(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6291333
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
F25B 49/02 20060101AFI20180305BHJP
【FI】
F25B49/02 540
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-87921(P2014-87921)
(22)【出願日】2014年4月22日
(65)【公開番号】特開2015-206553(P2015-206553A)
(43)【公開日】2015年11月19日
【審査請求日】2016年9月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中口 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】木口 行雄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀昭
(72)【発明者】
【氏名】神谷 亮平
【審査官】
小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開平01−023073(JP,A)
【文献】
実開昭63−196063(JP,U)
【文献】
米国特許第06253572(US,B1)
【文献】
実開昭55−178678(JP,U)
【文献】
特開2013−228129(JP,A)
【文献】
実開昭57−188076(JP,U)
【文献】
米国特許第06321544(US,B1)
【文献】
実開昭58−098574(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 49/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、凝縮器、減圧器、蒸発器を配管接続してなるヒートポンプ式冷凍サイクルと、
前記蒸発器と前記圧縮機との間の低圧側配管に設けたアキュームレータと、
前記低圧側配管に取り付けられ、所定値以上の温度で溶融して前記低圧側配管を大気開放する可溶栓と、
前記可溶栓に熱量低減手段として巻き付けられ、前記低圧側配管から前記可溶栓へ伝わる熱量を低減するシート状の1枚または複数枚の吸熱部材と、
を備えることを特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記可溶栓は、前記低圧側配管の管壁に挿通される管状部と、この管状部の先端側に設けられた基体部と、この基体部に嵌合されて前記管状部の先端側開口を閉塞する熱溶融性の金属栓部とを含む、
前記吸熱部材は、前記低圧側配管に接する状態でかつ前記管状部の金属栓部を大気に露出する状態で前記可溶栓の管状部および基体部に巻き付けられたシート状の第1吸熱部材、およびその第1吸熱部材上に巻き付けられたシート状の第2吸熱部材である、 ことを特徴とする請求項1記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
圧縮機、凝縮器、減圧器、蒸発器を配管接続してなるヒートポンプ式冷凍サイクルと、
前記蒸発器と前記圧縮機との間の低圧側配管に設けたアキュームレータと、
前記低圧側配管の管壁に挿通されたパイプと、
前記パイプに接続された熱量低減手段であるキャピラリチューブと、
前記キャピラリチューブに接続され、所定値以上の温度で溶融して前記低圧側配管を前記パイプおよび前記キャピラリチューブを通して大気開放する可溶栓と、
前記低圧側配管の外周面に装着された断熱性のチューブと、
を備え、
前記キャピラリチューブを前記可溶栓に結束し、前記可溶栓を前記チューブの周面に配置してそのチューブおよび前記低圧側配管に結束する構成である
ことを特徴とする冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、アキュームレータにつながる低圧側配管に可溶栓を取り付けた冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機、凝縮器、減圧器、蒸発器を順次に配管接続し、その蒸発器と圧縮機との間の低圧側配管にアキュームレータおよび可溶栓を備えた冷凍サイクル装置が知られている。
【0003】
可溶栓は、火災等による雰囲気温度の異常上昇時に、アキュームレータ内が高温高圧となることによる破裂を防止するため、温度が所定値に達した場合に溶融し、低圧側配管またはアキュームレータを大気開放する。この大気開放により、アキュームレータ内の圧力を外に逃がし、アキュームレータの破裂が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−228129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
暖房が可能なヒートポンプ式の冷凍サイクル装置では、暖房時、蒸発器として機能する室外熱交換器の表面に徐々に霜が付着し、そのままでは室外熱交換器の熱交換効率が低下する。そこで、室外熱交換器が着霜した場合は冷媒の流れが逆方向に切換えられ、圧縮機の吐出冷媒が室外熱交換器に直接的に流入するいわゆる逆サイクル除霜が行われる。
【0006】
ただし、逆サイクル除霜を行うと、それまで高圧ガス冷媒が流れて高温となっていた配管に低圧ガス冷媒が流れ、その低圧ガス冷媒が配管の熱を吸収しながら温度上昇して高温となって低圧側配管に流入する。このとき、高温となった冷媒の熱が可溶栓に伝わり、アキュームレータ内の圧力に異常がないにもかかわらず、可溶栓が溶融してしまう可能性がある。
【0007】
本発明の実施形態の目的は、可溶栓の不要な溶融を防ぐことができる冷凍サイクル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の冷凍サイクル装置は、圧縮機、凝縮器、減圧器、蒸発器を配管接続してなるヒートポンプ式冷凍サイクルと、前記蒸発器と前記圧縮機との間の低圧側配管に設けたアキュームレータと、
前記低圧側配管に取り付けられ、所定値以上の温度で溶融して前記低圧側配管を大気開放する可溶栓と、
前記可溶栓に熱量低減手段として巻き付けられ、前記低圧側配管から前記可溶栓へ伝わる熱量を低減する
シート状の1枚または複数枚の吸熱部材と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態のヒートポンプ式冷凍サイクルの構成を示す図。
【
図3】同実施形態の可溶栓に吸熱部材が装着された状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。空気調和機のヒートポンプ式冷凍サイクルを
図1に示す。
圧縮機1の吐出口に四方弁2を介してパックドバルブ3が配管接続され、そのパックドバルブ3にガス側配管11および複数の流量調整弁21を介して複数の室内熱交換器22が配管接続される。これら室内熱交換器22に液側配管12を介してパックドバルブ4が接続され、そのパックドバルブ4に膨張弁5を介して室外熱交換器6が配管接続される。さらに、室外熱交換器6に上記四方弁2およびアキュームレータ7を介して上記圧縮機1の吸込口が配管接続される。そして、四方弁2とアキュームレータ7との間の低圧側配管8に、可溶栓9が取り付けられる。
【0011】
圧縮機1、四方弁2、パックドバルブ3,4、膨張弁5、室外熱交換器6、アキュームレータ7、低圧側配管8、可溶栓9は、室外ユニットAに収容される。各流量調整弁21および各室内熱交換器22は、室内ユニットB1,…Bnにそれぞれ収容される。
【0012】
可溶栓9は、
図2に示すように、低圧側配管8の管壁に挿通される管状部9a、この管状部9aの先端側に設けられた基体部9b、この基体部9bに嵌合されて管状部9aの先端開口を閉塞する熱溶融性の金属栓部9cを有する。金属栓部9cは、雰囲気温度またはアキュームレータ7内の圧力が異常上昇してその温度が所定値に達した場合に、溶融する。この金属栓部9cの溶融により、低圧側配管8が大気開放する。この大気開放により、アキュームレータ7内の圧力が低圧側配管8および可溶栓9を介して外に逃がされる。
【0013】
可溶栓9の取り付けに伴い、
図3に示すように、熱量低減手段であるシート状の吸熱部材31が低圧側配管8に接する状態で可溶栓9の管状部9aおよび基体部9bに巻き付けられ、その吸熱部材31上に同じく熱量低減手段であるシート状の吸熱部材32が巻き付けられる。そして、複数本の弾性の結束バンド33の締め付けにより、吸熱部材31,32が可溶栓9に固定される。吸熱部材31,32は、可溶栓9の管状部9aおよび基体部9bのみを被覆する。可溶栓9の金属栓部9cは、吸熱部材31,32で被覆されることなく、大気に露出する。
【0014】
吸熱部材31,32は、例えばブチルゴムである。ブチルゴムは、イソブチレンとイソプレンとを合成したもので、低圧側配管8から可溶栓9に伝わる熱を吸収する。この吸熱部材31,32の装着により、低圧側配管8から可溶栓9に伝わる熱量を低減することができる。
【0015】
なお、低圧側配管8から可溶栓9に伝わる熱量は、吸熱部材31,32のシート厚を変えたり、あるいは吸熱部材の巻き付け枚数を変えることにより、最適な状態に増減することができる。
【0016】
つぎに、ヒートポンプ式冷凍サイクルの動作および可溶栓9の作用について説明する。
暖房時、
図1に実線矢印で示すように、圧縮機1から吐出されるガス冷媒が四方弁2、パックドバルブ3、ガス側配管11、および各流量調整弁21を通って各室内熱交換器(凝縮器)22に流れる。各室内熱交換器22に流れた冷媒は、室内空気に熱を放出して凝縮する。各室内熱交換器22から流出する液冷媒は、液側配管12、パックドバルブ4、および膨張弁5を通って室外熱交換器(蒸発器)6に流れる。室外熱交換器6に流れた冷媒は、外気から熱を汲み上げて蒸発する。そして、室外熱交換器6から流出するガス冷媒は、四方弁2、低圧側配管8、およびアキュームレータ7を通って圧縮機1に吸込まれる。
【0017】
冷房時は、
図1に破線矢印で示すように、圧縮機1から吐出されるガス冷媒が四方弁2を通って室外熱交換器(凝縮器)6に流れる。室外熱交換器6に流れた冷媒は、外気に熱を放出して凝縮する。室外熱交換器6から流出する液冷媒は、膨張弁5、パックドバルブ4、パックドバルブ3、および液側配管12を通って各室内熱交換器(蒸発器)22に流れる。各室内熱交換器22に流れた液冷媒は、室内空気から熱を奪って蒸発する。これら室内熱交換器22から流出するガス冷媒は、ガス側配管11、パックドバルブ3、四方弁2、低圧側配管8、およびアキュームレータ7を通って圧縮機1に吸込まれる。
【0018】
また、暖房時は、蒸発器として機能する室外熱交換器6の表面に徐々に霜が付着し、そのままでは室外熱交換器の熱交換効率が低下する。そこで、暖房中は室外熱交換器6の温度によって室外熱交換器6の着霜状態が監視され、その着霜量が所定以上となった場合に四方弁2の流路が切換えられて、破線矢印の方向に冷媒が流れる逆サイクル除霜が行われる。すなわち、圧縮機1から吐出される高温のガス冷媒が四方弁2を通って室外熱交換器6に直接的に流入し、その高温ガス冷媒の熱で室外熱交換器6が解ける。
【0019】
この逆サイクル除霜の開始時、それまで高圧ガス冷媒が流れて高温(例えば105℃)となっていたガス側配管11に低圧ガス冷媒が流れるようになる。この低圧ガス冷媒は、ガス側配管11の熱を吸収して温度上昇し、高温となってパックドバルブ3および四方弁2を通り低圧側配管8に流入する。この流入により、低圧側配管8の温度が上昇してその低圧側配管8の熱が可溶栓9に伝わり(例えば72℃)、アキュームレータ7内の圧力に異常上昇がないにもかかわらず、可溶栓9が溶融する可能性がある。なお、ガス側配管11が長いほど、低圧ガス冷媒の吸熱量が増加して低圧側配管8の温度上昇が大きくなる。
【0020】
ただし、本実施形態の場合、可溶栓9に装着された吸熱部材31,32により、低圧側配管8から可溶栓9の金属栓部9cに伝わる熱量が低減される。よって、金属栓部9cの温度が所定値(作動点)に達することはなく、可溶栓9の誤った不要な溶融を防ぐことができる。
【0021】
アキュームレータ7の周囲の雰囲気温度が異常上昇した場合、または、アキュームレータ7内の圧力が異常上昇した場合には、吸熱部材31,32による熱量低減にかかわらず、可溶栓9の金属栓部9cの温度が所定値(作動点)に達し、金属栓部9cが溶融する。この金属栓部9cの溶融により、低圧側配管8が大気開放し、アキュームレータ7内の異常上昇した圧力が低圧側配管8および可溶栓9を介して外に逃がされる。これにより、異常圧力上昇によるアキュームレータ7の破裂が防止される。
【0022】
アキュームレータ7の周囲の雰囲気温度の異常上昇、または、アキュームレータ7内の異常圧力上昇に対しては、可溶栓9の金属栓部9cが確実に溶融し、逆サイクル除霜による低圧側配管8の温度上昇に対しては可溶栓9の金属栓部9cが溶融しないよう、吸熱部材31,32のシート厚が選定される。
【0023】
[変形例]
上記実施形態では、2枚の吸熱部材31,32を可溶栓9に巻き付ける構成としたが、吸熱部材の巻き付け枚数について限定はなく、低圧側配管8から可溶栓9に伝わる熱量を考慮しながら適切な枚数を選定すればよい。
【0024】
上記実施形態では、吸熱部材31,32を可溶栓9の管状部9aおよび基体部9bに巻き付ける構成としたが、
図4に示すように、吸熱部材31を可溶栓9の管状部9aおよび基体部9bに巻き付け、その吸熱部材31上に吸熱部材32を巻き付け、その吸熱部材32の残り部分を低圧側配管8の周面に巻き付ける構成としてもよい。この場合、複数本の結束バンド33により、吸熱部材31,32を可溶栓9および低圧側配管8に固定する。吸熱部材31,32は、吸熱だけでなく、室外ユニットAの運転や輸送により生じる振動を吸収する緩衝部材としても機能する。この振動の吸収により、可溶栓9の取付け部の疲労破壊を防ぐことができる。
【0025】
上記実施形態では、熱量低減手段として吸熱部材31,32を用いたが、
図5に示すように、熱量低減手段として熱抵抗部材である例えばキャピラリチューブ42を用いてもよい。この場合、L字形のパイプ41の一端が低圧側配管8の管壁に挿通され、そのパイプ41の他端にキャピラリチューブ42を介して可溶栓9が接続される。キャピラリチューブ42は細い管を巻回したもので、このキャピラリチューブ42が結束バンド33によって可溶栓9に保持される。低圧側配管8の周面に断熱性のチューブ43が装着され、そのチューブ43の周面に可溶栓9が配置される。配置された可溶栓9は、結束バンド33によってチューブ43および低圧側配管8に保持される。
【0026】
逆サイクル除霜の開始時、高温状態の低圧ガス冷媒の熱はパイプ41およびキャピラリチューブ42を介して可溶栓9に伝わる。このとき、可溶栓9に伝わる熱量がキャピラリチューブ42によって低減される。この熱量低減により、逆サイクル除霜による可溶栓9の不要な溶融が防止される。
【0027】
アキュームレータ7の周囲の雰囲気温度が異常上昇した場合、または、アキュームレータ7内の圧力が異常上昇した場合には、キャピラリチューブ42による熱量低減にかかわらず、可溶栓9の温度が作動点である所定値に達し、可溶栓9が溶融する。この可溶栓9の溶融により、低圧側配管8が大気開放し、アキュームレータ7内の異常上昇した圧力が低圧側配管8および可溶栓9を介して外に逃がされる。これにより、異常圧力上昇によるアキュームレータ7の破裂が防止される。
【0028】
上記実施形態では、空気調和機に搭載される冷凍サイクル装置を例に説明したが、給湯機等の他の機器に搭載される冷凍サイクル装置においても同様に実施可能である。
【0029】
その他、上記実施形態および変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、書き換え、変更を行うことができる。これら実施形態や変形は、発明の範囲は要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0030】
A…室外ユニット、B1,…Bn…室内ユニット、1…圧縮機、2…四方弁、5…膨張弁、6…室外熱交換器、7…アキュームレータ、8…低圧側配管、9…可溶栓、11…ガス側配管、12…液側配管、21…流量調整弁、22…室内熱交換器、31,32…吸熱部材、33…結束バンド、41…L字形のパイプ、42…キャピラリチューブ(熱抵抗部材)