【実施例1】
【0017】
図1は本発明の作業機械の油圧駆動システムの第1の実施の形態を示す制御システムの概略図である。
【0018】
図1において、本実施の形態の油圧駆動システムは、メインの油圧ポンプ1及びパイロットポンプ3を含むポンプ装置50と、油圧ポンプ1から圧油が供給され、第1被駆動体である油圧ショベルのブーム205(
図2参照)を駆動するブームシリンダ4(第1油圧アクチュエータ)と、油圧ポンプ1から圧油が供給され、第2被駆動体である油圧ショベルのアーム206(
図2参照)を駆動するアームシリンダ8(第2油圧アクチュエータ)と、油圧ポンプ1からブームシリンダ4に供給される圧油の流れ(流量と方向)を制御する制御弁5(第1流量調整装置)と、油圧ポンプ1からアームシリンダ8に供給される圧油の流れ(流量と方向)を制御する制御弁9(第2流量調整装置)と、ブームの動作指令を出力し制御弁5を切り換える第1操作装置6と、アームの動作指令を出力し制御弁9を切り換える第2操作装置10とを備えている。油圧ポンプ1は図示しない他のアクチュエータにも圧油が供給されるように図示しない制御弁にも接続されているが、それらの回路部分は省略している。
【0019】
油圧ポンプ1は可変容量型であり、レギュレータ1aを備え、コントローラ27(後述)からの制御信号によってレギュレータ1aを制御することで油圧ポンプ1の傾転角(容量)が制御され、吐出流量が制御される。また、図示はしないが、レギュレータ1aは公知の如く、油圧ポンプ1の吐出圧が導かれ、油圧ポンプ1の吸収トルクが予め定めた最大トルクを超えないように油圧ポンプ1の傾転角(容量)を制限するトルク制御部を有している。油圧ポンプ1は圧油供給管路7a,11aを介して制御弁5,9に接続され、油圧ポンプ1の吐出油は制御弁5,9に供給される。
【0020】
流量調整装置である制御弁5,9は、それぞれ、ボトム側管路15,20又はロッド側管路13,21を介してブームシリンダ4及びアームシリンダ8のボトム側油室或いはロッド側油室に接続され、制御弁5,9の切換位置に応じて、油圧ポンプ1の吐出油は制御弁5,9からボトム側管路15,20又はロッド側管路13,21を介してブームシリンダ4及びアームシリンダ8のボトム側油室或いはロッド側油室に供給される。ブームシリンダ4から排出された圧油は、少なくともその一部が制御弁5からタンク管路7bを介してタンクに環流される。アームシリンダ8から排出された圧油は、その全てが制御弁9からタンク管路11bを介してタンクに環流される。
【0021】
なお、本実施の形態においては、油圧ポンプ1から各油圧アクチュエータ4,8に供給される圧油の流れ(流量と方向)を制御する流量調整装置を、それぞれ1つの制御弁5,9で構成する場合を例に説明するが、これに限るものではない。流量調整装置は、複数のバルブで供給する構成でも良いし、供給と排出を別々のバルブで構成するものでも良い。
【0022】
第1及び第2操作装置6,10は、それぞれ、操作レバー6a,10aとパイロット弁6b,10bとを有し、パイロット弁6b,10bは、それぞれ、パイロット管路6c,6d及びパイロット管路10c,10dを介して制御弁5の操作部5a,5b及び制御弁9の操作部9a,9bに接続されている。
【0023】
操作レバー6aがブーム上げ方向BU(図示左方向)に操作されると、パイロット弁6bは操作レバー6aの操作量に応じた操作パイロット圧Pbuを生成し、この操作パイロット圧Pbuはパイロット管路6cを介して制御弁5の操作部5aに伝えられ、制御弁5はブーム上げ方向(図示右側の位置)に切り換えられる。操作レバー6aがブーム下げ方向BD(図示右方向)に操作されると、パイロット弁6bは操作レバー6aの操作量に応じた操作パイロット圧Pbdを生成し、この操作パイロット圧Pbdはパイロット管路6dを介して制御弁5の操作部5bに伝えられ、制御弁5はブーム下げ方向(図示左側の位置)に切り換えられる。
【0024】
操作レバー10aがアームクラウド方向AC(図示右方向)に操作されると、パイロット弁10bは操作レバー10aの操作量に応じた操作パイロット圧Pacを生成し、この操作パイロット圧Pacはパイロット管路10cを介して制御弁9の操作部9aに伝えられ、制御弁9はアームクラウド方向(図示左側の位置)に切り換えられる。操作レバー10aがアームダンプ方向AD(図示左方向)に操作されると、パイロット弁10bは操作レバー10aの操作量に応じた操作パイロット圧Padを生成し、この操作パイロット圧Padはパイロット管路10dを介して制御弁9の操作部9bに伝えられ、操作弁9はアームダンプ方向(図示右側の位置)に切り換えられる。
【0025】
ブームシリンダ4のボトム側管路15とロッド側管路13との間、アームシリンダ8のボトム側管路20とロッド側管路21との間には、それぞれ、メイクアップ付きオーバーロードリリーフ弁12,19が接続されている。メイクアップ付きオーバーロードリリーフ弁12,19は、ボトム側管路15,20及びロッド側管路13,21の圧力が上がりすぎることにより油圧回路機器が損傷することを防ぐ機能と、ボトム側管路15,20及びロッド側管路13,21が負圧になることによりキャビテーションが発生することを低減する機能を有している。
【0026】
なお、本実施の形態は、ポンプ装置50が1つのメインポンプ(油圧ポンプ1)を含む場合のものであるが、ポンプ装置50は複数(例えば2つ)のメインポンプを含み、制御弁5,9に別々のメインポンプを接続し、ブームシリンダ4とアームシリンダ8に別々のメインポンプから圧油を供給するようにしても良い。
【0027】
図2は、本発明の作業機械の油圧駆動システムの第1の実施の形態を搭載した油圧ショベルを示す側面図である。
【0028】
油圧ショベルは下部走行体201と上部旋回体202とフロント作業機203を備えている。下部走行体201は左右のクローラ式走行装置201a,201a(片側のみ図示)を有し、左右の走行モータ201b,201b(片側のみ図示)により駆動される。上部旋回体202は下部走行体201上に旋回可能に搭載され、旋回モータ202aにより旋回駆動される。フロント作業機203は上部旋回体202の前部に俯仰可能に取り付けられている。上部旋回体202にはキャビン(運転室)202bが備えられ、キャビン202b内には上記第1及び第2操作装置6,10や図示しない走行用の操作ペダル装置等の操作装置が配置されている。
【0029】
フロント作業機203はブーム205(第1被駆動体)、アーム206(第2被駆動体)、バケット207を有する多関節構造であり、ブーム205はブームシリンダ4の伸縮により上部旋回体202に対して上下方向に回動し、アーム206はアームシリンダ8の伸縮によりブーム205に対して上下及び前後方向に回動し、バケット207はバケットシリンダ208の伸縮によりアーム206に対して上下及び前後方向に回動する。
【0030】
図1では、左右の走行モータ201b,201b、旋回モータ202a、バケットシリンダ208等の油圧アクチュエータに係わる回路部分を省略して示している。
【0031】
ここで、ブームシリンダ4は、第1操作装置6の操作レバー6aがブーム下げ方向(第1被駆動体の自重落下方向)BDに操作されたときに、ブーム205を含むフロント作業機203の重量に基づく自重落下により、ボトム側油室から圧油を排出しロッド側油室から圧油を吸入する油圧シリンダである。
【0032】
図1に戻り、本発明の油圧駆動システムは、上述した構成要素に加えて、ブームシリンダ4のボトム側管路15に配置され、ブームシリンダ4のボトム側油室から排出される圧油の流量を、制御弁5側(タンク側)とアームシリンダ8の圧油供給管路11a側(再生通路側)とに分配調整可能とする2位置3ポートの再生制御弁17と、再生制御弁17の一方の出口ポートに一端側が接続され他端側が圧油供給管路11aに接続される再生通路18と、ブームシリンダ4のボトム側管路15及びロッド側管路13からそれぞれ分岐し、ボトム側管路15及びロッド側管路13とを接続する連通通路14と、連通通路14に配置され、第1操作装置6のブーム下げ方向BDの操作パイロット圧Pbd(操作信号)に基づいて開弁し、ブームシリンダ4のボトム側油室の排出油の一部をブームシリンダ4のロッド側油室に再生して供給するとともに、ブームシリンダ4のボトム側油室をロッド側油室に連通させることでロッド側油室の負圧の発生を防止する連通制御弁16と、電磁比例弁22と、圧力センサ23,24,25,26と、コントローラ27とを備えている。
【0033】
再生制御弁17は、ブームシリンダ4のボトム側油室からの排出油をタンク側(制御弁5側)と再生通路18側とに流すことができるようタンク側通路(第1絞り)と再生側通路(第2絞り)とを有している。再生制御弁17のストロークは1個の電磁比例弁22(電気駆動手段)によって制御される。再生制御弁17の他方の出口ポートは、制御弁5のポートと接続している。本実施の形態においては、再生制御弁17が、ブームシリンダ4のボトム側油室から排出される圧油の少なくとも一部を再生通路18を介して油圧ポンプ1とアームシリンダ8の間に、その流量を調整して供給する再生流量調整手段と、ブームシリンダ4のボトム側油室から排出される圧油の少なくとも一部を、その流量を調整してタンクに排出する排出流量調整手段とを構成する。
【0034】
連通制御弁16は操作部16aを有し、第1操作装置6のブーム下げ方向BDの操作パイロット圧Pbdが操作部16aに伝えられることにより開弁する。
【0035】
圧力センサ23はパイロット管路6dに接続され、第1操作装置6のブーム下げ方向BDの操作パイロット圧Pbdを検出し、圧力センサ25はブームシリンダ4のボトム側管路15に接続され、ブームシリンダ4のボトム側油室の圧力を検出し、圧力センサ26はアームシリンダ8側の圧油供給管路11aに接続され、油圧ポンプ1の吐出圧を検出する。圧力センサ24は、第2操作装置10のパイロット管路10dに接続され、第2操作装置10のアームダンプ方向の操作パイロット圧Padを検出する。
【0036】
コントローラ27は、圧力センサ23,24,25,26からの検出信号123,124,125,126を入力し、それらの信号に基づいて所定の演算を行い、電磁比例弁22とレギュレータ1aに制御指令を出力する。
【0037】
電気駆動手段としての電磁比例弁22はコントローラ27からの制御指令により動作する。電磁比例弁22は、パイロット油圧源であるパイロットポンプ3から供給された圧油の1次圧を所望の圧力(2次圧)に変換して再生制御弁17の操作部17aに出力し、再生制御弁17のストロークを制御することで開度(開口面積)を制御する。
【0038】
図3は、本発明の作業機械の油圧駆動システムの第1の実施の形態を構成する再生制御弁の開口面積特性を示す特性図である。
図3の横軸は再生制御弁17のスプールストロークを示し、縦軸は開口面積を示している。
【0039】
図3において、スプールストロークが最小の場合(ノーマル位置にある場合)は、タンク側通路が開いており開口面積は最大であり、再生側通路が閉じ開口面積はゼロである。ストロークを徐々に増やしてゆくと、タンク側通路の開口面積が徐々に減少し、再生側通路が開いて開口面積が徐々に増加してゆく。ストロークを更に増加させると、タンク側通路が閉じ(開口面積がゼロとなり)、再生側通路の開口面積は更に増加してゆく。このように構成されている結果、スプールストロークが最小の場合は、ブームシリンダ4のボトム側油室から排出された圧油は再生されることなく、全量が制御弁5側に流入し、ストロークを徐々に右に動かしていくと、ブームシリンダ4のボトム側油室から排出された圧油の一部が再生通路18に流入する。また、ストロークを調整することにより、タンク側通路と再生側通路18の開口面積を変化させることができ、再生流量を制御することができる。
【0040】
次に、ブーム下げのみを行う場合の動作の概要について説明する。
図1において、第1操作装置6の操作レバー6aがブーム下げ方向BDに操作された場合、第1操作装置6のパイロット弁6bから発生した操作パイロット圧Pbdは制御弁5の操作部5bと連通制御弁16の操作部16aに入力される。それにより制御弁5は図示左側の位置に切換られ、ボトム管路15がタンク管路7bと連通することにより、ブームシリンダ4のボトム側油室から圧油がタンクに排出され、ブームシリンダ4のピストンロッドが縮小動作(ブーム下げ動作)を行う。
【0041】
さらに連通制御弁14が図示下側の連通位置に切換られることにより、ブームシリンダ4のボトム側管路15をロッド側管路13に連通し、ブームシリンダ4のボトム側油室の排出油の一部をブームシリンダ4のロッド側油に供給する。このことにより、ロッド側油室での負圧の発生を防止すると共に、油圧ポンプ1から圧油を供給する必要がなくなるので、油圧ポンプ1の出力が抑制され燃費を低減できる。
【0042】
次に、ブーム下げとアームの駆動を同時に行う場合の動作の概要について説明する。なお、原理としてはアームダンプをする場合とクラウドする場合で同様のため、アームダンプ動作を例に説明する。
【0043】
第1操作装置6の操作レバー6aがブーム下げ方向BDに操作され、同時に第2操作装置10の操作レバー10aがアームダンプ方向ADに操作された場合、第1操作装置6のパイロット弁6bから発生した操作パイロット圧Pbdは制御弁5の操作部5bと連通制御弁16の操作部16aに入力される。それにより制御弁5は図示左側の位置に切換られ、ボトム管路15がタンク管路7bと連通することにより、ブームシリンダ4のボトム側油室から圧油がタンクに排出され、ブームシリンダ4のピストンロッドが縮小動作(ブーム下げ動作)を行う。
【0044】
第2操作装置10のパイロット弁10bから発生した操作パイロット圧Padは制御弁9の操作部9bに入力される。それにより制御弁9は切換られ、ボトム管路20がタンク管路11bと連通しかつロッド管路21が圧油供給管路11aと連通することにより、アームシリンダ8のボトム側油室の圧油はタンクに排出され、油圧ポンプ1からの吐出油がアームシリンダ8のロッド側油室に供給される。この結果、アームシリンダ8のピストンロッドは縮小動作を行う。
【0045】
コントローラ27には圧力センサ23,24,25,26からの検出信号123,124,125,126が入力され、後述する制御ロジックによって、電磁比例弁22と油圧ポンプ1のレギュレータ1aに制御指令を出力する。
【0046】
電磁比例弁22は制御指令に応じた制御圧力(2次圧)を生成し、この制御圧力により再生制御弁17は制御され、ブームシリンダ4のボトム側油室から排出された圧油の一部或いは全部が再生制御弁17を介しアームシリンダ8に再生して供給される。
【0047】
油圧ポンプ1のレギュレータ1aは制御指令に基づいて油圧ポンプ1の傾転角を制御し、アームシリンダ8の目標速度を保つよう適切にポンプ流量を制御する。
【0048】
次に、コントローラ27の制御機能について説明する。コントローラ27は、概略、以下の2つの機能を有している。
【0049】
まず、コントローラ27は、第1操作装置6がブーム205(第1被駆動体)の自重落下方向であるブーム下げ方向BDに操作され、これと同時に第2操作装置10が操作されたとき、ブームシリンダ4のボトム側油室の圧力が油圧ポンプ1とアームシリンダ8との間の圧油供給管路11aの圧力より高い場合に再生制御弁17をノーマル位置から切り換えることにより、ブームシリンダ4のボトム側油室からの排出油がアームシリンダのロッド側油室に再生される。このとき、ブームシリンダ4のボトム側油室の圧力と油圧ポンプ1とアームシリンダ8との間の圧油供給管路11aの圧力との差圧を算出し、この差圧に応じて再生制御弁17の開度を制御する。
【0050】
具体的には、差圧が小さいときには再生制御弁17のストロークを小さくして再生側通路の開口面積を絞るとともに、タンク側通路の開口面積を広くする。差圧が大きくなるに従って、再生側通路の開口面積を広くし、タンク側通路の開口面積を絞る。差圧が一定値以上に大きいときに、再生側通路の開口面積を最大値として、タンク側開口を閉止するように制御する。このように制御することで、再生制御弁17の切換ショックを抑制する。
【0051】
ブーム下げ操作とアーム駆動を同時に行った場合、動き始めは差圧が小さく、時間が経つにつれて差圧が大きくなる。そのため、差圧に応じて再生側通路の開口面積を徐々に開くことにより、切換ショックが抑えられ、良好な操作性を実現できる。
【0052】
さらに、差圧が小さい場合は、再生側開口を広くしても再生流量が少ないことから、ブームシリンダのピストンロッドの速度が遅くなることがある。そのため、差圧が小さい場合は、タンク側通路の開口面積を広くすることで、ボトム側油室からの排出流量を増加させ、ブームシリンダのピストンロッドの速度をオペレータの望む速度にするように制御している。一方、差圧が大きい場合は、再生流量が十分多くなることから、タンク側通路の開口を絞ることで、ブームシリンダのピストンロッドの速度が速くなり過ぎることを防止している。
【0053】
また、コントローラ27は、再生制御弁17を制御してブームシリンダ4のボトム側油室から油圧ポンプ1とアームシリンダ8との間の圧油供給管路11aに圧油を供給するとき、ブームシリンダ4のボトム側油室から圧油供給管路11aに供給される再生流量分、油圧ポンプ1の容量を減少させるように制御する。
【0054】
このことにより、油圧アクチュエータから排出された圧油を他の油圧アクチュエータの駆動に再生する場合としない場合や、圧油の再生流量の多少に関わらず、同様のアクチュエータ速度(ブームシリンダ4のピストンロッド速度)を確保することができる。この結果、いずれの場合でも、同様のブームの落下速度を実現できる。
【0055】
図4は、本発明の作業機械の油圧駆動システムの第1の実施の形態を構成するコントローラのブロック図である。
【0056】
図4に示すように、コントローラ27は、加算器130、関数発生器131、関数発生器133、関数発生器134、関数発生器135、乗算器136、乗算器138、関数発生器139、乗算器140、乗算器142、加算器144、出力変換部146を有している。
【0057】
図4において、検出信号123は第1操作装置6の操作レバー6aのブーム下げ方向の操作パイロット圧Pbdを圧力センサ23により検出した信号(レバー操作信号)であり、検出信号124は第2操作装置10の操作レバー10aのアームダンプ方向の操作パイロット圧Padを圧力センサ24により検出した信号(レバー操作信号)であり、検出信号125はブームシリンダ4のボトム側油室の圧力(ボトム側管路15の圧力)を圧力センサ25により検出した信号(ボトム圧信号)であり、検出信号126は油圧ポンプ1の吐出圧(圧油供給管路11aの圧力)を圧力センサ26により検出した信号(ポンプ圧信号)である。
【0058】
加算器130には、ボトム圧信号125及びポンプ圧信号126が入力され、ボトム圧信号125とポンプ圧信号126の偏差(ブームシリンダ4のボトム側油室の圧力と油圧ポンプ1の吐出圧との差圧)が求められ、この差圧信号が関数発生器131と関数発生器132に入力される。
【0059】
関数発生器131は、加算器130で求めた差圧信号に応じた再生制御弁17の再生側通路の開口面積を算出するものであり、
図3に示した再生制御弁17の開口面積特性を基に特性が設定されている。具体的には、差圧が小さい場合には、再生制御弁17のストロークを小さくして再生側通路の開口面積を絞り、タンク側通路の開口面積を広げる。一方差圧が大きい場合には、再生通路側の開口面積を広くし、差圧が一定値に達すると再生側通路の開口面積を最大として、タンク側通路の開口を閉じるように制御する。
【0060】
関数発生器133は、加算器130で求めた差圧信号に応じた油圧ポンプ1の低減流量(以下ポンプ低減流量という)を求めるものである。関数発生器131の特性により差圧が大きくなるほど再生側通路の開口面積が大きくなり再生流量が増加する。このことから、差圧が大きくなるほど、ポンプ低減流量も多くなるように設定している。
【0061】
関数発生器134は、第1操作装置6のレバー操作信号123に応じて乗算器で用いる係数を算出するものであり、レバー操作信号123が0のときに最小値0を出力し、レバー操作信号123の増加にともなって出力を増大させ最大値として1を出力する。
【0062】
乗算器136は、関数発生器131で算出された開口面積と関数発生器134で算出された値とを入力し、乗算値を開口面積として出力する。ここで、第1操作装置6のレバー操作信号123が小さい場合は、ブームシリンダ4のピストンロッド速度を遅くする必要があるので、再生流量も減らすことが要求される。このため、関数発生器134は0以上1以下の範囲から小さい値を出力し、関数発生器131で算出された開口面積をさらに小さな値として出力する。
【0063】
一方、第1操作装置6のレバー操作信号123が大きい場合は、ブームシリンダ4のピストンロッド速度を速くする必要があるので、再生流量も増加できる。このため、関数発生器134は0以上1以下の範囲から大きい値を出力し、関数発生器131で算出された開口面積の減少量を減らし、大きな開口面積の値を出力する。
【0064】
乗算器138は、関数発生器133で算出されたポンプ低減流量と関数発生器134で算出された値とを入力し、乗算値をポンプ低減流量として出力する。ここで、第1操作装置6のレバー操作信号123が小さい場合は、再生流量も少ないので、ポンプ低減流量も少なく設定することが要求される。このため、関数発生器134は0以上1以下の範囲から小さい値を出力し、関数発生器133で算出されたポンプ低減流量をさらに小さな値として出力する。
【0065】
一方、第1操作装置6のレバー操作信号123が大きい場合は、再生流量が多くなり、ポンプ低減流量も大きく設定する必要がある。このため、関数発生器134は0以上1以下の範囲から大きい値を出力し、関数発生器133で算出されたポンプ低減流量の減少量を減らし、大きなポンプ低減流量の値を出力する。
【0066】
関数発生器135は、第2操作装置10のレバー操作信号124に応じて乗算器で用いる係数を算出するものであり、レバー操作信号124が0のときに最小値0を出力し、レバー操作信号124の増加にともなって出力を増大させ最大値として1を出力する。
【0067】
乗算器140は、乗算器136で算出された開口面積と関数発生器135で算出された値とを入力し、乗算値を開口面積として出力する。ここで、第2操作装置10のレバー操作信号124が小さい場合は、アームシリンダ4のピストンロッド速度を遅くする必要があるので、再生流量も減らすことが要求される。このため、関数発生器135は0以上1以下の範囲から小さい値を出力し、乗算器136で補正された開口面積をさらに小さな値として出力する。
【0068】
一方、第2操作装置10のレバー操作信号124が大きい場合は、アームシリンダ4のピストンロッド速度を速くする必要があるので、再生流量も増加できる。このため、関数発生器135は0以上1以下の範囲から大きい値を出力し、乗算器136で補正された開口面積の減少量を減らし、大きな開口面積の値を出力する。
【0069】
乗算器142は、乗算器138で算出されたポンプ低減流量と関数発生器135で算出された値とを入力し、乗算値をポンプ低減流量として出力する。ここで、第2操作装置10のレバー操作信号124が小さい場合は、再生流量も少ないので、ポンプ低減流量も少なく設定することが要求される。このため、関数発生器135は0以上1以下の範囲から小さい値を出力し、乗算器138で補正されたポンプ低減流量をさらに小さな値として出力する。
【0070】
一方、第2操作装置10のレバー操作信号124が大きい場合は、再生流量が多くなり、ポンプ低減流量も大きく設定する必要がある。このため、関数発生器135は0以上1以下の範囲から大きい値を出力し、乗算器138で補正されたポンプ低減流量の減少量を減らし、大きなポンプ低減流量の値を出力する。
【0071】
なお、ブームシリンダ4のボトム側油室からの排出油を、アームシリンダ8のくどうに再生する場合としない場合とで、ブームシリンダ4のピストンロッド速度が大きく変わらないように、関数発生器131、133、134、135の各設定テーブルを調整することが望ましい。また、ブームシリンダ4のボトム側油室からの排出油をアームシリンダ8に再生する動作は、主に水平引き動作であるため、このときのブームシリンダ8のボトム側油室の圧力とアームシリンダ8のロッド側油室の圧力とは、ある程度の決まった傾向の値になる。このため、水平引き動作時の各部圧力を採取して、圧力波形を分析して、上述の関数発生器の設定テーブルを調整すれば、再生制御弁17の開口面積を最適な値に設定できる。
【0072】
関数発生器139は、第2操作装置10のレバー操作信号124に応じてポンプ要求流量を算出するものである。レバー操作信号124が0の場合には、最低限の流量を油圧ポンプ1から出力するような特性が設定されている。これは、第2操作装置10の操作レバー10aを入れたときの応答性を良くすることと、油圧ポンプ1の焼付きを防止することを目的としてしる。また、レバー操作信号124の増加に伴って油圧ポンプ1の吐出流量を増加させ、アームシリンダ8に流入する圧油の流量を増やす。このことにより、操作量に応じたアームシリンダ8のピストンロッド速度を実現する。
【0073】
加算器144には、乗算器142で算出されたポンプ低減流量と関数発生器139で算出されたポンプ要求流量とが入力され、ポンプ要求流量からポンプ低減流量すなわち再生流量が減算されて目標ポンプ流量が算出される。
【0074】
出力変換部146には、乗算器140からの出力と加算器144からの出力が入力され、それぞれ電磁比例弁22への電磁弁指令222及び油圧ポンプ1のレギュレータ1aへの傾転指令201が出力される。
【0075】
このことにより、電磁比例弁22は、パイロットポンプ3から供給された圧油の1次圧を所望の圧力(2次圧)に変換して再生制御弁17の操作部17aに出力し、再生制御弁17のストロークを制御することで開度(開口面積)を制御する。また、レギュレータ1aが油圧ポンプ1の傾転角(容量)を制御することで、吐出流量が制御される。この結果、油圧ポンプ1は、ブームシリンダ4のボトム側から圧油供給管路11aに供給される再生流量分、容量を減少させるように制御される。
【0076】
次に、コントローラ27の動作について説明する。
【0077】
第1操作装置6の操作レバー6aをブーム下げ方向BDに操作することにより、圧力センサ23により検出された操作パイロット圧Pbdの信号はレバー操作信号123としてコントローラ27に入力される。第2操作装置10の操作レバー10aをアームダンプ方向ADに操作することにより、圧力センサ24により検出された操作パイロット圧Padの信号はレバー操作信号124としてコントローラ27に入力される。また、圧力センサ25,26により検出されたブームシリンダ4のボトム側油室の圧力、油圧ポンプ1の吐出圧の各信号はボトム圧信号125、ポンプ圧信号126としてコントローラ27に入力される。
【0078】
ボトム圧信号125とポンプ圧信号126とが加算器130に入力され、差圧信号を算出する。差圧信号は関数発生器131と関数発生器133に入力され、それぞれ再生制御弁17の再生側通路の開口面積とポンプ低減流量とを算出する。
【0079】
レバー操作信号123が関数発生器134に入力され、関数発生器134は、レバー操作量に応じた補正信号を算出し、乗算器136と乗算器138へ出力する。乗算器136は関数発生器131から出力される再生側通路の開口面積を補正し、乗算器138は関数発生器133から出力されるポンプ低減流量を補正する。
【0080】
同様にレバー操作信号124が関数発生器135に入力されると、関数発生器135は、レバー操作量に応じた補正信号を算出し、乗算器140と乗算器142へ出力する。乗算器140は乗算器136から出力される補正された再生側通路の開口面積を更に補正して出力変換部146へ出力し、乗算器142は乗算器138から出力される補正されたポンプ低減流量を更に補正して加算器144へ出力する。
【0081】
出力変換部146は、補正された再生側通路の開口面積を電磁弁指令222に変換し、電磁比例弁22に出力する。このことにより再生制御弁17のストロークが制御される。この結果、再生制御弁17はブームシリンダ4のボトム側油室の圧力と油圧ポンプ1の吐出圧との差圧に応じた開口面積に設定され、ブームシリンダ4のボトム側油室からの排出油がアームシリンダ8へ再生される。
【0082】
レバー操作信号124が関数発生器139に入力され、関数発生器139は、レバー操作量に応じたポンプ要求流量を算出して加算器144へ出力する。
【0083】
演算されたポンプ要求流量とポンプ低減流量とが加算器144へ入力され、ポンプ要求流量からポンプ低減流量すなわち再生流量を減算して目標ポンプ流量を算出して出力変換部146へ出力する。
【0084】
出力変換部146は、この目標ポンプ流量を油圧ポンプ1の傾転指令201に変換し、レギュレータ1aに出力する。このことにより、アームシリンダ8は第2操作装置10の操作信号(操作パイロット圧Pad)に応じた所望の速度に制御されるとともに、再生流量分油圧ポンプ1の吐出流量を低減することにより、油圧ポンプ1を駆動するエンジンの燃費を低減し、省エネルギ化を図ることが可能となる。
【0085】
以上の動作により、再生制御弁17は、ブームシリンダ4のボトム側油室の圧力と油圧ポンプ1の吐出圧との差圧に応じて、再生側通路の開口面積を徐々に増加させていくので、切換ショックが抑制され、良好な操作性が実現できる。また、上述した差圧と、第1操作装置6の操作量と、第2操作装置10の操作量とがいずれも小さいときには、再生制御弁17の再生側通路の開口面積を小さく設定し、タンク側通路の開口面積を大きく設定するので、再生流量が少なくても、タンク側流量が多くなる。このことにより、オペレータの望むブームシリンダのピストンロッド速度が確保できる。
【0086】
一方、差圧と、第1操作装置6の操作量と、第2操作装置10の操作量とが大きいときには、再生制御弁17の再生側通路の開口面積を大きく設定し、タンク側通路の開口面積を小さく設定するので、ブームシリンダのピストンロッド速度が速くなり過ぎることを抑制し、オペレータの望むブームシリンダのピストンロッド速度を確保できる。また、再生流量に応じて油圧ポンプ1の吐出流量を低減することにより、アームシリンダ8のピストンロッド速度に関してもオペレータの望む速度を確保できる。
【0087】
このことにより、油圧アクチュエータから排出された圧油を他の油圧アクチュエータの駆動に再生する場合としない場合や、圧油の再生流量の多少に関わらず、同様のアクチュエータ速度(ブームシリンダ4のピストンロッド速度)を確保することができる。この結果、いずれの場合でも、同様のブームの落下速度を実現できる。
【0088】
上述した本発明の作業機械の油圧駆動システムの第1の実施の形態によれば、油圧アクチュエータ4から排出された圧油を他の油圧アクチュエータ8の駆動に再生する場合としない場合とで、同様のアクチュエータ速度を確保でき、再生回路用の電磁比例弁22(電気駆動手段)を1個で構成することができる。この結果、良好な操作性が実現できると共に、低コスト化と搭載性の向上が図れる。