特許第6291383号(P6291383)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6291383
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】飲料缶の飲み口キャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 25/48 20060101AFI20180305BHJP
【FI】
   B65D25/48 Z
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-161054(P2014-161054)
(22)【出願日】2014年8月7日
(65)【公開番号】特開2016-37298(P2016-37298A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2017年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】591203831
【氏名又は名称】株式会社マーナ
(74)【代理人】
【識別番号】100108626
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬川 浩一
(72)【発明者】
【氏名】名児耶 美樹
【審査官】 新田 亮二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−205947(JP,A)
【文献】 米国特許第06450358(US,B1)
【文献】 特表平09−500851(JP,A)
【文献】 実開平02−111629(JP,U)
【文献】 実開昭47−023356(JP,U)
【文献】 実開平03−023041(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 23/00 − 25/56
B65D 39/00 − 55/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャップ本体(1)の外周を形成する円筒状の外筒(2)と、前記外筒(2)の中間部付近に形成され外筒(2)の内部を上下に仕切る中蓋(3)と、この中蓋(3)の飲料缶の開口部に対応した位置に開口する吐出口(4)と、この吐出口(4)と飲料缶の開口部を連結し飲料を前記吐出口(4)まで導くガイド筒(5)とを有し、
前記外筒(2)は中蓋(3)より上方の外筒上部(21)と下方の外筒下部(22)とから形成され、
前記外筒上部(21)は上端に向けて僅かずつ拡径するように上方を大径とし下方を小径とする概ね同一幅の複数の構成部材とこれらを連結する肉薄部により形成され、
前記外筒下部(22)は下端に向けて僅かずつ拡径するように下方を大径とし上方を小径とする概ね同一幅の複数の構成部材とこれらを連結する肉薄部により形成され、
前記各構成部材の小径側を大径側内部に折り込むようにして構成部材1つ分の幅の中に収まるように折畳む入れ子状あるいは蛇腹状に折畳めるように形成され、
これらの材質がシリコーンゴムである飲料缶の飲み口キャップ。
【請求項2】
前記肉薄部の肉厚が他の部分の平均肉厚の1/10〜1/3程度である請求項1の飲料缶の飲み口キャップ。
【請求項3】
開口部に嵌合する上蓋を有する請求項1または2の飲料缶の飲み口キャップ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶ジュース、清涼飲料、缶ビール、その他アルコール類など缶入り飲料の飲み物を飲みやすくすることができる飲料缶の飲み口キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
現在流通している缶入り飲料はその殆どがイージーオープンエンド(easy open ends)であるパーシャルオープンエンド(POE)の缶蓋が用いられている。この、パーシャルオープンエンドにはプルタブ式(pulltab)とステイオンタブ式(Stay-on tab)とがあるが、プルタブ式(pulltab)は取り去った後のタブを回収可能に廃棄する必要があり、これを環境中に放棄されるいわゆるポイ捨てのケースが多く、環境破壊防止などの観点から現在は殆ど使用されていない。
【0003】
ステイオンタブ式(Stay-on tab)の缶飲料に収納された飲み物を飲用する場合、タブを引き起こし、スコアにより形成された開口部が缶内部方向に開いて開口状態になる。そして、この開口部の缶の縁に直接に唇を当て、缶を傾けることで内部の飲料を飲むことができる。
【0004】
しかし、缶表面は輸送中に外部環境に晒される為、埃や汚れが付着する恐れがある。また、他人の手が触れる可能性も否定できない為、不衛生であるというイメージは払拭されない。さらに、飲料用缶の上蓋の縁に直に唇を当てて飲むと、缶エッジの感触も悪いうえ、狭い開口部から出てくる内容物の出方が滑らかでないことから、口腔内に飲料が入る感触が悪かったり、空気も一緒に口腔内に入るため飲み難く、飲み慣れないと溢したり、子供などでは上手く飲めない場合もあった。
【0005】
特開平11−245951号公報(特許文献1)には、清涼飲料水、コーヒー、ビール等の飲料用缶の内容物を、缶から直接飲んでも、上部が全開したコップ等の容器で飲むと同様の食感が得られ、唇との接触部が清潔であり、熱い飲料用缶より飲料する際、熱さから唇を守る用具を提供することを目的として、 飲料用缶の上部寸法に合わせた口径をもち、飲料する際、缶上蓋と上唇が触れない程度の立ち上がりをもった筒で、缶と筒とが密着し、かつ簡単にはずれることを防止するために、筒の内側の缶との接触部に突起がついた用具である飲料用缶装着用具が開示されている。
【0006】
しかし、この文献の飲料用缶装着用具は、単なる筒状体である為、 飲料用缶の開口部から直接出た飲料は、この筒状体の周壁に沿って流れて口腔にまで達することになるが、飲料の流れが規制されていないことから、口唇の外側に流れて外部に漏れる恐れがあった。また、筒体が飲料用缶と略同径で真っ直ぐなため、口まで上手く流し込むためには缶を大きく傾けなければならず、缶を大きく傾けると筒体の縁が鼻など顔の一部と接触して上手く飲むことができないという問題を生じることがあった。さらに、飲み終わる度に飲料が少なからず飲料用缶の上部に貯留してしまい不衛生であるばかりか、汚れの原因にもなる。
【0007】
特開平11−321875号公報(特許文献2)には、従来の飲料用缶では、開口部が円周方向の一部にあったため、飲む際に方向性があり、飲み難いという問題点を解決する為に、注ぎ口10には、取付部30、首部40、飲み口50を有し、取付部30には、飲料用缶20の開口部25を有する上部の外周を覆うスカート部31と、スカート部31の内周面に位置し、飲料用缶20の巻き締め部23がはまり込む環状凹部32と、環状凹部32の下側に位置し、スカート部31の内周面から突出し、巻き締め部23の下縁部に弾性的に引っ係る爪部33とを有する飲料用缶に着脱可能な注ぎ口が開示されている。
【0008】
しかし、この文献に開示されている注ぎ口は、飲料用缶20の開口部方向に開口した漏斗状の外形をなす為、先端の飲み口50が窄んでいる。このような形状とした一つの理由として、同文献段落0029に記載されているように、キャップ60を装着して注ぎ口10の飲み口50を塞いでおく為であると考えられる。しかし、このような形状の飲み口では、内容物を飲む為にはこの部分を口にくわえる必要があり、小さな子供では飲み難く、女性などでも口にくわえる仕草が敬遠される場合がある。また、発泡性の飲料では、口腔内で発泡して気体の出口が無くなり、口から液と共に溢れ出るといった不具合も生じやすい。さらに、コップで飲むような良好な食感は得られない。また、飲み終わる度に飲料が少なからず飲料用缶の上部に貯留してしまい不衛生であるばかりか、汚れの原因にもなる。
【0009】
特開2004−123162号公報(特許文献3)には、飲料缶の上蓋に固定されたプルチップのタブを簡単に引上げることができ飲料缶の表面へのほこり等が付着するのを防止して飲料を飲み易すい飲口付きキャップを作ることを目的として、飲口付きキャップの側壁に、その反転状態でプルチップのタブを挿入するための袋孔を設け、かつ飲口付きキャップ上部に下口唇形飲料ガイドをもった飲口部がプルチップにより開缶された流出開口に対向して設けられている缶用飲口付きキャップが開示されている。
【0010】
また、同文献段落0028には、「飲用者は缶を手で持ち上げ、下口唇状飲料ガイド部6の外側下方から唇に当接して缶の飲料を飲むことができる。その際下口唇状飲料ガイドは、円筒側壁部3から側方に張出しており、その張出しは下方から上方に向かって増大しているので、飲料をこぼすことなく飲むことができる。したがって缶の上面が清浄であれば缶上面のほこり等が飲料と一緒に飲込まれることがない。」と記載されている。
【0011】
しかし、この文献の構成では、飲料缶の流出開口から下口唇状飲料ガイド部6の外側下方端までの距離が短く、狭い開口から空気の流入と飲料の流出を伴うこととなり、飲料の流れが安定しないうちに口腔に至ることとなり、却って飲み難くなる。また、直接缶に口を着けないという衛生面以外では別体としてキャップを設けるメリットもあまりない。
【0012】
特開2014−065522号公報(特許文献4)には、飲料用缶の飲み物を飲みやすく出来、また、飲料用缶の飲み残しの飲み物の飲み口からのこぼれ、ごみ等の侵入を防ぎ、一時保存でき、持ち運びできる飲料用缶に嵌合装着できる飲料用缶飲み口ホルダーを提供することを目的として、飲料用缶Dの巻き締め部に上方からホルダー1をかぶせ、数か所のスリット部1eで分割した根元の係止用突起を巻き締め部の巻き締め部凸部により押し広げ、嵌合部凹部に押し込み嵌合装着し、さらに、ねじ環2で螺合し、締め付け、巻き締め部凸部と嵌合部凹部とを強固に嵌合密着させる飲料用缶とホルダーとを一体にした飲料用缶飲み口ホルダーとし、更に、一体にした飲料用缶ホルダーにキャップ3を螺合、締め付け、密閉することで、缶内の飲料のこぼれ、ごみ等の侵入も防げ、一時保存、持ち運ぶことができる飲料用缶飲み口ホルダーが開示されている。
【0013】
しかし、この文献の飲料用缶飲み口ホルダーも外形は概ね筒状体である為、 飲料用缶の開口部から直接出た飲料は、この筒状体の周壁に沿って流れて口腔にまで達することになるが、飲料の流れが規制されていないことから、口唇の外側に流れて外部に漏れる恐れがあった。また、筒体が飲料用缶と略同径で真っ直ぐなため、口まで上手く流し込むためには缶を大きく傾けなければならず、缶を大きく傾けると筒体の縁が鼻など顔の一部と接触して上手く飲むことができないという問題を生じることがあった。さらに、飲み終わる度に飲料が少なからず飲料用缶の上部に貯留してしまい不衛生であるばかりか、汚れの原因にもなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平11−245951号公報
【特許文献2】特開平11−321875号公報
【特許文献3】特開2004−123162号公報
【特許文献4】特開2014−065522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、缶飲料を飲むときの感触を改善して飲みやすくすることが可能であり、取り付けも簡単で、缶上部に飲料が貯留することがない飲料缶の飲み口キャップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題は以下の本発明の構成により解決される。
(1)キャップ本体(1)の外周を形成する円筒状の外筒(2)と、前記外筒(2)の中間部付近に形成され外筒(2)の内部を上下に仕切る中蓋(3)と、この中蓋(3)の飲料缶の開口部に対応した位置に開口する吐出口(4)と、この吐出口(4)と飲料缶の開口部を連結し飲料を前記吐出口(4)まで導くガイド筒(5)とを有し、
前記外筒(2)は中蓋(3)より上方の外筒上部(21)と下方の外筒下部(22)とから形成され、
前記外筒上部(21)は上端に向けて僅かずつ拡径するように上方を大径とし下方を小径とする概ね同一幅の複数の構成部材とこれらを連結する肉薄部により形成され、
前記外筒下部(22)は下端に向けて僅かずつ拡径するように下方を大径とし上方を小径とする概ね同一幅の複数の構成部材とこれらを連結する肉薄部により形成され、
前記各構成部材の小径側を大径側内部に折り込むようにして構成部材1つ分の幅の中に収まるように折畳む入れ子状あるいは蛇腹状に折畳めるように形成され、
これらの材質がシリコーンゴムである飲料缶の飲み口キャップ。
(2)前記肉薄部の肉厚が他の部分の平均肉厚の1/10〜1/3程度である上記(1)の飲料缶の飲み口キャップ。
(3)開口部に嵌合する上蓋を有する上記(1)または(2)の飲料缶の飲み口キャップ


【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、缶飲料を飲むときの感触を改善して飲みやすくすることが可能であり、取り付けも簡単で、缶上部に飲料が貯留することがない飲み口キャップを提供することができる。このため、飲料用缶の飲み物を、飲み口から美味しく飲用でき、ごみ等の侵入を極力防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の飲み口キャップの外観を示す側面図である。
図2】本発明の飲み口キャップの外観を示す上面図である。
図3】本発明の飲み口キャップの外観を示す底面図である。
図4図1のA−A’断面矢視図である。
図5図1のB−B’断面矢視図である。
図6図1のA−A’断面矢視図に即して折畳んだ状態を示した断面図である。
図7】本発明の飲み口キャップを飲用缶に装着した状態を示す側面図である。
図8】本発明の飲み口キャップの上蓋の外観を示す側面図である。
図9】本発明の飲み口キャップの上蓋の外観を示す上面図である。
図10】本発明の飲み口キャップの上蓋の外観を示す底面図である。
図11図8のC−C’断面矢視図である。
図12】本発明の飲み口キャップを折畳んで上蓋内に収納した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の飲み口キャップ1は、例えば図1〜3に示すようにキャップ本体1の外周を形成し、円筒状の外筒2と、前記外筒の中間部付近に形成され外筒2を内面を塞ぐ中蓋3と、この中蓋3の中心からずれた位置であって飲料缶の開口部に対応した位置に開口する吐出口4と、この吐出口4と飲料缶の開口部を連結し飲料を前記吐出口まで導くガイド筒5とを有する。ここで、図1は飲み口キャップの一態様を示した側面図、図2は平面図、図3は底面図である。
【0020】
外筒2は、中間部に形成された中蓋3により上部と下部とに分離される。外筒2の上部21は円筒状に大きく開口し、その一部がコップと同様な飲み口として機能する。外筒下部はその内周が飲料缶外周より僅かに小さく形成され、丁度飲料缶上部がこの外筒下部内に嵌り込むようになっている。このとき、外筒下部の内径が飲料缶外形に合わせた大きさに弾性変形により拡径して、飲料缶を収納し、なおかつ弾性による復元力により飲料缶上部を外筒下部内に保持できるようになっている。
【0021】
外筒上部21は、円筒状に形成されていてもよいが、図示例のように上端に向けて僅かずつ拡径して、所謂ラッパ状に形成されていてもよい。ラッパ状に形成することで、飲用時に缶を大きく傾けても外筒上部21の縁が鼻に当たり難く、飲みやすくなる。
【0022】
外筒上部21および/または外筒下部は、入れ子状あるいは蛇腹状に折畳めるように形成してもよい。入れ子状に折畳む場合には、上方または下方の何れかを大径とし、他方を小径とした円錐の一部に近似される筒形状とし、小径側を大径側内部に折り込むようにして折畳む。折り畳の段数は特に限定されるものではないが、1〜6段程度である。つまり、横断面が互い違いの蛇腹状になる折り畳み方式である。前記のように折畳む場合、折り畳みの曲げ部分を他の部分より肉薄とするとよい。具体的には他の部分の平均肉厚の1/10〜1/3程度である。このように、折畳むことでコンパクトさを確保しながら外筒上部や外筒下部の長さ、すなわち中蓋との接合部から上端、下端までの長さを確保することができる。
【0023】
外筒上部21の長さないし高さとしては、特に規制されるものではないが、短すぎると吐出口から飲み口までの距離が少なくなり、吐出口から脈打って流出する液体を整流する効果が薄れてくる。一方長すぎると邪魔になり易く、扱い難くなる。具体的には吐出口上面から外筒上部21の上端までの高さにして好ましくは40〜80mm、より好ましくは45〜75mm、特に50〜70mm程度である。高さが低いと飲み難さが解消され難くなる。
【0024】
同様に外筒下部22の長さないし高さも特に規制されるものではないが、短すぎると飲料缶との嵌合力が弱くなり、長すぎると取り付け取り外し難くなる。具体的にはガイド筒5下端から外筒下部22の下端までの高さにして好ましくは5〜50mm、より好ましくは10〜30mm程度である。
【0025】
外筒下部22も円筒状に形成されていてもよいが、図示例のように下端に向けて僅かずつ拡径して、所謂ラッパ状に形成されていてもよい。外筒下部22をこのようにラッパ状あるいは漸次拡径する形状とするメリットは、対象となる飲用缶の形状に沿わせることができるからである。また、対象となる飲用缶によっては、通常の円筒形に形成した方が飲用缶形状に即した形態となる場合もあるので、対象となる飲用缶の形状に対応して同様な形状にするとよい。
【0026】
ガイド筒5は、飲料缶の開口部に対応した位置に配置され、缶上蓋102の前記開口部内にガイド筒5が挿入されるよう配置される。このとき、ガイド筒下端部の形状が、前記開口部の開口形状と少なくともその一部が同一あるいは相似であり、なおかつ僅かに小さいか、弾性変形して挿入可能な大きさであることが理想である。ガイド筒の挿入深さは特に規制されるものではなく、開口部を塞ぎ、嵌合ないし係止できる程度に挿入できればよく、例えば1mm以上、好ましくは3mm以上であり、その上限は10mm程度である。
【0027】
このとき、開口部のうちタブ周囲等がガイド筒5で完全に塞がれない可能性があるが、塞がれない部分の面積を極力少なくすることで、この部分からの飲料漏れを最小限に抑制することができる。また、外筒下部22内の空間でガイド筒5周囲に相当する空間は飲料缶周囲に密着した外筒下部22と、開口部に挿入されたガイド筒5により概ね気密状態となっており、気体抜けがない限りこの部分への飲料の流入が無視できる程度に抑制される。ここで、ガイド筒5下部の形状は必ずしも開口部に挿入されるものでなくてもよく、開口部周囲のプル上部も含めて覆うことができるような形状にしてもよい。この場合には、プルに相当する部分をその形状に即した凹部ないし逃げ構造を設けて覆うようにしてもよい。
【0028】
ガイド筒5は前記外筒下部22を飲料缶に装着したときに缶蓋102の開口内に挿入されるようにその長さが設定されている。つまり、上記のようにガイド筒5下端51から外筒下部22の下端まである程度の距離があるため、この部分の外筒下部22が飲料缶上部に嵌り込み、さらに缶方向に押し下げるとガイド筒5の下端が缶蓋102開口部内に挿入されて固定される。このとき、ガイド筒5と缶蓋102の開口部の位置が丁度一致してお互いの位置が重複するように配置することが重要である。
【0029】
こうして、ガイド筒5の先端が開口部内に挿入され、ガイド筒5内部の流動路51内を飲料が流れ出ることになる。流れ出た飲料は、吐出口4から流出し、外筒上部21の内側面を伝って端部である飲み口21aに達する。そして、この部分に口をあてがうことで、コップ等の容器と同様な触感、使用感を得ながら飲用することができる。なお、飲み口21aは特別な構造である必要はなく、吐出口4直近の外筒上部21の上端部であればよい。
【0030】
中蓋3は外筒2の中間部付近に形成され、外筒2の内部を仕切り閉鎖すると共に外筒2を外筒上部21と外筒下部22とに分離する機能を有する。中蓋3で重要なことは、外筒下部22内部に収納された飲用缶の缶蓋が外部に露出しないようにその上面を覆うことであり、飲用缶の開口部のみガイド筒5を介して外部と連通するようにすることである。
【0031】
中蓋3は、飲用時には吐出口4から流出した飲料が、中蓋3上を介して外筒上部21に流出させる。また、飲み終わったときには外筒上部21や中蓋3上に残留する飲料を缶蓋に接触しないように、これから隔てる機能と、ある程度の残留飲料は再び吐出口4から飲料缶内に逆流させる機能を果たす。このため、中蓋3は上方に向けて端部が湾曲した断面U字状や半円形に形成してもよい。あるいは、外筒2との接合部に飲料が残留し難くするために、この接合部分のみ丸みを持たせるような構造にしてもよい。
【0032】
本発明の飲み口キャップ1は、さらに上蓋9を備えていてもよい。上蓋9は外筒上部21の上端部に装着して、外筒上部21上面を覆い、これを閉鎖する機能を有するものであればその形状は問わない。通常、有底の底浅円筒体により容易に構成することができる。上蓋を設けることにより、上蓋9の内径は外筒上部21の上端の外形より僅かに小さく、上蓋9および/または外筒上部21が弾性変形することにより互いに嵌り合い嵌合状態になる。上蓋9を設けることで、吐出口4から流出した飲料が外部に零れるのを防止することができ、開口した飲用缶を携行するときに便利である。
【0033】
本発明の飲み口キャップおよび上蓋を形成する材料は特に限定されるものではなく、樹脂材料の他、金属、陶器、セラミックス、ガラスおよびこれらの組み合わせで形成することができる。しかし、前記材料単独では飲用缶への装着や、折り畳みなどの機能を十分に果たせないことから前記材料に代えて、あるいは前記材料に加えて部分的、例えば外筒上部、外筒下部、折り曲げ部位、上蓋の外周等に天然または合成エラストマーを用いるとよい。具体的にはイソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、ポリイソブチレン(ブチルゴム IIR)、エチレンプロピレンゴム(EPM, EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、アクリルゴム(ACM)、フッ素ゴム(FKM)、エピクロルヒドリンゴム(CO, ECO)、ウレタンゴム(U)、シリコーンゴム(Q)等が挙げられるが、これらの中でもシリコーンゴム(Q)が好ましい。エラストマー等を少なくとも部分的に配置することで弾性変形、可撓性等の機能を発揮し、触感を改善させることができる。
【0034】
また、通常の樹脂材料を組み合わせて用いることもできる。樹脂材料は安全性が高く、量産によるコストダウン効果も大きい。樹脂材料としては、通常この種の飲用器具に用いられている材料であればよく、具体的にはポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、塩化ビニール、ABS樹脂等が挙げられ、特に量産性と安全性の面からポリプロピレン(PP)が好ましい。
【0035】
本発明の飲み口キャップが装着できる飲料缶は、所謂イージーオープンエンド方式の飲料缶であれば特に限定されるものではなく、プルタブ式でもステイオンタブ式の飲料缶でも使用可能である。内容物についても特に限定はなく、ビール、酎ハイ、日本酒、各種カクテル類などの酒類や、清涼飲料、果汁系飲料、スポーツドリンク、お茶、牛乳などの乳製品、スープ、お汁粉などの調理食品、健康飲料、薬効成分を含む飲料など種々の飲み物に使用できる。
【0036】
本発明の飲み口キャップは種々の色彩に彩色することができ、単一色や複数の色彩を組み合わせて彩色してもよい。また、単純な幾何学模様を付したり、動物、植物、人物、コミック、アニメ、ゲームなどのキャラクター等を付してもよい。また、商標等、企業イメージのための模様を付して営業効果を向上させることもできる。さらに、装着する飲料缶と一体化するような意匠を付してもよい。
【実施例1】
【0037】
次に、具体的実施例を示し本発明についてより詳しく説明する。図1〜6は本発明の一実施例を示した図である。ここで、図1は本発明の飲み口キャップの外観を示す側面図、図2は上面図、図3は底面図、図4図1のA−A’断面矢視図、図5図1のB−B’断面矢視図、図6図1のA−A’断面矢視図に即して折畳んだ状態を示した断面図である。
【0038】
各図において、本発明の飲み口キャップはキャップ本体1の外周を形成し、円筒状の外筒2と、前記外筒の中間部付近に形成され外筒2を内面を塞ぐ中蓋3と、この中蓋3に形成され飲料缶の開口部に対応した位置に開口する吐出口4と、この吐出口4と飲料缶の開口部を連結し飲料の流路として前記吐出口まで導くガイド筒5とを有する。また、これらの構成要素は全てシリコーンエラストマーにより形成した。
【0039】
円筒状の外筒2を形成する外筒上部21と外筒下部22は、それぞれ複数、この例では3つの構成部材211,213,215,構成部材221,223,225により構成され、これら各構成部材211,213,215および構成部材221,223,225は、肉薄部212,214、肉薄部222,224により繋がれている。
【0040】
この肉薄部212,214、222,224は、この例では外筒上部21と外筒下部22に断面V字状の溝を円周方向に複数形成することで得ているが、円周方向に帯状または線状の肉厚が薄い部分を得ることができれば断面V字状でなくともU字状でもコ字状でもよい。この肉薄部は外筒2を折畳むために形成されたもので、外筒2の外周側と内周側において溝の形成された側が開くように折畳むようになっている。また、溝と反対側の肉薄部により各構成部材が接合されるので、溝あるいは肉薄部を外筒2の外周側と内周側の何れに形成するかにより、畳み方が決められる。
【0041】
図示例ではV溝が開くように畳む。外筒上部21では構成部材215の内周と構成部材213の内周とが対向し、構成部材213の外周と構成部材211の外周とが対向するように一度に折り畳まれる。同様に外筒下部22では構成部材225の内周と構成部材223の内周とが対向し、構成部材223の外周と構成部材221の外周とが対向するように一度に折り畳まれ、結局図6に示すように、全体が構成部材1つ分の幅の中に収まるように畳み込まれる。このように入れ子状に折畳むことで、折畳んだ状態が非常にコンパクトになるというメリットがある。
【0042】
上記のように入れ子状に折畳む為には、折畳んだときに外側に配置される部材と内側に配置される部材の大きさを異ならしめる必要があり、外側に配置される部材の内周と内側に配置される部材の外周とが略同じ大きさになるようにするとよい。また、このような各部材の外周の大きさの違いを設定することで、結果として展開したときに順次拡径して行く形状、つまりラッパ状に漸次口径が増大する形状に形成することができる。この実施例で用いたシリコーンエラストマー樹脂は弾性変形特性に優れていることから折り畳みも容易であることが分かった。
【0043】
中蓋3は外筒2の中間部200内周に一体的に接合した円盤状の部材であり、その中心部分から偏在した位置であって缶蓋開口部に対応する位置に飲料を注ぎ出す吐出口4が形成されている。中蓋3は外筒2の内部空間を上下に仕切り、装着した飲料缶の飲料が外部に漏れ出るのを防ぐ機能がある。また、飲用時に外筒上部21周囲や中蓋上部に滞留し、残存した飲料残留物を再び飲料缶内に戻す機能を有する。このため、飲料物が残留し難いように、中蓋周囲の外縁部31が上方に向けて湾曲した断面U字状に形成されている。
【0044】
外縁部の下部に相当する中蓋3と外筒2の接合部には中蓋外縁に円周方向に帯状凹部32が形成されていて、後述する飲料缶のリブを内部に吸収できるようになっている。前記帯状凹部32の下部には断続的突起32が形成され、前記飲用缶リブの下部の窪みに嵌合できるようになっている。また、帯状凹部を形成することにより中蓋外縁に肉薄部が形成され、これにより中蓋3が上下に撓み易くなっている。このように、中蓋3を撓み易くすることにより、後述するガイド筒5の下端部51が缶蓋開口部に弾性を持って押圧、挿入されるようになるという効果もある。
【0045】
ガイド筒5は吐出口4下部に形成され、その内周が吐出口開口形状に即して形成されて下部方向に突出している。その長さは外筒下部に飲料缶を装着したときに丁度ガイド筒下端部51が飲料缶上蓋102の開口部に挿入されるように設定される。また、飲料缶の種類により上蓋の位置が多少変動するが、上記のようにガイド筒下端部51が飲料缶上蓋102の開口部に挿入したときに中蓋3が撓むので、この撓みの程度により吸収することができる。
【0046】
図7は本発明の飲み口キャップ1を飲料缶であるビール缶に装着した状態を示した図である。飲み口キャップ1の詳細については図4を参照して説明する。これらの図から分かるように、飲料缶に装着すると、外筒下部22が丁度断面台形状に形成されたビール缶101上部に嵌り込み、嵌合した状態になっている。このとき、飲料缶101上端部に形成されているリブ106が丁度帯状凹部32の凹部内挿入されて配置し、さらにその下部にある突起32aがリブ106の下部にある窪みに嵌り込み、嵌合するように係合関係を形成している。このように、飲み口キャップを飲料缶に装着する上で、構成材料であるシリコーンエラストマー樹脂は、弾性変形に優れているため容易に飲用缶に装着し、密着させることができた。
【0047】
ガイド筒5は丁度飲料か開口部上に位置してこの開口部内部に挿入され、その内部空洞が開口部と連通して飲料缶内部の飲料の流路となっている。そして、ガイド筒下端部51は、前記開口部に中蓋の撓みによる押圧力によって挿入され、また開口部周囲と嵌合状態を形成している。
【0048】
このような飲み口キャップ1が装着された缶ビールを試飲したところ、吐出口4から流出した飲料であるビールは、中蓋3、外筒上部21の内周を伝って流れ、飲み口21aにあてがった口にスムーズに流れ込んだ。このときの触感はソフトで、飲料缶の金属的な感触とは対照的であった。また、コップに近い使用感で飲用することができ、突出口から流れ出た飲料もある程度整流されるので、違和感も少なく使用することができた。
【実施例2】
【0049】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。図8〜12は本発明の他の実施例である飲み口キャップの上蓋の外観を示した図であり、図8は側面図、図9は上面図、図10は底面図、図11図8のC−C’断面矢視図、図12は飲み口キャップを折畳んで上蓋内に収納した状態を示す断面図である。
【0050】
図示例の上蓋9は、短い円筒状の環状壁92と円盤状の底板91とを有する有底の底浅円筒状で丁度シャーレのような形状に形成されている。また、前記環状壁92にはその1/2程度の深さから底板との接合部に至る深さまで、平面図の縦横中心線上の位置に補強リブ93が形成されている。これら各構成要素は透明なポリ塩化ビニル樹脂により形成した。透明な樹脂で形成したことで、内部の視認性がよく、デザイン的にも優れたものになった。また、透明度が落ちたり、半透明でよい場合にはポリプロピレン樹脂等で形成してもよい。
【0051】
このような形状の上蓋9は、前記底板を上面として下向きに開口した状態で飲み口キャップ1の上部に嵌め込まれ、装着される。前記環状壁の内周径と外筒上部21の外周径は略同等か、環状壁の内周径が極僅かに大きく形成されている。このため、装着時には前記補強リブ93により外筒上部21の対応する部位がある程度弾性変形して嵌め込まれ、強固に嵌合する。この上蓋9を装着することで、飲み口キャップ1の上部開口部が塞がれ、飲料が漏出するのを防止できる。実際に装着した状態で飲料缶を横にして1分程度揺動させたが、飲料の漏出は認められなかった。
【0052】
図12は上蓋9内に折畳んだ状態の飲み口キャップ1を収容した状態を示した断面図である。このように折畳んだ飲み口キャップ1を内包することができるので、携行時や販売時にはこのような状態で取り扱うことができ、コンパクトになり、場所をらないという利点がある。
【0053】
上記実施例では折りたたみ式の飲み口の例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、折畳まないものでもよいし、その形状も単なる筒状でもよい。また、その材質もシリコーン樹脂や塩ビ、ポリプロピレン樹脂に限定されるものではなく、他の樹脂や材料と組み合わせてもよいし、置き換えてもよい。以上のように本発明によれば、飲料缶の金属の開口部を飲み口とするときの違和感を解消し、開口部から流出した脈流を整流して、通常のコップに近似した使用感を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の飲料缶の飲み口キャップは、種々の飲料の飲料缶に使用することができる。すなわち、イージーオープンエンド方式の飲料缶であれば特に限定されるものではないが、ステイオンタブ式の飲料缶への適用が好ましい。飲料についても、ビール、酎ハイ、日本酒、各種カクテル類などの酒類や、清涼飲料、果汁系飲料、スポーツドリンク、お茶、牛乳などの乳製品、スープなどの調理食品、健康飲料、薬効成分を含む飲料など種々の飲み物に使用できる。
【符号の説明】
【0055】
1 飲み口キャップ
2 外筒
3 中蓋
4 吐出口
5 ガイド筒
9 上蓋
21 外筒上部
22 外筒下部
31 中蓋外縁部
32 円周状凹部
32a 突起
51 ガイド筒下端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12