(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、ハイブリッド式建設機械としてハイブリッド式油圧ショベルを例にとって本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
図1は本発明の実施形態に係るハイブリッド式油圧ショベルの側面図、
図2は本発明の実施形態に係るハイブリッド式油圧ショベルに搭載される電動・油圧機器のシステム構成図である。
【0025】
図1において、ハイブリッド式油圧ショベルは、走行体100と、走行体100上に旋回可能に設けた旋回体110と、ショベル機構70と、ショベル機構70を操作するための操作装置4(
図2参照)が設置された運転室3と、を備えている。
【0026】
旋回体110は、旋回フレーム111と、旋回フレーム111上の前部に設けられた運転室3と、旋回フレーム111上の後部の原動機室112内に設けられたエンジン(原動機)1と、エンジン1により駆動されるアシスト発電モータ2と、アシスト発電モータ2に接続されるインバータ装置9(
図2参照)と、蓄電装置8等から構成されている。
【0027】
なお、以下の説明において、インバータ装置9を含めたアシスト発電モータ2の意味で、適宜、電動機2,9と言うことにする。そして、この電動機2,9は、本発明における電動機に相当する。
【0028】
また、旋回体110にはショベル機構(作業機)70が搭載されている。ショベル機構70は、ブーム71と、ブーム71を駆動するためのブームシリンダ72と、ブーム71の先端部近傍に回転自在に軸支されたアーム73と、アーム73を駆動するためのアームシリンダ74と、アーム73の先端に回転可能に軸支されたバケット75と、バケット75を駆動するためのバケットシリンダ76等で構成されている。
【0029】
さらに、旋回体110の原動機室112内には、上述したブームシリンダ72、アームシリンダ74、バケットシリンダ76等の油圧アクチュエータを駆動するための油圧システム90が配置されている。油圧システム90は、油圧を発生する油圧源となる油圧ポンプ5と、パイロット圧油を発生するパイロット油圧ポンプ6(
図2参照)と、各油圧アクチュエータの所望の動作を可能とする操作装置4(
図2参照)とを含み、油圧ポンプ5とパイロット油圧ポンプ6とは、必要に応じてアシスト発電モータ2のアシストを受けながら、エンジン1によって駆動される(
図2参照)。また、運転室3内には、後述する室内空調ユニット41(
図3参照)が配設されている。
【0030】
次に、ハイブリッド式油圧ショベルの電動・油圧機器のシステム構成について概略説明する。
図2に示すように、電動・油圧機器システムは、エンジン1と、エンジン1の燃料噴射量を調整するガバナ7と、エンジン1の実回転数を検出する回転数センサ1aと、エンジン1のトルクを検出するエンジントルクセンサ1bと、エンジン1により駆動される油圧ポンプ5及びパイロット油圧ポンプ6と、油圧ポンプ5から吐出される圧油によって駆動される各油圧アクチュエータ72,74,76と、各油圧アクチュエータ72,74,76への圧油の流量と方向を制御する複数のコントロールバルブを備えるバルブ装置12と、バルブ装置12に供給するパイロット圧油を出力することで各油圧アクチュエータ72,74,76の所望の動作を可能とする操作装置4と、エンジン1の駆動軸上に配置されエンジン1との間でトルクの伝達を行うアシスト発電モータ2と、アシスト発電モータ2に電力を供給する蓄電装置8と、アシスト発電モータ2の回転数を制御して必要に応じて蓄電装置8と電力の授受を行うインバータ装置9と、油圧ポンプ5の容量を調整するポンプ容量調節装置10と、ガバナ7を調整してエンジン回転数を制御するとともに、インバータ装置9を制御してアシスト発電モータ2のトルクを制御するコントローラ11と、を備えている。
【0031】
油圧ポンプ5から吐出された圧油は、バルブ装置12に供給される。また、パイロット油圧ポンプ6から吐出されたパイロット圧油は、操作装置4に供給される。オペレータによる操作レバーの操作により、操作装置4は、所定のパイロット油圧を出力し、このパイロット油圧がパイロット管路Pを介してバルブ装置12の操作部に伝達される。また、操作装置4の操作量等は、コントローラ11に取り込まれている。
【0032】
バルブ装置12の操作部に伝達されたパイロット油圧は、所定のコントロールバルブのスプール位置を切換え操作する。このことにより、バルブ装置12に供給された油圧ポンプ5からの圧油は、流量・方向・圧力を適宜変更した後に所定の油圧アクチュエータ72,74,76に供給され、この油圧アクチュエータ72,74,76を駆動制御する。
【0033】
油圧ポンプ5は、可変容量機構として例えば斜板を有していて、この斜板の傾斜角の調整により、圧油の吐出流量を制御している。以下、油圧ポンプ5を斜板ポンプとして説明するが、同様の効果が得られれば斜軸ポンプ等でも良い。油圧ポンプ5の負荷は、コントローラ11が、油圧ポンプ5から吐出される圧油の圧力、流量を計測する図示しない吐出圧センサ、流量計、及び、油圧ポンプ5の斜板の傾斜角を計測する図示しない傾斜角センサの各出力値を取込み、演算することで得られる。
【0034】
ポンプ容量調節装置10は、コントローラ11から出力される操作信号に基づいて油圧ポンプ5の容量(押しのけ容積)を調節するものであり、レギュレータ13と電磁比例弁14とを有している。レギュレータ13は、油圧ポンプ5に備えられており、レギュレータ13によって油圧ポンプ5の斜板の傾斜角を操作すると、油圧ポンプ5の容量(押しのけ容積)が変更されて油圧ポンプ5の吸収トルク(入力トルク)を制御することができる。電磁比例弁14はコントローラ11からの指令値によって制御され、電磁比例弁14が発生する制御圧によってレギュレータ13の作動量を制御している。
【0035】
バッテリまたはキャパシタ等からなる蓄電装置8には、蓄電装置8の蓄電量を演算するために、図示しない電流センサ、電圧センサ及び温度センサが取り付けられている。コントローラ11は、これらのセンサによって検出された電流、電圧、及び温度等の情報に基づいて蓄電装置8の蓄電量を演算し、蓄電装置8の蓄電量を管理している。
【0036】
なお、エンジン1の駆動軸には、クラッチ25aを介して後述する機器温度調整装置20(
図3参照)の圧縮機25が接続されている。また、エンジン1の排気通路には、排気ガス浄化システムが設けられていて、この排気ガス浄化システムは、選択的接触還元触媒(SCR触媒)80と、還元剤添加装置81と、還元剤としての尿素を蓄える尿素タンク82とを備えている。エンジン1の排気ガスは、選択的接触還元触媒(SCR触媒)80で、排気ガス中の窒素酸化物を浄化され、マフラ(消音器)83を介して大気へ放出される。
【0037】
上述したように、ハイブリッド式油圧ショベルでは、エンジン1への動力補助及びエンジン1からのエネルギ回収を行う電動機としてのインバータ装置9を含むアシスト発電モータ2と、アシスト発電モータ2との電力の授受を行う蓄電装置8と、を備えている。これらの電動機2、9は、それぞれの機器の温度上昇を抑えるための冷却回路を備えていて、この冷却回路の内部を機器冷却媒体(冷却水)が循環している。蓄電装置8は、いわゆる空冷式であり、所定の温度範囲に保つために蓄電装置8内に適切な温度、風量の空気を流すことにしている。本実施形態の特徴は、蓄電装置8に適切な温度の空気を送風する機器温度調整装置を備えたことにある。以下、機器温度調整装置の各種実施例について説明する。
【0038】
「第1実施例」
図3は本発明の実施形態に係るハイブリッド式油圧ショベルに搭載される機器温度調整装置の第1実施例を示す概略構成図である。第1実施例においては、蓄電装置8を電動コンポーネント34と称して、この電動コンポーネント34を温度調整する機器温度調整装置について説明する。
【0039】
図3において、機器温度調整装置20は、運転室3内部の空調を行うために冷媒等の空調用冷却媒体が循環する冷凍サイクル回路21と、ケース151内の温調用熱交換器152と接続されて、ケース151内の電動コンポーネント34を冷却するために冷却水等の機器冷却媒体が循環する電動コンポーネント冷却回路(機器冷却回路)22と、冷凍サイクル回路21と電動コンポーネント冷却回路22との間で熱交換を行う中間熱交換器28と、エンジン1を冷却するために冷却水等の機器冷却媒体が循環するエンジン冷却回路(原動機冷却回路)23と、エンジン冷却回路23と電動コンポーネント冷却回路22とを接続する接続回路170と、電動コンポーネント34を冷却する電動コンポーネント冷却部(冷却ユニット)150と、を備えている。
【0040】
冷凍サイクル回路21は、冷媒等の空調用冷却媒体がその内部を循環する液配管と、空調用冷却媒体を圧縮する圧縮機25と、空調用冷却媒体と外気との熱交換を行う第1室外熱交換器26と、空調用冷却媒体と電動コンポーネント冷却回路22内を流れる機器冷却媒体との熱交換を行う中間熱交換器28と、空調用冷却媒体と運転室外空気または運転室3内空気との熱交換を行う室内冷却熱交換器30とを備えている。
【0041】
圧縮機25は、エンジン1の動力により駆動されるものであって、圧縮機25の駆動/停止は、圧縮機25とエンジン1との駆動軸の間に設けたクラッチ25a(
図2参照)による締結/解放の切換えで行われる。クラッチ25aは、空調装置が冷房運転または暖房運転する場合と電動コンポーネント34を冷却する場合に締結する。このクラッチ25aの切り換えは、図示しない制御装置からの指令信号によって行われる。
【0042】
圧縮機25の吸込み口には吸込み配管32の一端側が接続されている。吸込み配管32の他端側には、中間熱交換器28の流出側に一端側が接続された液配管の他端側と、室内冷却熱交換器30の流出側に一端側が接続された液配管の他端側とが接続されている。また、圧縮機25の吐出口には吐出配管31の一端側が接続され、吐出配管31の他端側は、第1室外熱交換器26の流入側に接続されている。
【0043】
第1室外熱交換器26の流出側には、中間熱交換器28の流入側に一端側が接続された液配管の他端側と、室内冷却熱交換器30の流入側に一端側が接続された液配管の他端側とが接続されている。第1室外熱交換器26の流出側と中間熱交換器28の流入側とを接続する液配管には、冷却用流量制御手段としての第1膨張弁35Aが設けられている。第1室外熱交換器26の流出側と室内冷却熱交換器30の流入側とを接続する液配管には、空調用流量制御手段として作用する第2膨張弁35Bが設けられている。
【0044】
冷凍サイクル回路21において、第1室外熱交換器26は凝縮器として作用し、室内冷却熱交換器30と中間熱交換器28とは蒸発器として作用している。なお、第1室外熱交換器26は、外気送風用の第1室外ファン27を備えている。
【0045】
上記の冷凍サイクル回路21においては、第1膨張弁35Aと第2膨張弁35Bの開度をそれぞれ調整することにより、中間熱交換器28と室内冷却熱交換器30とに流れる空調用冷却媒体の量を分配し、2つの熱交換器28、30での熱交換量を個別に制御することができる。このように、中間熱交換器28における冷却能力を変えることができるため、電動コンポーネント冷却回路22の機器冷却媒体を所定温度に制御することが可能となる。
【0046】
なお、上述した本実施の形態においては、第1室外ファン27と、第二室外ファン39とをそれぞれ別個独立に配置した例を示しているが、これに限るものではない。当該熱交換器の配置を工夫することにより、一部または全てを共通な室外ファンとして配置してもよい。
【0047】
電動コンポーネント冷却回路22は、冷却水等の機器冷却媒体がその内部を循環する液配管と、電動コンポーネント冷却回路22の液配管内に機器冷却媒体を循環させる第1ポンプ29Aと、中間熱交換器28と、機器冷却媒体と電動コンポーネント34に流れる空気との熱交換を行う温調用熱交換器152とが、液配管により順に環状に接続されている。
【0048】
中間熱交換器28と温調用熱交換器152とを接続する液配管には、機器冷却媒体の温度を検出するサーミスタや熱電対等の温度センサが設けられている。温度センサが検出した機器冷却媒体の温度信号は、図示しない制御装置へ出力されている。
【0049】
エンジン冷却回路23は、冷却水等の機器冷却媒体がその内部を循環する液配管と、エンジン1と、機器冷却媒体と車外空気との熱交換を行う第二室外熱交換器38と、エンジン冷却回路23の液配管内に機器冷却媒体を循環させる第2ポンプ29Bとが、液配管により順に環状に接続されている。なお、第二室外熱交換器38は、外気送風用の第二室外ファン39を備えている。
【0050】
また、エンジン1の流出側には、機器冷却媒体と運転室内空気との熱交換を行う室内加熱熱交換器40の流入側に一端側が接続された液配管の他端側が接続されている。さらに、室内加熱熱交換器40の流出側に一端側が接続された液配管の他端側が、第2ポンプ29Bの吸込み側に接続されている。
【0051】
換言すると、エンジン冷却回路23は、エンジン1冷却した後の機器冷却媒体を、並列に配置された第二室外熱交換器38と室内加熱熱交換器40とに同様に流入させ、流出する熱交換した後の機器冷却媒体を第2ポンプ29Bで循環させるように構成している。
【0052】
運転室3の内部(キャビン内)に設置され、空調された空気を吹き出す室内空調ユニット41は、車外または運転室3内部の空気を吸い込み、空調された空気を運転室3内に吹き出す室内ファン33と、室内冷却熱交換器30と、室内加熱熱交換器40とを備えている。詳細は後述するが、室内ファン33で吸い込んだ空気は、室内冷却熱交換器30や室内加熱熱交換器40に流れる空調用冷却媒体や機器冷却媒体と熱交換することで、加温または冷却される。この加温または冷却された空気が運転室3の内部に吹き出されて、運転室3の冷暖房がなされる。
【0053】
図4は、電動コンポーネント冷却部150の内部構成を示す斜視図である。
図4に示すように、電動コンポーネント冷却部(冷却ユニット)150は、電動コンポーネント34と、温調用熱交換器152と、送風手段としての空気循環ファン153と、これらの電動コンポーネント34、温調用熱交換器152、空気循環ファン(送風装置)153を収納する密閉構造のケース151とからなる。
【0054】
また、ケース151は、その内部を上下に仕切るように平板状の仕切壁160が設けられており、仕切壁160とケース151の壁151a,b,c,dとの間に、
図3または
図4の矢印で示すような温調用熱交換器152、電動コンポーネント34、空気循環ファン153の順に仕切壁160の周りを空気が上下に循環するように流路180が形成されている。電動コンポーネント34は仕切壁160の上側に設置され、温調用熱交換器152及び空気循環ファン153は、仕切壁160の下側に形成された、ケース151が形成する流路180の戻り流路154内に設置されている。なお、以下の説明において、壁151a,151cのことを側壁、壁151bのことを天井、壁151dのことを床と言うことにする。
【0055】
図3及び
図4に示すように、仕切壁160上において、電動コンポーネント34である蓄電装置8を上下方向に3個並列に設置している。冷却効率を考慮すると電動コンポーネント34を直列に配置するより、並列に配置した方が良い。また、複数の蓄電装置8に対して、温調用熱交換器152、空気循環ファン153をそれぞれ1個ずつ備えることが、低コスト、省スペースの観点から望ましい。
【0056】
ところで、ハイブリッド式建設機械に備える蓄電装置8は、破損防止のため塵埃や水といった異物混入を防ぐ必要がある。建設機械は一般に塵埃が多い場所で使用されるため、本実施例の電動コンポーネント冷却部150には温調した空気を循環し、外気をケース151内に入れないようにしている。即ち、ケース151は外気を遮断する密閉構造から成る。電動コンポーネント34の冷却が必要な場合には、ケース151内を循環する空気の温度上昇を抑えるため、この循環空気を冷却する温調用熱交換器152を備えている。
【0057】
また、ケース151内を循環する空気を冷却する際には、温調用熱交換器152で水滴が発生する。この水滴が電動コンポーネント34内に入ると上述したように破損するおそれがある。電動コンポーネント34の破損防止のため、温調用熱交換器152は電動コンポーネント34と同じ高さに設けず、電動コンポーネント34より低い位置に形成された戻り流路154内に設置するようにしている。
【0058】
温調用熱交換器152は、空気循環ファン153の下流側に設置することで空気循環ファン153に水滴が飛ぶことがない。また、万一、温調用熱交換器152で発生した水滴が飛んだ場合でもケース151の側壁151aに当たることで、水滴は側壁151aを伝って落下する。さらに、本実施例は、電動コンポーネント34の下方に戻り流路154が形成される構成となっている。この構成により、第1実施例に係る電動コンポーネント冷却部150は、電動コンポーネント34への水滴の浸入をより確実に防ぐことができる。
【0059】
また、ケース151には、温調用熱交換器152で発生した水滴と、側壁151aに当たった水滴を排出するドレイン155を備えている。このドレイン155は、ケース151の側壁151aと床151dの下り傾斜した傾斜部151d−1との接続部に設けられている。そのため、側壁151aを伝わって落下した水滴と床151dの傾斜部151d−1を伝わって下降した水滴は、確実にドレイン155を介して排出される。このドレイン155の位置を考慮すると、温調用熱交換器152は、ケース151の下方に設置する方が好ましい。なお、電動コンポーネント34への水滴の浸入をより確実に防ぐため、温調用熱交換器152と電動コンポーネント34との間にフィルタ等の水分を吸収する部材を設置してもよい。
【0060】
ここで、バッテリやキャパシタ等の蓄電装置8は、外気温度の低い冬季の始動時などでは、充放電効率を高めるため、予め暖めておく方がよい場合がある。本実施例においては、電動コンポーネント34の冷却のほか、エンジン1の排熱を用いた暖機運転を実施可能にしている。具体的には、
図3に示すように、第1及び第2連絡配管63A、63Bを含む接続回路170を介して、電動コンポーネント冷却回路22とエンジン冷却回路23とを接続し、機器冷却媒体が両方の回路を循環可能に形成されている。
【0061】
図3において、第1連絡配管63Aは、その一端側を電動コンポーネント冷却回路22の電動コンポーネント34の流入側の液配管に接続し、その他端側をエンジン冷却回路23の第2室外熱交換器38の流入側の液配管に接続している。また、第2連絡配管63Bは、その一端側を電動コンポーネント冷却回路22の電動コンポーネント34の流出側の液配管に接続し、その他端側をエンジン冷却回路23の第2室外熱交換器38の流出側の液配管に接続している。
【0062】
接続回路170を構成する第1連絡配管63Aには、回路の開閉を行う制御弁としての第1二方弁64Aが設けられ、同じく接続回路170を構成する第2連絡配管63Bには、回路の開閉を行う制御弁としての第2二方弁64Bが設けられている。なお、エンジン冷却回路23の第2室外熱交換器38の流入側と第1連絡配管63Aの他端側との間には、回路の開閉を行う制御弁としての第3二方弁64Cが設けられている。
【0063】
次に、第1実施例における機器温度調整装置20の運転動作について
図3を用いて説明する。エンジン1の温度調整は、エンジン冷却回路23の第2ポンプ29Bを駆動させ、機器冷却媒体を第二室外熱交換器38と室内加熱熱交換器40と温調用熱交換器152を循環させることにより行う。機器冷却媒体は、第二室外熱交換器38と室内加熱熱交換器40と温調用熱交換器152とを通過する空気により冷却される。したがって、第二室外ファン39や室内ファン33や空気循環ファン153で吸い込まれる空気の風量を調整することで、冷却能力を調整することができる。
【0064】
一方、電動コンポーネント34の温度調整は、電動コンポーネント冷却回路22を循環する機器冷却媒体を中間熱交換器28で冷却する場合とエンジン1で暖められた機器冷却媒体により暖機する場合がある。機器温度調整装置20の動作は、運転室内への空調装置の運転状況や電動コンポーネント34が吸い込む空気温度に応じて変化する。そこで、空調装置非運転、空調装置冷房運転、空調装置暖房運転、及び暖機運転の各運転モードにおける、運転室内空調装置と電動コンポーネント34の温度調整について主に
図3及び
図5を用いて説明する。
図5は、運転モード毎の各種機器の動作状態を示す図である。
【0065】
運転モード「空調装置非運転」:
空調装置非運転は、運転室内への空調を実行しない状態で電動コンポーネント34を冷却する運転モードである。
【0066】
電動コンポーネント34の温度調整は、電動コンポーネント冷却回路22の第1ポンプ29Aを駆動させ、機器冷却媒体を中間熱交換器28と温調用熱交換器152とに循環させることにより行う。この機器冷却媒体は、中間熱交換器28で冷却される。
【0067】
中間熱交換器28での機器冷却媒体の冷却は、冷凍サイクル回路21の圧縮機25を駆動した状態で第1膨張弁35Aを適度に開く。第2膨張弁35Bは全閉の状態とする。第1膨張弁35Aの開度が大きいほど、中間熱交換器28に流れる空調用冷却媒体が増加するので中間熱交換器28での冷却能力は高くなる。
【0068】
冷凍サイクル回路21において、圧縮機25で圧縮された空調用冷却媒体は、第1室外熱交換器26で放熱することによって液化した後、中間熱交換器28を流れる。中間熱交換器28に流れる空調用冷却媒体は、第1膨張弁35Aで減圧されて低温・低圧となり、中間熱交換器28において電動コンポーネント冷却回路22の機器冷却媒体から吸熱することによって蒸発し、圧縮機25へ戻る。このように、冷凍サイクル回路21を用いることにより、中間熱交換器28で機器冷却媒体と空調用冷却媒体との熱交換が行われ、電動コンポーネント冷却回路22の機器冷却媒体が冷却される。
【0069】
中間熱交換器28で冷却された機器冷却媒体は、温調用熱交換器152に流れる。温調用熱交換器152で熱交換して冷却された空気は電動コンポーネント冷却部150のケース151内を循環して、電動コンポーネント34を冷却する。
【0070】
なお、ケース151内を循環する空気の温度を制御するためには、第1ポンプ29Aの流量と第1膨張弁35Aの開度と第1室外ファン27の風量とのいずれかを調整すれば良い。具体的には、ケース151内を循環する空気が目標温度より高い場合には、第1ポンプ29Aの流量の増加、第1膨張弁35Aの開度の増加、及び第1室外ファン27の風量の増加のいずれかを実行すればよい。また、ケース151内を循環する空気が目標温度より低い場合には、第1ポンプ29Aの流量の減少、第1膨張弁35Aの開度の減少、第1室外ファン27の風量の減少のいずれかを実行すればよい。
【0071】
運転モード「空調装置冷房運転」:
空調装置冷房運転は、運転室3の内部を冷房した状態で電動コンポーネント34を冷却する運転モードである。
【0072】
電動コンポーネント34の温度調整は、電動コンポーネント冷却回路22の第1ポンプ29Aを駆動させ、機器冷却媒体を中間熱交換器28と温調用熱交換器152とを循環させることにより行う。この機器冷却媒体は、中間熱交換器28で冷却される。
【0073】
冷凍サイクル回路21において、圧縮機25で圧縮された空調用冷却媒体は、第1室外熱交換器26で放熱することによって液化した後、中間熱交換器28及び室内冷却熱交換器30を流れる。中間熱交換器28に流れる空調用冷却媒体は、第1膨張弁35Aで減圧されて低温・低圧となり、中間熱交換器28において電動コンポーネント冷却回路22の機器冷却媒体から吸熱することによって蒸発し、圧縮機25へ戻る。このように、中間熱交換器28で機器冷却媒体と空調用冷却媒体との熱交換が行われ、電動コンポーネント冷却回路22の機器冷却媒体が冷却される。
【0074】
中間熱交換器28で冷却された機器冷却媒体は、温調用熱交換器152に流れる。温調用熱交換器152で熱交換して冷却された空気は電動コンポーネント冷却部150のケース151内を循環して、電動コンポーネント34を冷却する。
【0075】
一方、室内冷却熱交換器30に流れる空調用冷却媒体は、第2膨張弁35Bで減圧されて低温・低圧となり、室内冷却熱交換器30において室内ファン33で吸込んだ空気から吸熱することによって蒸発し、圧縮機25へ戻る。このように、室内冷却熱交換器30で熱交換して冷却された空気が、室内空調ユニット41の室内加熱熱交換器40を介して適度な空気温度に制御されて運転室3の内部へ吹き出される。
【0076】
この運転モードにおいては、中間熱交換器28及び室内冷却熱交換器30の両方を蒸発器として利用できるので、運転室3の内部の冷房と電動コンポーネント34の冷却とを同時に実現することができる。さらに、中間熱交換器28と室内冷却熱交換器30とを圧縮機25の吸込配管32に対して並列に接続し、それぞれの流入側に第1膨張弁35A、第2膨張弁35Bを設けているので、中間熱交換器28及び室内冷却熱交換器30へ流れる空調用冷却媒体の流量を、それぞれ任意に変えることができる。この結果、機器冷却媒体の温度と空調用冷却媒体の温度とを、それぞれ任意の所望の温度に制御することができる。
【0077】
したがって、運転室3の冷房を行うために空調用冷却媒体の温度を十分下げた場合であっても、中間熱交換器28へ流れる空調用冷却媒体の流量を抑制することで、温調用熱交換器152を流れる機器冷却媒体の温度を下げすぎることなく一定の温度に保つことができる。
【0078】
なお、ケース151内を循環する空気の温度や室内空調ユニット41から吹き出す空気温度を制御するためには、第1ポンプ29Aの流量と第1膨張弁35A及び第2膨張弁35Bの開度と第1室外ファン27の風量とのいずれかを調整すれば良い。
【0079】
具体的には、ケース151内を循環する空気が目標温度より高い場合には、第1ポンプ29Aの流量の増加、第1膨張弁35Aの開度を増加、あるいは、第1室外ファン27の回転数の増加の少なくとも何れかを実行すれば良い。運転室3内に吹き出す空気温度が目標温度より高い場合には、第2膨張弁35Bの開度の増加、あるいは第1室外ファン27の回転数の増加の少なくとも何れかを実行すれば良い。
【0080】
また、ケース151内を循環する空気が目標温度より低い場合には、第1ポンプ29Aの流量の減少、第1膨張弁35Aの開度の減少、あるいは、第1室外ファン27の回転数の減少の少なくとも何れかを実行する。運転室内3に吹き出す空気温度が目標温度より低い場合には、第2膨張弁35Bの開度の減少、あるいは第1室外ファン27の回転数の減少の少なくとも何れかを実行すれば良い。
【0081】
運転モード「空調装置暖房運転」:
空調装置暖房運転は、運転室3の内部を暖房した状態で電動コンポーネント34を冷却する運転モードである。
【0082】
冷凍サイクル回路21において、圧縮機25で圧縮された空調用冷却媒体は、第1室外熱交換器26で放熱することによって液化した後、中間熱交換器28及び室内冷却熱交換器30を流れる。中間熱交換器28に流れる空調用冷却媒体は、第1膨張弁35Aで減圧されて低温・低圧となり、中間熱交換器28において電動コンポーネント冷却回路22の機器冷却媒体から吸熱することによって蒸発し、圧縮機25へ戻る。このように、中間熱交換器28で機器冷却媒体と空調用冷却媒体との熱交換が行われ、電動コンポーネント冷却回路22の機器冷却媒体が冷却される。
【0083】
中間熱交換器28で冷却された機器冷却媒体は、温調用熱交換器152に流れる。温調用熱交換器152で熱交換して冷却された空気は電動コンポーネント冷却部150のケース151内を循環して、電動コンポーネント34を冷却する。
【0084】
一方、室内冷却熱交換器30に流れる空調用冷却媒体は、第2膨張弁35Bで減圧されて低温・低圧となり、室内冷却熱交換器30において室内ファン33で吸込んだ空気から吸熱することによって蒸発し、圧縮機25へ戻る。このように、室内冷却熱交換器30で熱交換して冷却・除湿された空気は、エンジン冷却回路23のエンジン1の排熱によって暖められた機器冷却媒体が流れる室内加熱熱交換器40で加熱された後に、運転室3の内部へ吹き出される。また、電動コンポーネント冷却回路22における電動コンポーネント34の温度調整は、空調装置冷房運転と同様であるので、説明を省略する。
【0085】
なお、電動コンポーネント34の暖機運転が必要でない上記の空調装置非運転、空調装置冷房運転、空調装置暖房運転においては、機器温度調整装置20の第1及び第2二方弁64A、64Bを閉止し、第3二方弁64Cを開とする。この場合、第1及び第2連絡配管63A、63Bには機器冷却媒体が循環せず、電動コンポーネント冷却回路22とエンジン冷却回路23とが独立して電動コンポーネント34とエンジン1をそれぞれ冷却することができる。
【0086】
運転モード「暖機運転」:
次に、暖機運転について説明する。電動コンポーネント34を暖める運転モードである。この暖機運転は、特に寒冷地等で用いられる運転モードである。空調装置の駆動による冷凍サイクル回路21の動作は上記と同様であるので、説明を省略する。
【0087】
暖機運転する場合には、機器温度調整装置20の第1及び第2二方弁64A、64Bを開として、第3二方弁64Cを閉止する。この場合、第1及び第2連絡配管63A、63Bに機器冷却媒体が循環し、エンジン1で暖められた機器冷却媒体が温調用熱交換器152を循環する。温調用熱交換器152で熱交換して暖められた空気は電動コンポーネント冷却部150のケース151内を循環して、電動コンポーネント34が暖められる。このとき、第1ポンプ29Aは停止させ、中間熱交換器28での熱交換は行わない。
【0088】
以上説明したように、第1実施例に係る機器温度調整装置20を備えたハイブリッド式油圧ショベルによれば、蓄電装置8に送風する空気を温調用熱交換器152で冷却する際に発生した水滴を蓄電装置8に入れることがなく、蓄電装置8を効率良く温度調整することができる。この結果、ハイブリッド式建設機械に搭載した蓄電装置の熱的保護が図れ、ハイブリッド式建設機械の信頼性が向上すると共に、作業性が向上する。また、暖機運転モードにおいては、エンジン排熱を利用できるため、熱エネルギの有効利用を図ることができる。
【0089】
「第2実施例」
図6は本発明の実施形態に係るハイブリッド式油圧ショベルに搭載される機器温度調整装置の第2実施例を示す概略構成図、
図7は
図6に示す電動コンポーネント冷却部の内部構成を示す斜視図である。
図6及び
図7において、
図1乃至
図5に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0090】
図6及び
図7に示す第2実施例に係る機器温度調整装置は、大略、第1実施例と同様の機器で構成されるが、電動コンポーネント冷却部の構成が異なる。
【0091】
第2実施例における電動コンポーネント冷却部250は、仕切壁160の下側に電動コンポーネント34、温調用熱交換器152、及び空気循環ファン153を配置し、これらの位置関係を、空気の流れ方向に沿って上流側から電動コンポーネント34、空気循環ファン153、温調用熱交換器152の順とした点と、流路180を流れる空気の方向が逆向きである点とが、第1実施例と相違する。第2実施例では、電動コンポーネント34、温調用熱交換器152、及び空気循環ファン153を仕切壁160の下側に配置したことにより、電動コンポーネント冷却部250の低重心化と省スペース化が図れる。
【0092】
図6及び
図7に示す電動コンポーネント冷却部250は、空気循環ファン153と温調用熱交換器152を電動コンポーネント34の下流側に直線上に配置し、戻り流路154を電動コンポーネント34、温調用熱交換器152、空気循環ファン153の上方に形成している。また、ケース151には温調用熱交換器152で発生した水滴と、側壁151aに当たった水滴を排出するドレイン155を備えている。よって、側壁151aを伝わって落下した水滴と床151dの傾斜部151d−1を伝わって下降した水滴は、確実にドレイン155を介して排出される。
【0093】
上述した第2実施例によれば、上述した第1実施例と同様な効果を得ることができる。また、第2実施例では、電動コンポーネント冷却部250内の重量物である電動コンポーネント34、温調用熱交換器152、空気循環ファン153を下方に設置することで重心を低くすることができるので、ハイブリッド式油圧ショベルの姿勢安定化を図れる。さらに戻り流路154に温調用熱交換器152と空気循環ファン153を設けないため、戻り流路154の高さ寸法を小さくすることができ、電動コンポーネント冷却部250の高さ寸法を小さくできる。
【0094】
なお、ハイブリッド式油圧ショベルのレイアウト上の制約により、第1実施例または第2実施例を適宜選択すればよい。すなわち、高さ寸法に制約がある場合には、第2実施例を選択し、幅寸法に制約がある場合には、第1実施例を選択すればよい。
【0095】
「第3実施例」
図8は本発明の実施形態に係るハイブリッド式油圧ショベルに搭載される機器温度調整装置の第3実施例を示す概略構成図である。
図8において、
図1乃至
図7に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0096】
図8に示す第3実施例おける電動コンポーネント冷却部350は、温調用熱交換器152及び空気循環ファン153を仕切壁160の上側、即ち、戻り流路154に配置した点が第2実施例と相違する。このように構成された第3実施例によれば、電動コンポーネント34を仕切壁160の下側に配置しているため、低重心となる。また、温調用熱交換器152及び空気循環ファン153を仕切壁160の上側に配置しているため、電動コンポーネント冷却部350の幅を小さくすることができる。
【0097】
「第4実施例」
図9は本発明の実施形態に係るハイブリッド式油圧ショベルに搭載される機器温度調整装置の第4実施例を示す概略構成図である。
図9において、
図1乃至
図8に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0098】
図9に示す第4実施例に係る機器温度調整装置は、大略、第1実施例と同様の機器で構成されるが、電動コンポーネント34の暖機運転をしない点が異なる。即ち、第4実施例は接続回路170を設けていない点が、第1実施例と相違する。この構成によれば、接続回路170を設けていないため、部品点数を低減でき、低コストとなる。第4実施例は、寒冷地等での使用が要求されない場合に、特に好適である。
【0099】
「第5実施例」
図10は本発明の実施形態に係るハイブリッド式油圧ショベルに搭載される機器温度調整装置の第5実施例を示す概略構成図である。
図10において、
図1乃至
図9に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0100】
図10に示す第5実施例に係る機器温度調整装置は、大略、第2実施例と同様の機器で構成されるが、電動コンポーネント34の暖機運転をしない点が異なる。即ち、第5実施例は接続回路170を設けていない点が、第2実施例と相違する。この構成によれば、接続回路170を設けていないため、部品点数を低減でき、低コストとなる。第5実施例は、寒冷地等での使用が要求されない場合に、特に好適である。
【0101】
以上説明したように、各実施例によれば、ケース151内を循環する空気に水滴が含まれることになっても、空気が側壁151aに当たる際に水滴が分離されるため、水滴を含んだままの空気が電動コンポーネント34に直接導入されることがない。そのため、電動コンポーネント34が水滴により破損するといったトラブルを防止することができる。この結果、ハイブリッド式油圧ショベルの信頼性が向上し、作業性も高まる。また、第1〜第3実施例に係る機器温度調整装置を搭載したハイブリッド式油圧ショベルでは、エンジン排気熱を用いて電動コンポーネント冷却部を暖めることができるため、寒冷地等においても使用することができる。
【0102】
なお、上述したハイブリッド式油圧ショベルの実施形態および機器温度調整装置の各実施例は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。また、本発明は、ハイブリッド式建設機械だけでなくハイブリッド式の自動車等にも適用可能である。