(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1の場合、自動車が通路に沿って真っ直ぐの姿勢で停止していることが前提であり、自動車が斜めに停止している場合には、台車の旋回アームユニットでタイヤを挟持して持上げることができない場合がある。そのため、平坦な床面上に停止させた自動車下方のタイヤ間に搬送装置を進入させて内側からアームでタイヤを挟持して搬送するような機械式駐車設備の場合には、自動車の傾きや、左右方向のずれなどを検知する装置が必要となる。
【0006】
また、上記特許文献2の場合、入庫した自動車の停止姿勢に応じて左右一組の搬送装置をそれぞれ個別に移動制御する必要がある。そのため、搬送装置(搬送台車)の制御が難しい。しかも、自動車のタイヤ間に搬送装置を進入させ、内側からアームでタイヤを挟持して搬送する機械式駐車設備への適用は難しい。
【0007】
そこで、本発明は、入庫部において自動車のタイヤの姿勢を検出することができる入庫部検知装置と、それを備えた機械式駐車設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、機械式駐車設備の入庫部における入庫部検知装置であって、前記入庫部の床面から所定高さに離間して配置された少なくとも2個の測域センサと、前記測域センサの走査情報に基づいて入庫部の床面上における物体を検出する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記少なくとも2個の測域センサで入庫部の検知領域を水平方向に走査して検出データを得る走査制御部と、前記各測域センサの検出データから床面上の物体の姿勢を認識する物体認識部と、を有している。
【0009】
この構成により、少なくとも2個の測域センサによって走査した検出データから入庫部の床面上のタイヤなどの物体を直接的に検出することができる。この検出データからタイヤの姿勢を検出することができるため、迅速に入庫した自動車の姿勢を検知することができる。しかも、入庫部における自動車以外の人間や荷物なども検出することができる。
【0010】
また、前記物体認識部は、前記各測域センサの検出データから所定サイズ以上の物を候補データに設定し、前記各測域センサの候補データから床面上のタイヤを認識する自動車認識部をさらに備えていてもよい。
【0011】
このように構成すれば、検出データの中から細かい物やノイズの検出をキャンセルして、所定サイズ以上の物だけを候補データとして、タイヤを検出するようにできる。このタイヤの検出は、例えば、候補データの中で検出領域が近いものをタイヤとして認識するようにすればよい。
【0012】
また、前記自動車認識部は、前記各測域センサの候補データの中で重心位置が近いものを同一物体として関連付けてタイヤとして認識するように構成されていてもよい。
【0013】
このように構成すれば、検出データの中で重心位置が近い候補データをタイヤとして認識し、精度良くタイヤを検出することができる。
【0014】
また、前記物体認識部は、前記候補データの中でタイヤとして認識した候補データ以外を残留物として認識するように構成されていてもよい。
【0015】
このように構成すれば、候補データの中でタイヤ以外の候補データを残留物として迅速に認識することができる。
【0016】
また、前記自動車認識部は、前記候補データの中でタイヤとして認識した各測域センサの検出データに基づいて4本のタイヤの輪郭を推定するように構成されていてもよい。この「タイヤの輪郭」は、測域センサで走査した高さにおける輪郭である。
【0017】
このように構成すれば、入庫部の自動車検知領域において物体を測域センサで検知し、自動車認識部によってタイヤの位置及び輪郭を適切に検出することができる。これにより、タイヤの傾きなどを求めることができる。
【0018】
また、前記自動車認識部は、検出データに基づいて、少なくともタイヤの外形寸法を求め、タイヤの外形寸法を求めることができないタイヤは、検出されているデータに基づいて不足データを推定するように構成されていてもよい。この「タイヤの外形寸法」は、測域センサで走査した高さにおける外形寸法である。
【0019】
このように構成すれば、少なくとも2個の測域センサで検出した検出データに基づいて、走査した高さにおける4本のタイヤの外形寸法を検出することができる。
【0020】
また、前記自動車認識部は、前記タイヤの検出データから前タイヤの位置と、後タイヤの位置とを求め、前記前タイヤと後タイヤの位置から自動車の傾きを求めるように構成されていてもよい。
【0021】
このように構成すれば、4本のタイヤの位置情報から自動車の傾きを検出することができる。
【0022】
また、前記自動車認識部は、自動車の中心線に対する前タイヤの傾きを求めるように構成されていてもよい。この明細書及び特許請求の範囲の書類中における「自動車の中心線」は、自動車の左右方向中心の前後方向中心線をいう。
【0023】
このように構成すれば、4本のタイヤの位置から自動車の中心線に対して前タイヤの傾きを求めることができる。
【0024】
また、前記自動車認識部は、前記タイヤの検出データから前タイヤと後タイヤのホイールベースを求めるように構成されていてもよい。
【0025】
このように構成すれば、4本のタイヤ位置からホイールベースを求め、入庫可能な自動車か否かの判断に利用することができる。
【0026】
また、前記自動車認識部で求められた検出データに基づき、自動車の姿勢の修正情報を提供する情報提供部をさらに有していてもよい。
【0027】
このように構成すれば、入庫部に自動車を入庫させている利用者に対して自動車の傾きなどの情報を提供し、自動車を適切な姿勢で入庫させるように促すことができる。
【0028】
また、前記測域センサは、床面から30mm〜100mmの高さを走査するように配置されていてもよい。
【0029】
このように構成すれば、自動車の下面と床面との間の比較的高い位置を走査して、タイヤの位置を適切に検出することができる。
【0030】
一方、本発明に係る機械式駐車設備は、前記いずれかの入庫部検知装置を備えた機械式駐車設備であって、前記入庫部は、前記自動車認識部によるタイヤの認識結果に基づいてタイヤの左右方向の位置を調整して自動車の中心線を適切な位置にするタイヤ位置調整装置を備えている。
【0031】
この構成により、入庫部検知装置の自動車認識部で認識したタイヤの位置情報に基づき、自動車の中心線が適切な位置となるようにタイヤをタイヤ位置調整装置で左右方向に調整することができる。これにより、搬送台車を自動車の下方に進入させる機械式駐車設備の場合には、入庫した自動車が搬送台車の進入に適した状態となるようにタイヤの位置を調整することができる。
【0032】
また、前記入庫部は、前記入庫部検知装置で検出した物体の位置を表示するモニタを備えていてもよい。
【0033】
このように構成すれば、入庫部における自動車と、人間や荷物などの存在と、その位置を利用者がモニタで知ることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、入庫部において自動車のタイヤを直接的に検知してタイヤの姿勢を迅速に検出することが可能となる。また、入庫部における自動車以外の人間や荷物なども検出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の実施形態では、自動車の前方からタイヤ間の下方に進入させる搬送装置(図示略)を備え、その搬送装置に備えられたアームで外側に位置するタイヤを挟持して持上げ、その状態で自動車を搬送する機械式駐車設備を例に説明する。なお、機械式駐車設備の全体的な説明は省略する。また、自動車の進入方向を前後方向、自動車の幅方向を左右方向という。
【0037】
まず、
図1(a) に基づいて、この機械式駐車設備1の入庫部3について説明する。図示するように、機械式駐車設備1の建屋2には、所定位置に入庫部3が設けられている。この入庫部3は、図示する下方から入庫するようになっており、床面4の中央部には、入庫した自動車Vを格納階に搬送するエレベータ装置15が設けられている。この実施形態のエレベータ装置15には、前タイヤTFを左右方向に位置調整するタイヤ位置調整装置16と、後タイヤTRを左右方向に位置調整するタイヤ位置調整装置17とが設けられている。これらのタイヤ位置調整装置16,17は、タイヤを左右方向に移動させるコンベアなどで構成することができる。
【0038】
また、入庫部3には、入出庫口側に第1センサ11と第2センサ12が設けられ、前面側には第3センサ13と第4センサ14が設けられている。これらのセンサ11,12,13,14には、光電管を用いることができる。第1センサ11は、エレベータ装置15の後端部に設けられ、第4センサ14は、エレベータ装置15の前端部に設けられている。第3センサ13は、停止用であり、第4センサ14は、入庫した自動車Vの前端がエレベータ装置15からはみ出ていないことを検知するはみ出し検知用である。第2センサ12は、入庫する自動車Vの前端が通過したことと、後端が通過したことを検知する車長計測用である。この第2センサ12と第3センサ13との間に実車検知センサ18が設けられており、自動車Vが入庫していることを検知している。なお、入庫部3の前後方向には他のセンサも設けられるが、他のセンサの記載は省略する。
【0039】
さらに、入庫部3の入出庫口6には、運転盤5が設けられ、入庫操作や、入庫後に退場して入出庫口扉7を閉鎖するときなどに操作される。また、入庫部3の前面には鏡8と案内表示器9とが設けられており、自動車Vの入庫位置を検知して、「少し右」、「まっすぐに」等の案内表示がなされる。この案内表示器9は、自動車Vの姿勢の修正情報を利用者に提供する情報提供部である。この情報提供部は、スピーカなどの音声で情報を提供するものでもよい。こられの構成は公知の構成であり、詳細な説明は省略する。
【0040】
そして、このような入庫部3に第1実施形態の入庫部検知装置20が設けられている。この入庫部検知装置20は、入庫部3の離間した位置に配置された2個の測域センサ21,22(レーザスキャナ)と、これらの測域センサ21,22を制御する制御装置23とを有している。第1実施形態の測域センサ21,22は、入庫部3の前面中央部と、側面における自動車Vの中央部となる位置の2箇所に配置されている。これらの測域センサ21,22は、固定部である入庫部3に設けられている。
【0041】
2個の測域センサ21,22は、水平面内で離間した位置に設けられており、入庫部3の床面4から所定高さを走査するように配置されている。測域センサ21,22の配置高さとしては、自動車Vをコンベアで駐車棚に受け渡す方式の駐車設備に適用する場合には、30mm〜100mmの範囲とされ、自動車Vの最低地上高との関係で、自動車Vの下面に出ているものを避けて走査できる高さとしては、80mm〜90mmがより好ましい。この測域センサ21,22を配置する高さは、その高さを走査することによりタイヤTF,TRの位置を検出するため、自動車Vの車体底面と床面との間に設ける必要がある。この第1実施形態では、前面中央部に設けられた測域センサ21を「前面センサ21」、側面中央部に設けられた測域センサ22を「側面センサ22」ともいう。
【0042】
前面センサ21は、エレベータ装置15の中心線CE上に設けられており、中心線CEを中心に左右に各95度、合計190度の範囲を走査するものが用いられている。側面センサ22は、入庫する自動車Vの前後方向中心付近に設けられており、前後に各95度、合計190度の範囲を走査するものが用いられている。図では走査する角度を小さい円弧で示しているが、これらの測域センサ21,22は、入庫部3において所定の範囲に設定された検知領域30の範囲内で、約20〜30mの距離を検出することができるものを用いることができる。このような2個の測域センサ21,22により、タイヤTF,TRを離れた位置から異なる角度で検知するようにしている。
【0043】
測域センサ21,22としては、空間の物理的な形状データを出力することができる走査型の光波距離計を用いることができる。また、1軸走査型の測域センサ21,22を用いて、水平方向に半導体レーザを走査して、走査平面上における物体までの距離、角度の2次元の検出データを得るようにすればよい。
【0044】
上記検知領域30としては、入庫部3の平面視において、周囲に存在するセンサ11〜14,18や、鏡8、案内表示器9、入出庫口扉7などの内側に設定されている。この検知領域30は任意に設定可能である。また、検知領域30は、特定位置にのみ設定することもできる。この実施形態であれば、タイヤ位置調整装置16,17の範囲に設定することができる。また、例えば、前タイヤTFの停止する位置、後タイヤTRの停止する位置に、予め領域を設定しておくことができる。タイヤの停止位置に領域を設定することで、より狭い範囲でタイヤを迅速に検出することができる。
【0045】
図1(b) に示すように、上記制御装置23としては、各測域センサ21,22からの情報を処理できるパーソナルコンピュータを内蔵したものを用いることができる。この制御装置23は、測域センサ21,22を制御する走査制御部24と、その検知データから種々の演算を行う演算部25とを有している。走査制御部24により、上記測域センサ21,22の制御、検知領域30の設定などが行われる。上記演算部25は、物体を認識する物体認識部26を有している。この物体認識部26には、自動車認識部27が含まれる。この図では、自動車認識部27を独立して記載しているが、物体認識部26の中の一部であり、例えば、物体認識部26のプログラムの一部である場合も含まれ、機能的な構成も含まれる。この制御装置23により、後述するように、測域センサ21,22の検出データから、自動車VのタイヤTF,TRの位置、輪郭の検出、自動車Vの姿勢、タイヤ角度、自動車Vの寸法検出、入庫誘導および入庫可否判定などが行われる。
【0046】
また、制御装置23により、測域センサ21,22によって検出できない部分の不足データは、タイヤTF,TRの対称性から検出できたデータに基づいて推定することで補われる。これにより、実際に測定していない部分も含めてタイヤTF,TRの輪郭を推定し、4輪の位置を検出している。なお、制御装置23には、上記案内表示器9と、後述するモニタ10が接続されている。
【0047】
次に、
図2,3に基づいて、タイヤの検出方法を説明する。以下のタイヤ検出は、上記制御装置23によって行われる。
図2は第1タイヤ検出方法を示す図面であり、
図2(a) に示すように、前面中央部に配置された前面センサ21と、側面センサ22とによってそれぞれ走査され、
図2(b) に示すように、それらの検出データが得られる。なお、図では、前面センサ21の検出データを「実線」で示し、側面センサ22の検出データを「1点鎖線」で示している。これらの検出データは、誇張して記載している。
【0048】
図2(b) の上部左側に示すように、前面センサ21により、左右の前タイヤTFの内側面及び前面と、左右の後タイヤTRの内側面及び前面との検出データ40(実線)が得られる。一方、
図2(b) の上部右側に示すように、側面センサ22により、左前タイヤTFの外側面と後面及び左後タイヤTRの外側面と前面、右前タイヤTFの内側面と後面及び右後タイヤTRの内側面と前面の検出データ41(1点鎖線)が得られる。そして、
図2(b) の下部に示すように、前面センサ21によって得られた検出データ40と側面センサ22によって得られた検出データ41とを合成することで、合成データ42が得られる。
【0049】
そして、タイヤTF,TRの場合、4箇所で認識されたタイヤは、幅は左右で同一形状(輪郭)、長さは前後で同一形状(輪郭)と判断することができるため、検出できた検出データに基づいて、輪郭を認識できないタイヤ(右前タイヤ、左後タイヤ、左右タイヤ)は、輪郭を認識できたタイヤ(左前タイヤ)の検出データに基づいて輪郭が推定されて補足される。これにより、測域センサ21,22によって検出された検出データから4輪のタイヤTF,TRを検出することができる。
【0050】
このように、離間して配置された2個の測域センサ21,22によって検出された検出データから、走査平面上におけるタイヤTF,TRの位置と、その輪郭を検出(認識)することができる。
【0051】
また、このようにタイヤTF,TRの位置、輪郭を検出することにより、後述するように、タイヤTF,TRの間の内寸法、ホイールベースなどを求めることができる。
【0052】
図3は第2タイヤ検出方法を示す図面である。
図3(a) に示すように、この方法では、検知領域30の中に、さらに細かく分割した、右前タイヤ検知領域31、左前タイヤ検知領域32、右後タイヤ検知領域33、左後タイヤ検知領域34、が設定されている。そして、前面中央部に配置された前面センサ21と、側面センサ22とによってそれぞれ走査され、
図3(b) に示すように、それらの検出データが得られる。なお、この図でも、前面センサ21の検出データを「実線」で示し、側面センサ22の検出データを「1点鎖線」で示している。これらの検出データは、誇張して記載している。
【0053】
図3(b) に示すように、前面センサ21により、左右の前タイヤTFの内側面及び前面と、左右の後タイヤTRの内側面及び前面との検出データ45(実線)が得られる。一方、側面センサ22により、左前タイヤTFの外側面と後面及び左後タイヤTRの外側面と前面、右前タイヤTFの内側面と後面及び右後タイヤTRの内側面と前面の検出データ46(1点鎖線)が得られる。
【0054】
そして、前面センサ21によって得られた検出データ45と、側面センサ22によって得られた検出データ46の中で、サイズが一定サイズ以上の物が候補データとされる。この候補データの中で、例えば、検出領域が近いものがタイヤとして認識される。この実施形態では、候補データの中で重心位置が近いものが同一物体(タイヤ)として関連付けされる。その後、関連付けされたデータの外形寸法(輪郭)、合成重心47が求められる。
【0055】
しかし、2個の測域センサ21,22の検出データ45,46では左前タイヤTF以外は、完全なタイヤ形状を検出できない。すなわち、右前タイヤTFの右側面、左後タイヤTRの後面、右後タイヤTRの右側面と後面、の検出データを得ることができない。そのため、これらのタイヤは検出データ45,46から外形寸法と合成重心を求めることができない。
【0056】
そこで、タイヤの場合には4輪の認識されたタイヤは、上記したように、幅は左右で同一形状(輪郭)、長さは前後で同一形状(輪郭)と判断することができるため、外形寸法を求めることができないタイヤは、他のタイヤの認識できたデータに基づいて、外形寸法が推定されて補足される。これにより、離間して配置された少なくとも2個の測域センサ21,22による走査で、4輪のタイヤTF,TRの位置と、その外形寸法、合成重心47を検出することができる。このようにタイヤTF,TRの位置、外径寸法、合成重心47を検出することにより、以下に説明するように、タイヤTF,TRの間の内寸法、ホイールベースなどを求めて利用することができる。
【0057】
なお、検出データの中で、形状、寸法、他のタイヤと位置関係が明らかに異なるものは除外するようにすればよい。また、上記第1タイヤ検出方法及び第2タイヤ検出方法は、タイヤの検出精度など、目的に応じて使い分ければよい。
【0058】
図4(a) 〜(c) は、上記入庫部検知装置20によって検出する自動車の姿勢例を示す平面図である。上記したように、入庫部検知装置20によれば、2個の測域センサ21,22の検出データを合成して、4輪のタイヤTF,TRの位置及び輪郭、外形寸法、合成重心などを認識することにより、自動車Vの各種寸法、姿勢を検出することができる。例えば、
図4(a) に示すように、タイヤTF,TRの内寸法TI、外寸法TO、タイヤTF,TRの重心位置からホイールベースTH、前後タイヤトレッドTTを求めることができる。タイヤの内寸法TIを得ることで、タイヤ間に搬送装置を進入させる構成の機械式駐車設備の場合、搬送装置の進入可否などを事前に判断して、自動車Vの入庫可否を判断することができる。
【0059】
また、
図4(b) に示すように、前タイヤTFの向き(角度θt)を求めることもできる。さらに、
図4(c) に示すように、自動車Vの向き(角度θc)を求めることもできる。このように、前タイヤTFの向きや自動車Vの向きを検出することにより、自動車Vの下方に搬送装置を進入させて内側からアームでタイヤを持上げるときに、左右でバランスが狂うことや、タイヤを挟めないことを防止できる。
【0060】
次に、
図5に基づいて、上記入庫部検知装置20によるタイヤ検出と物体検出のフローチャートを説明する。物体検出の内容については、後述する
図9で説明する。
【0061】
入庫スタートをすると、入庫部3に自動車Vが入庫していることが実車検知(S1)によって検知される。この検知は、上記実車検知センサ18による自動車Vの検知情報を用いることができる。入庫を検知すると、タイヤ検知が開始される(S2)。その後、自動車Vが停車したか否かが判断される(S3)。
【0062】
上記(S3)で停車したことが検知されると、この実施形態では、入庫部3の床面4上に残留物が無いか否かの検知が開始される(S4)。また、停車した自動車Vのタイヤ検知が行われたか否かが判断される(S5)。このタイヤ検知が、上記入庫部検知装置20によって行われる。この判断でタイヤが検知されていない場合、再入庫又は入庫不可と判断される(S6)。この場合、案内表示器9に「再入庫してください」等のメッセージが表示される。また、例えば、最低地上高が低い自動車Vの場合にはタイヤを検知することができないため、再入庫してもタイヤが検知されない場合、「入庫できません」等のメッセージが表示される。上記(S5)でタイヤが検知された場合、入庫可能な寸法の自動車Vか否かが判断される(S7)。入庫不可な自動車Vの場合、「入庫できません」等のメッセージが案内表示器9に表示される(S6)。この場合、その自動車Vは退出する。
【0063】
上記(S7)で入庫可能な寸法の場合、タイヤ角度に問題が無いか否かが判断される(S8)。タイヤ角度に問題があれば、ハンドル修正の案内が行われる(S9)。この場合、案内表示器9に「タイヤをまっすぐにしてください。」等のメッセージが表示される。その後、上記(S5)のタイヤ検知から繰り返される。
【0064】
上記(S8)でタイヤ角度(向き)に問題がなければ、停車位置に問題がないか否かが判断される(S10)。前進しすぎている場合、後退案内によって「後退してください。」等のメッセージが案内表示器9に表示される(S11)。その後、上記(S5)のタイヤ検知から繰り返される。
【0065】
上記(S10)で停車位置にも問題がない場合、利用者は自動車Vから降りて退出する(S12)。この時、上記(S4)において残留検知が行われているため、入庫部3の床面4上に残留物がないか否かが判断される(S13)。残留物がある場合には、その残留物が無くなるまで、退出した利用者が運転盤5によって入出庫口扉7を閉じる操作が行えない。
【0066】
入庫部3の床面4上に残留物がなく、利用者が入出庫口扉7を閉じると(S14)、扉が閉じたか否かが判断される(S15)。入出庫口扉7が閉じられると、入庫した自動車Vの位置補正が必要か否かが判断される(S16)。この判断は、後述するように、エレベータ装置15の中心線CEに対して自動車Vの中心線CVが左右方向にずれて停車した場合や、自動車Vが斜めに停車した場合には、「位置補正が必要」と判断される。位置補正が不要の場合、その自動車Vは所定位置に格納される(S19)。
【0067】
位置補正が必要な場合、上記タイヤ位置調整装置16,17によって、自動車Vの中心線CVがエレベータ装置15の中心線CEと一致するように、前タイヤTFの左右方向の位置補正と、後タイヤTRの左右方向の位置補正とが行われる(S17)。そして、位置補正が完了したか否かが判断される(S18)。自動車Vの位置補正が完了すると、その自動車Vは所定位置に格納される(S19)。
【0068】
この実施形態における自動車Vの格納は、エレベータ装置15で格納階に移動後、自動車Vの前方からタイヤ間に搬送装置(図示略)が進入させられ、その搬送装置に備えられたアームで外側に位置するタイヤを挟持して持上げ、その状態で格納場所に搬送されて格納される。これにより入庫完了となる。
【0069】
次に、
図6〜
図8に基づいて、上記フローチャートにおける検出例を説明する。
図6(a),(b) は、上記フローチャートの(S7)において自動車Vが入庫可能寸法か否かを判断する例を示す入庫部の平面図である。この例は、収容車諸元に適合しない自動車Vに対し入庫不可案内を行う例である。上記入庫部検知装置20によれば、4本のタイヤの位置を検出し、前タイヤTFの輪郭及び後タイヤTRの輪郭を得ることができる。そして、
図6(a) に示すように、検出された自動車VのホイールベースTHから入庫可否判定が行われる。この例では入庫可否判定で不可となり、案内表示器9に「入庫できません」等の案内が表示され、入庫できない自動車Vであることが利用者に知らされる。
【0070】
また、
図6(b) に示すように、自動車VのタイヤトレッドTTが狭い場合も入庫可否判定で不可となり、案内表示器9に「入庫できません」等の案内が表示され、入庫できない自動車Vであることが利用者に知らされる。
【0071】
なお、エレベータ装置15からはみ出している場合など、補正範囲外の自動車Vに対しては、再入庫案内がなされる。
【0072】
図7は上記フローチャートにおいて自動車のタイヤ角度を可否判定する例を示す入庫部の平面図である。上記入庫部検知装置20によれば、4本のタイヤの位置を検出し、前タイヤTFの輪郭及び後タイヤTRの輪郭を得ることができる。この情報から、図示するように、前タイヤTFが傾いていることを検出することができる。図示する場合、前タイヤTFが左を向いているため、案内表示器9に「ハンドル右へ戻し、タイヤをまっすぐにしてください。」等の案内が表示され、ハンドル(前タイヤTFの向き)を真っ直ぐにするように入庫誘導される。
【0073】
なお、図示していないが、自動車Vがエレベータ装置15の前後方向における適切な位置に停車できるように、案内表示器9には「ゆっくり前進してください。」等の案内も表示される。案内表示としては、公知の各種方法を用いることができる。
【0074】
図8(a),(b) は、上記
図5のフローチャートにおいて自動車の停車姿勢を可否判定する例を示す入庫部の平面図である。上記入庫部検知装置20によれば、4輪のタイヤTF,TRの位置と向きを検出することができるため、
図8(a) に示すように、エレベータ装置15の中心線CEに対して自動車Vの中心線CVがずれていることを検出することができる。また、
図8(b) に示すように、自動車Vの中心線CVが真っ直ぐになっていないことも検出することができる。
【0075】
そして、この実施形態の機械式駐車設備1によれは、入庫部3のエレベータ装置15にタイヤ位置調整装置16,17が備えられているため、入庫部検知装置20の自動車認識部27(
図1(b) )で認識したタイヤの位置情報に基づき、自動車Vの中心線CVがエレベータ装置15の中心線CEに沿うように前タイヤTF及び後タイヤTRがタイヤ位置調整装置17によって左右方向に位置調整される。
【0076】
図8(a) の場合、自動車Vが右方向にずれているため、前タイヤTFのタイヤ位置調整装置16及び後タイヤTRのタイヤ位置調整装置17が、いずれもタイヤTF,TRを左方向に移動させ、入出庫Vの中心線CVがエレベータ装置15の中心線CEに沿うように位置調整される。
【0077】
図8(b) の場合、自動車Vが右に向いて停車しているため、前タイヤTFのタイヤ位置調整装置16は左方向に前タイヤTFを移動させ、後タイヤTRのタイヤ位置調整装置17は右方向に後タイヤTRを移動させることで、入庫した自動車Vの中心線CVがエレベータ装置15の中心線CEに沿うように位置調整される。
【0078】
このように、入庫部3で停車した自動車Vの姿勢が、搬送装置をタイヤの間に進入させるのに適さない姿勢であれば、タイヤ位置調整装置16,17によって補正することができる。すなわち、自動車Vの下方に搬送装置を進入させ、その搬送装置のアームで自動車Vのタイヤを持上げて搬送する構成の場合でも、搬送装置(図示略)の進入及び搬送に適した状態に入庫した自動車Vのタイヤの位置、すなわち自動車Vの姿勢を調整することができる。なお、自動車VのタイヤTF,TRの位置を補正した後、再度自動車Vの姿勢測定を行い、再補正が必要な場合は、再度補正動作を行うようにすればよい。
【0079】
また、上記フローチャートの(S10)では、入庫した自動車Vの停車位置(前輪位置)を検出しており、上記第2センサ12及び第3センサ13による自動車Vの入庫位置検出に加え、測域センサ21,22で検出した前タイヤTFの位置検出を利用するようにしてもよい。
【0080】
図9(a),(b) は、上記入庫部検知装置20によって入庫部3の物体50を検出する例の図面である。図示するように、この実施形態では、上記検知領域30における4つのタイヤを包含する矩形のタイヤエリアの外側に物体検知領域35が設定され、この物体検知領域35において測域センサ21,22で物体(人間)50を検出するようにしている。
【0081】
図9(a) に示すように、この例では、測域センサ21,22によって検出された検出データによって、入庫部3の床面4に人間(物体)50が居残りしていることを検出している。なお、タイヤエリア内の異物は、タイヤ検知の際に検知不可として処理される。
【0082】
図9(b) はモニタの画面であり、測域センサ21,22の検出データから、入庫部3に人間50が残っていることを検出している。このように、入庫部3において自動車VのタイヤTF,TRを検出した上で、自動車Vの外側における物体検知領域35において人間や残留物などの物体50を検出することができる。また、入庫部3における自動車Vの停止位置に対し、どの位置で人間などの物体が検出されているかが表示されている。モニタ10は、例えば、運転盤5に備えられ、利用者が退出後、入出庫口扉7を閉める前に残留物が存在することと、その位置を知ることができる。さらに、このように物体50が検出されると、運転盤5で警告するようにしてもよい。この警告としては、例えば、運転盤5に警告灯を設けて点灯させたり、アナウンスするようにしてもよい。
【0083】
このように、上記実施形態の入庫部検知装置20によれば、入庫部3において自動車VのタイヤTF,TRを検出できるとともに、入庫部3の自動車Vの周囲における人間や床面4上に落とした残留物(居残り、置き忘れ)を検出することができるため、利用者の退出後に入庫部3に人間が居残りしていないことや、床面4上に何も無いことを確認することができる。
【0084】
図10は、第2実施形態に係る入庫部検知装置60を備えた入庫部3を示す平面図である。この第2実施形態の入庫部検知装置60は、入庫部3の前面における左右の離間した位置に配置された2個の測域センサ61,62と、これらの測域センサ61,62を制御する制御装置23とを有している。この第2実施形態では、前面右部に設けられた測域センサ61を「右前センサ61」、前面左部に設けられた測域センサ62を「左前センサ62」ともいう。他の構成は、上記第1実施形態と同一であるため、同一の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0085】
図11は、第2実施形態におけるタイヤ検出方法の一例である。この例では、上記
図3の第2タイヤ検出方法による検出例を示している。なお、図では、右前センサ61の検出データを「実線」で示し、左前センサ62の検出データを「1点鎖線」で示している。これらの検出データは、誇張して記載している。
【0086】
図11(a) に示すように、この方法では、右前センサ61により、右前タイヤTFの外側面と前面及び右後タイヤTRの外側面と前面、左前タイヤTFの内側面と前面及び左後タイヤTRの内側面の一部、の検出データ70(実線)が得られる。一方、左前センサ62により、左前タイヤTFの外側面と前面及び左後タイヤTRの外側面と前面、右前タイヤTFの内側面と前面及び右後タイヤTRの内側面の一部、の検出データ71(1点鎖線)が得られる。
【0087】
そして、右前センサ61によって得られた検出データ70と、左前センサ62によって得られた検出データ71の中で、サイズが一定サイズ以上の物が候補データとされる。この候補データの中で、例えば、検出領域が近いものがタイヤとして認識される。この実施形態では、候補データの中で重心位置が近いものが同一物体(タイヤ)として関連付けされる。その後、関連付けされたデータの外形寸法(輪郭)、合成重心72が求められる。
【0088】
しかし、2個の測域センサ61,62の検出データ70,71では、完全なタイヤ形状を検出できない。すなわち、前タイヤTFの後面、後タイヤTRの後面と内側面の一部又は全部、の検出データを得ることができないことがある。
【0089】
そこで、タイヤの場合には4輪の認識されたタイヤは全て同一の外形寸法と判断することができるため、他のタイヤの検出できたデータに基づいて、外形寸法を認識できていないタイヤの各部のデータが補足される。これにより、離間して配置された少なくとも2個の測域センサ61,62による走査で、4輪のタイヤTF,TRの位置と、その外形寸法、合成重心72を検出することができる。このようにタイヤTF,TRの位置、外径寸法、合成重心72を検出することにより、上記したように、タイヤTF,TRの間の内寸法、ホイールベースなどを求めて利用することができる。
【0090】
なお、上記第1実施形態の入庫部検知装置20では前面中央部と側面中央部に測域センサ21,22を配置し、第2実施形態の入庫部検知装置60では前面の左右両端部に測域センサ61,62を配置しているが、少なくとも2個の測域センサは、離間した位置であれば、例えば、入庫部3の左前方又は右前方と、対角となる右後方又は左後方の2箇所などに配置してもよい。
【0091】
以上のように、上記入庫部検知装置20,60によれば、入庫した自動車Vの姿勢、大きさなどが変化したとしても、タイヤTF,TRの位置、向きを広い範囲で適切に検出することが可能となる。従って、入庫した自動車Vを搬送する装置に応じて、適切な状態で自動車Vを入庫させることができる。
【0092】
また、自動車VのタイヤTF,TRを直接的に検知して、タイヤTF,TRの位置、向きを迅速に処理して検出することができるので、入庫する自動車Vの情報を適切に得ることができる。
【0093】
さらに、上記実施形態によれば、入庫部3に自動車V以外の人間の存在や荷物が置かれていることも検出するこができる。
【0094】
また、上記機械式駐車設備1の場合、入庫部3に入庫した自動車Vの姿勢を迅速に検出することができるので、自動車Vの姿勢を前方から下部のタイヤ間に搬送装置(図示略)を進入させるのに適した姿勢となるようにタイヤ位置調整装置16,17で適切に調整することが可能となる。しかも、エレベータ装置15に自動車Vを載置したまま垂直方向又は任意方向に移動させた後、自動車Vを搬送装置に受け渡すような構成の機械式駐車設備でも、入庫部3で自動車Vの姿勢を搬送に適した姿勢に調整することで、適切な自動車Vの受渡しができる。
【0095】
なお、上記実施形態では、2個の測域センサ21,22又は61,62を設けた例を説明したが、少なくとも2個の測域センサ21,22又は61,62を備えていれば3個以上の測域センサを設けてもよく、測域センサの個数は上記実施形態に限定されるものではない。測域センサ21,22又は61,62の配置も一例であり、他の配置でもよい。
【0096】
また、上記実施形態では、自動車Vの前方からタイヤ間の下方に進入させる搬送装置を備えた機械式駐車設備を例にしたため、入庫部3にタイヤ位置調整装置16,17が設けられているが、他の構成の搬送装置の場合でも自動車Vのタイヤ姿勢を迅速に検出して利用することができ、入庫部3における構成は上記実施形態に限定されるものではない。
【0097】
さらに、上記実施形態では、自動車Vをエレベータ装置15によって格納階へ搬送する平面往復式の機械式駐車設備を例に説明したが、自動車Vの姿勢補正装置を備えるもの及び自動車Vの姿勢に合わせて搬送装置が姿勢を変えるものにも適用でき、機械式駐車設備1は上記実施形態に限定されるものではない。
【0098】
また、上記実施形態は一例を示しており、本発明の要旨を損なわない範囲での種々の変更は可能であり、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。