特許第6291340号(P6291340)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6291340
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】タッチ入力装置および入力検出方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20180305BHJP
【FI】
   G06F3/041 602
【請求項の数】8
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-96182(P2014-96182)
(22)【出願日】2014年5月7日
(65)【公開番号】特開2015-215640(P2015-215640A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2017年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】593059773
【氏名又は名称】富士ソフト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】特許業務法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下村 智範
(72)【発明者】
【氏名】安江 令子
【審査官】 円子 英紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−244252(JP,A)
【文献】 特開2013−218442(JP,A)
【文献】 特開2013−065096(JP,A)
【文献】 特開2006−126997(JP,A)
【文献】 特開2013−105410(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルと、
前記パネルの複数の位置を夫々支持する複数の力センサと、
前記複数の力センサを支持する筐体と、
前記複数の力センサの出力に基づいて、前記複数の力センサに加わる力を示す複数の測定値を夫々検出し、前記複数の測定値に基づいて前記押圧の力を示す押圧力を算出し、前記複数の測定値及び前記複数の位置に基づいて前記パネルの表面における前記押圧の位置を示す押圧座標を算出し、前記押圧力が前記押圧座標に加わるとの仮定の下、前記押圧力、前記押圧座標、及び前記複数の位置に基づいて、前記複数の力センサに加わる力を夫々示す複数の推定値を算出し、前記複数の測定値及び前記複数の推定値に基づいて、前記パネルの変形の状態を認識する演算部と、
を備えるタッチ入力装置。
【請求項2】
前記演算部は、前記複数の測定値と前記複数の推定値との差を夫々示す複数の差分値を算出し、前記複数の差分値に基づいて、前記押圧力の原因が前記押圧であるか否かを判定し、前記押圧力の原因が前記押圧でないと判定された場合、前記複数の差分値の符号に基づいて、前記パネルの変形の状態を認識する、
請求項1に記載のタッチ入力装置。
【請求項3】
前記演算部は、前記複数の差分値の符号を示す符号条件と、前記状態の候補との関連付けを示す関連情報を予め記憶し、前記押圧力の原因が前記押圧でないと判定された場合、前記関連情報から、前記算出された複数の差分値の符号に一致する符号条件を選択し、前記選択された符号条件に対応する候補を、前記状態として認識する、
請求項2に記載のタッチ入力装置。
【請求項4】
前記演算部は、前記状態を連続して認識した場合、前記状態が連続している間の前記押圧力の変化量を認識する、
請求項1〜3のいずれかに記載のタッチ入力装置。
【請求項5】
前記演算部は、前記状態を認識した場合、前記状態に予め関連付けられた機能を実行する、
請求項1〜4のいずれかに記載のタッチ入力装置。
【請求項6】
前記演算部は、前記状態を認識した場合、前記押圧力に基づいて前記機能の操作量を決定する、
請求項5に記載のタッチ入力装置。
【請求項7】
前記機能は、前記演算部により出力される画像の移動と、前記演算部により出力される画像のサイズの変更と、前記演算部により出力される音声の大きさの変更との何れかを含む、
請求項5又は6に記載のタッチ入力装置。
【請求項8】
筺体により支持されパネルの複数の位置を夫々支持する複数の力センサを用い、前記複数の力センサの出力に基づいて、前記複数の力センサに加わる力を示す複数の測定値を夫々検出し、
前記複数の測定値に基づいて前記押圧の力を示す押圧力を算出し、前記複数の測定値及び前記複数の位置に基づいて前記パネルの表面における前記押圧の位置を示す押圧座標を算出し、
前記押圧力が前記押圧座標に加わるとの仮定の下、前記押圧力、前記押圧座標、及び前記複数の位置に基づいて、前記複数の力センサに加わる力を夫々示す複数の推定値を算出し、
前記複数の測定値及び前記複数の推定値に基づいて、前記パネルの変形の状態を認識する、
ことを備える入力検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチ入力装置および入力検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ表面をタッチすることによる入力を受け付けるタッチパネル等のタッチ入力装置が知られている。タッチパネルにおいてタッチされた位置のXY座標を検出する方式として、抵抗膜方式、静電容量方式、力センサ方式等が知られている。力センサ方式のタッチパネルは、XY座標に加えて押圧力を検出することができる。
【0003】
特許文献1は、携帯情報機器の筺体において、表示画面や操作キーが設けられる主表面に対し、筺体の背面に機械的に結合するように歪検出素子が配置されることを開示している。ユーザが筐体の背面及び側面に圧縮荷重を加えることにより、携帯情報機器は歪検出素子からの電気信号に応じて機能を制御する。
【0004】
特許文献2は、情報表示装置が、可撓性を有する表示パネルと、可撓性を有する筐体がと、筺体の曲げ応力を検出するための圧力センサを有することを開示している。ユーザが筐体を曲げたことが圧力センサにより検出されると、情報表示装置は、表示パネルに表示されているコンテンツのページを1ページ進めて表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−102416号公報
【特許文献2】特開2003−015795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した技術は、主な入力を検出するためのタッチパッドやタッチパネルなどの入力デバイスの他に、圧力を検出するためのセンサを設ける必要があるため、装置のコストが増大する。
【0007】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたもので、その目的は、パネルを支持する複数の力センサを用いて、パネルの変形の状態を認識する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一つの観点に係るタッチ入力装置は、パネルと、パネルの複数の位置を夫々支持する複数の力センサと、複数の力センサを支持する筐体と、複数の力センサの出力に基づいて、複数の力センサに加わる力を示す複数の測定値を夫々検出し、複数の測定値に基づいて押圧の力を示す押圧力を算出し、複数の測定値及び複数の位置に基づいてパネルの表面における押圧の位置を示す押圧座標を算出し、押圧力が押圧座標に加わるとの仮定の下、押圧力、押圧座標、及び複数の位置に基づいて、複数の力センサに加わる力を夫々示す複数の推定値を算出し、複数の測定値及び複数の推定値に基づいて、パネルの変形の状態を認識する演算部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1のタッチパネルの構成を示すブロック図。
図2】パネル部100の構成を示す斜視図。
図3】パネル部100の構成を示す分解斜視図。
図4】実施例1の入力検出処理を示すフローチャート。
図5】パネル部100表面の座標系を示す平面図。
図6】実施例2のタッチパネルの構成を示すブロック図。
図7】実施例2の入力検出処理を示すフローチャート。
図8】初期荷重更新処理を示すフローチャート。
図9】実施例3の入力検出処理を示すフローチャート。
図10】カバーパネル120の湾曲を示す。
図11】湾曲パターンテーブルを示す。
図12】操作種類の具体例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態のタッチ入力装置は、パネルを支持する複数の力センサの出力に基づいて、タッチ操作を認識し、押圧座標を入力として利用するだけでなく、タッチ操作以外によるパネルの変形の状態を認識し、その状態を入力として利用することができる。例えば、ユーザにより把持されるタッチ入力装置において、把持の状態を入力として利用することができる。
【0011】
本実施形態のタッチ入力装置は、タッチパネル、タッチパッド、携帯情報端末(携帯電話、スマートフォン、カメラ、パーソナルコンピュータ等を含む)、車両(カーナビゲーション装置等を含む)、キオスク端末、ATM(Automated Teller Machine)、自動販売機(自動券売機等を含む)等、タッチ面の押圧による操作を受け付けるシステムに適用されても良い。また、本実施形態のタッチ入力装置は、コンピュータに接続されて入出力を行うHMI(Human Machine Interface)装置に適用されても良い。
【0012】
以下、本発明を適用したタッチパネルの実施例について説明する。
【実施例1】
【0013】
本実施例のタッチパネルは、力センサにより検出された力の原因がタッチ面の押圧(タッチ)であるか否かを判定し、原因がタッチ面の押圧であると判定した場合、その押圧に基づいて算出された座標を出力し、原因がタッチ面の押圧でないと判定した場合、算出された座標を出力しない。
【0014】
図1は、実施例1のタッチパネルの構成を示すブロック図である。
【0015】
本実施例のタッチパネルは、パネル部100と、信号変換部500と、演算部400とを含む。演算部400は、信号演算部200と、アプリケーション実行部300と、表示制御部410とを含む。
【0016】
パネル部100は、パネル部100の4箇所に加わる力を夫々示す4個の出力信号を信号変換部500へ出力する。信号変換部500は、パネル部100から出力される4個の出力信号に夫々対応する4個のA/D変換部510を有する。A/D変換部510は、A/D変換により所定のサンプル周期でアナログの出力信号をデジタルの出力値に変換する。信号演算部200は、出力値に基づいてパネル部100への入力を検出し、検出された入力をアプリケーション実行部300へ出力する。アプリケーション実行部300は、検出された入力に基づいてアプリケーションを実行し、実行結果に基づいて画面情報を生成し、画面情報を表示制御部410へ出力する。表示制御部410は更に、画面情報に基づいてパネル部100を制御するための表示信号を生成し、表示信号をパネル部100へ出力する。パネル部100は、表示信号に基づいて画面を表示する。
【0017】
信号演算部200は、入力算出部310と、測定期待値算出部330とを有する。入力算出部310は、所定の測定周期で信号変換部500から出力値を取得し、出力値の変動を夫々示す測定値を検出する。更に入力算出部310は、測定値の原因がパネル部100の表面の押圧であると仮定し、測定値に基づいて、押圧の力を示す押圧力を算出する。更に入力算出部310は、測定値の原因がパネル部100の表面の押圧であると仮定し、測定値及び押圧力に基づいて、その押圧の座標である押圧座標を算出する。測定期待値算出部330は、押圧力の原因がパネル部100の表面の押圧であると仮定し、押圧力及び押圧座標に基づいて測定値を推定することにより、測定値の期待値である測定期待値を算出する。判定部340は、測定値と測定期待値に基づいて、押圧力の原因がパネル部100の表面の押圧であるか否かを判定する。
【0018】
表示制御部410は、アプリケーション実行部300からの画面情報に基づいてパネル部100の表示を制御するための表示信号を生成し、表示信号をパネル部100へ出力する。
【0019】
演算部400は、例えばコンピュータにより実現される。このコンピュータは、プログラム及びデータを格納するメモリと、そのプログラムに従って信号演算部200とアプリケーション実行部300と表示制御部410との処理を実行するCPU(Central Processing Unit)等のマイクロプロセッサとを有する。このプログラムは、コンピュータ読み取り可能な媒体に格納され、その媒体からコンピュータへ読み出されても良い。なお、信号演算部200とアプリケーション実行部300と表示制御部410が、互いに異なるマイクロプロセッサにより実現されても良い。また、アプリケーション実行部300及び表示制御部410が一つのマイクロプロセッサにより実現されても良い。また、信号演算部200とアプリケーション実行部300と表示制御部410との夫々に対応するプログラムが用意されても良い。なお、信号演算部200とアプリケーション実行部300と表示制御部410との少なくとも何れかが、専用の電子回路により実現されてもよい。また、アプリケーション実行部300及び表示制御部410の少なくとも何れかが、タッチパネルの外部に設けられていても良い。この場合、信号演算部200は、通信インターフェースを有し、タッチパネルの外部との通信を行う。なお、信号演算部200は、信号変換部500を含んでも良い。タッチパネルは更に、アプリケーション実行部300からの指示に基づいて音声を出力する音声出力部を含んでも良い。
【0020】
図2は、パネル部100の構成を示す斜視図であり、図3は、パネル部100の構成を示す分解斜視図である。
【0021】
本実施例のパネル部100は、表示パネル110と、カバーパネル120と、4個の力センサ130と、基盤部150とを有する。基盤部150上には、表示パネル110が配置されている。本実施例の表示パネル110は、LCD(Liquid Crystal Display)であるが、有機EL(Electro−Luminescence)ディスプレイ等であってもよい。本実施例の表示パネル110の表示領域の形状は、長方形である。
【0022】
基盤部150上には更に、表示パネル110の周囲に複数の力センサ130が配置されている。本実施例では4個の力センサ130が、表示パネル110の4個の頂点に夫々対応して配置されている。本実施例の力センサ130は、圧電素子である。
【0023】
表示パネル110の表面に対向して、カバーパネル120が設けられている。タッチ面は、カバーパネル120の表面である。本実施例のカバーパネル120は平板状であり、その表面の形状は、長方形である。4個の力センサ130は、カバーパネル120の裏面の4個の頂点の付近を夫々支持している。これにより、カバーパネル120の裏面と表示パネル110の表面の間は、所定の間隔を有する。また、カバーパネル120は、表示パネル110による表示を透過させる。カバーパネル120は例えば、ガラスやプラスチックにより実現される。
【0024】
基盤部150上には更に、信号変換部500が設けられている。信号変換部500は、4個の力センサ130と信号線を介して接続されている。なお、信号変換部500は、力センサ130と接続されていれば、基盤部150上に配置されていなくても良い。基盤部150上には更に、信号演算部200やアプリケーション実行部300等が設けられていても良い。
【0025】
パネルは、カバーパネル120等に対応する。
【0026】
なお、4個の力センサ130が、表示パネル110の裏面の4個の頂点付近を支持し、表示パネル110の表面が、カバーパネル120の裏面に接していても良い。
【0027】
また、表示パネル110の表示領域の形状は、長方形以外であっても良い。また、力センサ130の数は、4以外であっても良い。また、力センサ130は、コンデンサやひずみゲージ等であっても良い。
【0028】
微小な圧力による不安定な動作領域を除くため、カバーパネル120には、初期荷重として、基盤部150の方向へ若干の圧力が加えられている。初期荷重を加えるために、カバーパネル120と基盤部150の間に、ばね等の弾性体が設けられていても良い。カバーパネル120の設置時等、カバーパネル120表面がタッチされていない状態での出力値が測定され、初期荷重として入力算出部310に格納される。
【0029】
カバーパネル120は、表示パネル110の表面を覆い、表示パネル110の表面を保護する。更にカバーパネル120の表面は、ユーザによる押圧(タッチ)を受ける。4個の力センサ130は、カバーパネル120から受ける力に応じた電気信号である出力信号を信号変換部500へ出力することにより、その力を連続して測定する。
【0030】
信号演算部200は、所定の入力検出周期毎に、力センサ130からの出力に基づいて入力を検出する入力検出処理を行う。
【0031】
タッチパネルは更に、筐体を有する。信号変換部500と、信号演算部200と、アプリケーション実行部300と、表示制御部410とは、筐体内に収容されており、筐体に固定されている。パネル部100のうち、表示パネル110と、4個の力センサ130と、基盤部150は、筐体内に収容され、カバーパネル120は、筐体の開口を覆っている。基盤部150は、筐体に固定されている。
【0032】
図4は、実施例1の入力検出処理を示すフローチャートである。
【0033】
入力算出部310は、4個の力センサ130に夫々対応する初期荷重Fw1、Fw2、Fw3、Fw4を予め記憶する。入力検出処理が開始されると、入力算出部310は、4個の力センサ130に夫々対応する出力値G1、G2、G3、G4を信号変換部500から取得し(S110)、G1、G2、G3、G4からFw1、Fw2、Fw3、Fw4を夫々減ずることにより、測定値F1、F2、F3、F4を算出する(S120)。これにより、出力値から初期荷重の影響を除去することができる。なお、入力算出部310は、出力値G1、G2、G3、G4を夫々、測定値F1、F2、F3、F4として検出しても良い。その後、入力算出部310は、測定値F1、F2、F3、F4の合計である押圧力Fsを算出する(S130)。カバーパネル120が剛体であると仮定し、且つ測定値の原因がカバーパネル120表面の押圧であると仮定したとき、押圧力Fsは、カバーパネル120表面を押圧する力を示す。その後、入力算出部310は、押圧力が所定の押圧力閾値Fth以上であるか否かを判定する(S140)。これにより、入力算出部310は、押圧力閾値より小さい押圧力を検出しても、押圧が行われたと判定せず、誤検出を低減することができる。
【0034】
押圧力が押圧力閾値以上でないと判定された場合(S140:NO)、入力算出部310は、処理をS110へ移行させる。押圧力が押圧力閾値以上であると判定された場合(S140:YES)、入力算出部310は、測定値の原因がカバーパネル120表面の押圧であると仮定して、タッチされた点の座標である押圧座標を算出する(S150)。押圧座標の算出方法については後述する。
【0035】
その後、測定期待値算出部330は、カバーパネル120が剛体であると仮定し、且つ押圧力が押圧座標に加わったと仮定して、測定値の期待値である測定期待値を算出する(S210)。なお、測定期待値を推定値と呼ぶことがある。測定期待値の算出方法については後述する。判定部340は、測定値と測定期待値の差分値を算出し、差分値が所定の差分条件を満たすか否かを判定する(S220)。差分値の判定方法については後述する。
【0036】
差分値が差分条件を満たすと判定された場合(S220:YES)、判定部340は、押圧力の原因がカバーパネル120表面の押圧であると認識し、押圧座標及び押圧力をアプリケーション実行部300へ出力し(S230)、このフローを終了する。差分値が差分条件を満たさないと判定された場合(S220:NO)、判定部340は、押圧力の原因がカバーパネル120表面の押圧でないと認識し、押圧座標及び押圧力を出力せずにこのフローを終了する。
【0037】
押圧座標及び押圧力の通知を受けたアプリケーション実行部300は、押圧座標及び押圧力を用いてアプリケーションの処理を実行する。例えば、アプリケーション実行部300は、押圧座標に表示されているオブジェクトの選択を行っても良いし、押圧力に基づく大きさのオブジェクトを押圧座標に描画しても良い。
【0038】
以上が入力検出処理である。この入力検出処理によれば、力センサ130で測定された入力が、カバーパネル120表面の押圧を原因とする正常入力であるか、カバーパネル120表面の押圧以外を原因とする異常入力であるかを区別することができる。
【0039】
以下、押圧座標の算出方法について説明する。
【0040】
図5は、パネル部100表面の座標系を示す平面図である。
【0041】
本実施例においては、表示パネル110の表示領域の中心を原点として表示パネル110の表面をXY平面とする。4個の力センサ130のうち、XY平面の第一象限に配置された力センサ130をS1とし、第二象限に配置された力センサ130をS2とし、第三象限に配置された力センサ130をS3とし、第四象限に配置された力センサ130をS4とする。また、力センサS1、S2、S3、S4から夫々得られる測定値をF1、F2、F3、F4とする。
【0042】
ここで、表示パネル110内のピクセルを単位とし、パネル部100表面上の距離を定義する。表示パネル110の表示領域のX方向の大きさをWdとし、表示領域のY方向の大きさをHdとする。本実施例において、Wdは320であり、Hdは240である。更に、X方向に隣接する二つの力センサ130の間の距離(S1及びS2の間の距離、S3及びS4の間の距離)をWsとし、Y方向に隣接する二つの力センサ130の間の距離(S1及びS4の間の距離、S2及びS3の間の距離)をHsとする。本実施例において、Wsは422であり、Hsは266である。更に、原点から力センサ130までのX方向の距離をXsとするとXsはWs/2であり、原点から力センサ130までのY方向の距離をYsとするとYsはHs/2である。本実施例において、Xsは211であり、Ysは133である。
【0043】
押圧座標の算出方法において、入力算出部310は、Xs及びYsにより表される力センサS1、S2、S3、S4の座標と、測定値F1、F2、F3、F4と、押圧力Fsとから、次式を用いて押圧座標PX、PYを算出する。
【0044】
【数1】
【0045】
以下、測定期待値の算出方法について説明する。
【0046】
測定期待値算出部330は、Xs及びYsにより表される力センサS1、S2、S3、S4の座標へ押圧力Fsを配分することにより、力センサS1、S2、S3、S4に夫々対応する測定期待値E1、E2、E3、E4を算出する。ここでは、測定値(F1、F2、F3、F4)として(35.000、52.100、30.650、2.250)が得られた場合の具体例を用いて説明する。この場合、押圧力Fsは120になり、前述の押圧座標の算出方法により押圧座標(PX、PY)は(−80、60)になる。
【0047】
測定期待値算出部330は、押圧力で原点を押下した場合の測定値の期待値である原点測定期待値を算出する。ここで、力センサS1、S2、S3、S4に夫々対応する原点測定期待値をO1、O2、O3、O4とする。原点測定期待値は、次式で表される。
【0048】
O1 = O2 =O3 = O4 = Fs/4
= 120/4 = 30
【0049】
その後、測定期待値算出部330は、次式を用いて、押圧座標のX座標による影響TempXを算出する。
【0050】
TempX = PX×O1/Xs
= −80×30/211 = −11.374
【0051】
その後、測定期待値算出部330は、次式を用いて、原点測定期待値にTempXを反映することにより、力センサS1、S2、S3、S4に夫々対応する暫定測定期待値PreE1、PreE2、PreE3、PreE4を算出する。
【0052】
PreE1 = O1+TempX
= 30+(−11.374) = 18.626
PreE2 = O2−TempX
= 30−(−11.374) = 41.374
PreE3 = O3−TempX
= 30−(−11.374) = 41.374
PreE4 = O4+TempX
= 30+(−11.374) = 18.626
【0053】
その後、測定期待値算出部330は、次式を用いて、押圧座標のY座標による影響TempY1及びTempY2を算出する。
【0054】
TempY1 = PY×PreE1/Ys
= (60×18.626)/133 = 8.403
TempY2 = PY×PreE2/Ys
= (60×41.374)/133 = 18.665
【0055】
その後、測定期待値算出部330は、次式を用いて、原点測定期待値にTempY1及びTempY2を反映することにより、測定期待値E1、E2、E3、E4を算出する。
【0056】
E1 = PreE1+TempY1
= 18.626+(8.403) = 27.029
E2 = PreE2+TempY2
= 41.374+(18.665) = 60.039
E3 = PreE3−TempY2
= 41.374−(18.665) = 22.709
E4 = PreE4−TempY1
= 18.626−(8.403) = 10.223
【0057】
以上の測定期待値の算出方法によれば、押圧座標に基づいて、押圧力Fsを4個の力センサ130の座標へ配分することにより、押圧力が押圧座標に加わった場合の測定値を推定することができる。
【0058】
以下、測定期待値の判定方法について説明する。
【0059】
判定部340は、測定値と測定期待値を夫々比較する。例えば、判定部340は、測定値F1、F2、F3、F4から測定期待値E1、E2、E3、E4を夫々減ずることにより、差分値D1、D2、D3、D4を算出する。押圧力の原因が押圧座標の押圧であれば、D1、D2、D3、D4の夫々は、0に近づく。
【0060】
このとき、差分条件は、全ての差分値の絶対値が所定の差分閾値以下となることである。差分閾値は、押圧力の大きさに比べて十分小さく、例えば押圧力の大きさの2%である。この具体例において、(D1、D2、D3、D4)は(+7.971、−7.939、+7.941、−7.973)になる。差分閾値が2.4であるとすると、少なくとも一つの差分値の絶対値が差分閾値を上回るため、判定部340は、差分値が差分条件を満たさないと判定する。
【0061】
タッチパネルに高精度の力センサ130を用いるだけでは、人がタッチパネルのそばを歩くことや、タッチパネルが置かれた机に触れること等により、力センサ130に振動が伝わり、押圧座標や押圧力の誤検出が生じる場合がある。本実施例によれば、特別なハードウェアを設けることなく、測定期待値に基づいて、力センサ130の出力の原因がカバーパネル120表面の押圧であるか、カバーパネル120表面の押圧以外であるかを判定することにより、誤検出を防止できる。
【実施例2】
【0062】
タッチパネルの筐体の歪みにより初期荷重が変化し、正しい押圧座標が得られないことがある。例えば、タッチパネルを立てかけて使っている状態や、カバーパネル120の表面上に本や手のひらなどが載っている状態では、その状態が続く間、予め設定された値と異なる初期荷重が力センサ130に加わる。そのため、カバーパネル120表面への押圧を正しく測定することができない場合がある。
【0063】
本実施例のタッチパネルは、カバーパネル120表面の押圧以外の力を検出し、且つ、検出された力が一定期間の間安定していると判定した場合、検出された力に基づいて初期荷重を更新する。
【0064】
本実施例では、実施例1との相違を中心に説明する。
【0065】
図6は、実施例2のタッチパネルの構成を示すブロック図である。
【0066】
実施例1のタッチパネルと比較すると、実施例2のタッチパネルは、演算部400の代わりに演算部400bを有する。演算部400と比較すると、演算部400bは、信号演算部200の代わりに信号演算部200bを有する。信号演算部200と比較すると、信号演算部200bは、新たに初期荷重更新部420を有する。初期荷重更新部420は、カバーパネル120表面の押圧以外の力が検出された場合に、その力に基づいて初期荷重を更新する。
【0067】
初期荷重更新部420は、パネル部100の設置時や定期的な測定時で、カバーパネル120がタッチされていない状態において、信号変換部500からの出力値を初期荷重として入力算出部310へ出力する。入力算出部310は、初期荷重を記憶する。その後、入力算出部310は、初期荷重を用いて、信号変換部500の出力値から測定値を算出する。
【0068】
信号演算部200bは、所定の入力検出周期毎に、力センサ130からの出力に基づいて入力を検出する入力検出処理を行う。
【0069】
図7は、実施例2の入力検出処理を示すフローチャートである。
【0070】
信号演算部200bは、実施例1の入力検出処理と同様、S110〜S140の処理を実行する。
【0071】
押圧力が押圧力閾値以上でないと判定された場合(S140:NO)、入力算出部310は、初期荷重を更新する初期荷重更新処理(1)を実行し(S160)、処理をS110へ移行させる。初期荷重更新処理(1)については後述する。押圧力が押圧力閾値以上であると判定された場合(S140:YES)、入力算出部310は、実施例1の入力検出処理と同様、S150〜S220の処理を実行する。
【0072】
差分値が差分条件を満たすと判定された場合(S220:YES)、判定部340は、実施例1と同様のS230を実行し、このフローを終了する。差分値が差分条件を満たさないと判定された場合(S220:NO)、初期荷重更新部420は、初期荷重更新処理(1)と同様の初期荷重更新処理(2)を実行し(S310)、このフローを終了する。初期荷重更新処理(2)については後述する。
【0073】
図8は、初期荷重更新処理を示すフローチャートである。
【0074】
初期荷重更新処理は、前述のS160の初期荷重更新処理(1)と、前述のS310の初期荷重更新処理(2)との夫々である。初期荷重更新部420は、測定周期×Nの長さの監視期間を示すために、Nの二つの値を記憶している。初期荷重更新処理(2)に用いられるNは、初期荷重更新処理(1)に用いられるNより大きい。即ち、初期荷重更新処理(2)の監視期間は、初期荷重更新処理(1)の監視期間より長い。初期荷重更新処理(1)の監視期間は、例えば0.5秒以下である。初期荷重更新処理(2)の監視期間は、例えば1分である。入力算出部310は、初期荷重Fwi(i=1、2、3、4)を記憶している。
【0075】
初期荷重更新部420は、カウンタ値nを1に設定し、測定値Fiの監視期間を開始する(S410)。その後、入力算出部310は、入力算出部310からFiを取得する(S420)。ここでFiは、前述のように出力値Giから初期荷重Fwiを減じた値である。その後、初期荷重更新部420は、Fiが所定の変化条件を満たすか否かを判定する(S440)。変化条件は、Fiが安定していることである。例えば、変化条件は、Fiの何れかの大きさが所定の偏差閾値以上であり、且つ監視期間中のFiの変動の大きさが所定の変動量閾値以下であることである。
【0076】
例えば、S440において初期荷重更新部420は、Fiの何れかの絶対値が偏差閾値以上であるか否かを判定する。全てのFiの絶対値が偏差閾値以上でないと判定された場合、初期荷重更新部420は、Fiが変化条件を満たさないと判定する。Fiの何れかの絶対値が偏差閾値以上である場合、初期荷重更新部420は、nが1であるか否かを判定する。nが1であると判定された場合、初期荷重更新部420は、Fiを基準値として記憶する。nが1でないと判定された場合、初期荷重更新部420は、Fiから基準値を減ずることにより、基準値からのFiの変動量を算出し、変動量の絶対値が変動量閾値以下であるか否かを判定する。変動量の絶対値が変動量閾値以下でないと判定された場合、初期荷重更新部420は、Fiが変化条件を満たさないと判定する。また、初期荷重変動量の絶対値が初期荷重変動閾値以下であると判定された場合、初期荷重更新部420は、Fiが変化条件を満たすと判定する。
【0077】
Fiが変化条件を満たさないと判定された場合(S440:NO)、初期荷重更新部420は、初期荷重を更新せず、このフローを終了する。Fiが変化条件を満たすと判定された場合(S440:YES)、初期荷重更新部420は、nに1を加え(S450)、nがN以下であるか否かを判定する(S460)。これにより、初期荷重更新部420は、監視期間においてFiが安定していることを検出することができる。
【0078】
nがN以下であると判定された場合(S460:YES)、初期荷重更新部420は、処理をS420へ移行させる。nがN以下でないと判定された場合(S460:NO)、初期荷重更新部420は、Fiに基づいてFwiの補正量ΔFaiを算出する(S510)。例えば、初期荷重更新部420は、監視期間中に取得されたN個のFiの平均をΔFaiとして算出する。
【0079】
初期荷重更新部420は、FwiにΔFaiを加えることによりFwiを更新し、更新されたFwiを入力算出部310へ出力し(S520)、このフローを終了する。
【0080】
なお、S440において初期荷重更新部420は、Fiが変化条件を満たさないと判定された場合に直ちに初期荷重更新処理を終了しなくても良い。例えば、S440において初期荷重更新部420は、監視期間中にFiが変化条件を満たさないと判定された回数である不適合回数をカウントし、不適合回数が所定の不適合回数閾値を上回る場合に初期荷重更新処理を終了し、不適合回数が不適合回数閾値以下である場合にS460へ移行しても良い。不適合回数閾値はNより十分小さく、例えばN/10である。これにより、監視期間中にFiがわずかに変動してもFiが安定していると判定することができる。
【0081】
以上が初期荷重更新処理である。
【0082】
初期荷重更新処理(1)は、押圧力が押圧力閾値より小さい状態で実行されるため、タッチパネルの筐体の自然な歪みなどにより生じる測定値の変化に基づいて初期荷重を更新する。初期荷重更新処理(2)は、押圧力が押圧力閾値以上になった状態で実行されるため、タッチパネルの筺体に何らかの力が加わることによる測定値の変化に基づいて初期荷重を更新する。なお、初期荷重更新処理(2)において、初期荷重更新部420がユーザからの入力に応じて監視期間を終了することにより、監視期間を短縮しても良い。
【0083】
本実施例によれば、測定値の偏りが安定していることを検出し、その測定値に基づいて初期荷重を補正することができる。例えば、本実施例のタッチパネルがタブレット端末に適用され、タブレット端末が他の物体に立て掛けられ、タブレット端末の背面がその物体により支持されている場合がある。この場合、カバーパネル120が歪んだ状態になる。本実施例のタッチパネルは、カバーパネル120が歪んだ状態で安定すると、新たな初期荷重を算出することにより、押圧力及び押圧座標の精度を向上させることができる。また、タッチパネルの支持方法が変化して安定する度に、初期荷重を更新することができる。
【実施例3】
【0084】
本実施例のタッチパネルは、カバーパネル120表面の押圧以外の力を検出した場合に予め定められた処理を実行する。
【0085】
本実施例では、実施例1との相違を中心に説明する。
【0086】
信号演算部200は、所定の入力検出周期毎に、力センサ130からの出力に基づいて入力を検出する入力検出処理を行う。
【0087】
図9は、実施例3の入力検出処理を示すフローチャートである。
【0088】
信号演算部200は、実施例1の入力検出処理と同様、S110〜S220の処理を実行する。
【0089】
差分値が差分条件を満たす判定された場合(S220:YES)、判定部340は、カバーパネル120表面の押圧座標を指示する入力であるタッチ操作が行われたと判定し、実施例1と同様のS230を実行し、このフローを終了する。差分値が差分条件を満たさないと判定された場合(S220:NO)、判定部340は、カバーパネル120表面の押圧座標を指示しない入力である筺体操作が行われたと判定し、差分値に基づいて筺体操作を認識する筺体操作認識処理を行い、認識された筺体操作を示す筺体操作情報をアプリケーション実行部300へ出力し(S320)、このフローを終了する。筺体操作は、外部から筺体に加わる力によるカバーパネル120の状態を示す。筺体操作情報は例えば、筺体操作の種類である操作種類を含む。
【0090】
筺体操作情報の通知を受けたアプリケーション実行部300は、筺体操作情報に関連付けられた特定処理(機能)を実行する。タッチパネルがスマートフォンやタブレット端末等の情報通信端末である場合、特定処理は例えば、スリープ解除、画面スクロール、ページ送り、ロック、表示サイズの変更、音量の変更などである。例えば、ユーザは情報通信端末を握るだけでスリープ解除、画面スクロール、ページ送り、表示サイズの変更、音量の変更などの機能を実行することができる。また、情報通信端末が落下による衝撃を受けた時等にロックなどの機能を実行することができる。
【0091】
以下、筺体操作認識処理の詳細について説明する。
【0092】
図10は、タッチパネルの筺体600への力によるカバーパネル120の湾曲を示す。
【0093】
タッチパネルの筺体600は、ユーザの手で把持されることができる形状を有し、可撓性を有する。カバーパネル120も可撓性を有する。ここでは、筐体600及びカバーパネル120が縦長の形状を有する場合について説明する。図5と同様、カバーパネル120の表面の中心を原点とし、表面の右方向をX方向とし、表面の上方向をY方向とする。更にカバーパネル120の表面方向をZ方向とする。筐体600はZ方向に開口を有する。カバーパネル120は、その開口内に設けられ、力センサS1、S2、S3、S4により支持されている。力センサS1、S2、S3、S4は、基盤部150等を介して筐体600により支持されている。
【0094】
ここで、筐体600及びカバーパネル120に力が加わっていない場合、筐体600はカバーパネル120に接触していないとする。筐体600へ力が加わり、筐体600が歪んでカバーパネル120に接触することにより、カバーパネル120が湾曲する場合がある。例えば、ユーザが筺体600の側面を把持することや、カバーパネル120とその裏側の筺体とを把持することなどにより、カバーパネル120が湾曲する。
【0095】
このとき、カバーパネル120の表面における対称軸である直線L1、L2、L3、L4の何れか一つが山(Z方向に凸)又は谷(−Z方向に凸)となる。直線L1は、カバーパネル120の表面において力センサS1及びS3の位置を通る対角線である。直線L2は、カバーパネル120の表面において力センサS2及びS4の位置を通る対角線である。直線L3は、X軸である。直線L4は、Y軸である。
【0096】
測定期待値は、カバーパネル120が剛体であると仮定して算出されるため、カバーパネル120が湾曲した場合、測定値は測定期待値から乖離し、湾曲の程度が差分値として現れる。湾曲は、山又は谷となる直線と、その直線が山であるか谷であるかとにより、パターンに分類することができる。以後、このパターンを湾曲パターンと呼ぶ。更に湾曲パターンは、差分値の符号の組み合わせで表すことができる。判定部340は、湾曲パターンと操作種類を関連付けた湾曲パターンテーブルを予め記憶する。
【0097】
図11は、湾曲パターンテーブルを示す。
【0098】
湾曲パターンテーブルは、湾曲パターン毎のエントリを有する。一つの湾曲パターンに対応するエントリは、当該湾曲パターンの識別子である湾曲パターン番号(No)と、当該湾曲パターンを示す差分値D1、D2、D3、D4の組み合わせである符号条件と、当該湾曲パターンに関連付けられた操作種類を示す操作種類識別子とを含む。差分値D1、D2、D3、D4の符号の組み合わせは、16通り存在するが、差分値D1、D2、D3、D4の符号が全て正である場合の湾曲パターン#1と、差分値D1、D2、D3、D4の符号が全て負である場合の湾曲パターン#1とは、理論上存在しないため、これらの湾曲パターンに操作種類は割り当てられていない。
【0099】
ここでは、湾曲パターンテーブルにおいて、湾曲パターン#11、#6、#4、#13に対し、操作種類OA、OB、OC、ODが夫々割り当てられているとする。
【0100】
筺体操作認識処理において、判定部340は、湾曲パターンテーブルを参照し、算出された4個の差分値の符号に一致する符号条件を選択し、その符号条件に対応する操作種類識別子を含む筺体操作情報をアプリケーション実行部300へ出力する。
【0101】
なお、判定部340は、筺体操作認識処理に基づき、カバーパネル120の変形の状態として、湾曲パターン番号や、差分値の符号を出力しても良い。
【0102】
図12は、操作種類の具体例を示す。
【0103】
(a)に示された操作種類OAは、湾曲パターン#11に対応する。この湾曲パターン#11において、カバーパネル120は直線L1を谷として湾曲し、差分値D1、D2、D3、D4の符号は夫々、−、+、−、+になる。これは例えば、カバーパネル120の表面上で力センサS4近傍の点HA1に−Z方向の力が加えられ、且つタッチパネルの側面上で力センサS2近傍の点HA2にX方向の力が加えられた場合である。言い換えれば、ユーザがカバーパネル120の表面の右下とその裏側の筺体600とを押圧することによりタッチパネルを把持し、筺体600の左側面の上部を押圧した場合に、判定部340は、操作種類OAを認識する。
【0104】
(b)に示された操作種類OBは、湾曲パターン#6に対応する。この湾曲パターンにおいて、カバーパネル120は直線L2を谷として湾曲し、差分値D1、D2、D3、D4の符号は夫々、+、−、+、−になる。これは例えば、カバーパネル120の表面上で力センサS3近傍の点HB1に−Z方向の力が加えられ、且つタッチパネルの側面上で力センサS1近傍の点HB2に−X方向の力が加えられた場合である。言い換えれば、ユーザがカバーパネル120の表面の左下とその裏側の筺体600とを押圧することによりタッチパネルを把持し、筺体600の右側面の上部を押圧した場合に、判定部340は、操作種類OBを認識する。
【0105】
(c)に示された操作種類OCは、湾曲パターン#4に対応する。この湾曲パターンにおいて、カバーパネル120は直線L4を谷として湾曲し、差分値D1、D2、D3、D4の符号は夫々、+、+、−、−になる。これは例えば、カバーパネル120の表面上で力センサS3及びS4の中点近傍の点HC1に−Z方向の力が加えられ、且つタッチパネルの側面上で力センサS2近傍の点HC2にX方向の力が加えられ、且つHC2の反対側の側面上で力センサS1近傍の点HC3に−X方向の力が加えられた場合である。言い換えれば、ユーザがカバーパネル120の表面の下部とその裏側の筺体600とを押圧することによりタッチパネルを把持し、筺体600の左側面の上部と右側面の上部を押圧した場合に、判定部340は、操作種類OCを認識する。
【0106】
(d)に示された操作種類ODは、湾曲パターン#13に対応する。この湾曲パターンにおいて、カバーパネル120は直線L4を谷として湾曲し、差分値D1、D2、D3、D4の符号は夫々、−、−、+、+になる。これは例えば、カバーパネル120の表面上で力センサS1及びS2の中点近傍の点HD1に−Z方向の力が加えられ、且つタッチパネルの側面上で力センサS3近傍の点HD2にX方向の力が加えられ、且つHD2の反対側の側面上で力センサS4近傍の点HD3に−X方向の力が加えられた場合である。言い換えれば、ユーザがカバーパネル120の表面の上部とその裏側の筺体600とを押圧することによりタッチパネルを把持し、筺体600の左側面の下部と右側面の下部を押圧した場合に、判定部340は、操作種類ODを認識する。
【0107】
アプリケーション実行部300は、各操作種類と処理の関連付けを予め記憶している。アプリケーション実行部300は、判定部340により認識された操作種類に対応する処理を行う。
【0108】
例えば、アプリケーション実行部300は、筺体600の左右の側面の上部を押圧する操作種類OCに応じて、画面の上スクロールを行い、筺体600の左右の側面の下部を押圧する操作種類ODに応じて、画面の下スクロールを行っても良い。また、アプリケーション実行部300は、操作種類OCに応じて、表示パネル110に表示された画像や文字の表示サイズの拡大を行い、操作種類ODに応じて、表示サイズの縮小を行っても良い。また、アプリケーション実行部300は、操作種類OCに応じて、音量の増加を行い、操作種類ODに応じて、音量の減少を行っても良い。
【0109】
また、判定部320は、操作種類を認識した場合、そのときの押圧力を操作量として認識し、操作種類と操作量をアプリケーション実行部300へ通知しても良い。この場合、アプリケーション実行部300は、操作種類及び操作量に応じた処理を行う。
【0110】
例えば、操作種類が画面上の特定方向へのスクロールを示す場合、アプリケーション実行部300は、操作量に基づいてスクロール速度を決定する。また、操作種類が画面上の特定のオブジェクトの表示サイズの変更を示す場合、アプリケーション実行部300は、操作量に基づいて変更後の表示サイズを決定する。また、操作種類が音量の変更を示す場合、アプリケーション実行部300は、操作量に基づいて変更後の音量を決定する。このような動作によれば、ユーザはタッチパネルの把持の力によって、操作量をタッチパネルへ入力することができる。
【0111】
また、前述のように入力検出処理は入力検出周期毎に行われるため、判定部340は、連続して認識される筺体操作である連続筺体操作を認識しても良い。判定部340は、前回の入力検出処理において特定操作種類が認識されたか否かを示す連続状態を記憶する。湾曲パターンテーブルにおいて、連続筺体操作に対応する操作種類は特定操作種類として予め定義される。
【0112】
例えば、入力検出処理において、特定操作種類を認識しなかった場合、判定部340は、連続状態をクリアする。その後の入力検出処理において、判定部340は、特定操作種類を認識した場合、連続状態に認識された特定操作種類を保存し、その特定操作種類が継続している時間である継続時間の計測を開始する。
【0113】
その後、連続状態に値が設定されている場合の入力検出処理において、判定部340は、連続状態と同一の特定操作種類が認識されたか否かを判定する。連続状態と同一の特定操作種類が認識されなかったと判定された場合、判定部340は、連続状態をクリアすると共に継続時間をクリアする。連続状態と同一の特定操作種類が認識されたと判定された場合、判定部340は、連続状態を維持し、継続時間が予め定められた継続時間閾値以上であるか否かを判定する。継続時間が継続時間閾値以上であると判定された場合、連続筺体操作が行われたと判定する。なお、判定部340は、継続時間に代えて同一の特定操作種類が認識された回数を用い、その閾値により連続筺体操作が行われたか否かを判定しても良い。
【0114】
連続筺体操作が行われたと判定された場合、判定部340は、連続状態に格納された特定操作種類と、操作量とをアプリケーション実行部300へ通知する。このとき、判定部340は、押圧力の変化量を操作量としてアプリケーション実行部300へ通知しても良い。例えば、判定部340は、連続状態がクリアされている状態において特定操作種類が認識されたときの押圧力Fsを基準押圧力として記憶し、その後、連続筺体操作が行われたと認識された場合、そのときの押圧力Fsから基準押圧力を減じた値を操作量として算出し、特定操作種類と操作量とをアプリケーション実行部300へ通知する。アプリケーション実行部300は、特定操作種類及び操作量に応じた処理を行う。
【0115】
例えば、特定操作種類が画面上のスクロール位置を示す場合、アプリケーション実行部300は、操作量に基づいて画面のスクロール位置を決定する。また、特定操作種類が画面上の特定方向へのスクロールを示す場合、アプリケーション実行部300は、操作量に基づいてスクロール速度を決定する。また、特定操作種類が画面上の特定のオブジェクトの表示サイズの変更を示す場合、アプリケーション実行部300は、操作量に基づいて変更後の表示サイズを決定する。また、特定操作種類が音量の変更を示す場合、アプリケーション実行部300は、操作量に基づいて変更後の音量を決定する。このような動作によれば、ユーザはタッチパネルを把持する位置により操作種類を入力することができ、把持する力を変化させることにより操作量を入力することができる。
【0116】
カバーパネル120を予め僅かに湾曲させても良い。例えば、前述の操作OC及び操作ODを用いる場合、直線L4を谷として湾曲した曲面であっても良い。これにより、ユーザは、HC2にX方向の力を加え、HC3に−X方向の力を加えるだけで、HC1に下向きの力を加えなくても、カバーパネル120を湾曲パターン#4の状態にすることができる。
【0117】
なお、筐体600がカバーパネル120の周縁部のZ方向に延びて力センサ130を支持し、力センサ130がカバーパネル120の表面側を支持していても良い。この場合、測定値、測定期待値、及び差分値の符号は、前述の4個の力センサ130がカバーパネル120の裏面を支持している場合と逆になる。
【0118】
本実施例によれば、タッチパネルに特別なスイッチを設けることなく、ユーザがカバーパネル120表面の押圧以外の力をタッチパネルへ加えることにより、予め定められた処理をアプリケーション実行部300に実行させることができる。
【0119】
本発明をタッチパッドに適用する場合、このタッチパッドは、前述の実施例のタッチパネルの要素のうち、表示パネル110及び表示制御部410を必要としない。このような構成を有するタッチパッドは、前述の実施例のタッチパネルと同様の効果を得ることができる。
【0120】
タッチ入力装置は、パネルとして、カバーパネル120を含んでも良いし、カバーパネル120に代えて表示パネル110等を含んでも良い。タッチ入力装置は、表示部として、表示パネル110等を含んでも良い。
【0121】
上述した技術は、以下のように表現することもできる。
(表現1)
パネルと、
前記パネルの複数の位置を夫々支持する複数の力センサと、
前記複数の力センサを支持する筐体と、
前記複数の力センサの出力に基づいて、前記複数の力センサに加わる力を示す複数の測定値を夫々検出し、前記複数の測定値に基づいて前記押圧の力を示す押圧力を算出し、前記複数の測定値及び前記複数の位置に基づいて前記パネルの表面における前記押圧の位置を示す押圧座標を算出し、前記押圧力が前記押圧座標に加わるとの仮定の下、前記押圧力、前記押圧座標、及び前記複数の位置に基づいて、前記複数の力センサに加わる力を夫々示す複数の推定値を算出し、前記複数の測定値及び前記複数の推定値に基づいて、前記パネルの変形の状態を認識する演算部と、
を備えるタッチ入力装置。
(表現2)
前記演算部は、前記複数の測定値と前記複数の推定値との差を夫々示す複数の差分値を算出し、前記複数の差分値に基づいて、前記押圧力の原因が前記押圧であるか否かを判定し、前記押圧力の原因が前記押圧でないと判定された場合、前記複数の差分値の符号に基づいて、前記パネルの変形の状態を認識する、
表現1に記載のタッチ入力装置。
(表現3)
前記演算部は、前記複数の差分値の符号を示す符号条件と、前記状態の候補との関連付けを示す関連情報を予め記憶し、前記押圧力の原因が前記押圧でないと判定された場合、前記関連情報から、前記算出された複数の差分値の符号に一致する符号条件を選択し、前記選択された符号条件に対応する候補を、前記状態として認識する、
表現2に記載のタッチ入力装置。
(表現4)
前記演算部は、前記状態を連続して認識した場合、前記状態が連続している間の前記押圧力の変化量を認識する、
表現1〜3のいずれかに記載のタッチ入力装置。
(表現5)
前記演算部は、前記状態を認識した場合、前記状態に予め関連付けられた機能を実行する、
表現1〜4のいずれかに記載のタッチ入力装置。
(表現6)
前記演算部は、前記状態を認識した場合、前記押圧力に基づいて前記機能の操作量を決定する、
表現5に記載のタッチ入力装置。
(表現7)
前記機能は、前記演算部により出力される画像の移動と、前記演算部により出力される画像のサイズの変更と、前記演算部により出力される音声の大きさの変更との何れかである、
表現5又は6に記載のタッチ入力装置。
【0122】
上述した技術は更に、以下のように表現することもできる。
(表現8)
前記演算部は、前記複数の差分値の何れかの大きさが所定の差分閾値より大きいか否かを判定し、前記複数の差分値の何れかの大きさが前記差分閾値より大きいと判定された場合、前記押圧力の原因が前記押圧でないと判定する、
表現2又は3に記載のタッチ入力装置。
(表現9)
前記演算部は、前記押圧座標に基づいて前記複数の位置へ前記押圧力を配分することにより、前記複数の推定値を算出する。
表現1〜8のいずれかに記載のタッチ入力装置。
(表現10)
前記演算部は、前記複数の測定値の合計を前記押圧力として算出し、前記押圧力の大きさが所定の押圧力閾値より大きい場合、前記パネルにおける前記複数の力センサの座標と前記複数の測定値とに基づいて、前記押圧座標を算出する。
表現1〜9のいずれかに記載のタッチ入力装置。
(表現11)
前記パネルの表面は、長方形であり、
前記複数の力センサは、4個の力センサであり、
前記4個の力センサは、前記パネルの裏面の4個の頂点に夫々対応して配置されている。
表現1〜10のいずれかに記載のタッチ入力装置。
(表現12)
前記演算部からの指示に基づいて画面を表示する表示領域を含み、前記表示領域が前記パネルにより覆われている表示部を更に備え、
前記パネルは、前記表示を透過させ、
前記押圧座標は、前記表示領域上の座標で表される。
表現1〜10のいずれかに記載のタッチ入力装置。
(表現13)
前記演算部は、前記押圧力の原因が前記押圧であると判定された場合、前記押圧座標及び前記押圧力に基づいて、前記押圧座標における表示を制御する。
表現12に記載のタッチ入力装置。
(表現14)
前記演算部は、前記押圧力の原因が前記押圧でないと判定された場合、前記状態に基づいて、前記画面に表示されたオブジェクトを移動させる。
表現13に記載のタッチ入力装置。
(表現15)
前記演算部は、前記押圧力に基づいて、前記移動の移動量を決定する。
表現14に記載のタッチ入力装置。
(表現16)
前記演算部からの指示に基づいて音声を出力する音声出力部を更に備え、
前記演算部は、前記押圧力の原因が前記押圧でないと判定された場合、前記状態に基づいて、前記音声の大きさを変更する。
表現1〜15のいずれかに記載のタッチ入力装置。
(表現17)
前記押圧力の原因が前記押圧であると判定された場合、前記演算部は、前記押圧座標及び前記押圧力を出力し、
前記演算部は、前記押圧力の原因が前記押圧でないと判定された場合、前記状態及び前記押圧力を出力する。
表現1〜16のいずれかに記載のタッチ入力装置。
【0123】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されない。当業者であれば、本発明の範囲内で、種々の追加や変更等を行うことができる。
【符号の説明】
【0124】
100:パネル部、 110:表示パネル、 120:カバーパネル、 130:力センサ、 150:基盤部、 200、200b:信号演算部、 300:アプリケーション実行部、 310:入力算出部、 330:測定期待値算出部、 340:判定部、 400:演算部、 410:表示制御部、 420:初期荷重更新部、 500:信号変換部、 510:A/D変換部 600:筐体
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図12