【実施例】
【0040】
以下、本発明の実施形態に係る微生物の検査方法の有効性を確認するために行った試験について、具体的に説明する。
【0041】
[本実施形態の微生物の検査方法による優勢種の判定]
(a)微生物培養工程
まず、施設環境から野生カビを採取し、これを検出対象カビとして使用した。具体的には、エアーサンプラーを用いて各種施設環境内の空気を採取し、これをサンプルA〜Jの各培地に吹き付けて培養した。培養は、25℃の暗所で、7日間静置させて行った。A〜Jの各培地には、いずれもM40Y培地を使用した。
【0042】
(b)核酸抽出工程
次に、サンプルごとに、培地に生じた様々な種類のカビの各コロニーの一部を、最大で5コロニー以下のグループ(集合)になるように、全てのコロニーを各グループに分けて、それぞれのカビをグループ毎に一括して採取した。
具体的には、
図4に示すように、サンプルAには29コロニーが生じていた。このため、サンプルAにおけるグループは、5コロニーのグループが5個、4コロニーのグループが1個の合計6個(全集合数は6)とした。
また、同図に示すように、サンプルBには22コロニーが生じていた。このため、サンプルBにおけるグループは、5コロニーのグループが2個、4コロニーのグループが3個の合計5個(全集合数は5)とした。
また、同図に示すように、サンプルCには21コロニーが生じていた。このため、サンプルCにおけるグループは、5コロニーのグループが3個、4コロニーのグループが1個、2コロニーのグループが1個の合計5個(全集合数は5)とした。
【0043】
さらに、
図5に示すように、サンプルDには20コロニーが生じていた。このため、サンプルDにおけるグループは、5コロニーのグループが4個の合計4個(全集合数は4)とした。
また、同図に示すように、サンプルEには19コロニーが生じていた。このため、サンプルEにおけるグループは、5コロニーのグループが3個、4コロニーのグループが1個の合計4個(全集合数は4)とした。
また、同図に示すように、サンプルFには18コロニーが生じていた。このため、サンプルFにおけるグループは、5コロニーのグループが3個、3コロニーのグループが1個の合計4個(全集合数は4)とした。
【0044】
さらに、
図6に示すように、サンプルGには9コロニーが生じていた。このため、サンプルGにおけるグループは、5コロニーのグループが1個、4コロニーのグループが1個の合計2個(全集合数は2)とした。
また、同図に示すように、サンプルHには6コロニーが生じていた。このため、サンプルHにおけるグループは、5コロニーのグループが1個、1コロニーのグループが1個の合計2個(全集合数は2)とした。
また、同図に示すように、サンプルIには3コロニーが生じていた。このため、サンプルIにおけるグループは、3コロニーのグループが1個の合計1個(全集合数は1)とした。
また、同図に示すように、サンプルJには3コロニーが生じていた。このため、サンプルJにおけるグループは、3コロニーのグループが1個の合計1個(全集合数は1)とした。
【0045】
それぞれのグループのコロニーを、φ0.5mmジルコニアビーズを入れたバイアル瓶に入れ、液体窒素に浸して試料を凍結した後、振盪装置を用いて、コロニーにおけるカビの細胞を破砕した。そして、グループ毎に、DNA抽出装置によりカビのゲノムDNAを抽出した。
【0046】
(c)核酸増幅工程
次いで、PCR法により、各カビのITS領域とβ−チューブリン遺伝子とを同時に増幅した。
このとき、ITS領域増幅用プライマーセットとして、
図1に示す配列番号1の塩基配列からなるフォワードプライマー(Fプライマー)及び配列番号2の塩基配列からなるリバースプライマー(Rプライマー)を用いた。また、β−チューブリン遺伝子増幅用プライマーセットとして、同図に示す配列番号3の塩基配列からなるフォワードプライマー及び配列番号4の塩基配列からなるリバースプライマーを用いた。なお、いずれもオペロンテクノロジー株式会社により合成したものを使用した。
【0047】
また、PCR用反応液として、サンプルA〜Jのそれぞれについて、Ampdirect(R)(株式会社島津製作所製)を使用し、次の組成のものを20μl作成した。
1.Ampdirect(G/Crich) 4.0μl
2.Ampdirect(addition-4) 4.0μl
3.dNTPmix 1.0μl
4.Cy-5dCTP 0.2μl
5.ITS1-Fw primer(2.5μM)(配列番号1) 1.0μl
6.ITS1-Rv primer(2.5μM)(配列番号2) 1.0μl
7.BtF primer(10μM)(配列番号3) 1.0μl
8.BtR primer(10μM)(配列番号4) 1.0μl
9.Template DNA(サンプルA〜J毎にそれぞれ) 1.0μl
10.NovaTaq HotStart DNA polymerase 0.2μl
11.水(全体が20.0μlになるまで加水)
【0048】
上記各PCR用反応液を使用して核酸増幅装置(TaKaRa PCR Thermal Cycler Dice(R) Gradient タカラバイオ株式会社製)により、次の条件でDNAの増幅を行った。
(a)95℃ 10分
(b)95℃ 30秒
(c)56℃ 30秒
(d)72℃ 60秒((b)〜(d)を40サイクル)
(e)72℃ 10分
【0049】
(d)微生物検出工程
DNAチップには、ジーンシリコン(R)(東洋鋼鈑株式会社製)を用い、
図2に示される、以下の全てのプローブを固定化したものを使用した。以下において、(ITS)はITS領域から選択されたプローブを示し、(β)はβチューブリン遺伝子から選択されたプローブを示している。
(1)ユーロチウム属菌用 配列番号5(ITS),配列番号6(β)
(2)アスペルギルス ペニシリオイデス菌用 配列番号7(ITS),配列番号8(β)
(3)アスペルギルス バージカラー菌用 配列番号9(ITS),配列番号10(β)
(4)ペニシリウム属菌用 配列番号11(ITS),配列番号12(β)
(5)フザリウム属菌用 配列番号13(ITS)
(6)クラドスポリウム属菌用 配列番号14(ITS)
【0050】
次に、サンプルA〜Jのそれぞれについて、PCR増幅産物に緩衝液(3×SSCクエン酸−生理食塩水+0.3%SDS)を混合して、94℃で5分間加温し、上記DNAチップに滴下した。
このDNAチップを45℃で1時間静置し、上記緩衝液を用いてハイブリダイズしなかったPCR産物をDNAチップから洗い流した。
【0051】
次いで、DNAチップを標識検出装置(GenePix4100A Molecular Devices社製)にかけて、各プローブにおける蛍光強度を測定し、S/N比値を算出した。
ここで、(1)ユーロチウム属菌、(2)アスペルギルス ペニシリオイデス菌、及び(3)アスペルギルス バージカラー菌については、ITS領域から選択されたプローブとβチューブリン遺伝子から選択されたプローブの両方のS/N比値が3以上を示した場合に陽性と判定した。
また、(4)ペニシリウム属菌については、ITS領域から選択されたプローブとβチューブリン遺伝子から選択されたプローブの少なくともいずれか一方のS/N比値が3以上を示した場合に陽性と判定した。
また、(5)フザリウム属菌、及び(6)クラドスポリウム属菌については、ITS領域から選択されたプローブのS/N比値が3以上を示した場合に陽性と判定した。
【0052】
(e)優勢種判定工程
その結果、
図4に示すように、サンプルAにおけるグループでは、クラドスポリウム属菌が5グループで検出され(陽性を示したチップ数5枚)、ペニシリウム属菌が1グループで検出された(陽性を示したチップ数1枚)。使用したチップ数は6枚である。
したがって、本実施形態の微生物の検査方法における優勢種の判定方法によれば、クラドスポリウム属菌の集合数の割合は、検出された集合数5÷全集合数6=83.3%であり、ペニシリウム属菌の集合数の割合は、検出された集合数1÷全集合数6=16.7%である。
よって、サンプルAの優勢種は、第一番目がクラドスポリウム属菌であり、第二番目がペニシリウム属菌であると判定される。
【0053】
同様に、サンプルBにおけるグループでは、クラドスポリウム属菌が5グループで検出され(陽性を示したチップ数5枚)、ペニシリウム属菌が2グループで検出された(陽性を示したチップ数2枚)。使用したチップ数は5枚である。
したがって、本実施形態の微生物の検査方法における優勢種の判定方法によれば、クラドスポリウム属菌の集合数の割合は、検出された集合数5÷全集合数5=100.0%であり、ペニシリウム属菌の集合数の割合は、検出された集合数2÷全集合数5=40.0%である。
よって、サンプルBの優勢種は、第一番目がクラドスポリウム属菌であり、第二番目がペニシリウム属菌であると判定される。
【0054】
同様に、サンプルCにおけるグループでは、クラドスポリウム属菌が5グループで検出され(陽性を示したチップ数5枚)、ペニシリウム属菌が1グループで検出された(陽性を示したチップ数1枚)。使用したチップ数は5枚である。
したがって、本実施形態の微生物の検査方法における優勢種の判定方法によれば、クラドスポリウム属菌の集合数の割合は、検出された集合数5÷全集合数5=100.0%であり、ペニシリウム属菌の集合数の割合は、検出された集合数1÷全集合数5=20.0%である。
よって、サンプルCの優勢種は、第一番目がクラドスポリウム属菌であり、第二番目がペニシリウム属菌であると判定される。
【0055】
同様に、サンプルDにおけるグループでは、クラドスポリウム属菌が4グループで検出され(陽性を示したチップ数4枚)、ペニシリウム属菌が2グループで検出され(陽性を示したチップ数2枚)、ユーロチウム属菌が2グループで検出された(陽性を示したチップ数2枚)。使用したチップ数は4枚である。
したがって、本実施形態の微生物の検査方法における優勢種の判定方法によれば、クラドスポリウム属菌の集合数の割合は、検出された集合数4÷全集合数4=100.0%であり、ペニシリウム属菌の集合数の割合は、検出された集合数2÷全集合数4=50.0%であり、ユーロチウム属菌の集合数の割合は、検出された集合数2÷全集合数4=50.0%である。
よって、サンプルDの優勢種は、第一番目がクラドスポリウム属菌であり、第二番目がペニシリウム属菌とユーロチウム属菌であると判定される。
【0056】
同様に、サンプルEにおけるグループでは、クラドスポリウム属菌が4グループで検出され(陽性を示したチップ数4枚)、ペニシリウム属菌が2グループで検出され(陽性を示したチップ数2枚)、フザリウム属菌が1グループで検出された(陽性を示したチップ数1枚)。使用したチップ数は4枚である。
したがって、本実施形態の微生物の検査方法における優勢種の判定方法によれば、クラドスポリウム属菌の集合数の割合は、検出された集合数4÷全集合数4=100.0%であり、ペニシリウム属菌の集合数の割合は、検出された集合数2÷全集合数4=50.0%であり、フザリウム属菌の集合数の割合は、検出された集合数1÷全集合数4=25.0%である。
よって、サンプルEの優勢種は、第一番目がクラドスポリウム属菌であり、第二番目がペニシリウム属菌であり、第三番目がフザリウム属菌であると判定される。
【0057】
同様に、サンプルFにおけるグループでは、アスペルギルス バージカラー菌が3グループで検出され(陽性を示したチップ数3枚)、クラドスポリウム属菌が2グループで検出され(陽性を示したチップ数2枚)、アスペルギルス ペニシリオイデス菌が2グループで検出された(陽性を示したチップ数2枚)。使用したチップ数は4枚である。
したがって、本実施形態の微生物の検査方法における優勢種の判定方法によれば、アスペルギルス バージカラー菌の集合数の割合は、検出された集合数3÷全集合数4=75.0%であり、クラドスポリウム属菌の集合数の割合は、検出された集合数2÷全集合数4=50.0%であり、アスペルギルス ペニシリオイデス菌の集合数の割合は、検出された集合数2÷全集合数4=50.0%である。
よって、サンプルFの優勢種は、第一番目がアスペルギルス バージカラー菌であり、第二番目がクラドスポリウム属菌とアスペルギルス ペニシリオイデス菌であると判定される。
【0058】
同様に、サンプルGにおけるグループでは、クラドスポリウム属菌が2グループで検出され(陽性を示したチップ数2枚)、ペニシリウム属菌が1グループで検出された(陽性を示したチップ数1枚)。使用したチップ数は2枚である。
したがって、本実施形態の微生物の検査方法における優勢種の判定方法によれば、クラドスポリウム属菌の集合数の割合は、検出された集合数2÷全集合数2=100.0%であり、ペニシリウム属菌の集合数の割合は、検出された集合数1÷全集合数2=50.0%である。
よって、サンプルGの優勢種は、第一番目がクラドスポリウム属菌であり、第二番目がペニシリウム属菌であると判定される。
【0059】
同様に、サンプルHにおけるグループでは、クラドスポリウム属菌が2グループで検出された(陽性を示したチップ数2枚)。使用したチップ数は2枚である。
したがって、本実施形態の微生物の検査方法における優勢種の判定方法によれば、クラドスポリウム属菌の集合数の割合は、検出された集合数2÷全集合数2=100.0%である。
よって、サンプルHの優勢種は、クラドスポリウム属菌であると判定される。
【0060】
同様に、サンプルIにおけるグループでは、クラドスポリウム属菌が1グループで検出された(陽性を示したチップ数1枚)。使用したチップ数は1枚である。
したがって、本実施形態の微生物の検査方法における優勢種の判定方法によれば、クラドスポリウム属菌の集合数の割合は、検出された集合数1÷全集合数1=100.0%である。
よって、サンプルIの優勢種は、クラドスポリウム属菌であると判定される。
【0061】
同様に、サンプルJにおけるグループでは、アスペルギルス ペニシリオイデス菌が1グループで検出され(陽性を示したチップ数1枚)、クラドスポリウム属菌が1グループで検出された(陽性を示したチップ数1枚)。使用したチップ数は1枚である。
したがって、本実施形態の微生物の検査方法における優勢種の判定方法によれば、アスペルギルス ペニシリオイデス菌の集合数の割合は、検出された集合数1÷全集合数1=100.0%であり、クラドスポリウム属菌の集合数の割合は、検出された集合数1÷全集合数1=100.0%である。
よって、サンプルJの優勢種は、アスペルギルス ペニシリオイデス菌とクラドスポリウム属菌であると判定される。
【0062】
[DNA配列解析による優勢種の確認]
上記サンプルA〜Jごとに、培地に生じた様々な種類のカビの各コロニーの一部を個別に採取し、それぞれ25℃の暗所で7〜10日間分離培養した。A〜Jの各培地には、いずれもM40Y培地を使用した。
そして、分離培養された各コロニーのカビをDNA配列解析に供して、その菌種を確認した。
【0063】
具体的には、プライマーセットとして配列番号15に示す塩基配列を有するフォワードプライマーと配列番号16に示す塩基配列を有するリバースプライマーを使用し、核酸合成酵素としてTAKARA ExTaqポリメラーゼを使用し、核酸増幅装置としてTaKaRa PCR Thermal Cycler(R)Gradient(タカラバイオ株式会社製)を使用して、その他の条件は上述のPCR条件と同様にして、各カビのゲノムにおけるITS1領域を増幅した。
そして、それぞれの増幅産物と、上記プライマーセット(シーケンス用プライマーセット)をタカラバイオ株式会社に委託して、DNAシーケンサーによりDNA配列解析を行い、それぞれの増幅産物に対応するカビの種類を確認した。その結果を、
図4〜6に示す。
【0064】
[試験結果]
サンプルAからは、DNA配列解析により、クラドスポリウム属菌とペニシリウム属菌の他に、Xylariales sp.、Diaporthe sp.、Pleosporales sp.、及びStereum hirsutumの4種類の微生物が検出された。これら4種類の微生物を検出するためのプローブは、本実施形態の微生物の検査方法において用いたDNAチップには固定化されておらず、これらは本試験において検査対象外の微生物となっている。
本実施形態の微生物の検査方法により判定されたサンプルAにおける優勢種は、第一番目がクラドスポリウム属菌、第二番目がペニシリウム属菌であった。
一方、DNA配列解析の結果、サンプルAにおけるコロニーのうち、実際の第一番目の優勢種は、Xylariales spであった。
しかしながら、これは本試験において検査対象外の微生物であり、検査対象としていたクラドスポリウム属菌とペニシリウム属菌は、それぞれ実際の第二番目、実際の第三番目の優勢種として検出されている。
したがって、この結果から、検査対象とする微生物内において、簡易な方法により、優勢種及びその優勢の順位を高い精度で判定できていることがわかる。
【0065】
サンプルBからは、DNA配列解析により、クラドスポリウム属菌とペニシリウム属菌の他に、Mycosphaerella crystallina、Xylariales sp.、Artrinium sp.、及びLeptosphaerulina chartaruの4種類の微生物が検出された。これら4種類の微生物を検出するためのプローブは、本実施形態の微生物の検査方法において用いたDNAチップには固定化されておらず、これらは本試験において検査対象外の微生物となっている。
本実施形態の微生物の検査方法により判定されたサンプルBにおける優勢種は、第一番目がクラドスポリウム属菌、第二番目がペニシリウム属菌であった。
DNA配列解析の結果、サンプルBにおけるコロニーのうち、実際の第一番目の優勢種はクラドスポリウム属菌であり、実際の第二番目の優勢種はペニシリウム属菌であった。
したがって、この結果から、検査対象とする微生物内において、簡易な方法により、優勢種及びその優勢の順位を高い精度で判定できていることがわかる。
【0066】
サンプルCからは、DNA配列解析により、クラドスポリウム属菌とペニシリウム属菌の他に、Arthrinium sp.、Periconia macrospinosa、Toxicocladosporium irritans、Dothideomycete sp.、Phoma sp.、Pleosporales sp.、及びUnknown(種類不明のもの)の7種類の微生物が検出された。これら7種類の微生物を検出するためのプローブは、本実施形態の微生物の検査方法において用いたDNAチップには固定化されておらず、これらは本試験において検査対象外の微生物となっている。
本実施形態の微生物の検査方法により判定されたサンプルCにおける優勢種は、第一番目がクラドスポリウム属菌、第二番目がペニシリウム属菌であった。
DNA配列解析の結果、サンプルCにおけるコロニーのうち、実際の第一番目の優勢種はクラドスポリウム属菌であり、実際の第二番目の優勢種はペニシリウム属菌であった。
したがって、この結果から、検査対象とする微生物内において、簡易な方法により、優勢種及びその優勢の順位を高い精度で判定できていることがわかる。
【0067】
サンプルDからは、DNA配列解析により、クラドスポリウム属菌、ペニシリウム属菌、及びユーロチウム属菌の他に、Unknown(種類不明のもの)、Pleosporales sp.、Diaporthe sp.、及びAureobasidium pullulansの4種類の微生物が検出された。これら4種類の微生物を検出するためのプローブは、本実施形態の微生物の検査方法において用いたDNAチップには固定化されておらず、これらは本試験において検査対象外の微生物となっている。
本実施形態の微生物の検査方法により判定されたサンプルDにおける優勢種は、第一番目がクラドスポリウム属菌、第二番目がペニシリウム属菌とユーロチウム属菌であった。
DNA配列解析の結果、サンプルDにおけるコロニーのうち、実際の第一番目の優勢種はクラドスポリウム属菌であり、実際の第二番目の優勢種はペニシリウム属菌であり、実際の第三番目の優勢種はユーロチウム属菌であった。
したがって、この結果から、検査対象とする微生物内において、簡易な方法により、優勢種を高い精度で判定できていることがわかる。また、その優勢の順位もある程度判定できていることがわかる。
【0068】
サンプルEからは、DNA配列解析により、クラドスポリウム属菌、ペニシリウム属菌、及びフザリウム属菌の他に、Leptosphaeria sp.、Unknown(種類不明のもの)の2種類の微生物が検出された。これら2種類の微生物を検出するためのプローブは、本実施形態の微生物の検査方法において用いたDNAチップには固定化されておらず、これらは本試験において検査対象外の微生物となっている。
本実施形態の微生物の検査方法により判定されたサンプルEにおける優勢種は、第一番目がクラドスポリウム属菌、第二番目がペニシリウム属菌、第三番目がフザリウム属菌であった。
DNA配列解析の結果、サンプルEにおけるコロニーのうち、実際の第一番目の優勢種はクラドスポリウム属菌であり、実際の第二番目の優勢種はペニシリウム属菌であり、実際の第三番目の優勢種はフザリウム属菌であった。
したがって、この結果から、検査対象とする微生物内において、簡易な方法により、優勢種及びその優勢の順位を高い精度で判定できていることがわかる。
【0069】
サンプルFからは、DNA配列解析により、アスペルギルス バージカラー菌、クラドスポリウム属菌、及びアスペルギルス ペニシリオイデス菌の他に、Leptosphaerulina chartarum、Leptosphaeria sp.、Sclerotinia sclerotiorum、Creosphaeria sassafrans、Fungal endophyte
sp.、及びUnknown(種類不明のもの)の6種類の微生物が検出された。これら6種類の微生物を検出するためのプローブは、本実施形態の微生物の検査方法において用いたDNAチップには固定化されておらず、これらは本試験において検査対象外の微生物となっている。
本実施形態の微生物の検査方法により判定されたサンプルFにおける優勢種は、第一番目がアスペルギルス バージカラー菌、第二番目がクラドスポリウム属菌とアスペルギルス ペニシリオイデス菌であった。
DNA配列解析の結果、サンプルFにおけるコロニーのうち、実際の第一番目の優勢種はアスペルギルス バージカラー菌であり、実際の第二番目の優勢種はクラドスポリウム属菌であり、実際の第三番目の優勢種はアスペルギルス ペニシリオイデス菌であった。
したがって、この結果から、検査対象とする微生物内において、簡易な方法により、優勢種を高い精度で判定できていることがわかる。また、その優勢の順位もある程度判定できていることがわかる。
【0070】
サンプルGからは、DNA配列解析により、クラドスポリウム属菌とペニシリウム属菌の他に、Phaeosphaeriopsis sp.が検出された。この微生物を検出するためのプローブは、本実施形態の微生物の検査方法において用いたDNAチップには固定化されておらず、これは本試験において検査対象外の微生物となっている。
本実施形態の微生物の検査方法により判定されたサンプルGにおける優勢種は、第一番目がクラドスポリウム属菌、第二番目がペニシリウム属菌であった。
一方、DNA配列解析の結果、サンプルGにおけるコロニーのうち、実際の第一番目の優勢種はクラドスポリウム属菌であったが、実際の第二番目の優勢種はPhaeosphaeriopsis sp.であり、ペニシリウム属菌は実際の第三番目の優勢種であった。
しかしながら、Phaeosphaeriopsis sp.は本試験において検査対象外の微生物であり、検査対象としていたクラドスポリウム属菌とペニシリウム属菌は、それぞれ実際の第一番目、実際の第三番目の優勢種として検出されている。
したがって、この結果から、検査対象とする微生物内において、簡易な方法により、優勢種及びその優勢の順位を高い精度で判定できていることがわかる。
【0071】
サンプルHからは、DNA配列解析により、クラドスポリウム属菌の他に、Pleosporales sp.が検出された。この微生物を検出するためのプローブは、本実施形態の微生物の検査方法において用いたDNAチップには固定化されておらず、これは本試験において検査対象外の微生物となっている。
本実施形態の微生物の検査方法により判定されたサンプルHにおける優勢種は、クラドスポリウム属菌であった。
DNA配列解析の結果、サンプルHにおけるコロニーのうち、実際の第一番目の優勢種はクラドスポリウム属菌であり、実際の第二番目の優勢種はPleosporales sp.であった。
したがって、この結果から、検査対象とする微生物内において、簡易な方法により、優勢種を高い精度で判定できていることがわかる。
【0072】
サンプルIからは、DNA配列解析により、クラドスポリウム属菌の他に、Alternaria alternataが検出された。この微生物を検出するためのプローブは、本実施形態の微生物の検査方法において用いたDNAチップには固定化されておらず、これらは本試験において検査対象外の微生物となっている。
本実施形態の微生物の検査方法により判定されたサンプルIにおける優勢種は、クラドスポリウム属菌であった。
DNA配列解析の結果、サンプルIにおけるコロニーのうち、実際の第一番目の優勢種はクラドスポリウム属菌であり、実際の第二番目の優勢種はAlternaria alternataであった。
したがって、この結果から、検査対象とする微生物内において、簡易な方法により、優勢種を高い精度で判定できていることがわかる。
【0073】
サンプルJからは、DNA配列解析により、アスペルギルス ペニシリオイデス菌とクラドスポリウム属菌が検出された。
本実施形態の微生物の検査方法により判定されたサンプルJにおける優勢種は、アスペルギルス ペニシリオイデス菌とクラドスポリウム属菌であった。
DNA配列解析の結果、サンプルJにおけるコロニーのうち、実際の第一番目の優勢種はアスペルギルス ペニシリオイデス菌であり、実際の第二番目の優勢種はクラドスポリウム属菌であった。
サンプルJは、使用したチップ数が1枚であるため、複数の微生物が存在している場合、これらの優勢種の違いは判定できないが、検査対象とする微生物内において、実際の優勢種を特定することはできている。
以上の通り、本実施形態の微生物の検査方法によれば、簡易な方法により、優勢種を高い精度で判定することが可能になっている。
【0074】
本発明は、以上の実施形態や実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、上記の試験のPCR用反応液におけるITS領域増幅用プライマーセット及びβ−チューブリン遺伝子増幅用プライマーセット以外の成分については、適宜変更することができる。また、上記のようなDNAチップを用いて蛍光検出を行うのではなく、電流検出方式など他の検出方式のDNAチップにより、プローブにハイブリダイズした増幅産物を検出することなども可能である。