特許第6291528号(P6291528)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6291528
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】水性接着剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/04 20060101AFI20180305BHJP
   C09J 133/26 20060101ALI20180305BHJP
   C09J 133/02 20060101ALI20180305BHJP
   C09J 125/08 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
   C09J133/04
   C09J133/26
   C09J133/02
   C09J125/08
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-131701(P2016-131701)
(22)【出願日】2016年7月1日
(62)【分割の表示】特願2014-510532(P2014-510532)の分割
【原出願日】2012年5月14日
(65)【公開番号】特開2016-216730(P2016-216730A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2016年7月1日
(31)【優先権主張番号】61/485,890
(32)【優先日】2011年5月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン,マイ
【審査官】 佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−344837(JP,A)
【文献】 特開平05−043852(JP,A)
【文献】 特開平07−062007(JP,A)
【文献】 特開平06−256727(JP,A)
【文献】 特開2004−263054(JP,A)
【文献】 特開平06−322343(JP,A)
【文献】 特開2007−112842(JP,A)
【文献】 特開平08−092530(JP,A)
【文献】 特開2002−003687(JP,A)
【文献】 特開2002−155158(JP,A)
【文献】 米国特許第04355073(US,A)
【文献】 特開2008−214581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ビニルポリマーの重量を基準にして0〜0.4重量%の、イオン性モノマーの重合単位、
(b)ビニルポリマーの重量を基準にして0.1重量%〜10重量%の、アクリルアミド、メタクリルアミドおよびそれらの混合物からなる群から選択される1種以上のモノマーの重合単位
(c)ビニルポリマーの重量を基準にして20重量%以上の、1種以上の(メタ)アクリル酸の非置換のアルキルエステルの重合単位、および
(d)ビニルポリマーの重量を基準にして5重量%〜60重量%の、1種以上の非イオン性芳香族ビニルモノマーの重合単位
を含むビニルポリマーを含
前記ビニルポリマーが、1種以上の(メタ)アクリル酸の非置換のアルキルエステル、1種以上の非イオン性芳香族モノマー、1種以上のスルホン酸官能性モノマー、および1種以上の(メタ)アクリル酸のアミド以外のモノマーの重合単位を含まない、
水性接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
下記は、本発明の背景である。
【0002】
多くの場合、2つ以上の基体を、1つ以上のこの基体がスリップ剤を含む状態で、接着剤組成物を使用して一緒に結合することが望まれる。例えば、基体の一方または両方がスリップ剤として1種以上の脂肪アミドを含むポリマーから製造されている場合には、ポリマーから製造された2つの基体を結合させることにより、結合された物品が形成され得る。そのポリマーから製造された基体の表面が比較的低い摩擦係数を有するであろうように、このようなスリップ剤は場合によっては、ポリマーに添加される。このような系において生じる1つの課題は、このスリップ剤が基体から接着剤に移行し、これにより、基体におけるスリップ剤の量が枯渇し、そしてその結果、その基体の摩擦係数が増大することである。
【0003】
基体からのスリップ剤の枯渇を低減させるために、過去に使用されてきた1つの方法は、基体と結合する前に、幾分かのスリップ剤を接着剤組成物に包含させることであった。例えば、接着剤組成物が溶媒を含まない接着剤組成物であるか、または、接着剤が有機溶媒に溶解されている組成物である場合には、多くの場合、その接着剤組成物に幾分かのスリップ剤を溶解させるのが可能である。ついで、接着剤組成物の層が、スリップ剤を含む基体の表面上に形成される場合には、接着剤の層は幾分かのスリップ剤も含むであろうし、そして、接着剤組成物の層におけるスリップ剤の存在は、基体からのスリップ剤の枯渇の傾向を低減させるであろう。このため、基体は相対的に低いその摩擦係数を維持するであろう。
【0004】
多くの場合、水性である接着剤組成物を使用することが望まれる。スリップ剤は、通常、水に可溶性ではなく、そして水性組成物へのスリップ剤の添加は、通常、受け入れられ難い混合物をもたらすが、それは、成分の相分離、不安定性、または不適合性の他の望ましくない結果のせいである。したがって、接着剤組成物にスリップ剤を添加することにより、基体の摩擦係数を維持するための上記の方法は、接着剤組成物が水性である場合、効果的ではないであろう。
【0005】
米国特許出願公開第2009/0142610号は、脂肪アミドを含むホットメルト接着剤組成物を記載する。水性であって、スリップ剤を含む基体における摩擦係数の増加を引き起こさない、接着剤組成物を提供することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0142610号明細書
【発明の概要】
【0007】
下記は、本発明の記述である。
【0008】
本発明の第1の態様は、(a)ビニルポリマーの重量を基準にして、0〜0.4重量%のカルボキシル官能性モノマーの重合単位、および(b)ビニルポリマーの重量を基準にして、0.1重量%〜10重量%のスルホン酸官能性モノマーの重合単位を含むビニルポリマーを含む水性接着剤組成物である。
本発明の別の実施態様は、(a)ビニルポリマーの重量を基準にして0〜0.4重量%の、イオン性モノマーの重合単位、および(b)ビニルポリマーの重量を基準にして0.1重量%〜10重量%の、アクリルアミド、メタクリルアミドおよびそれらの混合物からなる群から選択される1種以上のモノマーの重合単位を含むビニルポリマーを含む、水性接着剤組成物に関する。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の基体を第2の基体に結合させる方法であって、
(a)第1の態様の組成物の層を前記第1の基体の表面に適用し、(b)前記水性接着剤組成物の層を乾燥させて水を除去し、および(c)前記第2の基体の表面を前記層に接触させることを含み、前記第1の基体および前記第2の基体の一方または両方が1種以上のスリップ剤を含む方法である。本発明の第3の態様は、本発明の第2の態様の方法により製造された結合された物品である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下は本発明の詳細な説明である。
本明細書において使用される場合、下記の用語は、文脈が他のことを明確に示さない限りは、指定された定義を有する。
【0011】
本明細書において使用される場合、およびFW Billmeyer,JR.in Textbook of Polymer Science,second edition,1971により定義されるように、「ポリマー」は、より小さい化学的な繰り返し単位の反応生成物から製造される相対的に大きな分子である。
【0012】
ポリマー分子量は、標準的な方法、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC、ゲル浸透クロマトグラフィーまたはGPCとも称される)により測定され得る。一般的に、ポリマーは、1,000以上の重量平均分子量(Mw)を有する。一部のポリマーは、Mn、数平均分子量により特徴付けられる。
【0013】
一部のポリマーは、1つ以上のガラス転移温度(Tg)を示す。Tgは、示差走査熱量測定を使用して、中点方法により測定される。
【0014】
本明細書において使用される場合、「ポリマーの重量」は、ポリマーの乾燥重量を意味する。
【0015】
ポリマーの繰り返し単位を形成するために互いに反応し得る分子は、本明細書では、「モノマー」と称される。ビニルモノマーは、芳香環の部分でなく、他の炭素−炭素二重結合との重合反応に関与可能な、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有するモノマーである。ビニルモノマーは、500未満の分子量を有する。ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、置換スチレン、ジエン、エチレン、エチレン誘導体およびそれらの混合物があげられる。エチレン誘導体としては、例えば、下記の非置換および置換型があげられる:酢酸ビニル、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、(メタ)アクリル酸のアミド、塩化ビニル、ハロゲン化アルケンおよびそれらの混合物。本明細書において使用される場合、「(メタ)アクリル」は、アクリルまたはメタクリルを意味し;「(メタ)アクリレート」は、アクリレートまたはメタクリレートを意味し;「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミドまたはメタクリルアミドを意味する。「置換」は、少なくとも1つの結合された化学基、例えば、アルキル基、アルケニル基、ビニル基、ヒドロキシル基、カルボン酸基、他の官能基およびそれらの組み合わせを有することを意味する。
【0016】
芳香族ビニルモノマーは、その分子が1つ以上の芳香環を含むビニルモノマーである。芳香族ビニルモノマーでないビニルモノマーは、本明細書では、「非芳香族ビニルモノマー」と称される。オレフィンモノマーは、その分子が水素および酸素のみを含むビニルモノマーである。
【0017】
単独でまたは他のモノマーと共に、特定のモノマーを重合することにより製造されたポリマーは、本明細書では、重合単位としてそのモノマーを含むと言われる。
【0018】
本明細書において使用される場合、あるモノマーの重合単位を含むポリマーが水中に存在する場合に、そのモノマーの重合単位がイオン化されるpH条件がpH2.5〜pH9にないならば、そのモノマーは非イオン性である。本明細書では、ある重合単位の総モル数を基準にして、それら重合単位の50モルパーセント以上がイオンの状態である場合には、その重合単位はイオン化されていると見なされる。
【0019】
本明細書において使用される場合、「ビニルポリマー」は、ポリマーの重量を基準にして90重量%以上が1種以上のビニルモノマーの重合単位である、ポリマーである。
【0020】
本明細書において使用される場合、「水性」組成物は、組成物の重量を基準にして、30重量%以上の量で水を含む組成物である。水性組成物では、水が連続媒体を形成し、全ての他の成分が、水中に溶解されもしくは分散されているかまたはそれらの組み合わせである。
【0021】
本明細書において使用される場合、水性組成物の「固形分量」は、水性組成物の層が基体に適用され、ついで、乾燥しもしくは乾燥させられた場合に、後に残る材料の量である。固形分量は、上部が開口した容器に、深さ1mmから2mmの水性組成物の層を作製し、そしてその容器を、100℃で30分間、循環空気オーブンに入れることにより測定されてもよい。パーセンテージとして表される固形分量は、100(LB)/(IC)であり、ここでLBは、オーブン曝露後に容器に残存する水性組成物由来の材料の重量であり、およびICはこの水性組成物の当初の重量である。オーブン曝露後に容器に残存する水性組成物由来の材料は、本明細書では、組成物の「固形分」と称される。
【0022】
本明細書において使用される場合、「接着剤組成物」は、2つの基体の両方と接触して配置された場合に(場合によって、この組成物を乾燥および/または加熱した後に)、この2つの基体を一緒に結合させうる組成物である。
【0023】
本明細書において使用される場合、「ポリオール」は、その分子が2つ以上のヒドロキシル基を含む化合物である。本明細書において使用される場合、「ポリイソシアネート」は、その分子が2つ以上のイソシアネート基を含む化合物である。
【0024】
本明細書において使用される場合、「水分散性」化合物は、1〜50%の範囲における任意の量で、撹拌により、25℃で水中にて溶液またはエマルジョンを形成するであろうものである。
【0025】
本明細書において使用される場合、「脂肪化合物」は、その分子が1つ以上の脂肪基を含む化合物である。脂肪基は炭素および水素原子のみを含み、かつ8つ以上の非芳香族炭素原子(すなわち、どの芳香環の部分でもない炭素原子)を含む基である。脂肪アミドは、脂肪基における炭素原子の1つがアミド基に結合した脂肪化合物である。脂肪アミドは、構造Iを有する:
【化1】
式中、Rは脂肪基であり、並びにRおよびRのそれぞれは、独立して、水素または有機基である。R基は、本明細書では、脂肪アミドの「主」基と称される。
【0026】
本発明の組成物は水性である。好ましくは、組成物における水の量は、組成物の重量を基準にして、70重量%以下である。好ましくは、組成物における水の量は、組成物の重量を基準にして35重量%以上である。
【0027】
水性組成物では、連続相の化学組成を特徴付けるのが有用である。本発明の好ましい組成物では、連続相における水の量は、連続相の重量を基準にして、50重量%以上;より好ましくは75重量%以上;より好ましくは90重量%以上である。
【0028】
本発明の好ましい組成物では、固形分量は30%以上である。本発明の好ましい組成物では、固形分量は65%以下である。
【0029】
本発明の組成物は1種以上のビニルポリマーを含む。好ましいビニルポリマーは、1種以上の(メタ)アクリレートの重合単位を含む。(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル酸のアルキルエステルであり、そこではアルキル基は置換されても非置換でもよい。2個以上の炭素原子を有する置換または非置換のアルキル基が好ましく、より好ましくは、4個以上の炭素原子である。20個以下の炭素原子を有する置換または非置換のアルキル基が好ましく、より好ましくは10個以下であり、より好ましくは8個以下である。置換アルキル基の中でも、ヒドロキシアルキル基が好ましい。(メタ)アクリル酸の非置換のアルキルエステルがより好ましい。アクリル酸の非置換アルキルエステルがより好ましい。
【0030】
本発明のポリマーでは、(メタ)アクリレートの重合単位の好ましい量は、ポリマーの重量を基準にして、20重量%以上;より好ましくは40重量%以上;より好ましくは50重量%以上である。(メタ)アクリレートの重合単位の好ましい量は、ポリマーの重量を基準にして、80重量%以下;より好ましくは70重量%以下である。
【0031】
1種以上の(メタ)アクリレートの重合単位を含むポリマーは、場合によって、1種以上の追加のビニルモノマーの重合単位を含む。
【0032】
本発明の好ましいポリマーは、1種以上の非イオン性芳香族ビニルモノマー、1種以上のメタクリル酸の非置換アルキルエステルまたはそれらの混合物の重合単位を含む。本発明のより好ましいポリマーは、1種以上の非イオン性芳香族ビニルモノマーの重合単位を含む。非イオン性芳香族ビニルモノマーが使用される場合、好ましい非イオン性芳香族ビニルモノマーは、スチレンおよびアルキル置換スチレンであり、より好ましくは、スチレンおよびアルファ−メチルスチレンであり、より好ましくはスチレンである。メタクリル酸の非置換アルキルエステルが使用される場合、好ましいアルキル基は、4個以下の炭素原子を有し、より好ましいアルキル基は、2個以下の炭素原子を有し、より好ましくはメチルである。
【0033】
本発明のより好ましいポリマーは、1種以上のアクリル酸の非置換アルキルエステルの重合単位を含み、1種以上の非イオン性芳香族ビニルモノマー、1種以上のメタクリル酸の非置換アルキルエステルまたはそれらの混合物のいずれか、の重合単位も含む。本発明のさらにより好ましいポリマーは、1種以上のアクリル酸の非置換アルキルエステルの重合単位を含み、1種以上の非イオン性芳香族ビニルモノマーの重合単位も含む。
【0034】
非イオン性芳香族モノマーの好ましい量は、ポリマーの重量を基準にして、5重量%以上;より好ましくは10重量%以上;より好ましくは20重量%以上である。非イオン性芳香族モノマーの好ましい量は、ポリマーの重量を基準にして、60重量%以下;より好ましくは50重量%以下;より好ましくは40重量%以下である。
【0035】
カルボキシル官能性モノマーは、カルボキシル基を含むモノマーである。カルボキシル基は、非イオン化状態でもよいし、または、アニオン性状態でもよい。カルボキシル基は、カルボキシル基がポリマー上に存在するように、通常、重合中にそのままである。本発明のポリマーは、カルボキシル官能性モノマーの重合単位を全く含まないか、または、カルボキシル官能性モノマーが存在する場合には、カルボキシル官能性モノマーの量はポリマーの重量を基準にして0.4重量%以下である。カルボキシルモノマーが存在する場合、カルボキシル官能性モノマーの量はポリマーの重量を基準にして、好ましくは0.1重量%以下;より好ましくは0.03重量%以下;より好ましくは0.01重量%以下であり;より好ましくは含まない。
【0036】
本発明のポリマーは1種以上のスルホン酸官能性モノマーの重合単位を含む。スルホン酸モノマーは、1以上のスルホ基を含むモノマーである。スルホ基は、−SOOHであり、ここで硫黄原子は炭素原子に結合される。スルホ基は、非イオン化状態でもよいし、または、アニオン性状態でもよく、本明細書では、スルホ基を含む化合物は、スルホ基がアニオン性状態である同一の化合物と等価物であると見なされる。例えば、本明細書では、スチレンスルホン酸は、スチレンスルホン酸ナトリウムと等価物であると見なされる。好ましいスルホン酸官能性モノマーは、スチレンスルホン酸ナトリウム;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸;ビニルスルホン酸ナトリウム、2−スルホエチルメタクリレートおよびそれらの混合物である。より好ましくは、スチレンスルホン酸ナトリウムである。
【0037】
本発明のポリマーにおけるスルホン酸官能性モノマーの重合単位の量は、ポリマーの重量を基準にして、0.1重量%から10重量%である。スルホン酸官能性モノマーの量は、ポリマーの重量を基準にして、好ましくは0.2重量%以上;より好ましくは0.5重量%以上;より好ましくは1重量%以上である。本発明のポリマーにおけるスルホン酸官能性モノマーの量は、ポリマーの重量を基準にして、好ましくは7重量%以下;より好ましくは5重量%以下である。
【0038】
本発明のポリマーは、場合によって、1種以上の(メタ)アクリレート;1種以上の非イオン性芳香族ビニルモノマー;および1種以上のスルホン酸官能性モノマーに加えて、1種以上のモノマーの重合単位を含む。1種以上のこのような追加のモノマーが存在する場合、このような追加のモノマーは、好ましくは、非イオン性ビニルモノマーから選択される。好ましい追加のモノマーは、(メタ)アクリル酸のアミド、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルおよびそれらの混合物である。好ましい(メタ)アクリル酸のアミドは、アクリルアミドおよびメタクリルアミドであり;より好ましくはアクリルアミドである。好ましい(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルは、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレートおよびヒドロキシプロピルメタクリレートである。
【0039】
本発明の好ましいポリマーは、ポリマーの重量を基準にして、0重量%から10重量%のオレフィンモノマーの重合単位を含む。すなわち、本発明の好ましいポリマーは、オレフィンモノマーの重合単位を全く含まないか、さもなければ、ポリマーの重量を基準にして、10重量%以下のオレフィンモノマーの重合単位を含むかのいずれかである。ポリマーにおけるオレフィンモノマーの重合単位の量は、より好ましくは0重量%から5重量%;より好ましくは0重量%から2重量%;より好ましくは0重量%から1重量%;より好ましくは0重量%である。
【0040】
本発明のポリマーを、ポリマーの重量を基準にした重量で、1種以上の(メタ)アクリレート、1種以上の非イオン性芳香族モノマー、1種以上のスルホン酸官能性モノマーおよび1種以上の(メタ)アクリル酸のアミド以外のモノマーの重合単位の全量(本明細書で「M2」)により特徴付けることが有用である。好ましくは、M2は、50重量%以下;より好ましくは25重量%以下;より好ましくは10重量%以下;より好ましくは5重量%以下である。好ましいポリマーは、1種以上の(メタ)アクリレート、1種以上の非イオン性芳香族モノマー、1種以上のスルホン酸官能性モノマーおよび1種以上の(メタ)アクリル酸のアミド以外のモノマーの重合単位を含まない。
【0041】
本発明の組成物は、組成物の全重量で割り算されてパーセンテージとして表される、組成物に含まれるポリマーの乾燥重量である、ポリマー固形分量により特徴付けられてもよい。好ましくは、ポリマー固形分量は5重量%以上;より好ましくは20重量%以上;より好ましくは30重量%以上;より好ましくは40重量%以上である。好ましくは、ポリマー固形分量は、70重量%以下;より好ましくは60重量%以下である。
【0042】
本発明のポリマーのTgは、好ましくは−50℃以上;より好ましくは−30℃以上である。本発明のポリマーのTgは、好ましくは20℃以下である。本発明のポリマーの重量平均分子量は、好ましくは5,000から2,000,000;より好ましくは100,000から2,000,000である。
【0043】
本発明の好ましいポリマーは、水に分散されたポリマー粒子の状態で存在する。好ましい平均粒子サイズは、50ナノメートルから1,000ナノメートルである。本発明の好ましいポリマーは、エマルジョン重合により形成され、エマルジョン重合の生成物は、ラテックスである。ラテックスは、1種以上のアニオン性界面活性剤、1種以上の非イオン性界面活性剤またはそれらの混合物を含む。好ましくは、本発明のポリマーに結合されるスルホ基は、重合処理中は、アニオン性状態である。好ましくは、重合処理の完了後に、得られたラテックスは塩基の添加によりpH6〜8に中和される。
【0044】
本発明の組成物は、場合によって、1種以上の水分散性ポリオールを含んでいてもよい。1種以上のポリオールが使用される場合、下記のポリオールが好ましい。好ましいポリオールは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエステルポリエーテルポリオールまたはそれらの混合物である。好ましいポリオールは、ジオール、トリオールまたはそれらの混合物から選択される。好ましいポリオールは、組成物中にイソシアネート基も存在する場合には、混合操作中にイソシアネートとの反応に、充分にまたは少なくとも部分的に利用可能であろうように、十分に不揮発性である。好ましくは、ポリオールは、100から7500、より好ましくは150から5000、およびさらにより好ましくは、200から1000の数平均分子量を有するであろう。好ましくは、ポリオールの分子量は、1500未満、およびさらにより好ましくは、600未満である。非常に好ましいポリオールの例は、ポリプロピレングリコール(PPG)、例えば、400MWのポリプロピレングリコールである。
【0045】
1種以上のポリオールが組成物中に存在する場合、ポリオールの好ましい量は、下記のとおりである。ポリオールの好ましい量は、本発明の組成物の固形分の0.1〜10%である。好ましくは、ポリオールの量は、5%以下、より好ましくは3%以下、さらにより好ましくは2%以下、および最も好ましくは1.5%以下である。好ましくは、ポリオールの量は、少なくとも0.3%、より好ましくは少なくとも0.4%、および最も好ましくは、少なくとも0.6%である。
【0046】
本発明の組成物は、場合によって、硬化性組成物と混合されてもよい。硬化性組成物は、1種以上の硬化剤を含む。硬化剤は、組成物における1つ以上の部分と反応して、ポリマーを生成し、既存のポリマーの分子量を増大させ、および/または、架橋ネットワークを生成可能な、その分子が2つ以上の反応性基を有する化合物である。その部分は、本発明のポリマーであってもよいし、もしくは別の部分、例えば、ポリオール、またはそれらの組み合わせでもよい。硬化剤が存在する場合には、その硬化剤の好ましい特徴は下記のとおりである。好ましい硬化剤は、1種以上の水分散性ポリイソシアネートである。使用されるポリイソシアネートは、あらゆる適切なポリイソシアネートでよいが、好ましくは、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートまたはそれらの混合物である。好ましくは、ポリイソシアネートは、ジイソシアネートである。適切なポリイソシアネートの例には、トルエンジイソシアネート(TDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)、それらの異性体またはそれらの混合物に基づくものがあげられる。ポリイソシアネートとポリオールとのプレポリマーも使用され得る。脂肪族ポリイソシアネートが特に好ましい。
【0047】
1種以上のポリイソシアネートが使用される場合、ポリイソシアネートの量は、好ましくは、下記のように決定される。イソシアネート反応性基に対するイソシアネート基の相対的比率は、1:1から8:1のNCO/NCO−反応性基のモル比内で、所望のように変動してもよい。NCO−反応性基としては、例えば、ヒドロキシル、アミノおよびカルボキシル基があげられる。好ましくは、NCO/NCO−反応性基のモル比は、少なくとも3:1である。好ましくは、NCO/NCO−反応性基のモル比は、5以下:1である。
【0048】
得られた混合物全体のpHは、好ましくは5から9であり、より好ましくは6から8である。本発明のポリマーに結合されるスルホ基の75モル%が中和される、pH値の範囲が最も好ましい。
【0049】
ポリマー上でのイオン化されたスルホ基の存在は、本発明の水性組成物の安定性を改善する(すなわち、ストレス条件、例えば、高せん断、0℃以下での温度等のために、水性組成物が凝固する傾向を低下させる)と考えられる。イオン化された基をほとんどまたは全く有さないポリマーは、本発明のよりも安定性の低い水性組成物を生じさせるであろうと考えられる。本発明の組成物は少なくとも2つの利点:水性状態における改善された機械的安定性を有すること、および、その基体に適用されそして乾燥された後に、基体のCOFを維持していることを提供すると考えられる。
【0050】
本発明の組成物がポリオールを含んでいない実施形態が想定される。本発明の組成物がポリイソシアネートを含んでいない実施形態も想定される。本発明の組成物がポリオールもポリイソシアネートも含んでいない実施形態も想定される。1種以上のポリイソシアネートを含む実施形態が好ましい。
【0051】
1種以上のポリイソシアネートが使用される実施形態を実施する場合、本発明の組成物が接着剤組成物として使用される前の比較的短い時間で、ポリイソシアネートがこの組成物に添加されるであろうことが企図される。好ましくは、ポリイソシアネートとこのポリイソシアネートが反応可能なポリマー部分との両方を含む単一の組成物を形成し、およびその組成物と基体の表面とを接触させる工程の間の時間は、48時間以下;より好ましくは24時間以下;より好ましくは12時間以下;より好ましくは8時間以下である。
【0052】
本発明の組成物の他の任意成分には、これに限定されないが、共溶媒、造膜助剤、顔料もしくは他の着色剤、充填剤、強化剤(例えば、繊維)、分散剤、湿潤剤、ワックス、触媒、発泡剤、消泡剤、UV吸収剤、難燃剤、接着促進剤、酸化防止剤、殺生物剤、合体剤または安定化剤から選択される薬剤が挙げられる。これら任意成分は(望まれる場合には)、成分間の不適合を引き起こさない添加順序で添加されうる。水性キャリアに溶解しない成分(例えば、顔料および充填剤)は、水性組成物または水性キャリアもしくは共溶媒に、混合器(場合によって、高せん断混合器)を使用して分散され得る。組成物のpHは、撹拌しながら、酸または塩基を添加することにより調節され得る。塩基の例としては、これに限定されないが、アンモニア、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび酢酸ナトリウムがあげられる。酸の例としては、これに限定されないが、酢酸、ギ酸、塩酸、硝酸およびトルエンスルホン酸があげられる。
【0053】
本発明の好ましい組成物は脂肪化合物を含まないか、または、さもなければ0.5%以下の全ての脂肪化合物の全量を含む。全ての脂肪化合物のより好ましい全量は、0%から0.1%であり、より好ましくは0%である。
【0054】
本発明の組成物は、所望の基体に、従来の適用技術、例えば、ロトグラビア印刷、フレキソグラフィック印刷、コンベンショナルまたはエアレススプレー、ロールコーティング、はけ塗り、巻き線型ロッドコーティング、ナイフコーティング、または、コーティングプロセス、例えば、カーテン−、フラッド−、ベル−、ディスク−およびディップ−コーティングプロセス等を使用して適用され得る。接着剤組成物でのコーティングは、表面全体またはその一部分のみ、例えば、端部に沿って、もしくは、断続的な位置に行われ得る。基体に適用された後で、組成物は、例えば、熱もしくはエアーフロー、または、実質的に全ての残留する水を除去するための他の何らかの適切な方法を適用することにより、乾燥させられる。
【0055】
本発明の接着剤組成物は、トップコート、または他の中間コートとしての他の適切な用途を見出すことができ、このことはそれら組成物を塗料、インク、プラスチック等において潜在的に有用にすることができる。本発明の接着剤組成物は、幅広い各種の1つまたは複数の適切な基体上に使用され得る。
【0056】
適切な基体としては、例えば、ポリマー、紙、木材および再構成木材製品、ポリマーコート基体、ワックスコート板紙、ボール紙、パーチクルボード、布地、革ならびに金属(例えば、アルミニウムホイル)および金属化プラスチックがあげられる。
【0057】
好ましくは、1種以上の基体はポリマーである。好ましいポリマーは、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリレート、ポリエーテル、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリフェニレン、それらのコポリマーおよびそれらの混合物である。ポリオレフィンの種類としては、オレフィンモノマー、例えば、エチレン、プロピレンおよびブチレンのホモポリマーがあげられ、並びにオレフィンモノマーと他のモノマー、例えば、アクリルモノマー(例えば、メチルアクリレート)、ビニルエステル(例えば、酢酸ビニル)およびそれらの混合物とのコポリマーもあげられる。このようなポリマーは、例えば、耐衝撃性改良剤、加工助剤、潤滑剤、スリップ剤、安定化剤、他の添加剤およびそれらの混合物を含む種々の添加剤と混合されたポリマーを含むと考えられる。ポリオレフィン、ポリエステルおよびポリアミドがより好ましく、ポリオレフィンがより好ましく、オレフィンモノマーのホモポリマーがより好ましい。オレフィンモノマーのホモポリマーの中でも、ポリエチレンが好ましく、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)およびメタロセン触媒線状低密度ポリエチレン(mLLDPE)をはじめとする低密度ポリエチレンがより好ましい。好ましくは、1つ以上の基体は、スリップ剤を含むポリマーである。
【0058】
基体は、任意の形状または形態を有してもよい。好ましい基体は、フィルムである。フィルムは、250マイクロメートル(10ミル)以下のある寸法を有するものである。最も小さい寸法に対して垂直なフィルムの表面は、本明細書では、フィルムの「フェイス(face)」と呼ばれる。本発明の組成物の好ましい使用は、積層(すなわち、積層物の形成)である。一枚のフィルムのフェイスが、別のフィルムのフェイスに結合される場合に、積層物が形成される。この2枚のフィルムは、互いに同じ組成を有していてもよいし、またはそれらは異なる組成のものであってもよい。
【0059】
湿式積層プロセスが可能であるが、好ましくは接着剤組成物は各基体がフィルムである、複数の基体の乾燥結合積層物に特に有用である。好ましい実施形態では、接着剤組成物の層は、第1の基体フィルムのフェイスに適用され、(例えば、加熱空気または別の方法で)水が除去され、そして得られた乾燥した接着剤組成物の層は、第2の基体フィルムのフェイスで覆われて積層された物品を形成し、その物品においては、これら2つの基体フィルムが、接着剤組成物の乾燥した層によって一緒に結合されている。好ましい実施形態では、基体の層は、ロールの形態の基体材料で提供される。好ましいシートは、厚さ12マイクロメートルから250マイクロメートル(0.5から10ミル);より好ましいシートは、12マイクロメートルから250マイクロメートル(0.5から5ミル)である。より大きい厚みも可能であり、同様に、より小さい厚み(例えば、1マイクロメートル以上)も可能である。
【0060】
少なくとも1つの基体は1種以上のスリップ剤を含む。スリップ剤は、それがその基体に添加される場合に、基体の摩擦係数を低下させる組成物である。ポリマーフィルムの摩擦係数を低下させるスリップ剤が好ましい。好ましいスリップ剤は、オルガノ修飾シロキサンをはじめとするシロキサン、および脂肪化合物である。脂肪化合物が好ましい。上記で規定した構造Iを有する脂肪アミドがより好ましい。好ましい脂肪アミドのR基において、非芳香族炭素原子の数は12以上;より好ましくは16以上である。好ましい脂肪アミドのR基において、非芳香族炭素原子の数は28以下;より好ましくは24以下である。好ましいR基は線状である。好ましいR基は、ステアリル、オレイルおよびエルシルである。Rは好ましくは水素である。Rは好ましくは水素または、16から18の炭素原子を有する脂肪基、または構造IIである:
【化2】
式中、Rは、有機基である。Rは、好ましくは、Rについて好ましいものと同じ組成から選択される。Rが構造IIを有する場合、RおよびRが同一であることが好ましい。脂肪アミドの中でも、ステアラミド、エルカミド、オレアミド、エチレンビス−ステアラミド、エチレンビス−オレアミドおよびそれらの混合物が好ましく、オレアミド、エルカミドおよびそれらの混合物がより好ましい。
【0061】
好ましくは、本発明の水性接着剤組成物は、脂肪アミドをほとんどまたは全く含まない。すなわち、本発明の水性接着剤組成物は脂肪アミドを含まないか、または、脂肪アミドが存在する場合には、脂肪アミドの量が水性接着剤組成物の重量を基準にして0.1重量%以下であるかの、いずれかである。本発明の水性接着剤組成物中の脂肪アミドの量は、より好ましくは0.03重量%以下;より好ましくは0.01重量%以下;より好ましくは0重量%である。好ましくは、本発明の水性接着剤組成物は、スリップ剤をほとんどまたは全く含まない。すなわち、本発明の水性接着剤組成物はスリップ剤を含まないか、または、スリップ剤が存在する場合には、スリップ剤の量は、水性接着剤組成物の重量を基準にして0.1重量%以下の、いずれかである。本発明の水性接着剤組成物中のスリップ剤の量は、より好ましくは0.03重量%以下;より好ましくは0.01重量%以下:より好ましくは0重量%である。
【実施例】
【0062】
下記は、本発明の実施例である。
【0063】
実施例1:ポリマーおよび積層物の調製
本実施例に記載の各ポリマーを、水性ラテックスを生産するための従来のエマルジョン重合により製造した。モノマーの全重量は300グラムであった。100グラムのラテックスのサンプルを、2グラムの水分散性ヘキサメチレンジイソシアネートと混合して接着剤組成物を形成し、そしてこの混合物を、ポリエチレンテレフタレートフィルムのフェイスに適用し、乾燥させた。乾燥接着剤組成物の量は、1平方メートルあたり2.44グラム(1.5 lb/リーム)であった。乾燥接着剤組成の層をスリップ剤(エルカミドまたはオレアミドのいずれかであると考えられた)を含んだ低密度ポリエチレンの市販フィルムのフェイスに接触させて、積層物を形成した。
【0064】
この積層物を、周囲条件(おおよそ25℃)で1週間保存し、摩擦係数(COF)を測定した。ついで、この積層物を、製造中に通常生じる熱を模倣するために、50℃で1日間、オーブンに入れた。ついで、この積層物を周囲条件で1日間保存した。COFを、室温条件で1日後に再度測定した。
【0065】
各モノマーの量は以下重量部(pbw)により特徴付けられる。
【0066】
比較ポリマーCP1は、60pbwのブチルアクリレート(BA)、38pbwのスチレン(Sty)および2pbwのアクリル酸(AA)を有していた。
【0067】
実施例ポリマーEP1は、60pbwのBA、38pbwのStyおよび2pbwのスチレンスルホン酸ナトリウム(NaSS)を有していた。
【0068】
実施例ポリマーEP2は、60.5pbwのBA、37.75pbwのSty、0.25pbwのNaSSおよび1.5pbwのアクリルアミド(AM)を有していた。
【0069】
実施例2:COFの結果は下記のとおりであった。1日のオーブン処理および次いで1日の周囲保存後では、比較ポリマーを使用して製造された積層物のCOFは、望ましくない高いレベルに上昇したが、一方、実施例ポリマーを使用して製造された積層物のCOFは、許容できるレベルのままであった。
【0070】
【表1】
【0071】
実施例3:カルボキシルモノマーの量の効果
カルボキシル官能性モノマー量の効果を決定するために、カルボキシル官能性モノマーを含む比較ポリマー(「P3−1C」)を、実施例ポリマー(「P3−2」)と共に、種々の割合で混合した。ポリマーおよび積層物を、上記実施例1と同様に製造し、試験した。ポリマー組成(pbw単位)は、下記の通りであった。
P3−1C=60BA/38Sty/2AA
P3−2=60BA/38Sty/2NaSS
【0072】
COFを、実施例2と同様に試験した。結果は、下記の通りであった。AAの量を、ポリマーの混合物の重量を基準にして、重量パーセントで示す。
【0073】
【表2】
【0074】
2つのポリマーの混合物におけるAAの量の効果は、この2つのポリマーの混合物と同様のモノマー割合を有した、単一のポリマーにおけるAAの量の効果と同様であろうと考えられる。0.4重量%以下のAAを有するサンプルは、おおよそ0.2以下の許容できるCOFを有したが、一方で、他のサンプルは許容できない高いCOFを有した。