(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記導電ラインの繰り返しピッチが100μm以上かつ500μm以下であり、前記導電ラインのライン幅が20μm以下であり、前記メッシュ電極の開口率が70%以上であることを特徴とする請求項3に記載の感圧素子。
前記透明導電層の表面抵抗率が1kΩ/sq以上かつ1MΩ/sq以下であり、前記接触抵抗の上限値が10MΩ以上かつ前記接触抵抗の下限値が10kΩ以下である請求項7に記載の感圧素子。
前記透明導電層が、成膜された金属酸化物、導電性のナノワイヤー材料を絶縁性の透明樹脂材料に分散させた導電樹脂シート、または導電性ポリマー材料をシート状に成形した導電樹脂シートである請求項8に記載の感圧素子。
前記透明導電層または前記透明絶縁層を一方面側で支持する可撓性かつ光透過性のベースシートを備え、前記ベースシートの他方面側に粘着層が設けられていることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の感圧素子。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同様の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0018】
なお、以下の説明では上下方向を規定して説明する場合があるが、これは構成要素の相対的な位置関係を説明するために便宜的に規定するものであり、重力方向の上下とは必ずしも一致しない。また、平面や面状とは、断りなき場合、略平坦であることを意味し、幾何学的に完全な平面であることを要するものではない。
【0019】
<第一実施形態>
図1は、本発明の第一実施形態の感圧素子100にかかる断面模式図である。
図2は、本実施形態の感圧素子100を備える圧力センサ200の平面模式図である。
図2では、透明絶縁層30および感圧カバー10を図示省略してセンサ電極20および引出配線42が露出した状態を示している。はじめに、本実施形態の感圧素子100および圧力センサ200の概要について説明する。
【0020】
感圧素子100は、透明導電層12、透明絶縁層30および電圧印加部40を備えている。透明絶縁層30は、複数の光透過性のセンサ電極20がパターン形成され、透明導電層12に対向して配置されている。電圧印加部40は、センサ電極20に電圧を印加する部位である。本実施形態の感圧素子100は光透過性を有し、押圧力が負荷されることにより透明導電層12とセンサ電極20との接触抵抗が変動する。
【0021】
圧力センサ200は、感圧素子100と、電圧印加部40に電気的に接続されて接触抵抗を定量的に検知する検知部210と、を備えている。圧力センサ200は、原理として接触抵抗変化を利用した抵抗変化型のセンサであり、圧力を連続的に検知できる分布センサである。
【0022】
本実施形態の感圧素子100は、計測可能な物理量が外部からの押圧力の負荷によって変動するデバイスである。本実施形態の感圧素子100は、透明導電層12とセンサ電極20との接触抵抗が変動する。接触抵抗の変動量は押圧力と相関しており、接触抵抗を定量的に検知することで押圧力を定量化することができる。なお、押圧力を定量的に検知する、とは、押圧力を連続的に検知することのほか、押圧力を複数段階に離散的に検知することを含む。なお、押圧力は感圧素子100の主面の単位面積あたりに負荷される荷重であり、圧力の単位(N/m
2など)で表すことができる。ただし、本実施形態においては、特に断りなき場合、単位面積に換算していない荷重(単位はNなど)を押圧力と呼称する場合がある。
【0023】
透明導電層12とセンサ電極20との接触抵抗を計測する方法は特に限定されないが、一例として、センサ電極20に接続されている電圧印加部40に所定の電圧を印加し、この電圧印加部40を流れる電流値を測定して接触抵抗に換算するとよい。本発明において、接触抵抗を定量的に検知するとは、接触抵抗またはその変動量を直接的に計測することのほか、電流値や電圧値など接触抵抗またはその変動量に換算可能な他の物理量を計測することを含む。本実施形態の感圧素子100は、圧力センサ200のほか、表示デバイス300(
図6を参照)などの機器においてタッチ入力するためのユーザインターフェイスとして用いることができる。
【0024】
図2に示すように、本実施形態の圧力センサ200は、感圧素子100および検知部210で構成される。検知部210は、電圧印加部40に電圧を印加する電源部(不図示)と、押圧力が負荷されたセンサ電極20および当該押圧力を算出する処理部(不図示)と、を含む。本実施形態のセンサ電極20は、一対の第一電極21および第二電極22の組み合わせからなり、センサ電極20に押圧力が負荷されることで第一電極21と第二電極22とが導通して引出配線42に電流が流れる。より具体的には、
図2に示す感圧素子100は5対のセンサ電極20a〜20eを備え、これらのセンサ電極20a〜20eには6本の引出配線42a〜42fが接続されている。センサ電極20a〜20eには電圧印加部40を通じて電源部によって電圧が印加されている。たとえば、センサ電極20eに押圧力が負荷されることで第一電極21と第二電極22とが導通し、引出配線42eおよび引出配線42fに電流が流れる。後述するように、センサ電極20eに負荷される押圧力が大きくなるほどセンサ電極20と透明導電層12(
図1を参照)との接触抵抗は小さくなるため、引出配線42eおよび引出配線42fには大きな電流が流れる。処理部は、かかる電流値に基づいてセンサ電極20eに負荷された押圧力を定量的に算出する。これにより、本実施形態の感圧素子100を圧力センサ200として用いることができる。
【0025】
なお、本実施形態において圧力センサ200とは、外部から負荷された押圧力を定量的に検知して出力するデバイスである。圧力センサ200が出力する検知結果の情報は特に限定されず、押圧力もしくは面圧の分布、またはこれらから換算可能な他の物理量とすることができる。たとえば、圧力センサ200で検知された面圧を、当該圧力センサ200に衝突する気流や水流の流速に換算して出力してもよい。
【0026】
次に、感圧素子100について詳細に説明する。
【0027】
図1に示すように、本実施形態の感圧素子100は、光透過性のベースシート50に、開口部32を持った透明絶縁層30と光透過性の感圧カバー10とを積層してなり、全体に光透過性のフレキシブルなシート状に形成されている。透明絶縁層30の開口部32にはセンサ電極20が収容されている。透明絶縁層30とセンサ電極20とは少なくとも一部厚さにおいて互いに重複しており、言い換えるとセンサ電極20は透明絶縁層30と同層に設けられており、センサ電極20は透明絶縁層30にパターン形成されている。感圧カバー10は、ともに光透過性の透明導電層12とカバーフィルム14とを積層してなる。センサ電極20はベースシート50の上面に設けられ、透明導電層12はカバーフィルム14の下面に設けられており、センサ電極20と透明導電層12とは任意で空隙を介在して直接に対面している。
【0028】
なお、本実施形態においてシートとフィルムとは同義であって互いに区別せず、いわゆる板状やプレート状も含む。
【0029】
透明導電層12は、透明絶縁層30と接触することにより互いに導通し、かつ透明絶縁層30との接触圧に応じて透明絶縁層30との接触抵抗が変動する部材である。本実施形態のセンサ電極20は、互いに離間して配置された一対の第一電極21および第二電極22からなり、透明導電層12が第一電極21と第二電極22とに跨って当接することで第一電極21と第二電極22とが導通する。感圧素子100は、複数式のセンサ電極20を備えている(
図2を参照)。
図1では、このうち1式のセンサ電極20のみを図示している。
【0030】
本実施形態の透明導電層12はカバーフィルム14の略全面に一様にベタ形成された導電膜であり、引出配線42は第一電極21と第二電極22にそれぞれ接続して設けられている(
図2を参照)。すなわち、センサ電極20に対向して設けられる透明導電層12は、複数のセンサ電極20を包含する広域領域に亘って形成されている。後述するように透明導電層12の表面抵抗が大きいことで、センサ電極20と透明導電層12との接触抵抗の変動幅(ダイナミックレンジ)を大きくすることができる。一方で、透明導電層12の表面抵抗が大きくても、本実施形態のように透明導電層12を広域領域に亘って形成することで、透明導電層12における電圧降下を抑制することができる。そして、透明導電層12をカバーフィルム14の略全面にベタ形成することで、いずれのセンサ電極20にタッチした場合にも、透明導電層12における電圧降下を均一に抑制することができる。
【0031】
なお、本実施形態に代えて、透明導電層12は、第一電極21および第二電極22のそれぞれ一部または全部を包含する局所領域にパターン形成された島状の導電領域として形成してもよい。また、後述する第二実施形態のように、センサ電極20を一個の電極で形成するとともに、センサ電極20と透明導電層12に引出配線42をそれぞれ接続して設けてもよい。すなわち透明導電層12は、カバーフィルム14の略全体にベタ形成された導電膜でもよく、またはセンサ電極20に対応する形状にパターン形成された対向電極でもよい。
【0032】
透明導電層12は、成膜された金属酸化物、導電性のナノワイヤー材料を絶縁性の透明樹脂材料に分散させた導電樹脂シート、または導電性ポリマー材料をシート状に成形した導電樹脂シートである。具体的には、金属酸化物としては、酸化インジウムスズ(ITO)などの透明酸化物導電体や、透明基材に金属を薄く製膜して最表面を酸化させた酸化被膜つき金属膜を用いることができる。導電性のナノワイヤーとしては、銀ナノワイヤー、銅ナノワイヤーまたはカーボンナノチューブ(CNT:Carbon Nano-Tube)を例示することができる。このうち、高抵抗で耐久性に優れる観点から、カーボンナノチューブを好適に用いることができる。導電性ポリマー材料としては、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアセチレンおよびポリピロールを例示することができる。
【0033】
本実施形態の透明導電層12の表面抵抗率は特に限定されないが、1kΩ/sq以上かつ1MΩ/sq以下が好ましい。このように透明導電層12を高抵抗とすることで接触抵抗の変動幅が大きくなり、これを利用した圧力センサ200として感圧素子100の特性を好適に利用することができる。本実施形態において、透明導電層12とセンサ電極20との接触抵抗の上限値は10MΩ以上であり、かつ接触抵抗の下限値は10kΩ以下である。ここで、透明導電層12などの層状体では、電気はもっぱら層状体の表面を流れるため、厚み寸法を考慮しない単位面積あたりのシート抵抗を単位として層状体の抵抗を定義することができ、具体的にはΩ/□やΩ/sqなどと表記する。
【0034】
透明導電層12を支持するカバーフィルム14には絶縁性の透明フィルムを用いることができる。具体的な材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、環状ポリオレフィン(COP)などのポリエステル;ポリカーボネート(PC);透明ポリイミド(PI);液晶ポリマーを使用することができる。上記の材料のうち1種または複数の樹脂材料を混合して用いることができる。
【0035】
ベースシート50は、可撓性かつ光透過性を有し、透明導電層12または透明絶縁層30を一方面51側で支持する。本実施形態のベースシート50は、
図1の上面にあたる一方面51で透明絶縁層30を支持する基材である。ベースシート50には、透明導電層12として選択可能な上記の材料のいずれかを用いることができる。ベースシート50とカバーフィルム14とは同種材料でも異種材料でもよい。
【0036】
感圧カバー10に押圧力が負荷されると、カバーフィルム14は透明導電層12とともに撓んで透明導電層12がセンサ電極20に押圧される。このため、カバーフィルム14はベースシート50よりも可撓性が高いことが好ましく、カバーフィルム14の厚み寸法はベースシート50の厚み寸法よりも小さいことが好ましい。
【0037】
ベースシート50の上面には透明絶縁層30が積層されている。透明絶縁層30は、センサ電極20を収容する開口部32を有している。透明絶縁層30は、センサ電極20の形成領域およびその周囲を除き、ベースシート50および引出配線42(
図2を参照)の略全面を機械的に保護して耐環境性を向上させる。透明絶縁層30は、透明レジストなどの光硬化性または熱硬化性の光透過性の樹脂材料を、印刷法などにより開口部32が開口したシート形状にパターニングしたのち、これを硬化させて作成することができる。このほか、透明絶縁層30の製造方法としては、感圧カバー10と略同形の光透過性のシート材料を用意し、このシート材料のうち開口部32に対応する領域を打ち抜いて作成することができる。シート材料は熱可塑性樹脂でも熱または光硬化性樹脂でもよい。
【0038】
透明絶縁層30と、センサ電極20における透明導電層12に対向する表面28との間には段差34が形成されている。
図1に示す自然状態で、センサ電極20は透明導電層12と離間している。これにより、感圧素子100を湾曲または屈曲させて感圧カバー10とセンサ電極20とが面直方向に近づいたとしても透明導電層12とセンサ電極20とが不測に当接することがなく、誤動作を妨げる効果を発揮する。
【0039】
センサ電極20のうち、透明導電層12に対向する表面28はメッキ処理されている。これにより、センサ電極20の酸化や劣化を防止し、また透明導電層12が繰り返して押圧されることによる耐摩耗性を向上させる。メッキ処理は、センサ電極20の成膜時または成膜後の後工程で行うことができる。具体的なメッキ処理としては、黒ニッケルメッキなど、センサ電極20を黒色にメッキするとよい。これにより、後述するようにセンサ電極20をメッシュ電極とするにあたり、センサ電極20を構成する導電ライン24、25(
図4を参照)の視認性を低下させることができる。
【0040】
ベースシート50の他方面52側には、任意で粘着層54が設けられていてもよい。これにより、感圧素子100をディスプレイ表示部310(
図6各図を参照)などの対象物に貼り付けて用いることができる。粘着層54は剥離シート(図示せず)で保護されていてもよい。
【0041】
透明絶縁層30の非形成領域である開口部32は、センサ電極20から透明導電層12に向って大径に拡大する拡径部36を備えている。言い換えると、透明絶縁層30のうちセンサ電極20を取り囲む領域には、センサ電極20に向って薄肉に遷移する傾斜部38が形成されている。透明絶縁層30のうち厚み寸法が実質的に均一な均厚部31において感圧カバー10と透明絶縁層30とは接合されている。均厚部31と傾斜部38との境界にあたる上端縁39で囲まれる開口部32の内側で、感圧カバー10は透明絶縁層30と離間している。
【0042】
図3(a)は、感圧素子100を小さな押圧力F1で押圧した状態を示す断面模式図である。
図3(b)は、感圧素子100を大きな押圧力F2で押圧した状態を示す断面模式図である。ベースシート50は対象物(図示せず)に固定支持され、押圧力F1および押圧力F2は感圧カバー10に負荷される。なお、
図3(a)および
図3(b)においてはセンサ電極20の表面28および粘着層54は図示省略している。
【0043】
押圧力F1が負荷されることで感圧カバー10は凹状に撓み変形する。
図3(a)に示すように、押圧力F1が所定の大きさに達すると感圧カバー10の透明導電層12はセンサ電極20に当接する。そして、押圧力F1よりも大きな押圧力F2が負荷されると、
図3(b)に示すように透明導電層12はより大きな接触面積でセンサ電極20に押圧され、かつ透明導電層12とセンサ電極20との接触圧が増大する。押圧力F2が負荷された状態で、センサ電極20の略全面に対して透明導電層12が接触している。
【0044】
本実施形態の感圧素子100は、押圧されていない初期状態で、段差34(
図1を参照)をもって透明導電層12とセンサ電極20とが非接触に離間している。このため、押圧力が負荷されて透明導電層12とセンサ電極20とが接触することで、両者の接触面積を零からセンサ電極20の全面積まで大幅に変化させることができる。これにより、透明導電層12とセンサ電極20との接触抵抗が大きく低下する。透明導電層12とセンサ電極20との接触面積の増大量と接触抵抗の低下量とは正の相関をもつ。さらに、押圧力が増大すると、既に接触している部分の接触状態が改善して接触抵抗がより減少していく。すなわち、本実施形態の感圧素子100においては、接触面積の増大というマクロ要因と、接触状態の改善というミクロ要因とが相俟って相乗的に接触抵抗が低下する。このようにして、押圧力の大小に起因して発生する大きな抵抗変化を利用することで、押圧力を精度よく検知することができる。
【0045】
透明絶縁層30の傾斜部38は、センサ電極20を取り囲む擂り鉢状に形成されている。
図3(b)に示すように、押圧力F2が負荷された状態で透明導電層12は透明絶縁層30の傾斜部38に当接する。これにより、押圧力F2よりも大きい過大な押圧力が感圧カバー10に負荷されても感圧カバー10はこれ以上変形しないため、不測に大きな押圧力が負荷されても感圧カバー10の塑性変形を防止することができる。また、透明絶縁層30の傾斜部38でセンサ電極20の近傍までベースシート50や引出配線42を広く保護しつつも、上端縁39をセンサ電極20から大きく離間させることができる。このため、小さな押圧力F1で感圧カバー10を湾曲させることができる。よって、本実施形態の感圧素子100によれば、個々のセンサ電極20を個別にタッチするタップ操作のみならず、複数のセンサ電極20に亘って連続的に小さな押圧力が負荷されるスクロール操作(スワイプ操作、フリック操作、ピンチイン/ピンチアウト操作を含む)も良好に検知することができる。
【0046】
本実施形態の感圧素子100は、ベースシート50、透明絶縁層30およびセンサ電極20、ならびに感圧カバー10を含む厚み方向全体に亘る光透過率が70%以上である。すなわち、感圧素子100を構成する、透明導電層12と、センサ電極20および透明絶縁層30と、を複合した光透過率は70%以上である。なお、本実施形態における感圧素子100の光透過率とは550nmの波長の可視光線の透過率をいう。このように高い光透過率を有するため、本実施形態の感圧素子100をディスプレイ表示部310(
図6各図を参照)などの対象物の表面に被着しても、当該対象物の視認性が低下しにくい。
【0047】
感圧素子100の光透過率を高くするにあたっては、センサ電極20および引出配線42(
図2を参照)の光透過率を80%以上、好ましくは85%以上にするとよい。このため、本実施形態ではセンサ電極20をベタ電極ではなくメッシュ電極とし、引出配線42も同様にメッシュ状に作成することで大きな開口率および光透過率を実現している。
【0048】
図4は、本実施形態の感圧素子100のセンサ電極20および引出配線42の平面図である。
【0049】
本実施形態のセンサ電極20および引出配線42は金属メッシュ配線により構成されている。センサ電極20は、金属材料からなり互いに交差する複数本の導電ライン24、25で形成されたメッシュ電極である。以下、センサ電極をメッシュ電極と呼称する場合がある。
図4では、導電ライン24、25の外形を囲む仮想的な矩形領域(二点鎖線で図示)をセンサ電極20として示している。引出配線42は、センサ電極20を構成する導電ライン24、25がセンサ電極20の外部に延在して形成されている。すなわち、導電ライン24、25は、センサ電極20と引出配線42とに亘って連続的に延在している。これにより、センサ電極20と引出配線42との間に接触抵抗は発生せず、電気信号の反射や損失が実質的に生じない。
【0050】
導電ライン24の繰り返しピッチPは、100μm以上かつ500μm以下である。導電ライン24のライン幅Wは、20μm以下である。導電ライン25の繰り返しピッチPおよびライン幅Wは、導電ライン24と共通である。これにより、センサ電極(メッシュ電極)20の開口率を70%以上とすることができ、センサ電極20の光透過率を85%以上とすることができる。
【0051】
導電ライン24、25の交差角度は特に限定されないが、本実施形態では互いに直交するように配置されている。これにより、導電ライン24、25が形成されていないメッシュ開口23は略正方形をなす。メッシュ開口23からはセンサ電極20の下地層にあたるベースシート50が覗いている。
【0052】
導電ライン24、25はエッチングまたは印刷法により形成することができる。センサ電極20や引出配線42をベタパターンで形成する場合と比較して、これらを金属メッシュ配線で形成することで配線長が長くなって配線抵抗が比較的大きくなる。しかしながら、透明導電層12とセンサ電極20との接触抵抗が1kΩ/sq以上と大きく、センサ電極20および引出配線42の配線抵抗はこれよりも十分に小さくすることができるため、金属メッシュ配線による電圧降下に起因して押圧力の計測精度が低下する影響は無視することができる。また、導電ライン24、25は低抵抗の金属材料からなり、具体的には銅または銀を使用することができる。
【0053】
交差する導電ライン24、25どうしは同層に形成されている。そして、導電ライン24と導電ライン25との交点26にはフィレット27が形成されている。導電ライン24と導電ライン25とを異層で形成して交点26で接合する場合と比較して、本実施形態のように導電ライン24、25を同層で形成することでセンサ電極20および引出配線42の配線抵抗を低減することができる。また、導電ライン24と導電ライン25とを異層で形成した場合には交点26において重なりが生じてセンサ電極20が局所的に厚くなり、透明導電層12との接触抵抗が不安定に変動するところ、本実施形態のように導電ライン24、25を同層とすることでセンサ電極20を平坦に作成することができる。これにより、感圧素子100に負荷される押圧力と、透明導電層12およびセンサ電極20との間の接触抵抗と、の相関性が高くなり、接触抵抗の計測結果に基づいて押圧力を高い精度で算出することができる。
【0054】
上述したように、
図2は本実施形態の感圧素子100の用途である圧力センサ200を示す。それぞれ一対の第一電極21および第二電極22からなる5式のセンサ電極20(20a〜20e)がベースシート50の一方面51にパターン形成されている。センサ電極20の数量および形状は一例である。
【0055】
第一電極21および第二電極22にそれぞれ接続された複数本の引出配線42(42a〜42f)は電圧印加部40で終端している。電圧印加部40にはコネクタ220が連結され、フレキシブル配線230を介して検知部210に接続されている。
【0056】
隣接するセンサ電極20どうしの間隔(電極間隔)Dは、圧力センサ200の用途により適宜設定することができる。一例として、1mm以上10mm以下とすることができる。
図2では複数式のセンサ電極20が一次元的(同図の上下方向)に配列されている状態を例示しているが、本実施形態はこれに限られない。センサ電極20は二次元的に、格子状または千鳥状に配列して形成してもよく、またはランダム配置されてもよい。
【0057】
図5は、
図1に示した本実施形態の感圧素子100の感圧特性の実験例を示すグラフである。縦軸は透明導電層12とセンサ電極20との接触抵抗[Ω]を表し、横軸は押圧力[g・f/cm
2]を表す。縦軸および横軸は対数表示している。
【0058】
ベースシート50およびカバーフィルム14にはPETを用い、センサ電極20を構成する導電ライン24、25にはライン幅Wが10μmの銅メッシュを用い、透明絶縁層30には透明レジスト材料を用いた。透明導電層12は、カーボンナノチューブを分散させたコーティング液をカバーフィルム14の全面に塗布して作成した。カーボンナノチューブの分散量をコントロールして透明導電層12の表面抵抗を1.5kΩ/sqに調整した。
【0059】
図5に示すように、押圧力が実質的に負荷されていない初期状態において、接触抵抗は約20MΩであり、10MΩを超えていた。そして、押圧力を増大させて8から20g・f/cm
2の閾値荷重(LTH)に至ると、接触抵抗は約20kΩ程度まで急落した。なお、20g・f/cm
2は、指先でタッチした場合の押圧力と同等である。閾値荷重(LTH)以下の押圧力を負荷しているとき、透明導電層12とセンサ電極20とは離間しており非接触状態(NC)であった。そして、閾値荷重(LTH)を超えて押圧力を増大させ、ペン先で押圧した場合の押圧力に相当する80〜100g・f/cm
2の押圧力を負荷すると、接触抵抗は数kΩまで、すなわち10kΩ以下まで漸減した。このとき、透明導電層12とセンサ電極20とは接触状態(CNT)であった。
【0060】
以上の結果より、本実施形態の感圧素子100によれば、透明導電層12とセンサ電極20とが非接触状態(NC)から接触状態(CNT)に至ることで、接触面積の増大というマクロ要因により接触抵抗が約20MΩから約20kΩまで3桁に亘って低下することがわかった。さらに、接触状態(CNT)において押圧力を増大させることで、接触状態の改善というミクロ要因により接触抵抗を数kΩまで更に低下させることができた。これにより、非接触状態(NC)を基準として4桁に亘る広いダイナミックレンジで接触抵抗が応答する特性が得られることが分かった。
【0061】
図6(a)は、本実施形態の感圧素子100を備える表示デバイス300の一部切欠斜視図である。感圧素子100の一部を切り欠いてディスプレイ表示部310を露出させて図示している。
図6(b)は、
図6(a)のB−B線断面模式図である。同図の左方は図示を省略している。
【0062】
本実施形態の表示デバイス300は、文字、図形または記号を表示するディスプレイ表示部310を備えている。
表示デバイス300は、感圧素子100および検知部210を備えている。感圧素子100はディスプレイ表示部310の前面側に取り付けられている。検知部210は、感圧素子100の電圧印加部40(
図2を参照)に電気的に接続されて、透明導電層12とセンサ電極20との接触抵抗を定量的に検知する(
図1を参照)。
本実施形態の表示デバイス300は、定量的に検知された接触抵抗を示す筆圧情報、およびこの接触抵抗が変動したセンサ電極20の二次元位置を示すタッチ位置情報を、検知部210から取得する。
【0063】
本実施形態の表示デバイス300によれば、液晶ディスプレイや有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイなどのディスプレイ表示部310の視認性の低下を抑制しつつ、ディスプレイ表示部310の前面側に取り付けられた本実施形態の感圧素子100を用いて高い計測精度によりタッチ操作を検出することができる。すなわち、特許文献1の表示入力装置のようにディスプレイ表示部の背面側に感圧素子を配置した場合にはタッチ操作の押圧力がディスプレイ表示部で拡散してしまって検知精度が低下する。これに対し、本実施形態では感圧素子100をディスプレイ表示部310の前面側に配置するため、ユーザがタッチ操作した際の押圧力を鋭敏に検知することができる。
【0064】
感圧素子100は、感圧カバー10が最前面に位置し、ベースシート50がディスプレイ表示部310の側を向くようにして表示デバイス300に取り付けられている。表示デバイス300は、感圧素子100およびディスプレイ表示部310のほか、回路基板320および保護カバー330を備えている。保護カバー330は、回路基板320を支持し、ディスプレイ表示部310および感圧素子100を保護している。
【0065】
回路基板320には、検知部210のほか演算制御部322および電源部324が設けられている。電源部324は、検知部210および演算制御部322に電力を供給する。検知部210は、電源部324から給電されて感圧素子100のセンサ電極20(
図2を参照)に電圧を印加し、タッチ操作により接触抵抗が低下したセンサ電極20を検知するとともに、低下した接触抵抗または接触抵抗から換算可能な物理量(あわせて、接触抵抗という)を定量的に取得する。演算制御部322は、検知部210が取得した接触抵抗を受信し、予め設定された所定の換算式に基づいて接触抵抗を押圧力に変換し、筆圧情報として取得する。演算制御部322はディスプレイ表示部310と接続されている。演算制御部322は、この筆圧情報の大小に基づいて、ディスプレイ表示部310で表示する図柄を拡大したり線を太くしたりするなど表示態様を所定に変化させる。
【0066】
このように、本実施形態の感圧素子100を表示デバイス300に搭載することにより、専用のペン型入力装置を使用せずとも、ユーザが指でタッチ操作する際の押圧力を感圧素子100で検知して筆圧情報として定量的に取得することができる。
【0067】
以上説明した本実施形態の感圧素子100は透明でフレキシブルであることから、従来困難とされていた新規な用途を実現することができる。たとえば、任意の物体表面に感圧素子100を貼りつけて、内部の視認性を妨げずに、表面に働く圧力を検知する簡易な計測に用いることができる。また、曲面形状や球面のようなディスプレイまたは照明などの表面や下面に装着してタッチ操作に供することができ、さらに押圧力の強弱によって種々の機能を切り替えて実行させることができる。また、従来のタッチパネルのように二次元平面でのタッチ入力ができることに加え、電子黒板や電子ペーパーに応用して三次元入力が可能なユーザインターフェイスとして使用することができる。
【0068】
<第二実施形態>
図7は、本発明の第二実施形態の感圧素子110にかかる断面模式図である。第一実施形態の感圧素子100と重複する説明は適宜省略する。
【0069】
本実施形態の感圧素子110は、押圧力が負荷されていない初期状態でセンサ電極20と透明導電層12とが当接している点で第一実施形態の感圧素子100と相違している。これにより、カバーフィルム14またはベースシート50に押圧力を負荷することで、透明導電層12とセンサ電極20との接触抵抗は、互いの接触状態の改善というミクロ要因によってもっぱら低下する。
【0070】
また、透明導電層12がセンサ電極20と同形状にパターン形成されている点でも第一実施形態の感圧素子100と相違している。すなわち、本実施形態の透明導電層12はセンサ電極20に対応する位置および形状にパターン形成された対向電極である。
【0071】
透明導電層12およびセンサ電極20には引出配線42が個別に設けられており、透明導電層12とセンサ電極20との間に電圧が印加されている。透明導電層12およびセンサ電極20には、
図4で示したメッシュ電極を共通して採用することができる。これにより、透明導電層12とセンサ電極20を、ともに高い光透過率とすることができる。
【0072】
図5に接触状態(CNT)として示したように、接触状態の改善というミクロ要因による接触抵抗の変動は、押圧力の変化に伴って両対数グラフでほぼ線形に再現性よく変動する。このため、本実施形態の感圧素子110のように初期状態で透明導電層12とセンサ電極20とを接触させておくことで、ダイナミックレンジは小さくなるものの押圧力の計測精度を高めることができる。
【0073】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される限りにおける種々の変形、改良等の態様も含む。
たとえば、
図2に示す圧力センサ200において、引出配線42a〜42fの配線長の相違に起因する計測誤差を低減するため、センサ電極20から電圧印加部40までの配線長が短い引出配線42aに比べて、配線長が長い引出配線42fを構成する導電ライン24、25(
図4を参照)のライン幅Wまたは繰り返しピッチPを小さくしてもよい。
【0074】
また、表示デバイス300に感圧素子100を搭載するにあたり、ディスプレイ表示部310の表面に感圧素子100を被着することに代えて、ディスプレイ表示部310の内部に感圧素子100を作り込んで設置してもよい。
【0075】
本発明の感圧素子100、圧力センサ200および表示デバイス300の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はない。複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
【0076】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)透明導電層と、複数の光透過性のセンサ電極がパターン形成され、前記透明導電層に対向して配置された透明絶縁層と、前記センサ電極に電圧を印加する電圧印加部と、を備え、押圧力が負荷されることにより前記透明導電層と前記センサ電極との接触抵抗が変動する光透過性の感圧素子。
(2)前記センサ電極が、金属材料からなり互いに交差する複数本の導電ラインで形成されたメッシュ電極である上記(1)に記載の感圧素子。
(3)交差する前記導電ラインどうしが同層に形成されている上記(2)に記載の感圧素子。
(4)前記導電ラインの繰り返しピッチが100μm以上かつ500μm以下であり、前記導電ラインのライン幅が20μm以下であり、前記メッシュ電極の開口率が70%以上であることを特徴とする上記(3)に記載の感圧素子。
(5)前記透明導電層と、前記センサ電極および前記透明絶縁層と、を複合した光透過率が70%以上である上記(1)から(4)のいずれか一項に記載の感圧素子。
(6)前記透明絶縁層は、前記センサ電極を収容する開口部を有し、前記透明絶縁層と前記センサ電極における前記透明導電層に対向する表面との間に段差が形成されて前記センサ電極が前記透明導電層と離間している上記(1)から(5)のいずれか一項に記載の感圧素子。
(7)前記開口部が、前記センサ電極から前記透明導電層に向って大径に拡大する拡径部を備える上記(6)に記載の感圧素子。
(8)前記センサ電極の前記表面がメッキ処理されている上記(6)または(7)に記載の感圧素子。
(9)前記透明導電層が、複数の前記センサ電極を包含する広域領域に亘って形成されている上記(1)から(8)のいずれか一項に記載の感圧素子。
(10)前記透明導電層の表面抵抗率が1kΩ/sq以上かつ1MΩ/sq以下であり、前記接触抵抗の上限値が10MΩ以上かつ前記接触抵抗の下限値が10kΩ以下である上記(9)に記載の感圧素子。
(11)前記透明導電層が、成膜された金属酸化物、導電性のナノワイヤー材料を絶縁性の透明樹脂材料に分散させた導電樹脂シート、または導電性ポリマー材料をシート状に成形した導電樹脂シートである上記(10)に記載の感圧素子。
(12)前記透明導電層または前記透明絶縁層を一方面側で支持する可撓性かつ光透過性のベースシートを備え、前記ベースシートの他方面側に粘着層が設けられていることを特徴とする上記(1)から(11)のいずれか一項に記載の感圧素子。
(13)上記(1)から(12)のいずれか一項に記載の感圧素子と、前記電圧印加部に電気的に接続されて前記接触抵抗を定量的に検知する検知手段と、を備える圧力センサ。
(14)文字、図形または記号を表示するディスプレイ表示部を備える表示デバイスであって、前記ディスプレイ表示部の前面側に取り付けられた上記(1)から(12)のいずれか一項に記載の感圧素子と、前記感圧素子の前記電圧印加部に電気的に接続されて前記接触抵抗を定量的に検知する検知手段と、を備え、前記接触抵抗を示す筆圧情報および前記接触抵抗が変動した前記センサ電極の二次元位置を示すタッチ位置情報を前記検知手段から取得する表示デバイス。