(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
[搬送ベルト]
本発明の搬送ベルトは、芯体と、この芯体の搬送面及び/又は内周面側に形成され、かつオルガノシロキサン単位を含むシリコーン変性樹脂を含む非粘着層とを含む。さらに、非粘着層は、平均厚み10〜100μm程度の非粘着膜と、平均厚み0.1〜2mm程度の非粘着カバー層とに大別できる。
【0020】
図1は、本発明の非粘着膜を搬送面側に備えた搬送ベルトの一例を示す概略図であり、芯体2と、この芯体2の搬送面側に積層された非粘着膜1とで形成されている。このような非粘着膜を有する搬送ベルトは、非粘着膜が薄肉であるため、布帛の凹凸形状に追随した表面形状を有しており、この表面形状とシリコーン変性樹脂との組み合わせにより、粘着性搬送物の搬送性を向上できる。
【0021】
一方、
図2は、本発明の非粘着カバー層を搬送面側に備えた搬送ベルトの一例を示す概略図であり、芯体4と、この芯体4の搬送面側に積層された非粘着カバー層3とで形成されている。非粘着カバー(保護)層を有する搬送ベルトは、比較的に厚肉の非粘着カバー層を有するため、食品などの搬送物の一部が芯体の布帛内部に擦り込まれるのを抑制するのに有利である。
【0022】
本発明の搬送ベルトは、
図1及び2に示す態様に限定されず、芯体の内周面側(搬送面が積層された側とは反対側)に非粘着膜又は非粘着カバー層が積層された搬送ベルトであってもよい。内周面に非粘着膜又は非粘着カバー層が積層された搬送ベルトでは、ベルトの耐久性を向上できる。さらに、本発明の搬送ベルトは、前述の特性を併せ持つベルトとして、芯体の両面側に非粘着膜又は非粘着カバー層が積層された搬送ベルトであってもよい。
【0023】
(非粘着層)
非粘着層に含まれるシリコーン変性樹脂は、ベース樹脂がシリコーン成分で変性されており、詳しくは、ベース樹脂の分子中にオルガノシロキサン単位(シリコーン単位)が共重合体として組み込まれているため、ベース樹脂(ベース樹脂単位)により芯体との密着性を向上できるとともに、シリコーン成分が搬送物に転移(付着)するのを抑制できる。
【0024】
オルガノシロキサン単位は、式:−Si(−R)
2−O−(基Rは置換基である)で表され、基Rで表される置換基としては、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基などが挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、デシルなどのC
1−12アルキル基などが挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル、メチルフェニル(トリル)、ジメチルフェニル(キシリル)、ナフチルなどのC
6−20アリール基などが挙げられる。シクロアルキル基としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシルなどのC
5−14シクロアルキル基などが挙げられる。これらの置換基は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの置換基のうち、メチル基などのC
1−3アルキル基、フェニル基などのC
6−12アリール基が汎用される。
【0025】
オルガノシロキサン単位の導入形態は、ベース樹脂中に結合(共重合)されていれば特に限定されず、主鎖に導入されていてもよく、側鎖に導入されていてもよい。導入方法としては、ベース樹脂の種類に応じて選択でき、エチレン性不飽和結合(ビニル基など)や反応性基(ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基など)を有する(ポリ)オルガノシロキサンモノマーをベース樹脂やそのモノマーと反応(重合)させることにより導入してもよい。共重合の形態としても、特に限定されず、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合のいずれの形態であってもよい。
【0026】
オルガノシロキサン単位の割合は、シリコーン変性樹脂全体に対して1〜50質量%程度の範囲から選択でき、例えば2〜30質量%、好ましくは3〜25質量%、さらに好ましくは5〜20質量%(特に6〜18質量%)程度である。オルガノシロキサン単位の割合が少なすぎると、搬送物に対する非粘着性が低下する虞があり、逆に多すぎると芯体との密着性が低下する虞がある。
【0027】
シリコーン変性樹脂は、熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマーであってもよい。熱可塑性樹脂の場合、ベース樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミドなどが挙げられる。熱可塑性エラストマーの場合、ベース樹脂としては、例えば、ポリオレフィンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリウレタンエラストマーなどが挙げられる。これらのベース樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0028】
これらのベース樹脂のうち、取り扱い性や柔軟性などの点から、熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマーが好ましく、ポリウレタン又はポリウレタンエラストマーが特に好ましい。
【0029】
ポリウレタン(又はポリウレタンエラストマー)は、ポリオール類とポリイソシアネート類とを反応させて得られたポリウレタンであってもよい。
【0030】
ポリオール類としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルアミドポリオール、アクリル系ポリマーポリオールなどが挙げられる。これらのポリオール類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのポリオール類のうち、耐水性及び耐薬品性に優れる点から、ポリエーテルポリオール(ポリエチレングリコールやポリテトラメチレングリコールエーテルなどのポリC
2−4アルキレングリコールなど)、ポリカーボネートポリオール(エチレングリコールや1,4−ブタンジオールなどのジオールとジメチルカーボネートなどのジC
1−4アルキルカーボネート又はジフェニルカーボネートなどのジC
6−12アリールカーボネートとの反応生成物など)が好ましい。
【0031】
ポリイソシアネート類には、例えば、脂肪族ポリイソシアネート[プロピレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、リジンジイソシアネート(LDI)などの脂肪族ジイソシアネートや、1,6,11−ウンデカントリイソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネートなどの脂肪族トリイソシアネート]、脂環族ポリイソシアネート[シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添キシリレンジイソシアネート、水添ビス(イソシアナトフェニル)メタンなどの脂環族ジイソシアネートや、ビシクロヘプタントリイソシアネートなどの脂環族トリイソシアネートなど]、芳香族ポリイソシアネート[フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ビス(イソシアナトフェニル)メタン(MDI)、トルイジンジイソシアネート(TODI)、1,3−ビス(イソシアナトフェニル)プロパンなどの芳香族ジイソシアネートなど]などが含まれる。
【0032】
これらのポリイソシアネート類は、多量体(二量体や三量体、四量体など)、アダクト体、変性体(ビウレット変性体、アロハネート変性体、ウレア変性体など)などの誘導体や、複数のイソシアネート基を有するウレタンオリゴマーなどであってもよい。
【0033】
これらのポリイソシアネート類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのポリイソシアネート類のうち、HDIなどの脂肪族ジイソシアネート、IPDIなどの脂環族ジイソシアネート、XDIなどの芳香脂肪族ジイソシアネート、MDIやTDIなどの芳香族ジイソシアネートが汎用され、汎用性が高い点から、芳香族ジイソシアネートが特に好ましい。
【0034】
これらのポリウレタンのうち、耐水性及び耐薬品性に優れる点から、ポリエーテル型ポリウレタン、ポリカーボネート型ポリウレタンが好ましい。
【0035】
シリコーン変性樹脂がシリコーン変性ポリウレタンである場合、非粘着層はさらに硬化剤を含んでいてもよい。硬化剤は、非粘着層が液状組成物の塗布により形成され、10〜100μmの薄肉の層である場合に有効である。
【0036】
硬化剤としては、慣用の硬化剤であるポリイソシアネート類、ポリオール類、ポリアミン類などを利用でき、ポリウレタンの種類に応じて選択できるが、反応性などの点から、ポリイソシアネート類が好ましい。ポリイソシアネート類としては、前記ポリイソシアネートを利用できる。前記ポリイソシアネート類のうち、硬化剤としては、安定した反応性の点から、芳香族ジイソシアネートが好ましい。
【0037】
硬化剤の割合は、シリコーン変性ポリウレタン100質量部に対して、例えば1〜50質量部、好ましくは2〜25質量部、さらに好ましくは5〜10質量部程度である。
【0038】
非粘着層は、慣用の添加剤、例えば、鎖伸長剤、安定剤(耐候安定剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤など)、充填剤、可塑剤、滑剤、着色剤、溶媒などを含んでいてもよい。これらの添加剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。添加剤の割合は、シリコーン変性樹脂(特にシリコーン変性ポリウレタン)100質量部に対して30質量部以下、好ましくは0.1〜20質量部、さらに好ましくは1〜15質量部程度である。
【0039】
非粘着層の平均厚みは10μm〜1mm程度の範囲から、ベルトの種類や製造方法の種類に応じて選択できる。
【0040】
具体的には、液状組成物の塗布により形成された非粘着膜は、薄肉であってもよく、平均厚みは、例えば10〜100μm、好ましくは15〜50μm、さらに好ましくは20〜30μm程度である。非粘着膜の厚みが薄すぎると、非粘着性が低下する虞があり、厚すぎても、非粘着性が低下する虞がある。
【0041】
シート状の前駆体を積層して形成された非粘着カバー層は、比較的厚肉であってもよく、平均厚みは、例えば0.05〜3mm、好ましくは0.1〜2mm、さらに好ましくは0.15〜1.5mm(特に0.2〜1mm)程度である。非粘着カバー層の厚みが薄すぎると、非粘着性が低下する虞があり、厚すぎると、ベルトの機械的特性が低下する虞がある。
【0042】
本明細書及び特許請求の範囲では、非粘着層の平均厚みは、走査型電子顕微鏡を用いて、搬送ベルトの断面を観察し、3箇所の厚みの平均値を算出する方法で測定できる。
【0043】
さらに、非粘着カバー層は、非粘着性を向上させるため、縦横方向に複数の凸部が形成されていてもよい。複数の凸部は、互いに間隔をおいて、ランダム又は規則的に形成されていてもよく、均一性が高い点から、規則的に形成されているのが好ましい。凸部の平面形状は、特に限定されず、例えば、多角形、円形、楕円形などであってもよい。凸部の平面形状の平均径は、例えば0.1〜10mm、好ましくは0.2〜5mm、さらに好ましくは0.3〜1mm程度である。隣接する凸部の平均間隔(中央部同士の間隔)は、例えば0.2〜15mm、好ましくは0.3〜10mm、さらに好ましくは0.5〜5mm程度である。凸部の平均高さは、例えば0.01〜0.5mm、好ましくは0.03〜0.3mm、さらに好ましくは0.05〜0.2mm程度である。
【0044】
(芯体)
芯体は、布帛及び樹脂成分を含んでおり、通常、布帛内部の繊維間に樹脂成分が含浸されている。布帛(又は帆布)としては、搬送ベルトの芯体に慣用的に利用される布帛を利用でき、例えば、織布、編布などが挙げられる。これらの布帛のうち、強度や生産性などにも優れる点から、織布が好ましい。
【0045】
織布の織成構成(織り組織)は、例えば、平織、綾織(斜文織)、朱子織(繻子織、サテン)などの組織であってもよい。これらの織り組織のうち、強度などのバランスに優れる点から、平織であってもよく、非粘着層との密着性の点から、綾織及び朱子織組織であってもよい。
【0046】
織布において、経糸の密度は、例えば10〜150本/5cm、好ましくは30〜120本/5cm、さらに好ましくは60〜100本/5cm程度である。緯糸の密度は、例えば10〜120本/5cm、好ましくは30〜100本/5cm、さらに好ましくは50〜90本/5cm程度である。
【0047】
布帛を構成する繊維は、短繊維であってもよいが、強度の点から、長繊維、短繊維を寄り合わせたスパン糸(紡績糸)が好ましい。さらに、長繊維は、モノフィラメント糸であってもよく、マルチフィラメント糸であってもよい。
【0048】
繊維は、各種材質の繊維を利用でき、例えば、ポリエステル繊維(ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどのポリアルキレンアリレート繊維など)、ポリアミド繊維(ポリアミド6やポリアミド66などの脂肪族ポリアミド繊維、アラミド繊維など)、綿やレーヨンなどのセルロース系繊維などであってもよい。これらのうち、強度や柔軟性などのバランスに優れる点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリC
2−4アルキレンアリレート繊維が好ましい。
【0049】
繊維の平均繊維径(太さ)は、モノフィラメント糸やマルチフィラメント糸の場合、例えば、280〜1200dtex、好ましくは300〜1000dtex、さらに好ましくは500〜800dtex程度である。スパン糸の場合、繊維の太さ(番手)は、例えば5〜100番手、好ましくは7〜50番手、さらに好ましくは10〜30番手程度である。
【0050】
布帛の平均厚みは、例えば0.2〜2.0mm、好ましくは0.2〜1.0mm、さらに好ましくは0.3〜0.7mm程度である。
【0051】
樹脂成分としては、前記シリコーン変性樹脂のベース樹脂として例示された樹脂を単独で又は二種以上組み合わせて利用できる。前記樹脂のうち、非粘着層との密着性を向上できる点から、シリコーン変性樹脂と同種(すなわち、シリコーン変性樹脂のベース樹脂と同一又は同種)の樹脂が好ましい。そのため、シリコーン変性樹脂がシリコーン変性ポリウレタンである場合、芯体の樹脂成分はポリウレタンが好ましい。ポリウレタンとしても、前記シリコーン変性樹脂のベース樹脂として例示されたポリウレタンを単独で又は二種以上組み合わせて利用できる。前記ポリウレタンのうち、非粘着層と同様の理由から、ポリエーテル型ポリウレタン又はポリカーボネート型ポリウレタンが好ましい。芯体のポリウレタンも、非粘着層の項で例示された硬化剤と組み合わせてもよい。好ましい硬化剤及びポリウレタンに対する割合も非粘着層と同様である。
【0052】
樹脂成分の割合は、布帛100質量部に対して、例えば10〜100質量部、好ましくは10〜50質量部程度である。樹脂成分の割合が少なすぎると、強度が不足し、非粘着層との密着性も低下する虞があり、多すぎると、ベルトに必要な柔軟性が低下する虞がある。
【0053】
芯体は、単一の芯体で形成されていてもよいが、複数の芯体の積層体であってもよい。積層体における芯体の数は、特に限定されず、2以上(例えば2〜10)、好ましくは2〜5(特に2〜4)程度である。
【0054】
複数の芯体で積層体を形成する場合、芯体間には中間層を介在させてもよい。中間層としては、芯体同士を接着できれば、特に限定されず、慣用の接着剤や粘着剤を利用できるが、芯体間の密着性を向上できる点から、芯体に含浸させる樹脂成分と同一又は同種の樹脂(特に同一の樹脂)を用いるのが好ましい。中間層は、通常、カバー層と同様のシート状前駆体を用いて形成される。
【0055】
中間層の平均厚みは、例えば0.05〜1mm、好ましくは0.1〜0.5mm、さらに好ましくは0.2〜0.4mm程度である。
【0056】
(カバー層)
本発明の搬送ベルトは、芯体の搬送面に非粘着層が形成されている場合、芯体の内周面側に、樹脂成分を含むカバー(保護)層が形成されていてもよい。カバー層の樹脂成分としても、前記シリコーン変性樹脂のベース樹脂として例示された樹脂を単独で又は二種以上組み合わせて利用できる。前記樹脂のうち、芯体との密着性を向上できる点から、芯体の布帛に含浸させる樹脂成分と同一又は同種の樹脂(特に同一の樹脂)を用いるのが好ましい。カバー層は、通常、シート状前駆体を用いて形成される。
【0057】
カバー層の平均厚みは、例えば0.05〜1mm、好ましくは0.1〜0.5mm、さらに好ましくは0.2〜0.4mm程度である。
【0058】
[搬送ベルトの製造方法]
本発明の搬送ベルトは、芯体の搬送面及び/又は内周面側に非粘着層を形成する非粘着層形成工程を含む製造方法により得られる。
【0059】
前記非粘着層形成工程において、非粘着層を形成する方法としては、非粘着層の種類に応じて選択でき、例えば、非粘着膜を形成する場合、シリコーン変性樹脂を含む液状組成物を芯体の搬送面及び/又は内周面に塗布するコーティング方法であってもよく、非粘着カバー層を形成する場合、シート状前駆体を芯体の搬送面及び/又は内周面に積層するラミネート方法などが挙げられる。
【0060】
コーティング方法において、液状組成物は、通常、シリコーン変性樹脂を溶解又は分散させるための溶媒を含んでいる。溶媒は、シリコーン変性樹脂の種類に応じて適宜選択でき、シリコーン変性樹脂がシリコーン変性ポリウレタンである場合、例えば、炭化水素類(例えば、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類)、ハロゲン化炭化水素類(クロロホルム、ジクロロメタンなど)、エーテル類(ジエチルエーテルなどの鎖状エーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチルなど)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなど)、ニトリル類(例えば、アセトニトリルなど)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシドなど)などが挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で又は混合溶媒として使用できる。これらの溶媒のうち、炭化水素類やケトン類などが汎用される。液状組成物中のシリコーン変性樹脂の濃度は、例えば1〜50質量%、好ましくは3〜30質量%、さらに好ましくは5〜25質量%程度である。
【0061】
コーティング方法としては、慣用の方法、例えば、バーコート法、ロールコート法、ナイフコート法、スプレーコート法、刷毛コート法、浸漬法などを利用できる。これらのうち、バーコート法、ロールコート法、ナイフコート法などが汎用される。
【0062】
コーティング後は、加熱して乾燥してもよい。加熱温度は、例えば60〜200℃、好ましくは80〜160℃、さらに好ましくは100〜140℃程度であってもよい。加熱時間は、例えば1分以上であってもよく、例えば1〜30分、好ましくは5〜10分程度であってもよい。
【0063】
ラミネート方法において、シート状駆体は、溶融状態又は非溶融状態で芯体と積層してもよく、非溶融状態で積層する場合は、慣用の接着剤や粘着剤を介して芯体と一体化してもよいが、簡便な方法で強固に一体化できる点から、溶融状態で芯体に積層して固化により接着するのが好ましい。前記シート状前駆体を溶融させるための加熱温度は、シリコーン変性樹脂の種類に応じて選択できるが、シリコーン変性ポリウレタンの場合、例えば100℃以上であってもよく、好ましくは100〜200℃、さらに好ましくは120〜180℃程度である。加熱の際には、加圧してもよく、圧力は、例えば0.1MPa以上、好ましくは0.1〜0.6MPa、さらに好ましくは0.2〜0.5MPa程度である。加熱時間は、例えば10秒以上であってもよく、例えば30秒〜10分、好ましくは1〜5分程度であってもよい。
【0064】
ラミネート法で得られた非粘着カバー層は、搬送物との非粘着性を向上させるために、表面に凸部(凹凸構造)を形成する場合、凹凸構造の形成方法としては、慣用の方法を利用できるが、簡便性などの点から、溶融状態の非粘着カバー層に対して、目的の凹凸構造と反転した型を有する離型シートを積層して固化させた後、離型シートを剥離する方法が好ましい。非粘着カバー層を溶融させる条件としては、加熱温度は、シリコーン変性樹脂の種類に応じて選択できるが、シリコーン変性ポリウレタンの場合、例えば100℃以上であってもよく、好ましくは100〜170℃、さらに好ましくは120〜160℃程度である。加熱の際には、加圧してもよく、圧力は、例えば0.1MPa以上、好ましくは0.1〜0.6MPa、さらに好ましくは0.2〜0.5MPa程度である。加熱時間は、例えば1分以上であってもよく、例えば1〜5分、好ましくは1.5〜4分程度であってもよい。
【0065】
芯体の製造方法は、慣用の方法を利用でき、例えば、樹脂成分を含む液状組成物に布帛を含浸させる方法(特許文献2に記載の方法など)などが挙げられる。液状組成物の溶媒としては、非粘着膜を形成するための液状組成物として例示された溶媒などを利用できる。液状組成物中の樹脂成分の濃度は、例えば5〜50質量%、好ましくは10〜30質量%、さらに好ましくは15〜20質量%程度である。さらに、複数の芯体を積層する場合、中間層用のシート状前駆体を布帛間に介在させた状態で加熱してもよい。加熱及び加圧の条件は、樹脂成分の種類に応じて選択できる。
【0066】
得られた搬送ベルトの形態は、特に限定されず、接合部を有さないベルト(シームレスベルト)であってもよいが、通常、両端を接合する無端状のベルトである。
図3は、無端状に調製され、かつプーリに装着された本発明の搬送ベルトの側面図である。
図3に示すように、得られた搬送ベルト10は、両端を接合して無端状のベルトに調製された後、駆動プーリ11と従動プーリ12との間に巻き掛けて使用される。具体的には、プーリに装着された搬送ベルト10の上に食品などの搬送物が載置され、従動プーリ12側から駆動プーリ11側に搬送可能となる。
【0067】
得られた搬送ベルトの両端を接合する方法は、特に限定されないが、通常、接合部を強固に固定するため、両端をジグザグ状(電光形状)などの非直線形状に形成し、さらに接合部を補強部材で覆う方法が利用される。
【0068】
図4及び5は、無端状に調製した本発明の搬送ベルトの接合部の平面図及び側面図である。
図4に示すように、まず、得られた搬送ベルトは、長手方向の両端をジグザグ状(電光形状)に切断され、切断された両端が互いに突き合わされる。次に、
図4及び5に示すように、両端を付き合わせた接合部の上に、補強部材10a[例えば、非粘着カバー層と同様の材質(例えば、シリコーン変性ポリウレタン)のシート、織布など]を積層し、熱板プレス機を用いて、補強部材と共に搬送ベルトの接合部を加圧することにより接合する。
【実施例】
【0069】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0070】
[使用原料の詳細]
(非粘着層を形成するための液状組成物)
主成分(樹脂成分):シリコーン変性タイプの熱可塑性ポリウレタン樹脂(大日精化工業(株)製「ダイアロマーSP」)
溶剤:トルエン及びメチルエチルケトンの混合溶媒(トルエン/メチルエチルケトン=70/10(重量比))
固形分濃度:20質量%
硬化剤:ポリイソアシアネート組成物(大日精化工業(株)製「クロスネートD」)
溶剤:酢酸エチル
固形分濃度:50質量%
硬化剤の配合比:樹脂成分100質量部に対し10質量部。
【0071】
(非粘着カバー層を形成するためのシート状前駆体1)
シリコーン変性ポリエーテル型ウレタンエラストマーシート(大日精化工業(株)製「レザミンPS」)、シリコーン含量8質量%、厚み0.3mm
(非粘着カバー層を形成するためのシート状前駆体2)
シリコーン変性ポリエーテル型ウレタンエラストマーシート(大日精化工業(株)製「レザミンPS」)、シリコーン含量16質量%、厚み0.3mm
(非粘着カバー層を形成するためのシート状前駆体3)
シリコーン変性ポリカーボネート型ウレタンエラストマーシート(大日精化工業(株)製「レザミンPS」、シリコーン含量8質量%、厚み0.3mm
(非粘着カバー層を形成するためのシート状前駆体4)
シリコーン変性ポリカーボネート型ウレタンエラストマーシート(大日精化工業(株)製「レザミンPS」、シリコーン含量16質量%、厚み0.3mm
(非粘着カバー層を形成するためのシート状前駆体5)
シリコーン変性ポリカーボネート型ウレタンエラストマーシート(大日精化工業(株)製「レザミンPS」、シリコーン含量8質量%、厚み1.1mm
(非粘着カバー層を形成するためのシート状前駆体6)
シリコーン変性ポリカーボネート型ウレタンエラストマーシート(大日精化工業(株)製「レザミンPS」、シリコーン含量8質量%、厚み2.1mm
(芯体を形成するための材料)
平織布[経糸:ポリエステルスパン糸(太さ20番手、撚合せ本数2、糸密度:78本/5cm)]、[緯糸:ポリエステルモノフィラメント(繊度660dtex、撚合せ本数1、糸密度:68本/5cm)]
樹脂成分:ポリエーテル型熱可塑性ポリウレタン樹脂(ポリテトラメチレンエーテルグリコールとMDIとの反応物)
溶剤:メチルエチルケトンとシクロヘキサンとテトラヒドロフランとの混合溶剤(メチルエチルケトン/シクロヘキサン/THF=15/45/40(重量比))
硬化剤:ポリイソシアネート組成物
固形分濃度:25質量%。
【0072】
(カバー層を形成するためのシート状前駆体1)
ポリエーテル型ウレタンエラストマーシート、厚み0.3mm
(カバー層を形成するためのシート状前駆体2)
ポリカーボネート型ウレタンエラストマーシート、厚み0.3mm
(離型紙)
格子状の凹凸パターン(転写後の非粘着層の形状が、正方形の一辺が約0.38mm、隣接する凸部の間隔約0.44mm、凸部の高さ約0.1mmとなる凹凸パターン)を有する離型紙。
【0073】
[非粘着層の平均厚み]
非粘着層(非粘着膜又は非粘着カバー層)の平均厚みは、走査型電子顕微鏡を用いて、搬送ベルトの断面を観察し、3箇所の厚みの平均値を算出した。
【0074】
[搬送面の非粘着性(剥離力)評価]
実施例及び比較例で得られた搬送ベルトを所定の寸法(幅190mm、長さ280mm)に切断して試験片とし、水平方向に可動式の台(長方形状の台)上に、試験の長さ方向を台の長さ方向に平行にして固定する。次に、試験片の表面(搬送面)の中央に、セロハンテープ(幅15mm、長さ300mm)を、セロハンテープの長さ方向を台及び試験片の長さ方向と平行にして載置し、ローラで押圧して貼りつける。さらに、台の長さ方向の一方の側でロードセルを固定し、ロードセルが固定された側とは反対側のセロハンテープの一端と、ロードセルに締結された紐の先端とをクリップで掴んで固定する。ロードセルから離れる方向に向かって、台を長さ方向に300mm/分で動かし、セロハンテープを試験片の表面に対し、180度方向に剥離し、剥離力を測定する。なお、剥離力は、引き剥がし初期のピーク値を除く平均値とした。
【0075】
[耐久性評価(走行試験)]
実施例8、10及び11で得られた搬送ベルトの両端部をジグザグ形状(電光形状)に形成した。得られた両端部を互いに突き合わせて、その接合部を覆うように非粘着カバー層を形成するためのシート状前駆体3と同一のシート(幅100mm、長さ約50mm)を補強層として被せた後、熱融着により接合して、ベルト本体部と補強層で補強された接合部とで形成され、幅100mm、長さ1500mmの無端状の搬送ベルトを作製した。
【0076】
得られた無端状の搬送ベルトを、
図6に概略レイアウトを示す5軸走行試験機(プーリ直径15mm)に架け渡し、ベルト張力:3N/mm、屈曲回数:200万回の条件で走行試験に供した。なお、実施例11で得られた搬送ベルトについては、プーリ直径50mmの5軸走行試験機でさらに走行試験を行った。
【0077】
走行試験前、試験後の搬送ベルトについて、JIS K6376準拠した引張試験方法でベルト強力を測定し、下記式に基づいて、強力保持率を算出した。なお、ベルト強力の測定部位は、接合部を含まないベルト本体部と、接合部との2箇所から試験片を採取した。また、接合部では、試験片の中央に接合部が配置されるよう採取した。
【0078】
強力保持率=走行試験後の強力/走行試験前の強力×100(%)
【0079】
強力保持率の評価としては、走行試験後のベルト強力が30N/mm以上、強力保持率が50%以上であれば、搬送ベルトとして実用可能と判断した。
【0080】
さらに、走行試験後のベルト表面状態についても目視で観察し、クラックなどの異常がなければ、搬送ベルトとして実用可能(異常なし)と判断した。
【0081】
比較例1
樹脂成分及び硬化剤を含む液状組成物中に平織布を0.5分間浸漬して取り出した後、120℃で5分間加熱して乾燥して溶媒を除去して、芯体(搬送ベルト)を得た。この芯体の表面には、接着剤が固着していた。
【0082】
実施例1
比較例1で得られた芯体の表面に、ナイフコート法を用いて、非粘着膜を形成するための液状組成物をコーティングした後、120℃で5分間加熱して乾燥して溶媒を除去して、芯体の上に薄肉の非粘着膜が積層された搬送ベルトを得た。非粘着膜の平均厚みは25μmであった。
【0083】
比較例1及び実施例1で得られた搬送ベルトの非粘着性を評価した結果を表1に示す。
【0084】
【表1】
【0085】
表1から明らかなように、実施例1は、比較例1に比べ剥離力が非常に小さくなり、非粘着性が向上した。
【0086】
比較例2
比較例1で得られた芯体の表面に、カバー層を形成するためのシート状前駆体1を積層し、プレス機を用いて、150℃、0.3MPaで5分間加熱プレスし、シート状前駆体を溶融させた後、冷却して固化し、芯体の上に厚肉のカバー層が積層された搬送ベルトを得た。カバー層の平均厚みは0.2mmであった。
【0087】
実施例2
カバー層を形成するためのシート状前駆体1の代わりに、非粘着カバー層を形成するためのシート状前駆体1を用いる以外は比較例2と同様にして搬送ベルトを得た。非粘着カバー層の平均厚みは0.2mmであった。
【0088】
実施例3
カバー層を形成するためのシート状前駆体1の代わりに、非粘着カバー層を形成するためのシート状前駆体2を用いる以外は比較例2と同様にして搬送ベルトを得た。非粘着カバー層の平均厚みは0.2mmであった。
【0089】
比較例3及び実施例4〜5
比較例2及び実施例2〜3で得られた搬送ベルトのカバー層又は非粘着カバー層の上に、それぞれ離型紙を積層し、プレス機を用いて、150℃、0.3MPaで5分間加熱プレスし、カバー層又は非粘着カバー層を溶融させた後、冷却して固化した。さらに、離型紙をカバー層又は非粘着カバー層から剥離し、カバー層又は非粘着カバー層の表面に凹凸構造を形成した。
【0090】
比較例4
比較例1で得られた芯体の表面に、カバー層を形成するためのシート状前駆体2を積層し、プレス機を用いて、150℃、0.3MPaで5分間加熱プレスし、シート状前駆体を溶融させた後、冷却して固化し、芯体の上に厚肉の非粘着カバー層が積層された搬送ベルトを得た。非粘着カバー層の平均厚みは0.2mmであった。
【0091】
実施例6
カバー層を形成するためのシート状前駆体2の代わりに、非粘着カバー層を形成するためのシート状前駆体3を用いる以外は比較例2と同様にして搬送ベルトを得た。非粘着カバー層の平均厚みは0.2mmであった。
【0092】
実施例7
カバー層を形成するためのシート状前駆体2の代わりに、非粘着カバー層を形成するためのシート状前駆体4を用いる以外は比較例2と同様にして搬送ベルトを得た。非粘着カバー層の平均厚みは0.2mmであった。
【0093】
比較例5及び実施例8〜9
比較例4及び実施例6〜7で得られた搬送ベルトのカバー層又は非粘着カバー層の上に、それぞれ離型紙を積層し、プレス機を用いて、150℃、0.3MPaで5分間加熱プレスし、カバー層又は非粘着カバー層を溶融させた後、冷却して固化した。さらに、離型紙をカバー層又は非粘着カバー層から剥離し、カバー層又は非粘着カバー層の表面に凹凸構造を形成した。
【0094】
実施例10
カバー層を形成するためのシート状前駆体1の代わりに、非粘着カバー層を形成するためのシート状前駆体5を用いる以外は比較例2と同様にして搬送ベルトを得た。非粘着カバー層の平均厚みは1mmであった。
【0095】
得られた搬送ベルトの非粘着カバー層の上に、離型紙を積層し、プレス機を用いて、150℃、0.3MPaで5分間加熱プレスし、非粘着カバー層を溶融させた後、冷却して固化した。さらに、離型紙を非粘着カバー層から剥離し、非粘着カバー層の表面に凹凸構造を形成した。
【0096】
実施例11
カバー層を形成するためのシート状前駆体1の代わりに、非粘着カバー層を形成するためのシート状前駆体6を用いる以外は比較例2と同様にして搬送ベルトを得た。非粘着カバー層の平均厚みは2mmであった。
【0097】
得られた搬送ベルトの非粘着カバー層の上に、離型紙を積層し、プレス機を用いて、150℃、0.3MPaで5分間加熱プレスし、非粘着カバー層を溶融させた後、冷却して固化した。さらに、離型紙を非粘着カバー層から剥離し、非粘着カバー層の表面に凹凸構造を形成した。
【0098】
比較例2〜5及び実施例2〜11で得られた搬送ベルトの非粘着性を評価した結果を表2に示す。
【0099】
【表2】
【0100】
表2の結果から、シリコーン含有率が高いほど、剥離力は小さくなる傾向が見られた。さらに、非粘着カバー層と表面の凹凸構造とを組合せると、顕著に非粘着性を向上できた。
【0101】
実施例8、10及び11で得られた搬送ベルトについて、走行試験に供した結果を表3に示す。
【0102】
【表3】
【0103】
実施例8、10はいずれも、ベルト本体部でも接合部でも、走行試験後のベルト強力が30N/mm以上、強力保持率が50%以上であり、ベルト表面状態も異常が無かったため、搬送ベルトとして充分に実用可能であった。
【0104】
なお、非粘着カバー層の厚みが大きい(2mm)実施例11では、走行試験後のベルト強力が30N/mm以上、強力保持率が50%以上を達成したものの、ベルト表面にクラックが発生したので、プーリ直径15mmの走行条件では実用不可であった。但し、プーリの大きくして(プーリ直径50mm)、同様の走行試験を行った結果、走行試験後のベルト強力が30N/mm以上、強力保持率が50%以上であり、ベルト表面状態も異常が無かったため、搬送ベルトとして充分に実用可能であった。
【0105】
これらの実験結果から、非粘着カバー層の厚みが大きいと、屈曲性がやや低下するため、直径が小さいプーリへの巻き掛けが必要な走行レイアウトへは適用できないものの、巻き掛けるプーリの直径が大きいレイアウトでは充分実用可能なことが判明した。