(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記スチレン系熱可塑性エラストマー(C)が、スチレン−イソプレンブロックコポリマー、スチレン−ブタジエンブロックコポリマー、水素添加スチレン−イソプレンブロックコポリマー及び水素添加スチレン−ブタジエンブロックコポリマー、水素添加スチレン−ブタジエンランダムコポリマーから選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性エラストマー、オレフィン系重合体、ビニル系重合体およびエンジニアリングプラスチックス等の熱可塑性樹脂は、耐衝撃性物性、成形性、表面特性等に優れているため、目的に応じて塊状、シート状、フィルム状等に加工して自動車、電気・電子、建築、雑貨等の分野で多く使用されている。そして、これらの成形品は、所望形状の製品とするため、あるいは性能の高度化、機能の多様化を図るため、複数の成形品を接着させ、複合化させる必要がある。この様な例の一つに、バリアフィルムが挙げられる。ポリエチレンテレフタレート樹脂に代表されるポリエステル樹脂は、機械強度や剛性、耐薬品性等に優れていることから、ポリエステルフィルムを含むバリア性の高いフィルム積層体は、食品等の包装材料として広く用いられている。
【0003】
これらフィルム積層体の接着剤層としては、通常、ウレタン系の接着剤が用いられることが多いが、その一方で、接着の工程において溶剤を用いないことから、ホットメルト型接着剤としてオレフィン系の接着剤の開発が行われている。しかしながら、オレフィン系の接着剤はオレフィン自体の極性が低いことなどの理由から、ポリエステルフィルム等の樹脂フィルムに対する接着が弱い。そこで、オレフィンを極性基等で変性した樹脂等も提案されているが、その接着性はまだ十分なものではなく、改良が望まれていた。
【0004】
オレフィン系樹脂をベースとした接着剤としては、スチレン系エラストマー、不飽和カルボン酸またはその誘導体でグラフト変性されたエチレン/α−オレフィン共重合体および酢酸ビニルからなるもの(特許文献1)や、変性スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系樹脂、粘着付与剤からなるもの(特許文献2)、変性ポリオレフィン、非変性ポリオレフィンからなるもの(特許文献3)などが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、加工性を維持しつつ、難接着性基材に対して優れた接着性を示し、柔軟性も有するポリオレフィン系接着剤用樹脂を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上述の課題に鑑み鋭意検討した結果、変性ポリオレフィン、低密度ポリエチレンまたは線状低密度ポリエチレン、およびスチレン系熱可塑性エラストマーを必須成分として含む接着性樹脂組成物により、難接着性のフィルムに対して、優れた接着性能が発現することを見出し、以下の発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、500MPa以上1500MPa以下の引張弾性率を有する変性ポリオレフィン(A)、密度0.940g/cm
3以下の低密度ポリエチレンまたは線状低密度ポリエチレン(B)、およびスチレン系熱可塑性エラストマー(C)からなる接着性樹脂組成物であって、各成分の重量比は0.7<C/(A+B)<1.1であり、該接着性樹脂組成物の引張弾性率は100MPa以下で
あり、上記変性ポリオレフィン(A)は、ラジカル重合開始剤存在下、ポリオレフィン、エポキシ基含有ビニル単量体および芳香族ビニル単量体が溶融混練される変性工程により製造され、該変性工程では、ポリオレフィン100重量部に対して、エポキシ基含有ビニル単量体が0.1〜20重量部添加されて変性する接着性樹脂組成物である。
【0009】
上記エポキシ基含有ビニル単量体が、エポキシ基を含有するメタクリル酸エステルあるいはアクリル酸エステル、またはそのいずれかの誘導体であることが好ましい。
【0010】
上記スチレン系熱可塑性エラストマー(C)は、スチレン−イソプレンブロックコポリマー、スチレン−ブタジエンブロックコポリマー、水素添加スチレン−イソプレンブロックコポリマー及び水素添加スチレン−ブタジエンブロックコポリマー、水素添加スチレン-ブタジエンランダムコポリマーから選ばれた少なくとも一種であることが好ましい。
【0011】
また、本発明の積層体は、ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂およびポリエステル系樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種以上からなる熱可塑性樹脂の層が、本発明の樹脂組成物で接着されたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の樹脂組成物は、難接着基材に対し優れた接着力を確保することができると共に、好適な加工性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の詳細について述べる。
(接着性樹脂組成物)
本発明における接着性樹脂組成物は、500MPa以上1500MPa以下の引張弾性率を有する変性ポリオレフィン(A)、密度0.940g/cm
3以下の低密度ポリエチレンまたは線状低密度ポリエチレン(B)、およびスチレン系熱可塑性エラストマーからなる接着性樹脂組成物(C)であって、該接着性樹脂組成物の引張弾性率が100MPa以下であることを特徴とする。該接着性樹脂組成物の引張弾性率は、100MPa以下であることが好ましく、100MPaを超える場合は接着性が低調となる。
【0014】
(各成分の重量比)
本発明における接着性樹脂組成物における各成分の重量比は、0.7<C/(A+B)<1.1であり、0.8<C/(A+B)<1.1であることがより好ましい。重量比が0.7より小さい場合は樹脂組成物の弾性率が十分に低下せず接着性が乏しくなり、また、重量比が1.1を超える場合は、変性ポリオレフィンが相対的に少なくなりすぎるため、接着性に乏しくなり好ましくない。
(引張弾性率)
本発明に係る引張弾性率とは、加熱プレスによって約1mm厚に成形されたシートよりJIS K7113における2(1/3)号ダンベルの型で打ち抜いて作製した試験片を用いて、オートグラフにて、引張速度50mm/分(min)の条件で測定した引張弾性率を意味する。
【0015】
((A)変性ポリオレフィン)
本発明に係る変性ポリオレフィン系樹脂は、接着性の観点から、下記(a)、(b)、(c)及び(d)を溶融混練して得られる変性ポリオレフィン系樹脂とすることが好ましい。
(a)ポリオレフィン系樹脂 100重量部、
(b)ラジカル重合開始剤 0.01重量部〜5重量部、
(c)エポキシ基含有ビニル単量体 0.01〜20重量部、
(d)芳香族ビニル単量体 0.01〜20重量部、
上記変性ポリオレフィン系樹脂組成物は、(a)非変性のポリオレフィン系樹脂と(b)ラジカル重合開始剤とに対し、(c)エポキシ基含有ビニル単量体に加えて、(d)芳香族ビニル単量体からなるグラフト鎖をグラフトさせた、グラフト重合反応により得られる樹脂組成物であることが、グラフト効率を高める点で好ましい。また、本発明の変性ポリオレフィン系樹脂組成物には必要に応じて、各種安定剤や、各種添加剤を本発明の効果を損なわない範囲内で添加してもよい。
【0016】
本発明に用いるグラフト重合反応の様式については特に制限されないが、溶液重合、含浸重合、溶融重合などを用いることができ、特に、溶融重合が簡便で好ましい。溶融混練時の加熱温度は、100〜250℃であることが、ポリオレフィン樹脂が充分に溶融し、かつ熱分解しないという点で好ましい。また溶融混練の時間(ラジカル重合開始剤を混合してからの時間)は、通常30秒間〜60分間である。
【0017】
また、上記の溶融混練の装置としては、押出機、バンバリーミキサー、ミル、ニーダー、加熱ロールなどを使用することができる。生産性の面から単軸あるいは2軸の押出機を用いる方法が好ましい。また、各々の材料を充分に均一に混合するために、上記溶融混練を複数回繰返してもよい。
【0018】
(A)変性ポリオレフィンの引張弾性率は、500MPa以上1500MPaであることが好ましく、500MPaより低い場合は、変性工程において造粒する際に、ペレット同士が互着し、造粒時に金属セッケンなどの添加が必要となり、設備や取扱いが煩雑になる為、好ましくない。また、1500MPaを超える場合は、接着性樹脂組成物の引張弾性率が十分に下がらない為好ましくない。
【0019】
((a)ポリオレフィン)
前記ポリオレフィン(a)としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリイソブチレン、ポリメチルペンテン、エチレン/α−オレフィンン共重合体、エチレン/α−オレフィン/ジエン共重合体、エチレン/ブテン−1共重合体、などのポリオレフィン、シクロペンタジエンとエチレンおよび/またはプロピレンとの共重合体などの環状ポリオレフィン、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/アクリル酸エチル共重合体(EEA)、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体などの極性基が導入されたポリオレフィンなどが挙げられる。中でも、変性反応が容易であることから、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/α−オレフィン共重合体、ポリメチルペンテンから選ばれる1種、あるいは、2種以上を用いることが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/α−オレフィン共重合体から選ばれる1種、あるいは、2種以上を用いることがより好ましく、ポリプロピレン、エチレン/α−オレフィン共重合体から選ばれる1種、あるいは、2種以上を用いることが特に好ましい。
【0020】
((b)ラジカル開始剤)
前記ラジカル重合開始剤としては、一般に過酸化物またはアゾ化合物などがあげられるが、水素引き抜き能が高いものが好ましく、そのようなラジカル重合開始剤としては、例えば1,1‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)‐3,3,5‐トリメチルシクロヘキサン、1,1‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n‐ブチル‐4,4‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)バレレート、2,2‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)ブタンなどのパーオキシケタール;ジクミルパーオキサイド、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α´‐ビス(t‐ブチルパーオキシ‐m‐イソプロピル)ベンゼン、t‐ブチルクミルパーオキサイド、ジ‐t‐ブチルパーオキサイド、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)ヘキシン‐3などのジアルキルパーオキサイド;ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド;t‐ブチルパーオキシオクテート、t‐ブチルパーオキシイソブチレート、t‐ブチルパーオキシラウレート、t‐ブチルパーオキシ‐3,5,5‐トリメチルヘキサノエート、t‐ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t‐ブチルパーオキシアセテート、t‐ブチルパーオキシベンゾエート、ジ‐t‐ブチルパーオキシイソフタレートなどのパーオキシエステルなどが挙げられ、それらのうち1種または2種以上を用いることが好ましい。
【0021】
前記ラジカル重合開始剤の添加量は、非変性のポリオレフィン系樹脂(a)100重量部に対して、0.01〜5重量部の範囲内にあることが好ましく、0.05〜3重量部の範囲内にあることがさらに好ましい。0.01重量部未満ではグラフト重合が充分に進行せず、5重量部を超えるとポリオレフィン樹脂の溶融粘度や機械的特性の著しい低下を引き起こす。
【0022】
((c)エポキシ基含有ビニル単量体)
前記エポキシ基含有ビニル単量体としては、メタクリル酸グリシジル(GMA)、アクリル酸グリシジル、マレイン酸モノグリシジル、マレイン酸ジグリシジル、イタコン酸モノグリシジル、イタコン酸ジグリシジル、アリルコハク酸モノグリシジル、アリルコハク酸ジグリシジル、p−スチレンカルボン酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、メタクリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル、p−グリシジルスチレン、3,4−エポキシ−1−ブテン、3,4−エポキシ−3−メチル−1−ブテン、アクリル酸4−ヒドロキシブチルグリシジルエーテル(4HBAGE)などのエポキシオレフィン、ビニルシクロヘキセンモノオキシド等が挙げられる。これらの中でも、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸4−ヒドロキシブチルグリシジルエーテルが安価という点で好ましく、特にメタクリル酸グリシジルが好ましい。上記のエポキシ基含有ビニル単量体は、単独または2種以上を混合して用いることができる。前記エポキシ基含有ビニル単量体の添加量は、接着性を充分に確保する観点から、非変性のポリオレフィン系樹脂(a)100重量部に対して、0.01〜20重量部であることが好ましく、0.1〜15重量部であることがさらに好ましく、0.1〜10重量部であることが特に好ましい。前記範囲の添加量において、20重量部を超える場合は変性ポリオレフィンの成形加工性が悪化し、0.01重量部未満では、十分な接着性を発現しないことから、好ましくない。
【0023】
((d)芳香族ビニル単量体)
前記芳香族ビニル単量体(d)としては、スチレン、o‐メチルスチレン、m‐メチルスチレン、p‐メチルスチレン、α‐メチルスチレン、β‐メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレンなどのメチルスチレン、o‐クロロスチレン、m‐クロロスチレン、p‐クロロスチレン、α‐クロロスチレン、β‐クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレンなどのクロロスチレン、o‐ブロモスチレン、m‐ブロモスチレン、p‐ブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレンなどのブロモスチレン、o‐フルオロスチレン、m‐フルオロスチレン、p‐フルオロスチレン、ジフルオロスチレン、トリフルオロスチレンなどのフルオロスチレン、o‐ニトロスチレン、m‐ニトロスチレン、p‐ニトロスチレン、ジニトロスチレン、トリニトロスチレンなどのニトロスチレン、o‐ヒドロキシスチレン、m‐ヒドロキシスチレン、p‐ヒドロキシスチレン、ジヒドロキシスチレン、トリヒドロキシスチレンなどのビニルフェノール、o‐ジビニルベンゼン、m‐ジビニルベンゼン、p‐ジビニルベンゼンなどのジビニルベンゼン、o‐ジイソプロペニルベンゼン、m‐ジイソプロペニルベンゼン、p‐ジイソプロペニルベンゼンなどのジイソプロペニルベンゼンが挙げられ、上記の芳香族ビニル単量体(d)は、単独または2種以上を混合して用いることができる。上記のうちスチレン、α‐メチルスチレン、p‐メチルスチレンなどのメチルスチレン、ジビニルベンゼン単量体またはジビニルベンゼン異性体混合物が安価であるという点で好ましいく、特に好ましくはスチレンである。
【0024】
上記芳香族ビニル単量体(d)の添加量は、変性ポリオレフィンの成形加工性、エポキシ基含有ビニル単量体の反応効率の観点から、ポリオレフィン(a)100重量部に対して、0.01〜20重量部であることが好ましく、0.1〜15重量部であることがさらに好ましく、0.1〜10重量部であることが特に好ましい。前記範囲の添加量において、20重量部を超える場合は変性ポリオレフィンの成形加工性が悪化し、0.01重量部未満では、エポキシ基含有ビニル単量体の反応効率が悪化することから、好ましくない。
【0025】
((B)低密度ポリエチレンまたは線状低密度ポリエチレン)
前記低密度ポリエチレンまたは線状低密度ポリエチレンとしては、密度が0.940g/cm
3以下であれば特に限定されない。密度が0.940g/cm
3を超えるようなポリエチレンを用いた場合は、接着性が低調となる。
【0026】
(スチレン系熱可塑性エラストマー)
上記スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン、その同族体もしくはその類似体を含む熱可塑性エラストマーであれば、特に限定されることない。スチレン系熱可塑性エラストマーの具体的な例としては、スチレン、その同族体もしくはその類似体のブロックを、少なくとも一つの末端ブロックとして含み、共役ジエンもしくはその水添物のエラストマーブロックを少なくとも一つ中間ブロックとして含むブロック共重合体を挙げることができる。好ましい具体例としては、スチレン−ブタジエンジブロックコポリマー、スチレンーブタジエントリブロックコポリマー、スチレンーイソプレンジブロックコポリマー、スチレンーイソプレントリブロックコポリマー、水素添加スチレン−ブタジエンジブロックコポリマー、水素添加チレンーブタジエントリブロックコポリマー、水素添加スチレンーイソプレンジブロックコポリマー、水素添加スチレンーイソプレントリブロックコポリマー、水素添加スチレンーブタジエンランダムコポリマーなどが挙げられる。さらに、スチレンブロックの中にはスチレンのほかに、スチレンとα−メチルスチレン等の芳香族系ビニル化合物の共重合体が含まれていてもよい。これらのスチレン系エラストマーの中でも、耐熱性および耐候性の観点から、その共役ジエンを主体とする重合体ブロックにおける不飽和二重結合の一部または全部が水素添加されていることが好ましく、水素添加スチレン−イソプレントリブロックコポリマー(SEPS)、水素添加スチレン−ブタジエントリブロックコポリマー(SEBS)、水素添加スチレン-ブタジエンランダムコポリマー(HSBR)を用いることが特に好ましい。上記の(スチレン系熱可塑性エラストマー)は、単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0027】
(積層体)
本発明に係る積層体とは、ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂ポリアミド系樹脂、およびポリエステル系樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種以上からなる熱可塑性樹脂の層が、本発明の接着性樹脂組成物で接着されてなる積層体である。積層方法に特に制約はないが、押出ラミネートなどが挙げられる。
【0028】
以下に具体的な実施例を示すが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
(a)ランダムポリプロピレン((株)プライムポリマー製:S235WC)100重量部、(b)1,3−ジ(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(日本油脂(株)製:パーブチルP、1分間半減期175℃)0.4重量部をシリンダー温度200℃、回転数150rpmに設定した二軸押出機(46mmφ、L/D=60、(株)神戸製鋼所製、製品名HYPERKTX46)に供給して溶融混練しペレットを得た溶融混練した後、次いで、シリンダー途中よりメタクリル酸グリシジル4重量部、スチレン4重量部を加え溶融混練して変性ポリオレフィン(A1)を得た。上記で得られた変性ポリオレフィン(A1)25重量部、低密度ポリエチレン(日本ユニカー(株)製:NUC−8008)25重量部、水添スチレン系熱可塑性エラストマー(JSR(株)製:DYNARON1321P)50重量部を、温度200℃に設定した樹脂混練機((株)東洋精機製、製品名ラボプラストミル)にて混練し、接着性樹脂(A2)を得た。下記方法にて、接着強度および引張弾性率を測定した。
【0029】
(実施例2)
上記で得られた変性ポリオレフィン(A1)25重量部、低密度ポリエチレン(日本ユニカー(株)製:NUC−8008)30重量部、水添スチレン系熱可塑性エラストマー(旭化成(株)製:タフテックH1221)45重量部を、温度200℃に設定した樹脂混練機((株)東洋精機製、製品名ラボプラストミル)にて混練し、接着性樹脂(A3)を得た。下記方法にて、接着強度および引張弾性率を測定した。
【0030】
(実施例3)
上記で得られた変性ポリオレフィン(A1)30重量部、低密度ポリエチレン(日本ユニカー(株)製:NUC−8008)25重量部、水添スチレン系熱可塑性エラストマー(旭化成(株)製:タフテックH1221)45重量部を、温度200℃に設定した樹脂混練機((株)東洋精機製、製品名ラボプラストミル)にて混練し、接着性樹脂(A4)を得た。下記方法にて、接着強度および引張弾性率を測定した。
【0031】
(実施例4)
(a)ランダムポリプロピレン((株)プライムポリマー製:B221WA)100重量部、(b)1,3−ジ(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(日本油脂(株)製:パーブチルP、1分間半減期175℃)0.4重量部をシリンダー温度200℃、回転数150rpmに設定した二軸押出機(46mmφ、L/D=60、(株)神戸製鋼所製、製品名HYPERKTX46)に供給して溶融混練しペレットを得た溶融混練した後、次いで、シリンダー途中よりメタクリル酸グリシジル4重量部、スチレン4重量部を加え溶融混練して変性ポリオレフィン(A5)を得た。上記で得られた変性ポリオレフィン(A5)25重量部、低密度ポリエチレン(日本ユニカー(株)製:NUC−8008)25重量部、水添スチレン系熱可塑性エラストマー(旭化成(株)製:タフテックH1221)50重量部を、温度200℃に設定した樹脂混練機((株)東洋精機製、製品名ラボプラストミル)にて混練し、接着性樹脂(A6)を得た。下記方法にて、接着強度および引張弾性率を測定した。
【0032】
(実施例5)
(a)ブロックポリプロピレン((株)プライムポリマー製:E701G)100重量部、(b)1,3−ジ(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(日本油脂(株)製:パーブチルP、1分間半減期175℃)0.4重量部をシリンダー温度200℃、回転数150rpmに設定した二軸押出機(46mmφ、L/D=60、(株)神戸製鋼所製、製品名HYPERKTX46)に供給して溶融混練しペレットを得た溶融混練した後、次いで、シリンダー途中よりメタクリル酸グリシジル4重量部、スチレン4重量部を加え溶融混練して変性ポリオレフィン(A7)を得た。上記で得られた変性ポリオレフィン(A7)25重量部、低密度ポリエチレン(日本ユニカー(株)製:NUC−8008)25重量部、水添スチレン系熱可塑性エラストマー(旭化成(株)製:タフテックH1221)50重量部を、温度200℃に設定した樹脂混練機((株)東洋精機製、製品名ラボプラストミル)にて混練し、接着性樹脂(A8)を得た。下記方法にて、接着強度および引張弾性率を測定した。
【0033】
(比較例1)
上記で得られた変性ポリオレフィン(A1)を接着性樹脂として、下記方法にて、接着強度および引張弾性率を測定した。
【0034】
(比較例2)
上記実施例1で得られた変性ポリオレフィン(A1)50重量部、水添スチレン系熱可塑性エラストマー(JSR(株)製:DYNARON1321P)50重量部を、温度200℃に設定した樹脂混練機((株)東洋精機製、製品名ラボプラストミル)にて混練し、接着性樹脂(B1)を得た。下記方法にて、接着強度および引張弾性率を測定した。
【0035】
(比較例3)
上記実施例1で得られた変性ポリオレフィン(A1)50重量部、低密度ポリエチレン(日本ユニカー(株)製:NUC−8008)50重量部を、温度200℃に設定した樹脂混練機((株)東洋精機製、製品名ラボプラストミル)にて混練し、接着性樹脂(B2)を得た。下記方法にて、接着強度および引張弾性率を測定した。
【0036】
(比較例4)
ランダムポリプロピレン((株)プライムポリマー製:S235WC)25重量部、低密度ポリエチレン(日本ユニカー(株)製:NUC−8008)25重量部、水添スチレン系熱可塑性エラストマー(JSR(株)製:DYNARON1321P)50重量部からなる混合物(a)と、(b)1,3−ジ(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(日本油脂(株)製:パーブチルP、1分間半減期175℃)0.4重量部をシリンダー温度200℃、回転数150rpmに設定した二軸押出機(46mmφ、L/D=60、(株)神戸製鋼所製、製品名HYPERKTX46)に供給して溶融混練しペレットを得た溶融混練した後、次いで、シリンダー途中よりメタクリル酸グリシジル4重量部、スチレン4重量部を加え溶融混練して共変性ポリオレフィン(B3)を得た。
【0037】
(比較例5)
上記製造例1で得られた変性ポリオレフィン(A1)25重量部、高密度ポリエチレン(日本ユニカー(株)製:NUCG−5641)25重量部、水添スチレン系熱可塑性エラストマー(旭化成(株)製:タフテックH1221)50重量部を、温度200℃に設定した樹脂混練機((株)東洋精機製、製品名ラボプラストミル)にて混練し、接着性樹脂(B4)を得た。下記方法にて、接着強度および引張弾性率を測定した。
【0038】
(比較例6)
上記製造例1で得られた変性ポリオレフィン(A1)50重量部、低密度ポリエチレン(日本ユニカー(株)製:NUC−8008)25重量部、水添スチレン系熱可塑性エラストマー(旭化成(株)製:タフテックH1221)25重量部を、温度200℃に設定した樹脂混練機((株)東洋精機製、製品名ラボプラストミル)にて混練し、接着性樹脂(B5)を得た。下記方法にて、接着強度および引張弾性率を測定した。
【0039】
(比較例7)
上記製造例1で得られた変性ポリオレフィン(A1)25重量部、ポリプロピレン((株)プライムポリマー製:S235WC)25重量部、水添スチレン系熱可塑性エラストマー(旭化成(株)製:タフテックH1221)50重量部を、温度200℃に設定した樹脂混練機((株)東洋精機製、製品名ラボプラストミル)にて混練し、接着性樹脂(B6)を得た。下記方法にて、接着強度および引張弾性率を測定した。
【0040】
(接着強度測定)
PETフィルム(150mm×150mm×0.05mm)2枚の間に、実施例1〜5、比較例1〜7で作成した接着性樹脂をはさみ、加熱プレス機((株)神藤金属工業所製:製品名圧縮成型機NSF−50)にて、所定の加熱温度(200℃、5MPa)の条件で接着してテストサンプルを得た。これを10mm幅に切削し、オートグラフ((株)島津製作所製:AG−2000A)を用い、23℃にて引張テストスピード200mm/minの条件にて、T字剥離強度を測定した。
【0041】
(引張弾性率測定)
加熱プレス機((株)神藤金属工業所製:製品名圧縮成型機NSF−50)にて、所定の加熱温度(200℃、5MPa)の条件で加熱プレスをして、実施例1〜5、比較例1〜7で作成した接着性樹脂の約1mm厚のシートを得た。これをミニダンベル2(1/3)号の大きさに切削し、オートグラフ((株)島津製作所製:AG−2000A)を用い、23℃にて引張テストスピード50mm/minの条件にて、引張弾性率を測定した。
【0042】
結果を表1に示す。実施例1〜5は本発明の接着性樹脂組成物を用いており、いずれも強固な接着強度を示した。一方で、変性ポリプロピレン単独の比較例1、変性ポリプロピレンとスチレン系熱可塑性エラストマーのみの混合物である比較例2、変性ポリプロピレンと低密度ポリエチレンのみの混合物である比較例3では、接着強度が低調であった。
【0044】
実施例1と比較例2を比較すると、変性ポリプロピレン単独に対してスチレン系熱可塑性エラストマーを添加するよりも、変性ポリプロピレンと低密度ポリエチレンの混合物に対してスチレン系エラストマーを添加する方が、効果的に樹脂の弾性率を下げることができ、接着強度の向上に寄与していることがわかる。
【0045】
実施例1と、比較例5および比較例7を比較すると、低密度ポリエチレンの代わりに、高密度ポリエチレンあるいはポリプロピレンを添加した場合、樹脂組成物の引張弾性率が十分に下がらず、接着性にも乏しいことがわかる。
【0046】
また、0.7<C/(A+B)<1.1の範囲外にある比較例6についてもT字剥離強度は低調な結果となった。スチレン系エラストマーの添加量が相対的に少ないことで、引張弾性率が十分に下がらなかったためである。
【0047】
(加工性)
実施例1と比較例4を比較すると、引張弾性率およびT字剥離強度については良好であるものの、溶融変性時にスチレン系エラストマーおよび/または低密度ポリエチレンの架橋反応が進行する為、溶融粘度が著しく低下して成形加工性に乏しい樹脂となった。