(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6291719
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】開閉装置
(51)【国際特許分類】
H02B 13/035 20060101AFI20180305BHJP
H01H 33/64 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
H02B13/035 301H
H01H33/64 A
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-89325(P2013-89325)
(22)【出願日】2013年4月22日
(65)【公開番号】特開2014-212677(P2014-212677A)
(43)【公開日】2014年11月13日
【審査請求日】2016年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】太田 剛史
【審査官】
澤崎 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭50−100069(JP,U)
【文献】
特開昭55−093620(JP,A)
【文献】
特開平02−046113(JP,A)
【文献】
特開平09−129096(JP,A)
【文献】
特開昭60−101824(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/063501(WO,A1)
【文献】
国際公開第2005/062325(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 13/035
H01H 31/32
H01H 33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の可動側電極と固定側電極と所定間隔を以て配置し、前記可動側電極内に接触状態にて配置される可動コンタクトの先端部が前記固定側電極に対しても接触する閉極位置まで動作する閉極状態と、前記可動コンタクトが前記固定側電極から離間して非接触となる開極位置まで動作する開極状態との間で切り替わる開閉部を備え、該開閉部前後の電路開閉を行う開閉装置であって、
前記開閉部には、前記可動側電極の前記固定側電極との反対側に筒状の樹脂シールドが備えられ、前記可動コンタクトが前記閉極位置に配置された場合には、前記固定側電極側に突出しない前記可動コンタクトの基端側が前記可動側電極による囲繞状態となり、前記可動コンタクトが前記開極位置に配置された場合には、前記固定側電極からの離間に伴う前記可動コンタクトの基端側が前記可動側電極における前記固定側電極とは反対側から突出しその基端側の突出部分が前記樹脂シールドによる囲繞状態となるように構成されており、
前記開閉部には、前記可動側電極における前記固定側電極とは反対側に前記樹脂シールドを挿通する態様で配置される絶縁操作棒が備えられ、該絶縁操作棒との連結により前記可動コンタクトが外部から動作されるものであり、
前記樹脂シールドと前記絶縁操作棒との間の径方向の隙間は、前記可動側電極と前記絶縁操作棒との間のそれよりも大きく設定されたことを特徴とする開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力系統等における電路の開閉を行う開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
遮断器や断路器、接地開閉器等、高電圧電路の開閉を行う開閉部を備えた開閉装置としては、例えば特許文献1や特許文献2に開示のガス絶縁開閉装置等が知られている。この開閉装置では、絶縁ガスが充填された密閉容器内に開閉部として可動側電極と固定側電極とが備えられ、可動側電極と常に接触しながら可動コンタクトが固定側電極と接離することで、開閉部での電路開閉が行われるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−299039号公報
【特許文献2】特許第3860553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の開閉装置においては、所定箇所に対して電界緩和対策を適切に講じることで絶縁性能が向上し、このことは開閉装置の小型化に繋がるため、適切に電界緩和対策を講じることの検討がなされている。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、適切な電界緩和対策を講じて、装置の小型化を図ることができる開閉装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する開閉装置は、筒状の可動側電極と固定側電極と所定間隔を以て配置し、前記可動側電極内に接触状態にて配置される可動コンタクトの先端部が前記固定側電極に対しても接触する閉極位置まで動作する閉極状態と、前記可動コンタクトが前記固定側電極から離間して非接触となる開極位置まで動作する開極状態との間で切り替わる開閉部を備え、該開閉部前後の電路開閉を行う開閉装置であって、前記開閉部には、前記可動側電極の前記固定側電極との反対側に筒状の樹脂シールドが備えられ、前記可動コンタクトが前記閉極位置に配置された場合には、前記固定側電極側に突出しない前記可動コンタクトの基端側が前記可動側電極による囲繞状態となり、前記可動コンタクトが前記開極位置に配置された場合には、前記固定側電極からの離間に伴う前記可動コンタクトの基端側が前記可動側電極における前記固定側電極とは反対側から突出しその基端側の突出部分が前記樹脂シールドによる囲繞状態となるように構成されており、前記開閉部には、前記可動側電極における前記固定側電極とは反対側に前記樹脂シールドを挿通する態様で配置される絶縁操作棒が備えられ、該絶縁操作棒との連結により前記可動コンタクトが外部から動作されるものであり、前記樹脂シールドと前記絶縁操作棒との間の径方向の隙間は、前記可動側電極と前記絶縁操作棒との間のそれよりも大きく設定される。
【0007】
この構成によれば、可動コンタクトが閉極位置に配置されると、固定側電極側に突出しない可動コンタクトの基端側が金属シールドとしても機能する可動側電極により囲繞状態となる。これに対し、可動コンタクトが開極位置に配置されると、固定側電極からの離間に伴う可動コンタクトの基端側が可動側電極における固定側電極とは反対側から突出するが、その基端側の突出部分が樹脂シールドにより囲繞状態となる。これにより、可動コンタクトがいずれの位置に配置されても、各シールド部材により適切に可動コンタクトに係る電界の緩和が可能となり、開閉部(開閉装置)の絶縁性能が向上する。つまり、開閉装置の小型化が期待できる。
また、上記樹脂シールドと絶縁操作棒との間の径方向の隙間が可動側電極と絶縁操作棒との間のそれよりも大きく設定される開閉装置の構成によれば、樹脂シールドと絶縁操作棒との間の径方向の隙間が十分に大きく設定されることから、高い電界緩和効果が得られ、装置の更なる小型化が期待できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の開閉装置によれば、適切な電界緩和対策を講じて、装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施形態における開閉装置(開閉部)の端面図であり、(a)は閉極状態を示す図、(b)は開極状態を示す図である。
【
図2】別例における開閉装置(開閉部)の端面図であり、(a)は閉極状態を示す図、(b)は開極状態を示す図である。
【
図3】別例における開閉装置(開閉部)の端面図であり、(a)は閉極状態を示す図、(b)は開極状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、開閉装置の一実施形態について説明する。
図1(a)(b)に示すように、開閉装置として例えばガス絶縁開閉装置の密閉容器内に、遮断器や断路器、接地開閉器等、高電圧電路の開閉を行う開閉部11が備えられている。開閉部11は、電路の一方と他方とのそれぞれに接続される固定側電極12と可動側電極13とを備え、互いの先端部同士が所定間隔を以て密閉容器内に支持されている。
【0016】
固定側電極12は、金属導体にて円筒状に形成されており、先端寄りの内側面に接触部12aが形成されている。可動側電極13は、同じく金属導体にて固定側電極12と同径の円筒状をなし、先端寄りの内側面に接触部13aが形成されるとともに、その固定側電極12と同軸上に配置されている。可動側電極13の内側には、円柱棒状の可動コンタクト14が配置されている。
【0017】
可動コンタクト14は、金属導体であり、円柱棒状のコンタクト本体14aとその基端部から突出する連結部14bとを有している。連結部14bは絶縁操作棒15の一端に固定され、該操作棒15の他端には駆動機構の駆動部材16が固定されている。この絶縁操作棒15は、課電される可動コンタクト14側と接地電位の駆動部材16側との絶縁を図りつつ、駆動部材16の動作を可動コンタクト14側に伝達するものである。因みに、絶縁操作棒15は、コンタクト本体14aと同径にて構成されており、可動側電極13の内側面との隙間がコンタクト本体14aと同等としている。
【0018】
そして、可動コンタクト14は、駆動機構による駆動部材16の動作にて絶縁操作棒15を介して軸方向に直線動作し、固定側電極12の先端部内にその先端部が押し込まれる
図1(a)の押込位置と、固定側電極12から離間して可動側電極13の先端部内まで引き出される
図1(b)の引出位置との間で往復動する。またその際、可動コンタクト14(コンタクト本体14a)は、可動側電極13の接触部13aと常に接触状態となっており、先の押込位置においては固定側電極12の接触部12aに対しても接触状態となる。つまり、可動コンタクト14が押込位置に配置されることで開閉部11が閉極状態となってその前後の電路を接続し、可動コンタクト14が引出位置に配置されることで開閉部11が開極状態となってその前後の電路を断絶するようになっている。
【0019】
また、可動コンタクト14が
図1(a)の押込位置に配置される開閉部11の閉極状態では、可動コンタクト14の基端部の連結部14bまでもが可動側電極13内に収容された状態となっている。つまり、この閉極状態においては、可動側電極13が電界シールドとして機能し、押込位置における可動コンタクト14に係る電界緩和がなされる。
【0020】
これに対し、可動コンタクト14が
図1(b)の引出位置に配置される開閉部11の開極状態では、可動コンタクト14の基端側1/4程度の部分、即ち連結部14b及びコンタクト本体14aの基端の一部が可動側電極13の基端部から突出する。本形態では、その突出する可動コンタクト14の基端部分の周囲を囲繞するような円筒状の樹脂シールド17が可動側電極13の基端側開口縁に備えられている。つまり、この開極状態においては、可動側電極13とともに樹脂シールド17が電界シールドとして機能し、引出位置における可動コンタクト14に係る電界緩和がなされる。
【0021】
樹脂シールド17の詳細構成について、樹脂シールド17は、円筒状をなして可動側電極13等と同軸上に配置され、電極13の基端側開口縁に一体成形又は後付け固着されている。樹脂シールド17の軸方向の延設端部は、
図1(b)の引出位置での可動コンタクト14の基端(連結部14bの先端)と略同じ位置に設定されており、同位置において可動コンタクト14が樹脂シールド17から軸方向に突出しないようになっている。
【0022】
また、樹脂シールド17は、可動側電極13の厚さ(径方向長さ)の略1/2程度の厚さをなし、可動側電極13の外側面と面一である一方、内側面は可動側電極13の内側面よりも径方向外側に位置している。つまり、樹脂シールド17と絶縁操作棒15との間の径方向の隙間18を大きく設定することで、電界緩和効果の向上が図られている。更に、樹脂シールド17の誘電率については絶縁操作棒15の誘電率と同じか、それよりも大きく設定するのが電界緩和の観点で好ましい。
【0023】
次に、本実施形態の特徴的な効果を記載する。
(1)可動コンタクト14が
図1(a)の押込位置(閉極位置)に配置されると、固定側電極12側に突出しない可動コンタクト14の基端側が金属シールドとしても機能する可動側電極13により囲繞状態となる。これに対し、可動コンタクト14が
図1(b)の引出位置(開極位置)に配置されると、固定側電極12からの離間に伴う可動コンタクト14の基端側が可動側電極13における固定側電極12とは反対側から突出するが、その基端側の突出部分が樹脂シールド17により囲繞状態となる。これにより、可動コンタクト14がいずれの位置に配置されても、電界シールドとして機能する可動側電極13や樹脂シールド17といった各シールド部材により適切に可動コンタクト14に係る電界の緩和が可能となり、開閉部11の絶縁性能の向上、ひいては開閉装置の小型化に貢献できる。
【0024】
(2)樹脂シールド17は可動コンタクト14を動作させる絶縁操作棒15の誘電率と同じか、それよりも大きい誘電率を以て構成されるため、高い電界緩和効果を得ることができ、装置の更なる小型化に貢献できる。
【0025】
(3)樹脂シールド17と絶縁操作棒15との間の径方向の隙間18が十分に大きく設定されることから、高い電界緩和効果を得ることができ、装置の更なる小型化に貢献できる。
【0026】
尚、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
・樹脂シールド17の形状について適宜変更してもよい。上記実施形態では、樹脂シールド17の外側面を可動側電極13の外側面と面一に構成したが、変更してもよい。
【0027】
例えば
図2(a)(b)に示すように、可動側電極13の外側面から外側に膨出する膨出形状をなす樹脂シールド17aを用いてもよい。このようにすれば、樹脂シールド17aの外側面での沿面距離を稼ぐことができ、沿面絶縁破壊の発生の抑制が期待できる。
【0028】
・上記実施形態では、可動コンタクト14の連結部14bが埋設等により絶縁操作棒15の一端に固定され、絶縁操作棒15の他端には駆動部材16が同じく埋設等により固定されていた。つまり、可動コンタクト14の直線往復動に対して、絶縁操作棒15及び駆動部材16も直線往復動を想定しての連結構造である。連結構造はこれに限らず、適宜変更してもよい。
【0029】
例えば
図3(a)(b)に示すように、可動コンタクト14の連結部14cと絶縁操作棒15aの一端とを連結ピン19にて連結し、絶縁操作棒15aの他端と駆動部材16aとを連結ピン19にて連結するようにしてもよい。この連結構造にて直線往復動させてもよく、また連結ピン19にて相互間を相対回動可能とすれば、駆動部材16a側の回動運動を可動コンタクト14の直線往復動に変換することもできる。
【0030】
・上記実施形態では、開閉部11を備える開閉装置として例えばガス絶縁開閉装置に適用したが、その他の開閉装置に適用してもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想を以下に追記する。
【0031】
(イ) 請求項
1に記載の開閉装置は、ガス絶縁開閉装置であることを特徴とする開閉装置。
【符号の説明】
【0032】
11…開閉部、12…固定側電極、13…可動側電極、14…可動コンタクト、15,15a…絶縁操作棒、17,17a…樹脂シールド、18…隙間。