(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記対向電極上の前記青色サブ画素領域内に、当該サブ画素領域内にある前記第2青色有機発光層及び前記第1青色有機発光層の少なくとも何れか一方の発する青色光を当該青色光とは異なる発光スペクトルを持つ青色光に変換する第3光変換層を備えた
請求項1又は2に記載の有機EL表示パネル。
前記対向電極上方の前記青色サブ画素領域内に、当該サブ画素領域内にある前記第2青色有機発光層及び前記第1青色有機発光層の少なくとも何れか一方の発する青色光の一部を遮る第3フィルタ部を備えた
請求項1又は2に記載の有機EL表示パネル。
前記対向電極上の前記青色サブ画素領域内に、当該サブ画素領域内にある前記第2青色有機発光層及び前記第1青色有機発光層の少なくとも何れか一方の発する青色光を当該青色光とは異なる発光スペクトルを持つ青色光に変換する第3光変換層と、
前記第3光変換層上に、前記第3光変換層から上方に出射される光の一部を遮る第3フィルタ部を備えた
請求項1又は2に記載の有機EL表示パネル。
前記電荷発生層は、前記赤色有機発光層、前記緑色有機発光層、及び前記第1青色有機発光層の上に分割されている請求項1から8の何れかに記載の有機EL表示パネル。
前記第2青色有機発光層は、前記各色サブ画素領域、前記緑色サブ画素領域、及び前記青色サブ画素領域に分割されている請求項1から9の何れかに記載の有機EL表示パネル。
前記対向電極上方の前記青色サブ画素領域内に、当該サブ画素領域内にある前記第2青色有機発光層及び前記第1青色有機発光層の少なくとも何れか一方の発する青色光の一部を遮る第3フィルタ部と、
前記対向電極上方の前記濃青色サブ画素領域内に、当該サブ画素領域内にある前記第2青色有機発光層の発する青色光の一部を遮る第4フィルタ部の
少なくとも何れか一方を備えた請求項11又は12の何れか1項に記載の有機EL表示パネル。
【発明を実施するための形態】
【0012】
≪本発明を実施するための形態に到った経緯について≫
上述のとおり、特許文献1に記載された有機EL表示パネルでは、発光層を2段のスタック構造としたマルチフォトン発光構造を採用することにより、電流に対する輝度の大きさである電流効率を増加することができる。これは、以下の理由に基づくものと考えられる。すなわち、りん光発光材料の赤色発光層、及び緑色発光層に比べて、蛍光発光材料である第1青色発光層は発光効率が低い。これに対し、真空プロセスにより形成した青色発光層は蛍光材料であるものの、湿式プロセスで形成した第1青色発光層よりも発光効率が高い。これを、第2青色発光層に用いることで、赤色発光層、及び緑色発光層に比べて発光効率が低い第1青色発光層の低輝度を補うことができる。通常有機EL表示パネルは、駆動時の電流負荷が小さいほど駆動寿命が向上する。特許文献1に記載された有機EL表示パネルでは、第2青色発光層を加えたことで、電流効率が向上し、所望の輝度を得るのに必要な電流が小さくなるため青色発光については寿命を伸ばすことができたものと考えられる。
【0013】
しかしながら、特許文献1記載の構成は、赤色発光層、緑色発光層及び青色発光層の上方に、真空蒸着法により第2青色発光層を形成しているが、このうち、有機EL表示パネルの発光に寄与しているのは青色発光層の上方にある第2青色発光層の部分だけである。
【0014】
上述のとおり、ディスプレイデバイスとしてのさらなる高輝度・低消費電力化のために、有機EL表示パネルにおいても、さらなる、発光効率向上が求められている。そのため、発明者は、赤色発光層、緑色発光層の上方にある第2青色発光層の部分からも光を取り出して出力し、赤色画素領域、及び緑色画素領域についても輝度の向上を図ることができれば、有機EL表示パネル全体として、さらなる輝度向上が図ることができると考えた。
【0015】
また、表示パネルの生産性においても、青色画素領域にのみ真空蒸着法により電荷発生層を形成する特許文献1記載の構成では生産効率上課題がある。すなわち、真空蒸着法により、青色画素領域にのみ電荷発生層を形成するためには、シャドウマスク法により青色画素領域のみ開口した精密マスクを用いてパターンニングする。この場合、開口を含むマスク全体に蒸着材料を付着させてしまうために材料損失が大きくコストアップの要因となる。また、精密マスクの開口を青色サブ画素のバンクに高精度に位置合わせすることも生産効率を低下させる要因となる。これらを防止し、有機EL表示パネルのさらなる低価格化のために、真空蒸着法では精密なシャドウマスク法を用いず画素領域全体に対して蒸着を行うことが、材料を有効活用することができ、材料コストや生産効率の上で効果的であると考えられる。
【0016】
そこで、発明者は、マルチフォトン発光構造による有機EL表示パネルにおいて、赤色画素領域、及び緑色画素領域についても輝度向上を図ることができ、真空蒸着法ではシャドウマスク法を用いず画素領域全体に対して蒸着を行うことで製造可能なデバイス構造ついて鋭意検討を行い、本発明の実施の形態に記載の有機EL表示パネルに想到したものである。
【0017】
≪本発明を実施するための形態の概要≫
本発明の一態様にかかる有機EL表示パネルは、赤色サブ画素、緑色サブ画素、及び青色サブ画素を含む画素を複数有する有機EL表示パネルであって、基板と、前記基板上に、前記各色サブ画素の領域を区画する隔壁と、前記基板上の前記赤色サブ画素領域内に、前記基板側から順に、第1画素電極、赤色有機発光層と、前記基板上の前記緑色サブ画素領域内に、前記基板側から順に、第2画素電極、緑色有機発光層と、前記基板上の前記青色サブ画素領域内に、基前記板側から順に、第3画素電極、第1青色有機発光層と、前記赤色有機発光層、前記緑色有機発光層、及び前記第1青色有機発光層上に、電荷発生層と、前記電荷発生層上の前記各色サブ画素領域内に、第2青色有機発光層と、前記第2青色有機発光層上の各色サブ画素領域内に前記第1、第2、及び第3の画素電極の対向電極と、前記第2青色有機発光層上の前記赤色サブ画素領域内に、青色光を赤色光に変換する第1光変換層と、前記第2青色有機発光層上の前記緑色サブ画素領域内に、青色光を緑色光に変換する第2光変換層とが配されたことを特徴とする。
【0018】
また、別の態様では、前記赤色有機発光層、前記緑色有機発光層、及び前記第1青色有機発光層は湿式プロセスで形成され、前記第2青色有機発光層、及び前記電荷発生層は乾式プロセスで形成されている構成であってもよい。
【0019】
また、別の態様では、前記第1光変換層上の前記赤色サブ画素領域内に、青色光を遮る第1フィルタ部と、前記第2光変換層上の前記緑色サブ画素領域内に、青色光を遮る第2フィルタ部と、前記青色サブ画素領域内に、当該サブ画素領域内にある前記第1青色有機発光層および/もしくは前記第2青色発光層の発する青色光の少なくとも一部を遮る第3フィルタ部を備えた構成であってもよい。
【0020】
また、別の態様では、前記対向電極上の前記青色サブ画素領域内に、当該サブ画素領域内にある前記第2青色有機発光層及び前記第1青色有機発光層の少なくとも何れか一方の発する青色光を当該青色光とは異なる発光スペクトルを持つ青色光に変換する第3光変換層を備えた構成であってもよい。
【0021】
また、別の態様では、前記対向電極上方の前記青色サブ画素領域内に、当該サブ画素領域内にある前記第2青色有機発光層及び前記第1青色有機発光層の少なくとも何れか一方の発する青色光の一部を遮る第3フィルタ部を備えた構成であってもよい。
【0022】
また、別の態様では、前記対向電極上の前記青色サブ画素領域内に、当該サブ画素領域内にある前記第2青色有機発光層及び前記第1青色有機発光層の少なくとも何れか一方の発する青色光を当該青色光とは異なる発光スペクトルを持つ青色光に変換する第3光変換層と、前記第3光変換層上に、前記第3光変換層から上方に出射される光の一部を遮る第3フィルタ部を備えた構成であってもよい。
【0023】
また、別の態様では、前記第2青色有機発光層上の前記赤色サブ画素領域内に、青色光を遮る第一フィルタ部と、前記第2青色有機発光層上の前記緑色サブ画素領域内に、青色光を遮る第2フィルタ部と、前記青色サブ画素領域内に、当該サブ画素領域内にある前記第1青色有機発光層および/もしくは前記第2青色発光層の発する青色光の少なくとも一部を遮る第3フィルタ部をとを備えた構成であってもよい。
【0024】
また、別の態様では、さらに、前記赤色有機発光層、前記緑色有機発光層、及び前記第1青色有機発光層と、前記電荷発生層との間に、第1電子注入層と、前記第2青色有機発光層と前記対向電極との間の前記各色サブ画素領域内に、第2電子注入層とを備え、前記第2電子注入層は、前記第1電子注入層よりも膜厚が厚い構成であってもよい。
【0025】
また、別の態様では、前記電荷発生層は、前記第2青色有機発光層に対してホールを供給し、前記各サブ画素領域内にある部分から、同じサブ画素領域内にある前記赤色有機発光層、前記緑色有機発光層、及び前記第1青色有機発光層の何れかに対し電子を供給する構成であってもよい。
【0026】
また、別の態様では、前記電荷発生層は、前記赤色有機発光層、前記緑色有機発光層、及び前記第1青色有機発光層の上に分割されている構成であってもよい。
【0027】
また、別の態様では、前記第2青色有機発光層は、前記各色サブ画素領域、前記緑色サブ画素領域、及び前記青色サブ画素領域に分割されている構成であってもよい。
【0028】
また、別の態様では、赤色サブ画素、緑色サブ画素、及び青色サブ画素を含む画素を複数有する有機EL表示パネルであって、基板と、前記基板上に、前記各色サブ画素の領域を区画する隔壁と、前記基板上の前記赤色サブ画素領域内に、前記基板側から順に、第1画素電極、赤色有機発光層と、前記基板上の前記緑色サブ画素領域内に、前記基板側から順に、第2画素電極、緑色有機発光層と、前記基板上の前記青色サブ画素領域内に、前記基板側から順に、第3画素電極、第1青色有機発光層と、前記赤色有機発光層、前記緑色有機発光層、及び前記第1青色有機発光層上に、電荷発生層と、前記電荷発生層上の前記各色サブ画素領域内に、第2青色有機発光層と、前記第2青色有機発光層上の各色サブ画素領域内に、前記第1、第2、及び第3の画素電極の対向電極と、前記第2青色有機発光層上の前記赤色サブ画素領域内に、青色光を遮る第1フィルタ部と、前記第2青色有機発光層上の前記緑色サブ画素領域内に、青色光を遮る第2フィルタ部とが配された構成であってもよい。
【0029】
また、別の態様では、前記対向電極上方の前記青色サブ画素領域内に、当該サブ画素領域内にある前記第2青色有機発光層及び前記第1青色有機発光層の少なくとも何れか一方の発する青色光の一部を遮る第3フィルタ部を備えた構成であってもよい。
【0030】
また、別の態様では、赤色サブ画素、緑色サブ画素、青色サブ画素、及び濃青色サブ画素を含む画素を複数有する有機EL表示パネルであって、基板と、前記基板上に、前記各色サブ画素の領域を区画する隔壁と、前記基板上の前記赤色サブ画素領域内に、前記基板側から順に、第1画素電極、赤色有機発光層と、前記基板上の前記緑色サブ画素領域内に、前記基板側から順に、第2画素電極、緑色有機発光層と、前記基板上の前記青色サブ画素領域内に、前記基板側から順に、第3画素電極、第1青色有機発光層と、前記基板上の前記濃青色サブ画素領域内に、第4画素電極と、前記赤色有機発光層、前記緑色有機発光層、前記第1青色有機発光層、及び前記第4画素電極上に電荷発生層と、前記電荷発生層上の前記各色サブ画素領域内に、第2青色有機発光層と、前記第2青色有機発光層上の各色サブ画素領域内に、前記第1、第2、第3、及び第4の画素電極の対向電極と、前記第2青色有機発光層上の前記赤色サブ画素領域内に、青色光を赤色光に変換する第1光変換層と、前記第2青色有機発光層上の前記緑色サブ画素領域内に、青色光を緑色光に変換する第2光変換層とが配された構成であってもよい。
【0031】
また、別の態様では、前記第1光変換層上の前記赤色サブ画素領域内に、青色光を遮る第1フィルタ部と、前記第2光変換層上の前記緑色サブ画素領域内に、青色光を遮る第2フィルタ部とを備えた構成であってもよい。
【0032】
また、別の態様では、前記対向電極上方の前記青色サブ画素領域内に、当該サブ画素領域内にある前記第2青色有機発光層及び前記第1青色有機発光層の少なくとも何れか一方の発する青色光の一部を遮る第3フィルタ部と、前記対向電極上方の前記濃青色サブ画素領域内に、当該サブ画素領域内にある前記第2青色有機発光層の発する青色光の一部を遮る第4フィルタ部の少なくとも何れか一方を備えた構成であってもよい。
【0033】
また、別の態様では、赤色サブ画素、緑色サブ画素、青色サブ画素、及び濃青色サブ画素を含む画素を複数有する有機EL表示パネルであって、基板と、前記基板上に、前記各色サブ画素の領域を区画する隔壁と、前記基板上の前記赤色サブ画素領域内に、前記基板側から順に、第1画素電極、赤色有機発光層と、前記基板上の前記緑色サブ画素領域内に、前記基板側から順に、第2画素電極、緑色有機発光層と、前記基板上の前記青色サブ画素領域内に、前記基板側から順に、第3画素電極、第1青色有機発光層と、前記基板上の前記濃青色サブ画素領域内に、第4画素電極と、前記赤色有機発光層、前記緑色有機発光層、前記第1青色有機発光層、及び前記第4画素電極上に電荷発生層と、前記電荷発生層上の前記各色サブ画素領域内に、第2青色有機発光層と、前記第2青色有機発光層上の各色サブ画素領域内に、前記第1、第2、第3、及び第4の画素電極の対向電極と、前記第2青色有機発光層上の前記赤色サブ画素領域内に、当該サブ画素領域内にある前記第2青色有機発光層の発する青色光の透過を遮る第1フィルタ部と、前記第2青色有機発光層上の前記緑色サブ画素領域内に、当該サブ画素領域内にある前記第2青色有機発光層の発する青色光の透過を遮る第2フィルタ部とが配された構成であってもよい。
【0034】
本発明の一態様にかかる有機EL表示パネルの製造方法は、上記の何れかに記載の有機EL表示パネルの製造方法であって、前記第1、第2、第3の画素電極、前記赤色有機発光層、前記緑色有機発光層、及び前記第1青色有機発光層を湿式プロセスにより形成する工程と、前記電荷発生層、前記第2青色有機発光層、対向電極を乾式プロセスにより形成する工程とを有することを特徴とする。
【0035】
また、別の態様では、前記湿式プロセスは、印刷法、スピンコート法、インクジェット法、フォトリソ法から選択される1又は複数であり、前記乾式プロセスは、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法から選択される1又は複数である構成であってもよい。
【0037】
≪実施の形態1≫
実施の形態1ではトップエミッション構造の有機EL表示パネルに関して説明する。
【0038】
< 有機EL表示パネル100の全体構成>
図1は、実施の形態1に係る有機EL表示パネル100の画素構造を模式的に示す断面図である。この有機EL表示パネル100(以後、「表示パネル100」と略称する)においては、R(赤)、G(緑)、B(青)各色のサブ画素を含む複数の画素が行方向及び列方向にマトリックス状に規則的に配置されている。
【0039】
図1に示すように、表示パネル100は、基板1をベースとして形成されている。そして、基板1上には、陽極3が互いに間隔を開けて形成されている。基板1および陽極3の上には、R、G、B各色サブ画素に対応する位置に複数の開口部2R、2G、2Bが形成された隔壁2(以後、「バンク2」と称する)が設けられている。
【0040】
開口部2Rの内部には、正孔注入層4、正孔輸送層5、赤色有機発光層6R(以後「有機発光層6R」と略称する)が、順次形成されている。開口部2Gの内部には、正孔注入層4、正孔輸送層5、緑色有機発光層6G(以後「有機発光層6G」と略称する)が、順次形成されている。開口部2Bの内部には、正孔注入層4、正孔輸送層5、第1青色有機発光層6B(以後「有機発光層6B」と略称する)が、順次形成されている。各開口部2R、2G、2Bにおける、正孔注入層4の膜厚は、互いに独立であり、各開口部2R、2G、2Bで異ならせてもよい。正孔輸送層5についても同様に各開口部2R、2G、2Bで膜厚を異ならせてもよい。また、各開口部2R、2G、2Bの一部又は全部において、正孔注入層4を設けない構成としてもよく、正孔輸送層5についても同様である。
【0041】
有機発光層6R、6G、6B(以後、6R、6G、6Bを区別しない場合には「有機発光層6」と略称する)を覆うように、各開口部2R、2G、2Bにまたがるように、第1電子輸送層7、電荷発生層8、第2青色有機発光層9、第2電子輸送層10、陰極11、樹脂封止層12が、順次、画素全体にわたるベタ膜として形成されている。
【0042】
したがって、「第1電子輸送層7」、「電荷発生層8」、「第2青色有機発光層9」、「第2電子輸送層10」および「陰極11」は、R、G、B各色サブ画素にある領域を総称したものをさす。本実施の形態においては、第1電子輸送層7、電荷発生層8、第2青色有機発光層9光変換層13、第2電子輸送層10、陰極11を平面視した場合の各層の外周縁が一致する構成としている。
【0043】
そして、赤色サブ画素に対応する位置、開口部2Rの上方に第1光変換層が、緑色サブ画素に対応する位置、開口部2Gの上方に第2光変換層が、各々形成されている。さらに、各色サブ画素に対応する位置、開口部2R、2G、2Bの上方に、各々、赤色フィルタ14R、緑色フィルタ14G、青色フィルタ14Bが形成され、それら上方を覆うようにカバーガラス15が配置されている。
【0044】
<各要素の構成>
以下、表示パネル100を構成する各構成要素について説明する。
【0045】
(基板)
基板1は表示パネル100における背面基板であり、その表面には、表示パネル100をアクティブマトリクス方式で駆動するためのTFT(Thin Film TansistoR)を含むTFT層(不図示)が形成されている。
【0046】
基板1の材料は、例えば、無アルカリガラス、ソーダガラス、無蛍光ガラス、燐酸系ガラス、硼酸系ガラスなどのガラス板及び石英板、並びに、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレン、ポリエステル、ポリイミド、シリコーン系樹脂などのプラスチック板又はプラスチックフィルム、並びに、アルミナなどの金属板又は金属ホイルなどである。TFT層には、各TFTに対して外部から電力を供給するための配線部が含まれるが、本実施の形態においては、説明をわかりやすくするために、陽極のみを取り出して図示している。
【0047】
本実施の形態に係る有機EL表示パネルは、トップエミッション構造であるので、基板1は透光性を有する必要はない。なお、基板1及び後述する陽極3に透光性の材料からなるものを用いることにより、ボトムエミッション構造とすることもできる。
【0048】
また、本実施の形態に係る有機EL表示パネルは、パッシブマトリクス方式を用いて駆動する構成とすることもできる。
【0049】
(バンク)
バンク2は、R、G、B各色に分かれたサブ画素領域の規定、および陰極のエッジをカバーする役割を果たす。バンク2は、絶縁性材料により形成されていれば良く、有機溶剤耐性を有することが好ましい。また、バンク2はエッチング処理、ベーク処理などされることがあるので、それらの処理に対する耐性の高い材料で形成されることが好ましい。バンク2の材料は、樹脂などの有機材料であっても、ガラスなどの無機材料であってもよい。有機材料として、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂などを使用することができ、無機材料として、シリコンオキサイド(SiO
2)、シリコンナイトライド(Si
3N
4)などを使用することができる。バンク2の高さは、充填する機能層の構成に応じて選択すればよい。例えば0.5μm以上2μm以下としても良く、より好ましくは、0.8μm以上1.2μm以下としてもよい。
【0050】
バンク2は、基板1上に感光性樹脂を塗布しフォトリソグラフィ法によりサブ画素に対応したパターンを形成する方法等により形成することができる。
【0051】
(陽極)
陽極3は、R、G、B各色に分かれたサブ画素毎に、各開口部2R、2G、2B内に形成されている。陽極3は、基板1に配されたTFTに電気的に接続されており、発光素子の正極として機能すると共に、有機発光層6B、6G、6Rから陽極3に向けて出射された光を反射する機能を有する。反射機能は、陽極3の構成材料により発揮されるものでもよいし、陽極3の表面部分に反射コーティングを施すことにより発揮されるものでもよい。陽極3は、例えば、Al(アルミニウム)、アルミニウム合金、AG(銀)、APC(銀、パラジウム、銅の合金)、ARA(銀、ルビジウム、金の合金)、MoCR(モリブデンとクロムの合金)、NiCR(ニッケルとクロムの合金)、Mo(モリブデン)、MoW(モリブデンとタングステンの合金)等で形成されている。
【0052】
陽極3を覆うように透明導電層(不図示)を設ける構成としてもよい。透明導電層は、製造過程において陽極3が自然酸化するのを防止する保護層として機能する。透明導電層の材料は、有機発光層6B、6G、6Rで発生する光に対して十分な透光性を有する導電性材料により形成されればよく、材料としては、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)や酸化インジウム亜鉛(IZO)を用いることができる。室温で成膜しても良好な導電性を得ることができるからである。
【0053】
陽極3の形成方法としては、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、イオンプレーティング法、気相成長法等の乾式成膜プロセスを用いることができ、より好ましくは、スパッタリング法を用いることができる。また、印刷法、スピンコート法、インクジェット法などの湿式成膜プロセスを用いて形成することもできる。
【0054】
(正孔注入層)
正孔注入層4は、正孔を有機発光層6B、6G、6Rに注入する機能を有する。正孔注入層4の材料としては、例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、ポリフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、ブタジエン化合物、アザトリフェニレン誘導体、ポリスチレン誘導体、ヒドラゾン誘導体、トリフェニルメタン誘導体、テトラフェニルベンジン誘導体(いずれも特開平5−163488号公報に記載)、酸化タングステン(WOx)、酸化モリブデン(MoOx)、酸化モリブデンタングステン(MoxWyOz)などの遷移金属の酸化物等を挙げることができる。遷移金属の酸化物で形成することで、電圧−電流密度特性を向上させ、また、電流密度を高めて発光強度を高めることができる。なお、これ以外に、遷移金属の窒化物などの金属化合物も適用できる。
【0055】
(正孔輸送層)
正孔輸送層5は、陽極3から注入された正孔を有機発光層6へ輸送する機能を有する。正孔輸送層5の材料としては、例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、ポリフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、ブタジエン化合物、ポリスチレン誘導体、ヒドラゾン誘導体、トリフェニルメタン誘導体、テトラフェニルベンジン誘導体等(いずれも特開平5−163488号公報に記載)が挙げられる。好ましくは、ポリフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物を挙げることができる。
【0056】
正孔注入層4、及び正孔輸送層5の形成方法としては、印刷法、スピンコート法、インクジェット法などの湿式成膜プロセスを用いることができる。また、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、イオンプレーティング法、気相成長法等の乾式成膜プロセスを用いることもできる。より好ましくは、低コスト化のためにインクジェット法等湿式成膜プロセスを用いることが好ましい。
【0057】
(有機発光層)
有機発光層6B、6G、6Rは、キャリア(正孔と電子)の再結合による発光を行う部位であり、R、G、Bのいずれかの色に対応する光を発する有機材料を含むように構成されている。開口部2RにはRに対応して発光する有機材料、開口部2GにはGに対応して発光する有機材料、開口部2BにはBに対応して発光する有機材料をそれぞれ含む有機発光層6が形成される。
【0058】
有機発光層6B、6G、6Rの材料は、例えば、オキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物及びアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、アンスラセン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8−ヒドロキシキノリン化合物の金属鎖体、2−ビピリジン化合物の金属鎖体、シッフ塩とIII族金属との鎖体、オキシン金属鎖体、希土類鎖体等の蛍光物質(いずれも特開平5−163488号公報に記載)等を挙げることができる。
【0059】
有機発光層6B、6G、6Rの形成方法としては、印刷法、スピンコート法、インクジェット法などの湿式成膜プロセスを用いることができる。また、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、イオンプレーティング法、気相成長法等の乾式成膜プロセスを用いることもできる。より好ましくは、低コスト化のためにインクジェット法等湿式成膜プロセスを用いることが好ましい。
【0060】
(電子輸送層)
第1電子輸送層7は、後述する電荷発生層8から注入された電子を有機発光層6へ輸送する機能を有する。有機発光層6B、6G、6R上に開口部2R、開口部2G、開口部2Bにまたがって画素全体にわたるベタ膜として第1電子輸送層7は形成されている。
【0061】
第1電子輸送層7の材料は、例えば、ニトロ置換フルオレノン誘導体、チオピランジオキサイド誘導体、ジフェキノン誘導体、ペリレンテトラカルボキシル誘導体、アントラキノジメタン誘導体、フレオレニリデンメタン誘導体、アントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ペリノン誘導体、キノリン錯体誘導体(いずれも特開平5−163488号公報に記載)、リンオキサイド誘導体、トリアゾール誘導体、トジアジン誘導体、シロール誘導体、ジメシチルボロン誘導体、トリアリールボロン誘導体等を挙げることができる。
【0062】
なお、電子注入性を更に向上させる点から、上記電子輸送層を構成する材料に、Na、Ba、Caなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属をドーピングしてもよい。
【0063】
第2電子輸送層10は、陰極11から注入された電子を第2青色有機発光層9へ輸送する機能を有する。第2青色有機発光層9上に、開口部2R、開口部2G、開口部2Bにまたがって画素全体にわたるベタ膜として第2電子輸送層10は形成されている。
【0064】
第2電子輸送層10の材料は、第1電子輸送層7と、同種の材料を用いることができる。
【0065】
また、第2電子輸送層10の成膜の際、第2青色有機発光層9を保護するために、第2電子輸送層10の膜厚は、第1電子輸送層7の膜厚よりも、厚い構成とすることが好ましく、例えば、第1電子輸送層7の膜厚を5〜19nm、第2電子輸送層10の膜厚を30〜35nmとすることが好ましい。
【0066】
(電荷発生層)
電荷発生層8は、第2青色有機発光層9に対してホールを供給し、各サブ画素領域内にある部分から同じサブ画素領域内にある有機発光層6R、6G、6Bに対し電子を供給する機能を有する。第1電子輸送層7上に開口部2R、開口部2G、開口部2Bにまたがって画素全体にわたるベタ膜として電荷発生層8は形成されている。
【0067】
電荷発生層8は、電子受容性物質と電子供与性物質の積層体又は混合体からなる。電子受容性物質と電子供与性物質との界面又は境界において、電子受容性物質と電子供与性物質間での電子移動を伴う反応により発生した電荷が、電圧印加時に陰極11方向と陽極3方向へ移動する。これにより、電荷発生層8に対し陰極11側に位置する第2青色有機発光層9へホールを供給し、電荷発生層8に対し陽極3側に位置する有機発光層6R、6G、6Bへ第1電子輸送層7を介して電子を供給する。このため、電荷発生層8を形成する材料は、異なる2種類の物質の積層体又は混合体からなり、2種類の物質間で酸化還元反応によるラジカルカチオンとラジカルアニオンからなる電荷移動錯体を形成する。電荷移動錯体中のラジカルカチオン状態とラジカルアニオン状態、すなわち、電荷移動錯体中のホール及び電子が、電圧印加時にそれぞれ陰極方向と陽極方向へ移動する。
【0068】
電荷発生層8の材料は、例えば、Ag、Au、Al等の金属薄膜、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化レニウム、酸化タングステン等の金属酸化物、ITO、IZO、AZO、GZO、ATO、SnO
2等の透明導電膜などから構成される積層体を挙げることができる。n型半導体とp型半導体の積層体、金属薄膜もしくは透明導電膜とn型半導体及び/またはp型半導体との積層体、n型半導体とp型半導体の混合物、n型半導体及び/またはp型半導体と金属との混合物等を用いることが好ましい。
【0069】
具体的には、電子受容性物質を構成する材料としては、例えば、V
2O
5、MoO
3、WO
3、n型の半導体特性を示す有機半導体であるテトラシアノキノジメタン(TCNQ)等を挙げることができる。電子供与性物質としては、アリール誘導体を挙げることができる。また、より好ましくは、電荷発生層を強電子受容性物質(例えばHATCN6)で構成し、この強電子受容性物質の陰極側に隣接するホール輸送層を電子供与性物質(例えばNPB)を用いる構成としてもよい(Organic Electronics 12 (2011)710-715に記載)。
【0070】
また、別の態様としては、Al/Au、Cu/Ag、F
16CuPc/CuPc(ヘキサデカフルオロ銅フタロシアニン/銅フタロシアニン)、Al/WO
3/Au等を用いる構成としてもよい(APPLIED PHYSICS LETTERS 91、123504 2007に記載)。
【0071】
(第2青色有機発光層)
第2青色有機発光層9は、有機発光層6と同様、キャリア(ホールと電子)の再結合による発光を行う部位であり、青色に対応する光を発する有機材料を含むように構成されている。開口部2R、開口部2G、開口部2Bにまたがって画素全体にわたるベタ膜として青色に発光する有機材料をそれぞれ含む第2電子輸送層10が形成される。
【0072】
第2電子輸送層10の材料は、第1電子輸送層7と、同種の材料を用いることができる。
【0073】
上述した第1電子輸送層7、電荷発生層8、第2青色有機発光層9、第2電子輸送層10の形成方法としては、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、イオンプレーティング法、気相成長法等の乾式成膜プロセスを用いることができ、より好ましくは、真空蒸着法を用いることができる。これは、真空蒸着法等の乾式成膜プロセスにより形成した青色発光層は蛍光材料であるものの、湿式プロセスで形成した第1青色発光層よりも発光効率が高く、真空プロセスで製造した第2青色発光層に用いることで、赤色発光層、及び緑色発光層に比べて発光効率が低い第1青色発光層の低輝度を効果的に補うことができるからである。
【0074】
(陰極)
陰極11は、有機EL素子の負極として機能する。有機発光層6B、6G、6Rで発生した光に対して透光性を有する導電性材料で形成される透明導電層を有する。透明導電層の材料として、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)や酸化インジウム亜鉛(IZO)などが好ましい。
【0075】
また、透明導電層に金属層(不図示)を積層して多層膜としてもよい。金属層の材料は、AG(銀)をはじめとして、Au(金)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Al(アルミニウム)、あるいはこれら金属の合金を挙げることができる。
【0076】
陰極11を覆うように薄膜封止層(不図示)を設ける構成としてもよい。薄膜封止層は、基板1との間に挟まれた各層が水分や空気に晒されることを防止し、光学的な調整を行う機能を有する。薄膜封止層の材料は、例えば、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)や樹脂等である。
【0077】
陰極11の形成方法としては、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、イオンプレーティング法、気相成長法等の乾式成膜プロセスを用いることができ、より好ましくは、スパッタリング法を用いることができる。
【0078】
(樹脂封止層)
樹脂封止層12は、基板1から薄膜封止層までの各層からなる背面パネルと、カラーフィルタ14B、14G、14Rが形成された基板1とを貼り合わせるとともに、各層が水分や空気に晒されることを防止する機能を有する。樹脂封止層12の材料は、例えば、樹脂接着剤等である。
【0079】
(光変換層)
第1光変換層13Rは、第2青色有機発光層9上の赤色サブ画素領域内、開口部2Rの上方にあり、このサブ画素領域内にある第2青色有機発光層9が発した青色光を赤色光に変換する機能を有する。第2光変換層13Gは、第2青色有機発光層9上の緑色サブ画素領域内、開口部2Bの上方にあり、このサブ画素領域内にある第2青色有機発光層9が発した青色光を緑色光に変換する機能を有する。
【0080】
第1光変換層13R、第2光変換層13G(以後、13R、13Gを区別しない場合は、「光変換層13」と略称する)は、上記の第2青色有機発光層9からの発光を吸収して、波長変換できる蛍光色素を含有するものであればよい。
【0081】
第1光変換層13Rの材料は、例えば、4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(以下DCMと略記する)等のシアニン系色素、1−エチル−2−(4−(p−ジメチルアミノフェニル)−1、3−ブタジエニル)−ピリジウム−パークロレート(以下ピリジン1と略記する)等のピリジン系色素、ローダミンB、ローダミン6G、ローダミン3B、ローダミン101、ローダミン110、スルホローダミン、ベーシックバイオレット11、ベーシックレッド2等のローダミン系色素、他にオキサジン系(いずれも特開平9−279394号公報に記載)等を挙げることができる。
【0082】
第2光変換層13Gの材料は、例えば、2、3、5、6−1H、4H−テトラヒドロ−8−トリフルオロメチルキノリジノ(9、9a、1−gh)クマリン(以下クマリン153)、3−(2’−ベンゾチアゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン(以下クマリン6)、3−(2’−ベンズイミダゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン(以下クマリン7)、3−(2’−N−メチルベンゾイミダゾリル)−7−ジエチルアミノ−クマリン(クマリン30)等のクマリン色素、あるいはクマリン色素系染料であるベーシックイエロー51、さらにはソルベントイエロー11、ソルベントイエロー116などのナフタルイミド系色素(いずれも特開平9−279394号公報に記載)等を挙げることができる。
【0083】
さらに、上記以外のものであっても、各種染料、例えば、直接染料、酸性染料、塩基性染料、分散染料等も蛍光性があれば使用可能である。また、二種以上を混合して用いてもよい。
【0084】
光変換層13は、上述に例示するような蛍光色素を蒸着あるいはスパッタリング法で製膜された膜、適当な樹脂を結着性樹脂としてその中に分散させた膜等いずれの形態であってもよい。光変換層13を主に蛍光色素から構成する場合は、所望の蛍光体層パターンのマスクを介して真空蒸着またはスパッタリング法で成膜する。一方、光変換層13を蛍光色素と樹脂から構成する場合は、蛍光色素と上記樹脂およびレジストを混合、分散または可溶化させ、スピンコート、ロールコート、キャスト法等の方法で製膜し、フォトリソグラフィー法で所望の蛍光体層パターンでパターニングしたり、スクリーン印刷等の方法で所望の蛍光体層パターンでパターニングすることができる。
【0085】
この場合、マトリクス樹脂としては、透明な(可視光50%以上)の材料が好ましく、種々の熱可塑性樹脂を用いることができる。マトリクス樹脂は、通常100℃、好ましくは150℃の加熱に対して分解もしくは変形を起こさないことが望ましい。具体的な材料として、たとえば、ポリメタクリル酸エステルなどのアクリル樹脂、アルキッド樹脂、芳香族炭化水素樹脂(ポリスチレンなど)、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレートなど)、ポリアミド樹脂(ナイロン類など)、ポリウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂およびこれらの樹脂混合物などを挙げることができる。
【0086】
光変換層13の膜厚は、第2青色有機発光層9の発光を十分に吸収し、蛍光を発生する機能を妨げるものでなければ制限はなく、10nm〜5mm程度が適当である。本実施の形態では、5μm以上30μm以下、より好ましくは7以上15μm以下とした。これにより、所望の強度の色変換された出力光を得ることが可能となる。
【0087】
光変換層13の膜厚を調整することで、有機発光層6から発光される光の透過強度が変化する。膜厚を薄くする有機発光層6からの光の透過量が増し、膜厚を厚くすると有機発光層6からの透過成分が少なくなり蛍光成分が増加する。透過成分と蛍光成分を合わせた光の輝度が最大となるよう、膜厚を適当に調整することが望ましい。
【0088】
(カラーフィルタ)
各色サブ画素に対応する位置、開口部2R、2G、2Bの上方に、赤色フィルタ14R、緑色フィルタ14G、青色フィルタ14Bが各々形成されている。カラーフィルタ14B、14G、14R(以後、14R、14G、14Bを区別しない場合は、「カラーフィルタ14」と略称する)は、R、G、Bに対応する波長の可視光を透過させるために設けられる透明層であり、各色サブ画素から出射された光を透過させて、その色度を矯正する機能を有する。カラーフィルタ14B、14G、14Rは、具体的には、例えば、複数の開口部をサブ画素単位に行列状に形成した隔壁が設けられたカラーフィルタ形成用のカバーガラス15に対し、カラーフィルタ材料および溶媒を含有したインクを塗布する工程により形成される。
【0089】
<表示装置の全体構成および外観>
図2は、本発明の実施の形態に係る表示装置1000の外観を例示する図である。
図3は、本発明の実施の形態に係る表示装置1000の機能ブロックを示す図である。表示装置1000は、有機EL表示パネル100と、これに電気的に接続された駆動制御部17とを備える。有機EL表示パネル100は、
図1に示す画素構造を有するものである。駆動制御部17は、各有機EL素子の陽極3と陰極11との間に電圧を印加する駆動回路18〜21と、駆動回路18〜21の動作を制御する制御回路22とからなる。
【0090】
<有機EL表示パネル100の製造方法>
有機EL表示パネル100の製造方法を
図4、
図5、
図6を参照しながら説明する。
図4、
図5、
図6は、実施の形態1に係る有機EL表示パネル100の製造方法を説明する図である。
【0091】
先ず、基板1を準備する(
図4(a))。
【0092】
次に、基板1上に陽極3を真空蒸着法又はスパッタ法等の乾式成膜プロセスによって厚み150nm程度の膜厚で形成する(
図4(b))。さらに、陽極3上に、蒸着法やスパッタ法等により酸化インジウムスズ(ITO)や酸化インジウム亜鉛(IZO)からなる透明導電層(不図示)を形成する(
図4(b))。このとき、透明導電層の膜厚を上述した範囲内に適宜調整する。
【0093】
次に、基板1上に、バンク2を形成する(
図4(c))。本実施の形態では、バンク2を構成する材料として、撥液剤を含む感光性樹脂材料を選択し、フォトリソグラフィー法を用いてバンク2を形成する。ここで感光性樹脂材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、フェノール系樹脂などから構成される公知のレジスト材料を用いることができる。
【0094】
具体的には、まず、基板1上に、例えばスピンコート法を用いて、バンク2の材料を塗布して成膜する。基板1上における、陽極3が露出するように規定される開口部2R、2G、2Bのパターンに合わせてマスクを配置して露光する。その後、非水系の現像液として、例えばアルカリ性の現像液を用いて膜をエッチングすることにより開口部2R、2G、3Bのパターンを形成する。その後、200℃〜250℃程度の温度、例えば200℃の温度にて熱処理を施すことにより、内部に含まれる溶媒などを蒸発させて、バンク2は完成する。
【0095】
次に、透明導電層上に、例えば、インクジェット法等の湿式成膜プロセスにより正孔注入層4を形成する(
図4(d))。さらに、正孔注入層4上に、例えば、インクジェット法等の湿式成膜プロセスにより正孔輸送層5を形成する(
図4(e))。ここで、上述のとおり、各開口部2R、2G、2Bにおける、正孔注入層4の膜厚は、互いに独立であり、各開口部2R、2G、2Bで異ならせてもよい。正孔輸送層5についても同様に各開口部2R、2G、2Bで膜厚を異ならせてもよい。また、各開口部2R、2G、2Bの一部又は全部において、正孔注入層4を設けない構成としてもよい。正孔輸送層5についても同様である。
【0096】
次に、正孔輸送層5上に、例えば、インクジェット法等の湿式成膜プロセスによりにより有機発光層6B、6G、6Rを形成する(
図4(f))。有機発光層6B、6G、6Rの膜厚は、例えば約50(nm)である。
【0097】
具体的には、有機発光層6B、6G、6Rを構成する機能材料と溶媒とを所定比率で混合し、機能層用インクを調整する。このインクを、インクジェット法を用いて、インクヘッドからインク液滴として、各開口部2R、2G、2Bの開口から滴下し、陽極3の露出した領域を被覆するようにインクを塗布する。そして、インクに含まれる溶媒を蒸発乾燥させ、必要に応じて加熱焼成することにより、有機発光層6B、6G、6Rが形成される。
【0098】
インク材料は、溶質として、ポリフェニレンビニレンおよびその誘導体、ポリアセチレンおよびその誘導体、ポリフェニレンおよびその誘導体、ポリパラフェニレンエチレンおよびその誘導体、ポリ3−ヘキシルチオフェンおよびその誘導体、ポリフルオレンおよびその誘導体などを挙げることができる。
【0099】
また、溶媒として、トルエン、キシレン、テトラリン、アニソールなどの芳香族系有機溶媒、ジオキサンなどのエーテル系溶媒、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒などを挙げることができる。
【0100】
有機発光層に利用される有機高分子材料としてはポリフルオレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリパラフェニレンエチレン、ポリ3−ヘキシルチオフェンやこれらの誘導体などの高分子材料や、オキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物及びアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8−ヒドロキシキノリン化合物の金属錯体、2−ビピリジン化合物の金属錯体、シッフ塩とIII族金属との錯体、オキシン金属錯体、希土類錯体等の蛍光物質を挙げることができる。
【0101】
上述のとおり、正孔注入層4、正孔輸送層5、有機発光層6の形成方法としては、印刷法、スピンコート法、インクジェット法などの湿式成膜プロセスを用いることができる。しかしながら、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、イオンプレーティング法、気相成長法等の乾式成膜プロセスも用いることもできる。低コスト化のためには、インクジェット法等の湿式成膜プロセスによりを形成することが好ましい。
【0102】
次に、真空条約法等の乾式成膜プロセスにより、有機発光層6B、6G、6Rを覆うように、各開口部2R、2G、2Bの上方にまたがって画素全体にわたるベタ膜として第1電子輸送層7を形成する(
図5(a))。
【0103】
次に、真空条約法等の乾式成膜プロセスにより、電子輸送層7R上に、各開口部2R、2G、2Bの上方にまたがって画素全体にわたるベタ膜として、電荷発生層8を形成する(
図5(b))。
【0104】
次に、真空条約法等の乾式成膜プロセスにより、電荷発生層8上に、各開口部2R、2G、2Bの上方にまたがって、画素全体にわたるベタ膜として、第2青色有機発光層9を形成する(
図5(c))。
【0105】
次に、真空条約法等の乾式成膜プロセスにより、第2青色有機発光層9上に、、各開口部2R、2G、2Bの上方にまたがって、画素全体にわたるベタ膜として、第2電子輸送層10を形成する(
図5(d))。
【0106】
このとき、第2電子輸送層10の膜厚は、第1電子輸送層7の膜厚よりも、厚いことが好ましく、例えば、第1電子輸送層7の膜厚を5〜30nm、第2電子輸送層10の膜厚を30〜50nmとすることが好ましい。第2電子輸送層10上に、陰極11をスパッタリング法等により形成する際に、第2電子輸送層10がスパッタされ、第2青色有機発光層9が損傷することを防止するためである。
【0107】
上述のとおり、第1電子輸送層7、電荷発生層8、第2青色有機発光層9、第2電子輸送層10の形成方法としては、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、イオンプレーティング法、気相成長法等の乾式成膜プロセスを用いることができ、より好ましくは、真空蒸着法を用いることができる。このように、画素領域全体に対して膜の蒸着を行うことで、シャドウマスク法を用いていたときにマスク開口を含むマスク全体に材料を付着させることにより生じていた材料損失を防止でき、蒸着材料を有効活用することができる。また、精密マスクの開口を青色サブ画素のバンクに高精度に位置合わせする必要ななく生産効率を向上できる。これにより、材料コストの低減と生産効率の向上に資することができる。
【0108】
次に、第2電子輸送層10上に、各開口部2R、2G、2Bの上方にまたがって、画素全体にわたるベタ膜として、陰極11を形成する(
図5(e))。
【0109】
陰極11は、例えばITOを、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法などで製膜することによって形成する。好ましくは、スパッタリング法により形成することができる。
【0110】
次に、陰極11上に樹脂封止層12を形成する(
図6(a))。樹脂封止層12の材料は、例えば、樹脂接着剤等である。
【0111】
次に、カバーガラス15に、カラーフィルタ14R、14G、14Bを形成する(
図6(b))。
【0112】
上述のとおり、カラーフィルタ14B、14G、14Rは、例えば、複数の開口部をサブ画素単位に行列状に形成した隔壁が設けられたカラーフィルタ形成用のカバーガラス15に対し、カラーフィルタ材料および溶媒を含有したインクを塗布した後加熱する工程により形成することができる。
【0113】
次に、カラーフィルタ14R、14G上に光変換層13R、13Gを形成する(
図6(c))。
【0114】
上述のとおり、光変換層13は、蛍光色素を蒸着あるいはスパッタリング法で製膜された膜、適当な樹脂を結着性樹脂としてその中に分散させた膜等で形成することができる。
【0115】
光変換層13R、13Gを主に蛍光色素から構成する場合は、所望の蛍光体層パターンのマスクを介して真空蒸着またはスパッタリング法で成膜する。
【0116】
一方、光変換層13R、13Gを蛍光色素と樹脂から構成する場合は、蛍光色素と上記樹脂およびレジストを混合、分散または可溶化させ、スピンコート、ロールコート、キャスト法等の方法で製膜し、フォトリソグラフィー法で所望の蛍光体層パターンでパターニングしたり、スクリーン印刷等の方法で所望の蛍光体層パターンでパターニングすることができる。
【0117】
次に、樹脂封止層12上に、カラーフィルタ14R、14G、14B、光変換層13R、13Gを形成したカバーガラス15を貼り合わせる(
図6(d))。この際、樹脂封止層12が硬化させてカバーガラス15と基板1とを接着する。
【0118】
<有機EL表示パネル100の動作について>
有機EL表示パネル100の動作を図面を参照しながら説明する。
図7は、実施の形態1に係る有機EL表示パネル100における有機発光層6、及び第2青色有機発光層9のエネルギー状態を示す概略図である。
【0119】
図7に示すように、陽極3と陰極11の間に電圧を付勢した状態において、陽極3から有機発光層6の最高被占軌道(HOMO)にホールが供給される。陰極11から第2青色有機発光層9の最低空軌道(LUMO)に電子が供給される。
【0120】
上述のとおり、電荷発生層8は、電子受容性物質と電子供与性物質の積層体又は混合体からなり、この界面又は境界において、電子受容性物質と電子供与性物質間での電子移動を伴う反応により発生した電荷が、電圧印加時に陰極11方向と陽極3方向へ移動する。これにより、電荷発生層8に対し陰極11側に位置する第2青色有機発光層9のHOMOに対しホールを供給し、電荷発生層8に対し陽極3側に位置する有機発光層6のLUMOに対し第1電子輸送層7を介して電子を供給する。
【0121】
そして、有機発光層6に対し陽極3側から供給されたホールと電荷発生層8から供給された電子とが、有機発光層6内で再結合し励起状態を生成して発光する。また、第2青色有機発光層9に対し電荷発生層8側から供給されたホールと陰極11側から供給された電子とが、第2青色有機発光層9内で再結合し励起状態を生成して発光する。その結果、有機発光層6及び第2青色有機発光層9からなる複数の有機発光層で、電子とホールの再結合が生じ複数の発光が電極間で発生する。これにより、同じ電流にて有機発光層6及び第2青色有機発光層9の両方の発光層を発光させることができるので、表示パネルとしての発光効率を向上させることができる。
【0122】
図8は、実施の形態1に係る有機EL表示パネル100の表示機能を模式的に示す断面図である。
図8に示すように、赤色サブ画素では、開口部2R内にある有機発光層6Rから発された赤色光と、第2青色有機発光層9の赤色サブ画素内にある部分から発された青色光が、カバーガラス15上の光変換層13Rに向けて出射される。このうち、光変換層13Rに向けて出射された青色光は、光変換層13Rの波長変換部材によって赤色光に波長変換される。このときの変換効率は、材料に基づき変動するが、概ね30〜90%である。そして、変換された光と、有機発光層6Rから光変換層13Rに向けて出射された赤色光とが加算されて、赤色フィルタ14Rにて赤色以外の色成分が吸収され色純度を増した赤色光として、カバーガラス15の上方に出射される。
【0123】
同様に、緑色サブ画素では、開口部2G内にある有機発光層6Gから発された緑色光と、第2青色有機発光層9の緑色サブ画素内にある部分から発された青色光が、カバーガラス15上の光変換層13Gに向けて出射される。このうち、青色光は光変換層13Gの波長変換部材によって緑色光には波長変換される。このときの変換効率も、概ね30〜90%である。そして、変換された光と、有機発光層6Gから光変換層13Rに向けて出射された緑色光とが加算されて、緑色フィルタ14Gにて緑色以外の色成分が吸収され色純度を増した緑色光として、カバーガラス15の上方に出射される。
【0124】
また、青色サブ画素では、開口部2B内にある有機発光層6Bから発された青色光と、第2青色有機発光層9の青色サブ画素内にある部分から発された青色光が、カバーガラス15上の青色フィルタ14Bに向けて出射される。そして、青色フィルタ14Bに向けて出射された青色光は、青色フィルタ14Bにて青色以外の色成分が吸収され色純度を増した青色光として、カバーガラス15の上方に出射される。
【0125】
以上説明したように、本実施の形態に係る表示パネル100では、各々赤色サブ画素、及び緑色サブ画素にある第2青色発光層の部分から出射された青色光を、各々赤色光及び緑色光に変換して表示パネル100の出力として出射することができる。これにより、赤色画素領域、及び緑色画素領域についても発光輝度の向上することができる。その結果、電流に対する表示パネルとしての輝度の大きさである電流効率を増加し、発光効率が向上する。
【0126】
<効果>
以上説明したように、本実施の形態に係る表示パネル100は、赤色サブ画素、緑色サブ画素、及び青色サブ画素を含む画素を複数有する有機EL表示パネル100であって、以下の構成を有する。すなわち、基板1と、基板1上に、各色サブ画素の領域を区画する隔壁2と、基板1上の赤色サブ画素領域内に、基板1側から順に、第1画素電極3、赤色有機発光層6Rとを有する。基板1上の緑色サブ画素領域内に、基板1側から順に、第2画素電極3、緑色有機発光層6Gとを有する。基板1上の青色サブ画素領域内に、基板1側から順に、第3画素電極3、第1青色有機発光層6Gとを有する。赤色有機発光層6R、緑色有機発光層6G、及び第1青色有機発光層上6Bに、電荷発生層8を有する。電荷発生層8上の各色サブ画素領域内に、第2青色有機発光層9を有する。第2青色有機発光層9上の各色サブ画素領域内に第1、第2、及び第3の画素電極の対向電極11を有する。第2青色有機発光層9上の赤色サブ画素領域内に、当該サブ画素領域内にある第2青色有機発光層9が発した青色光を赤色光に変換する第1光変換層13Rを有する。第2青色有機発光層9上の緑色サブ画素領域内に、当該サブ画素領域内にある第2青色有機発光層9が発した青色光を緑色光に変換する第2光変換層13Gを有することを特徴とする。
【0127】
この構成により、各々赤色サブ画素、及び緑色サブ画素にある第2青色発光層の部分から出射された青色光を、各々赤色光及び緑色光に変換して表示パネル100の出力として出射することができる。これにより、赤色画素領域、及び緑色画素領域についても発光輝度の向上が図れ、発光効率が向上することができる。
【0128】
また、電荷発生層、第2青色有機発光層、陰極について、R、G、Bサブ画素を含む画素領域全体に対して膜の蒸着を行う構成としたことで以下の効果を有する。すなわち、シャドウマスク法を用いていたときにマスク開口を含むマスク全体に材料を付着させることにより生じていた材料損失を防止でき、蒸着材料を有効活用することができる。また、精密マスクの開口を青色サブ画素のバンクに高精度に位置合わせする必要がなく生産効率を向上できる。これにより、材料コストの低減と生産効率の向上することができる。
【0129】
<変形例1>
以上、実施の形態1に係る表示パネル100について説明したが、例示した表示パネル100を以下のように変形することも可能であり、本発明が上述の実施の形態で示した通りの表示パネル100に限られないことは勿論である。
【0130】
上記した実施の形態に係る表示パネル100では、各々赤色サブ画素、及び緑色サブ画素にある第2青色発光層の部分から出射された青色光を、各々赤色光及び緑色光に変換する光変換層を備えた構成とした。しかしながら、赤色サブ画素、及び緑色サブ画素にある第2青色発光層の部分からも光を取り出して表示パネルの出力として出射する構成であれば良く、下記のとおり変形可能である。
【0131】
図9は、変形例1に係る有機EL表示パネル100Aの画素構造を模式的に示す断面図である。
図9に示すように、有機EL表示パネル100A(以後、「表示パネル100A」と略称する)は有機EL表示パネル100から、光変換層13R及び光変換層13Gを除いた構成を採る。
【0132】
この構成により、赤色サブ画素にある第2青色発光層の部分から出射された青色は、赤色フィルタ14Rにて赤色以外の色成分が吸収され残余の赤色光のみが、有機発光層6Rから出射された赤色光と加算されて、表示パネル100Aの出力として外部に出射される。このときの青色光の透過率は、例えば、概ね0〜5%であってもよい。同様に、緑色サブ画素にある第2青色発光層の部分から出射された青色は、緑色フィルタ14Gにて緑色以外の色成分が吸収され残余の緑色光のみが、有機発光層6Gから出射された緑色光と加算されて、表示パネル100Aの出力として外部に出射される。このときの青色光の透過率は、例えば、概ね0〜5%であってもよい。
【0133】
これにより、各々赤色サブ画素、及び緑色サブ画素にある第2青色発光層の部分から出射された青色光の一部を、表示パネル100Aの出力として出射することができ、発光効率を向上させることができる。
【0134】
<変形例2>
また、有機EL表示パネル100の構成において、対向電極11上の青色サブ画素領域内に、当該サブ画素領域内にある第2青色有機発光層9及び第1青色有機発光層6Bの少なくとも何れか一方の発する青色光を当該青色光とは異なる発光スペクトルを持つ青色光に変換する第3光変換層13Bを備えた構成としてもよい。
【0135】
図10は、変形例2に係る有機EL表示パネル100Bの画素構造を模式的に示す断面図である。有機EL表示パネル100Bでは、第3光変換層13Bは、第2青色有機発光層9上の青色サブ画素領域内、開口部2Bの上方にあり、このサブ画素領域内にある第2青色有機発光層9が発した青色光又は第1青色有機発光層6Bが発した青色光の少なくとも何れか一方を異なる発光スペクトルを持つ青色光に変換する機能を有する。係る構成により、第3光変換層13Bから出射された青色光は、より一層色純度を増した青色光として、カバーガラス115の上方に出射される。
【0136】
≪実施の形態2≫
次に、実施の形態2に係る有機EL表示パネル200(以後、「表示パネル200」と略称する)について説明する。表示パネル200は、表示パネル100において、R、G、B各色のサブ画素から構成されている各画素に対し、各画素が濃青色も発色する濃青色サブ画素を含む点て相違する。表示パネル200は、R、G、B各色のサブ画素については、表示パネル100と同様であり説明を省略する。
【0137】
図11は、実施の形態2に係る有機EL表示パネル200の画素構造を模式的に示す断面図である。
図12、
図13、
図14は、実施の形態2に係る有機EL表示パネル200の製造方法を説明する図である。
【0138】
図11、
図12において、基板101は、バンク102、陽極103、正孔注入層104、正孔輸送層105、有機発光層106R、106G、106B、第1電子輸送層107、電荷発生層108、第2青色有機発光層109、第2電子輸送層110、陰極111、樹脂封止層112、光変換層113R、113G、赤色フィルタ114R、緑色フィルタ114G、カバーガラス115の材質、製造方法、R、G、B各色サブ画素に存する部分の構造、寸法等については、表示パネル100における構成と同じであり説明を省略する。
【0139】
表示パネル200では、基板101上には、陽極103が互いに間隔を開けて形成されている。基板101および陽極103の上には、R、G、B各色サブ画素に対応する位置に複数の開口部102R、102G、102B、2DBが形成されたバンク102が設けられている。このうち、開口部102R、102G内部とその上方の構成は、表示パネル100と同じである。102B開口部の内部には、正孔注入層104、有機発光層106Bが形成されている。開口部102DBの内部には、正孔注入層104が形成され、有機発光層は形成されていない。開口部102R、102G、102B、102DBに各々形成された有機発光層106R、106G、106B(以後、106R、106G、106B、を区別しない場合には「有機発光層106」と略称する)、陽極103を覆うように、各開口部102R、102G、102B、102DBにまたがるように、第1電子輸送層7、電荷発生層8、第2青色有機発光層9、第2電子輸送層10、陰極11、樹脂封止層12が、順次、画素全体にわたるベタ膜として形成されている。そして、濃青色サブ画素を規定する開口部102DBの上方には、青色サブ画素と濃青色サブ画素とをまたがる状態で青色フィルタ114Bが形成されている。
【0140】
この構成により、濃青色サブ画素では、開口部102DB内にある第2青色有機発光層109の濃青色サブ画素内にある部分から発された青色光が、カバーガラス115上の青色フィルタ114Bに向けて出射される。そして、青色フィルタ114Bに向けて出射された青色光は、青色フィルタ114Bにて青色以外の色成分が吸収され色純度を増した青色光として、カバーガラス115の上方に出射される。
【0141】
第2青色有機発光層109より発される光は、有機発光層106Bから発される光よりも、色純度が高い。そのため、濃青色サブ画素では、青色フィルタ114Bに向けて出射される光はもとより色純度が高く、その結果、濃青色サブ画素から外部へ出射される青色光も色純度が高い。これにより、表示パネル200では、青色サブ画素と濃青色画素とから出射される青色光を合成することにより、実施の形態1に係る表示パネル100の効果に加えて、表示パネル全体として出射される青色光の色純度を向上することができる。
濃青色サブ画素と、それよりも発光効率の高い青色サブ画素とを制御して画像表示させることで表示パネルの消費電力を抑制することが可能となる。例えば、濃い青色が必要でない画像を出力するときは発光効率の高い青色サブ画素のみを発光させて画像表示することができる。
<変形例3>
実施の形態2に係る表示パネル200では、濃青色サブ画素を規定する開口部102DBの上方には、青色サブ画素と濃青色サブ画素とをまたがる状態で青色フィルタ114Bが形成されている構成とした。しかしながら、例示した表示パネル200において、そして、青色サブ画素を規定する開口部102B又は濃青色サブ画素を規定する開口部102DBの何れか一方の上方にのみ青色フィルタ114Bを設け、それを除く開口部102B及び開口部102DBの上方には青色フィルタ114Bを設けない構成としてもよい。あるいは、開口部102B及び開口部102DBの上方には青色フィルタ114Bを設けない構成としてもよい。これにより、青色サブ画素及び濃青色サブ画素上方に青色フィルタ114Bを設けた場合に比べて青色サブ画素の発光効率を向上できる。その結果、濃青色サブ画素と、青色サブ画素とを制御して画像表示させることで表示パネルの消費電力をさらに抑制することが可能となる。
【0142】
<変形例4>
以上、実施の形態2に係る表示パネル200及び変形例3について説明したが、例示した表示パネル200及び変形例3を以下のように変形することも可能である。
図15は、変形例4に係る有機EL表示パネル200Aの画素構造を模式的に示す断面図である。
図15に示すように、有機EL表示パネル200A(以後、「表示パネル200A」と略称する)は有機EL表示パネル200から、光変換層113R及び光変換層113Gを除いた構成を採る。これにより、表示パネル100Aと同様に、実赤色サブ画素にある第2青色有機発光層109の部分から出射された青色は、赤色フィルタ114Rにて赤色以外の色成分が吸収され残余の赤色光のみが、有機発光層106Rから出射された赤色光と加算されて外部に出射される。同様に、緑色サブ画素にある第2青色有機発光層109の部分から出射された青色は、緑色フィルタ114Gにて緑色以外の色成分が吸収され残余の緑色光のみが、有機発光層106Gから出射された緑色光と加算され外部に出射される。
【0143】
これにより、各々赤色サブ画素、及び緑色サブ画素にある第2青色発光層の部分から出射された青色光の一部を、表示パネル200Aの出力として出射でき発光効率を向上できる。
【0144】
<その他の変形例>
以上、実施の形態に係る表示パネルについて説明したが、例示した表示パネルを以下のように変形することも可能であり、本発明が上述の実施の形態で示した通りの表示パネルに限られないことは勿論である。
【0145】
(1)実施の形態1に係る表示パネル100、実施の形態2に係る表示パネル200、変形例3では、第1光変換層上の赤色サブ画素領域内に、当該サブ画素領域内にある第2青色有機発光層の発する青色光を遮る第1フィルタ部と、第2光変換層上の緑色サブ画素領域内に、当該サブ画素領域内にある第2青色有機発光層の発する青色光を遮る第2フィルタ部を備えた構成とした。
【0146】
しかしながら、表示パネル100、200又は変形例3の構成において、赤色サブ画素、及び緑色サブ画素にある第2青色発光層の部分からも光を取り出して表示パネルの出力として出射する構成であれば良く、第1フィルタ部、第2フィルタ部を設けない構成としてもよい。第1光変換層、第2光変換層の出射光の色純度を高めることにより、第1フィルタ部、第2フィルタ部を省略しても、表示パネルとしての出射光の色純度を確保することができる。
【0147】
(2)実施の形態1に係る表示パネル100、変形例1に係る表示パネル100A、変形例2に係る表示パネル100Bでは、各色サブ画素に対応する位置、開口部2R、2G、2Bの上方に、赤色フィルタ14R、緑色フィルタ14G、青色フィルタ14Bが各々形成されている構成とした。しかしながら、赤色サブ画素、及び緑色サブ画素にある第2青色発光層の部分から発される青色光を吸収して、各々色純度を増した赤色光、緑色光としてカバーガラス15の上方に出射される構成であれば良く、青色サブ画素領域には青色フィルタ14Bを設けない構成としてもよい。すなわち、表示パネ100、100A、100Bの構成において、各色サブ画素に対応する開口部2R、2Gの上方に、赤色フィルタ14R、緑色フィルタ14Gが各々形成され、開口部2Bの上方には青色フィルタ14Bが形成されていない構成としてもよい。係る構成においても、赤色画素領域、及び緑色画素領域について輝度向上を図り発光効率を向上するとともに、表示パネルとしての出射光の色純度を確保することができる。
【0148】
(3)実施の形態1、2に係る表示パネル100、200では、赤色有機発光層、緑色有機発光層、及び第1青色有機発光層と電荷発生層との間に、第1電子注入層と、電荷発生層と第2青色有機発光層との間の各色サブ画素領域内に、第2電子注入層とを備えた構成とした。
【0149】
しかしながら、必ずしも第2電子注入層、第1電子注入層を設ける必要はなく、R、G、Bの各色サブ画素の何れか又は全部において、第2電子注入層、第1電子注入層の何れか一方又は両方を設けない構成としてもよい。また、上記実施の形態1、2では、第2電子注入層、第1電子注入層から構成されているが、これに限られず、さらに電子注入層が含まれていてもよい。
【0150】
(4)実施の形態1、2に係る表示パネル100、200では、各開口部2R、2G、2Bにまたがるように、第1電子輸送層、電荷発生層、第2青色有機発光層、第2電子輸送層、陰極が、順次、画素全体にわたるベタ膜として形成されている構成とした。
【0151】
しかしながら、これらの膜は、全てが画素全体にわたるベタ膜として形成されている必要は必ずしもなく、これらの膜の一部又は全部について、赤色サブ画素領域、緑色サブ画素領域、及び青色サブ画素領域に分割されている構成としてもよい。
【0152】
この場合も、「第1電子輸送層」、「電荷発生層」、「第2青色有機発光層」、「第2電子輸送層」、および「陰極」は、R、G、B等各色サブ画素に分割して配置された複数の領域を総称したものをさす。
【0153】
(5)上記実施の形態1、2では、TFTが設けられた基板に近い側に陽極、遠い側に陰極が設けられていたが、逆に、TFTが設けられた基板に近い側に陰極、遠い側に陽極が設けられている場合も、同様に実施できる。
≪補足≫
以上で説明した実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、工程、工程の順序などは一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない工程については、より好ましい形態を構成する任意の構成要素として説明される。
【0154】
また、発明の理解の容易のため、上記各実施の形態で挙げた各図の構成要素の縮尺は実際のものと異なる場合がある。また本発明は上記各実施の形態の記載によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0155】
さらに、表示パネル、表示装置においては基板上に回路部品、リード線等の部材も存在するが、電気的配線、電気回路について当該技術分野における通常の知識に基づいて様々な態様を実施可能であり、本発明の説明として直接的には無関係のため、説明を省略している。尚、上記示した各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示したものではない。