特許第6291424号(P6291424)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6291424質量分析計のカソードの電圧供給のための装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6291424
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】質量分析計のカソードの電圧供給のための装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 49/10 20060101AFI20180305BHJP
   G01N 27/62 20060101ALI20180305BHJP
   G01N 27/64 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
   H01J49/10
   G01N27/62 G
   G01N27/64 C
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-559156(P2014-559156)
(86)(22)【出願日】2013年2月22日
(65)【公表番号】特表2015-513765(P2015-513765A)
(43)【公表日】2015年5月14日
(86)【国際出願番号】EP2013053550
(87)【国際公開番号】WO2013127701
(87)【国際公開日】20130906
【審査請求日】2015年11月26日
(31)【優先権主張番号】102012203141.3
(32)【優先日】2012年2月29日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500469855
【氏名又は名称】インフィコン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Inficon GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100125874
【弁理士】
【氏名又は名称】川端 純市
(74)【代理人】
【識別番号】100122286
【弁理士】
【氏名又は名称】仲倉 幸典
(72)【発明者】
【氏名】ノルベルト・ロルフ
【審査官】 杉田 翠
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭53−138789(JP,A)
【文献】 特開2000−253658(JP,A)
【文献】 特開平11−262263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N27/60−27/70
27/92
H01J27/00−27/26
37/04
37/06−37/08
37/248
40/00−49/48
H02M3/00−3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量分析計のカソードに電圧供給するための装置であって、
入力電圧(U)によって供給される変圧器(1)を備え、上記変圧器は、少なくとも第1の出力(32)および/または第2の出力(30)および出力側中間端子(31)を有し、
少なくとも2つのダイオード(7,9)を備え、それらのダイオードは、カソードまたはアノードのうちの一方である第1端子、および、上記カソードまたは上記アノードのうちの他方である第2端子を有し、第1のダイオード(7)の上記第1端子は上記第1の出力(32)に接続され、第2のダイオード(9)の上記第1端子は上記第2の出力(30)に接続され、上記各ダイオード(7,9)について、それぞれのダイオードに並列に接続された第1のトランジスタ(10)および第2のトランジスタ(8)が設けられ、上記各トランジスタ(8,10)のドレイン端子は、対応する上記ダイオード(7,9)の上記第1端子に接続され、また、上記各トランジスタ(8,10)のソース端子は、対応する上記ダイオード(7,9)の上記変圧器(1)と反対側に配置されている上記第2端子に接続され
上記各トランジスタ(8,10)がnチャネルトランジスタである場合は、上記各ダイオード(7,9)の上記第1端子は上記カソードであり、上記各ダイオード(7,9)の上記第2端子は上記アノードである一方、上記各トランジスタ(8,10)がpチャネルトランジスタである場合は、上記各ダイオード(7,9)の上記第1端子は上記アノードであり、上記各ダイオード(7,9)の上記第2端子は上記カソードである装置において、
上記第1のトランジスタ(10)のゲートは上記第2の出力(30)に接続され、また、上記第2のトランジスタ(8)のゲートは上記変圧器(1)の上記第1の出力(32)に接続されており、
上記変圧器の上記第1の出力(32)および/または上記第2の出力(30)から、少なくとも1つの電圧増倍器(16,17)によって、DC電圧(U)が生成され
上記少なくとも1つの電圧増倍器は、少なくとも2つの整流器(16,17)からなり、上記変圧器(1)の上記2つの出力端子(30,32)の一方に分離コンデンサ(13,14)を介して接続され、これにより、活性なパスを提供し、また、上記ダイオード(9,7)の上記変圧器(1)と反対側に配置されている上記第2端子にコンデンサ(15)を介して接続され、これにより基準パスを提供することを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項に記載の装置において、
平滑コンデンサ(12)およびチョークコイル(11)からなるローパス部が、上記変圧器(1)の出力側中間端子(31)と上記トランジスタ(8,10)のソース端子との間に設けられていることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の装置において、
上記装置は、上記質量分析計の2つのカソードに供給するために、上記2つのカソードの各々のためのそれぞれの出力(Kat,Kat)を備え、
上記2つのカソードの端子(Kat,Kat)を交互に駆動するための第3及び第4のトランジスタ(19,20)が上記変圧器(1)に接続されていることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項に記載の装置において、
上記各カソードの端子(Kat,Kat)は,少なくとも上記第3または第4のトランジスタ(19,20)の一方のソース端子に接続され、
上記トランジスタのそれぞれのゲート端子に印加された電圧が上記ソース端子に印加されたカソード電圧を超えたときのみ正確に、上記第3または第4のトランジスタの1つのトランジスタ(19,20)が、関連づけられた上記カソードの端子(Kat,Kat)を駆動することを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の装置において、
上記DC電圧(U)は、
上記第3及び第4のトランジスタ(19,20)のゲート電圧を生成する電圧供給装置(21)に供給するために、および/または、
上記質量分析計のアノード電圧(U)を生成する電圧供給装置(18)に供給するために、および/または、
それぞれの活性化されたカソード(Kat,Kat)の放射電流を測定するための測定回路(23)に供給するために
働くことを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項3から5までのいずれか一つに記載の装置において、
上記それぞれの活性化されたカソード(Kat,Kat)の放射電流を測定するための測定回路(23)は、パルス幅変調器(PWM)の形態で設けられていることを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項に記載の装置において、
上記放射電流は、
上記中間端子(31)と、上記2つのダイオード(7,9)の上記変圧器(1)と反対側に配置されている上記第2端子との間に直列に接続された2つの第1の抵抗器(26,29)を横切って減少し、
互いに直列に接続され、かつ上記第1の抵抗器(26,29)に並列に接続された2つの抵抗器(28,27)を介して平均化されることを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量分析計のイオン源に電圧を供給するための装置、特に、質量分析計のカソードに電力を供給するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
質量分析計は、ガスの分析のために使用され、とりわけ漏洩検知装置に用途が見出されている。電界によって、熱カソードから出てくる電子が加速される。そのプロセスでは、電極電流が生成され、電極によって、被分析物質が気相にイオン化され、分析器へ供給される。この電界は、カソードとアノードとの間に生成される。質量分析計のカソードへの電圧供給のために、予め定められた放射電流が、確実に、最小の干渉成分で生成されなければならない。それは、アクチュエータとして使用されるカソードの加熱電圧を変化させることによって行われる。
【0003】
本発明は、質量分析計のカソードに電圧を供給するための装置であって、少数の構成部品を有し、低電力損失であるものを提供することを目的とする。
【発明の概要】
【0004】
本発明によれば、上記目的は、請求項1に記載の特徴を有する装置によって達成される。すなわち、本発明は、
質量分析計のカソードに電圧供給するための装置であって、
入力電圧によって供給される変圧器を備え、上記変圧器は、少なくとも第1の出力および/または第2の出力および出力側中間端子を有し、
少なくとも2つのダイオードを備え、それらのダイオードは、カソードまたはアノードのうちの一方である第1端子、および、上記カソードまたは上記アノードのうちの他方である第2端子を有し、第1のダイオードの上記第1端子は上記第1の出力に接続され、第2のダイオードの上記第1端子は上記第2の出力に接続され、上記各ダイオードについて、それぞれのダイオードに並列に接続された第1のトランジスタおよび第2のトランジスタが設けられ、上記各トランジスタのドレイン端子は、対応する上記ダイオードの上記第1端子に接続され、また、上記各トランジスタのソース端子は、対応する上記ダイオードの上記変圧器と反対側に配置されている上記第2端子に接続され、
上記各トランジスタがnチャネルトランジスタである場合は、上記各ダイオードの上記第1端子は上記カソードであり、上記各ダイオードの上記第2端子は上記アノードである一方、上記各トランジスタがpチャネルトランジスタである場合は、上記各ダイオードの上記第1端子は上記アノードであり、上記各ダイオードの上記第2端子は上記カソードである装置において、
上記第1のトランジスタのゲートは上記第2の出力に接続され、また、上記第2のトランジスタのゲートは上記変圧器の上記第1の出力に接続されており、
上記変圧器の上記第1の出力および/または上記第2の出力から、少なくとも1つの電圧増倍器によって、DC電圧が生成され、
上記少なくとも1つの電圧増倍器は、少なくとも2つの整流器からなり、上記変圧器の上記2つの出力端子の一方に分離コンデンサを介して接続され、これにより、活性なパスを提供し、また、上記ダイオードの上記変圧器と反対側に配置されている上記第2端子にコンデンサを介して接続され、これにより基準パスを提供することを特徴とする。
【0005】
詳しくは、スイッチング電源において、変圧器は、その変圧器に印加される一次側の入力電圧を有する。二次側では、上記変圧器は、2つの出力端子および出力側中間端子を備えている。上記変圧器の上記2つの出力端子に対して、相互に反対の出力電圧、すなわち、互いに対して180°だけ位相シフトされている出力電圧が印加される。正の出力電圧が第1の出力端子に印加されれば、同じ出力電圧であるが逆符号をもつ出力電圧が第2の出力端子に印加される。上記変圧器の上記2つの出力端子は、ダイオードに直接接続されている。効率を高めるために、制御された整流器に対応する態様で、上記ダイオードに並列に配置されたトランジスタが使用される。その場合において、2つのnチャネルトランジスタのときには、1つのダイオードのカソードが第1の変圧器出力に直接接続され、また、第2のダイオードのカソードが第2の変圧器出力に直接接続される。pチャネルトランジスタのときには、対応する仕方で、1つのダイオードのアノードが第1の変圧器出力に接続され、また、他方のダイオードのアノードが第2の変圧器出力に接続される。言い換えれば、2つのダイオードの相互に対応する端子は、上記変圧器の異なる出力にそれぞれ直接接続される。
【0006】
上記2つのダイオードの各々に、正確に1つのトランジスタが並列に接続されている。ここで、本発明によれば、第2のトランジスタのゲートは第1の出力端子に直接接続され、また、第1のトランジスタのゲートは上記変圧器の他方の出力端子に直接接続されている。
【0007】
上記ダイオードは、上記変圧器の出力電圧を整流するために使用される。その場合において、上記ダイオードに並列に接続されたトランジスタは、回路の効率を向上させるために有効である。
【0008】
この目的のために、好ましくは、一方のトランジスタのドレイン端子は、第1の変圧器出力に直接接続され、また、他方のトランジスタのドレイン端子は第2の変圧器出力に直接接続されている。上記2つのトランジスタのソース端子は、互いに接続され得、また、上記変圧器と反対に配置され且つ上記変圧器に直接接続されていない端子に直接結合され得る。したがって、pチャネルトランジスタの場合には、上記ソース端子が上記ダイオードの2つのカソードに結合され、また、nチャネルトランジスタの場合には、それらが上記ダイオードの2つのアノードに結合される。好ましくは、上記トランジスタは、pチャネル型またはnチャネル型の電界効果トランジスタである。
【0009】
好ましくは、平滑コンデンサとチョークコイルが、上記変圧器の中間端子と上記トランジスタのソース端子(複数)との間のローパス部を形成する。プッシュプル変圧器として記述された変形例とは対照的に、上記回路はまた、1つのトランジスタと1つのダイオードのみをそれぞれ必要とするシングルエンドのフロー変圧器として設計され得る。
【0010】
一実施形態では、上記電圧供給装置は、2つのカソードを駆動するために働く。それは、2つのトランジスタが、上記2つのカソードの出力端子の正確に一方を交互に駆動することで行われる。カソード端子の切り替え制御のために従来使用されているリレーは、省略され得る。さらに、上記トランジスタの使用による駆動は、従来のスイッチングリレーの使用による駆動よりも、より信頼性が高く、より高速に実行される。
【0011】
好ましくは、少なくとも1つの電圧増倍器の助けを借りて、上記2つの変圧器出力に印加される上記出力電圧の少なくとも1つから、さらなる直流(DC)電圧が生成される。ここで、上記2つの変圧器出力の各々に対して、正確に1つの電圧増倍器が割り当てられ得る。その電圧増倍器は、分離コンデンサを介して、それぞれの出力に接続され得る。上記直流電圧は、
a) 上記質量分析計用の電子エネルギ(アノード電圧)を発生させるための供給として、
b) 上記2つのカソード端子を駆動する上記トランジスタのための供給電圧を生成するため、および/または
c) 放射電流を測定および/または調節するための測定回路への電力供給のため
に働き得る。
【0012】
上記放射電流は、イオン源内で、上記アノードからそれぞれのスイッチオンされたカソードへ流れる電流である。ここで、上記電子エネルギは、アノードとカソード間の電圧差によって与えられる。好ましくは、上記放射電流は、パルス幅変調の助けを借りて伝えられる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1図1は、プッシュプル変圧器として設計された電圧供給装置のブロック図である。
図2図2は、図1の詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
変圧器1は、その一次側とその二次側に、それぞれ3つの端子を備えている。一次側端子の1つに、変圧器のための入力電圧Uが印加される。第1の出力端子32と第2の出力端子30に、相互に位相シフトされた、すなわち、相互に反対の変圧器出力電圧が印加される。第3の二次側端子は、出力側中間端子31として設計されている。以下、第1の出力端子32を負出力と呼び、第2の出力端子30を正出力と呼ぶ。すなわち、得られた出力電圧の一方のみの相が観測されるであろう。
【0015】
負出力32は、ダイオード7の第1端子としてのカソードに接続されている。正出力30は、ダイオード9の第1端子としてのカソードに接続されている。2つのダイオード7,9の第2端子としてのアノードは互いに接続されている。
【0016】
2つのダイオード7,9の各々に対して並列に、nチャネル型電界効果トランジスタの形態にあるトランジスタ8,10が接続されている。この配置では、両方のトランジスタ8および10のソース端子は、それぞれ、2つのダイオードのアノードに接続されている。第1のトランジスタ10のドレイン端子は負出力32に接続され、第2のトランジスタ8のドレイン端子は正出力30に接続されている。第1のトランジスタ10のゲート端子は、第2トランジスタ8のドレイン端子と正出力30とに接続されている。第2のトランジスタ8のゲート端子は、第1トランジスタ10のドレイン端子と負出力32とに接続されている。そして、この時点では、トランジスタ8が導通状態にある一方、トランジスタ10が遮断されている。
【0017】
pチャネルトランジスタ8,10の場合には、ダイオードの方向を逆にすることのみが要求されるだろう。それにより、2つのダイオード7,9のカソードが互いに接続され、それらのダイオードのアノードがそれぞれ変圧器1の異なる出力30,32に接続される。
【0018】
本発明によれば、アノード−カソード放射のための電子エネルギの検出、制御および生成のための供給電圧は、変圧器1の同じ変圧器巻線から生成される。仮により高いカソード加熱電流が存在すれば、整流は、制御された整流器7,9によってサポートされる。このプッシュプル変圧器では、それらの整流器は、それぞれ他のパスの変圧器出力電圧から直接制御される。出力32を整流する制御された整流器7は、変圧器出力30を介して直接駆動される。変圧器出力電圧がゼロボルトに近い期間中に、電流は、両トランジスタ8、10のソース端子に接続されたチョークコイル11を通して、および、ダイオード7,9を通して流れるだろう。
【0019】
カソードに適する変圧器出力での電圧は低い場合が多いので、電圧増倍器16,17の助けを借りて、電圧を所望の値Uへ持ち上げることが望ましい。この目的のために、本発明は、それぞれ1つの電圧増倍器16,17が、それぞれ分離コンデンサ13,14を介して、変圧器1の正出力30へ、および、負出力32へ接続される、ということを提供する。図2は、ダイオード33,34によって形成された単純な電圧増倍器の概略図である。電圧増倍器16,17の出力にて、直流電圧Uはピックアップされる。それは、例えばアノード電圧Uを発生するために設けられた電圧発生装置18に供給するために使用され得る。その代わりにまたはそれに加えて、DC電圧Uは、電圧供給装置21に供給するために使用され得る。それは、フォトカプラ22を介して、第3及び第4のトランジスタ19,20のためのゲート電圧のための情報を伝える。それらのトランジスタは、2つの別個のカソード端子Kat,Katを交互に駆動する。
【0020】
上記構成において、2つのトランジスタ19,20のドレイン端子は、それぞれ、上記変圧器の中間端子31に接続されている。その中間端子は、nチャネルトランジスタの場合には、カソード供給電圧の正極である。トランジスタ19,20のゲート端子は、それぞれ電圧供給装置21に接続されている。1つのトランジスタ19のソース端子は第2のカソード端子Katに接続され、また、トランジスタ20のソース端子は第1のカソード端子Katに接続されている。カソード端子Kat,Katは、それぞれ、それらに接続された1つのカソードを有することができる。上記カソードの反対の極は、共通のカソード端子Katに接続される。カソード(複数)の切り換えは、それぞれのトランジスタ19,20を使用することによって、DC電圧加熱を通して簡単な態様で行われ得る。特に、複数のカソード端子、すなわち2つを超えるカソード端子の場合にも、カソード端子の駆動は、それぞれ1つのトランジスタによって実行され得る。
【0021】
放射電流は、イオン源内で、アノード電圧Uのための端子から、現在スイッチオンされたカソードKatとKatへそれぞれ流れ、そして共通のカソード端子へ流れる。平均カソード電位は、放射電流によって引き起こされる抵抗器26および29での電圧降下を含む抵抗器27,28によってマッピングされる。物質電位(その上に、信号評価ユニット25(プロセッサ部品であるのが好ましい。)が、通常、保持される。)上の放射電流のあたりに、抵抗器26,29に電圧降下を引き起こす放射電流が、パルス幅変調コンバータ23内のPWM信号への変換によって形成される。PWM信号は、フォトカプラ24を介して、質量に関連した信号評価ユニット25へ送信される。その中で、PWM信号は、マイクロプロセッサを用いて、上記放射電流に比例するであろう数値に変換される。このようにして、得られた数値とソフトウェアの助けを借りて、放射電流が制御され得る。
【0022】
制御変数は、スイッチング電源4のデューティ比であり、上記プロセッサから直接生成され得る。図示の実施形態では、制御変数は、デジタル/アナログ変圧器6とスイッチング電圧供給IC(「集積回路」)4との助けを借りて形成されるアナログ出力を介して、生成される。この場合に、スイッチング電圧供給IC内で実現された電流制限が使用され得る。このために、抵抗器5が電流制限抵抗として使用される。電子エネルギの発生は、通常、分離された電源電圧Uから約70〜100Vの電圧を生成するステップアップコンバータ18を必要とするのみである。
【0023】
図2に示すように、それぞれ少なくとも2つの整流器からなる電圧増倍器16,17は、コンデンサ13,14,15からなる変圧器への容量性結合によって供給される。それらのコンデンサは、直流電流のための絶縁された接続を可能にしている。電圧源の直流電圧の絶縁は、構成部品7,8,9,10からなる整流器の電力出力にて、活性なカソードに流れている電流が、エラーなしで評価され得ることを可能にする。それぞれ1つの電圧増倍器が変圧器出力30,32の両方に接続されるのが好ましい。それにより、電流容量の増大とリップルの減少がもたらされる。さらに、変圧器内のピークが減少される。さもなければ、活性な整流器が破壊される可能性がある。
【0024】
次の項目1〜10の事項は、本願の開示範囲内にある。
[項目1]
質量分析計のカソードに電圧供給するための装置であって、
入力電圧(U)によって供給される変圧器(1)を備え、上記変圧器は、少なくとも第1の出力(30)および/または第2の出力(32)および出力側中間端子(31)を有し、
少なくとも2つのダイオード(7,9)を備え、それらのダイオードは、それらのダイオードの相互に対応する端子、すなわちカソードまたはアノードを介して、上記変圧器(1)の上記出力(30,32)の異なる端子に接続され、第1のダイオード(7)の上記端子は上記第1の出力(32)に接続され、第2のダイオード(9)の上記端子は上記第2の出力(30)に接続され、上記各ダイオード(7,9)について、それぞれのダイオードに並列に接続された第1のトランジスタ(8)および第2のトランジスタ(10)が設けられ、また、上記各トランジスタ(8,10)のソース端子は、対応する上記ダイオード(7,9)の上記変圧器(1)と反対側に配置されている端子に接続されている装置において、
上記第1のトランジスタ(8)のゲートは上記第2の出力(30)に接続され、また、上記第2のトランジスタ(10)のゲートは上記変圧器(1)の上記第1の出力(32)に接続されていることを特徴とする装置。
[項目2]
項目1に記載の装置において、
上記第1のトランジスタ(8)のドレイン端子は上記第1の出力(32)に接続され、また、上記第2のトランジスタ(10)のドレイン端子は上記変圧器(1)の上記第2の出力(30)に接続されていることを特徴とする装置。
[項目3]
項目1または2に記載の装置において、
平滑コンデンサ(12)およびチョークコイル(11)からなるローパス部が、上記変圧器(1)の出力側中間端子(31)と上記トランジスタ(8,10)のソース端子との間に設けられていることを特徴とする装置。
[項目4]
項目1から3までのいずれか一つに記載の装置において、
上記装置は、2つのカソードに供給するために、上記2つのカソードの各々のためのそれぞれの出力(Kat,Kat)を備え、
上記2つのカソードの端子(Kat,Kat)を交互に駆動するための2つのトランジスタ(19,20)が上記変圧器(1)に接続されていることを特徴とする装置。
[項目5]
項目4に記載の装置において、
上記各カソードの端子(Kat,Kat)は,少なくとも上記2つのトランジスタ(19,20)の少なくとも一方のソース端子に接続され、
上記トランジスタのそれぞれのゲート端子に印加された電圧が上記ソース端子に印加されたカソード電圧を超えたときのみ正確に、1つのトランジスタ(19,20)が、関連づけられた上記カソードの端子(Kat,Kat)を駆動することを特徴とする装置。
[項目6]
項目1から5までのいずれか一つに記載の装置において、
上記変圧器の上記第1の出力(30)および/または上記第2の出力(32)から、少なくとも1つの電圧増倍器(16,17)によって、直流電圧(U)が生成されることを特徴とする装置。
[項目7]
項目6に記載の装置において、
上記少なくとも1つの電圧増倍器は、少なくとも2つの整流器(16,17)からなり、上記変圧器(1)の上記2つの出力端子(30,32)の一方に分離コンデンサ(13,14)を介して接続され、これにより、活性なパスを提供し、また、上記ダイオード(9,7)の上記変圧器(1)と反対側に配置されている上記端子にコンデンサ(15)を介して接続され、これにより基準パスを提供することを特徴とする装置。
[項目8]
項目6または7に記載の装置において、
上記直流電圧(U)は、
上記2つのトランジスタ(19,20)のゲート電圧を生成する電圧供給装置(21)に供給するために、および/または、
上記質量分析計のアノード電圧(U)を生成する電圧供給装置(18)に供給するために、および/または、
それぞれの活性化されたカソード(Kat,Kat)の放射電流を測定するための測定回路(23)に供給するために
働くことを特徴とする装置。
[項目9]
項目1から8までのいずれか一つに記載の装置において、
上記それぞれの活性化されたカソード(Kat,Kat)の放射電流を測定するための測定回路(23)は、パルス幅変調器(PWM)の形態で設けられていることを特徴とする装置。
[項目10]
項目9に記載の装置において、
上記放射電流は、
上記中間端子(31)と、上記2つのダイオード(7,9)の上記変圧器(1)と反対側に配置されている上記端子との間に直列に接続された2つの第1の抵抗器(26,29)を横切って減少し、
互いに直列に接続され、かつ上記第1の抵抗器(26,29)に並列に接続された2つの抵抗器(28,27)を介して平均化されることを特徴とする装置。
図1
図2