【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第1の態様において、固体材料の研磨ファセットの外面上に1又はそれ以上の突出部を形成する方法であって、
(i)固体材料の研磨ファセットの外面に向けて、上面材料を突出させるように集束不活性ガスイオンビームの局所的照射を適用するステップを含み、
集束不活性ガスイオンビームから照射された照射集束不活性ガスイオンが、固体材料の研磨ファセットの外面を貫通し、
照射集束不活性ガスイオンが、固体材料の固体結晶格子の膨張を引き起こして固体材料の研磨ファセットの外面上に突出部を形成するような圧力で、外面の下方の固体結晶格子内に膨張歪みを生じさせる、方法を提供する。
【0009】
集束不活性ガスイオンビームは、5keV〜50keVのビームエネルギーと、1fA〜200pAのプローブ電流とを有することが好ましい。
【0010】
固体結晶格子は、単結晶、多結晶又は非晶質の形態をとることができ、固体材料は、周囲温度、及び大気圧から高真空までの圧力下において固体形態の材料である。
【0011】
固体材料は、宝石であることが好ましい。固体材料は、ダイヤモンド、ルビー、サファイア、エメラルド、パール、翡翠などを含む群から選択された材料であることがさらに好ましい。
【0012】
集束不活性ガスイオンビームは、周期律表のVIII族に含まれるいずれかの不活性ガスから選択することができるイオン源である。
【0013】
固体材料の研磨ファセットは、50nm未満の平均表面粗さを有することが好ましい。
【0014】
突出部は、ナノメートル又はマイクロメートルオーダーの平均幅と、ナノメートル又はマイクロメートルオーダーの平均高さとを有することが好ましい。
【0015】
前記固体材料の外面から、外面の下方の照射不活性ガスの蓄積領域までの距離は、1nm〜100μmであることが好ましい。
【0016】
突出部は、識別可能マーク又はパターンを形成するように提供され、識別可能マークは、単一の又は一連の点、柱状、ドーム状、半球、線、不規則形状、対称又は非対称形状などの形をとる。
【0017】
識別可能マークは、周期的線配列、穴/点配列、円形配列、螺旋配列、フラクタル配列、又は多周期配列などとして提供することができる。
【0018】
或いは、識別可能マークは、任意のパターンを形成する連続突出形状として提供することもできる。
【0019】
光学的限界におけるレイリー基準に起因して裸眼では見えない情報マークを提供するように、ナノメートルサイズの複数の突出部を形成することができる。突出部は、特定の照明条件及びカメラ付き顕微鏡によって可視光及び不可視光範囲内で見える周期的配列で配置することができる。1又はそれ以上の突出部は、識別可能なセキュリティマークを形成する。
【0020】
この方法は、質量損失が実質的に存在しないように固体材料の完全性を維持することが好ましい。
【0021】
本発明は、第2の態様において、1又はそれ以上の突出部を有する固体材料であって、この1又はそれ以上の突出部は、固体材料の研磨ファセットの外面上に形成されるとともに、
(i)固体材料の研磨ファセットの外面に向けて、上面材料を突出させるように集束不活性ガスイオンビームの局所的照射を適用するステップ、
を含む方法によって形成され、前記集束不活性ガスイオンビームから照射された照射集束不活性ガスイオンが、前記固体材料の前記研磨ファセットの外面を貫通し、
照射集束不活性ガスイオンが、固体材料の固体結晶格子の膨張を引き起こして前記固体材料の研磨ファセットの外面上に突出部を形成するような圧力で、前記外面の下方の固体結晶格子内に膨張歪みを生じさせる、固体材料を提供する。
【0022】
集束不活性ガスイオンビームは、5keV〜50keVのビームエネルギーと、1fA〜200pAのプローブ電流とを有することが好ましい。
【0023】
固体結晶格子は、単結晶、多結晶又は非晶質の形態をとることができる。固体材料は、周囲温度、及び大気圧から高真空までの圧力下において固体形態の材料である。
【0024】
固体材料は、宝石であることが好ましく、ダイヤモンド、ルビー、サファイア、エメラルド、パール、翡翠などを含む群から選択された材料であることがさらに好ましい。
【0025】
前記1又はそれ以上の突出部を形成するために利用される集束不活性ガスイオンビームは、周期律表のVIII族に含まれるいずれかの不活性ガスから選択することができるイオン源である。
【0026】
固体材料の研磨ファセットは、50nm未満の平均表面粗さを有することが好ましい。
【0027】
突出部は、ナノメートル又はマイクロメートルオーダーの平均幅と、ナノメートル又はマイクロメートルオーダーの平均高さとを有することが好ましい。
【0028】
前記固体材料の外面から、外面の下方の照射不活性ガスの蓄積領域までの距離は、1nm〜100μmであることが好ましい。
【0029】
1又はそれ以上の突出部は、識別可能マーク又はパターンを形成するように提供されることが好ましい。識別可能マークは、単一の又は一連の点、柱状、ドーム状、半球、線、不規則形状、対称又は非対称形状などの形をとることができる。
【0030】
或いは、識別可能マークは、周期的線配列、穴/点配列、円形配列、螺旋配列、フラクタル配列、又は多周期配列などとして提供することができ、又は任意のパターンを形成する連続突出形状として提供することもできる。
【0031】
固体材料は、光学的限界におけるレイリー基準に起因して裸眼では見えない情報マークを提供するように形成されたナノメートルサイズの複数の突出部を有することができる。突出部は、特定の照明条件及びカメラ付き顕微鏡によって可視光及び不可視光範囲内で見える周期的配列で配置することができる。
【0032】
1又はそれ以上の突出部は、識別可能なセキュリティマークを形成することができる。
【0033】
1又はそれ以上の突出部の形成中に固体材料の質量損失が実質的に存在しないように、固体材料の完全性が維持される。
【0034】
本発明は、第3の態様において、固体材料の研磨ファセットの外面上に1又はそれ以上の突出部を形成するためのシステムであって、
固体材料の研磨ファセットの外面に向けて集束不活性ガスイオンビームの局所的照射を適用する集束不活性ガスイオンビーム装置と、
集束不活性ガスイオンビームの局所的照射の放出を固体材料の研磨ファセットの外面に向けて制御するコンピュータ制御装置と、
を備え、コンピュータ制御装置が、集束不活性ガスイオンビームから照射された照射集束不活性ガスイオンを、前記固体材料の前記研磨ファセットの外面を貫通し、固体材料の固体結晶格子の膨張を引き起こして前記固体材料の前記研磨ファセットの外面上に突出部を形成するような圧力で、前記外面の下方の固体結晶格子内に膨張歪みを生じさせるように制御する、システムを提供する。
【0035】
集束不活性ガスイオンビーム装置は、5keV〜50keVのビームエネルギーと、1fA〜200pAのプローブ電流とを有することが好ましい。
【0036】
前記1又はそれ以上の突出部を形成するために利用される集束不活性ガスイオンビームは、周期律表のVIII族に含まれるいずれかの不活性ガスから選択することができるイオン源である。
【0037】
システムは、ナノメートル又はマイクロメートルオーダーの平均幅と、ナノメートル又はマイクロメートルオーダーの平均高さとを有する突出部を提供する。
【0038】
システムは、前記固体材料の外面から外面の下方の照射不活性ガスの蓄積領域までの距離が1nm〜100μmである突出部を提供するように適合されることが好ましい。
【0039】
システムは、固体材料の研磨ファセットの外面上に識別可能マーク又はパターンを提供するように適合されることが好ましい。システムによって提供される識別可能マークは、単一の又は一連の点、柱状、ドーム状、半球、線、不規則形状、対称又は非対称形状などの形をとることができる。
【0040】
或いは、識別可能マークは、周期的線配列、穴/点配列、円形配列、螺旋配列、フラクタル配列、又は多周期配列などとして提供することもできる。識別可能マークは、任意のパターンを形成する連続突出形状として提供することもできる。
【0041】
システムは、光学的限界におけるレイリー基準に起因して裸眼では見えない情報マークを提供するようにナノメートルサイズを有する複数の突出部を提供するように適合されることが好ましい。
【0042】
システムは、特定の照明条件及びカメラ付き顕微鏡によって可視光及び不可視光範囲内で見える周期的配列で配置された複数の突出部を提供するように適合されることが好ましい。
【0043】
システムは、識別可能なセキュリティマークを形成するように1又はそれ以上の突出部を提供するように適合することができる。
【0044】
システムは、1又はそれ以上の突出部の形成中に前記固体材料の完全性を維持し、固体材料の質量損失が実質的に存在しないように適合される。
【0045】
システムは、宝石の外面上に1又はそれ以上の突出部を提供するように適合されることが好ましい。システムは、ダイヤモンド、ルビー、サファイア、エメラルド、パール、翡翠などの外面上に1又はそれ以上の突出部を提供するように適合されることがさらに好ましい。
【0046】
システムは、50nm未満の平均表面粗さを有する固体材料の研磨ファセット上に1又はそれ以上の突出部を提供するように適合されることが好ましい。
【0047】
システムは、固体材料の外面上に、ナノメートル又はマイクロメートルオーダーの平均幅と、ナノメートル又はマイクロメートルオーダーの平均高さとを有する1又はそれ以上の突出部を提供するように適合されることが好ましい。
【0048】
システムは、固体材料の外面上に、外面の下方の照射不活性ガスの蓄積領域までの距離が1nm〜100μmになるように1又はそれ以上の突出部を提供するように適合されることが好ましい。
【0049】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態をほんの一例としてさらに詳細に説明する。