(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6291294
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】角度調整可能椅子
(51)【国際特許分類】
A47C 1/029 20060101AFI20180305BHJP
A47C 1/028 20060101ALI20180305BHJP
A47C 7/00 20060101ALI20180305BHJP
A61G 15/04 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
A47C1/029
A47C1/028
A47C7/00 A
A61G15/04
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-50321(P2014-50321)
(22)【出願日】2014年3月13日
(65)【公開番号】特開2015-173719(P2015-173719A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2017年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】391014114
【氏名又は名称】三惠工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081547
【弁理士】
【氏名又は名称】亀川 義示
(72)【発明者】
【氏名】安田 府佐雄
【審査官】
須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭51−036407(JP,U)
【文献】
実公昭47−011322(JP,Y1)
【文献】
米国特許第01792247(US,A)
【文献】
英国特許出願公開第02314505(GB,A)
【文献】
実開昭53−038505(JP,U)
【文献】
特開平08−214984(JP,A)
【文献】
英国特許出願公開第2244211(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C1/00−9/10
A61G15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
座部を支持する前脚、後脚を有し、前脚より後脚の高さを低く形成し、該後脚の下端に下方に屈曲して延びる接地杆部を有する調整スタンドを設け、該調整スタンドが起立位置にあるとき接地杆部が床面から離れて後脚の下端が床面に接地し、調整スタンドが倒伏位置にあるとき接地杆部が床面に接地して後脚の下端が床面から離れるよう上記調整スタンドを後脚に回動可能に枢着した角度調整可能椅子。
【請求項2】
上記調整スタンドの接地杆部は、前後方向に延びる基杆部の両端に設けられている請求項1に記載の角度調整可能椅子。
【請求項3】
上記調整スタンドの接地杆部の前方の接地杆部には、ローラが設けられている請求項1または2に記載の角度調整可能椅子。
【請求項4】
上記調整スタンドの接地杆部の後方の接地杆部は、U字状に湾曲している請求項1から3のいづれかに記載の角度調整可能椅子。
【請求項5】
上記調整スタンドは、倒伏状態で基杆部が後方に傾斜するよう前方部分で後脚に枢着されている請求項2に記載の角度調整可能椅子。
【請求項6】
後脚間には連結杆が設けられ、上記調整スタンドは起立状態で該連結杆に近接するように枢着されている請求項1に記載の角度調整可能椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常の状態で着座できるとともに座部を傾けてリラックス状態で着座できるリクライニング椅子としても使用できる角度調整可能椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
椅子は各種の用途で使用できるよう種々の構成の椅子が用意されている。例えば、使用者が認知症患者等の要介護者である場合、安定状態で着座させることができるとともに動作を緩やかに抑制しなければならない場合がある。医療現場では、要介護者が徘徊や自傷行為をしたり、点滴や薬剤チューブの取り外しをしないようにするために、ベッド上で拘束することがある。ベッド上で拘束する代わりに、椅子に着座させて、自由な動さを抑制して事故を防ぐようにするには、椅子は、緩やかに拘束することもできるし、要看護者がリラックスした状態で着座できるよう座部の角度を調整可能に構成されていることが好ましい。
【0003】
従来、平常時の着座状態と、座部が後方に傾いたリクライニング状態に変化させ座部の角度を変えて使用できるようにした椅子が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。しかし、従来提案されている椅子は、平常状態とリクライニング状態に変化させる際の操作が面倒である。例えば特許文献1に記載の椅子では、脚フレームを支持ピンを中心として前部ストッパーと後部ストッパーとの間で前後に回動できるようにし、通常の椅子として使用するには脚フレームを後部ストッパーに当たる後方に回動させて座部をほぼ水平にしている。リクライニング椅子にするときには脚フレームを前部ストッパーに当たる位置まで前方に回動させて座部が後方に傾斜するようにしている。このように脚フレームを回動させるためには、椅子全体を持ち上げて椅子の下面を通して脚フレームの下部を通過させなければならず、簡単ではない。また、特許文献2に記載の椅子は、中空軸の後端に、後脚に相当する屈曲した軸を有するスライド軸を設け、このスライド軸をスライドさせて座部の角度を変更できるように構成してあるが、この場合も変更操作が面倒であり、安定性、耐久性にも問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭63−5578号公報(実用新案請求の範囲、図面)
【特許文献2】特開昭54−100869号公報(特許請求の範囲、図面)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の解決課題は、平常時使用するときには座部がほぼ水平の状態となり、リラックスして使用するには座部が後方に傾斜したリクライニング状態となるよう簡単に座部の角度を変化させて使用することができ、要介護者でも安定状態で着座できるようにした角度調整可能椅子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、座部を支持する前脚、後脚を有し、前脚より後脚の高さを低く形成し、該後脚の下端に、下方に屈曲して延びる接地杆部を有する調整スタンドを設け、該調整スタンドが起立位置にあるとき接地杆部が床面から離れて後脚の下端が床面に接地し、調整スタンドが倒伏位置にあるとき接地杆部が床面に接地して後脚の下端が床面から離れるよう上記調整スタンドを後脚に回動可能に枢着した角度調整可能椅子が提供され、上記課題が解決される。
【0007】
また、本発明によれば、上記調整スタンドの接地杆部は、前後方向に延びる基杆部の両端に形成され、前方の接地杆部にローラを設け、後方の接地杆部をU字状に湾曲させた上記角度調整可能椅子が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、上記のように構成され、座部を支持する前脚、後脚を有し、前脚より後脚の高さを低く形成し、該後脚の下端に下方に屈曲して延びる接地杆部を有する調整スタンドを設け、該調整スタンドが起立位置にあるとき接地杆部が床面から離れて後脚の下端が床面に接地し、調整スタンドが倒伏位置にあるとき接地杆部が床面に接地して後脚の下端が床面から離れるよう上記調整スタンドを後脚に回動可能に枢着したから、座部がほぼ水平な通常の状態で使用するときには調整スタンドが倒伏状態になるよう調整スタンドを回動させればよい。この回動操作により、調整スタンドの両端の接地杆部が床面に接し、後脚の下端は床面から上昇し、座部をほぼ水平に位置させることができる。リクライニング状態にするには、調整スタンドを起立状態に回動し、後脚の下端を床面に接地させればよい。後脚は前脚より高さが低いので、座部は後方に傾斜し、リクライニング状態の椅子が得られる。これらの操作は、後脚の下端に枢着した調整スタンドを回動させるだけでよいので、操作が容易で構成も簡単である。
【0009】
また、上記調整スタンドの接地杆部を前後方向に延びる基杆部の両端に形成し、前方の接地杆部にローラを設けると、調整スタンドを倒伏位置や起立状態に回動するとき椅子の後脚を持ち上げるだけでローラが床面を転動して簡単に調整スタンドを回動させることができる。また、後方の接地杆部をU字状に湾曲させると、床面を損傷させるおそれがなく、着座時にローラの転動を防止して椅子を安定状態に保持することができる。以上のようにして平常状態とリクライニング状態に簡単に座部の角度を変化させることができ、かつ安定状態に保持できるので、要看護者の椅子として最適であるとともに健常者でも好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】調整スタンドを設けた後脚の下端部分の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の一実施例を示し、前脚1は、床面2に接する下端3を有し、該下端3から上方に立ち上がり、後方に湾曲して座枠4を一連に形成している。前脚1及び座枠4間には、両側の前脚1、座枠4を連結する連結杆5、支持板6が設けられている。鎖線で示すように、上記座枠、連結杆、支持板に囲まれた部位にはクッション部材等を有する座部7が形成される。
【0012】
該座枠4の後端には後脚8が連結されており、後脚8の高さは、上記前脚1の高さより低く(長さを短く)形成されている。したがって、座枠4部分に形成される座部7がほぼ水平にある平常の使用状態では、後脚8の下端9は床面2から離れ、上昇した位置になる。両側の後脚8間には、連結杆10が設けられている。
【0013】
上記後脚8は、上方に立ち上がり、背枠11を構成している。背枠11には両側から内方にかつ中心部が少し後方に延びながら略く字状に湾曲して延びる背面支持杆12が設けられ、その前面にはクッション部材等を有する背部13が形成される。また、背枠11の上方端14は後方に屈曲しており、上方端14間には横杆15が設けられている。該背枠11と上記座枠4間には肘掛け枠16が設けられている。
【0014】
上記後脚8の下端には調整スタンド17が設けられている。該調整スタンド17は、倒伏状態において、前後方向に延びる基杆部18と、その両端から下方に延びる接地杆部19、20を有する。そして、調整スタンド17が起立位置にあるとき接地杆部19,20が床面2から離れて後脚8の下端9が床面2に接地し、調整スタンド17が倒伏位置にあるとき接地杆部19、20が床面に接地して後脚8の下端9が床面2から離れるよう上記調整スタンド17の基杆部18は後脚8の内側面にピン21により回動可能に枢着されている。なお、調整スタンド17を後脚8の外側に枢着することもできる。
【0015】
上記ピン21の位置は、調整スタンド17が起立状態にあるとき、上記後脚8の連結杆10に近接する方向に調整スタンド17が後方から回動しそれ以上の回動が阻止されるようにしてある。また、両側の基杆部18間には連結杆22を設けてあり、該連結杆18は調整スタンド17を回動するときの手掛とすることができる。
【0016】
上記調整スタンド17の接地杆部のうち、前方の接地杆部19にはローラ23が設けられている。後方の接地杆部20はU字状に湾曲しており、
図3に示すように床面2に接したとき、先端が床面2から離れ、湾曲部24が床面2に接するようにしてある。ローラ23と湾曲部24が床面2に接しているとき、上記基杆部18が後方に傾斜するよう基杆部は前方部分で後脚に枢着しており、これにより調整スタンド17は安定状態に定置される。なお、接地杆部の両端にローラを設けたり、若しくはいずれの端部にもローラを設けないこともできる。上記調整スタンドは、両端の接地杆部の下端を適宜の連結杆で連結したり、その他種々の形態に形成することができる(図示略)。
【0017】
上記の構成により調整スタンド17が倒伏状態にあるときは、
図3に示すように接地杆部19、20が床面2に接するから、接地杆部の高さ分、後脚8が上昇し、その下端9は床面2から離れ、座部7はほぼ水平状態になり、平常使用するように着座することができる。
【0018】
図3に示す状態から、
図5の鎖線で示すように調整スタンド17を回動して起立させると、調整スタンド17は基杆部18がほぼ後脚8に沿う状態に起立し、接地杆部は床面から離れる。その結果、後脚8は降下し、下端9が床面2に接し、座部7が後方に傾斜したリクライニング状態になる。
【0019】
以上のようにして本発明の椅子は平常の使用状態とリラックスしたリクライニング状態に簡単に座部の角度を変換して使用することができ、要看護者を安定状態に着座させることができる。
【符号の説明】
【0020】
1 前脚
2 床面
7 座部
8 後脚
9 (後脚の)下端
11 背枠
17 調整スタンド
18 基杆部
19、20 接地杆部
21 ピン
23 ローラ