(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に開示される歯飛び検出の技術は、減速機の入力側の回転軸と出力側の回転軸との相対回転量を1つのエンコーダで検出するために、アクチュエータのハウジング内において、入力軸と、出力軸に接続したハウジングとの間にエンコーダを設ける構成としている。そのため、アクチュエータの構造が複雑化し、大型化するという問題がある。また、特許文献1に開示される技術は、減速機の回転軸のトルクを推定するものであり、減速機の歯飛びについては何らの開示もされていない。
【0008】
ロボットの腕、脚、ハンドなどの関節の駆動に用いられる回転駆動装置において、モータに対する負荷の点から見て、稼働対象である負荷や、腕、脚、ハンド等の機構要素と共に、減速機は負荷重量として作用する。
【0009】
高速で円滑な動作を行うにはモータが担う負荷を軽減する必要があることから、減速機は軽量であることが求められる。
【0010】
また、関節動作の可動範囲を広くするには、他の機構要素と干渉しないことが求められ、このためには減速機は小型であることが求められる。
【0011】
そこで、本発明は前記した従来の問題点を解決し、回転駆動装置の減速機の歯飛び検出を軽量で小型の装置構成で実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、減速機のモータ側の回転軸と減速機の負荷側の回転軸のそれぞれにエンコーダを設け、各エンコーダによって減速機に対してモータ側の回転軸の回転情報と、減速機に対して負荷側の回転軸の回転情報とを検出する。2つの回転情報の差分値は、減速機のモータ側の回転軸と負荷側の回転軸との回転角度の差に相当する。
【0013】
減速機が、弾性要素を有する減速機構であり、バックラッシュによる回転角度差を無視あるいは誤差許容範囲内とすることができる場合には、2つのエンコーダから得られる回転情報の差分値は減速機の回転軸の変形量(ねじれ量)に相当し、この差分値に減速機のねじり剛性定数K(バネ定数)を乗算することによって、減速機に加わるトルク値を推定することができる。
【0014】
バックラッシュが少なく弾性要素を有する減速機として波動歯車装置(ハーモニックドライブ(登録商標))が知られている。
【0015】
本発明の回転駆動装置は、減速機を挟んで入力側(モータ側)の回転軸に設けたエンコーダと出力側(負荷側)の回転軸に設けたエンコーダの両出力の差分値に基づいて減速機の歯飛びの発生を検出する。エンコーダは、減速機内に限らず減速機の外側に設ける構成としてもよい。
【0016】
歯飛び検出に用いる信号はエンコーダの出力であり、エンコーダは減速機を挟む両側の回転軸の回転を検出する箇所であれば減速機内に設ける必要はないため、回転駆動装置を小型化することができる。
【0017】
また、エンコーダは、検出対象の回転軸に対してエンコーダユニットを単に取り付けるだけで構成することができるため、前記した特許文献2の出力軸に接続したハウジングが要している出力軸の回転を入力軸側に伝達するための特殊な機構を不要とすることができるため、回転駆動装置を軽量化することができる。
【0018】
本発明の回転駆動装置は、モータと、モータと負荷との間に配置してモータ側の回転軸の回転を減速し、減速した回転を負荷側の回転軸に伝達する減速機と、減速機のモータ側の回転軸の回転を検出する第1エンコーダと、減速機の負荷側の回転軸の回転を検出する第2エンコーダと、第1エンコーダの出力を減速機の減速比で除算して得られる第1検出値と第2エンコーダの出力から得られる第2検出値との差分値を求める差分検出部と、差分値に基づいて減速機の歯飛びの発生を検出する歯飛び検出部とを備える。
【0019】
減速機は、波動歯車装置(ハーモニックドライブ(登録商標))が望ましいが、波動歯車装置に限られるものではない。波動歯車装置(ハーモニックドライブ(登録商標))は、波動発生器(ウエーブジェネレータ)、楕円のフレキシブルギヤ(フレクスプライン)、真円のリングギヤ(サーキュラスプライン))からなる。リングギヤは、概してリング状をなして内周にフレキシブルギヤよりもやや多い複数の歯が形成され、フレキシブルギヤは、その周壁部が波動発生器に外嵌して楕円状に弾性変形され、楕円の長軸方向の2箇所でリングギヤと噛合う構成である。波動発生器が1回転すると、フレキシブルギヤとリングギヤは歯数の差分だけ相対回転することによって減速が行われる。
【0020】
第1エンコーダは減速機のモータ側の回転軸の回転を検出し、第2エンコーダは減速機の負荷側の回転軸の回転を検出する。エンコーダは、例えば、インクリメント型あるいはアブソリュート型のロータリエンコーダ、又はポテンショメータを用いることができ、回転軸の回転に伴って検出信号を出力する。又、回転系の検出手段の他に、リニアエンコーダ等の直線系の検出手段を用いる構成とすることもできる。リニアエンコーダを用いる場合には、例えば、回転軸の回転量を直線運動に変換して得られる直線変位、あるいは回転軸の回転に伴って直線状に変位する部位の直線変位をリニアエンコーダで測定する。
【0021】
インクリメント型エンコーダの検出信号は回転軸の回転角度に対応した計数値となる。したがって、第1エンコーダおよび第2エンコーダの両方にインクリメント型エンコーダを用いた場合には、インクリメント型の第1エンコーダはモータ側の回転軸の回転角度に対応した計数値を出力し、インクリメント型の第2エンコーダは負荷側の回転軸の回転角度に対応した計数値を出力する。
【0022】
一方、アブソリュート型エンコーダの検出信号は回転軸の回転角度に対応した角度値となる。したがって、第1エンコーダおよび第2エンコーダの両方にアブソリュート型エンコーダを用いた場合には、アブソリュート型の第1エンコーダはモータ側の回転軸の回転角度に対応した角度値を出力し、アブソリュート型の第2エンコーダは負荷側の回転軸の回転角度に対応した角度値を出力する。
【0023】
減速機のモータ側および負荷側に設けるエンコーダは、前記したように、両側ともインクリメント型エンコーダ又はアブソリュート型エンコーダとする構成の他に、一方をインクリメント型エンコーダとし、他方をアブソリュート型エンコーダとする構成としてもよい。減速機の両側で異なるタイプのエンコーダを設ける構成において、モータ側にインクリメント型エンコーダを設け負荷側にアブソリュート型エンコーダを設ける構成、あるいはモータ側にアブソリュート型エンコーダを設け、負荷側にインクリメント型エンコーダを設ける構成の何れの構成としても良い。
【0024】
減速機は、モータ側の回転軸の回転を減速して負荷側の回転軸に伝達するため、第2エンコーダの出力の計数値は第1エンコーダの出力の計数値又は角度値よりも減速機の減速比Mで除算した値である。ここで、減速機の減速比Mは、入力側の回転軸がM回転する間に出力側の回転軸が1回転することを意味している。
【0025】
減速機の減速比によって、第2エンコーダの計数値、又は角度値は第1エンコーダの計数値の1/Mとなっているため、減速機の回転軸においてモータ側と負荷側の回転数又は角度値を比較するには、第2エンコーダの計数値又は角度値を基準としたとき第1エンコーダの計数値を1/Mとする必要がある。そこで、第1エンコーダの計数値又は角度値と第2エンコーダの計数値又は角度値とを同じレベルで比較するために、第1エンコーダの出力を減速機の減速比Mで除算して第2エンコーダの出力と同じレベルに換算する。
【0026】
差分検出部は、減速機の減速比で除算して得られる第1エンコーダの第1検出値と第2エンコーダの出力から得られる第2検出値との差分値を求める。この差分値は、モータ側の回転軸と負荷側の回転軸の回転角度の差であり、減速機がバックラッシュを含まない場合には、通常は減速機の弾性に伴うねじれ分を表し、減速機のトルクに対応するものである。
【0027】
ここで、通常とは減速機に歯飛びが生じていない場合である。減速機に歯飛びが生じている場合には、差分値は主に歯飛びによる回転軸の空回り角度を表すことになる。歯飛びが生じていない場合の差分値は回転軸のトルクに線形的に変化するが、歯飛びが生じた場合の差分値は回転軸のトルクに対して非線形に急峻的に大きな変化量で変化する。
【0028】
本発明は、この差分値の変化に基づいて歯飛びを検出するものであり、差分値と予め定めた閾値とを比較し、差分値と閾値との比較に基づいて減速機に歯飛びが発生したことを検出する。
【0029】
歯飛びを検出する閾値は、減速機に歯飛びが発生したときの差分値を予め実測しておき、この実測値に基づいてマージン分を考慮して設定することができる。
【0030】
[歯飛びの方向判定]
本発明の歯飛び検出部は、減速機の入力側(モータ側)の回転軸と出力側(負荷側)の回転軸の回転をそれぞれ第1エンコーダと第2エンコーダで検出する構成とすることによって、その検出値の差分値に基づいて、プラス側に歯飛びしたか、あるいはマイナス側に歯飛びしたかを判定する。ここで、プラス側の歯飛びとはモータ側の回転数が負荷側の回転数より大きい場合に生じる歯飛びであり、マイナス側の歯飛びとは負荷側の回転数がモータ側の回転数より大きい場合に生じる歯飛びである。
【0031】
第1エンコーダの検出値から第2エンコーダの検出値を差し引いた差分値がプラスであり、モータ側の回転数が負荷側の回転数よりも歯飛びが生じるほど十分に大きくなる例として、例えば、急激に大きなトルクを印加することによってモータが正方向に空回りして歯飛びが生じる場合や、モータからのトルク印加によって回転を加速している間に、負荷側に大きな負荷が生じることによって、モータが正方向に空回りして歯飛びが生じる場合がある。
【0032】
また、第1エンコーダの検出値から第2エンコーダの検出値を差し引いた差分値がマイナスであり、モータ側の回転数が負荷側の回転数よりも歯飛びが生じるほど十分に小さくなる例として、例えば、高速で正方向に回転しているときに回転にブレーキを掛ける際に、回転側から急激に大きなトルクを印加することによってモータが負方向(ブレーキ方向)に空回りして歯飛びが生じる場合や、高速で負方向に回転している際に、負荷側の回転軸の回転を止め、モータ側が負方向に空回りして歯飛びする場合がある。
【0033】
上記したプラス側の歯飛びかあるいはマイナス側の歯飛びかを判別する構成として歯飛び検出部を備える。歯飛び検出部は、第1エンコーダの出力である第1検出値から第2エンコーダの出力である第2検出値を引いた減算値を差分値とし、この差分値と比較する閾値として、第1検出値が第2検出値よりも大きいとき又は以上であるときのプラスの差分値と比較するための正の第1閾値と、第1検出値が第2検出値よりも小さいとき又は以下であるときのマイナスの差分値と比較するための負の第2閾値を備える。
【0034】
差分値が正方向で正の第1閾値よりも大きいとき又は以上であるときに、減速機はプラス側の歯飛びしたことを検出し、差分値が負方向で負の第2閾値よりも小さいとき又は以下であるときに、減速機はマイナス側の歯飛びしたことを検出する。
【0035】
ここで、差分値と閾値との比較において、大きいときおよび小さいときは閾値を含まないものとし、以上又は以下は閾値を含むものとし、差分値が閾値と同じ値であるときにおいて、歯飛びとするかあるいは歯飛びではないとするかの検出の判定は、判定結果が重複すること無く何れかに定める。
【0036】
上記したプラス側の歯飛びおよびマイナス側の歯飛びの検出は、減速機のモータ側の回転軸と減速機の負荷側の回転軸が同方向に回転する場合、および逆方向に回転である場合の何れにおいても同様に行うことができる。
【0037】
差分値が第1閾値と第2閾値で挟まれる範囲にあるときは、減速機に歯飛びは生じていないと判定する。
【0038】
[歯飛び検出に基づく補正]
本発明の回転駆動装置は、歯飛び検出部による歯飛び検出に基づいて、歯飛びによって生じる回転駆動装置におけるずれを補正処理することができる。補正処理は、差分検出部が出力する差分値を補正する他、差分検出部に入力する前にエンコーダの計数値や角度値等の検出値を補正することによって行うことができる。
【0039】
回転駆動装置を駆動するモータに対する電流供給を制御する回転駆動制御系において、歯飛び検出部による歯飛び検出に基づいて差分値、あるいはエンコーダの計数値や角度値等の検出値を補正し、この補正処理に基づいてトルクや回転角度を補正することができ、補正したトルクを帰還してモータのトルク制御を行い、補正した回転角度を帰還して角度制御を行うことができる。
【0040】
負荷側の実値は第2エンコーダの検出値から得ることができるため、歯飛び検出に基づいて第2エンコーダの検出値を補正する意義は少ない。
【0041】
これに対して、本願発明の構成において、モータ側に設ける第1エンコーダとして高精度のエンコーダを用い、負荷側に設ける第2エンコーダとして、差分値から歯飛び検出ができる程度の低精度のエンコーダを用いた構成とすることによって、歯飛び検出に基づいて高精度のエンコーダの検出値を補正して負荷側の回転数を高精度で求めることができる。この構成によれば、第2エンコーダを簡易で安価なエンコーダとすることができるため、回路駆動装置のコストを抑えることができる。
【0042】
また、本願発明の構成によれば、第1エンコーダの検出値を補正することもでき、この場合にはモータ側の回転軸の回転情報を補正することができる。この構成によれば、モータ側において回転軸の回転数や回転角度の目標値が設定されている場合には、補正した回転情報に基づいて目標値とのずれを求めることができる。
【0043】
(歯飛び検出に基づく差分値の補正、回転駆動制御系)
本発明の回転駆動装置は、歯飛び検出に基づいて差分値を補正する差分値補正部を備える。差分値補正部は、差分値から歯飛びした歯数に対応する差分補正量を求め、求めた差分補正量により差分値を補正して補正差分値を求める。
【0044】
回転駆動装置を駆動するモータに対する電流供給を制御する回転駆動制御系において、補正差分値を角度変換して得られる補正回転角度差分値に減速機のねじり剛性定数Kを乗算して推定トルク値を推定するトルク推定部と、補正差分値に基づいて負荷側の回転軸の回転角度を補正する角度補正部と、角度指令値と負荷側の回転軸の補正した回転角度との差分に基づいて負荷側の回転軸の回転角度を角度指定値に近づけるトルク指令値を生成する角度制御部と、トルク指令値と推定トルク値との差分に基づいて、推定トルク値をトルク指令値に近づける電流指令値を生成するトルク制御部と、電流指令値に基づいてモータに電流を供給する電流制御部とを備える。
【0045】
また、本願発明の回転駆動制御では、トルク指令値に基づいてモータに電流を供給する制御系を構成することができる。目標トルクの制御系は、前記した回転駆動制御系が備える、角度指令値およびこの角度指定値に近づけるトルク指令値を生成する角度制御部を設けることなく、トルク制御部にトルク推定部で推定した推定トルク値と目標トルクのトルク指令値を入力することによって構成することができる。
【0046】
トルク推定部は補正差分値に基づいて推定トルク値を推定し、角度補正部は補正差分値に基づいて負荷側の回転軸の回転角度を補正しているため、電流供給を制御する回転駆動制御系が備える角度制御部およびトルク制御部に帰還する帰還量を歯飛びした分だけ補正することができる。
【0047】
(歯飛び検出に基づく検出値の補正)
本発明の回転駆動装置は、検出値を補正する検出値補正部を備える。検出値補正部は、差分値から歯飛びした歯数に対応する検出補正量を求め、第1検出値又は第2検出値が、第1エンコーダ又は第2エンコーダの計数値であるときは、検出補正量により第1エンコーダ又は第2エンコーダの計数値を補正し、補正した計数値に基づいて計数値の差分値を求める。また、第1検出量又は第2検出量が、第1エンコーダ又は第2エンコーダの計数値を角度変換して得られる回転角度であるときは、検出補正量によりモータ側の回転軸の回転角度又は負荷側の回転軸の回転角度を補正し、補正した回転角度に基づいて回転角度の差分値を求める。
【0048】
また、第1検出量又は第2検出量が、アブソリュート型の第1エンコーダ又は第2エンコーダの角度値であるときは、検出補正量によりモータ側の回転軸の角度値又は負荷側の回転軸の角度値を補正し、補正した角度値に基づいて回転角度の差分値を求める。第1検出量又は第2検出量が、インクリメント型の第1エンコーダ又は第2エンコーダの角度値であるときにおいても、検出補正量によりモータ側の回転軸の角度値又は負荷側の回転軸の角度値を補正し、補正した角度値に基づいて回転角度の差分値を求めることができる。
【0049】
また、第1エンコーダと第2エンコーダは、両方ともアブソリュート型エンコーダあるいはインクリメント型エンコーダとする他に、何れか一方のエンコーダをアブソリュート型エンコーダとし、他方のエンコーダをインクリメント型エンコーダとする構成としてもよい。
【0050】
回転駆動装置を駆動するモータに対する電流供給を制御する回転駆動制御系において、補正した計数値の差分値を角度変換して得られる回転角度の差分値、又は補正した検出量が回転角度であるときに求めた回転角度の差分値に減速機のねじり剛性定数Kを乗算して推定トルク値を推定するトルク推定部と、補正した計数値を角度変換して得られる負荷側の回転軸の回転角度又は補正した検出量が回転角度であるときに求めた負荷側の回転軸の回転角度と角度指令値との差分値に基づいて、負荷側の回転軸の回転角度を角度指定値に近づけるトルク指令値を生成する角度制御部と、トルク指令値と推定トルク値との差分値に基づいて、推定トルク値をトルク指令値に近づける電流指令値を生成するトルク制御部と、電流指令値に基づいてモータに電流を供給する電流制御部とを備える。
【0051】
トルク推定部は補正した計数値あるいは補正した回転角度に基づいて推定トルク値を推定し、角度補正部は補正した計数値あるいは補正した回転角度を用いることで負荷側の回転軸の回転角度は補正されているため、電流供給を制御する回転駆動制御系が備える角度制御部およびトルク制御部に帰還する帰還量を歯飛びした分だけ補正することができる。
【0052】
また、上記した回転駆動制御においても、トルク指令値に基づいてモータに電流を供給する制御系を構成することができる。目標トルクの制御系は、前記した回転駆動制御系において、角度指令値およびこの角度指定値に近づけるトルク指令値を生成する角度制御部とを省いて、トルク制御部にトルク推定部で推定した推定トルク値と目標トルクのトルク指令値を入力する構成とすることができる。
【0053】
[歯飛び検出に基づく寿命予測]
本願発明は、歯飛び回数の累積値と、減速機の稼働実績に基づいて設定される歯飛び回数の累積設定値とを比較することによって、減速機の寿命を予測することができる。
【0054】
本発明の回転駆動装置は、歯飛び検出部の検出結果に基づいて減速機の寿命を予測する寿命予測部を備える。寿命予測部は、減速機の稼働実績に基づいて設定される歯飛び回数の累積設定値を記憶する記憶部と、記憶手段に記憶される累積設定値に基づいて、歯飛び検出部が検出する歯飛び回数の累積値から減速機の寿命を予測する予測部とを備える。
【0055】
累積設定値は、減速機の駆動に耐え得る歯飛び回数の累積値の上限の目安に相当する値であり、この累積設定値を越えた場合には、減速機は実用上において故障と判断してよい状態と見なすことができる。累積設定値は、減速機の歯飛び回数を実測し、実測値あるいは実測値に所定の係数を乗じて得られる値を設定する他、減速機の製品の仕様等に予め定められている場合には、仕様に定められる値あるいは当該値に所定の係数を乗じて得られる値を用いてもよい。
【0056】
累積設定値から現時点における歯飛び回数の累積値を減算して得られる減算値は、以後使用可能な期間内で発生する歯飛び回数の累積値を表しているため、この減算値によって減速機の寿命を予測する。
【発明の効果】
【0057】
以上説明したように、本発明の回転駆動装置によれば、、回転駆動装置の減速機の歯飛び検出を軽量で小型の装置構成で実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照しながら詳細に説明する。以下、本発明の回転駆動装置の構成例について、
図1〜
図12を用いて説明する。
【0060】
図1〜4は本願発明の回転駆動装置の構成および動作を説明するための図であり、
図5,6は本願発明の回転駆動装置による寿命予測の構成および動作を説明するための図であり、
図7〜
図12は本願発明の回転駆動装置の補正の構成および動作を説明するための図である。
【0061】
[歯飛び検出]
はじめに、本願発明の回転駆動装置の構成例および動作例について説明する。
図1は本願発明の第1の構成例を説明するための概略ブロックであり、
図2、3は本願発明の歯飛び検出にかかる動作を説明するためのフローチャートおよび説明図であり、
図4は本願発明の第2の構成例を説明するための概略ブロックである。
【0062】
図1は本願発明の回転駆動装置の第1の構成例を説明するための概略を示している。回転駆動装置1は、第1エンコーダ3と減速機2と第2エンコーダ4とを備え、モータ20と負荷30との間に配置される。減速機2は、モータ20側の回転軸の回転を減速し、減速した回転を負荷30側の回転軸に伝達する。減速機2の減速比Mは、モータ側の回転軸の回転数と負荷側の回転軸の回転数との比率がM:1であることを示している。
【0063】
第1エンコーダ3はモータ20側の回転軸の回転量を検出し、第2エンコーダ4は負荷30側の回転軸の回転量を検出する。第1エンコーダ3および第2エンコーダ4はロータリエンコーダを用いることができ、共に減速機2の内部に設ける構成とする他、減速機2の外部に設ける構成としても良い。ロータリエンコーダは、回転方向に応じて位相関係を異にする二相の検出信号を出力する。二相の検出信号の位相関係から回転方向を求めることができ、回転方向に基づいて検出信号の変化を計数することによって回転量を求めることができる。二相の検出信号を出力するロータリエンコーダは、インクリメント型ロータリエンコーダの一例であって、一相の検出信号のみを出力するロータリエンコーダや、基準位置の位置信号を出力するロータリエンコーダとすることもできる。一相の検出信号のみを出力するロータリエンコーダの場合には、検出信号からは回転方向を求めることができないため、モータに印加する駆動電流の方向等によって回転方向を取得する。
【0064】
ロータリエンコーダは、インクリメント型ロータリエンコーダに限らずアブソリュート型ロータリエンコーダを用いることができ、インクリメント型ロータリエンコーダの場合に得られる検出値は計数値で出力され、アブソリュート型ロータリエンコーダの場合に得られる検出値は角度値で出力される。
【0065】
第1エンコーダと第2エンコーダは、両エンコーダを共にインクリメント型ロータリエンコーダ又はアブソリュート型ロータリエンコーダを用いる他、何れか一方のエンコーダをインクリメント型ロータリエンコーダとし、他方のエンコーダをアブソリュート型ロータリエンコーダを用いてもよい。
【0066】
以下では、第1エンコーダと第2エンコーダを共にインクリメント型ロータリエンコーダとし、エンコーダの検出値として計数値が得られる例について説明する。第1計数部5は、第1エンコーダ3の検出信号を計数してモータ20側の回転軸の回転量を求める。一方、第2計数部6は、第2エンコーダ4の検出信号を計数して負荷30側の回転軸の回転量を求める。なお、
図1では、第1エンコーダ3および第2エンコーダ4が出力する二相の検出信号は省略している。
【0067】
第1計数部5が計数して得られるモータ20側の計数値N
inは、第2計数部6が計数して得られる負荷30側の回転軸の計数値N
OUTに対して、減速機2の減速比M倍だけ大きい。
【0068】
モータ20側の回転軸の回転数と負荷30側の回転軸の回転数とを計数値N
inと計数値N
outで比較する場合、計数値N
inは計数値N
outよりも減速比M倍だけ大きいため、そのままの計数値で比較することはできない。そこで、モータ20側の回転軸の回転数と負荷30側の回転軸の回転数とを同量レベルで比較するために、第1計数部5の出力側に換算部7を接続し、計数値N
inを減速比Mで除算する。以下、除算した第1計数部5の計数値をN
in*で表する。これによって、モータ20側の回転軸の回転量を表す計数値N
in*は、負荷側の回転軸の回転量を表す計数値N
outと同量レベルで比較することができる。
【0069】
差分検出部8は、計数値N
in*と計数値N
outとの差分値N
dを算出する。差分値N
dは、換算部7で負荷30側の計数値に換算したモータ20側の回転軸の回転量と、負荷30側の回転軸の回転量との差分に対応する計数の差分値である。
【0070】
減速機2は、バックラッシュによる回転角度差を無視あるいは誤差許容範囲内とし、弾性要素を有する減速機構を用いることによって、減速機2に加わるトルク値を推定することができる。バックラッシュが少なく弾性要素を有する減速機として波動歯車装置(ハーモニックドライブ(登録商標))が知られている。
【0071】
差分検出部8の出力である差分値N
dは、減速機2の回転軸の変形量(ねじれ量)に相当する値であり、この差分値N
dに相当する角度差に減速機のねじり剛性定数K(バネ定数)を乗算することによって、減速機2に加わるトルク値を推定することができる。
図1ではトルク推定の構成は省略している。
【0072】
歯飛び検出部9は、差分検出部8の出力の差分値N
dに基づいて減速機2の歯飛びの発生を検出する。減速機2に歯飛びが生じていない場合には、差分値N
dは減速機2の回転軸の変形量(ねじれ量)に相当する値を示しているが、減速機2に歯飛びが生じた場合には、差分値N
dは減速機2の回転軸の変形量(ねじれ量)に相当する計数値に加えて歯飛びによって生じたずれに相当する計数値を含むことになる。
【0073】
歯飛び検出部9は、差分値N
dと予め定めておいた閾値(N
+、N
−)とを比較する。差分値N
dが閾値N
+よりも大きいとき、又は差分値N
dが閾値N
+以上であるとき、あるいは、差分値N
dが閾値N
−よりも小さいとき、又は差分値N
dが閾値N
−以下であるときは減速機に歯飛びが発生したとして検出する。
【0074】
閾値(N
+、N
−)は、歯飛びが生じたときの差分値N
dを予め実測あるいはシミュレーション等で求めておき、この実測値あるいはシミュレーション値に許容誤差のマージン分を加えることで設定することができる。
【0075】
ここで、閾値N
+は正の差分値N
dと比較する場合の閾値であり、閾値N
−は負の差分値N
dと比較する場合の閾値を表している。正の差分値N
dは、モータ20側の回転軸の回転数が負荷30側の回転軸の回転数よりも大きい場合又は以上の場合であり、計数値の関係においてはN
in*がN
outよりも大きい場合又は以上の場合である。差分値N
dが閾値N
+よりも大きい場合又は以上の場合には、プラス側に歯飛びが生じたと判定することができる。
【0076】
一方、負の差分値N
dは、負荷30側の回転軸の回転数がモータ20側の回転軸の回転数よりも小さい場合又は以下の場合であり、計数値の関係においてはN
outがN
in*よりも大きい場合又は以上の場合である。差分値N
dが閾値N
−よりも小さい場合又は以下である場合には、マイナス側に歯飛びが生じたと判定することができる。
【0077】
歯飛び検出部9は、例えば、閾値(N
+、N
−)を設定して格納を記憶しておく閾値設定手段9bと、差分値Ndと閾値(N
+、N
−)とを比較する比較手段9aとによって構成することができる。閾値N
+と閾値N
−とは同じ大きさである必要はなく、減速機の構成等によって歯飛びが生じる際のトルクの差異に応じて個別に定めることができる。閾値(N
+、N
−)は実測値に基づいて設定する他、減速機の定格値に定められた既値に基づいて設定することができる。
【0078】
次に、
図2,
図3に用いて
図1に示した回転駆動装置の構成例の歯飛び検出の動作例を説明する。
図2のフローチャートは、各工程を“S”を付した番号で示している。
図3は、モータ側の回転軸と負荷側の回転軸が正の同方向に回転している場合を示している。
【0079】
第1エンコーダ3の出力を第1計数部5で計数して第1計数値N
inを得る(S1)と共に、第2エンコーダ4の出力を第2計数部6で計数して第2計数値N
outを得る(S2)。第1計数値N
inを減速機2の減速比Mで除算して、第2計数部6側に換算した第1換算計数値N
in*を算出する(S3)。S3で算出した第1換算計数値N
in*と、S2で得た第2計数値N
outの差分値N
d(=N
in*−N
out)を求める(S4)。
【0080】
S4で求めた差分値N
dを閾値[N
−,N
+]の範囲と比較する。閾値として、第1検出値である第1換算値N
in*が第2検出値である第2計数値N
outよりも大きいとき又は以上であるときの差分値と比較するための正の第1閾値N
+と、第1検出値である第1換算値N
in*が第2検出値である第2計数値N
outよりも小さいとき又は以下であるときの差分値と比較するための負の第2閾値N
−を備える(S5)。
【0081】
S5の比較において、差分値N
dが第1閾値N
+と第2の閾値N
−との間の範囲にある場合には、歯飛びは発生しないと判定する。
図3(a)は、モータ側の回転軸と負荷側の回転軸が正の同方向に回転する場合において、歯飛びが発生していない状態を示している。歯飛びが発生していない場合には、差分値N
dは主に減速機の回転軸のたわみ分の角度差に相当する値であり、第1閾値N
+と第2の閾値N
−との間の範囲にある(S8)。
【0082】
S5の比較において、差分値N
dが第1閾値N
+よりも大きいとき、あるいは第1閾値N
+以上である場合にプラス側に歯飛びしたことを検出する。
図3(b)は、モータ側の回転軸と負荷側の回転軸が正の同方向に回転する場合において、回転軸が歯飛びした場合を示している。
【0083】
差分値N
dは減速機の角度差に相当する値であり、モータ側の回転軸が歯飛びした場合などにおいて、差分値N
dが第1閾値N
+よりも大きいあるいは以上の値となることで、プラス側の歯飛びを検出する (S6)。
【0084】
なお、モータ側の回転軸の回転方向が反転して逆方向に回転を開始した場合についてもS6で示した場合と同様であり、
図3(b)において第1換算計数値N
in*と第2計数値N
outの傾きが下降となる場合に対応するため、ここでの説明は省略する。
【0085】
S5の比較において、第2計数値N
outが第1換算計数値N
in*よりも大きくなり、差分値N
dが第2閾値N
-よりも小さいとき、あるいは第2閾値N
-以下である場合には、減速機のマイナス側に歯飛びしたことを検出する。
【0086】
図3(c)は、モータ側の回転軸と負荷側の回転軸が正の同方向に回転する場合において、負荷側の回転軸が歯飛びした場合を示している。
差分値N
dは減速機の角度差に相当する値であり、負荷側の回転軸が歯飛びした場合などにおいて、差分値N
dが第2閾値N
−よりも小さいあるいは以下の値となることで、マイナス側の歯飛びを検出する(S7)。
【0087】
図3(d)は、閾値の範囲と歯飛びとの関係を示している。差分値N
dが第1閾値N
+と第2閾値N
−とで挟まれる範囲内にあるときは歯飛び無いと判定し、差分値N
dが第1閾値N
+よりも大きいとき又は以上であるときはプラス側に歯飛びしたと判定し、差分値N
dが第2閾値N
−よりも小さいとき又は以下であるときはマイナス側に歯飛びしたと判定する。
【0088】
図1で示した回転駆動装置の構成は、各エンコーダの出力を計数して得られる第1計数値あるいは換算して得られる第1換算計数値、および第2計数値を、第1検出値および第2検出値として歯飛びを検出する例を示している。なお、第1検出値および第2検出値は、アブソリュートエンコーダによる角度値としてもよい。
【0089】
歯飛び検出は、インクリメントエンコーダによる計数値に限らず回転軸の回転角度あるいはアブソリュートエンコーダによる角度値によっても行うことができる。以下では、インクリメントエンコーダによる計数値を用いて例について説明する。
【0090】
回転角度は回転軸の回転計数値に係数kを乗算する角度変換によって算出することができる。係数kは、エンコーダの回転数と回転軸の回転数との関係を表す係数である。ここでは、第1エンコーダ3が計数する計数値とモータ側の回転軸との関係を表す係数をk1とし、第2エンコーダ4が計数する計数値と負荷側の回転軸との関係を表す係数をk2とする。
【0091】
図4は、回転角度によって歯飛び検出を行う構成例を説明するブロック図であり、前記した
図1とほぼ同様な構成である。以下では、
図1と共通する構成については説明を省略する。
【0092】
図4において、回転駆動装置1は、第1換算計数N
in*(=N
in/M)を回転角度θ
inに角度変換する角度変換部10Aと、第2計数N
OUTを回転角度θ
OUTに角度変換する角度変換部10Bとを備え、角度変換部10Aが出力する回転角度θ
inと角度変換部10Bが出力する回転角度θ
OUTを差分検出部8に入力する。差分検出部8は、回転角度θ
inと回転角度θ
OUTとからその差分値θ
d(=θ
in−θ
OUT)を算出する。
【0093】
差分検出部8の出力である差分値θ
dは、減速機2の回転軸の変形量(ねじれ量)に相当する角度であり、この差分値θ
dに減速機のねじり剛性定数K(バネ定数)を乗算することによって、減速機2に加わるトルク値を推定することができる。
図4ではトルク推定の構成は省略している。
【0094】
歯飛び検出部9は、差分検出部8の出力の差分値θ
dに基づいて減速機2の歯飛びの発生を検出する。減速機2に歯飛びが生じていない場合には、差分値θ
dは減速機2の回転軸の変形量(ねじれ量)に相当する値を示しているが、減速機2に歯飛びが生じた場合には、差分値θ
dは減速機2の回転軸の変形量(ねじれ量)に相当する回転角度分に加えて歯飛びによって生じたずれに相当する回転軸の回転角度分を含むことになる。
【0095】
歯飛び検出部9は、差分値θ
dと予め定めておいた閾値(θ
+、θ
−)とを比較し、差分値θ
dが閾値θ
+より大きいとき又は閾値θ
+)以上であるとき、あるいは、差分値θ
dが閾値θ
−より小さいとき又は閾値θ
−以下であるとき、減速機に歯飛びが発生したことを検出する。
【0096】
閾値(θ
+、θ
−)は、歯飛びが生じたときの差分値θ
dを予め実測あるいはシミュレーション等で求めた値、あるいは各減速機に設定されている既値に基づいて、この実測値あるいはシミュレーション値や既値に許容誤差のマージン分を加えることで設定することができる。
【0097】
ここで、閾値θ
+は正の差分値θ
dと比較する場合の閾値であり、閾値θ
−は負の差分値θ
dと比較する場合の閾値を表している。正の差分値θ
dは、モータ20側の回転軸の回転数が負荷30側の回転軸の回転数よりも大きい場合であり、計数値の関係においてはθ
in*がθ
outよりも大きい場合である。差分値θ
dが閾値N
+よりも大きい場合あるいは以上である場合には、プラス側の歯飛びが生じたと判定することができる。
【0098】
一方、負の差分値θ
dは、負荷30側の回転軸の回転数がモータ20側の回転軸の回転数よりも大きい場合であり、計数値の関係においてはθ
outがθ
in*よりも大きい場合である。差分値θ
dが閾値θ
−よりも小さい場合あるいは以下である場合には、マイナス側の歯飛びが生じたと判定することができる。
【0099】
歯飛び検出部9は、例えば、閾値(θ
+、θ
−)を設定して格納を記憶しておく閾値設定手段9bと、差分値θ
dと閾値(θ
+、θ
−)とを比較する比較手段9aとによって構成することができる。閾値θ
+と閾値θ
−とは同じ大きさである必要はなく、減速機の構成等によって歯飛びが生じる際のトルクの差異に応じて個別に定めることができる。
【0100】
なお、
図1〜
図3では、閾値として(N
+、N
−)の二つを設定する構成例を示しているが、減速機2のモータ20側の回転軸のトルクが負荷30側の回転軸のトルクよりも大きい状態が常状態である場合には、閾値N
+のみを設定して、プラス方向への歯飛びを検出する構成としても良い。同様にマイナス方向への歯飛びを検出する構成としても良い。
【0101】
また、
図4では、閾値として(θ
+、θ
−)の回転角度による二つの閾値を設定する構成例を示しているが、減速機2のモータ20側の回転軸のトルクが負荷30側の回転軸のトルクよりも大きい状態が常状態である場合には、閾値θ
+のみを設定して、マイナス方向への歯飛びを検出する構成としても良い。同様にマイナス方向への歯飛びを検出する構成としても良い。
【0102】
[歯飛び検出による寿命予測]
次に、本願の回転駆動装置において歯飛び検出に基づいて行う寿命予測について、
図5,6を用いて説明する。
【0103】
図5は、
図1で示した回転駆動装置の構成ブロックにおいて、歯飛び検出部の出力を用いて行う寿命予測の構成例を示している。ここでは、
図1の回転駆動装置と共通する構成については説明を省略し、寿命予測にかかる構成についてのみ説明する。
【0104】
図5において、回転駆動装置は
図1で示した構成に加えて、歯飛び検出部9の出力を入力して計数し、歯飛び回数の累積値N
tを取得する歯飛び回数計数部11と、歯飛び回数計数部11で得た歯飛び回数の累積値N
tを用いて減速機の寿命を予測する寿命予測部12を備える。
【0105】
寿命予測部12は、例えば、歯飛び回数の累積設定値を記憶する記憶手段12bと、記憶手段12bに記憶される累積値設定値に基づいて、歯飛び検出部9が検出する歯飛び回数の累積値N
tから減速機の寿命を予測する予測手段12aとを備える。
【0106】
歯飛び回数の累積値と減速機の累積値設定値との関係は、類似する減速機について予めエンコーダで求めておいた既値、あるいはシミュレーション値を用いることができる。
【0107】
図6は、歯飛び回数の累積値と減速機の寿命との関係を説明する概略図である。なお、
図6は模式的に示すものであって、実際の関係を示すものではない。
【0108】
寿命予測部12は、歯飛び発生回数を計数して得られる歯飛び回数の累積値N
tを、記憶部12bに格納している減速機の歯飛び回数の累積設定値とを比較することによって減速機の寿命を予測する。累積設定値は、減速機の駆動に耐え得る歯飛び回数の累積値の上限の目安に相当する値であり、減速機の歯飛び回数を実測し、実測値あるいは実測値に所定の係数を乗じて得られる値を設定する他、減速機の製品の仕様等に予め定められている場合には、仕様に定められる値あるいは当該値に所定の係数を乗じて得られる値を用いてもよい。
【0109】
歯飛び回数の累積値N
tと累積設定値との比較において、歯飛び回数の累積値N
tが累積設定値よりも大きい場合あるいは累積設定値以上となる場合には、減速機は実用上において故障と判断してよい状態と見なすことができる。
【0110】
累積設定値から現時点における歯飛び回数の累積値N
tを減算して得られる減算値は、以後使用可能な期間内で発生する歯飛び回数の累積値を表すと見なし、この減算値によって減速機の寿命を予測する。
【0111】
図6(a)は、歯飛び回数の累積値と累積設定値、および寿命との関係を模式的に示している。
図6(a)において、現時点の歯飛び回数の累積値a
0と累積設定値b
0との差で表される歯飛び回数の累積値(b
0−a
0)は、現時点における減速機の寿命を示すことになる。
【0112】
図6(b)は、歯飛び回数の累積値と累積設定値および寿命との関係において、減速機に加わる負荷を加味した場合を模式的に示している。
図6(b)は縦軸を負荷とし横軸を歯飛び回数の累積値として示している。減速機の負荷が一定負荷L
1であるとした場合には、歯飛び回数の累積値の軌跡は横方向の累積値線A
1で表され、歯飛び回数の累積値の上限に当たる累積設定値はb
1で表される。現時点の歯飛び回数の累積値がa
1であるとき、現時点の歯飛び回数の累積値a
1と累積設定値b
1との差で表される歯飛び回数の累積値(b
1−a
1)は、一定負荷L
1としたときの現時点における減速機の寿命を示すことになる。
【0113】
また、減速機の負荷が一定負荷L
2であるとした場合には、歯飛び回数の累積値の軌跡は横方向の累積値線A
2で表され、歯飛び回数の累積値の上限に当たる累積設定値はb
2表される。現時点の歯飛び回数の累積値がa
2であるとき、現時点の歯飛び回数の累積値a
2と累積設定値b
2との差で表される歯飛び回数の累積値(b
2−a
2)は、一定負荷L
2としたときの現時点における減速機の寿命を示すことになる。
【0114】
また、負荷が変化したときには、負荷の線を切り替えることによって寿命予測に適用する。例えば、現時点の歯飛び回数の累積値がa
1であるとき、一定負荷がL
1からL
2に変化した場合には累積値線をA
1からA
2に切り替え、累積値線をA
2上において、現時点の歯飛び回数の累積値a
1と累積設定値b
2との差で表される歯飛び回数の累積値(b
2−a
1)によって減速機の寿命を予測する。
【0115】
[歯飛び検出による補正]
次に、本願の回転駆動装置において歯飛び検出に基づいて行う補正処理について、
図7〜
図11を用いて説明する。補正処理では、例えば、差分検出部が出力する差分値を歯飛び検出に基づいて差分値を補正する補正処理、計数値や回転角度等の検出値を歯飛び検出に基づいて検出値を補正する検出値補正とすることができる。
【0116】
(差分値補正)
差分検出部が出力する差分値を歯飛び検出に基づいて補正する補正処理について、
図7,8,9を用いて説明する。
【0117】
図7は、
図1で示した回転駆動装置の構成ブロックにおいて、歯飛び検出部の出力を用いて差分値を補正する構成例を示している。ここでは、
図1の回転駆動装置と共通する構成については説明を省略し、差分値の補正にかかる構成についてのみ説明する。
【0118】
図7において、回転駆動装置は
図1で示した構成に加えて、差分補正部13を備える。差分補正部13は、差分検出部8の出力である差分値N
dを歯飛び検出に基づいて補正する。
【0119】
差分値N
dは、第1換算計数値N
in*から第2計数値N
OUTを減算した差分値(N
in*−N
OUT)であるため、歯飛びによって第1換算計数値N
in*あるいは第2計数値N
OUTの誤差により誤差が発生する。差分補正部13は、歯飛び検出部9から出力された歯飛び検出に基づいて差分値N
dを補正して補正差分値N
d*を得ることができる。
【0120】
差分値N
dは、各検出時点における値とする他、所定期間における累積値を用いることができる。累積値を用いることによって、累積値を補正に利用可能な他、所定期間における歯飛びの発生の傾向を求めることもできる。なお、所定期間は、例えば補正を行う期間とすることができ、補正が完了する毎に累積値をリセットする。
【0121】
なお、累積値を算出する場合には、各時点の差分値が正の値をとる場合と負の値をとる場合があり、これらの値を単純に加算して累積値を求めた場合には、累積値を補正に利用する場合は問題がないが、累積値によって歯飛びの発生傾向を求める場合は、累積値が零の近傍の値となる等、歯飛びの発生傾向を表す累積値を得ることが難しくなる。そこで、例えば、差分値の絶対値を加算したものを累積値とすることで、歯飛びの発生傾向を表す累積値を得る。
【0122】
図8は、回転駆動装置を含む制御系を説明するためのブロック図である。この制御系では、コントローラ21からの指令に基づいてモータ20に供給する電流を制御して回転軸の回転角度を制御する制御系の一例を示し、コントローラ21,角度制御部22,トルク制御部23,電流制御部24を備え、電流制御部24からモータ20に駆動電流を供給する。
【0123】
制御系において、コントローラ21は回転角度の指令値を出力する。角度制御部22は、コントローラ21からの回転角度指令と、負荷に接続される回転軸の回転角度の帰還値を入力してトルク指令値を算出する。トルク制御部23は、角度制御部22からのトルク指令値と、減速機に印加されるトルク値の帰還値との差分を入力して電流指令値を算出する。電流制御部24は駆動電流をモータ20に供給してモータ20を駆動する。上記した制御系は一構成であり、この構成に限られるものではない。
【0124】
図8の制御系において、トルク指令値はトルク推定部25によって求めることができる。トルク推定部25は、差分検出部8で検出される計数値の差分値を角度変換部10Cで角度変換することで得られる回転角度の差分値に、減速機のねじり剛性定数Kを乗算することで求めることができる。角度制御部22には、負荷に接続される回転軸の回転角度の帰還値に加えて、角度変換部10Cで角度変換して得られる回転角度の差分値を入力してもよい。回転角度の差分値を入力することによって、回転角度の精度を高めることができる。
【0125】
ここで、差分検出部8の計数値の差分値を差分補正部13に入力して、歯飛びによる誤差を補正して補正差分値を算出する。補正差分値の算出は、差分検出部8から得られる計数値について歯飛びに対応する計数値を補償する演算を行う。補償演算は、歯飛びによって差分値が増加している場合には増加分の計数値を減算し、歯飛びによって差分値が減少している場合には減少分の計数値を加算する。
【0126】
図8の制御系において、回転軸の回転角度は、第2計数部6の計数値を角度変換部10Dで角度変換することで求めることができる。
【0127】
差分値補正部13は、例えば、差分値補正量を算出する差分補正量算出手段13aと、差分補正量算出手段13aで算出した差分値補正量と差分値との差分を求める差分補正部13bとから構成することができる。
【0128】
図8に示した回転駆動制御において、トルク指令値に基づいてモータに電流を供給する制御系を構成することができる。
図9はトルク指令値に基づくモータの電流を供給する制御系を説明するための図である。
【0129】
図9に示す制御系は目標トルクの制御系であり、
図8に示した回転駆動制御系において、角度指令値およびこの角度指定値に近づけるトルク指令値を生成する角度制御部22とを省き、トルク制御部23にトルク推定部25で推定した推定トルク値とコントローラ21からの目標トルクとなるトルク指令値を入力する。
【0130】
図9に示す制御系の他の構成は
図8に示した制御系と同様であるため、他の構成に説明は省略する。
【0131】
図10は、回転駆動装置を含む制御系を説明するためのブロック図であり、
図8の角度変換部10C,10Dに代えて、第1計数部5の計数を角度変換する第1角度変換部10Aと第2計数部6の計数を角度変換する第2角度変換部10Bを備える構成である。
【0132】
図10の構成例では、差分検出部8からは角度差分値が出力され、出力された角度差分値に基づいて歯飛び検出を行うと共に、差分補正部13で歯飛びによる誤差を補正した補正差分値をトルク推定部25に入力してトルク推定値を推定する。
【0133】
また、
図8の回路構成と同様に、角度制御部22には、第2角度変換部10Bで変換した負荷側の回転軸の回転角度の帰還値に加えて、差分補正部13で得られる回転角度の差分値を入力してもよい。回転角度の差分値を入力することによって、回転角度の精度を高めることができる。
【0134】
(エンコーダの検出値補正)
歯飛び検出に基づいて検出値を補正する補正処理について、
図11,12を用いて説明する。
【0135】
図11は、
図1で示した回転駆動装置の構成ブロックにおいて、歯飛び検出部の出力を用いて検出値である第1計数値を補正する構成例を示している。ここでは、
図1の回転駆動装置と共通する構成については説明を省略し、計数値の補正にかかる構成についてのみ説明する。なお、
図11は計数値を補正する構成を示しているが、計数値を角度変換した回転角度を歯飛び検出に基づいて補正する構成とすることもできる。
【0136】
図11に示す回転駆動装置は、
図1で示した構成に加えて検出値補正部14を備える。検出値補正部14は、第1計数部5の計数値N
inを歯飛び検出に基づいて補正する。
【0137】
プラス方向への歯飛びの場合には、第1計数部5の計数値から、予め実測した減速機の歯飛び発生時の差分値に減速比Mを乗じたものを減算することによって補正を行い、マイナス方向の歯飛びの場合には、第1計数部5の計数値から、予め実測した減速機の歯飛び発生時の差分値を加算することによって補正を行う。
【0138】
図12は、
図8の角度変換部10C,10Dに代えて、第1計数部5の計数を角度変換する第1角度変換部10Aと第2計数部6の計数を角度変換する第2角度変換部10Bを備える構成である。
【0139】
図12の構成例では、差分検出部8からは角度差分値が出力され、出力された角度差分値に基づいて歯飛び検出を行うと共に、検出値補正部14によって検出値を補正する。検出値の補正は、第1計数部5の計数値あるいは第1角度変換部10Aの回転角度を補正して、モータ側の検出値を補正する。
【0140】
プラス方向へ歯飛びした場合には、第1計数部5の計数値から、予め実測した減速機の歯飛び発生時の差分値に減速比Mを乗じたものを減算する補正、あるいは第1角度変換部10Aから差分値に対応する補正角度分を減算する補正を行う。一方、マイナス方向へ歯飛びした場合には、第1計数部5の計数値から、予め実測した減速機の歯飛び発生時の差分値に減速比Mを乗じたものを加算する補正、あるいは第1角度変換部10Aから差分値に対応する補正角度分を加算する補正を行う。
【0141】
上記した説明においては、比較において「大きい」は比較値(閾値)を含まない場合を意味し、「以上」は比較値(閾値)を含む場合を意味し、「小さい」は、比較値(閾値)を含まない場合を意味し、「以下」は比較値(閾値)を含む場合を意味するものとする。
【0142】
本発明の回転駆動装置をロボットに適用した場合には、ロボットのアーム間等の構成部材間を可動の連結する関節部分に本発明の回転駆動装置を設けることができる。ロボットは複数の関節を備えており、これらの関節部分に回転駆動装置を設けることで多数の減速機が駆動することになる。本発明の回転駆動装置によれば、減速機の歯飛び状態を把握することができるため、減速機に故障が発生する前に交換あるいはメンテナンスを行うことでロボットが長時間にわたって停止するといった事態を避けることができる。
【0143】
なお、本発明は前記各実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨に基づいて種々変形することが可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。