(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記研磨粒子は、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化タングステン、酸化ジルコニウム、またはそれらの組み合わせよりなる群から選択された材料を含む、請求項1に記載の方法。
前記研磨粒子の材料は、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化タングステン、酸化ジルコニウム、またはそれらのあらゆる組み合わせよりなる群から選択される、請求項8に記載の一群の被覆研磨粒子。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本開示は、添付の図面を参照することにより、より理解され、その多数の特徴および利点が当業者に対して明らかにされるだろう。
【0008】
【
図1】
図1は、ニッケル被覆ダイヤモンド粒子が凝集のない段階に到達するまでの凝集の異なる段階における一連の4つのSEM画像を示している。一連の画像のうち最後の画像のみが本願発明に該当する。
【
図2A】
図2Aは、実験E1の粒子サンプルのSEM画像である。実験1のサンプルは、本発明を代表するものである。
【
図2B】
図2Bは、実験E1のサンプルの粒度分析のグラフである。実験1のサンプルは、本発明を代表するものである。
【
図3A】
図3Aは、実験E2の粒子サンプルのSEM画像である。実験E2のサンプルは、本発明を代表するものである。
【
図3B】
図3Bは、実験E4のサンプルの粒度分析のグラフである。実験E2のサンプルは、本発明を代表するものである。
【
図4A】
図4Aは、実験E3の粒子サンプルのSEM画像である。実験E3のサンプルは、本発明を代表するものである。
【
図4B】
図4Bは、実験E5のサンプルの粒度分析のグラフである。実験E3のサンプルは、本発明を代表するものである。
【
図5A】
図5Aは、実験E4の粒子サンプルのSEM画像である。実験E4のサンプルは、本発明を代表するものである。
【
図5B】
図5Bは、実験E6のサンプルの粒度分析のグラフである。実験E4のサンプルは、本発明を代表するものである。
【
図6A】
図6Aは、実験E5の粒子サンプルのSEM画像である。実験E5のサンプルは、本発明を代表するものである。
【
図6B】
図6Bは、実験E7のサンプルの粒度分析のグラフである。実験E5のサンプルは、本発明を代表するものである。
【
図7A】
図7Aは、実験E6の粒子サンプルのSEM画像である。実験E6のサンプルは、本発明を代表するものである。
【
図7B】
図7Bは、実験E8のサンプルの粒度分析のグラフである。実験E6のサンプルは、本発明を代表するものである。
【
図8A】
図8Aは、比較実験C1の粒子サンプルのSEM画像である。
【
図8B】
図8Bは、比較実験C1のサンプルの粒度分析のグラフである。
【
図9A】
図9Aは、比較実験C2の粒子サンプルのSEM画像である。
【
図9B】
図9Bは、比較実験C2のサンプルの粒度分析のグラフである。
【
図14】
図14は、本明細書の実験において標準サンプルとなる非被覆の小さなダイヤモンド粒子の粒度分析のグラフである。
【
図15A】
図15Aは、本発明の実験E6による、均一な20wt%ニッケルコーティングで被覆したニッケル被覆ダイヤモンド粒子のSEM画像で、NAFは0.985である。
【
図15B】
図15Bは、比較実験C5による一群の凝集したダイヤモンド粒子で被覆されたニッケル被覆ダイヤモンド粒子のSEM画像で、NAFは0.471である。
【
図16A】
図16Aは、破砕前およびふるい分け前の比較実験C7の粒子サンプルのSEM画像である。
【
図16B】
図16Bは、破砕後およびふるい分け後の比較実験C7の粒子サンプルのSEM画像である。
【
図17A】
図17Aは、平均粒度が10μmより小さく20wt%ニッケルコーティングがあり、かつ、NAFは0.9より大きいニッケル被覆ダイヤモンド粒子を示す実施形態のSEM画像であり、10ミクロンサイズの篩でのふるい分け前(17A)である。
【
図17B】17Bは、平均粒度が10μmより小さく20wt%ニッケルコーティングがあり、かつ、NAFは0.9より大きいニッケル被覆ダイヤモンド粒子を示す実施形態のSEM画像であり、10ミクロンサイズの篩でのふるい分け後(17B)である。
【
図18】
図18は、実施形態に基づく研磨品の部位の断面図を含む。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書で用いる場合、用語“comprises”、“comprising”、“includes”、“including”、“has”、“having”またはそれらのいかなる他のバリエーションも、他を除外しない含有を包含することを意図する。例えば、特徴の列挙を含む工程、方法、品、または装置は、それらの特徴だけに必ずしも限定されるものではないだけでなく、そのような工程、方法、品もしくは装置に対してはっきりと列挙されていない、または固有でない他の特徴を含んでよい。
【0010】
本明細書で用いる場合で、そうでないことを明白に示す場合でなければ、“or(または)”は他を除外しないorに関するものであって、他を除外するorに関するものではない。例えば、状態Aまたは(or)Bは、以下のうちのいずれかひとつにより満たされる。つまり、Aは真であり(または存在し)そしてBは偽である(または存在せず)、Aは偽であり(または存在せず)そしてBは真である(または存在する)、およびAもBもいずれも真である(または存在する)。
【0011】
同様に、“a”または“an”の使用は、本明細書で述べられる要素および構成要素を記載するために使用される。これは単に、便宜上および発明の範囲について一般的な意味を与えるためになされる。他の意味があることが明らかである場合でなければ、この記載は、1または少なくとも1を含むように読まれるべきであり、単数もまた複数を含む。
【0012】
添付の図面を参照しながら、ほんの一例として、本開示の様々な実施形態がここに記載される。
【0013】
本明細書で用いる場合、「平均粒度」(average particle size)は、粒子のサイズを意味する量に関連する。
【0014】
本明細書で用いる場合、「D50」は、粒度分布の中央径(median diameter)に関連し、粒子の50%がD50値のサイズより上であり、かつ、50%が下となることを意味する。
【0015】
本明細書は、一群の被覆研磨粒子および一群の被覆研磨粒子の形成方法に向けられる。上記方法は、浴中に分散する平均粒度が≦10μmである研磨粒子を提供することと;上記浴中で上記研磨粒子をコーティング材料で被覆することと;上記浴に超音波エネルギーを与えることおよび該超音波エネルギーのパワーを調節して、少なくとも0.90の非凝集ファクター(NAF)で、比(D50
sa/D50
b)として定義される該非凝集ファクターを有する一群の被覆研磨粒子を形成することとを含み、D50
bは上記一群の被覆研磨粒子の中央粒度を表し、D50
saは被覆前の上記研磨粒子の中央粒度を表す。
【0016】
研磨粒子の材料として下記の、ダイヤモンドまたは立方晶窒化ホウ素等の超砥粒、および炭化ケイ素、炭化ホウ素、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化タングステン、酸化ジルコニウム、またはそれらのあらゆる組み合わせ等の研磨材のうちのいずれでもよいが、この列挙に限定されない。少なくとも一実施形態においては、上記研磨粒子は基本的にダイヤモンドからなる。
【0017】
特定の例においては、上記研磨粒子は、少なくとも約7のモース硬度を持ちうるものであり、例えば少なくとも約8、少なくとも約8.5、少なくとも約9、または少なくとも約9.5等である。少なくとも一実施形態においては、上記モース硬度は約7から約10の範囲内、または約9から10の範囲内でありうる。
【0018】
被覆研磨粒子のコーティング材料は、例えば、遷移金属を含む金属または金属合金としてよい。いくつかの好適な金属としては、ニッケル、亜鉛、チタン、銅、クロム、青銅、またはそれらの組み合わせを含むことが可能である。特定の態様では、コーティング材料はニッケル基合金とすることが可能であって、それによりコーティングは大半の成分となるようなニッケルを含有しうるものとなり、例えば該コーティングの総重量に対してニッケルが少なくとも60wt%となる等である。他の実施形態では、上記コーティングは基本的にニッケルからなる。
【0019】
ある例では、上記コーティングと同様に、浴は活性化物質を含んでよい。好適な活性化物質は金属を含むことが可能であり、例えば銀(Ag)、パラジウム(Pd)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)およびそれらの組み合わせ等がある。一般に、そうした活性化物質は、浴中の固体の総重量に対して約1wt%未満などの少量があればよい。他の例では、活性化物質の量は、例えば約0.8wt%未満、約0.5wt%未満、約0.2wt%未満、または0.1wt%未満など、少なくてよい。
【0020】
さらに、浴およびいくつかの例におけるコーティングは、ある不純物を少量で含有してよく、例えば鉄(Fe)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)、ホウ素(B)、クロム(Cr)、およびそれらの組み合わせ等の金属元素を含む。1つ以上の不純物は、少量、特に約50ppm未満、約20ppm未満、または約10ppm未満で存在してよい。
【0021】
めっき浴の分散における研磨粒子の量は、めっき浴の総重量に対して少なくとも約1wt%とすることができ、例えば少なくとも約1.5wt%、または少なくとも約2wt%等とする。他の態様では、めっき浴中の研磨粒子の量は、約10wt%を超えないものとしてよく、例えば約8wt%を超えない、または約5wt%を超えない等とする。めっき浴中の研磨粒子の量は、上に記載したどの最小限の値から最大限の値の範囲でも、例えば約1wt%から約10wt%、約1.5wt%から約5wt%、または約1.7wt%および3.0wt%等としてよいことがわかる。
【0022】
ある実施形態では、一群の被覆研磨粒子の平均粒度は、少なくとも約1μmであってよく、例えば少なくとも約2μm、少なくとも約3μmまたは少なくとも約4μm等がある。さらに、被覆研磨粒子の平均粒度は、約10μmを超えないものとしてよく、例えば約9μmを超えない、約8μmを超えない、約7μmを超えないまたは約6μmを超えない等がある。平均粒度は、上に記載したどの最小限の値から最大限の値の範囲でも、例えば約1μmから約10μm、約2μmから約8μm、または約4μmから約6μm等が可能であることがわかる。
【0023】
本明細書の一群の被覆研磨粒子は、粒子の少なくとも95%が、研磨粒子の表面積全体を覆って広がるコンフォーマルコーティング(conformal coating)よりなる研磨粒子を含むことが可能である。特定の例では、研磨粒子の少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%または少なくとも99.9%が、粒子の表面積全体を覆って広がるコンフォーマルコーティングを含むことが可能である。
【0024】
本明細書の実施形態によれば、非凝集ファクター(NAF)は、被覆工程の実施前後における研磨粒子の中央粒度(median particle size)間の関係でありうる。特に、非凝集ファクターは、以下の式によって記述してよい。
NAF=D50
sa/D50
b (式1)
【0025】
ここで、D50
saは、被覆前の研磨粒子の中央粒度を表し、D50
bは被覆工程完了後の中央粒度を表す。NAFが少なくとも約0.9より大きいことが、凝集がきわめて少ないまたはない一群の研磨粒子に相当することがわかった。
【0026】
一実施形態では、被覆工程完了後の、一群の被覆研磨粒子は少なくとも約0.9のNAFを有することが可能である。他の実施形態では、NAFは、少なくとも約0.92であることが可能であって、例えば少なくとも約0.94、少なくとも約0.96、少なくとも約0.97、少なくとも約0.98、または少なくとも約0.99等がある。
【0027】
一実施形態によれば、被覆工程は、本明細書における実施形態の特徴を有する一群の被覆研磨粒子の形成を促すように、被覆工程の間、浴に伝えられる超音波エネルギーのために特定のパワーを用いてよい。超音波のパワーは、NAFが少なくとも0.9に到達するように調節することができる。例えば、超音波エネルギーのパワーは、少なくとも約50ワットとしてよく、例えば少なくとも約70ワット、少なくとも約100ワット、少なくとも約150ワット、少なくとも約200ワット、少なくとも約400ワット、少なくとも約600ワット、または少なくとも約800ワット等とする。さらに、パワーの調節は、約1000ワットを超えないパワーを用いることを含んでよく、例えば約900ワットを超えない、約800ワットを超えない、約600ワットを超えない、約450ワットを超えない、または約200ワットを超えない等とする。上記パワーは、先の最小限の値および最大限の値またはより高いもしくはより低いいずれの範囲内でも可能であることがわかる。
【0028】
少なくとも約0.9のNAFを有する場合の研磨粒子のコーティングの平均厚さは、少なくとも約1nmとすることができ、例えば少なくとも約5nm、少なくとも約10nm、少なくとも約15nm、少なくとも約50nmまたは少なくとも約100nm等とする。他の実施形態では、コーティング層の平均厚さは、約500nmを超えないものとしてよく、例えば約400nmを超えない、約300mを超えない、または約150nmを超えない等とする。研磨粒子のコーティングの平均厚さは、上記したいずれの最小限の値から最大限の値の範囲内でも、例えば約1nmから約500nm、約30nmから約400nm、約50nmから約200nm、または約60nmから約130nm等としてよいことがわかる。
【0029】
他の実施形態では、研磨粒子のコーティングの総重量は、粒子の総重量の少なくとも約1wt%としてよく、少なくとも約5wt%、少なくとも約10wt%または少なくとも約15wt%等とする。他の態様では、コーティングは、研磨粒子の総重量の30wt%を超えないように構成してよく、例えば約25wt%を超えない、20wt%を超えない、または18wt%を超えない等とする。研磨粒子のコーティングの総重量は、上記したいずれの最小限の値から最大限の値の範囲内でも、例えば約1wt%から約30wt%、約10wt%から約25wt%または約15wt%から約2wt%等としてよいことがわかる。
【0030】
さらなる実施形態では、一群の被覆研磨粒子のD50
b値は、少なくとも約1μmとしてよく、例えば少なくとも約2μm、少なくとも約3μmまたは少なくとも約4μm等とする。さらに、被覆研磨粒子のD50
b値は、約9μmを超えないものとしてよく、例えば約8μmを超えない、約7μmを超えない、約6μmを超えないまたは約5μmを超えない等とする。平均粒度は、上記したいずれの最小限の値から最大限の値の範囲内でも、例えば約1μmから約9μm、約2μmから約8μm、または約3μmから約5μm等とすることが可能であることがわかる。
【0031】
一実施形態では、超音波エネルギーは、被覆工程全体にわたって、継続して浴に与えてよい。他の実施形態では、超音波エネルギーは、被覆処理の間、周期的に与えてよい。例えば、超音波エネルギーは、不連続の時間間隔で、および不連続のパワーでパルス状に与えてよい。
【0032】
実施形態では、浴は、さらに、少なくとも1つの添加剤を含んでよく、例えば還元剤、触媒、安定剤、pH調整剤、電解質、およびそれらの組み合わせ等がある。
【0033】
他の実施形態では、浴のpHを酸性としてよく、例えば約6.5を超えない、約6.0を超えない、約5.5を超えない、約5.0を超えない、または約4.5を超えない等とする。さらに、浴のpHを少なくとも2.0としてよく、例えば少なくとも2.5、少なくとも3.0、または少なくとも3.5等とする。めっき浴のpHは、上記したいずれの最小限の値から最大限の値の範囲内でも、例えば約2.0から6.5、約2.5から6.0または約3.0から5.0等としてよいことがわかる。
【0034】
さらに他の実施形態では、浴の温度は、研磨粒子上に被覆する金属の種類に適応するよう調節してよい。一態様では、浴温は、少なくとも約140°Fとしてよく、例えば少なくとも約145°Fまたは少なくとも約150°F等とする。他の態様では、めっき浴の温度は、約200°Fを超えないものとしてよく、例えば190°Fを超えない、または180°Fを超えない等とする。浴の温度は、上記したいずれの最小限の値から最大限の値の範囲内でも、例えば約140°Fから約200°F、約150°Fから約190°F、または約160°Fから約180°F等としてよいことがわかる。
【0035】
他の態様によれば、実施形態による一群の被覆研磨粒子は、固定研磨品に付着させることができる。例えば、当該方法には、基材に対する一群の被覆研磨粒子の付着を含むことが可能であって、一群の被覆研磨粒子は、少なくとも約0.9の非凝集ファクター(NAF)を含む。一実施形態では、基材は、ワイヤー、円盤、環、砥石、円錐としてよい。
【0036】
基材の材料は、金属または金属合金を含むことができる。いくつかの基材は、元素周期律表で認められる遷移金属元素を含むことができる。例えば、基材は、鉄、ニッケル、コバルト、銅、クロム、モリブデン、バナジウム、タンタル、タングステンなどの元素を含有してよい。特定の実施形態に基づけば、基材は、鉄を、より詳細には鋼鉄を含むことが可能である。
【0037】
好ましい実施形態では、方法は、例えば金属コーティング(例えば、ニッケル)をもつダイヤモンド粒子を含む被覆研磨粒子をワイヤー基材上に固定して固定ダイヤモンドワイヤー(FDW)を作り出すことを含んでよい。特定の実施形態では、被覆研磨粒子は、限定されるものではないが、めっき、電解めっき、無電解めっき、ろう着、およびそれらの組み合わせを含む、様々な形成工程によりワイヤー基材へ付着させることができる。さらなる実施形態では、結合層は、付着したニッケル被覆ダイヤモンド粒子を覆うことを含んでよく、それによりワイヤー基材に対してダイヤモンド粒子を固定する。
【0038】
図18に、一実施形態によるFDWの断面部の例を示している。
図18で説明するFDW1800は、ワイヤー等の細長い部材の形態で基材1801を含む。さらなる説明によれば、FDWは、基材1801の外面全体を覆って配置された仮止め薄膜1802を含むことができる。さらに、FDWは、研磨粒子1803を覆うコーティング層1804を含む研磨粒子1803を含むことができる。研磨粒子1803は、仮止め薄膜1802に結合させることができる。特に、研磨粒子1803は、界面1806で仮止め薄膜1802と結合させることができ、そこで結合領域を形成させることが可能である。
【0039】
特定の理論に拘束されることを望まないが、特定の非凝集ファクターを有する一群のある小さな研磨粒子の形成は、例えば、与えられる超音波エネルギーのパワー、浴の容量、および研磨粒子の総量を含む1つまたは複数の作業変数の制御により促進されうることを、本明細書の実施形態から留意されたい。平均粒度≦10μmの本明細書の一群の被覆研磨粒子は、研磨粒子の表面領域全体を覆って広がる高品位のコンフォーマルコーティングを有することにより特徴づけることができる。本明細書の実施形態による被覆研磨粒子は、限定されるものではないが、固定ダイヤモンドワイヤーを含む、改善された研磨品の製造を促進できるものであって、改善されたカーフ損失を有するように本明細書の実施形態の被覆研磨粒子で形成されてよく、高品位の製品を提供する。
【0040】
多くの異なる態様および実施形態が可能である。そうした態様および実施形態のいくつかが、本明細書に記載されている。本明細書を読めば、熟練の職人は、そうした態様および実施形態は、単に例示であって本発明の範囲を限定するものではないことを十分に理解するであろう。実施形態は、以下に列挙する項のいずれか1つ以上に基づくものであってよい。
【0041】
項1 浴中に分散する平均粒度が≦10μmである研磨粒子を提供することと、上記浴中で上記研磨粒子をコーティング材料で被覆することと、上記浴に超音波エネルギーを与えることおよび該超音波エネルギーのパワーを調節して、少なくとも約0.90の非凝集ファクター(NAF)で、比(D50
sa/D50
b)として定義される該非凝集ファクターを有する一群の被覆研磨粒子を形成することとを含み、D50
bは上記一群の被覆研磨粒子の中央粒度(median particle size)を表し、D50
saは被覆前の上記研磨粒子の中央粒度を表す、一群の被覆研磨粒子を形成する方法。
【0042】
項2 上記研磨粒子は、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化タングステン、酸化ジルコニウム、またはそれらの組み合わせよりなる群から選択された材料を含む、項1の方法。
【0043】
項3 上記研磨粒子は、ダイヤモンド粒子である、項2の方法。
【0044】
項4 コーティングは、ニッケル、チタン、銅、亜鉛、クロム、青銅、およびそれらの組み合わせよりなる群から選択された材料を含む、項1、2、または3の方法。
【0045】
項5 上記コーティングは、ニッケルを含む、項4の方法。
【0046】
項6 上記コーティングは、基本的にニッケルからなる、項5の方法。
【0047】
項7 上記研磨粒子の平均粒度は、少なくとも約1μmであって、例えば少なくとも約2μm、少なくとも約3μmまたは少なくとも約4μm等である、項1、2、または3の方法。
【0048】
項8 上記研磨粒子の平均粒度は、9μmを超えないものであり、例えば8μmを超えない、7μmを超えないまたは6μmを超えない等である、項1、2、または3の方法。
【0049】
項9 非凝集ファクター(NAF)は、少なくとも0.92であり、例えば少なくとも0.94、少なくとも0.96、または少なくとも0.97等である、項1、2、または3の方法。
【0050】
項10 分散における研磨粒子の量は、分散の総重量に対して1.5wt%から3wt%である、項1、2、または3の方法。
【0051】
項11 超音波エネルギーのパワーを調節することは、少なくとも約50ワットとするパワーを用いることを含み、例えば少なくとも約70ワット、少なくとも約100ワット、少なくとも約150ワット、少なくとも約200ワット、少なくとも約400ワット、少なくとも約600ワット、または少なくとも約800ワット等とする、項1、2、または3の方法。
【0052】
項12 超音波エネルギーのパワーを調節することは、約1000ワットを超えないパワーを用いることを含み、例えば約900ワットを超えない、約800ワットを超えない、約600ワットを超えない、約450ワットを超えない、約200ワットを超えない等とする、項1、2、または3の方法。
【0053】
項13 超音波エネルギーは、研磨粒子を被覆している間与えられる、項1、2、または3の方法。
【0054】
項14 超音波エネルギーは、連続して、または、周期的に与えられる、項1、2、または3の方法。
【0055】
項15 被覆工程は、無電解めっきを含む、項1、2、または3の方法。
【0056】
項16 コーティングの厚さは、約1nmから約500nmである、項1、2、または3の方法。
【0057】
項17 コーティングは、被覆研磨粒子の総重量の1wt%から30wt%である、項1、2、または3の方法。
【0058】
項18 浴はさらに、還元剤、触媒、安定剤、pH調整剤、および電解質よりなる群から選択される少なくとも1つの添加剤を含む、項1、2、または3の方法。
【0059】
項19 浴中に分散する平均粒度が≦10μmであるダイヤモンド粒子を提供することと、上記浴中で上記ダイヤモンド粒子をニッケルを含むコーティング材料で被覆することと、上記浴に超音波エネルギーを与えることおよび該超音波エネルギーのパワーを調節して、少なくとも約0.90の非凝集ファクター(NAF)で、比(D50
sa/D50
b)として定義される該非凝集ファクターを有する一群のニッケル被覆ダイヤモンド粒子を形成することとを含み、D50
bは上記一群のニッケル被覆ダイヤモンド粒子の中央粒度を表し、D50
saは被覆前の上記ダイヤモンド粒子の中央粒度を表す、一群のニッケル被覆ダイヤモンド粒子を形成する方法。
【0060】
項20 上記ダイヤモンドの平均粒度は、少なくとも約1μmであって、例えば少なくとも約2μm、少なくとも約3μmまたは少なくとも約4μm等である、項19の方法。
【0061】
項21 上記ダイヤモンドの平均粒度は、約9μmを超えないものであり、例えば約8μmを超えない、約7μmを超えないまたは約6μmを超えない等である、項19の方法。
【0062】
項22 非凝集ファクター(NAF)は、少なくとも0.92であって、例えば少なくとも0.94、少なくとも0.96、または少なくとも0.97等である、項19の方法。
【0063】
項23 分散におけるダイヤモンド粒子の量は、分散の総重量に対して1.5wt%から3.0wt%である、項19の方法。
【0064】
項24 ダイヤモンド粒子のコーティングは、無電解めっきによって行われる、項19の方法。
【0065】
項25 超音波エネルギーのパワーを調節することは、少なくとも約50ワットとするパワーを用いることを含み、例えば少なくとも約70ワット、少なくとも約100ワット、少なくとも約150ワット、少なくとも約200ワット、少なくとも約400ワット、少なくとも約600ワット、または少なくとも約800ワット等とする、項19の方法。
【0066】
項26 超音波エネルギーのパワーを調節することは、約1000ワットを超えないパワーを用いることを含み、例えば約900ワットを超えない、約800ワットを超えない、約600ワットを超えない、約450ワットを超えない、または約200ワットを超えない等とする、項19の方法。
【0067】
項27 超音波エネルギーは、ダイヤモンド粒子を被覆している間与えられる、項19の方法。
【0068】
項28 超音波エネルギーは、連続して、または、周期的に与えられる、項19の方法。
【0069】
項29 被覆工程は、無電解めっきを含む、項19の方法。
【0070】
項30 コーティングの厚さは、約1nmから約500nmである、項19の方法。
【0071】
項31 コーティングは、被覆ダイヤモンド粒子の総重量の1wt%から30wt%である、項19の方法。
【0072】
項32 浴はさらに、還元剤、触媒、安定剤、pH調整剤、および電解質よりなる群から選択される少なくとも1つの添加剤を含む、項19の方法。
【0073】
項33 基材を提供することと、上記基材に一群の被覆研磨粒子を付着することとを含み、該一群の研磨粒子は、少なくとも約0.9の非凝集ファクター(NAF)で、比(D50
sa/D50
b)として定義される該非凝集ファクターを含み、D50
bは上記一群の被覆研磨粒子の中央粒度を表し、D50
saは被覆前の該研磨粒子の中央粒度を表す、研磨品の製造方法。
【0074】
項34 上記基材は、円盤、ワイヤー、環、砥石、円錐およびそれらの組み合わせよりなる群から選択される、項33による研磨品の製造方法。
【0075】
項35 研磨粒子は、ニッケル被覆ダイヤモンド粒子である、項33による研磨品の製造方法。
【0076】
項36 上記ニッケル被覆ダイヤモンド粒子は、電解めっきによってワイヤー基材に付着し、それにより固定ダイヤモンドワイヤー(FDW)を製造する、項35による研磨品の製造方法。
【0077】
項37 付着したニッケル被覆ダイヤモンド粒子を覆う結合層をさらに含み、それによりワイヤー基材に対してダイヤモンド粒子を固定することよりなる、項36による固定ダイヤモンドワイヤー(FDW)の製造方法。
【0078】
項38 平均粒度を≦10μmとし、少なくとも0.90の非凝集ファクター(NAF)で、比(D50
sa/D50
b)として定義される該非凝集ファクターを有する一群の被覆研磨粒子であり、D50
bは該一群の被覆研磨粒子の中央粒度を表し、D50
saは被覆前の該研磨粒子の中央粒度を表す。
【0079】
項39 研磨粒子の材料は、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化タングステン、酸化ジルコニウムまたはそれらのあらゆる組み合わせよりなる群から選択される、項38による一群の被覆研磨粒子。
【0080】
項40 研磨粒子はダイヤモンド粒子である、項39による一群の被覆研磨粒子。
【0081】
項41 上記研磨粒子のコーティングは、ニッケル、チタン、銅、亜鉛、クロム、青銅、またはそれらの組み合わせを含む、項38、39、または40による一群の被覆研磨粒子。
【0082】
項42 上記コーティングは、ニッケルを含む、項41による一群の被覆研磨粒子。
【0083】
項43 上記コーティングは、基本的にニッケルからなる、項42による一群の被覆研磨粒子。
【0084】
項44 研磨粒子の平均粒度は、少なくとも約1μmであり、例えば少なくとも約2μm、少なくとも約3μmまたは少なくとも約4μm等である、項38、39、または40による一群の被覆研磨粒子。
【0085】
項45 研磨粒子の平均粒度は、約9μmを超えないものであり、例えば約8μmを超えない、約7μmを超えないまたは約6μmを超えない等である、項38、39、または40による一群の被覆研磨粒子。
【0086】
項46 非凝集ファクター(NAF)は、少なくとも0.92であり、例えば少なくとも0.94、少なくとも0.96、または少なくとも0.97等である、項38、39、または40による一群の被覆研磨粒子。
【0087】
項47 被覆研磨粒子の少なくとも95%は、上記研磨粒子の表面領域全体を覆って広がるコンフォーマルコーティングよりなる、項38、39、および40による一群の被覆研磨粒子。
【0088】
項48 被覆研磨粒子の少なくとも99%は、上記研磨粒子の表面領域全体を覆って広がるコンフォーマルコーティングよりなる、項47による一群の被覆研磨粒子。
【0089】
項49 項38、39、または40による一群の研磨粒子を含む、研磨品。
【0090】
項50 上記研磨粒子は基材に付着する、項49の研磨品。
【0091】
項51 上記基材は、円盤、ワイヤー、環、砥石、円錐よりなる群から選択される、項50の研磨品。
【0092】
項52 上記研磨品は、固定砥粒ワイヤーである、項51の研磨品。
【0093】
項53 付着した研磨粒子を覆う結合層をさらに含み、それによりワイヤー基材に対して研磨粒子を固定する、項52の固定砥粒ワイヤー。
【0094】
項54 平均粒度を≦10μmとし、少なくとも0.90の非凝集ファクター(NAF)で、比(D50
sa/D50
b)として定義される該非凝集ファクターを有する一群のニッケル被覆ダイヤモンド粒子であり、D50
bは該一群の被覆研磨粒子の中央粒度を表し、D50
saは被覆前の該研磨粒子の中央粒度を表す。
【0095】
項55 非凝集ファクター(NAF)は、少なくとも0.92であり、例えば少なくとも0.94、少なくとも0.96、または少なくとも0.97等である、項54による一群のニッケル被覆ダイヤモンド粒子。
【0096】
項56 コーティングのニッケル量は、該コーティングの総重量に対して、少なくとも60wt%である、項54による一群のニッケル被覆ダイヤモンド粒子。
【0097】
項57 上記コーティングは、基本的にニッケルからなる、項54による一群のニッケル被覆ダイヤモンド粒子。
【0098】
項58 上記コーティングの厚さは、約1nmから約500nmである、項54による一群のニッケル被覆ダイヤモンド粒子。
【0099】
項59 上記コーティングは、ニッケル被覆ダイヤモンド粒子の総重量の1wt%から3wt%である、項54による一群のニッケル被覆ダイヤモンド粒子。
【0100】
項60 ダイヤモンドの平均粒度は、約9μmを超えないものであり、例えば約8μmを超えない、約7μmを超えないまたは約6μmを超えない等である、項54による一群のニッケル被覆ダイヤモンド粒子。
【0101】
項61 ニッケル被覆ダイヤモンド粒子の平均粒度は、少なくとも約1μmであり、例えば少なくとも約2μm、少なくとも約3μmまたは少なくとも約4μm等である、項54による一群のニッケル被覆ダイヤモンド粒子。
【0102】
項62 ニッケル被覆ダイヤモンド粒子の平均粒度は、約9μmを超えないものであり、例えば約8μmを超えない、約7μmを超えないまたは約6μmを超えない等である、項54による一群のニッケル被覆ダイヤモンド粒子。
【0103】
項63 被覆研磨粒子の少なくとも95%は、上記研磨粒子の表面領域全体を覆って広がるコンフォーマルコーティングよりなる、項54による一群の被覆研磨粒子。
【0104】
項64 被覆研磨粒子の少なくとも99%は、上記研磨粒子の表面領域全体を覆って広がるコンフォーマルコーティングよりなる、項63による一群の被覆研磨粒子。
【0105】
実施例:
ダイヤモンド粒子の無電解ニッケルめっき
【0106】
すべての実験について、平均粒度4μmから6μmを有するダイヤモンド粒子が用いられた。該ダイヤモンド粒子は、硫酸ニッケル(15〜20g/l)、次亜リン酸ナトリウム、分散剤、および酸性pHを含むニッケルめっき浴の水溶液に添加された。超音波エネルギーは、ダイヤモンド粒子が添加される前からすでにめっき浴に与えられ、ニッケルめっき工程が終了するまで継続して与えられた。実験の概要は、表1に示している。
【0107】
非凝集ファクター(NAF)の算出
NAFは、式NAF=D50
sa/D50
b(式1)に従って算出され、ここで、D50
saは無電解ニッケルめっき前のダイヤモンド粒度であり、D50
bは無電解ニッケルめっき後のD50の粒度である。D50
sa値は、すなわち、比較実験を含むすべての実験において、ニッケルめっき前のD50のダイヤモンド粒度であり、4.624μmであった。
【0108】
粒度測定
非被覆および被覆ダイヤモンド粒子の代表サンプルに関する粒度分布(PSD)の測定は、Microtrac−X100分析器を用いるレーザー回折技術によって行われた。
【0109】
表1は、本発明の代表となる実験、すなわち実験E1からE6、そして比較実験C1からC6を要約している。
【0111】
すべての代表実験E1からE6について、NAFは0.97より大きいことが表1から見ることができる。表1に示すように、実験E1からE6の粒子サンプルのSEM画像は、
図2、3、4、5、6および7に示される。同様に表1に示すように、ニッケルコーティング後のD50
bの粒度は、ほんのわずかに、すなわち、非被覆ダイヤモンドの粒度4.624μmから、被覆状態で4.628μmから4.753μmのサイズへ増加している。
【0112】
実験E1からE6と対照的に、比較実験C1からC6は、NAFは0.9未満で、一群の被覆研磨粒子の凝集が認められる状況を示している(表1の、図番にちょうど対応しているサンプル番号を参照のこと)。
図8から13の対応するSEM画像でわかるように、超音波エネルギーのパワーは、他の工程のパラメーター、例えば、浴の容量および固体量に関して、粒子の凝集や粒子の集合体の形成を防ぐように十分に調節されていない。
【0113】
比較実験に関して、さらに表1からわかるように、被覆後のD50
bの粒度についてかなりの規模の増加が、14.25μmまで測定されており、それはニッケル被覆ダイヤモンド粒子の品質が劣っている、すなわち、均一でないコーティングであり、好ましくないより大きい粒子の形成を有することを示している。
【0114】
実験でのある被覆研磨粒子のさらなる考察においては、本明細書の実施形態の被覆研磨粒子は、比較実験のコーティング品質に対して、特定のコーティング品質を有することが可能であることにもまた留意されたい。例えば、
図15Aは、NAFが0.985である一群の実験E6よりの、あるニッケル被覆研磨粒子のSEM画像を示している。
図15Bは、NAFが0.471である比較実験C5のニッケル被覆研磨粒子の画像を示している。
【0115】
ある例では、いくつかの従来の工程で、破砕および/またはふるい分けの技術を用いて凝集を制御することを試みてよいが、そうした工程は、非効率的であり、結果としてコーティングの損傷になるように思われる。比較実験7(表2)からさらにわかるように、凝集したニッケル被覆ダイヤモンド粒子についての10ミクロンサイズの篩を介しての破砕およびふるい分けは、ふるい分け後に結果として凝集が減少した(NAFが増加)。しかしながら、破砕およびふるい分けは、研磨粒子のニッケルコーティングの観察可能な損傷を引き起こした(
図16Aおよび16Bを参照のこと)。さらに、破砕およびふるい分けの後でさえも、比較実験C7のニッケル被覆粒子のNAFは、NAFが少なくとも0.9となるまで増加せず、本開示の代表実験E1からE6のNAFと同程度ではない。対照的に、実験E1からE6のニッケル被覆ダイヤモンド粒子は、難なくふるい分けでき、かつ、破砕を必要としない。従って、10ミクロンサイズの篩を介してNAFが少なくとも0.9であるニッケル被覆粒子のふるい分けを行う場合には、ニッケルコーティングの品質は、ふるい分け後も変わらずに維持できる(
図17Aおよび17Bを参照のこと)。
【0116】
表2 比較実験C7、破砕およびふるい分けを行う4〜6ミクロンサイズの20wt%ニッケル被覆ダイヤモンド粒子
【0118】
(D50
b=被覆ダイヤモンド粒子のD50、
D50
sa=非被覆ダイヤモンド粒子のD50=4.624μm)
【0119】
上記明細書においては、特定の実施形態に関して、概念を記載している。しかしながら、当業者は、以下の特許請求の範囲に記載する本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変形および変化をさせることができるということを十分理解できる。従って、本明細書および各図面は、限定的意味ではなく説明的であるとみなされるものであって、そうした変形のすべては本発明の範囲の内に含まれていることを目的としている。