(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6291330
(24)【登録日】2018年2月16日
    
      
        (45)【発行日】2018年3月14日
      
    (54)【発明の名称】空気圧変換装置
(51)【国際特許分類】
   G01M   3/20        20060101AFI20180305BHJP        
   B01D  46/24        20060101ALI20180305BHJP        
【FI】
   G01M3/20 N
   B01D46/24 Z
【請求項の数】6
【全頁数】9
      (21)【出願番号】特願2014-81729(P2014-81729)
(22)【出願日】2014年4月11日
    
      (65)【公開番号】特開2015-203585(P2015-203585A)
(43)【公開日】2015年11月16日
    【審査請求日】2017年3月27日
      
        
          (73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
          (74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川  政樹
          (74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川  茂樹
        
      
      
        (72)【発明者】
          【氏名】井上  和久
              
            
        
        (72)【発明者】
          【氏名】稲垣  洋輔
              
            
        
      
    
      【審査官】
        安田  明央
      
    (56)【参考文献】
      
        【文献】
          特開2010−185540(JP,A)      
        
        【文献】
          特開2005−233198(JP,A)      
        
        【文献】
          特開昭58−109115(JP,A)      
        
        【文献】
          英国特許第02109268(GB,B)      
        
        【文献】
          特開2011−215076(JP,A)      
        
        【文献】
          特開昭59−170749(JP,A)      
        
        【文献】
          特表2008−518793(JP,A)      
        
        【文献】
          米国特許出願公開第2006/0067645(US,A1)    
        
        【文献】
          特開2013−195364(JP,A)      
        
        【文献】
          実開昭52−074428(JP,U)      
        
      
    (58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M      3/00−3/40        
B01D    46/24        
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
  入力される空気の空気圧を所定の空気圧に変換して出力する空気圧変換装置において、
  前記入力される空気が流れる流路に設置されたフィルタユニットを備え、
  前記フィルタユニットは、
  前記流路を通過する空気中に含まれる異物を除去する筒状のフィルタスクリーンと、
  前記筒状のフィルタスクリーンの周面に取り付けられ前記流路を通過する空気中に含まれる水を検知してその色が変わる水濡れ検知シート
  とを備えることを特徴とする空気圧変換装置。
【請求項2】
  請求項1に記載された空気圧変換装置において、
  前記フィルタユニットは、
  前記水濡れ検知シートが取り付けられた前記筒状のフィルタスクリーンを覆う筒状のケース
  を備えることを特徴とする空気圧変換装置。
【請求項3】
  請求項1に記載された空気圧変換装置において、
  前記水濡れ検知シートは、そのシート面の一部に切欠を有する
  ことを特徴とする空気圧変換装置。
【請求項4】
  請求項1に記載された空気圧変換装置において、
  前記フィルタユニットが設置されている流路の外部に前記水濡れ検知シートの色が変わる面の状態を視認可能とする覗き窓が設けられている
  ことを特徴とする空気圧変換装置。
【請求項5】
  請求項1に記載された空気圧変換装置において、
  前記フィルタユニットが設置されている流路の外部に前記筒状のフィルタスクリーンの異物を除去する面の状態を視認可能とする覗き窓が設けられている
  ことを特徴とする空気圧変換装置。
【請求項6】
  請求項1に記載された空気圧変換装置において、
  前記フィルタユニットは、
  前記入力される空気の入口に着脱可能に設置され、
  前記空気の入口には、
  前記フィルタユニットの抜け止めを防止するストップリングを挟んで配管継手が装着されている
  ことを特徴とする空気圧変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
  この発明は、入力される空気の空気圧を所定の空気圧に変換して出力する空気圧変換装置に関するものである。
 
【背景技術】
【0002】
  従来より、この種の空気圧変換装置として、
図8にその内部構成のブロック図を示すようなポジショナが知られている(例えば、特許文献1参照)。同図において、1はI/F(インターフェイス)端子、2はCPU(Central Processing Unit)やメモリ等を備えた電気回路モジュール、3は電空変換器、4は電空変換器3からのノズル背圧P
Nを増幅し出力空気圧Poとして調節弁200へ供給するパイロットリレー(空気圧増幅器)、5は調節弁200の動作位置を検出し電気回路モジュール2のCPUへフィードバックする角度センサであり、これらによってポジショナ100が構成されている。
【0003】
  このポジショナ100では、入力電気信号I
IN(4〜20mA)がコントローラ300から供与されると、すなわちコントローラ300からI/F端子1へ入力電気信号I
INが与えられると、電気回路モジュール2のCPUは、入力電気信号I
INと角度センサ5によって検出したフィードバック信号I
FBから制御演算を行い  その結果に応じた電流I1を電空変換器3へ与える。電空変換器3は、空気圧供給源からの圧縮された空気圧Psの空気(高圧の計装空気)の供給を受けて、この計装空気の空気圧Psを電流I1に応じたノズル背圧P
Nに変換し、パイロットリレー4へ出力する。パイロットリレー4は、電空変換器3からのノズル背圧P
Nを増幅し、出力空気圧Poとして調節弁200へ供給する。これにより、調節弁200の弁開度が入力電気信号I
INで示される設定開度に調整される。
【0004】
  このポジショナ100では、供給される計装空気に異物が混入していたような場合、トラブルとなる虞がある。このため、例えば特許文献2では、ポジショナの空気回路中に異物を除去するフィルタを設けるようにしている。
 
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−242706号公報
【特許文献2】特開2005−233198号公報
【特許文献3】特開2013−011654号公報
 
 
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
  しかしながら、ポジショナ100に供給される計装空気には、水分が混入している場合もある。実際の現場では、異物や水分の混入が認められ、それらがポジショナの空気回路内に侵入することで、内部に一時的又は恒久的な詰まりを発生させてトラブルとなる。異物に関しては、フィルタスクリーン等である程度補足可能であるが、水分に関しては、侵入を防止することができない。
【0007】
  なお、ポジショナの空気回路上に水分を吸収可能なフィルタを設置することが考えられるが、水分を捕捉する容量を持たせる必要があるため、空気回路上の大きな流路抵抗となり、ポジショナの制御性能を著しく低下させてしまう。更に、フィルタが水分の捕捉を続けることで、流路抵抗を増加させ、最終的に流路閉塞となることもある。また、空気の流れがある部分への設置となるため、確実な固定方法とメンテナンス性の両立が要求され、製品サイズの大型化,コストアップの要因となる。
【0008】
  このため、現在は水分除去用のフィルタは装備されておらず、フィールドにて水分の侵入が原因と思われるトラブルが度々発生している。このトラブルの検証作業時には、トラブルの発生原因となった水(結露により生じた水滴)が蒸発又は移動してしまっており、トラブルの再現性が非常に低く、痕跡も残りにくいため、トラブルの原因特定を困難にさせている。
【0009】
  本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、異物を除去すると共に、水分の侵入を原因とするトラブルの発生を簡単に知ることが可能な空気圧変換装置を提供することにある。
 
【課題を解決するための手段】
【0010】
  このような目的を達成するために本発明は、入力される空気の空気圧を所定の空気圧に変換して出力する空気圧変換装置において、入力される空気が流れる流路に設置されたフィルタユニットを備え、フィルタユニットは、流路を通過する空気中に含まれる異物を除去する筒状のフィルタスクリーンと、筒状のフィルタスクリーンの周面に取り付けられ流路を通過する空気中に含まれる水を検知してその色が変わる水濡れ検知シートとを備えることを特徴とする。
【0011】
  この発明によれば、筒状のフィルタスクリーンで流路を通過する空気中に含まれる異物が除去され、水濡れ検知シートで流路を通過した空気に水が含まれていたか否かを知ることが可能となる。本発明では、通過した空気に含まれていた水の痕跡を知るのみであるので、空気回路の流路抵抗を増加させることがない。これにより、水の浸入の記録と異物の侵入の防止とを両立させることが可能となる。
【0012】
  なお、本発明において、水濡れ検知シートは、流路を通過する空気に含まれている水を検知してその色が変わるシートであり、すなわち流路を通過する空気中に結露が生じていることを検知してその色が変わるシートであり、空気中の湿度が高くても結露が生じていなければその色は変わらない。
 
【発明の効果】
【0013】
  本発明によれば、流路を通過する空気中に含まれる異物を除去する筒状のフィルタスクリーンと、筒状のフィルタスクリーンの周面に取り付けられ流路を通過する空気中に含まれる水を検知してその色が変わる水濡れ検知シートとを備えたフィルタユニットを入力される空気が流れる流路に設置するようにしたので、空気回路の流路抵抗を増加させることなく、水の浸入の記録と異物の侵入の防止とを両立させることができ、異物を除去すると共に、水分の侵入を原因とするトラブルの発生を簡単に知ることが可能となる。
 
 
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る空気圧変換装置の一実施の形態であるポジショナの計装空気の入口部を示す図である。
【
図2】このポジショナで用いるストップリングを示す図である。
【
図3】このポジショナで用いるフィルタユニットの分解斜視図である。
【
図4】このポジショナで用いるフィルタユニットの正面図および側面図である。
【
図5】このポジショナで用いる水漏れ検知シートの他の例を示す図である。
【
図6】覗き窓を設けるようにした場合のフィルタユニットの構成例を示す分解斜視図である。
【
図7】覗き窓を設けるようにした場合の
図1に対応する図である。
【
図8】ポジショナの内部構成を示すブロック図である。
 
【発明を実施するための形態】
【0015】
  以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係る空気圧変換装置の一実施の形態の要部を示す図である。
図1には、本発明に係る空気圧変換装置の一実施の形態として、ポジショナにおける計装空気の入口部を示している。
 
【0016】
  図1において、10はケース、11はケース10内に形成された計装空気の流路、12は流路11の入口11aに着脱可能に設置されたフィルタユニットである。流路11の入口11aには、すなわち空気圧Psの計装空気の入口11aには、フィルタユニット12の抜け止めを防止するストップリング13を挾んで、フィッティング(配管継手)14が装着されている。
 
【0017】
  ストップリング13は、
図2に示すようなC型のリングであり、フィルタユニット12を流路11の入口11aの流路11の途中に形成された段差面11bまで入れ込んだ後、ストップリング13の径を縮ませて流路11の内周面に形成された溝11cに嵌め込むことによって、フィルタユニット12の抜け止めを防止させている。そして、このストップリング13を溝11cに嵌め込んだ後、フィッティング14を流路11の入口11aに螺合させている。
 
【0018】
  本実施の形態において、フィルタユニット12は、その分解斜視図を
図3に示すように、フィルタスクリーン15と、水濡れ検知シート16と、筒状ケース17とで構成されている。
 
【0019】
  フィルタスクリーン15は、全体がメッシュ状とされ、円筒状とされた胴体部15aと、この胴体部15aからややすぼめて一体的に形成された底面部15bとを備えている。底面部15bもメッシュ状とされている。
 
【0020】
  水濡れ検知シート16は、円筒状に形成されており、その内径および幅はフィルタスクリーン15の胴体部15aの外径および幅とほゞ等しくされている。この水濡れ検知シート16は、水に接触すると毛細細管現象によりその端面16a及び,その周辺の色が変わる特殊なシートであり、空気中の湿度が高くても結露が生じていなければ端面16a及び,その周辺の色が変わることはない。なお、この種の水濡れ検知シートについては、例えば特許文献3に詳述されているので、ここでの説明は省略する。
 
【0021】
  筒状ケース17は、円筒状とされた胴体部17aと、この胴体部17aからややすぼめて一体的に形成された先端部17bとを備えている。先端部17bは開口とされている。胴体部17aの内径および幅は水濡れ検知シート16の外径および幅とほゞ等しくされている。
 
【0022】
  このフィルタユニット12において、水濡れ検知シート16は筒状ケース17の胴体部17aの内周面に接着叉は,嵌め込まれており、この水濡れ検知シート16が接着された筒状ケース17にフィルタスクリーン15を圧入し、フィルタスクリーン15の胴体部15aの外周面に水濡れ検知シート16を位置させている。
 
【0023】
  すなわち、
図4に示すように、フィルタユニット12は、フィルタスクリーン15と水濡れ検知シート16と筒状ケース17との3層構造とされており、外側に位置する筒状ケース17と内側に位置するフィルタスクリーン15との間に水濡れ検知シート16が挟まれた状態で取り付けられている。
 
【0024】
  このフィルタユニット12を流路11の入口11aにセットしたポジショナでは、フィルタスクリーン15で流路11を通過する空気中に含まれている異物が除去される。この異物はフィルタスクリーン15の底面部15bに溜まる。また、流路11を通過する空気中に水が含まれていた場合、すなわち流路11を通過する空気に結露による水滴が生じていた場合、この水が水濡れ検知シート16に接触すると、毛細細管現象により、水濡れ検知シート16の端面16a及び,その周辺の色が変わる。
 
【0025】
  このようにして、本実施の形態では、フィルタスクリーン15で流路11を通過する空気中に含まれている異物が除去され、水濡れ検知シート16で流路11を通過する空気中に含まれる水が検知される。この場合、水濡れ検知シート16は細細管現象によって端面16a及び,その周辺の色が変色するのみであるので、すなわち通過した空気に含まれていた水の痕跡を知るのみであるので、空気回路の流路抵抗を増加させることなく、水の浸入の記録と異物の侵入の防止とが両立されるものとなる。
 
【0026】
  なお、上述した実施の形態では、水濡れ検知シート16の端面16a及び,その周辺で水が通過したか否かを確認するようにしたが、
図5(a)に示すように水濡れ検知シート16のシート面の一部に例えば矩形状の切欠16bを形成するようにし、この矩形状の切欠16bの端面及び,その周辺でも水が通過したか否かを確認するようにしてもよい。また、
図5(b)に示すように、水濡れ検知シート16のシート面に多数の丸孔16cを設け、この多数の丸孔16cの端面及び,その周辺で水が通過したか否かを確認するようにしてもよい。
 
【0027】
  また、上述した実施の形態では、水濡れ検知シート16の端面16a及び,その周辺の色を確認する場合、フィッティング14を取り外さなければならないが、例えば、
図5(b)に示したような多数の丸孔16cを設けた水濡れ検知シート16を用いるようにした場合、
図6に示すように、筒状ケース17の水濡れ検知シート16の丸孔16cに対向する位置に角孔17aを設けるようにし、
図7に示すように、この角孔17aから水濡れ検知シート16の丸孔16cを覗けるような覗き窓10aをケース10に設けるようにすれば、フィッティング14を取り外さなくても水濡れ検知シート16の丸孔16cの端面及び,その周辺の色を確認することができるようになる。
 
【0028】
  また、上述した実施の形態では、フィルタスクリーン15の底面部15bに溜まった異物の状態を確認する場合、フィッティング14を取り外さなければならないが、例えば、
図6に示すように、筒状ケース17のフィルタスクリーン15の底面部15bに対向する位置に角孔17bを設け、
図7に示すように、この角孔17bからフィルタスクリーン15の底面部15bを覗けるような覗き窓10bをケース10に設けるようにすれば、フィッティング14を取り外さなくてもフィルタスクリーン15の底面部15bに溜まった異物の状態を確認することができるようになる。
 
【0029】
  また、上述した実施の形態では、フィルタユニット12を流路11の入口11aにセットするようにしたが、必ずしも流路11の入口11aでなくてもよく、流路11の入口11aよりもさらにケース10の内部に入った位置にフィルタユニット12をセットするようにしてもよい。この場合、そのセットした位置に、
図7に示したような覗き窓10a,10bを設けるようにすれば、ポジショナを分解しなくても、水濡れ検知シート16による水の検知状態やフィルタスクリーン15による異物の除去状態を確認することが可能である。
 
【0030】
  図1に示したように、フィルタユニット12を流路11の入口11aにセットすると、フィッティング14を取り外すだけで水濡れ検知シート16による水の検知状態やフィルタスクリーン15による異物の除去状態を確認することが可能となり、またフィルタユニット12の交換も簡単に行うことが可能となる。また、ストップリング13が折れたとしても、フィッティング14でフィルタユニット12の抜け止めがさらに防止されるものとなる。これにより、ローコストで、メンテナンス性も良好な、安全性の高い、水の浸入の記録と異物の侵入の防止と流路抵抗の増加抑制とを両立させたフィルタ機能を持ったポジショナが実現されるものとなる。
 
【0031】
  また、上述した実施の形態では、フィルタユニット12をフィルタスクリーン15と水濡れ検知シート16と筒状ケース17との3層構造としたが、フィルタスクリーン15と水濡れ検知シート16との2層構造としてもよい。この場合、流路11の内壁が筒状ケース17の役割を果たす。
 
【0032】
  また、上述した実施の形態では、ポジショナを例にとって説明したが、入力される空気の空気圧を所定の空気圧に変換して出力する装置であればよく、減圧弁などでも同様にして適用することができる。
 
【0033】
  また、上述した実施の形態では、水濡れ検知シート16として水を検知すると端面及び,その周辺の色が変わるシートを用いるようにしたが、水を検知すると色が変わって文字が浮き出てくるようなシートであっても構わない。
 
【0034】
〔実施の形態の拡張〕
  以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
 
 
【符号の説明】
【0035】
  10…ケース、10a,10b…覗き窓、11…流路、11a…入口、12…フィルタユニット、13…ストップリング、14…フィッティング、15…フィルタスクリーン、16…水漏れ検知シート、16a…端面、16b…矩形状の切欠、16c…丸孔、17…筒状ケース、17a,17b…角孔、100…ポジショナ。