(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの微細化、高集積化に伴って、高度に微細化、多層化された薄膜構造を製造する技術が要求されている。このように、微細化、多層化された薄膜構造を製造する方法として、フォトリソグラフィやドライエッチングが用いられている(特許文献1参照)。
【0003】
フォトリソグラフィやドライエッチング等を用いて電子デバイスの配線形成や微細構造の加工を行う場合、一般的に、基板上にはフォトレジストや金属薄膜等、複数の異種材料からなる薄層が形成される。こうした基板およびその表面に薄層が形成された構造体を、以下基板積層体と称する。このような基板積層体の加工が進むに従い、異種材料からなる薄層は必要に応じて基板上から除去され、基板上には必要なパターンのみが残される。
【0004】
しかし、加工を行う基板上に微細な塵等が付着して、この塵により不必要な層の除去が十分に行われない場合等に、本来除去されるはずであった薄層が、数nmのサイズ(ナノオーダ)の凹凸として基板表面上に僅かに残存してしまうことがある。こうして基板上に残存したナノオーダの凹凸を除去するために、更にドライエッチングを行うと、残すべきパターン等の構造部分までもエッチングしてしまう恐れがあった。
【0005】
このため、従来において提案されている物理的な研磨による表面平坦化方法以外の方法によって平坦化を施すことを可能とする提案が望まれていた。そこで、塩素系ガス雰囲気内に基板を配置し、その塩素系ガスのガス分子の吸収端波長よりも長波長からなる光を基板表面に照射することによって、当該基板表面の凹凸に近接場光を発生させ、発生させた近接場光に基づき、塩素系ガスを解離させて活性種を生成させ、当該生成された活性種により当該基板表面の凹凸を選択的にエッチングする表面平坦化方法が提案されている(特許文献2参照)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明を適用した基板の表面平滑化方法を実現するための表面平滑化処理システム1である。
【0016】
この表面平滑化処理システム1は、基板2の表面を平滑化するものであって、チャンバ11内に、ステージ13を配設して構成され、またこのチャンバ11内の気体は、ポンプ16を介して吸引可能とされ、更に圧力センサ17によりチャンバ11内の圧力を検出し、これに基づいてバタフライバルブ18を自動的に開閉することにより内圧の自動制御を実現可能としている。また、このチャンバ11に対して原料ガスを供給するための供給管23が接続され、その流量が流量調整部95を介してコントロールされる。また、このチャンバ11における少なくとも一の面には、窓15が形成され、チャンバ11の外側から光がこの窓15を通過してチャンバ11内へと入射されることになる。
【0017】
またチャンバ11外には、近接場光エッチングを行うための光L1をチャンバ11内に供給する光源12と、光源12からの光を偏光するための偏光素子24が設けられている。駆動装置26は、偏光素子24を駆動し、光源12からの光の偏光方向を制御する。この表面平滑化処理システム1では、光源12からの光の偏光方向を制御することでエッチング速度を制御することが可能である。
【0018】
ステージ13は、基板2を載置するための図示しない載置部や、基板2を加熱するための図示しない加熱機構等が設けられていてもよく、これらを制御することにより、基板2を原料ガスに基づいて表面平滑化処理を施す際において反応速度をコントロールすることが可能となる。なお、ステージ13は、基板2の位置を高精度に調整するための図示しない高精度ステージ機構等が設けられていてもよい。
【0019】
チャンバ11内に対して供給管23を介して供給される原料ガスとしては、例えば酸素ガスと不活性ガスとを混合してなる混合ガスである。この混合ガスは、所定の圧力となるように調整された上で随時供給される。酸素ガスは、表面に凹凸を有する基板をナノオーダまで平滑化させるためにチャンバ11内に導入されるものである。なお、酸素ガスの代わりに塩素系ガスを用いることもできる。塩素系ガスとしては、例えば、Cl
2(塩素)、BCl
3(三塩化ホウ素)、CCl
4(四塩化炭素)等を用いることができる。また、不活性ガスとしては、例えば、N
2,He,Ar,Kr,Xe等の何れか一種または二種以上を用いることができる。なお、これら原料ガスの供給量は、供給管23に設けられたガスバルブ95を介して制御可能とされている。
【0020】
窓15は、ガラスやプラスチック材料で構成されているが、これらに限定されるものではなく、入射される光のうち、所定の波長以上の光のみ透過させ、それ以外の波長の光を反射させる光学フィルタであってもよい。また、この窓15は、所定の波長のみを選択的に透過させるバンドパスフィルタで構成されていてもよい。窓15を光学フィルタで構成する場合には、ガラス等のような基板材料に光を吸収可能なCdS等の半導体微粒子を分散させ、当該半導体微粒子による光の吸収を通じて透過する光の波長選択性を持たせるようにしてもよい。
【0021】
光源12は、図示しない駆動電源による制御に基づき、所定の波長を有する光を射出するものである。この光源12からは、以下に詳細に説明するように、原料ガスのガス分子の吸収端波長よりも長波長からなる光L1が射出される。この光源1は、例えば、レーザーダイオード等によって具体化される。光源12から出射された光L1は、偏光素子24を介して偏光され、レンズ25によりそのスポット径が調整され、基板2の表面に照射される。偏光素子24を介することにより、光L1は偏光(例えば、円偏光、直線偏光や楕円偏光)した状態で基板2の表面に照射される。偏光素子24により光L1を変更することで基板2の表面に存在する凹凸のエッチング速度を制御することが可能となる。なお、偏光によるエッチング速度の制御については、実施例において詳細に説明する。
【0022】
本発明を適用した表面平滑化処理システム1による処理対象としての基板2は、例えば、ガラス、プラスチック、シリコンウェハ(Si)、ダイヤモンド、ガリウムナイトライド(GaN)等の素材表面に、酸化膜、フォトレジスト、金属薄膜等、1または複数の薄膜が形成されて形成された積層体であり、微細な凹凸等が形成されている。
【0023】
このような基板2は、表面平滑化処理システム1による処理前において、
図2(a)に示すように表面に凹凸が存在する。この凹凸は、その凹凸のピッチが数nmから数十μmまでのオーダまで様々であるが、本発明では、数nmから数十μmまでのピッチで構成されている凹凸をエッチングすることが可能である。以下この基板2の表面に内側に凹んでいる凹部41及び外側に先鋭化された凸部42(凹凸)が形成されているものとし、更に、この凸部42の先端を先鋭化部分43という。なお、表面粗さが極度に大きい場合、例えば、凹凸のピッチが数百μm以上ある場合等には、予め物理研磨を施しておき、その後の仕上げ加工として、本発明を適用するようにしてもよい。
【0024】
次に、上述した構成からなる表面平滑化処理システム1により、実際に基板2の表面を平滑化させるプロセスについて説明をする。
【0025】
先ず、表面処理を施すべき基板2をステージ13上に載置する。そしてチャンバ11内を密閉状態に保持し、所定圧力、所定温度に制御する。次に、供給管23を介してチャンバ11内に原料ガスを供給する。因みに以下では、原料ガスとして吸収端波長240nmの酸素ガスを使用する場合を例にとる。その結果、この基板2は、原料ガスとしての酸素ガス雰囲気中において配置されている状態を作り出すことが可能となる。
【0027】
図3は、チャンバ11内に導入された酸素ガスのガス分子の原子核間距離に対するポテンシャルエネルギーの関係について示している。通常、チャンバ11内に導入された酸素ガスのガス分子に対して、基底準位と励起準位とのエネルギー差Ea以上の光エネルギーをもつ光、即ち、ガス分子の吸収端波長よりも短波長からなる光(以下、この光を共鳴光という。)を照射すると、このガス分子は、励起準位へ直接励起される。この励起準位は、解離エネルギーEbを超えているため、矢印で示される方向へガス分子を光解離させて塩素ラジカルが生成される。これは、伝搬光を使った通常の光解離のメカニズムに基づくものであるが、伝搬光の電場強度が分子サイズの空間内において均一な分布であるため、ガス分子を構成する原子核や電子のうち軽い電子のみが光に対して反応するものの、原子核間距離を変化させることができない。即ち、伝搬光による光解離過程は断熱近似となることから、基底状態から解離軌道へ遷移させるためには、励起準位軌道のポテンシャルエネルギーよりも高い光エネルギーを持つ光を照射する必要がある。ちなみに、酸素ガスの吸収端波長以上の非共鳴光を伝搬光として照射した場合、ガス分子は励起準位へ励起されない。非共鳴光は、
図4における光エネルギーS1、S2等のように励起準位軌道のポテンシャルエネルギーよりも低いため、伝搬光を単に照射させたのみでは、ガス分子を光解離させて活性種としてのラジカルを生成させることはできない。
【0028】
これに対して本発明では、酸素ガスの吸収端波長よりも長波長の光(以下、この光を非共鳴光という。)を利用するが、基板2の表面凹凸をエッチングする上で、窓15を透過してきた非共鳴光としての伝搬光を直接的に利用するものではなく、この照射された伝搬光に基づいて基板2の局所領域に発生させた近接場光に基づいて、表面の凹凸をエッチングする。
【0029】
ここでいう近接場光とは、約1μm以下の大きさからなる物体の表面に伝搬光を照射した場合に、その物体の表面にまとわりついて局在する非伝搬光のことをいう。この近接場光は、非常に強い電場成分を有しているが、物体の表面から遠ざかるにつれてその電場成分が急激に減少する性質をもっている。この非常に強い電場成分が見られる物体表面からの厚みは、その物体の寸法に依存しており、その物体の寸法と同程度の厚みからなる。
【0030】
近接場光の電場強度は、局所領域においても急激に減少するという特質を有する。このため、この近接場光を酸素ガスの分子と反応させた場合において、その電場は分子にとって不均一な空間分布となり、酸素ガス分子中の原子核も、かかる近接場光の電場勾配により引力を受けることになる。即ち、近接場光をガス分子と反応させることにより、当該ガス分子を構成する比較的軽い電子のみならず、原子核をも近接場光に対して応答させることができる。その結果、近接場光により、原子核間距離を周期的に変化させることが可能となり、分子の振動準位への直接的な励起を生じさせる、いわゆる非断熱反応を起こさせることが可能となる。
【0031】
酸素ガスの吸収端波長よりも長波長の非共鳴光を近接場光としてガス分子に反応させた場合には、かかる非断熱反応により、ガス分子をラジカルへと解離させることが可能となる。この非断熱反応は、
図3に示すような過程T1〜T3に分類することができる。過程T1は、ガス分子が複数の分子振動準位を介して励起され(多段階遷移)、その結果、励起準位にまで励起された後に、活性種等に解離される過程のことをいう。また、過程T2は、ガス分子の解離エネルギーEb以上の光エネルギーをもつ光を照射した場合に、ガス分子が解離エネルギーEb以上のエネルギー準位の分子振動準位にまで励起され、その結果、活性種等に直接的に解離される過程のことをいう。また、過程T3は、ガス分子のEb以下の光エネルギーを持つ光を照射した場合に、ガス分子が複数の分子軌道準位を介して多段階遷移し、Ea未満Eb以上のエネルギー準位まで励起された後に、活性種等に解離される過程のことをいう。
【0032】
このように、非共鳴光を近接場光としてガス分子と反応させた場合に、非断熱反応における過程T1〜T3により、当該ガス分子を分子振動準位にまで直接的に遷移させることが可能となる。
【0033】
ここで伝搬光としての光L1を基板2に照射することにより、近接場光が発生する角部とは、
図2(b)に示すように凸部42の先端に相当する先鋭化部分43である。この先鋭化部分43において近接場光が選択的に発生すると、当該発生した近接場光により原料ガス分子51が解離されてラジカル52が生成される。このラジカル52は、近接場光が発生した先鋭化部分43近傍のみにおいて選択的に生成される。そして、この生成されたラジカル52は、これに最も近接する先鋭化部分43のみと選択的に反応することになる。その結果、
図2(c)に示すように、先鋭化部分43がラジカル52の活性によりエッチングされることになる。そして先鋭化部分43がエッチングされると、この凸部42において更に先鋭化部分43’が形成されるが、これに対しても近接場光が選択的に発生し、原料ガス分子51を解離させてラジカル52を先鋭化部分43’近傍において選択的に形成されることができる。その結果、この先鋭化部分43’は、ラジカル52と反応することによりエッチングされることになる。
【0034】
また、近接場光が発生する角部は、かかる先鋭化部分のみならず、凹部41、凸部42を構成するいかなる角部分をも含む。凹部41もここでいう角部に含まれ、
図2(b)に示すように近接場光が発生し、この発生した近接場光に基づいて発生させたラジカル52により当該凹部41が平滑化されることになる。
【0035】
上述のような非断熱過程は、
図5に示すように、原子同士の結合をバネで置き換えたモデルで考えることができる。一般に伝搬光の波長は分子の寸法に比べると遥かに大きいため、分子レベルでは空間的には一様な電場とみなせる。その結果、
図5(a)に示すように、バネで隣り合う電子は同振幅、同位相で振動させられる。感光性樹脂膜12の原子核は重いため、この電子の振動には追従できず、伝搬光では分子振動は極めて起こりにくい。このように伝搬光では、分子振動が電子の励起過程に関わることを無視することができるため、この過程を断熱過程という(T. Kawazoe、 K. Kobayashi、 S. Takubo、 and M. Ohtsu、 J. Chem. Phys.、 Vol.122、 No.2、January 2005、 pp.024715 1-5参照。)。
【0036】
一方、近接場光の空間的な電場勾配は非常に急峻に低下する。このため近接場光では隣り合う電子に異なる振動を与えることになり、
図5(b)に示すように、この異なる電子の振動により重い原子核も振動させられる。近接場光が分子振動を起こすことは、エネルギーが分子振動の形態を取ることに相当するため、近接場光では、振動準位を介した励起過程(非断熱過程)が可能となる。このように原子核の振動準位を介した励起過程は、通常の光学応答である断熱過程に対し、原子核が応答し動くため、非断熱過程という。
【0037】
上述したように、基板2の局所領域における近接場光の発生と、原料ガス分子51の解離によるラジカル活性、先鋭化部分43の反応が繰り返し実行されることにより、最終的には
図2(d)に示すように、角部をエッチングすることにより表面を平滑化させ、表面粗さを低減させることが可能となる。
【0038】
このように、本発明を適用した基板の表面平滑化方法では、特に基板2における先鋭化部分43を初めとした局所的な部分において近接場光を発生させ、かかる近接場光による非断熱反応に基づいて当該部分のみについて原料ガス分子51を選択的に解離させ、生成したラジカル52に基づいて角部を選択的にエッチングすることが可能となる。特に、この近接場光は、1nmオーダの角部であっても選択的に発生させることができることから、表面平滑化処理そのものをナノオーダで実現することができる。このため、本発明では、従来の基板の研磨方法と比較して、ナノオーダの光の回折限界以下のピッチで凹凸を無くすことにより、基板2の表面をより平滑化させることが可能となる。
【0039】
また、本発明では、偏光素子24により光源12からの光を偏光させた後、基板2の表面に照射しているので基板2表面に存在する凹凸のエッチング速度を制御することができる。特に、電場の振動方向が凹凸のパターンの方向に対して垂直となるように光源1からの光を偏光した場合には、エッチング速度が高い。このため、本発明では、数nmから数十μmまでのピッチで構成されている凹凸のパターンをエッチングすることが可能である。
【0040】
また本発明は、基板2の表面形状がいかなるものであっても、その微細な表面凹凸の局所領域に近接場光を発生させることができることから、基板2の表面形状により処理の制約を受けることが無くなり、処理対象としての基板2の表面形状の自由度に幅を持たせることで汎用性を向上させることができる。従って、従来において物理研磨を精度よく施すことが困難であった、表面が湾曲した形状の凹曲面や凸曲面に対しても、酸素ガス雰囲気中でこれら曲面等に窓15を介して光L1を照射することにより平滑化が可能となる。
【実施例】
【0041】
次に、実施例について説明する。この実施例では、凹凸が一方向に連続して存在する、いわゆるストライプ(縞模様)の凹凸のパターン51を基板上に形成し、
図1に示す表面平滑化処理システム1を用いてエッチングを180分間行った。偏光素子24には光を直線偏光するものを用い、電場の振動方向が凹凸のパターン51の方向に対して垂直となるように光源1からの光を偏光した場合(実施例1)と、電場の振動方向が凹凸のパターン51の方向に対して平行となるように光源12からの光を偏光した場合(実施例2)とで凹凸のエッチングを行った。
【0042】
次に、この実施例での条件を以下に示す。この実施例において基板の材質は、ZrO
2、原料ガスは酸素、圧力は大気圧、光の波長は、325nmとしている。またエッチング時間は180分としている。
【0043】
なお、光源12からの光の偏光方向以外の条件は、実施例1と実施例2とで同じである。また、上述の凹凸のパターン51の方向とは、凹凸が連続して存在する方向のことであり、凹凸により形成されるストライプ(縞模様)の方向のことである。
【0044】
初めに実施例1のエッチング結果を
図6及び
図7に示す。
図6は、実施例1に係る基板のエッチング後のSEM写真である。なお、
図6には、偏光後の光の電場の振動方向Eを図示した。
図7は、実施例1に係る基板のエッチング後の測定結果を示す図である。
図7の縦軸は、凹凸のパターン51の基板表面からの高さであり、横軸は、原点(基板左下)からのX軸方向の距離である。また、
図7の破線は、エッチング前の凹凸の形状を示し、実線は、エッチング後の凹凸の形状を示している。
【0045】
次に実施例2のエッチング結果を
図8及び
図9に示す。
図8は、実施例2に係る基板のエッチング後のSEM写真である。なお、
図8には、偏光後の光の電場の振動方向Eを図示した。
図9は、実施例2に係る基板のエッチング後の測定結果を示す図である。
図9の縦軸は、凹凸のパターン51の基板表面からの高さであり、横軸は、基板原点からのX軸方向の距離である。また、
図9の破線は、エッチング前の凹凸の形状を示し、実線は、エッチング後の凹凸の形状を示している。
【0046】
図7に示すように、電場の振動方向Eが凹凸のパターン51に対して垂直となるように光源1からの光を偏光した場合、凹凸のパターン51の高さが約80μmから約50μmまで減少した。つまり、180分間で凹凸のパターン51が約30μmエッチングされたことを意味する、一方、
図9に示すように、電場の振動方向Eが凹凸のパターン51に対して平行となるように光源1からの光を偏光した場合、凹凸のパターン51の高さがほとんど減少していないことがわかる。このことから、凹凸のパターン51の方向に対して照射する光の偏光方向を制御することにより凹凸のパターン51のエッチング速度を制御できることがわかる。
【0047】
次に、
図10を参照して、電場の振動方向Eが凹凸のパターン51に対して垂直となるように光源1からの光を偏光した場合にエッチング速度が高くなる理由について考察する。電場の振動方向Eが凹凸のパターン51に対して垂直となるように光源1からの光を偏光した場合、電場の振動に伴い、凹凸のパターン51間で電子eの移動が生じる。このため凹凸のパターン51に対して平行(
図10では、紙面に対して垂直方向)に交流磁場Bが生じる。そして、この凹凸のパターン51に対して平行な交流磁場Bが、原料ガスの解離を促進するためエッチング速度が高くなると考えられる。
【0048】
一方、電場の振動方向Eが凹凸のパターン51に対して平行となるように光源1からの光を偏光した場合、電場の振動に伴う凹凸のパターン51間で電子eの移動が生じない。このため凹凸のパターン51に対して平行(
図10では、紙面に対して垂直方向)に交流磁場Bが生じず、原料ガスの解離が促進されないためエッチング速度が低いと考えられる。
【0049】
以上のように、実施例の結果から、凹凸に近接場光を発生しうる波長の光を偏光させて照射することにより凹凸のエッチング速度を制御することができることがわかった。また、実施例の結果から、数nmオーダの凹凸だけでなく光源12が発生する光の波長と同程度の凹凸についてもエッチングが可能であることがわかった。
【0050】
なお、上記実施例では、光源12からの光を直線偏光したため、凹凸が一方向に連続して存在する、いわゆるストライプ(縞模様)状の凹凸のパターン51をエッチングした。しかしながら、偏光素子24として、光を円偏光や楕円偏光する素子を用いれば、同心円状に凹凸のパターン51が形成された基板や径の異なる複数の楕円が並んだ同心楕円状に凹凸のパターン51が形成された基板についても適用することが可能である。