特許第6291453号(P6291453)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6291453
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】調理器
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20180305BHJP
【FI】
   A47J27/00 103N
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-93459(P2015-93459)
(22)【出願日】2015年4月30日
(65)【公開番号】特開2016-209127(P2016-209127A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2017年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002473
【氏名又は名称】象印マホービン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】徳岡 卓真
【審査官】 西田 侑以
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−030722(JP,A)
【文献】 実開昭61−030416(JP,U)
【文献】 実開昭63−003318(JP,U)
【文献】 実開昭58−037826(JP,U)
【文献】 実開昭58−029018(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理器本体に、後方側の支軸を中心として回動可能に蓋体を設け、前記調理器本体内に設けた第1電気部品と、前記蓋体内に設けた第2電気部品とを配線によって接続するようにした調理器であって、
前記配線は、前記支軸の上方から後方側を通過するように配置され、
前記蓋体の開放時、後方側に撓む前記配線の少なくとも一部を沿わせることにより、前記配線の撓み形状の曲率半径が所定値以上となるようにガイドするガイド部を、前記蓋体の内面に形成したことを特徴とする調理器。
【請求項2】
前記ガイド部は、前記第1電気部品との接続側から後方側に向かうに従って前記蓋体の内面からの突出寸法が徐々に小さくなる漸減部を有することを特徴とする請求項1に記載の調理器。
【請求項3】
前記ガイド部の漸減部は、撓み始める前記配線との接触開始位置が前記蓋体の内面から離れる方向に膨らんでいる膨らみ部で構成したことを特徴とする請求項2に記載の調理器。
【請求項4】
前記ガイド部は、所定間隔で対向する一対の対向壁で構成したことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の調理器。
【請求項5】
前記配線はフラットケーブルであり、
前記フラットケーブルの平坦面を蓋体の内面に対して平行となるように位置規制する位置規制部を備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理器、特にその蓋体の内部に設けたケーブルが蓋体の開閉により断線しにくい構造を備えた調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、炊飯器として、蓋体の上面に液晶パネル等の表示手段を設けたものがある(例えば、特許文献1参照)。この炊飯器では、表示手段への電力供給や信号の送受信のための電気ケーブルが蓋体内に収容されている。
【0003】
しかしながら、前記従来の構成では、蓋体が開閉するときの電気ケーブルの撓み方が、それぞれの開閉動作毎に変化する可能性がある。このため、電気ケーブルの撓み方によっては、この電気ケーブルに無理な負荷がかかることもあり、長期に亘る使用により断線に至る恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−238792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、蓋体の開閉に伴い、蓋体内に設けたケーブルが伸長を繰り返したとしても、断線しにくい構造を備えた調理器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、
調理器本体に、後方側の支軸を中心として回動可能に蓋体を設け、前記調理器本体内に設けた第1電気部品と、前記蓋体内に設けた第2電気部品とを配線によって接続するようにした調理器であって、
前記配線は、前記支軸の上方から後方側を通過するように配置され、
前記蓋体の開放時、後方側に撓む前記配線の少なくとも一部を沿わせることにより、前記配線の撓み形状の曲率半径が所定値以上となるようにガイドするガイド部を、前記蓋体の内面に形成した調理器を提供する。
【0007】
この構成により、蓋体を開閉しても、配線はガイド部に沿って撓むため、撓み形状を安定させることができ、配線が蓋体の開閉毎に撓み方が変化することがなくなる。したがって、配線、特に電気部品との接続部分に無理な負荷がかかって断線するといった不具合の発生を防止することができる。
【0008】
前記ガイド部は、前記第1電気部品との接続側から後方側に向かうに従って前記蓋体の内面からの突出寸法が徐々に小さくなる漸減部を有するのが好ましい。
【0009】
この構成により、蓋体の開放時に配線が撓み始めれば、その撓み形状を徐々にガイド部の漸減部に沿わせることができる。したがって、配線を無理なく所定の形状に沿わせることが可能となる。
【0010】
前記ガイド部の漸減部は、撓み始める前記配線との接触開始位置が前記蓋体の内面から離れる方向に膨らんでいる膨らみ部で構成するのが好ましい。
【0011】
この構成により、配線を撓み始めからガイド部の膨らみ部にスムーズに沿わせることができる。
【0012】
前記ガイド部は、所定間隔で対向する一対の対向壁で構成するのが好ましい。
【0013】
この構成により、配線がフラットケーブルであれば、その当接状態を安定させることができる。
【0014】
前記配線はフラットケーブルであり、
前記フラットケーブルの平坦面を蓋体の内面に対して平行となるように位置規制する位置規制部を備えるのが好ましい。
【0015】
この構成により、蒸気口を回避して配置した配線の向きを確実に蓋体の内面と平行とすることができ、ガイド部による支持状態を安定させることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、蓋体を開閉する際の配線の撓み形状をガイド部によって安定させることができる。したがって、蓋体が繰り返し開閉されても、配線が好ましくない形状に変形することがなく、その断線を効果的に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係る炊飯器の斜視図である。
図2図1の蓋体を底面側から見た状態を示す斜視図である。
図3図1の蓋体が閉鎖状態にあるヒンジ部分を示す概略断面図である。
図4図3の蓋体の一部を示す拡大図である。
図5図1の蓋体が開放途中にあるヒンジ部分を示す概略断面図である。
図6図1の蓋体が開放途中にあるヒンジ部分を示す概略断面図である。
図7図1の蓋体が全開状態にあるヒンジ部分を示す概略断面図である。
図8図4に示すガイド部の他の実施形態に係る部分拡大図である。
図9図4に示すガイド部の他の実施形態に係る部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。
【0019】
図1は、本実施形態に係る調理器の一例である炊飯器の全体構成を示す斜視図である。この炊飯器では、炊飯器本体1に蓋体2が回動可能に取り付けられている。
【0020】
蓋体2は、上蓋3と下蓋4とを備える。図3に示すように、上蓋3は支軸5を中心として炊飯器本体1に回動可能に支持されている。支軸5にはヒンジバネ6が巻き付けられている。ヒンジバネ6は、蓋体2を炊飯器本体1に対して開放方向に付勢する。
【0021】
上蓋3には蓋パネル7が設けられている。蓋パネル7の内部には第1電気部品である液晶基板8が収容されている。液晶基板8にはフラットケーブル9の一端側のコネクタ(図示せず)が接続されている。
【0022】
図2に示すように、上蓋3の内面(天井面)には、蒸気口10に対して側方部分に位置する位置規制部11と、蒸気口10に対して蓋パネル7とは反対側に位置するガイド部12とがそれぞれ設けられている。
【0023】
図3に示すように、位置規制部11は、その先端部分に側縁から切り欠かれたスリット11aを有する。蓋パネル7から導出されたフラットケーブル9は、位置規制部11のスリット11aに配置されることにより、上蓋3に形成した蒸気口10を回避して側方に位置する。この状態では、フラットケーブル9の平坦面が上蓋3の内面に対してほぼ平行となる。
【0024】
図2に示すように、ガイド部12は、所定間隔で配置した一対の対向壁13を備え、対向壁同士は両端側で補強壁14によって連結されている。対向壁13は、位置規制部11側に、上蓋3の内面からの突出寸法が徐々に小さくなった後、再び大きくなる湾曲部15を有する。詳しくは、図4に示すように、湾曲部15は、位置規制部11側から、突出方向に膨らんだ漸減部である膨らみ部15a、上蓋3の内面側にR形状に窪んだ窪み部15b、直線部15c、及び、面取りされた丸面15dで構成されている。ここでは、膨らみ部15aが上蓋3の内面からの突出寸法が徐々に小さくなる漸減部を構成している。上蓋3の底面図では、ガイド部12は蒸気口10の側方部分から上蓋3の中心側に向かって斜め後方に延びている。湾曲部15の一部は、後述するように、蓋体2を開放することによりフラットケーブル9の一部が撓んだ際、その湾曲部15の一部をガイドできるようになっている。
【0025】
図3に示すように、フラットケーブル9は、液晶基板8側から上蓋3の後方側へと延び、位置規制部11に形成したスリット11aに配置され、上蓋3に形成した蒸気口10を回避して側方に位置する。位置規制部11を通過したフラットケーブル9は、徐々に下方側に傾斜し、上蓋3の後方中心側へと向かい、支軸5に巻回したヒンジバネ6の外周部分に沿って下方側に方向変換される。フラットケーブル9の他端側のコネクタは、炊飯器本体1内の後方側に配置された、第2電気部品である制御基板17に接続される。蓋体2が炊飯器本体1に対して閉鎖した状態であれば、フラットケーブル9は、位置規制部11とヒンジバネ6の外周部分との間で最短距離を形成するように真っ直ぐに延びている。
【0026】
炊飯器本体1の背面には、ヒンジカバー16が取り付けられている。ヒンジカバー16の上方部によってヒンジバネ6が覆われ、下方部に制御基板17が収容されている。制御基板17の下方部分にフラットケーブル9の他端のコネクタが接続される。フラットケーブル9は、制御基板17の下方部分から制御基板17の前面に沿って上方に延び、ヒンジバネ6に至る。
【0027】
次に、前記構成からなる炊飯器に於ける蓋体2の開閉動作について説明する。
図3に示すように、炊飯器本体1に対して蓋体2を閉鎖した状態では、フラットケーブル9の一端側はヒンジバネ6よりも前方側に位置しているので、フラットケーブル9はヒンジバネ6の巻回部分(外周面)に沿う。この状態では、フラットケーブル9は殆ど撓みの無い状態となっている。
【0028】
図5に示すように、炊飯器本体1に対して蓋体2を開放して行くと、フラットケーブル9は徐々に外方側すなわち炊飯器の後方上側へと膨らむように湾曲し始める。これは、蓋体2を開放していっても、位置規制部11と支軸5の距離が変化しないのに対し、位置規制部11とヒンジバネ6の後方側との間でフラットケーブル9の距離が接近するためである。
【0029】
蓋体2をさらに開放すると、フラットケーブル9の撓み量がさらに大きくなり、ガイド部12の膨らみ部15aに対して位置規制部11側から、フラットケーブル9がガイド部12に当接する。そしてまず、フラットケーブル9の湾曲形状が膨らみ部15aの形状に沿うように変形する。
【0030】
図6に示すように、蓋体2を所定位置まで開放すると(ここでは、蓋体2を閉鎖位置から60°開放した状態を示す。)、フラットケーブル9の一部がヒンジカバー16の上端部に当接する。これにより、フラットケーブル9はそれ以上、蓋体2の内面に対して接近することを抑制される。この状態では、フラットケーブル9は、ガイド部12の膨らみ部15aと窪み部15bとに当接し、湾曲形状が当接部分の形状に沿うことになる。つまり、蓋体2を図6に示す位置まで開放した場合、フラットケーブル9が常にガイド部12の膨らみ部15aと窪み部15bとによってガイドされることになり、安定した形状を維持する。
【0031】
図7に示すように、蓋体2を最大開放位置(ここでは、閉鎖位置から90°開放した状態を示す。)まで開放すると、フラットケーブル9の一部がヒンジカバー16の上端部に当接する。このため、フラットケーブル9は、位置規制部11とヒンジカバー16の上端部の当接位置の間で円弧状に湾曲し、ガイド部12との当接位置が膨らみ部15aとなる。つまり、フラットケーブル9はこれら3点でガイドされることになり、安定した形状を維持し、フラットケーブル9の蓋体2の内面側への変位量が抑制される。
【0032】
このように、ガイド部12を形成した蓋体2によれば、蓋体2を開放してフラットケーブル9に撓みが生じたとしても、フラットケーブル9は、ガイド部12等に当接することにより、蓋体2の開閉毎に異なる形状に変形することがない。したがって、フラットケーブル9の湾曲形状を安定させることができ、一部に引張力が集中して断線するといった不具合の発生を防止することが可能となる。
【0033】
なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0034】
前記実施形態では、ガイド部12を2列の対向壁13で構成するようにしたが、複数の突起で構成するようにしてもよいし、1以上のブロックで構成するようにしてもよい。
ガイド部12を複数の突起で形成する場合、先端部分を半球状等の湾曲面で構成し、当接するフラットケーブル9を傷付けないようにするのが好ましい。また突起は、フラットケーブル9を所望の湾曲形状とできるように分布させる必要がある。
ガイド部12をブロックで形成する場合、フラットケーブル9に代えて複連電線又は単電線としても、確実にガイドすることができる。
また、ガイド部12は、位置規制部11側に漸減部である膨らみ部15aを有する湾曲部15を備えた構成としたが、漸減部には次のような構成を採用することもできる。
図8では、位置規制部11側のR形状の面取り部分から窪み部15bに向かって傾斜部15dが形成されている。傾斜部15dは面取り部分と窪み部15bとを結ぶ接線方向に形成されている。
図9では、位置規制部11側のR形状の面取り部分から窪み部15bに向かって凹部15eが形成されている。凹部15eと窪み部15bとの接続部分もR形状の面取りで構成されている。
前記いずれの構成であっても、蓋体2の開放時に撓んだフラットケーブル9に対して傾斜部15d又は凹部15eの一部が当接し、フラットケーブル9が3点支持されて安定した形状を維持することは、前記実施形態に係る構成と同様である。
【0035】
前記実施形態では、ガイド部12を蓋体2の内面から突出させた構成としたが、内面からの突出部分をなくし、ガイド部12を蓋体2の内面自体で構成するようにしてもよい。
【0036】
前記実施形態では、液晶基板と制御基板17とをフラットケーブル9で接続する場合について説明したが、複連電線又は単電線であっても構わない。フラットケーブル9の場合、ガイド部12は、対向壁13、複数の突起、ブロック、あるいは、蓋体2の内面自体等、種々の形態で支持することができるが、複連電線又は単電線であれば、対向壁同士を連結する補強壁14の数を増やして、電線が対向壁13間に侵入しないようにしたり、ブロックや蓋体2の内面自体で構成したりする必要がある。
【符号の説明】
【0037】
1…炊飯器本体
2…蓋体
3…上蓋
4…下蓋
5…支軸
6…ヒンジバネ
7…蓋パネル
8…液晶パネル(第1電気部品)
9…フラットケーブル
10…蒸気口
11…位置規制部
12…ガイド部
13…対向壁
14…補強壁
15…湾曲部
15a…膨らみ部(漸減部)
16…ヒンジカバー
17…制御基板(第2電気部品)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9