(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
支持基材、粘着剤層(X)、シリカ粒子を含有する組成物よりなる連続空隙含有層、及び粘着剤層(Y)がこの順に積層された粘着シートであって、前記連続空隙含有層中のシリカ粒子の質量濃度が60%超、100%以下である粘着シート。
支持基材、粘着剤層(X)、連続空隙含有層、粘着剤層(Y)が、この順に積層された粘着シートの製造方法であって、粘着剤層(X)、連続空隙含有層、粘着剤層(Y)の少なくとも2層以上が、多層コーターで同時塗布される、請求項1〜3のいずれかに記載の粘着シートの製造方法。
支持基材、粘着剤層(X)、連続空隙含有層、粘着剤層(Y)が、この順に積層された粘着シートの製造方法であって、粘着剤層(X)、連続空隙含有層、粘着剤層(Y)の各々が、貼合により積層される、請求項1〜3のいずれかに記載の粘着シートの製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来、感圧接着剤(粘着剤)を支持基材に塗布した粘着シートは、押圧によって容易に被着体に貼り付けることができるという簡便さにより、多くの分野において幅広く使用されている。また近年、製品の軽量化等の要望によりプラスチック成形品が多用されるようになってきた。それに伴い、プラスチック成形品に貼り付けるための粘着シートの使用が増加している。プラスチック成形品としては、例えば、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ABS等の樹脂を成形したもの等が挙げられる。
これらのプラスチック成形品の表面に装飾等の理由でガスバリア性のある支持基材を用いた粘着シート(例えば、粘着ラベル)を貼付した場合、プラスチック成形品からガスが発生し、粘着シートとプラスチック成形品との間に気泡が形成され、膨れや浮き、すなわち、ブリスターが生じる場合がある。このようなブリスターが発生すると、ラベルの外観が損なわれ、粘着シートとしての装飾機能が著しく低下してしまう。
【0003】
そこで、このような問題を解決するために、例えば特許文献1では、粘着剤組成物として(メタ)アクリル酸エステル、共重合可能なカルボキシル基含有化合物及びビニル基を有する第三級アミンをラジカル重合してなる共重合体を含むアクリル系粘着剤組成物が開示されている。
また、特許文献2には、炭素数4〜12のアルキル基を有するアクリル酸エステルとアクリル酸やアクリル酸−2−ヒドロキシエチルのような極性モノマー0.1〜10重量%よりなる共重合体にアジリジン系架橋剤を配合してなる粘着剤を用いた耐ブリスター性粘着シートとして提案されている。
【0004】
さらに、特許文献3では、粘着剤層を形成する成分として粘着剤成分とアクリル系モノマー又はオリゴマーである硬化性成分を含む粘着シートが開示されているが、硬化性成分が粘着剤層の凝集力を低下させてしまったり、粘着剤成分との相溶性が悪い場合、粘着剤層が白濁することがある。
さらに、特許文献4では、炭素数1〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとカルボキシル基含有不飽和モノマーを共重合して得られた特定の分子量を有する樹脂組成物と、炭素数1〜20のメタクリル酸アルキルエステルもしくはメタクリル酸シクロアルキルエステル、メタクリル酸ベンジル又はスチレンから選ばれた1種又は2種以上のモノマーとアミノ基含有不飽和モノマーを共重合して得られた特定のTg及び特定の分子量を有する樹脂組成物とを配合する粘着剤組成物が開示されている。
【0005】
さらに、特許文献5では炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分として、スチレン系単量体、カルボキシル基含有不飽和単量体及びアミノ基含有不飽和単量体を共重合して得られる特定の分子量を有する共重合体にグリシジル基を有する架橋剤を配合してなる耐ブリスター性粘着剤組成物が開示されている。
特許文献6ではアセトン中で重合された重量平均分子量150万以上かつ重量平均分子量/数平均分子量が4.0以下である樹脂組成物が開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず、本発明の粘着シートについて説明する。
本発明の粘着シートは、支持基材、粘着剤層(X)、シリカ粒子を含有する組成物よりなる連続空隙含有層、及び粘着剤層(Y)がこの順に積層された粘着シートであって、前記連続空隙含有層中のシリカ粒子の質量濃度が60%超、100%以下である。
なお、本発明の接着シートは、前記粘着剤層(X)、連続空隙含有層、及び粘着剤層(Y)がこの順に積層されたものであればよく、各層を構成する成分が各層の界面において互いに混合されている層(以下、「混層」ともいう)が形成されていてもよい。
該混層の態様としては、例えば、粘着剤層(X)と連続空隙含有層の2層を構成する成分が互いに混合されている層、連続空隙含有層と粘着剤層(Y)の2層を構成する成分が互いに混合されている層、前記粘着剤層(X)、連続空隙含有層、及び粘着剤層(Y)の3層を構成する成分が互いに混合されている層等が挙げられる。該混層を形成する方法としては、粘着剤層(X)又は連続空隙含有層を形成したのち、いわゆるwet−on−wet又はwet−on−dryでこれらの上層となる連続空隙含有層又は粘着剤層(Y)を形成する方法が挙げられる。
【0013】
[支持基材]
本発明の粘着シートにおいて用いられる支持基材としては、特に制限はなく、従来、粘着シートの支持基材として用いられている各種の基材を使用することができる。このような支持基材としては、プラスチックフィルム、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリアミドフィルム、アクリル樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、シクロオレフィン樹脂フィルム等を挙げることができる。
これらの中で、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。また、耐熱性等が要求される用途では、ガラス転移点(Tg)の高いポリエチレンナフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルムを使用することができる。さらに、耐候性等が要求される用途では、耐候性を有するポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、フッ素樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルムを使用することができる。
このプラスチックフィルムの厚みについては、特に制限はなく、通常5〜200μm程度、好ましくは25〜120μm、より好ましくは30〜90μm、より更に好ましくは40〜60μmである。
【0014】
[金属層]
本発明における前記支持基材は、ブリスターを抑制するという本発明の効果がより一層明確に表われる非通気性基材であることが好ましい。
この非通気性基材としては、前記したプラスチックフィルム上に金属層を有する基材を用いることができる。該金属層の形成は、例えば金属光沢を有する金属、具体的にはアルミニウム、スズ、クロム、チタン等を真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等のPVD法により蒸着する方法、あるいは金属光沢を有する金属箔、具体的にはアルミニウム箔、スズ箔、クロム箔、チタン箔等を、通常用いられる各種の粘着剤層を介して貼付する方法等を採用することができる。特に、金属光沢を有する金属を蒸着する方法が、得られる粘着シートの外観や経済性等の観点から、有利である。
【0015】
また、これらのプラスチックフィルムは、その表面に設けられる層との密着性を向上させる目的で、所望により、酸化法や凹凸化法等により表面処理、あるいはプライマー処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸処理(湿式)、熱風処理、オゾン、及び紫外線照射処理等が挙げられ、また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの表面処理法はプラスチックフィルムの種類に応じて適宜選ばれるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性等の面から、好ましく用いられる。
【0016】
[連続空隙含有層]
本発明の粘着シートを構成する連続空隙含有層(以下、単に空隙含有層と称することがある。)は、シリカ粒子を含有する組成物よりなる層であって、当該空隙含有層におけるシリカ粒子の質量濃度は60%超、100%以下であることを要し、好ましくは61〜93%、より好ましくは63〜88%、更に好ましくは66〜83%、より更に好ましくは68〜78%である。上記シリカ粒子の質量濃度を上記範囲とすることで、ブリスターの発生を抑制するとともに、安定して粘着シートを作製することができる。
なお、当該空隙含有層におけるシリカ粒子の質量濃度は、下記式(2)
シリカ粒子の質量濃度=[シリカ粒子質量/連続空隙含有層の合計質量]×100 ・・・(2)
により、算出することができる。連続空隙含有層の合計質量とは、連続空隙含有層を形成する連続空隙含有層用コーティング液の全固形分の合計質量をいう。
【0017】
[空隙による厚み増分率]
当該空隙含有層の空隙による厚み増分率は、170%超、280%以下であることが好ましく、180〜270%であることがより好ましく、195〜260%であることが更に好ましく、205〜250%であることがより更に好ましく、220〜245%であることがより更に好ましい。
空隙含有層の空隙による厚み増分率が上記範囲内であると、プラスチック成形品等から発生したガスが抜け易くなり、当該粘着シートの耐ブリスター性が優れたものとなる。
【0018】
[空隙による厚み増分率の計算方法]
当該空隙含有層の空隙による厚み増分率は、以下のようにして算出することができる。
まず、塗布量測定値を乾燥塗膜比重で割ることにより、空隙がない場合の膜厚(下線部)を算出し、下記式(1)のように測定膜厚を空隙がない場合の膜厚で割ることにより空隙による厚み増分率を算出する。
空隙による厚み増分率(%)=測定膜厚×100/
(塗布量測定値/乾燥塗膜比重)・・・(1)
なお、測定膜厚とは、空隙含有層の厚みを、JIS K 7130に準じて、定圧厚さ測定器(テクロック社製、製品名「PG−02」)で測定した値である。また塗布量とは、空隙含有層の単位面積当たりの乾燥質量(g/m
2)である。また乾燥塗膜比重(g/cm
3)とは、材質毎の比重の質量分率より算出した値である。
【0019】
[空隙]
連続空隙含有層を形成する材料となるシリカ粒子は、実際には、一次粒子、及び/又は二次粒子から構成されている。連続空隙含有層における空隙とは、シリカの一次粒子同士の間に存在する空隙、及び二次粒子内に存在する空隙も含むが、二次粒子の場合は、二次粒子同士の間に存在する空隙のみではなく、二次粒子内に存在する空隙も含んでいる。それゆえ、連続空隙含有層には、連続空隙として、二次粒子同士の間に存在する空隙と、二次粒子内に存在する空隙とが連通して空孔(微細孔)を形成している領域もあり、一次粒子同士の間に存在する空隙と、二次粒子同士の間に存在する空隙及び/又は二次粒子内に存在する空隙とが、連通して空孔(微細孔)を形成している領域もある。これらの連続空隙が、厚さ方向に連続する空隙を形成することにより、通気路を十分に確保できるため、ブリスターを防止することができる。
【0020】
[シリカ粒子]
当該空隙含有層を形成する材料となるシリカ粒子は、球状であっても破砕型であってもよい。また、シリカ粒子は乾式シリカ、湿式シリカ及び有機修飾シリカのいずれであってもよく、これらの2種以上からなる混合物であってもよい。
前記シリカ粒子中におけるシリカの質量濃度は、好ましくは70〜100質量%、より好ましくは85〜100質量%、更に好ましくは90〜100質量%である。当該空隙含有層を形成する材料となるシリカ粒子の体積平均二次粒子径は、好ましくは0.5〜10μm、より好ましくは1〜8μm、更に好ましくは1.5〜5μmである。シリカ粒子の体積平均二次粒子径はマルチサイザー・スリー機(ベックマン・コールター社製)等を用いて、コールターカウンター法による粒度分布の測定を行うことにより、求められる。
なお、当該空隙含有層には、本発明の目的が損なわれない範囲で、シリカ粒子と共に、他の無機粒子、例えば酸化チタン、硫酸バリウム、アルミナ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ガラスビーズ等、さらにはアクリルビーズ等の有機粒子を含んでいてもよい。
【0021】
[粘着剤]
当該連続空隙含有層は、連続空隙含有層と粘着剤層の界面の密着性、ならびに同じ厚みの場合に粘着性を有さない物質よりも粘着性を有する物質の方がバルクの影響により結果的に被着体に対して大きな粘着力を得やすいため、成分として粘着剤を含有することが好ましい。
当該連続空隙含有層を構成する粘着剤としては、特に制限はなく、様々な種類の粘着剤、例えばゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤及びアクリル系粘着剤等を用いることができるが、粘着剤としての性能及び耐候性等の観点から、アクリル系粘着剤が好ましい。また、前記粘着剤は、溶媒型、エマルション型のいずれであってもよい。なお、溶媒型粘着剤には、必要に応じて架橋剤を含有させてもよい。
【0022】
前記アクリル系粘着剤を構成する材料としては、例えば、直鎖、分岐鎖のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位を有する(共)重合体、環状構造を有する(メタ)アクリレート由来の構成単位を有する(共)重合体等が挙げられる。
前記アクリル系粘着剤は、粘着成分として、重量平均分子量が10万〜150万である(メタ)アクリル酸エステル系(共)重合体を含むと共に、架橋剤を含むものが好ましく、かつ空隙率の観点から、架橋後の粘着剤の100℃における剪断貯蔵弾性率が、好ましくは9.0×10
3Pa以上、より好ましくは1.0×10
4Pa以上、更に好ましくは2.0×10
4Pa以上である。剪断貯蔵弾性率が9.0×10
3Pa以上であると、空隙を維持することができるため、耐ブリスター性が優れたものとなる。
剪断貯蔵弾性率は、粘弾性測定装置(Rheometrics社製,装置名:DYNAMIC ANALYZER RDA II)を用いて、周波数1Hzで測定することにより求められる。
また、連続空隙含有層と粘着剤層の界面の密着性の観点から、連続空隙含有層を構成する粘着剤としては後述の粘着剤層で用いるものと同じものを用いることが好ましい。
【0023】
前記架橋剤としては、例えばポリイソシアナート化合物、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ジアルデヒド類、メチロールポリマー、アジリジン系化合物、金属アルコキシド、金属塩等が挙げられるが、ポリイソシアナート化合物が好ましく用いられる。この架橋剤は、上述の(メタ)アクリル酸エステル系(共)重合体の固形分100質量部に対して、好ましくは0〜30質量部、より好ましくは0.01〜15質量部、更に好ましくは0.5〜10質量部、より更に好ましくは2〜7質量部配合することができる。
ここで、ポリイソシアナート化合物の例としては、トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート等の芳香族ポリイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート等の脂肪族ポリイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアナート等の脂環式ポリイソシアナート等、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体等を挙げることができる。これらの架橋剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
本発明で用いるアクリル系粘着剤には、本発明の効果を損なわない範囲において、汎用添加剤を含有してもよい。
汎用添加剤としては、例えば、粘着付与剤、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、充填剤、防錆剤、顔料、染料、遅延剤、反応促進剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
これらの汎用添加剤を含有する場合、それぞれの汎用添加剤の含有量は、粘着剤の固形分100質量部に対して、好ましくは0.0001〜60質量部、より好ましくは0.001〜50質量部である。
【0025】
当該連続空隙含有層の厚さは、好ましくは5〜100μm、より好ましくは7〜50μm、更に好ましくは10〜30μm、より更に好ましくは15〜25μmである。5μm以上であると、シリカ粒子を埋めるために充分な厚みを確保することが出来、凹凸の少ない連続空隙含有層を形成することができる。また耐ブリスター性を確保できる。100μm以下であると、シリカ粒子の使用量を抑制できるため、経済的にも好ましい。
連続空隙含有層は、前記シリカ粒子と前記必要に応じて用いられる粘着剤とを含有する連続空隙含有層用コーティング液を塗布することにより形成される。
【0026】
[粘着剤層(X)、(Y)]
図1は、本発明の粘着シートにおける構成の一例を示す断面模式図であり、
図1に示すように、本発明の粘着シート10は、表面に金属層2を有する支持基材1の該金属層2面上に、粘着剤層(X)3、前述した連続空隙含有層4、粘着剤層(Y)5及び剥離シート6が順に積層された構造を有している。
【0027】
本発明の粘着シートにおいて、粘着剤層(X)及び粘着剤層(Y)を構成する粘着剤としては、粘着剤層自身に耐ブリスター性機能を必要としないことから特に制限はなく、様々な種類の粘着剤、例えばゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤及びアクリル系粘着剤等を用いることができるが、粘着剤としての性能及び耐候性等の観点から、アクリル系粘着剤が好ましい。また、前記粘着剤は、溶媒型、エマルション型のいずれであってもよい。なお、必要に応じて架橋剤を含有させてもよい。
本発明の粘着シートにおける当該粘着剤層(X)及び粘着剤層(Y)の厚みは、好ましくは5〜50μm、より好ましくは7〜35μm、更に好ましくは10〜30μmである。
前記粘着剤層(X)と連続空隙含有層の厚みの比[粘着剤層(X)/連続空隙含有層]は、優れた外観と、耐ブリスター性を両立させる観点から、好ましくは0.05〜10、より好ましくは0.1〜5、更に好ましくは0.2〜2、より更に好ましくは0.3〜0.8である。
また、前記粘着剤層(Y)と連続空隙含有層の厚みの比[粘着剤層(Y)/連続空隙含有層]は、優れた外観と、耐ブリスター性を両立させる観点から、好ましくは0.05〜10、より好ましくは0.1〜5、更に好ましくは0.2〜2、より更に好ましくは0.3〜0.8である。
この2つの粘着剤層(X)及び粘着剤層(Y)は同一組成のものであってもよいし、異なる組成のものであってもよい。粘着剤層の組成は特に限定されないが、前述の連続空隙含有層で用いたものと同じ粘着剤を用いてもよい。
【0028】
次に、本発明の粘着シートの製造方法について説明する。
[粘着シートの製造方法I]
本発明の粘着シートの製造方法は、支持基材、粘着剤層(X)、連続空隙含有層、粘着剤層(Y)が、この順に積層された粘着シートの製造方法であって、粘着剤層(X)、連続空隙含有層、粘着剤層(Y)の少なくとも2層以上が、多層コーターで同時塗布されることを特徴とする。
同時塗布される層は、製造性の観点から、粘着剤層(X)、連続空隙含有層、粘着剤層(Y)の少なくとも2層以上であり、粘着剤層(X)、連続空隙含有層、粘着剤層(Y)の3層を同時塗布することが好ましい。
前記同時塗布は、支持基材上に直接塗布してもよく、後述する粘着剤層を保護するための剥離シートの剥離処理面に塗布してもよい。
当該製造方法Iにおいて、多層コーターで同時塗布する際に用いるコーターとしては、例えばカーテンコーター、ダイコーター等が挙げられるが、これらの中で操作性の面から、ダイコーターが好適である。
【0029】
[粘着シートの製造方法II]
本発明の粘着シートの製造方法IIは、支持基材、粘着剤層(X)、連続空隙含有層、粘着剤層(Y)が、この順に積層された粘着シートの製造方法であって、粘着剤層(X)、連続空隙含有層、粘着剤層(Y)の各々が、貼合により積層されることを特徴とする。
当該製造方法IIにおいて、貼合により積層する方法としては、例えば剥離シートの剥離処理面に、所定の粘着剤を乾燥後の厚みが、好ましくは5〜50μm、より好ましくは7〜35μm、より更に好ましくは10〜30μmになるように、従来公知の方法で塗布、乾燥処理して剥離シート付き粘着剤シートを作製し、次いでこのものを連続空隙含有層とラミネートロールを用いて貼り合わせる方法を用いることができる。
当該製造方法IIにおいて、各々の層を形成、塗布する際に用いるコーターとしては、例えばエアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ナイフコーター、スクリーンコーター、マイヤーバーコーター、キスコーター等が挙げられるが、これらの中で操作性の面から、ロールナイフコーター、ダイコーターが好適である。各々の層を形成、塗布したのち、これらの層を乾燥する工程を行なう。乾燥温度としては、35〜200℃が好ましい。
【0030】
また、以下に示す製造方法、すなわち支持基材、粘着剤層(X)、連続空隙含有層、粘着剤層(Y)が、この順に積層された粘着シートの製造方法であって、粘着剤層(X)、連続空隙含有層、粘着剤層(Y)の少なくとも2層が、多層同時塗布ではないwet−on−wet又はwet−on−dryプロセスで積層する方法も用いることができる。
なお、wet−on−wetプロセスとは、例えば粘着剤層(X)形成用コーティング液を塗布し、乾燥処理することなしに、さらにその上に連続空隙含有層形成用コーティング液を塗布する方法である。
一方、wet−on−dryプロセスとは、例えば粘着剤層(X)形成用コーティング液を塗布し、その上に連続空隙含有層形成用コーティング液を塗布後、乾燥処理したのち、粘着剤層(Y)形成用コーティング液を塗布する方法である。
また、粘着剤層(X)、連続空隙含有層、粘着剤層(Y)の順で積層された基材レスの粘着シートを作製し、支持基材を後から積層する方法も用いることが出来る。この場合、基材レスの粘着シートは、粘着剤層の保護のために後述する剥離シートを設けていてもよい。
【0031】
(剥離シート)
前述した粘着シートの作製方法において用いられる剥離シートとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリレート等の各種樹脂よりなるフィルムや、ポリエチレンラミネート紙、ポリプロピレンラミネート紙、クレーコート紙、樹脂コート紙、グラシン紙、上質紙等の各種紙材を基材とし、この基材の粘着剤層との接合面に、必要により剥離処理が施されたものを用いることができる。
剥離処理としては、シリコーン系樹脂、長鎖アルキル系樹脂、フッ素系樹脂等の剥離剤よりなる剥離剤層の形成が挙げられる。剥離シートの厚さに、特に制限はないが、通常20〜200μm、好ましくは25〜180μm、より好ましくは35〜170μmである。
このようにして得られた本発明の粘着シートは、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ABS樹脂等のプラスチック成形品に貼付され、ブリスターの発生を効果的に抑制することができる。
【実施例】
【0032】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各例で得られた粘着シートの耐ブリスター性は、以下に示す方法に従って求めた。
【0033】
<耐ブリスター性評価>
50mm×50mmの粘着シートを、剥離シートを剥がして、厚さ2mmの70mm×150mmのポリメチルメタクリレート板[三菱レイヨン社製、「アクリライトL001」]、ポリカーボネート板[三菱ガス化学社製、「ユーピロンシート NF−2000VU」]、及びポリスチレン板[共栄樹脂社製、「ディアライト 201B W1001」]に、スキージーを用いて圧着し、23℃で12時間放置した後、80℃の熱風乾燥機中に1.5時間放置し、その後90℃の熱風乾燥機中に1.5時間放置して、加熱促進後のブリスターの発生状態を観察し、下記の判定基準で評価した。
A:目視でブリスターが全く確認されなかった。
B:目視で部分的にブリスターが確認された。
C:目視で全面にブリスターが確認された。
【0034】
<シリカ粒子の体積平均二次粒子径の測定>
さらに、連続空隙含有層を形成する材料となるシリカ粒子の体積平均二次粒子径は、マルチサイザー・スリー機(ベックマン・コールター社製)を用いて、コールターカウンター法による粒度分布の測定を行うことにより、求めた。
【0035】
<厚み増分率及びシリカ粒子の質量濃度の測定>
また、連続空隙含有層における空隙による厚み増分率及びシリカ粒子の質量濃度は、それぞれ明細書本文記載の式(1)及び式(2)によって算出した。
<膜厚の測定>
膜厚は、空隙含有層の厚みを、JIS K 7130に準じて、定圧厚さ測定器(テクロック社製、製品名「PG−02」)で測定した。
【0036】
実施例1
<粘着剤層形成用コーティング液(A)の調製>
アクリル系樹脂溶液(ブチルアクリレート(以下、「BA」ともいう)及びアクリル酸(以下、「AA」ともいう)からなるアクリル系共重合体(BA/AA=90/10(質量%))、Mw:47万、固形分濃度:33.6質量%、溶媒:トルエンと酢酸エチルとの混合溶媒)100質量部に対して、イソシアネート系架橋剤(商品名:「コロネートL」、固形分濃度:75質量%、日本ポリウレタン社製)1質量部(アクリル系共重合体100質量部に対して、固形分2.23質量部)、及び酢酸エチルを添加し、粘着剤層形成用コーティング液(A)(固形分濃度:28質量%)を得た。
【0037】
<連続空隙含有層用コーティング液(B1)の調製>
アクリル系樹脂溶液(BA及びAAからなるアクリル系共重合体(BA/AA=90/10(質量%))、Mw:47万、固形分濃度:33.6質量%、溶媒:トルエンと酢酸エチルとの混合溶媒)100質量部に対して、シリカ粒子(商品名:「ニップシール E−200A」、体積平均二次粒子径:3μm、東ソー・シリカ社製)53.67質量部、及びトルエンを添加し、アクリル系樹脂溶液にシリカ粒子を分散させることにより、シリカ分散粘着剤組成物(固形分濃度:22質量%)を調製した。さらに、この粘着剤組成物100質量部に、イソシアネート系架橋剤(商品名:「コロネートL」、固形分濃度:75質量%、日本ポリウレタン社製)を0.252質量部(アクリル系共重合体100質量部に対して、固形分2.23質量部)添加し、更にトルエンを添加して、固形分濃度22質量%の連続空隙含有層用コーティング液(B1)を得た。
【0038】
<粘着シートの作製>
支持基材として、片面にアルミ蒸着層を設けたポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック社製、製品名「FNSケシN50」、厚み50μm)を、剥離シートとして、剥離紙[リンテック社製、製品名「SP−11BLアイボリー」、厚み166μm]を用いた。この剥離シートの剥離処理面に、粘着剤層形成用コーティング液(A)を乾燥後の厚さが10μmとなるようにロールコーターで塗布し、100℃で2分間乾燥した後、ラミネートロールを用いて、前記支持基材のアルミ蒸着面と貼り合わせて粘着シート(I)を作製した。次いで前記とは別に用意した剥離シートの剥離処理面に、連続空隙含有層用コーティング液(B1)を乾燥後の厚さが20μmとなるようにロールコーターで塗布し、100℃で2分間乾燥した後、ラミネートロールを用いて、前記粘着シート(I)の粘着剤層形成用コーティング液(A)の乾燥膜側の面と貼り合わせて粘着シート(II)を作製した。さらに前記とは別に用意した剥離シートの剥離処理面に、粘着剤形成用コーティング液(A)を乾燥後の厚さが10μmとなるようにロールコーターで塗布し、100℃で2分間乾燥した後、ラミネートロールを用いて、前記粘着シート(II)の連続空隙含有層用コーティング液(B1)の乾燥膜側の面と貼り合わせて実施例1の粘着シートを作製した。
連続空隙含有層中のシリカ粒子の質量濃度は61%であり、空隙による厚み増分率は、175%であった。
【0039】
実施例2〜4
実施例1において、シリカ粒子の量、及びイソシアネート系架橋剤の量を表1に示す量に変更した以外は、実施例1と同様にして、連続空隙含有層用コーティング液(B2)〜(B4)を得た。
次いで、実施例1において、連続空隙含有層用コーティング液(B1)を、上記で得られた連続空隙含有層用コーティング液(B2)〜(B4)に変更した以外は、実施例1と同様にして、粘着シートを作製した。
【0040】
【表1】
【0041】
比較例1
剥離紙「SP−11BLアイボリー」(前出)の剥離処理面に、粘着剤層用コーティング液(A)をロールコーターで塗布し、100℃で1分間乾燥することにより、厚さ40μmの粘着剤層を形成し、ラミネートロールを用いて、支持基材「FNSケシN50」(前出)のアルミ蒸着面と貼り合わせて粘着シートを作製した。
この粘着シートの粘着剤層中のシリカ粒子の質量濃度は0%、空隙による厚み増分率は100%であった。
【0042】
比較例2
アクリル系樹脂溶液(商品名:「オリバインBPS−4891」、トーヨーケム社製、固形分濃度:46質量%)100質量部に対して、シリカ粒子(商品名:「ニップシール E−200A」、体積平均二次粒子径:3μm、東ソー・シリカ社製)27.6質量部、トルエンとMEKの体積比が1:1である混合溶剤を添加し、アクリル系樹脂溶液にシリカ粒子を分散させることにより、シリカ分散粘着剤組成物(固形分濃度:37質量%)を調製した。さらに、このシリカ分散粘着剤組成物100質量部に、イソシアネート系架橋剤(商品名:「コロネートL」、固形分濃度:75質量%、日本ポリウレタン社製)を1.13質量部(アクリル系樹脂溶液100質量部に対して、固形分1.69質量部)添加し、トルエンとMEKの体積比が1:1である混合溶剤を添加して、固形分濃度33質量%のシリカ分散液を得た。
さらに、このシリカ分散液70質量部に、アクリル系樹脂溶液(商品名:「オリバインBPS−4891」、トーヨーケム社製、固形分濃度:46質量%)30質量部(上記シリカ分散粘着剤組成物に用いたアクリル系樹脂溶液100質量部に対して、固形分45質量部)、イソシアネート系架橋剤(商品名:「コロネートL」、固形分濃度:75質量%、日本ポリウレタン社製)を1.47質量部(上記シリカ分散粘着剤組成物に用いたアクリル系樹脂溶液100質量部に対して、固形分2.62質量部)添加し、トルエンとMEKの体積比が1:1である混合溶剤を添加して、固形分濃度37質量%の連続空隙含有層用コーティング液(B5)を得た。
連続空隙含有層用コーティング液(B1)に代えて連続空隙含有層用コーティング液(B5)を用いた以外は、実施例1と同様にして、粘着シートを得た。
連続空隙含有層中のシリカ粒子の質量濃度は22.3%であり、空隙による厚み増分率は114%であった。
【0043】
上記各例で得られた粘着シートについて、耐ブリスター性を評価した。その結果を、連続空隙含有層中のシリカ粒子の質量濃度及び空隙による厚み増分率と共に第2表に示す。
【0044】
【表2】
【0045】
さらに、
図2に実施例1(シリカ粒子の質量濃度61%)で形成した連続空隙含有層の電子顕微鏡画像を示す。(a)は表面画像、(b)は断面画像である。
また、
図3に比較例2(シリカ粒子の質量濃度22.3%)で形成した層の電子顕微鏡画像を示す。(a)は表面画像、(b)は断面画像である。
図2における(a)表面画像の表面とは、剥離シート側ではなく、乾燥自由面のことである。
実施例1では連続空隙が形成されているのに対して、比較例2(シリカ粒子の質量濃度22.3%)では、連続空隙は形成されていない。
なお、観察には、日立製作所製電界放出走査電子顕微鏡「S−4700」を用い、加速電圧は15kVで実施した。