(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、ドープされたシリカ−チタニアガラスD−SiO
2−TiO
2(本明細書においてDSTガラスとも称される)に関し、このガラスは現在利用可能な2成分シリカ−チタニアガラスSiO
2−TiO
2の膨張率勾配よりも大幅に改善された膨張率(又はCTE)勾配を有し、このドーパントはハロゲン並びにAl、Nb及びTaのうちの1つ以上の酸化物である。本明細書に開示のDSTガラスを使用すると、ガラスの膨張率勾配における改善は、アニーリングサイクル単独の調節によって可能となる改善を超え、及び/又は大幅にコストを削減する高速アニーリングサイクルにより得られる膨張率勾配における改善と同様の改善が可能となる。これは、構造及び組成の変化の両方を組み合わせることによって達成される。
【0005】
組成としては、DSTガラスは、例えばフッ素F、並びにAl、Ta及びNbのうちの1つ以上の酸化物等の、チタニアドープされたシリカガラス系に添加されるハロゲンを有する。一実施形態では、DSTガラスは、0.1重量%〜5重量%のフッ素、50重量ppm〜6重量%のAl、Ta及びNbの酸化物、3重量%〜10重量%のTiO
2、並びに残りのSiO
2を含む。別の実施形態では、DSTガラスは、0.2重量%〜3重量%のF、50重量ppm〜6重量%のAl、Ta及びNbの酸化物、3重量%〜10重量%のTiO
2、並びに残りのSiO
2を含む。追加の実施形態では、DSTガラスは、1重量%〜2重量%のF、50重量ppm〜6重量%のAl、Ta及びNbの酸化物、5重量%〜8重量%のTiO
2、並びに残りのSiO
2を含む。更に、一実施形態では、DSTガラス中のOH濃度は100ppm未満である。別の実施形態では、OH濃度は50ppm未満である。更なる実施形態では、OH濃度は30ppm未満である。追加の実施形態では、OH濃度は20ppm未満である。
【0006】
構造としては、アニーリングサイクルは、所望の1つ又は複数のガラス構造を得るように制御される。アニーリング単独では、フッ素を含まないシリカ−チタニアガラスについて、最大40%の膨張率勾配の低減をもたらす構造的な改善を提供できる一方で、本明細書に開示の範囲内の量でのドーパントの添加では、70%を超えるCTE勾配の低減をもたらすことができる構造的な改善を提供することがわかっている。
【0007】
一態様では、本開示のDSTガラスは、20℃において1ppb/K
2未満の膨張率勾配を有する。ある実施形態では、20℃におけるDSTガラスの膨張率勾配は0.8ppb/K
2未満である。別の実施形態では、20℃におけるDSTガラスの膨張率勾配は0.6ppb/K
2未満である。
【0008】
更に、アニーリングサイクルは、DSTガラスの仮想温度について所望の均一性を得るような様式で制御される。この態様は、濃度分布が不均一となり得るドーパントの存在のために、特に重要である。ハロゲンは特に、仮想温度に著しく影響を与え、その分布におけるいずれの不均一性が、特性に大きな変動をもたらし、かつガラスを使えないものとし得る。
【0009】
一態様では、DSTガラスは875℃未満の仮想温度T
fを有する。ある実施形態では、DSTガラスは825℃未満の仮想温度を有する。別の実施形態では、DSTガラスは775℃未満の仮想温度を有する。
【0010】
本明細書に開示されるこのDSTガラスは、プロセスが制限されていない。つまり、DSTガラスは、例えばゾル−ゲル法、スートブランク法、スート押圧法、オーバーヘッド蒸着、直接法、間接法、プラズマ法、及び当該技術分野で公知の他のプロセス等の種々の製造プロセスによって作製できる。
【0011】
DSTガラスは、13.5nmの波長の放射を使用するプロセスを含むリソグラフィプロセスで使用される際のガラスの通常の使用範囲内で、2つのクロスオーバー温度T
zc(ガラスのCTEがゼロであるときの温度であり、本明細書でT
zc点とも称される)を有する。一実施態様では、2つのT
zcは0℃〜150℃の範囲内にある。別の実施態様では、2つのT
zcは20℃〜100℃の範囲内にある。更なる実施形態では、2つのT
zc値は20℃〜80℃の範囲内にある。ある実施形態では、2つのT
zcは10℃〜60℃、更には10〜40℃の範囲内にある。追加の実施形態では、DSTガラスは、0℃〜100℃の範囲内のクロスオーバー温度(T
zc)と併せて、この温度範囲内で実質的にゼロに等しい膨張率勾配を有する。
【0012】
ある実施形態では、DSTガラスは900℃未満の歪み点を有する。別の実施形態では、歪み点は850℃未満である。更なる実施形態では、歪み点は810℃未満である。DSTガラスは、通常の2成分シリカ−チタニアガラスSiO
2−TiO
2の粘度よりも著しく低い粘度を有する。例えば、通常の2成分シリカ−チタニアガラスは1001℃のアニール点及び892℃の歪み点を有する一方で、DSTガラスは885℃のアニール点及び770℃の歪み点を有する。
【0013】
Tfの均一性、またCTEにおける均一性。一実施形態では、T
fは全体内で±10℃未満変化する。別の実施形態では、T
fの変化は全体内で±5℃未満である。更なる実施形態では、T
fの変化は全体内で±2℃未満である。一実施形態では、T
zcの変化は全体内で±5℃未満である。別の実施形態では、T
zcの変化は全体内で±3℃未満である。追加の実施形態では、T
zcの変化は全体内で±2℃未満である。全体におけるこれらの平均値の変化は、上記の制限を満たす。これには、組成物の良好な制御、並びにアニーリングプロセスの厳密な制御の両方が必要であることに留意すべきである。両方とも本発明の範囲内であることが必要である。
【0014】
一実施形態では、DSTガラス製の物品又は部品は、0.2nm未満のMSFR(中空間周波数粗さ)を有する。別の実施形態では、MSFRは0.15nm未満である。更なる実施形態では、MSFRは0.12nm rms未満である。
【0015】
一実施形態では、2つのクロスオーバー温度間におけるピークCTEは30ppb/Kを超えず、かつ2つのクロスオーバー温度間においてゼロppb/K
2の勾配を有する。別の実施形態では、2つのクロスオーバー温度間におけるピークCTEは20ppb/Kを超えない。更なる実施形態では、2つのクロスオーバー温度間におけるピークCTEは15ppb/K未満である。追加の実施形態では、2つのクロスオーバー温度間におけるピークCTEは10ppb/K未満である。
【0016】
本開示のDSTガラスは、フォトマスクブランクを作製するために、又は投影光学系ミラー基板として使用してよい。DSTガラスはまた、EUVLステッパにおける投影光学系のミラーブランクの臨界ゾーンを形成するために使用できる、より小さなブランクを作製するために使用してよい。ハロゲンドーピングは、標準のチタニア−シリカOVDブランクの圧密化中に達成してよい。あるいは、スート押圧法又はゾル−ゲル法のいずれかによって作製された形状は、それらの圧密化中にハロゲンでドープしてよい。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書において、ベースガラスはシリカ−チタニアガラスである。本開示に従って低膨張率ガラスを作製するためにドーパントをベースガラスに添加すると、得られたガラスの組成は、重量%又は重量ppmの添加ドーパント、重量%のTiO
2及び残りの重量%のSiO
2となる。
【0019】
所定の温度範囲にわたる材料の膨張率ΔCTEは、その温度範囲にわたる最大CTE(CTE
max)と最少CTE(CTE
min)との間の差であり、式:
ΔCTE=CTE
max−CTE
min (式1)
を用いて決定できる。
EUVリソグラフィに関して、リソグラフィ要素の膨張率が、可能な最も広い使用温度範囲にわたってできるだけゼロに近いことが重要である。ゼロ膨張率は、材料が膨張も収縮もしないことを意味する。
図6はCTE
max及びCTE
minが示された
図5の曲線52である。CTE
maxは3.8ppb/Kであり、CTE
minは−2ppb/Kである。式1を用いて:
ΔCTE=3.8ppb/K−(−2ppb/K)=5.8ppb/K
となる。
図に示した様々な曲線のΔCTEの値を計算し、表2B及び3Bに提示する。
【0020】
低減された膨張率を有するシリカ−チタニアガラスは、EUVLステッパ用の投影光学系ミラーブランク並びにフォトマスクブランクのための重要な要件である。本明細書に記載のDSTガラスは低減されたCTE勾配(勾配はCTE(ppb/K)における瞬時の変化の測定値対温度(K)である)を有し、これにより、EUVLステッパ製造業者は、本明細書に記載の材料が改善された熱/寸法安定性を提供することにより、より高い動力源を使用できるようになる。本明細書に記載のDSTガラスはまた、EUVLユーザがはるかに高い解像度を達成できるようにする。更に、本明細書に記載のDSTガラスは、投影光学系ミラーの臨界ゾーンに少量で使用でき、10cm〜60cmの範囲の直径を有し得る大きな投影光学系ミラーのコストを下げるのに役立つ。EUVLシステム要素の臨界ゾーン内でのインサートの使用は、共同所有の米国特許出願第13/563882号明細書及び第13/564215号明細書に開示されている。
【0021】
特定の用途での最適な性能のための、シリカ−チタニアガラス及び/又はドープされたガラスの調整は、ガラスが使用される使用条件の詳細に依存する。TiO
2濃度及び仮想温度T
fの調節を組み合わせることによって、クロスオーバー点T
zc1及びT
zc2、並びに膨張率の最大値の調節が可能となり、各用途における性能を最適化できる。ドーピングなしで、TiO
2濃度を単独で操作することによってT
zc1を調節できる。膨張率勾配を下げてT
zc2を低くするために、低速アニーリングを使用してよい。しかしながら、摂氏(℃)数十℃の範囲にわたる+/−3ppb/Kの極めて低い膨張率は、膨張率が最大となる付近の温度でのみ得られ、従って、このような望ましいレジームは、〜150℃から開始する温度において、ドープされていない標準アニールガラスでのみ得られる。本明細書に記載されるように、シリカ−チタニアガラスに対するドーピングの使用は、T
zcの調節範囲を著しく拡大し、これにより極めて低い膨張率の範囲が、室温付近で開始する温度において存在できるようになる。この状況は、使用温度範囲が室温で開始するEUVマスク及び光学系の基板としてのガラスの用途に特に有益である。EUVシステム内の種々の構成要素が種々の温度変化に曝されるため、並びにEUVシステム設計及び使用レジームがシステムNA(開口数)、レジスト速度及び光源強度等の他の領域における開発の進展に依存するため、全ての状況にとって理想的なガラス組成物とT
fとの単一の組合せは存在しない。従って、広い温度範囲にわたるT
zcの操作により、それぞれの場合の特定の要件に対する材料の調整が可能となる。
【0022】
本開示は、最大5重量%のハロゲン並びに50重量ppm〜6重量%のAl、Ta及びNbのうちの1つ以上の酸化物を含む、ドープされたチタニア−シリカガラスを記載する。ハロゲンドーピングは、ガラスプロセスの圧密化工程の間に実施した。圧密化中のハロゲンドーピングによって、例えば、以下の種々の方法による初期酸化物でドープされたスートブランクの作製が可能となる。
【0023】
(1)OVD(オーバーヘッド蒸着)プロセス。このプロセスでは、スートブランクを、シリカ前駆体、チタニア前駆体及び1つ又は複数の酸化物ドーパント前駆体の燃焼によってバーナ内で作製し、このスートをマンドレル上に収集し、例えば選択したハロゲンがSiF
4等のフッ素の場合、ハロゲン含有ガスで処理して圧密化し、収集してDSTガラスを形成する。
【0024】
(2)予め作製されたドープされたチタニア−シリカスートのスート押圧法。このスートは例えばバーナ内でのシリカ前駆体及びチタニア前駆体の燃焼によって作製されたスートを含む。微粒子であるこのスートを容器に収集し;スートの収集中及び/又は収集後に、スートをハロゲンで処理しながら、スートを圧密化温度で押圧してDSTガラスを形成する。シリカ−チタニアガラスはまた、例えばAl、Ta又はNbの前駆体等の1つ又は複数の追加の酸化物ドーパント前駆体を添加することによって、スートの調製中に更にドープしてよい。
【0025】
(3)ゾル−ゲル法。この方法では、ゾル−ゲル法を用いてシリカ−チタニアスートを作製して、ある形状に形成し、乾燥させて多孔質シリカ−チタニア物品を形成し、続いてこの物品を圧密化中にハロゲン含有ガスで処理する。ある実施形態では、追加の酸化物ドーパント前駆体をゾル−ゲルに添加し、続いてある形状に形成し、乾燥させて圧密化中にハロゲンで処理する。圧密化は空気又は空気−不活性ガスの混合物中で実施してよい。別の実施形態では、ゾル−ゲル法で使用されるスートは、項目(2)で上述したように、追加の酸化物前駆体をシリカ−チタニアスートの形成中に添加したスートである。
【0026】
後に圧密化中にハロゲン含有ガスを用いて処理できるシリカ−チタニアスートを作製するために使用できる、当技術分野で公知の他の方法がある。この方法は、シリカ−チタニアスートを作製し、直ちにそれをハロゲン含有雰囲気中で圧密化することでDSTガラスを形成できるが、環境及び起こり得る健康被害のために好まれない。例えば、塩素又はフッ素等のハロゲンが大気中に逃げて付近の作業者に害を与えることを防止するために、高価なガス洗浄システムが必要となり得る。
【0027】
使用するハロゲンがフッ素である場合、フッ素含有ガスは、例えば空気等のキャリアガスと混合された、F
2、CF
4、SF
4、SiF
4又は他の揮発性フッ素化合物であってよい。CF
4及びSF
4等の化合物をフッ素化剤として使用する場合、酸素がキャリアガス中に存在することで、フッ素化剤の非フッ素部分(C、Si又はS)が、例えばCO
2、SiO又はSO
2等の揮発性種に変換されて、キャリアガスによってシステムから一掃される。キャリアガスは例えば、窒素、ヘリウム又はアルゴン等の不活性ガスであってもよい。しかしながら、これらをCF
4、SiF
4及びSF
4のキャリアガスとして使用する場合、上で示したように酸素が存在しなければならない。ハロゲンは、ガラスをドープすることに加えて、ガラスを脱水できる。即ち、ハロゲンはガラス中に存在し得るヒドロキシル基OHの数を低減することになる。脱水はまた、塩素及びフッ素の混合物を用いて、又は連続的に初めに塩素を用い、次いでガラスをフッ素ドープするための上記のようなフッ素含有種を用いて脱水することにより、実施してよい。
【0028】
圧密化温度はスートブランクの調製方法に左右され、OVDプロセス用の1300℃からスート押圧法及びゾル−ゲル法等の他のプロセス用の1670℃まで変化させてよい。圧密化後、0.5時間〜2時間の範囲の時間、1000℃〜1100℃の範囲の温度まで加熱することによってDSTガラスをアニールした。一実施形態では、アニーリング温度は1050℃であり、アニーリング温度での保持時間は1時間であった。保持時間の終了時に、ガラスを毎時3℃の速度で例えば1050℃のアニーリング温度から700℃まで冷却し、続いて700℃から室温まで自然に冷却した。自然冷却では熱源をオフにして、ガラスを炉の冷却速度で室温まで冷却させた。
【0029】
次いで、試料を調製DSTガラスから作製し、その膨張率を、米国特許出願公開第2011/0034787号明細書に記載のサンドイッチシール法によって、150°K〜425°Kの温度範囲で測定した。20℃における膨張率勾配が1.60ppb/K
2であるULEガラス(コーニング社、コード7973)の基準試料について、約70%の膨張率の低減を達成した。データは、膨張率勾配の改善は主にDSTガラスの仮想温度の低減によって決定づけられることを示唆している。また、基準ULEガラス試料は、低速アニーリングプロセスの結果として、T
fにおいて同様の低下を示したことに留意されたい。T
fは、ハロゲンレベルの増加、又は低速アニーリングサイクルとの組合せのいずれかによって低下するので、観察された改善は継続することが期待できる。データは、ハロゲンが大幅な粘度低下を可能とし、その結果、実際の絶対CTEにおける大きな変化を伴うことなく、T
fの低減が可能であることを示している。以下の実施例1では、ガラスの目標ハロゲン含有量は1.5重量%Fであり、実施例2では0.8重量%Fである。アニーリングサイクル及び仮想温度のその効果は、米国特許出願公開第2011/0048075号明細書、同第2011/0207593号明細書及び同第2011/0207592号明細書に記載され、かつ議論されている。
【実施例1】
【0030】
TiCl
4及びSiCl
4を用いた火炎加水分解によってチタニアドープされたシリカスート粒子を作製し、このスートを、10時間超に亘るOVDプロセスを用いて旋盤のバイトロッド上に付着させた。続いて得られたスートブランクを以下のようにマッフル炉内で圧密化した:
流動He雰囲気中でスートブランクを1200℃超まで加熱し;
流動He、O
2及び圧密化されたガラス中で1.5重量%の目標F濃度となるよう選択されたフッ素含有ガスを用いて、1250℃超のピーク温度でブランクを焼結及び圧密化した。
得られたブランクはTiO
2微結晶が存在するために青味がかった灰色であった。15mmの直径のディスクを圧密化されたブランクから切断し、1670℃の温度まで1時間加熱して微結晶を溶解させて、透明ガラスを得た。続いてこれらのディスクを1050℃まで1時間加熱することでアニールし、その後(a)3℃/時又は(b)30℃/時のいずれかの速度で700℃まで冷却することで2つの異なる仮想温度を達成した。試料(a)及び(b)の仮想温度は、それぞれ772℃及び785℃であった。続いてこれらの試料を研磨し、同じ組成及びT
fの2つの実験試料間の中央片としてULEガラス(コーニング社、コード7973)を用いて、サンドイッチシールとして組み立てた。サンドイッチシール試料は、約1.5”×1”×1/8”(38mm×25.4mm×3.2mm)のサイズである。サンドイッチを−100℃から+125℃に加熱しながら、2つの実験DST片(サンドイッチのパン片)が加える中央片(サンドイッチの肉)への応力を測定し、これにより、実験材料と、CTE勾配が既知であるコード7973のULEガラスとの間のCTE勾配の差を引き出す。772℃のT
fを有する試料は、20℃において0.7ppb/K
2未満のCTE勾配を有し、785℃のT
fを有する試料は、20℃において0.8ppb/K
2未満の平均CTE勾配を有していた。コード7973ガラスは1.60ppb/K
2のCTE勾配を有する。
【実施例2】
【0031】
TiCl
4及びSiCl
4の火炎水分解によってチタニアドープされたシリカスート粒子を作製し、このスートを、約16.5時間に亘るOVDプロセスを用いて旋盤のバイトロッド上に付着させた。このようにして作製したスートブランクは、0.42g/ccの密度及び135.7mmの直径で質量が5992gであった。続いてスートブランクを以下のようにマッフル炉内で圧密化した:
流動He雰囲気中でスートブランクを1200℃超まで加熱し;
流動He、O
2及び圧密化されたガラス中で0.8重量%の目標F濃度となるよう選択されたフッ素含有ガスを用いて、1250℃超のピーク温度でブランクを焼結及び圧密化した。
【0032】
得られたブランクはTiO
2微結晶が存在するために青味がかった灰色であった。15mmの直径のディスクを圧密化ブランクから切断し、1670℃まで1時間加熱して微結晶を溶解させて、透明ガラスを得た。続いてこれらのディスクを1050℃まで1時間加熱することによってアニールし、その後(a)3℃/時(低速アニールサイクル)又は(b)30℃/時(高速アニールサイクル)の速度のいずれかで700℃まで冷却することで、それぞれ870℃及び918℃の2つの異なる仮想温度を達成した。続いてこれらの試料を研磨し、同じ組成及びT
fの2つの実験試料間の中央片として正規のULEガラス(7973)を用いて、サンドイッチシールとして組み立てた。サンドイッチシール試料は、約1.5”×1”×1/8”(38mm×25.4mm×3.2mm)のサイズである。サンドイッチを−100℃〜+125℃に加熱しながら、2つの実験片(サンドイッチのパン片)が加える中央片(サンドイッチの肉)への応力を測定し、これにより、実験材料と、CTE勾配が既知であるコード7973のULEガラスとの間のCTE勾配の差を引き出す。870℃のT
fを有する試料は、20℃において1.2ppb/K
2未満のCTE勾配を有し、918℃のT
fを有する試料は、20℃において1.5ppb/K
2未満の平均CTE勾配を有していた。
【0033】
図1は、添加フッ素を含まない2成分シリカ−チタニアガラスのCTE勾配と比較して、シリカ−チタニアガラスへのフッ素添加が、得られたDSTガラスのCTE勾配に及ぼす影響を示している。DSTガラスは菱形10で表され、フッ素を含まない2成分シリカ−チタニアガラスは四角20で表されている。フッ素の添加によってガラスの粘性が低下し、これによりガラスの仮想温度が低下する。仮想温度の低下は、シリカ−チタニアガラスにおけるCTE勾配の低減の主要なドライバである。しかしながら、フッ素添加がCTE勾配を低減することがわかっている上に、その低減は仮想温度の低下単独から予想され得る低減よりも大きい。
【0034】
図2は、フッ素添加が、0重量%F〜最大1.6重量%Fを含むシリカ−チタニアガラスのアニール点及び歪み点(左の縦軸)並びに粘度(右の縦軸)に及ぼす影響を示すグラフである。このグラフは、フッ素含有量の増加に伴ってアニール点及び歪み点がほぼ同じ割合での低下すること、及びガラスの粘度もフッ素含有量の増加に伴って低下することを示している。
【0035】
図3は、本明細書に記載されているように、高速アニーリングサイクル及び低速アニーリングサイクル後の(1)フッ素を含まないシリカ−チタニアガラス及び(2)フッ素ドープされたシリカ−チタニアガラスに関する膨張率対温度のグラフである。
図3の全てのガラスは、ガラス中のTiO
2重量%を調節することによって達成される、同一の20℃の第1のクロスオーバー温度T
zc1を有する。表1に示すように、DSTガラス中のF含有量は1.5重量%である。
図3は、冷却速度が30℃/時である高速アニーリングサイクル、及び冷却速度が3℃/時である低速アニーリングサイクルの2つの異なるアニーリングサイクルを受けた後の各ガラスの挙動を示している。TiO
2及びFの値は重量%である。
ΔCTEは0℃〜150℃の温度範囲にわたるppb/Kである。
【0036】
【表1】
【0037】
高速アニール後のULEガラスを表す符号30の曲線は、〜70ppb/Kの最大膨張率(黒丸●)、20℃において第1のクロスオーバー温度T
zc1、及びT>300℃において第2のゼロクロスオーバー温度T
zc2を有する。低速アニール後のULEガラスを表す符号32の曲線は、〜50ppb/Kの最大膨張率(黒丸●)、20℃において第1のクロスオーバー温度T
zc1、及び約230℃において第2のクロスオーバー温度T
zc2を有する。曲線30及び32のガラスについての第2のクロスオーバー温度T
zc2は、
図3において目盛りより右側に外れている。30℃/時でのアニール後のDSTガラスを表す符号34の曲線は、約12ppb/Kの最大膨張率(黒丸●)、20℃において第1のクロスオーバー温度T
zc1、及び約100℃において第2のクロスオーバー温度T
zc2を有する。低速アニール後のDSTガラスを表す符号36の曲線は、約6ppb/Kの最大膨張率(黒丸●)、20℃において第1のクロスオーバー温度T
zc1、及び約65℃において第2のクロスオーバー温度T
zc2を有する。
【0038】
図4は、T
zc1の種々の値を得るためにTiO
2濃度のみが異なる、4つの種々のドープされたSiO
2−TiO
2ガラスの20℃〜100℃の間の膨張挙動を示す膨張率対温度のグラフである。各曲線のチタニア値は表2Aに示されている。各試料中のハロゲン含有量は1.5重量%であり、4つ全ての試料を、高速アニールサイクルを用いて約780℃の同一のT
fまでアニールした。表2Bは、2つの温度範囲にわたる4つ全ての曲線のΔCTE値を示している。グラフに示される20〜100℃の温度範囲内において、30℃のT
zc1を有するガラス44は、11のΔCTEを有し、かつ〜87℃のT
zc2をもたらす。
【0039】
【表2A】
【0040】
【表2B】
【0041】
図5は、チタニア含有量のみが異なる4の種々のドープされたシリカ−チタニアガラスに関する20℃〜60℃の範囲における膨張率対温度のグラフである。各ガラスのハロゲン含有量は1.5重量%であり、各ガラスを730℃の同じ仮想温度T
fを有するように低速アニールサイクルを用いてアニールした。
【0042】
【表3A】
【0043】
【表3B】
【0044】
低速アニールプロセスを用いて約730℃の低いT
fまで低速でガラスをアニールすることにより、T
zc2を目的の温度範囲内にもたらす、つまり60℃未満又は実質的に60℃に等しいT
zc2とすることによって、最適ガラス特性が得られる。この特定のケースでは、最適特性は、T
zc1を〜26℃及びT
zc2を〜58℃にもたらすようなTiO
2濃度を有するガラスによって得られる。得られたデータに基づくと、TiO
2濃度は8.9〜9.0重量%となり得る。表3Bは、2つの温度範囲にわたる4つ全ての曲線のΔCTE値を示している。
【0045】
本開示に従って作製されたガラスは、フォトマスクブランクを作製するために、又は投影光学系ミラー基板として使用できる。また、EUVLステッパにおける投影光学系のミラーブランクの臨界ゾーンを形成するために使用できる、より小さなブランクを作製するために使用できる。ハロゲンドーピングは、通常のチタニア−シリカOVDブランクの圧密化中に達成できる。あるいは、ドープされたシリカ−チタニアガラス及びガラスの形状は、ハロゲンドーピングが乾燥、加熱又は圧密化の工程の間に実施されるスート押圧法又はゾル−ゲル法のいずれかを用いて作製できる。
【0046】
本発明を限られた数の実施形態に関連させて説明してきたが、本開示の利益を有する当業者は、本明細書に開示の本発明の範囲から逸脱しない他の実施形態も考えられることを理解するであろう。従って、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
他の実施態様
1.0.1重量%〜5重量%のフッ素と、50重量ppm〜6重量%のAl、Ta及びNbのうちの少なくとも1つの酸化物と、3重量%〜10重量%のTiO2及び残りのSiO2を含むベースシリカ−チタニアガラスとを含む、ドープシリカ−チタニアガラスであって、20℃において1ppb/K2未満の膨張率勾配、875℃未満の仮想温度、及び20℃〜150℃の温度範囲において2つのクロスオーバー温度Tzcを有する、ドープシリカ−チタニアガラス(doped silica-titania glass)。
2.825℃未満の仮想温度を有する、実施態様1記載のドープシリカ−チタニアガラス。
3.775℃未満の仮想温度を有する、実施態様1記載のドープシリカ−チタニアガラス。
4.±10℃未満の仮想温度変動を有する、実施態様1記載のドープシリカ−チタニアガラス
5.±5℃未満の仮想温度変動を有する、実施態様1記載のドープシリカ−チタニアガラス。
6.±2℃未満の仮想温度変動を有する、実施態様1記載のドープシリカ−チタニアガラス
7.20℃において0.6ppb/K2未満の膨張率勾配を有する、実施態様1記載のドープシリカ−チタニアガラス。
8.フッ素ドーパントが、0.1重量%〜3重量%のフッ素である、実施態様1記載のドープシリカ−チタニアガラス。
9.0.2重量%〜3重量%のフッ素を含み、20℃において0.8ppb/K2未満の膨張率勾配を有する、実施態様1記載のドープシリカ−チタニアガラス。
10.100ppm未満のOH濃度を有する、実施態様1記載のドープシリカ−チタニアガラス。
11.50ppm未満のOH濃度を有する、実施態様1記載のドープシリカ−チタニアガラス。
12.30ppm未満のOH濃度を有する、実施態様1記載のドープシリカ−チタニアガラス。
13.20ppm未満のOH濃度を有する、実施態様1記載のドープシリカ−チタニアガラス。
14.0.2nm rms未満のMSFR(中空間周波数粗さ)を有する、実施態様1記載のドープシリカ−チタニアガラス。
15.0.15nm rms未満のMSFRを有する、実施態様1記載のドープシリカ−チタニアガラス。
16.0.12nm rms未満のMSFRを有する、実施態様1記載のドープシリカ−チタニアガラス。
17.20〜100℃の温度範囲において12ppb/K以下のΔCTEを有する、実施態様1記載のドープシリカ−チタニアガラス。
18.20〜100℃の温度範囲において5ppb/K未満のΔCTEを有する、実施態様1記載のドープシリカ−チタニアガラス。
19.0.1重量%〜5重量%のフッ素と、50重量ppm〜6重量%のAl、Ta及びNbのうちの少なくとも1つの酸化物と、3重量%〜10重量%のTiO2及び残りのSiO2を含むベースシリカ−チタニアガラスとを含む、ドープシリカ−チタニアガラスであって、4ppb/K未満の膨張率、ゼロの膨張率勾配、及び25℃〜65℃の温度範囲において2つのクロスオーバー温度Tzcを有する、ドープシリカ−チタニアガラス。
20.2ppb/K未満の膨張率、ゼロの膨張率勾配、及び27℃〜60℃の温度範囲において2つのクロスオーバー温度Tzcを有する、実施態様19記載のドープシリカ−チタニアガラス。
21.1ppb/K未満の膨張率、ゼロの膨張率勾配、及び32℃〜55℃の温度範囲において2つのクロスオーバー温度Tzcを有する、実施態様19記載のドープシリカ−チタニアガラス。
22.4ppb/K未満のピーク膨張率、ゼロの膨張率勾配、及び25℃〜60℃の温度範囲において2つのクロスオーバー温度Tzcを有する、ドープシリカ−チタニアガラスであって、0.2重量%〜3重量%のフッ素と、50重量ppm〜6重量%のAl、Ta及びNbのうちの1つ以上の酸化物と、3重量%〜10重量%のTiO2及び残りのSiO2を含むベースシリカ−チタニアガラスとを含む、ドープシリカ−チタニアガラス。
23.ドープシリカ−チタニアガラスを作製する方法であって:
シリカ前駆体と、チタニア前駆体と、酸化物ドーパントの前駆体とを用いた火炎加水分解及び/又は有炎燃焼により、酸化物でドープされたシリカ−チタニアスート粒子を調製するステップであって、前記前駆体は、50重量ppm〜6重量%のAl、Ta及びNbのうちの少なくとも1つの酸化物と、3重量%〜10重量%のTiO2及び残りのSiO2を含むベースシリカ−チタニアガラスとを含むスート粒子を堆積させるのに十分な量で提供され;
前記スート粒子を、OVDプロセスを用いて旋盤のバイトロッド上に付着(depositing)させて、スートブランクを調製するステップ;及び
前記スートブランクを流動He雰囲気中で1200℃超まで加熱し、さらに流動He、O2及び圧密化されたガラス中で1.5重量%の目標F濃度となるように選択されたフッ素含有ガスを用いて、1250℃超のピーク温度で前記ブランクを焼結及び圧密化することで、前記得られたスートブランクを炉内で圧密化するステップ
を有してなる、方法。
24.前記フッ素含有ガスは、F2、CF4、SF4、及びSiF4からなる群より選択される、実施態様23記載の方法。