特許第6291260号(P6291260)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6291260
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】電子機器のスイッチ機構
(51)【国際特許分類】
   H01H 3/12 20060101AFI20180305BHJP
   H01H 21/00 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
   H01H3/12 B
   H01H21/00 330B
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-7209(P2014-7209)
(22)【出願日】2014年1月17日
(65)【公開番号】特開2015-135775(P2015-135775A)
(43)【公開日】2015年7月27日
【審査請求日】2017年1月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112602
【氏名又は名称】フクダ電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(72)【発明者】
【氏名】桑崎 雄揮
【審査官】 段 吉享
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭54−048375(JP,U)
【文献】 米国特許第05760356(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 3/12
H01H 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器の筐体内に設けられたスイッチを筐体外から間接的に操作するためのスイッチ機構であって、
筐体外から操作可能な可動部材と、
前記可動部材を回動可能に支持する支持部材と、
前記可動部材の変位をスイッチに伝達する伝達部材と、を有し、
前記可動部材は、
前記筐体外から直接操作可能な平板状の第1の部分と、
該第1の部分に接続し、筐体内に隠れた平板状の第2の部分とを有し、
前記可動部材は、操作されていない状態で、前記第1の部分の表面が前記筐体の表面と略同一の高さとなるように前記伝達部材により保持され、
前記支持部材が前記第2の部分を支持し、
前記可動部材の前記第2の部分に、前記支持部材に支持される軸が一体形成され、前記可動部材は前記軸を回転軸として回動可能であり、
前記軸の直径は、前記第2の部分の厚みと略同一であることを特徴とする電子機器のスイッチ機構。
【請求項2】
前記軸が、前記第1の部分から最も離れた位置に設けられることを特徴とする請求項1に記載の電子機器のスイッチ機構。
【請求項3】
前記支持部材が、前記支持部材に設けられた溝と、前記第2の部分を隠す筐体の裏面との組み合わせによって、前記軸を支持することを特徴とする請求項1または2に記載の電子機器のスイッチ機構。
【請求項4】
前記伝達部材が穴を有し、
前記可動部材が、前記穴に一部が埋め込まれた凸部を裏面に有することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の電子機器のスイッチ機構。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の電子機器のスイッチ機構を備えた電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子機器に用いられるスイッチ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電子機器の回路基板上に設置されたスイッチなど、筐体内に設けられたスイッチを筐体外から間接的に操作可能とするためのスイッチ機構が知られている。スイッチ機構は、ユーザが直接操作可能な可動部材と、可動部材に加えられた外力または可動部材の変位をスイッチに伝達する伝達機構を有し、伝達機構には一般的に弾性体が含まれる。
【0003】
図4は、従来用いられているスイッチ機構の構成例を示す側断面図であり、電子機器の一例としてのホルタ心電計のイベントスイッチに用いられている機構を示している。なお、図4は文献公知発明に係るものではない。
【0004】
スイッチ機構は、ユーザが直接操作可能な可動部材であるレバー10(およびその支持部材)と、レバー10に加えられた外力またはレバー10の変位を、回路基板50に実装されているスイッチ40に伝達する伝達部材30とから構成される。伝達部材30は一般にゴム系材料等の弾性体で形成され、レバー10が操作されていない状態(図4に示す状態)においては、レバー10を押し込み可能な所定の位置に保持する支持部材としても機能する。また、伝達部材30は、ユーザに感じさせるスイッチの操作感を調整する機能も有している。
【0005】
レバー10は、その一端に一対の軸受け部13を有している(図4では手前側の1つだけが見えているが、奥にもう一つ存在する)。軸受け部13にはシャフト25が通されており、シャフト25はさらに筐体本体20に設けられた軸受け部(不図示)によって支持されている。レバー10の支持部材として機能するシャフト25と筐体本体20に設けられた軸受け部により、レバー10は筐体本体20とは独立して、シャフト25を回転軸とした矢印a方向の回動が可能になる。
【0006】
レバー10は、可動方向への外力が加わっていない状態では、図4に示すように先端部11が筐体本体20の対向部分21と所定の距離を有する位置に伝達部材30によって保持されている。ユーザがレバー10を押下すると、レバー10がシャフト25を回転軸として時計回りに回動し、先端部11が対向部分21に突き当たるまでの範囲で移動する。この際、レバー10を押し込む力は、レバー10の内面に設けられている凸部12を通じて伝達部材30を押圧し、伝達部材30を通じてスイッチ40に伝達される。レバー10の先端部11の可動範囲内でスイッチ40が押下されるように、先端部11の可動範囲(ストローク)や伝達部材30の硬さや形状が調整される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図4に示すような構成を有する従来のスイッチ機構は、電子機器の小型化やコスト面において課題を有していた。まず、レバー10は先端部11の可動範囲がもっとも大きく、軸受け部13の近傍はほとんど動かない。従って、軸受け部13の近傍を押下した場合には、先端部11に近い部分を押下する場合よりもスイッチ40を操作するために必要な力が大きくなる。しかも、軸受け部13の近傍はほとんど動かず、ストローク感に乏しいことも相まって、強い力で押下される傾向にある。
【0008】
従って、軸受け部13付近における破壊を防止するため、軸受け部13、シャフト25(および筐体本体20の軸受け部)には十分な強度が必要となる。また、軸受け部13とシャフト25との間にガタ(隙間)が生じると、スイッチの操作感が悪くなるなどの問題が生じるため、高い寸法精度も要求される。このような背景から、従来はシャフト25を寸法精度の良い金属材料とし、樹脂成形品であるレバー10の軸受け部13および筐体本体20の軸受け部の肉厚(シャフト25が通る穴の周囲および奥行き方向のいずれも)を厚くする構成が採られている。
【0009】
シャフト25が個別の部品であることにより、部品および組立コストが上昇する。また、軸受け部13の高さhが大きくなるため、レバー10が大型化し、製品の小型化の上で不利である。さらに、軸受け部13の高さhが大きいことで、レバー10からスイッチ40までの距離が遠くなるため、比較的大きな伝達部材30が用いられることになるが、伝達部材30は弾性体で形成されるため、体積が大きくなると物性の個体差も大きくなり、スイッチの操作感のばらつきが大きくなるという問題もあった。
【0010】
本発明はこのような従来技術の課題に鑑みなされたものであって、これら従来構成に係る課題の少なくとも1つを改善可能で、小型化に有利な電子機器のスイッチ機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的は、電子機器の筐体内に設けられたスイッチを筐体外から間接的に操作するためのスイッチ機構であって、筐体外から操作可能な可動部材と、可動部材を回動可能に支持する支持部材と、可動部材の変位をスイッチに伝達する伝達部材と、を有し、可動部材は、筐体外から直接操作可能な平板状の第1の部分と、第1の部分に接続し、筐体内に隠れた平板状の第2の部分とを有し、可動部材は、操作されていない状態で、第1の部分の表面が筐体の表面と略同一の高さとなるように伝達部材により保持され、支持部材が第2の部分を支持し、可動部材の第2の部分に、支持部材に支持される軸が一体形成され、可動部材は軸を回転軸として回動可能であり、軸の直径は、第2の部分の厚みと略同一であることを特徴とする電子機器のスイッチ機構によって達成される。
【発明の効果】
【0012】
このような構成により、本発明によれば、従来構成に係る課題の少なくとも1つを改善可能で、小型化に有利な電子機器のスイッチ機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明を適用可能な電子機器の一例としてのホルタ心電計の外観斜視図である。
図2】実施形態に係るスイッチ機構に係る構成を側方から見た図である。
図3】実施形態に係るスイッチ機構に関する部品を示す分解斜視図である。
図4】従来のスイッチ機構を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の例示的な実施形態について詳細に説明する。なお、以下では、本発明に係るスイッチ機構をホルタ心電計のイベントスイッチに適用した実施形態について説明するが、本発明に係るスイッチ機構は、任意の電子機器に対して適用可能である。
【0015】
図1は、本発明を適用可能な電子機器の一例としてのホルタ心電計の外観斜視図であり(a)は全体を、(b)は(a)の状態からカバー160を外し、スイッチ機構に関する構成が露出した状態を示している。本実施形態に係るホルタ心電計100は、電池およびメモリカードを交換するための開閉部110を有する。
【0016】
開閉部110はその一端を軸受け部140によって筐体本体が有する軸に対して回動可能に取り付けられた蓋であり、矢印Aで示すように開閉可能である。開閉部110には、第1のロック機構としての開閉レバー120と、第2のロック機構としてのロックレバー130が設けられている。
【0017】
開閉レバー120は矢印Bで示す方向に、図1に示すロック位置(第1の位置)とロック解除位置(第2の位置)との間で移動可能であり、また、開閉部110が閉じた状態においてはロック位置方向にバネで付勢されている。開閉レバー120はロック位置において開閉部110を閉じた状態に維持する。開閉部110は開閉レバー120がロック解除位置にあるときに開くことができる。開閉部110が開いた状態になると、電池収容部181やメモリカードスロットへのアクセスが可能になり、ユーザは電池収容部181に格納された電池170やメモリカードスロットに装着されたメモリカードを交換することができる。
【0018】
ロックレバー130は矢印Cで示す方向に、ロック位置(第3の位置)とロック解除位置(第4の位置)との間で移動可能である。ロックレバー130がロック位置にある場合、開閉レバー120はロック解除位置への移動が抑制され、ロックレバー130がロック解除位置にある場合にロック解除位置へ移動可能なように構成されている。
【0019】
本実施形態のスイッチ機構は、ユーザが筐体外から直接操作可能な可動部材であるレバー150と、筐体本体165に設けられた、レバー150の支持部材である軸受け部161と、伝達部材154とから構成される。本実施形態では、従来は金属材料による別部品であったシャフト152を樹脂製としてレバー150と一体で成型している。シャフト152はレバー150の回転運動の中心として機能すれば、その形状については任意である。
【0020】
以下、本実施形態のスイッチ機構の構成および動作について、図2および図3を用いてさらに詳細に説明する。図2はスイッチ機構に係る構成を側方から見た図であり、(a)はレバー150が押下されていない状態を示す図、(b)は、(a)におけるレバーの支持構造を拡大した図、(c)はレバー150が押下されている状態を示す図である。また、図3はスイッチ機構に関する部品を示す分解斜視図である。
【0021】
レバー150は、筐体外からユーザが直接操作可能な第1の部分である操作部1501と、操作部1501に接続し、筐体内に隠れた第2の部分である延長部1502とから構成されている。また、延長部1502の端部には回転軸であるシャフト152が延長部1502と一体に形成されている。また、操作部1501の裏面(筐体内の面)には、凸部151が設けられている。
【0022】
筐体本体165には、レバー150のシャフト152を支持する一対の軸受け部161が設けられている。図1(b)や図3に明確に示しているように、軸受け部161はシャフト152を取り囲む構成とはなっておらず、略U字状の溝を有する構成であり、図2(b)に示すように、延長部1502を覆っているカバー160の裏面と、軸受け部161の溝との組み合わせによってシャフト152を取り囲んで支持するような構成としている。
【0023】
レバー150の凸部151は略円筒形状を有し、筐体本体165に保持される伝達部材154が有する穴1541にその一部が埋め込まれている。
レバー150は、図2(a)に示す、操作されていない状態(レバー150に押下方向の外力が加わっていない状態)において、先端部155が筐体本体165の対向部分162と所定の距離を有する所定の位置に、伝達部材154によって保持されている。伝達部材154はゴム系材料等の弾性体で形成されており、レバー150に加えられた外力またはそれによるレバー150の変位をまたは回路基板180に実装されたスイッチ170に伝達する。また、伝達部材154は、ユーザに感じさせるスイッチの操作感を調整する機能も有している。
【0024】
レバー150の操作部1501が押下されると、図2(c)に示すようにレバー150がシャフト152を回転軸として時計回りに回動し、レバー150の先端部155が筐体本体165の対向部分162に突き当たるまでの範囲で移動可能である。この際、レバー150を押下する力は、レバー150の裏面に設けられた凸部151を通じて伝達部材154を押圧し、伝達部材154を通じてスイッチ170に伝達される。レバー150の先端部155の可動範囲内でスイッチ170が押下されるように、先端部155の可動範囲(ストローク)や伝達部材154の硬さや形状が調整される。
【0025】
このように、本実施形態のスイッチ機構においても、レバー150が回動可能に支持され、レバー150に設けられた凸部151によって伝達部材154を押下し、伝達部材154を介して筐体内に設けられたスイッチ170が間接的に操作されるという基本的な構成および作用は従来と同様である。
【0026】
しかしながら、本実施形態では、レバー150の全体をユーザが直接操作可能であった従来構成と異なり、回動軸であるシャフト152とその近傍部分については筐体内に含める構成としている。これにより、シャフト部分が押下されることを考慮することが基本的に不要となるので、シャフト部分の強度を従来よりも低くしても差し支えなくなる。そのため、従来は金属製の別部品であったシャフト152を樹脂製としてレバー150と一体成形することが可能になる。これによりレバー150には軸受け部が不要となり、レバー150の厚み(高さ)を大幅に軽減することができる。
【0027】
また、上述したように、軸受け部161はシャフト152を取り囲む構成とする必要が無く、上述のように略U字状の溝を有する構成でよいため、シャフト152を支持するための、筐体本体165における軸受け部161の高さも大幅に削減できる。
【0028】
また、操作部1501とシャフト152とを離して配置することによって、従来構成のように離さない場合と比較して、同じ回転角度で得られるレバー先端部のストローク量が大きくなる。つまり、あるストローク量を得るためにレバー150が回転する必要のある角度を小さくできるため、その点においてもレバー150の高さを削減することが可能であり、電子機器の小型化において顕著な効果が実現できる。
【0029】
レバー150部分の高さを削減できるということは、レバー150と操作されるスイッチ170との距離が近くなることであるため、伝達部材154によって力や変位を伝達する距離が短くて済むようになる。上述したように、伝達部材154は弾性材料で形成されるため、力や変位の伝達距離が長くなるほど物性の個体差がスイッチの操作感として現れる。具体的には、スイッチのクリック感のばらつきが大きくなる。本実施形態の構成では、図4との比較から明確なように、凸部151とスイッチ170の間に介在する伝達部材154の厚みが大幅に少なくなっているため、クリック感のばらつきを抑制することができる。
【0030】
以上説明したように本実施形態によれば、筐体内に設けられたスイッチを筐体外から間接的に操作するためのスイッチ機構において、筐体外部から操作可能なレバーを、操作を受け付ける部分と、筐体内に存在する部分とから構成し、筐体内に存在する部分において回動可能に支持する構成とすることにより、レバー部分の高さを抑え、装置の小型化に有利なスイッチ機構を実現できる。
【0031】
なお、本実施形態においては、伝達部材をゴム系材料のような、変形によって力や変位の一部を吸収して伝達するような弾性体で形成する場合について説明した。しかし、伝達部材を構成する素材や構成に特に制限は無く、他の材料を用いたり、複数の部材の組み合わせにより実現されてもよい。例えば、レバーとスイッチとの位置関係によっては、リンク機構や梃子などが組み合わされてもよいし、バネを用いて構成することもできる。
【0032】
また、本実施形態においては、軸受け部161に支持される軸であるシャフト152が、延長部1502の、操作部1501から最も離れた位置(末端)に形成される構成を説明したが、必ずしも末端に形成されなくてもよい。
図1
図2
図3
図4