(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(導電性樹脂からなる容器を有する評価器具の基本構成例)
2.変形例
変形例1(実施の形態において、ポンプを用いた液体の流入機構を更に設けた例)
変形例2(変形例1において、液体の排出機構を更に設けた例)
3.その他の変形例
【0017】
<実施の形態>
[構成]
図1は、本発明の一実施の形態に係るアブレーションカテーテル用評価器具(評価器具1)等の概略構成例を模式的に表したものである。評価器具1は、アブレーションカテーテル3を用いた焼灼(アブレーション)を評価するための器具である。この評価器具1は、
図1に示したように、容器11、対極板12および熱電対13を備えている。なお、
図1(および後述する
図2〜
図6においても同様)では、説明の便宜上、評価器具1における容器11および対極板12については断面図にて示し、アブレーションカテーテル3については側面図にて示している。
【0018】
(アブレーションカテーテル3)
このような焼灼の評価に用いられるアブレーションカテーテル3は、不整脈の治療等に用いられるカテーテル(電極カテーテル)であり、患部を焼灼することで治療を行うようになっている。このようなアブレーションカテーテル3は、この例では
図1に示したように、1または複数(この例では3つ)のリング状電極31および先端電極32を有するカテーテルチューブ30と、図示しない操作部(カテーテル用のハンドル)とを備えている。
【0019】
カテーテルチューブ30は、実際の治療等に用いられる際には、血管を通して先端側が患者の体内に挿入される部分である。ただし、本実施の形態のように焼灼の評価に用いられる際には、例えば
図1に示したように、このカテーテルチューブ30の先端側が、評価器具1における容器11内(後述する液体2内)に挿入されるようになっている。
【0020】
このカテーテルチューブ30は、可撓性を有する管状構造(管状部材)からなり、自身の軸方向(長手方向)に沿って延伸する形状となっている。カテーテルチューブ30はまた、自身の軸方向に沿って延在するように内部に1つのルーメン(細孔,貫通孔)が形成されたいわゆるシングルルーメン構造、あるいは複数(例えば4つ)のルーメンが形成されたいわゆるマルチルーメン構造を有している。なお、カテーテルチューブ30内において、シングルルーメン構造からなる領域とマルチルーメン構造からなる領域との双方が設けられていてもよい。このようなルーメンには、図示しない各種の細線(1または複数の導線や操作用ワイヤ等)がそれぞれ、互いに電気的に絶縁された状態で挿通されている。
【0021】
このようなカテーテルチューブ30は、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエーテルポリアミド、ポリウレタン等の合成樹脂により構成されている。なお、カテーテルチューブ30の軸方向の長さは、例えば、約500〜1200mm程度(例えば1170mm)であり、カテーテルチューブ30の外径は、例えば、約0.6〜3mm程度(例えば2.0mm)である。
【0022】
リング状電極31および先端電極32はそれぞれ、
図1に示したように、カテーテルチューブ30の先端付近において、所定の間隔をおいて配置されている。また、リング状電極31はカテーテルチューブ30の外周面上に固定配置される一方、先端電極32は、カテーテルチューブ30の最先端に固定配置されている。これらの電極は、上記したカテーテルチューブ30のルーメン内に挿通された複数の導線(図示せず)を介して、後述する操作部と電気的に接続されるようになっている。
【0023】
このようなリング状電極31および先端電極32はそれぞれ、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、ステンレス鋼(SUS)、金(Au)、白金(Pt)等の、電気伝導性の良好な金属材料により構成されている。なお、アブレーションカテーテル3の使用時におけるX線に対する造影性を良好にするためには、白金またはその合金により構成されていることが好ましい。
【0024】
上記した操作部は、カテーテルチューブ30の基端側に装着されており、例えば、図示しない把持部(ハンドル本体)および回転板を有している。
【0025】
把持部は、アブレーションカテーテル3の使用時に操作者(医師)が掴む(握る)部分である。この把持部の内部には、カテーテルチューブ30の内部から、前述した各種の細線がそれぞれ延伸するようになっている。
【0026】
回転板は、カテーテルチューブ30の先端付近を偏向させる(湾曲させる)際の操作である、偏向移動操作(首振り操作)を行うための部材である。具体的には、この回転板が回転するように操作者によって操作されることで、例えば、そのようなカテーテルチューブ30の先端付近を両方向に偏向させることが可能となっている。
【0027】
(評価器具1)
評価器具1における前述した対極板12は、例えば平板状の電極である。詳細は後述するが、アブレーションカテーテル3を用いた焼灼の際には、この対極板12と、アブレーションカテーテル3における前述した先端電極32との間で、高周波通電がなされるようになっている。ちなみに、実際の治療等の際には、このような対極板12が、患者の体表に装着された状態で用いられるようになっている。
【0028】
容器11は、
図1に示したように、アブレーションカテーテル3を用いた焼灼を評価する際に用いられる液体2を収容する容器であり、この例では、対極板12上に配置されている。この容器11は、この例では枡状の形状を有しており、外面のサイズは、例えば、(70mm×150mm)×60mm(高さ)程度であり、内面のサイズは、例えば、(50mm×130mm)×40mm(高さ)程度である。
【0029】
ここで、液体2としては、例えば、生理食塩水、低濃度食塩水または血液等が挙げられる。なお、生理食塩水および低濃度食塩水における濃度は、例えば、0.45%程度あるいは0.90%程度である。なお、実際の人体における血液の電気特性を考慮すると、この濃度としては、0.90%程度よりも0.45%程度であるほうが望ましいと言える。人体の血液をより忠実に模擬することができるためである。
【0030】
また、
図1に示したように、容器11の底面S1における中央付近には、対極板12まで貫通する貫通孔110が形成されている。この貫通孔110は、
図1に示したように、アブレーションカテーテル3を用いた焼灼を評価する際の焼灼対象物9を挿入するための開口(焼灼対象物9が載置される挿入孔)である。また、貫通孔110は、この例では、容器110の底面S1側から対極板12側へ向かって径が徐々に小さくなるテーパ状の側面(側壁)S2を有している。換言すると、貫通孔110における側面S2は、傾斜面となっている。このような貫通孔110の径は、例えば、20mm〜23mm程度である。
【0031】
なお、上記した焼灼対象物9としては、例えば、動物等の生体の組織からなる検体、あるいは、所定の素材からなる人工物(樹脂等の組成物)等が挙げられる。
【0032】
このような容器11は、導電性樹脂により構成されている。この導電性樹脂としては、例えば、導電性シリコーンゴムや導電性プラスチック等が挙げられる。また、この容器11のインピーダンス(Z11)は、上記した焼灼対象物9のインピーダンス(Z9)と略等しくなっている(望ましくは等しくなっている)のが好ましい。なお、これらのインピーダンスZ11,Z9の値としては、例えば、100〜120Ω程度が挙げられる。
【0033】
熱電対13は、アブレーションカテーテル3を用いた焼灼の際の温度(焼灼対象物9における温度)を測定するための素子(温度センサ)である。この熱電対13における導線(リード線)等は、評価器具1内から外部(測定機器等)へと引き出されるようになっている。
【0034】
[作用・効果]
(A.基本動作)
この評価器具1は、アブレーションカテーテル3を用いた焼灼の評価の際に、以下のようにして使用される。
【0035】
すなわち、まず
図1に示したように、容器11における貫通孔110内に、前述した焼灼対象物9が載置されるとともに、この容器11内に、焼灼を評価する際に用いられる液体2が注入される。
【0036】
次いで、
図1に示したように、アブレーションカテーテル3におけるカテーテルチューブ30の先端付近(リング状電極31および先端電極32)が、容器11に収容された液体2内へ挿入される。そして、図示しない電源装置(高周波発生装置)からアブレーションカテーテル3に所定の電力が供給されることで、カテーテルチューブ30における先端電極32と、評価器具1における対極板12との間で、高周波通電がなされる。これにより、上記電極と対極板12との間に所定の電流が流れ、焼灼対象物9への焼灼が行われる。
【0037】
また、このような焼灼の際に、熱電対13を用いて、焼灼対象物9における温度測定(例えば、温度分布の測定等)が行われる。そして、このような焼灼後に、例えば目視等によって、焼灼対象物9における焼灼領域での焼灼具合等が確認される。
【0038】
このようにして評価器具1を使用することで、焼灼対象物9における焼灼状況(例えば、上記したような焼灼の際の温度分布や焼灼領域での焼灼具合等)を、事前(アブレーションカテーテル3の製品開発段階等)に評価することが可能となる。
【0039】
(B.評価器具1における作用)
続いて、このような焼灼の評価に使用される評価器具1における作用について、比較例(比較例1〜3)と比較しつつ詳細に説明する。
【0040】
(B−1.比較例1)
図2は、比較例1に係るアブレーションカテーテル用評価器具(評価器具100)等の概略構成例を模式的に表したものである。この比較例1の評価器具100は、
図2に示したように、容器101、対極板12および熱電対13を備えている。なお、
図2では便宜上、熱電対13の図示を省略している。
【0041】
この評価器具100は、実施の形態の評価器具1において、容器11の代わりに容器101を設けるようにすると共に、対極板12の配置を異ならせたものに対応し、他の構成は基本的に同様となっている。
【0042】
容器101は、容器11と同様に枡状の形状を有しており、例えば、ポリプロピレンやアクリル等の材料により構成されている。ただし、この容器101の底面には、容器11とは異なり、焼灼対象物9を載置するための貫通孔110が形成されていない。また、対極板12は、評価器具1とは異なり、容器101の内部(底面上)に配置されている。そして、この対極板12上に焼灼対象物9が載置されている。すなわち、この比較例1では、対極板12および焼灼対象物9がそれぞれ、容器101内で液体2に浸った状態となっている。
【0043】
このような構成により比較例1では、例えば
図2中に模式的に示したように、以下のような問題点が生じる。すなわち、アブレーションカテーテル3を用いた焼灼の際に、
図2中に示したような電流I101(焼灼対象物9内を流れる電流)だけでなく、液体2を流れる短絡電流Is(液体2を通過する短絡経路を流れる電流)が発生する。しかも、
図2中に模式的に線の太さで示したように、焼灼の際に本来流れるべき電流I101よりも、短絡電流Isのほうが大電流となる。焼灼の際にこのような短絡電流Isが多く発生するため、この比較例1では、焼灼の際のインピーダンス(例えば60Ω程度)が、人体におけるインピーダンス(100〜120Ω程度)と比べて低すぎることとなり、焼灼の評価精度(評価の際の測定精度)が低下してしまうことになる。
【0044】
(B−2.比較例2)
図3は、比較例2に係るアブレーションカテーテル用評価器具(評価器具200)等の概略構成例を模式的に表したものである。この比較例2の評価器具200は、
図3に示したように、容器101、対極板12および熱電対13を備えている。なお、
図3では便宜上、熱電対13の図示を省略している。
【0045】
この評価器具200は、上記した変形例1の評価器具100において、液体2の代わりに液体202を容器101に収容させるようにしたものに対応し、他の構成は基本的に同様となっている。
【0046】
この液体202は、液体2と比べて濃度(例えば食塩の濃度)を低くしたものに対応している。具体的には、液体2における濃度が、例えば0.45%程度あるいは0.90%程度である一方、液体202における濃度が、例えば0.20%程度となっている。これにより、液体202におけるインピーダンスが、上記した人体におけるインピーダンス(100〜120Ω程度)と同程度となり、液体2におけるインピーダンス(例えば前述したように60Ω程度)と比べて適切な範囲となるように設定されるようになっている。
【0047】
したがってこの比較例2では、上記比較例1と比べ、焼灼の際の短絡電流Isの発生が抑えられることになる。具体的には、まず、例えば
図3中に模式的に示したように、比較例2においても、アブレーションカテーテル3を用いた焼灼の際に、電流I201(焼灼対象物9内を流れる電流)だけでなく、液体202を流れる短絡電流Is(液体202を通過する短絡経路を流れる電流)が発生する。ただし、
図3中に模式的に線の太さで示したように、液体202におけるインピーダンスが上記したように適切な範囲に設定されていることから、焼灼の際に本来流れるべき電流I201と比べ、短絡電流Isのほうが小電流となる。このようにして比較例2では、焼灼の際の短絡電流Isの発生が抑えられる結果、焼灼の評価精度が比較例1よりは向上することになる。
【0048】
ところが、例えば
図3中に示したように、このような焼灼の際に、アブレーションカテーテル2における先端電極32の先端付近から灌注用の液体L(生理食塩水等)を噴出させて評価するようにした場合には、この比較例2においても以下の問題が生じ得る。なお、実際の治療等における焼灼の際に、このような灌注用の液体Lを噴出させる手法は、焼灼の際の処置部分の温度が上昇しすぎて損傷が起こったり、処置部分に血栓がこびりついたりすることを回避する(血液滞留を改善させる)ために用いられる。
【0049】
すなわち、そのような灌注用の液体Lが噴出されると、容器101に収容されている液体202の濃度が変動する(高くなる)ことから、やはり短絡電流Isの発生が多くなり、その結果、この比較例2においても評価精度が低下してしまうことになる。つまり、容器101に収容される液体202の濃度に依存して、評価精度の低下が生じてしまうおそれがあると言える。
【0050】
(B−3.比較例3)
図4は、比較例3に係るアブレーションカテーテル用評価器具(評価器具300)等の概略構成例を模式的に表したものである。この比較例3の評価器具300は、
図4に示したように、容器301、対極板12および熱電対13を備えている。なお、
図4では便宜上、熱電対13の図示を省略している。
【0051】
この評価器具300は、実施の形態の評価器具1において、容器11の代わりに容器301を設けたものに対応し、他の構成は基本的に同様となっている。
【0052】
容器301は、容器11と同様に枡状の形状を有している。ただし、この容器301の底面S301には、容器11とは異なり、焼灼対象物9を載置するための貫通孔110が形成されていない。また、この比較例3では、容器301(底面S301側の部分)が、焼灼対象物9としても機能するようになっている。このような容器301は、前述した人体におけるインピーダンス(100〜120Ω程度)に比較的近いインピーダンスを有する、所定の材料(例えば、PVA−H(PolyVinyl Alcohol-Hydrogel))により構成されている。
【0053】
このような構成により比較例3では、上記比較例1,2とは異なり、焼灼の際の短絡電流Isの発生が回避される(
図4中に示した「×(バツ)」印参照)。これは、上記したように、液体2を収容する容器301の一部が焼灼対象物9としても機能するため、アブレーションカテーテル3と焼灼対象物9との間に、液体2を通過する短絡経路が形成されないことに起因している。具体的には、例えば
図4中に模式的に示したように、アブレーションカテーテル3を用いた焼灼の際に、電流I301,I302(焼灼対象物9内を流れる電流)が発生する一方、液体2を流れる短絡電流Isの発生が回避される。このようにして比較例3では、焼灼の際の短絡電流Isの発生が回避される結果、焼灼の評価精度が、比較例1,2と比べて向上することになる。
【0054】
ただし、上記した容器301は、特殊な製法を用いて製造されるものとなっている。具体的には、例えば、100℃程度での数時間程度の加熱工程や、PVA溶液を冶具に流し込んだ状態で低温(−30℃程度)での1日程度の冷却工程を要したりしている。つまり、この比較例3では、焼灼の評価精度は向上するものの、評価器具300を簡易に製造することが困難であると言える。
【0055】
なお、この比較例3の容器301は、上記したように冷却工程を経て作製されるものであることから、数時間程度しか使用できない(使用時間の制限がある)とともに、耐熱性が低い(80℃程度)ため、焼灼の際に徐々に壊れてしまうという問題点もある。
【0056】
このようにして、上記比較例1〜3の評価器具100,200,300では、アブレーションカテーテル3を用いた焼灼の際の評価精度を向上させつつ、簡易に製造することが困難である。
【0057】
(B−2.本実施の形態)
これに対して本実施の形態の評価器具1では、上記比較例1〜3とは異なり、以下のようになっている。
【0058】
すなわち、まず、この評価器具1では、
図1に示したように、対極板12まで貫通する貫通孔110が容器11に設けられると共に、この貫通孔110に、アブレーションカテーテル3を用いた焼灼を評価する際の焼灼対象物9が挿入(載置)されるようになっている。これにより本実施の形態では、上記比較例3と同様に、アブレーションカテーテル3と焼灼対象物9との間に、液体2を通過する短絡経路が形成されないことになる。したがって、本実施の形態でも上記比較例1,2とは異なり、焼灼の際の短絡電流Isの発生が回避される(
図1中に示した「×」印参照)。換言すると、本実施の形態では、容器11に収容される液体2の濃度等に関わらず、焼灼の際の短絡電流Isの発生が防止される。
【0059】
また、この評価器具1は、前述したような導電性樹脂により構成されていることから、例えば上記比較例3のように、特殊な素材や製法を用いて得られる容器等の場合と比べ、容器11を簡易に得ることができるようになる。加えて、この容器11は、比較例3における容器301とは異なり、前述したような使用時間の制約や耐熱性の問題も生じない。
【0060】
ここで、評価器具1では更に、
図1に示したように、貫通孔110が、対極板12側へ向かって径が徐々に小さくなるテーパ状の側面S2を有している。これにより、容器11内の液体2がこの貫通孔110(焼灼対象物9と側面S2との間の隙間)を介して対極板12側へ漏れてしまうおそれが、より確実に防止されるようになる(容器11内の液体2に対する止水性が向上する)。
【0061】
加えて、この評価器具1では、容器11のインピーダンス(Z11)が焼灼対象物9のインピーダンス(Z9)と略等しくなっている(望ましくは等しくなっている)ようにした場合には、以下のようになる。すなわち、実際の治療時により近い環境下(より的確に人体を模擬した環境下)での焼灼が実現されるようになる。
【0062】
以上のように本実施の形態では、導電性樹脂により構成されると共に貫通孔110を有する容器11を設けるようにしたので、この容器11を簡易に得ることができると共に、容器11に収容される液体2の濃度等に関わらずに焼灼の際の短絡電流Isの発生を防止することができる。よって、このような容器11を有する評価器具1を用いることで、アブレーションカテーテル3を用いた焼灼の際の評価精度を向上させつつ、簡易に製造することが可能となる。
【0063】
また、貫通孔110が、対極板12側へ向かって径が徐々に小さくなるテーパ状の側面S2を有しているようにしたので、上記したような液体2の漏れに起因した短絡電流Isの発生を回避することができる。よって、評価精度の更なる向上を図ることが可能となる。
【0064】
更に、上記したインピーダンスZ11,Z9同士が互いに略等しくなっている(望ましくは等しくなっている)ようにした場合には、上記したように、実際の治療時により近い環境下での焼灼が実現されるようになる。よって、この点でも、評価精度の更なる向上を図ることが可能となる。
【0065】
<変形例>
続いて、本発明の変形例(変形例1,2)について説明する。なお、上記実施の形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0066】
[変形例1]
図5は、変形例1に係るアブレーションカテーテル用評価器具(評価器具1A)等の概略構成例を模式的に表したものである。本変形例の評価器具1Aは、実施の形態の評価器具1と同様に、アブレーションカテーテル3を用いた焼灼を評価するための器具である。この評価器具1Aは、
図5に示したように、容器11、対極板12、熱電対13、流入路14およびポンプ15を備えている。
【0067】
評価器具1Aは、
図1に示した実施の形態の評価器具1において、流入路14およびポンプ15(フローポンプ)を更に設けるようにしたものに対応し、他の構成は基本的に同様となっている。なお、これらの流入路14およびポンプ15は、本発明における「流入機構」の一具体例に対応している。
【0068】
流入路14は、
図5に示したように、外部から容器11内へ液体Linを流入(注入)する際の経路(流路)である。つまり、この流入路14を介して、外部から容器11内に液体Linが流入されるようになっている。なお、この液体Linは、説明の便宜上により液体2と符号を異ならせただけであり、前述した液体2と同じもの(生理食塩水、低濃度食塩水または血液等)となっている。
【0069】
ポンプ15は、流入路14を経由して液体Linが容器11内に流入されるように動作するポンプである。なお、このようなポンプ15としては、各種方式のポンプを用いることが可能である。
【0070】
このような構成の本変形例においても、基本的には上記実施の形態と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能である。
【0071】
また、特に本変形例では、ポンプ15を用いて液体Linを容器11内へ流入させる流入機構を更に設けるようにしたので、容器11内で液体2が流動するようになる。したがって、実際の治療時(血液が流れている環境)により近い環境下(より的確に人体を模擬した環境下)での焼灼が実現される結果、本変形例では、評価精度の更なる向上を図ることが可能となる。
【0072】
また、このような流入機構を用いることで、例えば、流入させる液体Linの温度や濃度等についても適宜調整(制御)することができることから、本変形例では、更に適切な環境下での焼灼を実現することも可能となる。
【0073】
[変形例2]
図6は、変形例2に係るアブレーションカテーテル用評価器具(評価器具1B)等の概略構成例を模式的に表したものである。本変形例の評価器具1Bは、実施の形態および変形例1の評価器具1,1Aと同様に、アブレーションカテーテル3を用いた焼灼を評価するための器具である。この評価器具1Bは、
図6に示したように、容器11、対極板12、熱電対13、流入路14、ポンプ15および排出路16を備えている。
【0074】
評価器具1Bは、
図5に示した変形例1の評価器具1Aにおいて排出路16を更に設けるようにしたものに対応し、他の構成は基本的に同様となっている。なお、この排出路16は、本発明における「排出機構」の一具体例に対応している。
【0075】
排出路16は、
図6に示したように、容器11に収容されている液体2の一部を液体Loutとして外部へ排出(流出)させる際の経路(流路)となる部分である。つまり、この排出路16を介して、容器11に収容されている液体2の一部が、液体Loutとして外部へ排出されるようになっている。なお、この液体Loutも、説明の便宜上により液体2と符号を異ならせただけであり、前述した液体2と同じもの(生理食塩水、低濃度食塩水または血液等)となっている。
【0076】
このような構成の本変形例においても、基本的には上記実施の形態と同様の作用により同様の効果を得ることが可能である。
【0077】
また、特に本変形例では、容器11に収容されている液体2を外部へ排出させる排出機構(排出路16)を更に設けるようにしたので、以下の効果も得ることが可能となる。すなわち、変形例1で説明した流入機構による液体Linの流入に起因して容器11外へ液体2が漏れ出してしまうおそれが回避されると共に、液体Loutが排出されることで、容器11内での液体2の流動が、変形例1と比べてより効果的になされるようになる。よって、本変形例では、評価の際の利便性を向上させることが可能となると共に、変形例1よりも更に的確に人体を模擬した環境下での焼灼を実現することができ、評価精度をより一層向上させることが可能となる。
【0078】
<その他の変形例>
以上、実施の形態および変形例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。
【0079】
例えば、上記実施の形態等において説明した各部材の構成(形状や配置位置、材料等)は限定されるものではなく、他の形状や配置位置、材料等としてもよい。具体的には、例えば貫通孔110の形状は、上記実施の形態等で説明したもの(テーパ状の側壁S2を有する形状)には限られず、他の形状としてもよい。
【0080】
また、カテーテルチューブ30における電極の構成(リング状電極31および先端電極32の配置や形状、個数等)は、上記実施の形態等で挙げたものには限られず、他の構成としてもよい。
【0081】
更に、変形例1,2で説明した液体の流入機構(ポンプ15および流入路14)ならびに排出機構(排出路16)については、それぞれ、場合によっては設けられていないようにしてもよい。
【0082】
加えて、上記実施の形態等では、容器のインピーダンスが焼灼対象物のインピーダンスと略等しい(望ましくは等しい)場合の例を挙げて説明したが、これには限られない。すなわち、例えば、容器のインピーダンスと焼灼対象物のインピーダンスとが互いに異なっている(これらのうちの一方が他方よりもインピーダンスが大きい、あるいは小さい)場合についても、本発明を適用することが可能である。
【0083】
また、カテーテルチューブ30における先端付近の形状の態様は、上記実施の形態等で説明したものには限られない。具体的には、上記実施の形態等では、カテーテルチューブにおける先端付近の形状が操作部への操作に応じて両方向に変化するタイプ(バイディレクションタイプ)のアブレーションカテーテル3を例に挙げて説明したが、これには限られない。すなわち、本発明は、例えば、カテーテルチューブにおける先端付近の形状が操作部への操作に応じて片方向に変化するタイプ(シングルディレクションタイプ)のアブレーションカテーテルにも適用することが可能である。