(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記補正電流算出手段は、前記規範ラック軸力と前記実ラック軸力との偏差に基づいて設定した補正係数を、前記目標舵角速度と前記実際の舵角速度との偏差に基づいて前記補正電流のベースとなるベース補正電流に乗算することで当該補正電流を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、実施の形態に係る電動パワーステアリング装置100の概略構成を示す図である。
電動パワーステアリング装置100(以下、単に「ステアリング装置100」と称する場合もある。)は、車両の進行方向を任意に変えるためのかじ取り装置であり、本実施の形態においては車両の一例としての自動車に適用した構成を例示している。
【0012】
ステアリング装置100は、自動車の進行方向を変えるために運転者が操作する車輪(ホイール)状のステアリングホイール(ハンドル)101と、ステアリングホイール101に一体的に設けられたステアリングシャフト102とを備えている。また、ステアリング装置100は、ステアリングシャフト102と自在継手103aを介して連結された上部連結シャフト103と、この上部連結シャフト103と自在継手103bを介して連結された下部連結シャフト108とを備えている。下部連結シャフト108は、ステアリングホイール101の回転に連動して回転する。
【0013】
また、ステアリング装置100は、転動輪としての左右の前輪150のそれぞれに連結されたタイロッド104と、タイロッド104に連結されたラック軸105とを備えている。また、ステアリング装置100は、ラック軸105に形成されたラック歯105aとともにラック・ピニオン機構を構成するピニオン106aを備えている。ピニオン106aは、ピニオンシャフト106の下端部に形成されている。これらラック軸105、ピニオンシャフト106などが、ステアリングホイール101の回転操作力を前輪150の転動力として伝達する伝達機構として機能する。ピニオンシャフト106は、前輪150を転動させるラック軸105に対して、回転することにより前輪150を転動させる駆動力(ラック軸力)を加える。
【0014】
また、ステアリング装置100は、ピニオンシャフト106を収納するステアリングギヤボックス107を有している。ピニオンシャフト106は、ステアリングギヤボックス107内にてトーションバー112を介して下部連結シャフト108と連結されている。そして、ステアリングギヤボックス107の内部には、下部連結シャフト108とピニオンシャフト106との相対回転角度に基づいて、言い換えればトーションバー112の捩れ量に基づいて、ステアリングホイール101に加えられた操舵トルクTを検出するトルク検出手段の一例としてのトルクセンサ109が設けられている。
【0015】
また、ステアリング装置100は、ステアリングギヤボックス107に支持された電動モータ110と、電動モータ110の駆動力を減速してピニオンシャフト106に伝達する減速機構111とを有している。減速機構111は、例えば、ピニオンシャフト106に固定されたウォームホイール(不図示)と、電動モータ110の出力軸に固定されたウォームギヤ(不図示)などから構成される。電動モータ110は、ピニオンシャフト106に回転駆動力を加えることにより、ラック軸105に前輪150を転動させる駆動力(ラック軸力)を加える。本実施の形態に係る電動モータ110は、電動モータ110の回転角度であるモータ回転角度θに連動した回転角度信号θsを出力するレゾルバ120を有する3相ブラシレスモータである。
【0016】
また、ステアリング装置100は、電動モータ110の作動を制御する制御装置10を備えている。制御装置10には、上述したトルクセンサ109からの出力信号が入力される。また、制御装置10には、自動車に搭載される各種の機器を制御するための信号を流す通信を行うネットワーク(CAN)を介して、自動車の移動速度である車速Vcを検出する車速センサ170などからの出力信号が入力される。
【0017】
以上のように構成されたステアリング装置100は、トルクセンサ109が検出した操舵トルクTに基づいて電動モータ110を駆動し、電動モータ110の発生トルクをピニオンシャフト106に伝達する。これにより、電動モータ110の発生トルクが、ステアリングホイール101に加える運転者の操舵力をアシストする。
【0018】
次に、制御装置10について説明する。
図2は、制御装置10の概略構成図である。
制御装置10は、CPU、ROM、RAM、バックアップRAM等からなる算術論理演算回路である。
制御装置10には、上述したトルクセンサ109にて検出された操舵トルクTが出力信号に変換されたトルク信号Td、車速センサ170にて検出された車速Vcが出力信号に変換された車速信号v、レゾルバ120からの回転角度信号θsなどが入力される。
【0019】
そして、制御装置10は、電動モータ110に供給する目標電流Itを算出(設定)する目標電流算出部20と、目標電流算出部20が算出した目標電流Itに基づいてフィードバック制御などを行う制御部30とを有している。
また、制御装置10は、電動モータ110のモータ回転角度θを算出するモータ回転角度算出部71と、モータ回転角度算出部71にて算出されたモータ回転角度θに基づいて、モータ回転速度Nmを算出するモータ回転速度算出部72と、ステアリングホイール101の回転角度である舵角Raを算出する舵角検出手段の一例としての舵角算出部73と、を備えている。
【0020】
先ずは、目標電流算出部20について詳述する。
目標電流算出部20は、トルク信号Tdおよび車速信号vに基づいて電動モータ110に供給する目標電流Itの基本となる基本目標電流Itfを算出(設定)する基本目標電流算出手段の一例としての基本目標電流算出部27を備えている。また、目標電流算出部20は、目標舵角速度と実際の舵角速度との偏差に応じて基本目標電流Itfを補正する電流である舵角速度偏差電流Ivを算出する補正電流算出手段の一例としての舵角速度偏差電流算出部28と、基本目標電流Itfと舵角速度偏差電流Ivとに基づいて最終的に目標電流Itを決定する目標電流決定手段の一例としての目標電流決定部29と、を備えている。
基本目標電流算出部27、舵角速度偏差電流算出部28および目標電流決定部29については後で詳述する。
【0021】
図3は、制御部30の概略構成図である。
制御部30は、
図3に示すように、電動モータ110の作動を制御するモータ駆動制御部31と、電動モータ110を駆動させるモータ駆動部32と、電動モータ110に実際に流れる実電流Imを検出するモータ電流検出部33とを有している。
モータ駆動制御部31は、目標電流算出部20にて最終的に決定された目標電流Itと、モータ電流検出部33にて検出された電動モータ110へ供給される実電流Imとの偏差に基づいてフィードバック制御を行うフィードバック(F/B)制御部40と、電動モータ110をPWM駆動するためのPWM(パルス幅変調)信号を生成するPWM信号生成部60とを有している。
【0022】
フィードバック制御部40は、目標電流算出部20にて最終的に決定された目標電流Itとモータ電流検出部33にて検出された実電流Imとの偏差を求める偏差演算部41と、その偏差がゼロとなるようにフィードバック処理を行うフィードバック(F/B)処理部42とを有している。
【0023】
フィードバック(F/B)処理部42は、目標電流Itと実電流Imとが一致するようにフィードバック制御を行うものであり、例えば、偏差演算部41にて算出された偏差に対して、比例要素で比例処理し、積分要素で積分処理し、加算演算部でこれらの値を加算する。
PWM信号生成部60は、フィードバック制御部40からの出力値に基づいて電動モータ110をPWM(パルス幅変調)駆動するためのPWM信号を生成し、生成したPWM信号を出力する。
【0024】
モータ駆動部32は、所謂インバータであり、例えば、スイッチング素子として6個の独立したトランジスタ(FET)を備え、6個の内の3個のトランジスタは電源の正極側ラインと各相の電気コイルとの間に接続され、他の3個のトランジスタは各相の電気コイルと電源の負極側(アース)ラインと接続されている。そして、6個の中から選択した2個のトランジスタのゲートを駆動してこれらのトランジスタをスイッチング動作させることにより、電動モータ110の駆動を制御する。
モータ電流検出部33は、モータ駆動部32に接続されたシャント抵抗の両端に生じる電圧から電動モータ110に流れる実電流Imの値を検出する。
【0025】
モータ回転角度算出部71(
図2参照)は、レゾルバ120からの回転角度信号θsに基づいてモータ回転角度θを算出する。
モータ回転速度算出部72(
図2参照)は、モータ回転角度算出部71が算出したモータ回転角度θに基づいて電動モータ110のモータ回転速度Nmを算出する。
【0026】
舵角算出部73(
図2参照)は、ステアリングホイール101、減速機構111などが機械的に連結されているためにステアリングホイール101の回転角度(舵角Ra)と電動モータ110のモータ回転角度θとの間に相関関係があることに鑑み、モータ回転角度算出部71にて算出されたモータ回転角度θに基づいて舵角Raを算出する。舵角算出部73は、例えば、モータ回転角度算出部71にて定期的(例えば1ミリ秒毎)に算出されたモータ回転角度θの前回値と今回値との差分の積算値に基づいて舵角Raを算出する。
【0027】
図4は、基本目標電流算出部27の概略構成図である。
基本目標電流算出部27は、基本目標電流Itfを設定する上でベースとなるベース電流Ibを算出するベース電流算出部21と、電動モータ110の慣性モーメントを打ち消すためのイナーシャ補償電流Isを算出するイナーシャ補償電流算出部22と、電動モータ110の回転を制限するダンパー補償電流Idを算出するダンパー補償電流算出部23とを備えている。また、基本目標電流算出部27は、ベース電流算出部21、イナーシャ補償電流算出部22、ダンパー補償電流算出部23にて算出された値に基づいて基本目標電流Itfを決定する基本目標電流決定部25を備えている。また、基本目標電流算出部27は、トルクセンサ109にて検出された操舵トルクTの位相を補償する位相補償部26を備えている。
なお、目標電流算出部20には、トルク信号Td、車速信号vなどが入力される。
【0028】
図5は、操舵トルクTおよび車速Vcとベース電流Ibとの対応を示す制御マップの概略図である。
ベース電流算出部21は、位相補償部26にてトルク信号Tdが位相補償されたトルク信号Tsと、車速センサ170からの車速信号vとに基づいてベース電流Ibを算出する。つまり、ベース電流算出部21は、位相補償された操舵トルクTと、車速Vcとに応じたベース電流Ibを算出する。なお、ベース電流算出部21は、例えば、予め経験則に基づいて作成しROMに記憶しておいた、位相補償された操舵トルクT(トルク信号Ts)および車速Vc(車速信号v)とベース電流Ibとの対応を示す
図5に例示した制御マップに、操舵トルクT(トルク信号Ts)および車速Vc(車速信号v)を代入することによりベース電流Ibを算出する。
【0029】
イナーシャ補償電流算出部22は、トルク信号Tsと、車速信号vとに基づいて電動モータ110およびシステムの慣性モーメントを打ち消すためのイナーシャ補償電流Isを算出する。つまり、イナーシャ補償電流算出部22は、操舵トルクT(トルク信号Ts)と、車速Vc(車速信号v)とに応じたイナーシャ補償電流Isを算出する。なお、イナーシャ補償電流算出部22は、例えば、予め経験則に基づいて作成しROMに記憶しておいた、操舵トルクT(トルク信号Ts)および車速Vc(車速信号v)とイナーシャ補償電流Isとの対応を示す制御マップに、操舵トルクT(トルク信号Ts)および車速Vc(車速信号v)を代入することによりイナーシャ補償電流Isを算出する。
【0030】
ダンパー補償電流算出部23は、トルク信号Tsと、車速信号vと、電動モータ110のモータ回転速度Nmとに基づいて、電動モータ110の回転を制限するダンパー補償電流Idを算出する。つまり、ダンパー補償電流算出部23は、操舵トルクT(トルク信号Ts)と、車速Vc(車速信号v)と、電動モータ110のモータ回転速度Nmに応じたダンパー補償電流Idを算出する。なお、ダンパー補償電流算出部23は、例えば、予め経験則に基づいて作成しROMに記憶しておいた、操舵トルクT(トルク信号Ts)、車速Vc(車速信号v)およびモータ回転速度Nmと、ダンパー補償電流Idとの対応を示す制御マップに、操舵トルクT(トルク信号Ts)、車速Vc(車速信号v)およびモータ回転速度Nmを代入することによりダンパー補償電流Idを算出する。
【0031】
基本目標電流決定部25は、ベース電流算出部21にて算出されたベース電流Ib、イナーシャ補償電流算出部22にて算出されたイナーシャ補償電流Isおよびダンパー補償電流算出部23にて算出されたダンパー補償電流Idに基づいて基本目標電流Itfを決定する。基本目標電流決定部25は、例えば、ベース電流Ibに、イナーシャ補償電流Isを加算するとともにダンパー補償電流Idを減算して得た電流を基本目標電流Itfとして決定する。
【0032】
次に、舵角速度偏差電流算出部28について詳述する。
図6は、舵角速度偏差電流算出部28の概略構成図である。
舵角速度偏差電流算出部28は、舵角速度偏差電流Ivのベースとなるベース舵角速度偏差電流Ivbを算出するベース舵角速度偏差電流算出部281と、ラック軸105に生じる軸力に基づいてベース舵角速度偏差電流算出部281が算出したベース舵角速度偏差電流Ivbを補正するための補正係数であるラック軸力補正係数Krを設定するラック軸力補正係数設定部282と、を備えている。また、舵角速度偏差電流算出部28は、ベース舵角速度偏差電流算出部281が算出したベース舵角速度偏差電流Ivbと、ラック軸力補正係数設定部282が設定したラック軸力補正係数Krとに基づいて舵角速度偏差電流Ivを決定する舵角速度偏差電流決定部283を備えている。
【0033】
先ずは、ベース舵角速度偏差電流算出部281について説明する。
ベース舵角速度偏差電流算出部281は、舵角算出部73にて算出された舵角Raと車速センサ170にて検出された車速Vcとに基づいて目標の舵角速度Vrである目標舵角速度Vrtを算出する目標舵角速度算出部281aと、実際の舵角速度Vrである実舵角速度Vraを算出する実舵角速度算出部281bと、を備えている。また、ベース舵角速度偏差電流算出部281は、目標舵角速度算出部281aが算出した目標舵角速度Vrtと実舵角速度算出部281bが算出した実舵角速度Vraとの偏差である舵角速度偏差ΔVrを算出する舵角速度偏差算出部281cと、舵角速度偏差算出部281cが算出した舵角速度偏差ΔVrに基づいてベース舵角速度偏差電流Ivbを決定するベース舵角速度偏差電流決定部281dと、を備えている。
【0034】
図7は、舵角Raおよび車速Vcと目標舵角速度Vrtとの対応を示す制御マップである。
目標舵角速度算出部281aは、舵角算出部73にて算出された舵角Raと車速センサ170にて検出された車速Vcとに応じた目標舵角速度Vrtを算出する。目標舵角速度算出部281aは、例えば、予め経験則に基づいて作成しROMに記憶しておいた、舵角Raおよび車速Vcと目標舵角速度Vrtとの対応を示す
図7に例示した制御マップに、舵角Raおよび車速Vcを代入することにより目標舵角速度Vrtを算出する。
【0035】
実舵角速度算出部281bは、舵角算出部73にて算出された舵角Raに基づいて実際の舵角Raに対する変化速度である実舵角速度Vraを算出する。実舵角速度算出部281bは、舵角算出部73にて算出された舵角Raを時間微分することにより舵角Raにおける実舵角速度Vraを算出する。
舵角速度偏差算出部281cは、目標舵角速度算出部281aが算出した目標舵角速度Vrtから実舵角速度算出部281bが算出した実舵角速度Vraを減算することにより舵角速度偏差ΔVrを算出する。
【0036】
図8は、舵角速度偏差ΔVrとベース舵角速度偏差電流Ivbとの対応を示す制御マップである。
ベース舵角速度偏差電流決定部281dは、舵角速度偏差算出部281cにて算出された舵角速度偏差ΔVrに応じたベース舵角速度偏差電流Ivbを算出する。ベース舵角速度偏差電流決定部281dは、例えば、予め経験則に基づいて作成しROMに記憶しておいた、舵角速度偏差ΔVrとベース舵角速度偏差電流Ivbとの対応を示す
図8に例示した制御マップに、舵角速度偏差ΔVrを代入することによりベース舵角速度偏差電流Ivbを算出する。
【0037】
次に、ラック軸力補正係数設定部282について説明する。
ラック軸力補正係数設定部282は、
図6に示すように、ラック軸105に生じる規範となる軸力である規範ラック軸力Frmを算出する規範ラック軸力算出手段の一例としての規範ラック軸力算出部282aと、ラック軸105に生じる実際の軸力である実ラック軸力Fraを算出する実ラック軸力算出手段の一例としての実ラック軸力算出部282bと、を備えている。また、ラック軸力補正係数設定部282は、規範ラック軸力算出部282aが算出した規範ラック軸力Frmと実ラック軸力算出部282bが算出した実ラック軸力Fraとの偏差であるラック軸力偏差ΔFrを算出するラック軸力偏差算出部282cと、ラック軸力偏差算出部282cが算出したラック軸力偏差ΔFrに基づいてラック軸力補正係数Krのベースとなるベースラック軸力補正係数Krbを設定するベースラック軸力補正係数設定部282dと、車速Vcに基づいてベースラック軸力補正係数Krbを補正するため車速補正係数Kvを設定する車速補正係数設定部282eと、ベースラック軸力補正係数Krbと車速補正係数Kvとに基づいてラック軸力補正係数Krを決定するラック軸力補正係数決定部282fと、を備えている。
【0038】
規範ラック軸力算出部282aは、舵角算出部73にて算出された舵角Raと車速センサ170にて検出された車速Vcとに基づいて規範ラック軸力Frmを算出する。つまり、規範ラック軸力算出部282aは、舵角Raと車速Vcとに応じた規範ラック軸力Frmを算出する。なお、規範ラック軸力算出部282aは、例えば、予め経験則に基づいて作成しROMに記憶しておいた、舵角Raおよび車速Vcと規範ラック軸力Frmとの対応を示す制御マップ又は算出式に、舵角Raおよび車速Vcを代入することにより規範ラック軸力Frmを算出する。
【0039】
実ラック軸力算出部282bは、トルクセンサ109にて検出された操舵トルクTと、モータ回転角度算出部71にて算出されたモータ回転角度θと、モータ電流検出部33にて検出された実電流Imとに基づいて実ラック軸力Fraを算出する。
ここで、実ラック軸力Fraは、本実施の形態に係るステアリング装置100がピニオン型の装置であることから、ピニオンシャフト106から与えられる軸力に等しいとして、ピニオンシャフト106に加えられたピニオントルクTpに基づいて算出する。実ラック軸力Fraは、ピニオントルクTpをピニオン106aのピッチ円半径rpで除算した値である(Fra=Tp/rp)。
【0040】
ピニオントルクTpは、ステアリングホイール101を介して運転者から加えられる操舵トルクTと電動モータ110の出力軸トルクToから加えられるモータトルクTmとを加算したトルクと推定することができる(Tp=T+Tm)。
【0041】
操舵トルクTは、トルクセンサ109からのトルク信号Tdに基づいて把握することができる。
モータトルクTmは、出力軸トルクToに減速機構111の減速比(ギア比)Nを乗算した値である(Tm=To×N)。
出力軸トルクToは、モータ回転角度算出部71にて算出されたモータ回転角度θおよびモータ電流検出部33にて検出された実電流Imを、予めROMに記憶しておいた算出式に代入することにより算出することができる。なお、モータ回転角度算出部71にて算出されたモータ回転角度θを用いる代わりに、モータ逆起電力から所定の式により算出したモータ回転角度θを用いてもよい。
【0042】
ラック軸力偏差算出部282cは、実ラック軸力算出部282bが算出した実ラック軸力Fraから規範ラック軸力算出部282aが算出した規範ラック軸力Frmを減算することによりラック軸力偏差ΔFrを算出する(ΔFr=Fra−Frm)。
【0043】
図9は、ラック軸力偏差ΔFrとベースラック軸力補正係数Krbとの対応を示す制御マップである。
ベースラック軸力補正係数設定部282dは、ラック軸力偏差算出部282cが算出したラック軸力偏差ΔFrに応じたベースラック軸力補正係数Krbを算出する。ベースラック軸力補正係数設定部282dは、例えば、予め経験則に基づいて作成しROMに記憶しておいた、ラック軸力偏差ΔFrとベースラック軸力補正係数Krbとの対応を示す
図9に例示した制御マップに、ラック軸力偏差ΔFrを代入することによりベースラック軸力補正係数Krbを算出する。
【0044】
なお、
図9に示した制御マップにおいては、ラック軸力偏差ΔFrがプラス方向に大きくなるほど、言い換えれば、実ラック軸力Fraが規範ラック軸力Frmよりも大きいほどベースラック軸力補正係数Krbがプラス方向に大きくなるように設定されている。また、
図9に示した制御マップにおいては、ラック軸力偏差ΔFrがマイナス方向に大きくなるほど、言い換えれば、規範ラック軸力Frmが実ラック軸力Fraよりも大きいほどベースラック軸力補正係数Krbがマイナス方向に大きくなるように設定されている。
【0045】
図10は、車速Vcと車速補正係数Kvとの対応を示す制御マップである。
車速補正係数設定部282eは、車速Vcに応じた車速補正係数Kv設定する。車速補正係数設定部282eは、例えば、予め経験則に基づいて作成しROMに記憶しておいた、車速Vcと車速補正係数Kvとの対応を示す
図10に例示した制御マップに、車速Vcを代入することにより車速補正係数Kvを算出する。
【0046】
ラック軸力補正係数決定部282fは、ベースラック軸力補正係数設定部282dが算出したベースラック軸力補正係数Krbと車速補正係数設定部282eが算出した車速補正係数Kvとを乗算することにより得た値に1を加算することにより得た値をラック軸力補正係数Krとして決定する(Kr=1+Krb×Kv)。
【0047】
舵角速度偏差電流決定部283は、ベース舵角速度偏差電流算出部281が算出したベース舵角速度偏差電流Ivbと、ラック軸力補正係数設定部282が設定したラック軸力補正係数Krとを乗算することにより得た値を舵角速度偏差電流Ivとして決定する(Iv=Ivb×Kr)。
舵角速度偏差電流決定部283は、上述した手法にて算出した舵角速度偏差電流IvをRAMなどの記憶領域に記憶する。
【0048】
そして、目標電流決定部29は、RAMなどの記憶領域に記憶された、基本目標電流算出部27が算出した基本目標電流Itfと舵角速度偏差電流算出部28が算出した舵角速度偏差電流Ivとを加算した値を目標電流Itとして決定する。
【0049】
以上のように構成された本実施の形態に係る目標電流算出部20においては、目標電流Itに、目標舵角速度Vrtと実舵角速度Vraとの偏差に応じた舵角速度偏差電流Ivが加味される。この舵角速度偏差電流Ivは、路面からの反力度合いを考慮した電流であり、路面からの反力が小さい場合には舵角速度偏差電流Ivは小さく、路面からの反力が大きい場合には舵角速度偏差電流Ivは大きくなるように設定される。
【0050】
加えて、本実施の形態に係る目標電流算出部20においては、ラック軸105に生じる実ラック軸力Fraが規範ラック軸力Frmよりも大きくなるほど、ラック軸力補正係数Krが大きくなるので、舵角速度偏差電流Ivが大きくなるように補正されて、目標電流Itが増大する。他方、ラック軸105に生じる実ラック軸力Fraが規範ラック軸力Frmよりも小さい場合は、実ラック軸力Fraが規範ラック軸力Frmよりも小さくなるほど、マイナス方向にラック軸力補正係数Krが大きくなるので、舵角速度偏差電流Ivが小さくなるように補正されて、目標電流Itが減少する。
【0051】
それゆえ、本実施の形態に係る目標電流算出部20によれば、路面からの反力度合いを考慮した舵角速度偏差電流Ivを加える制御を行うにあたっても、外乱入力を考慮した値にすることができる。そして、かかる構成によれば、不規則で連続的な外乱入力時など、外乱入力推定が不安定となり、ラック軸力偏差ΔFrが不安定な出力となる場合においても、舵角速度偏差電流Ivが増減するのみであり、目標舵角速度Vrtと実舵角速度Vraとの偏差に応じた補正電流を加味する効果が増減するのみである。そのため、例えば、実ラック軸力Fraと規範ラック軸力Frmとの偏差に応じて補正電流を算出し、算出した補正電流を目標電流Itに加味する構成である場合と比較すると、不規則で連続的な外乱が入力することに起因して操舵フィーリングが悪化することを抑制できる。
以上説明したように、本実施の形態に係るステアリング装置100によれば、操舵フィーリングの低下を抑制しつつ、路面からの反力度合いを考慮したアシスト力を付与することができる。
【0052】
<プログラムの説明>
また以上説明した制御装置10が行なう処理は、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働することにより実現することができる。この場合、制御装置10に設けられた制御用コンピュータ内部のCPUが、制御装置10の各機能を実現するプログラムを実行し、これらの各機能を実現させる。
【0053】
よって制御装置10が行なう処理は、コンピュータに、車両のステアリングホイール101の操舵トルクTに基づいて電動モータ110に供給する目標電流Itの基本となる基本目標電流Itfを算出する基本目標電流算出機能と、ステアリングホイール101の回転角度である舵角Raと車両の移動速度である車速Vcとに基づいて算出した目標舵角速度Vrtと実際の舵角速度(実舵角速度Vra)との偏差とに基づいて目標電流Itを補正する補正電流の一例としての舵角速度偏差電流Ivを算出する補正電流算出機能と、基本目標電流算出機能が算出した基本目標電流Itfと補正電流算出機能が算出した補正電流とに基づいて目標電流を決定する目標電流決定機能と、を備え、補正電流算出機能は、舵角Raと車速Vcとに基づいて、転動輪を転動させるラック軸105に生じる軸力の規範となる規範ラック軸力Frmを算出する規範ラック軸力算出機能と、ラック軸105に生じる実際の軸力である実ラック軸力Fraを算出する実ラック軸力算出機能と、を有し、規範ラック軸力算出機能が算出した規範ラック軸力Frmと実ラック軸力算出機能が算出した実ラック軸力Fraとの偏差に基づいて補正電流を変更することを実現させるプログラムとして捉えることもできる。
【0054】
なお、本実施の形態を実現するプログラムは、通信手段により提供することはもちろん、CD−ROM等の記録媒体に格納して提供することも可能である。