(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフボールに関し、さらに詳細には、内面に軟らかい塗装層を備えたゴルフボールに関する。
【0002】
ゴルフボールの表面には、通常、塗装層が設けられている。この塗装層は、主に、色調など外観や、耐衝撃性、耐摩耗性などの性能が求められている。特開平8−206255号公報には、耐衝撃性および耐摩耗性を向上する目的で、アクリル系ポリオールとポリエステルポリオールと硬化剤とを含む塗料組成物で塗装層を形成したゴルフボールが開示されている。
【0003】
一方、高性能なゴルフボールとは、ドライバーでの打撃においてスピン量が小さく、よって飛距離が増大する一方、アプローチでの打撃ではスピン量が高くなり、よってグリーン周りでのコントロール性に優れる。特開平9−276446号公報には、このような性能を向上させる目的で、塗装層を2層にして、内側の層をディスパーション塗装による熱可塑性樹脂の白色塗膜とし、外側の層をディスパーション塗装による熱硬化性樹脂の透明塗膜とすることが開示されている。
【0004】
また、特開2001−585号公報には、中間層とカバーとの間に、エポキシ樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、ビニル樹脂系接着剤またはゴム系接着剤の接着剤層を形成したゴルフボールが記載されている。当該公報には、このような接着剤層を形成したゴルフボールは、高反発性で、アイアンショットにおけるスピン特性が良好であることが記載されている。
【0005】
特開平11−137725号公報には、中間層とカバーの材料を、一方をアイオノマー樹脂、他方をウレタン樹脂で形成し、内層カバーと外層カバーとの間に接着剤を形成したゴルフボールが記載されている。当該公報には、このような構成にしたゴルフボールは、繰り返し打撃に対する耐久性があり、アプローチショットでのスピン量が多く、ドライバーショットでのスピン量が少ないことが記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るゴルフボールの一実施の形態について説明するが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。なお、添付図面は、本発明の理解を優先しており、縮尺通りには描かれていない。
【0016】
図1に示すように、この実施の形態のゴルフボール1は、ボールの中心に位置するコア10と、コアの外側を包囲するカバー30と、コアとカバーの間に位置する塗装層40とを主に備える。カバー30の表面には、複数のディンプル32が形成されている。塗装層40は、コア10の表面を実質的に均一の厚さで覆っている。
【0017】
なお、本発明のゴルフボールは、
図1に示す構成に限定されず、
図2や
図3に示すように、任意に中間層20をコア10とカバー30との間に備えることもできる。
図1では、コア10とカバー30の両方に塗装層40が直接的に接触するように形成されているが、例えば、
図2に示すように、塗装層40は、コア10と中間層20との間に形成したり、
図3に示すように中間層20とカバー30との間に形成してもよい。
【0018】
コア10は、主に基材ゴムにより形成することができる。基材ゴムとしては、広くゴム(熱硬化性エラストマー)を用いることができ、例えば、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリウレタンゴム(PU)、ブチルゴム(IIR)、ビニルポリブタジエンゴム(VBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ニトリルゴム(NBR)、シリコーンゴムを用いることができるが、これらに限定されない。ポリブタジエンゴム(BR)としては、例えば、1,2−ポリブタジエンやシス1,4−ポリブタジエン等を用いることができる。
【0019】
コア10には、主成分となる基材ゴムの他、任意に、例えば、共架橋材、架橋剤、充填材、老化防止剤、異性化剤、素練り促進剤、硫黄、及び有機硫黄化合物を添加することができる。また、主成分として、基材ゴムに代えて、熱可塑性エラストマー、アイオノマー樹脂、またはこれらの混合物を用いることもできる。
【0020】
共架橋材としては、これに限定されないが、例えば、α、β−不飽和カルボン酸またはその金属塩を用いることが好ましい。α、β−不飽和カルボン酸またはその金属塩としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、およびこれらの亜鉛塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などがある。共架橋材の配合は、これに限定されないが、例えば、基材ゴムを100重量部として、5重量部以上が好ましく、10重量部以上がより好ましい。また、共架橋材の配合は、70重量部以下が好ましく、50重量部以下がより好ましい。
【0021】
架橋剤としては、これに限定されないが、有機過酸化物を用いることが好ましい。開始剤の配合は、これに限定されないが、例えば、基材ゴムを100重量部として、0.10重量部以上が好ましく、0.15重量部以上がより好ましく、0.30重量部以上が更に好ましい。また、開始剤の配合は、8重量部以下が好ましく、6重量部以下がより好ましい。
【0022】
充填材としては、例えば、銀、金、コバルト、クロム、銅、鉄、ゲルマニウム、マンガン、モリブデン、ニッケル、鉛、白金、スズ、チタン、タングステン、亜鉛、ジルコニウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化マンガンなどを用いることができるが、これらに限定されない。充填材は、粉末形状が好ましい。充填材の配合は、これに限定されないが、例えば、基材ゴムを100重量部として、1重量部以上が好ましく、2重量部以上がより好ましく、3重量部以上が更に好ましい。また、充填材の配合は、100重量部以下が好ましく、80重量部以下がより好ましく、70重量部以下が更に好ましい。
【0023】
コア10は、実質的に球状の形状を有している。コア10の外径は、42mm以下が好ましく、41mm以下がより好ましく、40mm以下がさらに好ましい。コア10の外径の下限は、小さ過ぎるとゴルフボールの反発が低下してしまうことから、5mm以上が好ましく、15mm以上がより好ましく、25mm以上が最も好ましい。コア10は、
図1では中実のコアを示したが、これに限定されず、中空のコアであってもよい。また、コア10は、
図1では一層として示したが、これに限定されず、例えば、センターコアとその包囲層などの複数の層からなるコアとしてもよい。
【0024】
コア10の成形法は、ゴルフボールのコアの公知の成形法を採用することができる。例えば、これに限定されないが、基材ゴムを含む材料を混練機で混練した後、この混練物を丸型金型で加圧加硫成形して得ることができる。また、複数の層を有するコアの成形法は、多層構造のソリッドコアの公知の成形法を採用することができる。例えば、センターコアを、材料を混練機で混練し、この混練物を丸型金型で加圧加硫成形して得た後、包囲層として、材料を混練機で混練し、この混練物をシート状に成形し、このシートでセンターコアを覆ったものを丸型金型で加圧加硫成形することで、複数層のコアを得ることができる。
【0025】
カバー30は、その材料として、これらに限定されないが、アイオノマー樹脂、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、熱硬化性ポリウレタン、またはこれらの混合物を使用して形成することができる。また、カバー30には、上記のアイオノマー樹脂、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、熱硬化性ポリウレタンの主成分の他に、他の熱可塑性エラストマーや、ポリイソシアネート化合物、脂肪酸又はその誘導体、塩基性無機金属化合物、充填材などを添加することができる。
【0026】
アイオノマー樹脂としては、これに限定されないが、以下の(a)成分及び/又は(b)成分をベース樹脂とするものを用いることができる。また、このベース樹脂には、任意に、以下の(c)成分を添加することができる。(a)成分は、オレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル3元ランダム共重合体及び/又はその金属塩、(b)成分は、オレフィン−不飽和カルボン酸2元ランダム共重合体及び/又はその金属塩、(c)成分は、ポリオレフィン結晶ブロック、ポリエチレン/ブチレンランダム共重合体を有する熱可塑性ブロックコポリマーである。
【0027】
カバー30の厚さは、これに限定されないが、0.2mm以上が好ましく、0.4mm以上がより好ましい。また、カバー30の厚さは、4mm以下が好ましく、3mm以下がより好ましく、2mm以下が更に好ましい。カバー30の表面には、複数のディンプル32が形成されている。ディンプル30の大きさ、形状、数などは、ゴルフボール1の所望する空気力学的特性に応じて、適宜、設計することができる。
【0028】
カバー30の硬度は、これに限定されないが、ショアDにて、50以上が好ましく、55以上がより好ましい。また、カバー30の硬度は、75以下が好ましく、70以下がより好ましく、65以下が更に好ましい。
【0029】
カバー30の形成法は、ゴルフボールのカバーの公知の成形法を採用することができる。例えば、特に限定されないが、カバー30は、金型内にカバー用の材料を射出成形することによって形成する。このカバー成型用の金型はカバーを成型するためのキャビティを有し、このキャビティの壁面にはディンプルを形成するための複数の凸部を有する。キャビティの中央にコア10を配置することで、コア10を覆うようにカバー30が形成される。
【0030】
塗装層40は、ゴム弾性を有する材料により形成される。ゴム弾性を有する材料としては、特に限定されるものではないが、ヤング率が0.1MPa以上となるものが好ましく、1MPa以上となるのもがより好ましく、3MPa以上となるものが更に好ましい。また、ヤング率が70MPa以下となるものが好ましく、65MPa以下となるものがより好ましく、60MPa以下となるものが更に好ましい。ゴム弾性を有する材料としては、同様に、これに限定されるものではないが、ポアソン比が0.45以上となるものが好ましく、0.46以上となるものがより好ましく、0.47以上となるものが更に好ましい。また、ポアソン比が0.60以下となるものが好ましく、0.55以下となるものがより好ましく、0.50以下となるものが更に好ましい。ヤング率やポアソン比が上記の範囲に入らない場合には、塗装層40が十分な柔軟性と摩擦力を得ることが出来なくなることがある。
【0031】
このようなゴム弾性を有する材料として、例えば、JIS K6397の分類に従うと、Mグループ(ポリメチレン型の飽和主鎖をもつゴム)として、ACM(いわゆるアクリルゴムで、アクリル酸エチルまたは、他のアクリル酸エステル類と加硫を可能にする少量の単量体とのゴム状共重合体)、AEM(アクリル酸エチル又は他のアクリル酸エステル類とエチレンとのゴム状共重合体)、ANM(アクリル酸エチル又は他のアクリル酸エステル類とアクリロニトニルとのゴム状共重合体)、CM(塩素化ポリエチレン)、CSM(クロロスルフォン化ポリエチレン。商品名:ハイパロンなど)、EPDM(エチレンとプロピレンとジエンとのゴム状共重合体。EPTともいう)、EPM(エチレンとプロピレンとのゴム状共重合体。EPRともいう)、EVM(エチレンと酢酸ビニルとのゴム状共重合体)のポリマーを用いることができる。
【0032】
Oグループ(主鎖に炭素と酸素をもつゴム)としては、CO(エピクロロヒドリンゴムまたはポリクロロメチルオキシランともいう)、ECO(エチレンオキシドとエピクロロヒドリンとのゴム状共重合体)のポリマーを用いることができる。
【0033】
Rグループ(主鎖に不飽和炭素結合をもつゴム)としては、BR(ブタジエンゴム)、CR(クロロプレンゴム。商品名:ネオプレンなど)、IIR(いわゆるブチルゴムで、イソブテンとイソプレンとのゴム状共重合体)、IR(いわゆる合成天然ゴムで、イソプレンゴム)、NBR(いわゆるニトリルゴムで、アクリロニトリルとブタジエンとのゴム状共重合体)、NR(天然ゴム)、NOR(ノルボルネンゴム)、SBR(スチレンとブタジエンとのゴム状共重合体)、E−SBR(乳化重合で合成されたスチレンとブタジエンとのゴム状共重合体)、S−SBR(溶液重合で合成されたスチレンとブタジエンとのゴム状共重合体)、SIBR(スチレンとイソプレンとブタジエンとのゴム状共重合体)、XBR(カルボキシル化されたブタジエンゴム)、XCR(カルボキシル化されたクロロプレンゴム)、XNBR(カルボキシル化されたアクリロニトリルとブタジエンとのゴム状共重合体)、XSBR(カルボキシル化されたスチレンとブタジエンとのゴム状共重合体)、BIIR(いわゆる臭素化ブチルゴムで、臭素化されたイソブテンとイソプレンとのゴム状共重合体)、CIIR(いわゆる塩素化ブチルゴムで、塩素化されたイソブテンとイソプレンとのゴム状共重合体)のポリマーを用いることができる。
【0034】
塗装層40の厚さは、これに限定されないが、10μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましく、50μm以上が更に好ましい。また、塗装層40の厚さは、150μm以下が好ましく、120μm以下がより好ましく、100μm以下が更に好ましい。塗装層の厚さが薄すぎる場合には、ドライバーショット時のスピン量を十分に増加させることが出来ない。また、塗装層が厚すぎる場合には、ボールの耐久性が低下してしまう場合がある。
【0035】
塗装層40の硬度は、これに限定されないが、JIS−C硬度にて、10以上が好ましく、20以上がより好ましく、30以上が更に好ましい。また、塗装層40の硬度は、70以下が好ましく、60以下がより好ましく、50以下が更に好ましい。特に、塗装層40は、コア10よりも硬度を低くすることが好ましい。また、コア10は、コア中心からコア表面に向けて硬度が逐次高くなるように成形することができる。ここで、塗装層40の硬度はコア中心硬度よりも硬度が低いことが好ましく、より好ましくは10以上低いことが好ましい。コア中心硬度よりも硬度が高くなるような場合には適切なスピンを得られない場合がある。
【0036】
ゴルフボール製品1のμ硬度は、3.0以上が好ましく、3.2以上がより好ましく、3.5以上が更に好ましく、その上限は5.0以下が好ましく、4.5以下がより好ましい。この製品μ硬度は、ゴルフボール製品1を、初期荷重98N(10kgf)から1275N(130kgf)まで荷重を負荷した時のたわみ(変形)量のことをいい、単位はmmである。製品μ硬度が硬くなり過ぎると、アマチュアゴルファーの感じる打感が硬くなりすぎて好ましくないことがある。
【0037】
塗装層40の形成法は、コア10または中間層20の表面に塗装層40を形成する場合でも、ゴルフボールの塗装層の公知の成形法を採用することができる。例えば、特に限定されないが、塗装層40は、上記のゴム弾性を有する材料を溶媒で希釈することで液状の塗料を得ることができる。溶媒としては、特に限定されないが、n−ペンタン、ガソリン、n−ヘキサン、ジエチルエーテル、シクロヘキサン、酢酸イソブチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、メチルイソプロピルケトン、キシレン四塩化炭素、メチルプロピルケトン、エチルベンゼン、キシレン、トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ベンゼン、クロロホルム、メチルエチルケトン、トリクロロエチレン、アセトン、n−ヘキサノール等を用いることができる。希釈率(塗装ポリマー濃度)は、特に限定されないが、5%〜100%とすることができる。
【0038】
そして、この塗料をコア10または中間層20の表面に塗布した後、架橋することで、塗装層40を形成することができる。塗布法は、特に限定されないが、スプレー式、ディップ式、ロール式、スピン式などにより塗布することができる。また、架橋法は、特に限定されないが、上記の塗料に架橋種または硬化剤を添加し、塗料を塗布後、架橋または硬化を行うことが好ましい。架橋種または硬化剤としては、十分な反発弾性を有する塗装層40を得るために、例えば、過酸化物架橋、金属架橋、アミン架橋、オキシム架橋、樹脂架橋、硫黄架橋が好ましい。また、塗料には、架橋種または硬化剤の他、任意に、フィラーなどを添加することもできる。架橋させることが難しい材料であっても、分子鎖の長い材料を溶媒に分散させることによって塗装することが可能となり、架橋種を用いなくとも分子鎖が絡み合うことによりゴム弾性を有する塗料を作ることが可能である。
【0039】
カバー30の上には、任意に、トップコート(図示省略)を形成することができる。トップコートとしては、ゴルフボールのトップコートとして公知の材料を用いることができる。材料としては、ポリエステルポリオールやアクリルポリオールなどを硬化剤用いて定着させることができる。例えば、2液硬化型ウレタン塗料を挙げることができ、特に無黄変タイプの塗料を用いることが好ましい。トップコートの厚さは、例えば、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。また、トップコートの厚さは、100μm以下が好ましく、60μm以下がより好ましい。
【0040】
コア10とカバー30との間に配置する中間層20は、必須ではなく、任意に設けることができる。コア的な機能を有する中間層を設けてもよいし、カバー的な機能を有する中間層を設けてもよい。また、複数の中間層を設けてもよく、例えば、コア的またはカバー的な機能を有する複数の中間層を設けてもよいし、コア的な機能を有する第1の中間層とカバー的な機能を有する第2の中間層を設けてもよい。
【0041】
中間層20の材料としては、これに限定されないが、以下の加熱混合物を主材として用いることが好ましい。この材料を中間層に用いることにより、打撃時に低スピン化することができ、大きな飛距離を得ることができる。
(a)オレフィン−不飽和カルボン酸2元ランダム共重合体及び/又はオレフィン−不飽和カルボン酸2元ランダム共重合体の金属イオン中和物と、
(b)オレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル3元ランダム共重合体及び/又はオレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル3元ランダム共重合体の金属イオン中和物と
を重量比で100:0〜0:100になるように配合したベース樹脂と、
(e)このベース樹脂に対して重量比で100:0〜50:50になるように配合した非アイオノマー熱可塑性エラストマーと、
ベース樹脂と(e)成分を含む樹脂成分100重量部に対して、
(c)分子量が228〜1500の脂肪酸及び/又はその誘導体5〜150重量部と、
(d)ベース樹脂及び(c)成分中の未中和の酸基を中和できる塩基性無機金属化合物0.1〜17重量部。
【0042】
「主材」とは、中間層20の総重量に対して50重量%以上、好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上の材料を意味する。
【0043】
中間層20の硬さは、ショアD硬度で、40以上が好ましく、45以上がより好ましく、50以上が更に好ましい。中間層20の硬さは、カバー30の硬さよりも軟らかいことが好ましく、具体的には、ショアD硬度で、65以下が好ましく、60以下がより好ましい。
【0044】
中間層20の厚さは、これに限定されないが、0.5mm以上が好ましく、1mm以上がより好ましい。また、中間層20の厚さは、10mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましく、3mm以下が更に好ましい。なお、中間層20は、
図1では単層を示したが、これに限定されず、2層以上の複数層にすることもできる。
【実施例】
【0045】
表1に示す構成のゴルフボールをそれぞれ作製し、ゴルフボールのスピン性能を測定する試験を行った。各々の試験例について5つのボールを準備および評価した上で、その平均値を結果とした試験結果を表1に示す。表1に示すコアの材料の配合A1およびA2については表2(重量部)に、カバーおよび中間層の材料の配合B〜Dについては表3(重量部)に、塗装層の材料の配合Eについては表4(重量部)に示す。なお、塗装層は、所定の配合の材料をトルエン等で30〜50%希釈してスプレーにて塗装した。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
ポリブタジエンは、JSR社製のBR01を使用し、基材ゴムとして用いた。
アクリル酸亜鉛は、日本触媒社製のWN86。
過酸化物1は、ジクミルパーオキサイドで、日本油脂製の商品名パークミルD。
過酸化物2は、1,1ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサンとシリカの混合物であって、日本油脂社製の商品名パーヘキサC−40。開始剤として用いた。
老化防止剤は、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)で、大内新興化学工業社製の商品名ノクラックNS−6。
酸化亜鉛は、堺化学工業社製の商品名酸化亜鉛3種。
【0049】
【表3】
【0050】
ハイミラン1557は、三井デュポンポリケミカル社製のZnイオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体のアイオノマー樹脂。
ハイミラン1605は、三井デュポンポリケミカル社製のNaイオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体のアイオノマー樹脂。
ハイミラン1706は、三井デュポンポリケミカル社製のZnイオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体のアイオノマー樹脂。
ハイミラン1601は、三井デュポンポリケミカル社製のNaイオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体のアイオノマー樹脂。
AN4318は、三井デュポンポリケミカル社製のオレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル共重合体。
AN4319は、三井デュポンポリケミカル社製のオレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル共重合体。
TiO
2は、石原産業社製のタイペークR550。
Blueは、ホリディピグメンツ社製の商品名EP−62。
【0051】
【表4】
【0052】
油性プロトは、ハギテック社の商品名油性プロトであり、SBR系樹脂を主成分とする材料である。詳細な組成は、ガソリン(ナフサ)が33〜37%、ヘキサンが13〜16%、キシレンが15〜19%、アセトンが8〜10%、SBR系樹脂が24〜28%。
【0053】
表1のスピン性能の測定試験は、ドライバー(ブリヂストンスポーツ社製のTourStage X−Drive Type455 9.5°)及びアプローチウェッジ(ブリヂストンスポーツ社製のTourStage X−WEDGE 58°)をスウィングロボット(ミヤマエ社製)に装着し、ドライバーはヘッドスピード45m/s、アプローチはヘッドスピード25m/sで打撃した時の打撃直後のボールを、高速カメラを使用してスピン量(rpm)を測定した。
【0054】
表1のCOR耐久性の測定試験は、米国AUTOMATEDDESIGNCORPORATION製のADCBALLCORDURABILITYTESTER試験機を用いてゴルフボールの耐久性を評価した。この試験機は、ゴルフボールを空気圧で発射させた後、平行に設置した2枚の金属板に連続的に衝突させる機能を有する。ボールが割れるまでに要した発射回数の平均値をCOR耐久性とした。この場合、平均値とは、同種のボールを7個用意し、それぞれのボールを発射させて7個のボールがそれぞれ割れるまでに要した発射回数を平均化した値である。試験機のタイプは横型CORであり、金属板への入射速度は43m/sであった。
【0055】
表4のヤング率の測定方法は、先ず、各配合の材料を、スプレーにより厚さ2mmのシート状に成形し、23±1℃の環境下で2週間保存した後、JIS K6251に準拠して、ダンベル状3号形試験片に加工し、株式会社A&D社製のテンシロン万能試験機RTG−1310型を用いて、試験速度500mm/minで、10%伸び時の引張強さ(MPa)を測定した。そして、この引張強さの測定値からヤング率の値を算出した。なお、各配合について3つの試験片を作成し、測定結果はそれらの平均値とした。
【0056】
表1に示すように、塗装層を設けなかった比較例1〜2については、μ硬度が3以上であるとともに、カバーが硬い構造になっているため、比較例3は製品μ硬度自体が大きすぎるためアプローチのスピン量は一定の性能を有しているものの、ドライバーのスピン量が非常に少なかった。
【0057】
一方、実施例1〜8は、ゴム弾性を有する材料で形成した塗装層を、中間層とカバーの間またはコアと中間層の間に配置したことから、塗装層で衝撃を吸収するとともに、アプローチのスピン量が大幅に増加することなく、ドライバーショットのスピン量が大幅に増加した。