【実施例】
【0013】
実施例に係る搬送台車につき、
図1から
図7を参照して説明する。以下、
図3の画面左側を搬送台車の正面側(前方側)とし、
図6及び
図7の画面左側を搬送台車の正面側(前方側)として説明する。
【0014】
図1及び
図2に示されるように、搬送台車1は、複数の収容部2aを上下左右に備えた収容棚2が複数配置された大型倉庫等において、指定された物品3を収容棚2の所定の収容部2aに対して搬入もしくは搬出を行う際に用いられる。収容棚2の各収容部2aの底面2bには、正面視L字状、逆L字状で一対に対向する走行レール4が敷設されており、走行レール4の上端面4aには、物品3が載置された複数のパレット5が支持されている。
【0015】
図2及び
図3に示されるように、搬送台車1は、走行レール4の走行面4bを走行可能な車体6と、車体6に昇降可能に設けられた物品載置部材7と、を主に備えており、物品載置部材7がパレット5の下面から離間する最下降状態で走行レール4の走行面4bを走行してパレット5の下方に進入した後、物品載置部材7を上昇させることでパレット5ごと物品3を持ち上げ、パレット5及び物品3を走行レール4の上端面4aから所定高さ浮かせて運搬するようになっている。
【0016】
図2に示されるように、搬送台車1の底面には、凹部26,26を備えた付属部材27が取付けられており、付属部材27の凹部26,26と搬送台車1の底面とにより空間30,30が形成されている。搬送台車1は、前記空間30,30に図示しないフォークリフトの爪が挿入されて保持されるようになっており、フォークリフトにより搬送台車1を走行レール4に配置及び撤去できるようになっている。尚、搬送台車1を走行レール4に対して配置及び撤去する手段としては、フォークリフトに限られず、例えば周知のスタッカークレーンなどを利用してもよい。
【0017】
図3及び
図4に示されるように、搬送台車1の車体6は、物品載置部材7の昇降用の昇降装置8(昇降作動部)と走行用の走行機能部12とを収容する筐体9を備えている。筐体9は、金属板を断面コ字状に屈曲して形成された底板部10aと前後の側板部10b,10cを有する基部材10と、左右の側板11,11とにより構成されている。底板部10aは左右端が屈曲されて、それぞれ組み立て片10dが形成されており、組み立て片10dと左右側板11とが詳述しない組み立て孔を用いて、ボルト50,50,…及びナット51,51,…によりそれぞれ固定されている(
図5参照)。
【0018】
走行機能部12,12は、駆動モータ12a,12aと走行車輪13,13により主に構成され、駆動モータ12a,12aが図示しないケーブルにより制御部34と接続されており、制御部34から送信される回転方向や回転数等の情報に基づき回転駆動するようになっている。
【0019】
図3及び
図4に示されるように、昇降装置8は、前後方向端部側にそれぞれ配置される軸部材15,16と、軸部材15を回動させる昇降駆動部(駆動部)17と、昇降駆動部17の動力を軸部材16に伝える連動部材であるチェーン18とを有している。軸部材15,16には、対向する位置にギア19,20が固着されており、このギア19,20にそれぞれチェーン18が嵌合して架け渡されることにより、軸部材15と軸部材16とが同方向に同期回転するようになっている。
【0020】
軸部材15及び軸部材16は、基部材10の底板部10aの4つ角近傍に固定された台座31,31,…に対して回転可能に枢支されていることにより、底板部10aよりも所定高さ上方の位置で保持されている。また、昇降駆動部17は、図示しないケーブルにより制御部34と接続されており、制御部34から送信される回転方向や回転角度及び回転数等の情報に基づき回転駆動する。これら制御部34、走行機能部12,12及び昇降駆動部17は、筐体9内に内蔵されたバッテリー21,21から供給される電力によりそれぞれ駆動可能となっている。
【0021】
左右側板11,11には、左右側板11,11の内側に駆動モータ12a,12aを有する走行車輪13,13が回動自在に枢支されているとともに、複数個の従動車輪14,14,…が走行車輪13,13と同じ高さで図示しない回転軸によりそれぞれ回動自在に枢支されている。これら走行車輪13,13及び従動車輪14,14,…により搬送台車1が
図1及び
図2に示す走行レール4の走行面4b,4bを走行可能になっている。走行機能部12における走行車輪13と駆動モータ12aとの間には、駆動モータ12aより一回り大きな断面積を有する接続座部12bが形成されている。
【0022】
また、基部材10の前後の側板部10b,10cには、それぞれの左右端部から外側に張り出す水平ローラ28,28,…が設けられている。さらに、左右側板11,11には、その前後方向の中央部近傍に水平ローラ29,29がそれぞれ設けられている。これら水平ローラ28,28,…及び水平ローラ29,29が走行レール4の側面に当接することにより、車体6が走行レール4に沿って走行するようになっている。
【0023】
図5に示されるように、左右側板11には切り欠き11cが設けられており、基部材10の底板部10aに設けられた切り欠き10dと合わせて筐体9内に貫通する組み立て孔31が形成されている。左右側板11には、この組み立て孔31より大きい面積で形成された補強板32が筐体9の内側から差し込むボルト50,50,…及び外側に配置したナット51,51,…により組み立て孔31を塞ぐように固定されている。補強板32は、左右側板11より厚みのある金属板により形成されており、その左右下端部32c,32cがそれぞれ組み立て片10dの上端に補助的に支持されるようになっている。
【0024】
補強板32には、走行機能部12における駆動モータ12aが挿通可能な孔部32aが形成されおり、接続座部12bと補強板32とが、筐体9の内側から差し込むボルト50,50,…及び外側に配置したナット51,51,…により固定されている。駆動モータ12aは、その下方両角12c,12cが補強板32の孔部32aの内周縁32bに支持されるようになっている。上記構成とすることで、負荷のかかりやすい走行機能部12は、接続座部12bと下方両角12c,12cの複数箇所で補強板32に対して支持されることになり、固定強度が高くなっている。
【0025】
また、駆動モータ12a,12aは、昇降用の軸部材15と軸部材16との間に左右一対に対向して配置され、且つチェーン18に干渉しないように、駆動モータ12a,12a同士が所定距離離間するように配置されている。そのため、駆動モータ12a,12aとチェーン18とを、筐体9内において同じ高さで干渉しないように配置することができ、筐体9ひいては車体6自体の高さ寸法を小さくすることができる。そのため、収容棚2に占める搬送台車1の走行に必要な上下方向の高さを低減でき、収納棚2における物品の収容効率を高くすることができる。また、チェーン18の左右に走行機能部12,12をそれぞれ分けて配置する簡素な構造のため、走行機能部12,12の駆動モータ12a,12aと昇降用の駆動部17とがそれぞれ干渉し合うことのない搬送台車1を低コストで提供できることになる。
【0026】
また、車体6の走行機能部12,12及び従動車輪14,14,…は、筐体9から着脱可能な左右側板11,11に取付けられていることから、走行機能部12,12及び従動車輪14,14,…に故障や不具合が生じた場合に、筐体9から側板11,11のみを取外して走行車輪13,13やその駆動モータ12a,12aまたは従動車輪14,14,…を搬送台車1から分離でき、これらの保全作業を簡便に行うことができる。
【0027】
また、走行機能部12,12と昇降機後部8とが相互に一切連動しない構造となっているため、いずれか一方の保全作業時において、車体6の大規模な分解等が不要であり、効率よく保全作業を行うことができる。
【0028】
また、筐体9における基部10の底板部には、軸部材15,16が台座33,33,…により軸支されて固定されるとともに、昇降装置8の駆動部17が固定されているため、左右側板11,11を取り外すことで、昇降装置8に直接アクセスできるため、分離された走行機能部12,12の保守作業と合わせて、搬送台車1全体の保守作業を簡便に行うことができるようになっている。
【0029】
また、物品載置部材7は、前方側に配置される左右一対の回転体22,22の突起片24,24と、後方側に配置される左右一対の回転体23,23の突起片25,25と、により、4つ角近傍を支持されているため、物品載置部材7の上昇及び下降動作を安定して行え、且つ物品載置部材7の最下収納位置及び上昇完了位置における物品載置部材7の安定性が増す。
【0030】
図4に示されるように、軸部材15及び軸部材16の左右両端には、同一形状の回転体22,22及び回転体23,23がそれぞれ固定されており、回転体22,22及び回転体23,23には、円柱状の突起片24,24及び突起片25,25が軸部材15及び軸部材16と平行に突出するように設けられている(片方のみ図示)。突起片24,24及び突起片25,25は、回転体22,22及び回転体23,23の中心に位置する軸部材15及び軸部材16から外径方向にずれた位置に固定されている。回転体22,22及び回転体23,23は、それぞれ左右対称となっている。
【0031】
図3及び
図4に示されるように、搬送台車1の物品載置部材7は、基部71aと、基部71aの周縁から垂直に延びる左右の立片71b,71b、及び前後の立片71c,71cとから形成される断面視コ字状の蓋材71を備えている。この蓋材71には、基部71aの下面側の四つ角近傍に垂直片72,72及び垂直片73,73が設けられている。さらに、基部71aの下面側には、立片71b,71bよりも内側に基部71aの左右の辺に沿って設けられる側片74,74が設けられている。この物品載置部材7は、垂直片72,72の下面72a,72a及び垂直片73,73の下面73a,73aが突起片24,24及び突起片25,25にそれぞれ当接することにより、車体6に載置されている。
【0032】
また、
図3に示されるように、側片74,74には、上下に延びるガイド溝74a,74aがそれぞれ設けられている。このガイド溝74a,74aは、物品載置部材7が車体6に載置された状態において、筐体9の側板11,11にそれぞれ設けられたガイドボルト11a,11aが遊嵌されている。これにより、物品載置部材7が車体6に対して前後に移動することが防止され、上下の移動のみが許容されている。
【0033】
次に、昇降装置8により物品載置部材7を上昇させる上昇動作について説明する。尚、回転体22,22及び回転体23,23は、それぞれ左右対称となっているため、以後、車体6における左右一方側の回転体22と回転体23とを説明し、左右他方側の回転体22と回転体23との説明を省略する。
【0034】
次に、
図6(a)に示されるように、物品載置部材7は、その最下収納位置において、基部材10の側板部10bの上端面10dと、側板部10cの上端面10eと、側板11,11 の各上端面111bと、に物品載置部材7における基部7aの下面が当接して支持されているとともに、突起片24と突起片25とが、物品載置部材7の垂直片72の下面72aと垂直片73の下面73aに当接しないようになっている。この基部材10の側板部10bの上端面10dと、側板部10cの上端面10eと、側板11,11の上端面11bとは、物品載置部材7を最下収納位置で支持するストッパー部として機能している。
【0035】
続いて、
図6(b)に示されるように、制御部34に制御されて回転体22,23が回動され、突起片24と突起片25とが、その初期位置から時計回りに50度同期回転した際には、回転方向に先行する回転体23の突起片25が、物品載置部材7の前方側の垂直片73の下面73aに当接する。このように、突起片25が、物品載置部材7を最下収納位置から物品載置部材7の前方側の垂直片73の下面73aに当接するまでの間は、回転体22,23に負荷がかからない状態となり、昇降駆動部17に負荷が掛からない時間帯が一時的に確保される。
【0036】
次いで、
図7(a)に示されるように、突起片24と突起片25とが、その初期位置から時計回りに140度程度同期回転した際には、先行する回転体23の突起片25が、その回転軌道の最頂点に位置されるとともに、後続の回転体22の突起片24が、物品載置部材7の後方側の垂直片72の下面72aに当接する。このとき、物品載置部材7は、その後方側と、基部材10の後方側の側板部10cの上端面10eとの当接箇所を支点として物品載置部材7の前方側が押し上げられるため、突起片24が後方側の垂直片72の下面72aに当接するまでの距離が稼がれることになる。
【0037】
更に、物品載置部材7は、突起片24と突起片25の回転運動により、後方側に押されるようになるが、物品載置部材7のガイド溝74a,74aの側面が側板11の固定ボルト11a,11aに当接して、物品載置部材7の後方側への移動が防止されるため、物品載置部材7が上方にのみ動作されることになる。
【0038】
そして、
図7(a)に示されるように、突起片24と突起片25とがその初期位置から時計回りに180度回転した際に、前記した制御部32が昇降駆動部17の動作を停止させる。これにより、突起片24と突起片25とが同一の高さ位置となり、物品載置部材7の上面が水平状態に保たれ、物品載置部材7の上昇完了位置となる。
【0039】
このように、突起片24の外周面と突起片25の外周面とは、その外周面の一部が物品載置部材7の垂直片72の下面72aと垂直片73の下面73aとに当接するようになっており、当該当接箇所は、回転体22及び回転体23の回転により突起片24の外周面及び突起片25の外周面の周方向に変化する。したがって、回転体22及び回転体23の1周期の回転の中で、前記当接箇所と軸部材15及び軸部材16との距離が変化するようになり、これにより、物品載置部材7が上昇完了位置に変位される。したがって、突起片24の外周面及び突起片25の外周面は、物品載置部材7を上昇完了位置に変位させる偏心作用部として機能している。
【0040】
上述したように、回転体23の突起片25が、その回転軌道の最頂点を越えてから後続の回転体22の突起片24が、物品載置部材7を押し上げ始めるため、突起片24及び突起片25が、同時に物品載置部材7を上昇させる動作を行うタイミングを無くして、極めて効率よく物品載置部材7を上昇させるのに必要な仕事量を一定の時間帯で回転体22及び回転体23に分散できる。
【0041】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0042】
例えば、前記実施例では、回転体22,22と回転体23,23とが同一形状を成していたが、例えば、各突起片が異なるタイミングで物品支持部を上昇完了位置まで上昇させるものであれば、前後の回転体が異なる形状のものであってもよい。
【0043】
また、前後の回転体22及び回転体23は、同一の方向に同期回転するようになっていたが、例えば、各突起片が異なるタイミングで物品支持部を上昇完了位置まで上昇させるものであれば、前後の回転体の回転方向が互いに逆になるようになっていてもよい。
【0044】
また、前記実施例では、左右一対の回転体22,22と回転体23,23とが前後に配置されていたが、これに限られず、例えば、前後に1つずつ設けられるものでもよいし、車体の複数個所に設けられていてもよい。
【0045】
また、搬送台車1は、走行レール4を走行することのみに限られず、床面を走行するようになっていてもよい。搬送台車が床面を走行する場合、物品載置部材が最下収納位置の状態で物品を運搬するようになっていてもよい。