造が第1の実施の形態と相違するものの、その他については第1の実施の形態と同様であるので、相違点についてのみ説明する。
継手50及びアウター60は合成樹脂製の部品である。図6に示すように、継手50は、円筒状の継手固定部51と、継手固定部51に連設する栽頭円錐形状の継手テーパー部52とから構成されており、アウター60は、継手テーパー部52に連接し、継手テーパー部52に対し、テーパー角度を大きくした略円錐形状のアウターテーパー部62から構成されている。また、継手50には、後端から先端に向けて孔が形成されており、継手固定部51の内面には後方挿入孔53が設けられ、継手テーパー部52の先端付近の内面には、後方挿入孔53よりも小径の中央挿入孔54が設けられている。アウター60には、継手50から連続する孔が形成されており、アウターテーパー部62の後端付近の内面には、中央挿入孔54より小径の後部挿入孔63が設けられ、アウターテーパー部62の先端付近の内面には、後部挿入孔63よりも小径の前部挿入孔64が設けられている。アウターテーパー部62の先端部には面取りされたアウター先端部66が設けられている。
【0021】
さらに、継手50及びアウター60は二次成形により形成された部品であり、一次成形体である後半部16と二次成形体である前半部15とが鋸歯状に入り組むように形成されている。ここで、後半部16は、図7(A)及び(B)に示すように、継手固定部51の後端から継手テーパー部52の後方側略半分までの部分と、継手テーパー部52の略半分の位置から継手テーパー部52の先端に向けて延出し、軸心に対して3箇所に等配されている後半突出部16aと、後半突出部16aの先端に形成されているリング状のリング部16cとから構成されている。前半部15は、図8(A)及び(B)に示すように、アウターテーパー部62と、アウターテーパー部62の後端付近から継手テーパー部52の略半分の位置に向けて延出し、軸心に対して3箇所に等配されている前半突出部15aとから構成されている。そして、後半突出部16aと前半突出部15aとが互い違いに入り組むように接合することで、前半部15と後半部16は一体化される。また、リング部16cが前半部15内に入り込んでいるため、前半部15と後半部16とを接着しない二色形成で形成しても後半部16が前半部15から脱落しないようになっている。
【0022】
5(B)及び図6に示すように、この継手50には、後方からインク供給部40とインク供給部40に嵌入された内部継手14が挿入される。この際、後方挿入孔53には先端コマ44が嵌入され、中央挿入孔54及び後部挿入孔63には内部継手14が挿入され、前部挿入孔64には、内部継手14から突出しているボールペンチップ20が嵌入される。そして、継手固定部51が、軸本体11の先端付近の内面に嵌入されることで、継手50は軸本体11に固定される。
一方、アウター60の先端部分は、ボールペンチップ20に覆い被さっている。そして、図9に示すように、アウター60の先端付近は、筆記ボール30と、筆記ボール30を覆うカシメ部23と、アウター先端部66のみが露出しており、筆記ボール30とアウター先端部66が同時に筆記面に当接した場合、筆記面と、筆記ボール30と、カシメ部23と、アウター先端部66に囲まれた部分に空間が生じるように配置されている。
【0023】
このボールペン1は、前半部15と後半部16との接合部付近が変形し、一体に成形された継手50及びアウター60が撓りやすい構造となっているため、筆記の際の力の入れ具合によって、前半部15を軸本体11の中心軸から傾けることができる。そのため万年筆のような筆感を得ることができる。
また、アウター60を軸本体11の中心軸から傾けることで、筆記ボール30とアウター先端部66が筆記面に当接すれば、筆記面と、筆記ボール30と、カシメ部23と、アウター先端部66に囲まれた空間に、筆記ボール30の表面に付着しているインクや、筆記ボール30の回転に伴い図示しないボールハウスから流出するインクが、毛細管現象により拡散される。したがって、筆記ボール30によって描かれる線よりも太い線を描くことが可能となる。すなわち、継手50の撓みにより、筆記先端の筆記面に対する角度を微妙に調節することできるため、描線の太さを変えることができる。
【0024】
(第3の実施の形態)
本実施の第3の形態に係るボールペン1の外観を図10(A)に示す。第3の実施の形態は、継手50及び軸本体11とを一体に成形したものである。なお、第3の実施の形態は、先軸12の構造が第1の実施の形態と相違するものの、その他については第1の実施の形態と同様であるので、相違点についてのみ説明する。
継手50及び軸本体11は、合成樹脂製の部品であり、図11に示すように、軸本体11の先端部分に形成された軸筒テーパー部17と、この軸筒テーパー部17に連接し、軸筒テーパー部17に対し、テーパー角度を大きくした略円錐状の継手テーパー部52とから構成されている。継手テーパー部52の内面には中央挿入孔54が形成されている。
【0025】
また、継手50及び軸本体11は二次成形により形成された部品であり、図12及び13に示すように、一次成形体である後半部16と二次成形体である前半部15とが鋸歯状に入り組むように形成されている。ここで、後半部16は、軸本体11のうち軸筒テーパー部17から後方の部分と、軸筒テーパー部17の先端に連設される筒状の接続部16dと、軸筒テーパー部17の先端から軸本体11の前方側約1/5にかけての外周部4箇所に等配された後半凹部16bとから構成されている。なお、隣り合う後半凹部16bの間は、後半突出部16aとなっている。前半部15は、継手テーパー部52と、継手テーパー部52の後端から後方に向けて延出し、かつ、後半凹部16bに対応するように形成された前半突出部15aとから構成されている。そして、後半突出部16aと、後半凹部16bに収まる前半突出部15aとが互い違いに入り組むように接合することで、前半部15と後半部16は一体化される。
【0026】
なお、撓りを得るべく、二次成形体である前半部15は熱可塑性エラストマー等のゴム弾性材料を使用することが望ましい。
図10(B)及び図11に示すように、この継手50には、後方からインク供給部40とインク供給部40に嵌入された内部継手14が挿入される。この際、中央挿入孔54には内部継手14が挿入されている。
アウター60は、図11に示すように、円筒状のアウター固定部61と、このアウター固定部61に連設する略円錐形状のアウターテーパー部62とから構成された合成樹脂製の部品である。アウターテーパー部62の先端には面取りされたアウター先端部66が設けられている。また、アウター60には、後端から先端に向けて孔が形成されており、アウター固定部61の内面には後部挿入孔63が設けられ、アウターテーパー部62の先端付近の内面には、後部挿入孔63よりも小径の前部挿入孔64が設けられている。アウター固定部61は、継手50の中央挿入孔54に嵌入されることで、継手50に固定される。そして、アウター60は、ボールペンチップ20に覆い被さる。この際、後部挿入孔63には内部継手14の先端部が挿入され、前部挿入孔64には、内部継手14から突出しているボールペンチップ20が嵌入される。アウター60の先端付近は、図13に示すように、筆記ボール30と、筆記ボール30を覆うカシメ部23と、アウター先端部66のみが露出しており、筆記ボール30とアウター先端部66が同時に筆記面に当接した場合、筆記面と、筆記ボール30と、カシメ部23と、アウター先端部66に囲まれた部分に空間が生じるように配置されている。
【0027】
このボールペン1は、前半部15と後半部16との接合部付近が変形し、軸本体11の前方及び継手50が撓りやすい構造となっているため、筆記の際の力の入れ具合によって、アウター60を軸本体11の中心軸から傾けることができる。そのため万年筆のような筆感を得ることができる。
また、アウター60を軸本体11の中心軸から傾けることで、筆記ボール30とアウター先端部66が筆記面に当接すれば、筆記面と、筆記ボール30と、カシメ部23と、アウター先端部66に囲まれた空間に、筆記ボール30の表面に付着しているインクや、筆記ボール30の回転に伴い図示しないボールハウスから流出するインクが、毛細管現象により拡散される。したがって、筆記ボール30によって描かれる線よりも太い線を描くことが可能となる。すなわち、継手50の撓みにより、筆記先端の筆記面に対する角度を微妙に調節することできるため、描線の太さを変えることができる。
【0028】
(他の筆記具との比較例)
図14は、ボールペン、サインペン、万年筆と、本発明に係るボールペン1で筆記した筆跡である。本発明に係るボールペン1で筆記した筆跡は、ボールペン、サインペン、万年筆と比べ、画の終わりである「トメ」α、「ハネ」β及び「ハライ」γを容易かつ高品位で筆記することができる。
このように、上述した第1、第2及び第3の実施の形態においては、前半部15と後半部16との接合部付近の変形によって、アウター60を撓ませることができ、筆記の際の力の入れ具合によって、万年筆のような筆感を得ることができる。
【0029】
また、ボールペンチップ20とアウター60の構成は、ボールペン先端の角度によって、1つの筆記先端で異なる太さの描線を筆記することを可能にしている。したがって、筆記の際の力の入れ具合によって、ボールペン先端の筆記面に対する角度を微妙に調節することで、描線の太さを変えることができるとともに、筆跡の表現力も向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
この発明は、ボールペンなどの筆記具に利用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 ボールペン
10 軸筒 11 軸本体 12 先軸
13 インク収容部 14 内部継手 15 前半部
15a 前半突出部 15b 環状部 16 後半部
16a 後半突出部 16b 後半凹部 16c リング部
16d 接続部 17 軸筒テーパー部
20 ボールペンチップ 21 ホルダー 22 テーパー部
23 カシメ部 25 中芯
30 筆記ボール
40 インク供給部 41 コレクター 42 先端保持部
43 コレクター芯 44 先端コマ
50 継手 51 継手固定部 52 継手テーパー部
53 後方挿入孔 54 中央挿入孔 55 前方挿入孔
60 アウター 61 アウター固定部 62 アウターテーパー部
63 後部挿入孔 64 前部挿入孔 66 アウター先端部
図1
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図14