特許第6291241号(P6291241)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6291241
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 33/02 20060101AFI20180305BHJP
【FI】
   D06F33/02 K
   D06F33/02 P
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-256908(P2013-256908)
(22)【出願日】2013年12月12日
(65)【公開番号】特開2015-112316(P2015-112316A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年11月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西岡 由行
(72)【発明者】
【氏名】石川 則彦
【審査官】 村山 睦
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−299290(JP,A)
【文献】 特開平08−224395(JP,A)
【文献】 特開昭57−029398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水が溜められる外槽と、
上記外槽内に回転可能に設けられ、収容された洗濯物を遠心脱水する回転槽と、
を備えた洗濯機であって、
さらに、
外槽内の水を循環させる循環ポンプと、
外槽内の水位を検出する水位センサと、
回転槽の脱水運転を制御する制御部と、
を備え、
上記制御部は、循環ポンプの作動による外槽内の水位の変化に応じて、脱水運転を制御するように構成されるとともに、
さらに、上記制御部は、回転槽内の水の撹拌が停止した後、排水が開始されるまでの間に、循環ポンプを作動させ、上記水位の変化を検出するように構成されたことを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
水が溜められる外槽と、
上記外槽内に回転可能に設けられ、収容された洗濯物を遠心脱水する回転槽と、
を備えた洗濯機であって、
さらに、
外槽内の水を循環させる循環ポンプと、
外槽内の水位を検出する水位センサと、
回転槽の脱水運転を制御する制御部と、
を備え、
上記制御部は、循環ポンプの作動による外槽内の水位の変化に応じて、脱水運転を制御するように構成されるとともに、
さらに、上記制御部は、
上記水位の変化が所定の閾値以上の場合に、制限された回転速度で脱水運転させる制御、
上記水位の変化が所定の閾値以下の場合に、通常の回転速度で脱水運転させる制御、および
上記水位の変化が所定の閾値以上の場合に、ユーザへの報知を行う制御のうち少なくとも1つを行うように構成されていることを特徴とする洗濯機。
【請求項3】
請求項2の洗濯機であって、
上記制御部は、回転槽内の水の撹拌が停止した後、排水が開始されるまでの間に、循環ポンプを作動させ、上記水位の変化を検出するように構成されたことを特徴とする洗濯機。
【請求項4】
請求項2の洗濯機であって、
上記制御部は、回転槽内の水の撹拌中に、循環ポンプを作動させ、上記水位の変化を検出するように構成されたことを特徴とする洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水性の洗濯物の有無等に応じて脱水行程が適切に行われるように制御する洗濯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
洗濯槽を高速回転させて遠心力により洗濯物の脱水を行う洗濯機では、洗濯物の中に防水性の洗濯物が含まれていると、脱水時に防水性の洗濯物に封じられた水の移動によってアンバランスが生じ、大きな振動が発生したりすることがある。そこで、脱水行程前の排水に要する時間を検出し、その検出結果に応じて洗濯機の運転を停止させたりする技術が提案されている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−98989号公報
【特許文献2】特開2001−104680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、洗濯槽内に防水性の洗濯物が入っている場合、その防水性の洗濯物の塊具合や姿勢などは種々に異なる状態をとり、それに応じて、洗濯槽内の水の排水に要する時間は種々に変動する。例えば、防水性の洗濯物が水を溜め込んでいる場合には、その溜め込んでいる水の分だけ排水時間が短くなる一方、防水性の洗濯物が排水路を部分的に塞いでいる場合には、逆に排水時間は長くなる。そのため、上記のように排水時間を検出しても、必ずしも防水性の洗濯物の有無等に応じて脱水行程を適切に行わせることは容易でないという課題を有していた。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、防水性の洗濯物の有無等に応じて脱水行程が適切に行われるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、
水が溜められる外槽と、
上記外槽内に回転可能に設けられ、収容された洗濯物を遠心脱水する回転槽と、
を備えた洗濯機であって、
さらに、
外槽内の水を循環させる循環ポンプと、
外槽内の水位を検出する水位センサと、
回転槽の脱水運転を制御する制御部と、
を備え、
上記制御部は、循環ポンプの作動による外槽内の水位の変化に応じて、脱水運転を制御するように構成されたことを特徴とする。
【0007】
これにより、回転槽内の洗濯物に防水性の洗濯物が含まれていない場合には、循環ポンプが作動したとしても、外槽の底部から吸い込まれる水の量と、外槽内に戻される水の量は等しいので、循環ポンプの作動時間を通じて、水位差は生じない一方、回転槽内の洗濯物に防水性の洗濯物布が含まれていて、その内部に循環ポンプによって供給される水が溜まる場合には、防水性の洗濯物内の水位は上昇するが、外槽内の水位は、循環ポンプの作動に伴って低下するので、防水性の洗濯物の有無に応じた脱水行程の制御を適切に行うことができる。
【0008】
第2の発明は、
第1の発明の洗濯機であって、
上記制御部は、回転槽内の水の撹拌が停止した後、排水が開始されるまでの間に、循環ポンプを作動させ、上記水位の変化を検出するように構成されたことを特徴とする。
【0009】
これにより、上記水位の変化を検出するのにあたって、回転槽内の水の撹拌による水位変動の影響を回避することができる。
【0010】
第3の発明は、
第1の発明の洗濯機であって、
上記制御部は、回転槽内の水の撹拌中に、循環ポンプを作動させ、上記水位の変化を検出するように構成されたことを特徴とする。
【0011】
これにより、洗濯行程中や濯ぎ行程中の後に上記水位の変化を検出する時間を要しないので、洗濯全体に要する時間を短縮することが容易になる。
【0012】
第4の発明は、
第1の発明から第3の発明のうち何れか1つの洗濯機であって、
上記制御部は、上記水位の変化が所定の閾値以上の場合に、制限された回転速度で脱水運転させるように構成されたことを特徴とする。
【0013】
これにより、回転のアンバランスによって大きな振動が発生するのを防止しつつ、少なくともある程度の脱水をすることができる。
【0014】
第5の発明は、
第1の発明から第4の発明うち何れか1項の洗濯機であって、
上記制御部は、上記水位の変化が所定の閾値以下の場合に、通常の回転速度で脱水運転させるように構成されたことを特徴とする。
【0015】
これにより、従来であれば防水性の洗濯物が検知されて脱水行程を中止していたような場合でも、脱水を完了させることができる。
【0016】
第6の発明は、
第1の発明から第5の発明のうち何れか1つの洗濯機であって、
上記制御部は、上記水位の変化が所定の閾値以上の場合に、ユーザへの報知を行うように構成されていることを特徴とする。
【0017】
これにより、ユーザに、防水性の洗濯物が含まれていることを示すメッセージや、それによって低回転で脱水が行われたこと(脱水程度が通常より低いこと)を示すメッセージ、防水性の洗濯物は含めないことを推奨するメッセージなどを伝えることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、防水性の洗濯物の有無等に応じて脱水行程が適切に行われるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態の洗濯機の模式的構成を示す縦断面図である。
図2】実施形態の洗濯機の動作を示すフローチャートである。
図3】実施形態の洗濯機で防水性布がない場合の水位変化を示すグラフである。
図4】実施形態の洗濯機で防水性布がある状態の例を示す縦断面図である。
図5】実施形態の洗濯機で防水性布がある場合の水位変化を示すグラフである。
図6】実施形態の洗濯機で防水性布がある状態の他の例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(洗濯機の構成)
本発明の実施形態に係る洗濯機は、図1に示すように、水が溜められる外槽101と、その内部で鉛直軸回りに回転可能に設けられた回転槽102とを有している。回転槽102の底部には、回転槽102内の水を洗濯物とともに撹拌するパルセータ103が設けられている。上記回転槽102、およびパルセータ103は、それぞれ図示しないクラッチの切替を介して、モータ104により回転駆動されるようになっている。
【0021】
外槽101の底部には、循環ポンプ105が設けられ、外槽101内の水を循環水路106からノズル107を介して循環させるようになっている。外槽101の底部には、また、水位検出ホース108が取り付けられ、その上部に設けられた水位センサ109によって、外槽101内の水の水位が検出されるようになっている。なお、水位を検出する方法は特に限定されず、例えば圧力に応じた発振周波数の変化によって検出するものなどを用いることができる。
【0022】
制御部110は、洗濯機全体の動作を制御するもので、例えば、水位センサ109の検出結果に応じて、モータ104や循環ポンプ105の作動を制御するようになっている。具体的な制御内容については、以下に詳述する。
【0023】
(洗濯機の動作)
以下、主として脱水に関連する動作について、図2に基づいて説明する。
【0024】
(S101) まず、洗濯行程、または濯ぎ行程が行われる。具体的には、回転槽102内に洗濯物が収容された状態で、外槽101内に洗剤を含む水、または濯ぎ用の水が溜められ、パルセータ103が回転する。また、必要に応じて循環ポンプ105によって外槽101内の水が循環させられる。
【0025】
(S102) 次に、脱水行程前かどうか、すなわち洗濯行程または濯ぎ行程を終了するタイミングかどうかが判断され、終了するタイミングでなければ、上記(S101)が続行される。
【0026】
(S103) 一方、脱水行程前と判断されると、循環ポンプ105が作動するとともに、その時点での外槽101内の水位が水位センサ109によって検出され、水位データW1として取得される。
【0027】
(S104) また、循環ポンプ105が1分間作動した後に、再度外槽101内の水位が検出されて水位データW2として取得され、循環ポンプ105が停止される。
【0028】
(S105) そこで、水位差WDa=W2−W1が算出される。
【0029】
(S106) 次に、上記水位差WDaが所定の閾値(例えば−60mm)以下かどうかが判定される。すなわち、回転槽102内の洗濯物に防水性の洗濯物が含まれていない場合には、循環ポンプ105が作動したとしても、外槽101の底部から吸い込まれる水の量と、ノズル107から外槽101内に戻される水の量は等しいので、例えば図3に示すように循環ポンプ105の作動時間を通じて、水位差WDaは、ほとんど0になる。一方、例えば図4に示すように、回転槽102内の洗濯物に防水性布201が含まれていて、その内部にノズル107から供給される水が溜まる場合には、防水性布201内の水位aは上昇するが、外槽101内の水位bは、循環ポンプ105の作動に伴って低下する。すなわち、水位センサ109によって検出される水位は、図5に示すように徐々に低下する。そこで、例えば水位差WDaが−60mm以下(水位差の絶対値、または水位の低下量が60mm以上)であれば、図4に示すような防水性布201が存在することを検知することができる。また、例えば図6に示すように、防水性布201が通常の洗濯物に取り囲まれている場合などのように、防水性布201が排水路を塞がないために排水に要する時間によって防水性布201の存在を検出することが困難な場合でも、防水性布201内に溜まる水の量に応じて水位の変化が生じるので、より確実な検出が可能になる。
【0030】
ここで、図3、および図5に示された全時間範囲の水位の変化について説明すると、循環ポンプ105の作動開始の約40秒前までは、洗濯または濯ぎの水流の影響によって水位が変動し、その後、循環ポンプ105の作動開始までの間は、回転槽102内の洗濯物をほぐして回転のアンバランスを低減するために回転槽102を緩やかに回転させることによる水位変動が生じていることを示している。その後、循環ポンプ105の作動中は、上記のように防水性布201の有無に応じて水位は一定に保たれるか、または低下する。また、循環ポンプ105の停止後の水位の低下は、排水が行われることによるものである。
【0031】
なお、水位差WDaを求めるための水位の検出タイミングは、循環ポンプ105の作動開始時と終了時に限らず、循環ポンプ105の作動と防水性布201の存在による影響が検出できるタイミングであればよい。すなわち、高い検出精度を得るためには、循環ポンプ105が作動する前に外槽101内の水位が安定した時点と、循環ポンプ105が作動してから十分な時間が経過した時点で検出するのが好ましいが、これに限らず、例えば、循環ポンプ105が作動する前や後の水位と、その後、例えば30秒以上など所定時間経過した循環ポンプ105の作動中や停止後、排水が開始されるまでの水位となど、循環ポンプ105が作動している期間の少なくとも一部の期間を挟むタイミングでの水位が検出されればよい。
【0032】
さらに、洗濯行程または濯ぎ行程の間、すなわち回転槽内の水の撹拌中に作動する循環ポンプ105の作動前後などでの水位差を求めるようにしてもよい。この場合には、洗濯または濯ぎの水流の影響による水位変動はあり得るが、その影響が小さければ、防水性布201の影響の有無を検出することができるとともに、洗濯行程または濯ぎ行程の終了後、排水開始までの間に循環ポンプ105を作動させる時間を設ける必要がないので、洗濯全体に要する時間を短縮することが容易になる。
【0033】
(S107) 上記(S106)で、水位差WDaが−60mm以下であると判定された場合には、回転槽102の脱水最高回転速度が、例えば防水性布201の影響による過大な振動が生じにくい200rpmに設定され、中間脱水、および最終脱水が行われる。
【0034】
(S108) 脱水行程の完了後、防水性布201の存在が検出されたことや、それによって低回転で脱水が行われたこと(脱水程度が通常より低いこと)を示すメッセージ、また、防水性布は洗濯物に含めないことを推奨するメッセージなどが、音声または表示によってユーザに報知される。なお、このような報知は脱水行程の完了後に限らず、水位差WDaの判定が行われた時点で行われるなどしてもよい。
【0035】
(S109) 一方、上記(S106)で水位差WDaが−60mm以下でないと判定された場合には、通常の回転速度で脱水が行われる。
【0036】
(その他の事項)
なお、上記の例では、便宜上、外槽101内の水位差WDaが、mm単位で表される値として算出される例を示したが、実際には、水位差WDaに対応する値であれば、種々の換算値、例えば水位センサ109によって検出される値そのものが用いられるなどしてもよい。
【0037】
また、上記(S106)での判定に用いられる閾値は−60mmである例を示したが、これに限らず、外槽101の容量や寸法、回転槽102の回転の安定度などに応じて種々設定すればよい。例えば、外槽101の容量が140リットルの場合に、その約15%の20リットルに相当する水位変化を閾値とするなどすればよい。
【0038】
また、洗濯開始から終了までの間に複数回の脱水行程が行われる場合、上記のような検出は、最初に1回だけ行われるようにしてもよいが、脱水行程の前ごとに行われれば、それぞれの時点での防水性布の姿勢等に応じた検出ができる。
【0039】
また、上記の例では所定時間内の水位差が求められる例を示したが、これに限らず、水位の変化程度、例えば単位時間あたりの水位の変化率が求められるなどしても、実質的に同様の効果を得ることができる。
【0040】
また、脱水最高回転速度は、2段階に設定されるのに限らず、水位変化に応じて多段階や連続的に設定されるなどしてもよい。また、水位変化の程度によっては脱水運転を停止させるようにしてもよい。
【0041】
また、上記の例では脱水最高回転速度に200rpmを挙げたが、その根拠は防水性の洗濯物に封じられた水が回転による遠心力の影響により、200rpm前後から水が上下方向に移動し始めるのに対し、この回転速度であれば急激な移動はなく、アンバランスを引き起こす可能性がほとんどないことである。
【符号の説明】
【0042】
101 外槽
102 回転槽
103 パルセータ
104 モータ
105 循環ポンプ
106 循環水路
107 ノズル
108 水位検出ホース
109 水位センサ
110 制御部
201 防水性布
図1
図2
図3
図4
図5
図6