(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記変性グリセリン系化合物が、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノオレート、グリセリンモノアセトモノステアレート、グリセリンジアセトモノカプリレート、グリセリンジアセトモノデカノエートから選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
前記ポリヒドロキシアルカノエートが、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)、およびポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−4−ヒドロキシブチレート)から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする、請求項1から4の何れかに記載のポリエステル樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について、さらに詳細に説明する。
【0020】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(A)と、結晶化促進剤(B)およびペンタエリスリトール(C)とを含有することを特徴とする。
【0021】
本発明に用いるポリエステル樹脂(A)は、重量平均分子量(以下、Mwと称する場合がある)が1万以上であり、例えば、ポリ(テトラメチレンサクシネート−コ−テレフタレート)、ポリ(エチレンサクシネート−コ−テレフタレート)、ポリ(テトラメチレンアジペート−コ−テレフタレート)等の芳香族ポリエステルや、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート、ポリエチレンセバシケート、ポリブチレンセバシケート、ポリヘキサメチレンセバケート等の脂肪族ポリエステルが挙げられる。
【0022】
中でも、成形加工性および成形体物性の観点から、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、およびポリブチレンサクシネート・アジペートから選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。特に、環境負荷が少ないバイオベース材料であること、優生分解性という点から、PHAが好ましく、PHAは、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート−コ−3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−4−ヒドロキシブチレート)およびポリ乳酸から選択される少なくとも1種を含有することがさらに好ましい。
【0023】
本発明に用いるPHAは、式(1) :[−CHR−CH
2−CO−O−](式中、RはC
nH
2n+1で表されるアルキル基で、nは1以上15以下の整数である。)で示される繰り返し単位を含む脂肪族ポリエステルである。
【0024】
PHAは、3−ヒドロキシブチレートが80モル%以上からなる重合樹脂であることが好ましく、より好ましくは85モル%以上からなる重合樹脂であり、微生物によって生産された物が好ましい。具体例としては、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)単独重合樹脂、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシプロピオネート)共重合樹脂、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート)共重合樹脂、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3-ヒドロキシバレレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)共重合樹脂、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)共重合樹脂、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘプタノエート)共重合樹脂、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシオクタノエート)共重合樹脂、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシノナノエート)共重合樹脂、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシデカノエート)共重合樹脂、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシウンデカノエート)共重合樹脂、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−4−ヒドロキシブチレート)共重合樹脂等が挙げられる。
【0025】
特に、成形加工性および成形体物性の観点から、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)単独重合樹脂、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート)共重合樹脂、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート−コ−3-ヒドロキシヘキサノエート)共重合樹脂、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)共重合樹脂、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−4−ヒドロキシブチレート)共重合樹脂が好適に使用し得る。
【0026】
前記PHAにおいて、3−ヒドロキシブチレート(以下、3HBと称する場合がある)と、共重合しているコモノマー(例えば、3−ヒドロキシバレレート(以下、3HVと称する場合がある)、3−ヒドロキシヘキサノエート(以下、3HHと称する場合がある)、4−ヒドロキシブチレート)との構成比、即ち共重合樹脂中のモノマー比率としては、成形加工性および成形体品質等の観点から、3−ヒドロキシブチレート/コモノマー=97/3〜80/20(モル%/モル%)であることが好ましく、95/5〜85/15(モル%/モル%)であることがより好ましい。コモノマー比率が3モル%未満であると、成形加工温度と熱分解温度が近接するため成形加工し難い場合がある。コモノマー比率が20モル%を超えると、PHAの結晶化が遅くなるため生産性が悪化する場合がある。前記コモノマーは1種類であってもよいが、2種類以上を使用することもできる。前記コモノマーを2種類以上使用する場合であっても、共重合樹脂中のモノマー比率(3−ヒドロキシブチレート/コモノマー)の好ましい範囲は上記と同様である。
【0027】
前記PHAの共重合樹脂中の各モノマー比率は、以下のようにガスクロマトグラフィーによって測定できる。乾燥PHA約20mgに、2mlの硫酸/メタノール混液(15/85(重量比))と2mlのクロロホルムを添加して密栓し、100℃で140分間加熱して、PHA分解物のメチルエステルを得る。冷却後、これに1.5gの炭酸水素ナトリウムを少しずつ加えて中和し、炭酸ガスの発生が止まるまで放置する。4mlのジイソプロピルエーテルを添加してよく混合した後、上清中のPHA分解物のモノマーユニット組成をキャピラリーガスクロマトグラフィーにより分析することにより、共重合樹脂中の各モノマー比率を求められる。
【0028】
前記ガスクロマトグラフとしては、島津製作所社製「GC−17A」を用い、キャピラリーカラムにはGLサイエンス社製「NEUTRA BOND−1」(カラム長:25m、カラム内径:0.25mm、液膜厚:0.4μm)を用いる。キャリアガスとしてHeを用い、カラム入口圧を100kPaとし、サンプルは1μl注入する。温度条件は、8℃/分の速度で初発温度100℃から200℃まで昇温し、さらに200〜290℃まで30℃/分の速度で昇温する。
【0029】
本発明のポリエステル樹脂(A)の重量平均分子量は、1万以上であれば特に限定されないが、加工性や機械的特性に優れる点で、10万〜250万が好ましく、25万〜200万がより好ましく、30万〜100万がさらに好ましい。重量平均分子量が10万未満では、機械物性等が劣る場合があり、250万を超えると、成形加工が困難となる場合がある。
【0030】
前記重量平均分子量の測定方法は、ゲル浸透クロマトグラフィー(昭和電工社製「Shodex GPC−101」)を用い、カラムにポリスチレンゲル(昭和電工社製「Shodex K−804」)を用い、クロロホルムを移動相とし、ポリスチレン換算した場合の分子量として求めることができる。この際、検量線は重量平均分子量31400、197000、668000、1920000のポリスチレンを使用して作成する。
【0031】
なお、前記PHAは、例えば、Alcaligenes eutrophusにAeromonas caviae由来のPHA合成酵素遺伝子を導入したAlcaligenes eutrophus AC32株(ブダペスト条約に基づく国際寄託、国際寄託当局:独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)、原寄託日:平成8年8月12日、平成9年8月7日に移管、寄託番号FERM BP−6038(原寄託FERM P−15786より移管))(J.Bacteriol.,179,4821(1997))等の微生物によって産生される。
【0032】
本発明の結晶化促進剤(B)は、重量平均分子量1万未満であるポリエステル樹脂(A)の結晶化を促進する成分であって、ペンタエリスリトール以外のものをいう。
【0033】
本発明における結晶化促進剤(B)とは、配合することでペンタエリスリトール(C)の結晶核剤効果を促進する働きをする化合物であって、ペンタエリスリトールを含むポリエステル樹脂の結晶の生成を速めること、または結晶の成長を速めることができる化合物であれば特に限定されない。例えば、示差走査熱量分析(DSC)において、溶融状態から一定の降温速度で冷却する際に結晶化にともなう発熱ピーク面積を大きくできる材料や、発熱のピークを高温側にシフトさせる材料や溶融状態から任意の降温速度で冷却する際に結晶核の生成速度や球晶の成長速度を速める効果を有する材料等を挙げることができる。
【0034】
それにより、ポリエステル樹脂を溶融混練した後、ストランド状に押出す際の引取り速度を速めたり、シート/フィルム成形時に引取り速度を速めたり、あるいは、射出成形時に離型時間を短縮させることができる等、加工性を大幅に向上させることができる。
【0035】
本発明における前記結晶化促進剤(B)の配合量は、ポリエステル樹脂(A)100重量部に対して1〜30重量部であり、4〜20重量部が好ましい。前記含有量が1量部未満では、結晶化促進の効果が小さい場合があり、30重量部を超えるとそれ以上は効果が変わらない上にブリードアウトの原因にもなる場合がある。
結晶化促進剤(B)としては、エステル結合を有する化合物が好ましい。結晶化促進剤(B)として、具体的には、変性グリセリン系化合物、アジピン酸エステル系化合物、ポリエーテルエステル系化合物、安息香酸エステル系化合物、フタル酸エステル系化合物、イソソルバイドエステル系化合物、およびポリカプロラクトン系化合物などを用いることができる。
【0036】
結晶化促進剤(B)としては、コスト、汎用性に優れているのに加え、バイオマス度が高い点から、変性グリセリン系化合物が好ましい。ここで、変性グリセリン系化合物とは、グリセリンの水酸基の一部または全部が例えばカルボキシル基を有する化合物とエステル結合を形成したものである。
【0037】
変性グリセリン系化合物としては、グリセリンエステル系化合物が好ましい。グリセリンエステル系化合物としては、グリセリンのモノエステル、ジエステル、又はトリエステルのいずれも使用することができるが、結晶化促進作用の点から、グリセリンのトリエステルが好ましい。グリセリンのトリエステルのなかでも、グリセリンジアセトモノエステルが特に好ましい。グリセリンジアセトモノエステルの具体例としては、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノオレート、グリセリンジアセトモノステアレート、グリセリンジアセトモノカプリレート、グリセリンジアセトモノデカノエート等を挙げることができる。
【0038】
結晶化促進剤(B)としては、樹脂成分への親和性に優れブリードしにくい点から、グリセリンジアセトモノエステル系化合物、アジピン酸エステル系化合物、ポリエーテルエステル系化合物、安息香酸エステル系化合物などを好ましく用いることができる。アジピン酸エステル系化合物としては、ジエチルヘキシルアジペート、ジオクチルアジペート、ジイソノニルアジペートを、ポリエーテルエステル系化合物としては、ポリエチレングリコールジベンゾエート、ポリエチレングリコールジカプリレート、ポリエチレングリコールジイソステアレートを好ましく用いることができる。
【0039】
組成物全体のバイオマス度を高めることができる点から、エポキシ化大豆油、エポキシ化脂肪酸2−エチルヘキシル、セバシン酸系モノエステルなどのバイオマス由来成分を多く含むものも好ましく用いることができる。
【0040】
前記変性グリセリン系化合物としては、理研ビタミン株式会社の「リケマール」(登録商標)PLシリーズなどが例示される。
【0041】
また、結晶化促進剤(B)は、1種のみならず2種以上混合してもよく、ポリエステル樹脂(A)の種類や目的のペンタエリスリトール(C)の結晶核剤効果に応じて、混合比率を適宜調整することができる。
【0042】
ポリエステル樹脂(A)として、PHAを用いる場合、結晶化促進剤(B)は、グリセリンジエステルが好ましく、グリセリンジアセトモノエステルがより好ましく、更にはグリセリンジアセトモノラウレートが好ましい。
【0043】
本発明の脂肪族ポリエステル樹脂組成物には、ポリエステル樹脂(A)の結晶核剤としてペンタエリスリトール(C)が配合される。本発明では、ペンタエリスリトールは、ポリエステル樹脂の結晶化速度を高めることに加えて、結晶化促進剤(B)により、さらにポリエステル樹脂の結晶化を促進することができ、成形加工性及び生産性が改善される。
【0044】
ペンタエリスリトールとは、下記式(2)
【0045】
【化1】
で示される化合物である。多価アルコール類の一種であり、融点260.5℃の白色結晶の有機化合物である。ペンタエリスリトールは糖アルコールに分類されるが、天然物由来ではなく、アセトアルデヒドとホルムアルデヒドを塩基性環境下で縮合して合成することができる。
【0046】
本発明で用いられるペンタエリスリトールは通常、一般に入手可能であるものであれば特に制限されず、試薬品あるいは工業品を使用し得る。試薬品としては、和光純薬工業株式会社、シグマ・アルドリッチ社、東京化成工業株式会社やメルク社などが挙げられ、工業品であれば、広栄化学工業株式会社品(商品名:ペンタリット)や東洋ケミカルズ株式会社品などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
一般に入手できる試薬品や工業品の中には不純物として、ペンタエリスリトールが脱水縮合して生成するジペンタエリスリトールやトリペンタエリスリトールなどのオリゴマーが含まれているものがある。上記オリゴマーは脂肪族ポリエステル樹脂の結晶化には効果を有しないが、ペンタエリスリトールによる結晶化効果を阻害しない。従って、本発明で使用するペンタエリスリトールには、オリゴマーが含まれていてもよい。
【0048】
本発明で用いられるペンタエリスリトールの量は、ポリエステル樹脂(A)の結晶化を促進できれば特に制限されない。しかし、ペンタエリスリトールの結晶核剤としての効果を得るためには、ペンタエリスリトールの含有量の下限値は、ポリエステル樹脂(A)の含有量100重量部に対して、好ましくは0.05重量部であり、より好ましくは0.1重量部であり、更に好ましくは0.5重量部である。また、ペンタエリスリトールの量が多すぎると、溶融加工時の粘度が下がってしまい、加工し難くなる場合があるため、ペンタエリスリトールの含有量の上限値は、ポリエステル樹脂(A)の含有量100重量部に対して、好ましくは12重量部であり、より好ましくは10重量部であり、更に好ましくは8重量部である。
【0049】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂単独、あるいは、ポリエステル樹脂とペンタエリスリトール以外の糖アルコール化合物を含む樹脂組成物に比べて、加工時の樹脂組成物の結晶化が幅広い加工条件で安定して進行する点で優れているので以下に示すような利点がある。
【0050】
ポリエステル樹脂の中でも、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)(以下、P(3HB−co−3HH)と称する場合がある。)や、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート(P(3HB−co−3HV))などは、加熱溶融後に冷却して結晶化させる際、結晶化の進行は溶融時の樹脂温度の影響を受ける。すなわち、溶融時の樹脂温度が高いほど結晶化が進行し難くなる傾向がある。例えば、P(3HB−co−3HH)は、溶融時の樹脂温度が樹脂の融点から170℃程度の温度の場合では、溶融時の樹脂温度が高いほど冷却時の樹脂の結晶化は進み難くなる傾向がある。また溶融時の樹脂温度が180℃程度以上の温度の場合では、冷却時の結晶化が数時間に渡って進行する傾向が有る。したがって、良好に成形加工を行なうためには、溶融時の樹脂温度を170℃〜180℃程度の温度範囲に制御しなければならないが、一般的な成形加工では溶融時の樹脂温度は均一でないため、上記の温度範囲で制御することは非常に困難である。
【0051】
本発明のポリエステル樹脂組成物の結晶化は、樹脂の溶融時の幅広い温度範囲に対して安定的に進行する。すなわち、溶融時の樹脂温度が樹脂の融点以上から190℃程度の温度範囲の場合であっても結晶化が安定的に早く進むため、本発明の樹脂組成物は、幅広い加工条件に対して優れた加工特性を有している。尚、溶融時の樹脂温度が200℃以上の温度で溶融加工する事は、熱劣化の観点で好ましくない。
【0052】
また、ポリヒドロキシアルカノエートの結晶化の進行は冷却温度にも依存している。例えば、P(3HB−co−3HH)は、加熱溶融後の冷却温度が50〜70℃で最も結晶化が進行する傾向があり、冷却温度が50℃より低い、または70℃より高い場合は、結晶化が進行しにくくなる傾向がある。一般的なペレット加工や成形加工では冷却水槽温度、金型や冷却ロール温度が冷却温度に相関し、冷却水温度、金型や冷却ロール温度を上記温度範囲、すなわち50℃〜70℃の範囲で制御しなければならないが、例えば成形加工時の金型温度を均一に制御するためには、金型の構造や形状を緻密に設計する必要が有り、非常に困難である。
【0053】
本発明のポリエステル樹脂組成物の結晶化は、溶融後の樹脂の幅広い冷却温度範囲に対して安定的に進行する。すなわち、加熱溶融後の冷却温度が20℃〜80℃の温度範囲の場合であっても結晶化が安定的に早く進むため、本発明の樹脂組成物は、幅広い加工条件に対して優れた加工特性を有している。
【0054】
本発明のポリエステル樹脂組成物には、結晶化が安定的に早く進行することによって、以下に記すような特性が発現される。
【0055】
例えば、P(3HB−co−3HH)は、成形時に十分に結晶化が進行せず、成形後も徐々に結晶化が進行し球晶が成長するため、機械物性が経時変化し、成形品が徐々に脆化してしまう傾向があった。ところが、本発明のポリエステル樹脂組成物は、成形直後に多数の微結晶が生成するので、成形後には球晶が成長し難くなり、成形品の脆化も抑制されるため、製品の品質安定性の点で優れている。
【0056】
また、ポリエステル樹脂の中でも、ポリヒドロキシアルカノエートは、結晶化の進行が遅く、例えばペレット化加工時に冷却工程を長く時間を稼ぐように設計する必要がある。また、Tダイフィルム成形時の引取速度を低下させないと冷却ロールからの離型性が悪く、生産性やフィルムの形状を悪化させる可能性があったり、インフレーションフィルム成形時にはバルーンが不安定になったりする可能性がある。加えて、射出成形用の成形金型のキャビティ部のあわせ部(例えば、パーティングライン部、インサート部、スライドコア摺動部など)には、隙間があり、射出成形時に、その隙間に溶融した樹脂が入り込んでできる「バリ」が成形品に付着してしまう。ポリヒドロキシアルカノエートは、結晶化の進行が遅く樹脂が流動性を有する時間が長いため、バリが起こり易く、成形品の後処理に多大な労力を要する。一方で、本発明のポリエステル樹脂組成物では結晶化が早いので前記問題点が生じにくい。
【0057】
本発明にかかるポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂の融点以上にまで加熱し混錬できる装置であれば公知の溶融混錬機により容易に製造できる。例えば、ポリエステル樹脂と結晶化促進剤とペンタエリスリトールと、さらに必要であれば他の成分とを押出機、ロールミル、バンバリーミキサーなどにより溶融混練してペレット状とした後、成形に供する方法、ペンタエリスリトールの高濃度のマスターバッチを予め調製しておき、これをポリヒドロキシアルカノエートとグラフト共重合体に所望の割合で溶融混錬して成形に供する方法、などが利用できる。ペンタエリスリトールと結晶化促進剤とポリヒドロキシアルカノエートは混錬機に同時に添加してもよいし、あるいは先にポリヒドロキシアルカノエートとグラフト共重合体を溶融させた後ペンタエリスリトールを添加してもよい。
【0058】
本発明におけるポリエステル樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲において、各種添加剤を含有しても良い。ここで添加剤とは、たとえば、滑剤、ペンタエリスリトール以外の結晶核剤、可塑剤、加水分解抑制剤、酸化防止剤、離形剤、紫外線吸収剤、染料、顔料などの着色剤、無機充填剤等を目的に応じて使用できるが、それらの添加剤は、生分解性を有することが好ましい。
【0059】
他の添加剤としては、炭素繊維等の無機繊維や、人毛、羊毛等の有機繊維が挙げられる。また、竹繊維、パルプ繊維、ケナフ繊維や、類似の他の植物代替種、アオイ科フヨウ属1年草植物、シナノキ科一年草植物等の天然繊維も使用することが出来る。二酸化炭素削減の観点からは、植物由来の天然繊維が好ましく、特に、ケナフ繊維が好ましい。
【0060】
本発明のポリエステル樹脂組成物からなる成形体の製造方法を以下に例示する。
【0061】
まず、ポリエステル樹脂、結晶化促進剤およびペンタエリスリトール、さらには必要に応じて、前記各種添加剤を押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ロールなどを用いて溶融混練して、ポリエステル樹脂組成物を作製し、それをストランド状に押し出してからカットして、円柱状、楕円柱状、球状、立方体状、直方体状などの粒子形状のポリエステル樹脂組成物からなるペレットを得る。
【0062】
前記において、ポリエステル樹脂と結晶化促進剤等を溶融混練する温度は、使用するポリエステル樹脂の融点、溶融粘度等やグラフト共重合体の溶融粘度等によるため一概には規定できないが、例えば、ポリヒドロキシアルカノエートの場合、溶融混練物のダイス出口での樹脂温度が140〜200℃であることが好ましく、150〜195℃であることがより好ましく、160〜190℃がさらに好ましい。溶融混練物の樹脂温度が140℃未満であると、混練が不十分となる場合があり、200℃を超えるとポリヒドロキシアルカノエートが熱分解する場合がある。
【0063】
前記方法によって作製されたペレットを、40〜80℃で十分に乾燥させて水分を除去した後、公知の成形加工方法で成形加工でき、任意の成形体を得ることができる。成形加工方法としては、例えば、フィルム成形、シート成形、射出成形、ブロー成形、ブロー成形、繊維の紡糸、押出発泡、ビーズ発泡等が挙げられる。
【0064】
フィルム成形体の製造方法としては、例えば、Tダイ押出し成形、カレンダー成形、ロール成形、インフレーション成形が挙げられる。ただし、フィルム成形法はこれらに限定されるものではない。フィルム成形時の成形温度は140〜190℃が好ましい。また、本発明のポリエステル樹脂組成物から得られたフィルムは、加熱による熱成形、真空成形、プレス成形が可能である。
【0065】
射出成形体の製造方法としては、例えば、熱可塑性樹脂を成形する場合に一般的に採用される射出成形法、ガスアシスト成形法、射出圧縮成形法等の射出成形法を採用することができる。また、その他目的に合わせて、上記の方法以外でもインモールド成形法、ガスプレス成形法、2色成形法、サンドイッチ成形法、PUSH−PULL、SCORIM等を採用することもできる。ただし、射出成形法はこれらに限定されるものではない。射出成形時の成形温度は140〜190℃が好ましく、金型温度は20〜80℃が好ましく、30〜70℃であることがより好ましい。
【0066】
本発明の成形体は、農業、漁業、林業、園芸、医学、衛生品、食品産業、衣料、非衣料、包装、自動車、建材、その他の分野に好適に用いることができる。
【実施例】
【0067】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によりその技術的範囲を限定されるものではない。
【0068】
<製造例1> 培養生産にはKNK−005株(米国特許第7384766号明細書を参照)を用いた。
【0069】
種母培地の組成は1w/v% Meat−extract、1w/v% Bacto−Tryptone、0.2w/v% Yeast−extract、0.9w/v% Na
2HPO
4・12H
2O、0.15w/v% KH
2PO
4、(pH6.8)とした。
【0070】
前培養培地の組成は1.1w/v% Na
2HPO
4・12H
2O、0.19w/v% KH
2PO
4、1.29w/v% (NH
4)
2SO
4、0.1w/v% MgSO
4・7H
2O、0.5v/v% 微量金属塩溶液(0.1N塩酸に1.6w/v% FeCl
3・6H
2O、1w/v% CaCl
2・2H
2O、0.02w/v% CoCl
2・6H
2O、0.016w/v% CuSO
4・5H
2O、0.012w/v% NiCl
2・6H
2Oを溶かしたもの)、とした。炭素源はパーム油を10g/Lの濃度で一括添加した。
【0071】
PHA生産培地の組成は0.385w/v% Na
2HPO
4・12H
2O、0.067w/v% KH
2PO
4、0.291w/v% (NH
4)
2SO
4、0.1w/v% MgSO
4・7H
2O、0.5v/v% 微量金属塩溶液(0.1N 塩酸に1.6w/v% FeCl
3・6H
2O、1w/v% CaCl
2・2H
2O、0.02w/v% CoCl
2・6H
2O、0.016w/v% CuSO
4・5H
2O、0.012w/v% NiCl
2・6H
2Oを溶かしたもの)、0.05w/v% BIOSPUREX200K(消泡剤:コグニスジャパン社製)とした。
【0072】
まず、KNK−005株のグリセロールストック(50μl)を種母培地(10ml)に接種して24時間培養し種母培養を行なった。次に種母培養液を1.8Lの前培養培地を入れた3Lジャーファーメンター(丸菱バイオエンジ製MDL−300型)に1.0v/v%接種した。運転条件は、培養温度33℃、攪拌速度500rpm、通気量1.8L/minとし、pHは6.7〜6.8の間でコントロールしながら28時間培養し、前培養を行なった。pHコントロールには14%水酸化アンモニウム水溶液を使用した。
【0073】
次に、前培養液を6Lの生産培地を入れた10Lジャーファーメンター(丸菱バイオエンジ製MDS−1000型)に1.0v/v%接種した。運転条件は、培養温度28℃、攪拌速度400rpm、通気量6.0L/minとし、pHは6.7から6.8の間でコントロールした。pHコントロールには14%水酸化アンモニウム水溶液を使用した。炭素源としてパーム油を使用した。培養は64時間行い、培養終了後、遠心分離によって菌体を回収、メタノールで洗浄、凍結乾燥し、乾燥菌体重量を測定した。
【0074】
得られた乾燥菌体1gに100mlのクロロホルムを加え、室温で一昼夜攪拌して、菌体内のPHAを抽出した。菌体残渣をろ別後、エバポレーターで総容量が30mlになるまで濃縮後、90mlのヘキサンを徐々に加え、ゆっくり攪拌しながら、1時間放置した。析出したPHAをろ別後、50℃で3時間真空乾燥し、PHAを得た。得られたPHAの3HH組成分析は以下のようにガスクロマトグラフィーによって測定した。乾燥PHA20mgに2mlの硫酸−メタノール混液(15:85)と2mlのクロロホルムを添加して密栓し、100℃で140分間加熱して、PHA分解物のメチルエステルを得た。冷却後、これに1.5gの炭酸水素ナトリウムを少しずつ加えて中和し、炭酸ガスの発生がとまるまで放置した。4mlのジイソプロピルエーテルを添加してよく混合した後、遠心して、上清中のポリエステル分解物のモノマーユニット組成をキャピラリーガスクロマトグラフィーにより分析した。ガスクロマトグラフは島津製作所GC−17Aを用い、キャピラリーカラムはGLサイエンス社製NEUTRA BOND−1(カラム長25m、カラム内径0.25mm、液膜厚0.4μm)を用いた。キャリアガスとしてHeを用い、カラム入口圧100kPaとし、サンプルは1μlを注入した。温度条件は、初発温度100から200℃まで8℃/分の速度で昇温、さらに200から290℃まで30℃/分の速度で昇温した。上記条件にて分析した結果、化学式(1)に示すようなPHA、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)(P(3HB−co−3HH))であった。GPCで測定した重量平均分子量Mwは60万であった。3−ヒドロキシヘキサノエート(3HH)組成は5.6モル%であった。
【0075】
<製造例2> KNK−005株の代わりにKNK−631株(国際公開第2009/145164号参照)を用いた他は、製造例1と同様にしてポリヒドロキシアルカノエート原料A2、P(3HB−co−3HH)を得た。重量平均分子量Mwは62万、3HH組成は7.8モル%であった。
【0076】
<製造例3> KNK−631株および炭素源としてパーム核油を用いた以外は、製造例1と同様の方法でポリヒドロキシアルカノエート原料A3、P(3HB−co−3HH)を得た。重量平均分子量Mwは65万、3HH組成は11.4モル%であった。
【0077】
<実施例1〜7> (ポリエステル樹脂組成物の製造)表1に示した配合比で、同方向噛合型2軸押出機(日本製鋼社製:TEX30)を用いてポリエステル樹脂組成物のペレットを製造し、ペレット生産性を評価した。
【0078】
ポリヒドロキシアルカノエート原料A1としては、製造例1で得られたもの、ポリヒドロキシアルカノエート原料A2としては、製造例2で得られたもの、そして、ポリヒドロキシアルカノエート原料A3としては、製造例3で得られたものを用いた。
【0079】
ポリヒドロキシアルカノエート原料A4としては、シグマ・アルドリッチ社製のポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート)(3−ヒドロキシバレレート(3HV)組成は5.0モル%)を用いた。重量平均分子量Mwは65万であった。
【0080】
結晶化促進剤原料B1としては、グリセリン ジアセトモノ ラウレート(理研ビタミン社製、「リケマール(登録商標)」PL012)、また、結晶化促進剤原料B2としては、グリセリンジアセトモノエステル:(CH
3CO)−O−CH
2−CH−O−(COCH
3)CH
2−O−(COC
nH2
n+1)(理研ビタミン社製、「リケマール(登録商標)」PL019)を用いた。
【0081】
ペンタエリスリトール原料C1としては、ペンタエリスリトール(広栄パーストープ社製、「ペンタリットT(登録商標)」)を用いた。
【0082】
(ペレット生産性)
ペレット生産性は次のようにして評価した。押出機の設定温度120〜140℃で、スクリュー回転数を100rpmから徐々に高め吐出量をあげた。押出機のダイスから出てくるストランド状の溶融樹脂は設定60℃の水で満たされた1.5m長の温浴槽内を通過して結晶化、固化して、ペレタイザーにてペレット状にカットされる。樹脂吐出量をあげてペレット生産性を上げるためには、押出機のスクリュー回転数をあげてストランドの線速をあげる必要がある。スクリュー回転数を上げると剪断発熱によって樹脂温度が高まり、かつ線速が上がるに従い温浴槽での滞留時間が短くなる。樹脂温度が高まると結晶化し難くなり、また、60℃温浴槽での滞留時間が短くなると、樹脂は結晶化しきれずに軟化したままになる。すなわち、樹脂温度が高まり温浴槽での滞留時間が短くなるとペレタイザーでカットできなくなる。ペレット化できる最大のストランド線速をペレット生産性と定義した。線速値が高いほどペレット生産性は優れることを意味する。線速を上げる際は押出機のスクリュー回転数も上げてストランド直径(長径と短径の平均)が3mm±0.2mmとなるように調整した。尚、樹脂温度は押出機のダイスから出てくる溶融樹脂をK型熱電対で直接接触させて測定した。結果は表1に示した。
【0083】
<比較例1〜8>
実施例1〜7と同様の方法で、ポリエステル樹脂組成物のペレット生産性を評価し、結果を表1に示した。
【0084】
【表1】
【0085】
表1から明らかなように、結晶化促進剤を併用することによって、ストランドの線速を高くすることができ、ペレット生産性に優れることが判った。
【0086】
<実施例8〜13>
(ポリエステル樹脂組成物の製造)
同方向噛合型2軸押出機(日本製鋼社製:TEX30)を用いて、設定温度120〜140℃、スクリュー回転数100rpmで溶融混錬し、ポリエステル樹脂組成物を得た。当該ポリエステル樹脂組成物はダイスからストランド状に引き取り、ペレット状にカットした。
【0087】
(Tダイ成形によるシート生産性)
シート生産性は次のように評価した。得られたペレットを原料として、Tダイシート成形機(東洋精機製作所社製:ラボプラストミル)を用い、ダイスリップ厚=250μm、ダイスリップ幅=150mm、シリンダー設定温度=120〜140℃、ダイス設定温度=140〜150℃、冷却ロール設定温度60℃にて、100mm幅のシートを成形した。Tダイからシート状にでてきた溶融樹脂は冷却ロールに接触することで結晶化し、厚さ100μmのシートに成形される。樹脂が十分に結晶化した場合は、成形されたシートは冷却ロールから離型され、巻き取られるが、シートの線速が早まると冷却ロールに接触している時間が短くなるので結晶化せずに十分に固化しないのでロールから離型できなくなる。シートが離型できる最大のシート線速をシート生産性と定義した。線速値が高いほどシート生産性は優れることを意味する。なお、樹脂温度はTダイから出てくる溶融樹脂をK型熱電対で直接接触させて測定した。
【0088】
<比較例9〜16>
実施例8〜13と同様の方法で、ポリエステル樹脂組成物のシート生産性を評価し、結果を表2に示した。
【0089】
【表2】
【0090】
表2から明らかなように、結晶化促進剤を併用することによって、シート線速を高くすることができ、シート生産性に優れることが判った。