特許第6291727号(P6291727)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6291727ガラスファイバの製造装置および製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6291727
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】ガラスファイバの製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 37/12 20060101AFI20180305BHJP
【FI】
   C03B37/12 Z
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-113753(P2013-113753)
(22)【出願日】2013年5月30日
(65)【公開番号】特開2014-231465(P2014-231465A)
(43)【公開日】2014年12月11日
【審査請求日】2016年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】越水 成樹
【審査官】 永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開平4−182331(JP,A)
【文献】 特開昭62−246837(JP,A)
【文献】 特開平5−186238(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B37/00−37/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス母材を加熱して軟化させる加熱炉と、
前記加熱炉で軟化された前記ガラス母材から線引きされたガラスファイバを冷却する冷却装置と、を備え、
前記冷却装置は、線引き方向へ進行する前記ガラスファイバを通過させる挿通路を内部に有するとともに前記挿通路内に冷却ガスが供給される筒状の冷却管を1つ有し、
前記冷却管にはその上端近傍に、前記冷却ガスを供給する冷却ガス供給管が接続されており、
前記冷却管は、
前記挿通路の内面と前記ガラスファイバとの前記線引き方向に直交する距離が、前記線引き方向の下流側に向かうほど小さく、
前記挿通路の内面と前記ガラスファイバとの前記線引き方向に直交する距離が、前記冷却管の入口部で最も大きく、前記冷却管の出口部で最も小さい、ガラスファイバの製造装置。
【請求項2】
前記冷却管は、前記挿通路の内面と前記ガラスファイバとの前記線引き方向に直交する距離が、前記冷却管の入口部から前記冷却管の出口部へ向かって徐々に小さくなる、請求項1に記載のガラスファイバの製造装置。
【請求項3】
前記冷却管は、筒状に形成された複数の分割体が前記線引き方向に沿って連結されている、請求項1または請求項2に記載のガラスファイバの製造装置。
【請求項4】
前記冷却管は、前記挿通路の内面と前記ガラスファイバとの前記線引き方向に直交する距離が、前記分割体の接続部で連続して変化している、請求項3に記載のガラスファイバの製造装置。
【請求項5】
加熱して軟化させたガラス母材からガラスファイバを線引きし、線引き方向へ進行する前記ガラスファイバを、冷却ガスが供給される挿通路を内部に有する1つの冷却管の前記挿通路に通過させて冷却する工程で、
前記冷却管にはその上端近傍に、前記冷却ガスを供給する冷却ガス供給管が接続されており、
前記冷却管の前記挿通路の内面と前記ガラスファイバとの前記線引き方向に直交する距離を、前記線引き方向の下流側に向かうほど小さくすると共に、
前記挿通路の内面と前記ガラスファイバとの前記線引き方向に直交する距離が、前記冷却管の入口部で最も大きく、前記冷却管の出口部で最も小さくしている、ガラスファイバの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス母材からガラスファイバを線引きして製造するガラスファイバの製造装置および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバは、コアとクラッドとを有するガラスファイバに樹脂を被覆した構成のものが知られている。この光ファイバを構成するガラスファイバは、石英等の材料で製造されたガラス母材の下端側を加熱して軟化させ、この軟化させた部分を引き伸ばして細径化することで製造される。引き伸ばされた後の高温のガラスファイバは、ヘリウム等の冷却ガスが供給される筒状の冷却装置に通されることで樹脂の被覆前に強制的に冷却される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−130458号公報
【特許文献2】特開2007−63086号公報
【特許文献3】特開2004−250292号公報
【特許文献4】特開平11−171582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガラス母材の下端部から樹脂を被覆する被覆装置までの区間では、線引きされたガラスファイバが支持されていないので、ガラスファイバが振動する線振れと呼ばれる現象が生じる場合がある。この線振れによって、ガラスファイバが冷却装置における挿通路の内面に接触して断線するおそれがある。一方、冷却装置におけるガラスファイバの冷却効率は、ガラスファイバが通される挿通路の内面とガラスファイバとの距離や冷却ガスの流量などによって決まる。ガラスファイバの接触による断線を防ぐために、冷却装置における挿通路の内径を大きくすると、ガラスファイバの冷却効率が低下してしまう。このように、ガラスファイバの断線を防ぐことを考慮すると、冷却装置による冷却効率を上げることが困難であった。
【0005】
本発明は、ガラスファイバが冷却装置に接触して断線する不具合の発生を防止しつつ、良好な冷却効率でガラスファイバを冷却することが可能なガラスファイバの製造装置および製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のガラスファイバの製造装置は、
ガラス母材を加熱して軟化させる加熱炉と、
前記加熱炉で軟化された前記ガラス母材から線引きされたガラスファイバを冷却する冷却装置と、を備え、
前記冷却装置は、線引き方向へ進行する前記ガラスファイバを通過させる挿通路を内部に有するとともに前記挿通路内に冷却ガスが供給される筒状の冷却管を有し、
前記冷却管は、前記挿通路の内面と前記ガラスファイバとの前記線引き方向に直交する距離が、前記線引き方向の下流側に向かうほど小さい。
【0007】
本発明のガラスファイバの製造方法は、
加熱して軟化させたガラス母材からガラスファイバを線引きし、線引き方向へ進行する前記ガラスファイバを、冷却ガスが供給される挿通路を内部に有する冷却管の前記挿通路に通過させて冷却する工程で、
前記冷却管の前記挿通路の内面と前記ガラスファイバとの前記線引き方向に直交する距離を、前記線引き方向の下流側に向かうほど小さくしている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ガラスファイバが冷却装置に接触して断線する不具合の発生を防止しつつ、良好な冷却効率でガラスファイバを冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係るガラスファイバの製造装置を備えた光ファイバの製造装置の概略構成図である。
図2】冷却装置の概略断面図である。
図3】長手方向に亘って同一内径の挿通路を有する冷却管の概略断面図である。
図4】変形例1に係る冷却管の概略断面図である。
図5】変形例2に係る冷却管の概略断面図である。
図6】変形例3に係る冷却管の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〈本発明の実施形態の概要〉
最初に本発明の実施形態の概要を説明する。
本発明にかかるガラスファイバの製造装置の一実施形態は、
(1)ガラス母材を加熱して軟化させる加熱炉と、
前記加熱炉で軟化された前記ガラス母材から線引きされたガラスファイバを冷却する冷却装置と、を備え、
前記冷却装置は、線引き方向へ進行する前記ガラスファイバを通過させる挿通路を内部に有するとともに前記挿通路内に冷却ガスが供給される筒状の冷却管を有し、
前記冷却管は、前記挿通路の内面と前記ガラスファイバとの前記線引き方向に直交する距離が、前記線引き方向の下流側に向かうほど小さい。
(1)の構成によれば、冷却管の挿通路の内面とガラスファイバとの線引き方向に直交する距離が、線引き方向の下流側に向かうほど小さい。一般的にガラスファイバの線振れは一次モードの振動となるため、固定点の中間部で最大となる。つまり、通常の装置の配置を考えると、冷却装置の上部ほど線振れが大きくなるため、挿通路の内面とガラスファイバとの距離を上部ほど大きく取ることで、ガラスファイバの線振れが大きい箇所での挿通路の内面とガラスファイバとの接触を防ぐことができる。また、ガラスファイバにより冷却ガスが下流側に牽引されるので、挿通路の内面とガラスファイバとの距離が小さい下流側の冷却ガス濃度が高くなって、冷却効率がさらに向上する。これにより、ガラスファイバが冷却装置に接触して断線する不具合の発生を防止しつつ、良好な冷却効率でガラスファイバを冷却することができる。したがって、高品質なガラスファイバを歩留まりよく製造することができる。
【0011】
(2)前記冷却管は、前記挿通路の内面と前記ガラスファイバとの前記線引き方向に直交する距離が、前記冷却管の入口部で最も大きく、前記冷却管の出口部で最も小さい構成としてもよい。
(2)の構成によれば、冷却管の入口部を最も大きく、出口部を最も小さくしているため、入口部側でのガラスファイバの挿通路の内面との接触をさらに防ぎやすく、また、冷却効率をさらに向上させやすい。
【0012】
(3)前記冷却管は、前記挿通路の内面と前記ガラスファイバとの前記線引き方向に直交する距離が、前記冷却管の入口部から前記冷却管の出口部へ向かって徐々に小さくなる構成としてもよい。
(3)の構成によれば、挿通路における冷却ガスの流れを円滑にしやすくなり、冷却効率のさらなる向上を図ることができる。
【0013】
(4)前記冷却管は、筒状に形成された複数の分割体が前記線引き方向に沿って連結されていてもよい。
(4)の構成によれば、複数の分割体を連結させて冷却管を構成しているので、長尺な冷却管を作製することが容易である。
【0014】
(5)前記冷却管は、前記挿通路の内面と前記ガラスファイバとの前記線引き方向に直交する距離が、前記分割体の接続部で連続して変化していてもよい。
(5)の構成によれば、挿通路における冷却ガスの流れを円滑にしやすくなり、冷却効率のさらなる向上を図ることができる。
【0015】
また、本発明にかかるガラスファイバの製造方法の一実施形態は、
(6)加熱して軟化させたガラス母材からガラスファイバを線引きし、線引き方向へ進行する前記ガラスファイバを、冷却ガスが供給される挿通路を内部に有する冷却管の前記挿通路に通過させて冷却する工程で、
前記冷却管の前記挿通路の内面と前記ガラスファイバとの前記線引き方向に直交する距離を、前記線引き方向の下流側に向かうほど小さくしている。
(6)の構成によれば、(1)の製造装置と同様に、ガラスファイバが冷却管に接触して断線する不具合の発生を防止しつつ、良好な冷却効率でガラスファイバを冷却することができる。
【0016】
〈本発明の実施形態の詳細〉
以下、本発明に係るガラスファイバの製造装置および製造方法の実施の形態の例を、図面を参照して説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0017】
(製造装置の構成)
図1は、本実施形態に係るガラスファイバの製造装置を備えた光ファイバの製造装置の概略構成図である。
図1に示すように、ガラスファイバの製造装置1は、その最も上流側に、ガラス母材Gを加熱する加熱炉2を備え、その下流側に冷却装置7、外径測定器8を備えている。加熱炉2は、内側にガラス母材Gが供給される円筒状の炉心管3と、この炉心管3を囲む発熱体4とを備えている。発熱体4を発熱させることで炉心管3が昇温して、その内側の空間にガラス母材Gを加熱して軟化させる加熱領域が形成される。また、加熱炉2には、加熱領域にヘリウムや窒素等のパージガスを供給するガス供給部5が設けられている。
【0018】
ガラス母材Gは、送り手段6によってその上部の支持棒部分が把持されて、炉心管3の内側の加熱領域にその下端部分が位置するように加熱炉2内に送られる。このように、加熱炉2内に供給されたガラス母材Gは、その下端側が加熱領域内で加熱されて軟化し、下方に引き伸ばされて細径化され、ガラスファイバG1が得られる。
【0019】
加熱炉2の下方(下流側)には、ヘリウムガス等の冷却ガスを用いた冷却装置7が設けられており、加熱炉2を出た直後のガラスファイバG1は、この冷却装置7によって強制的に冷却される。これにより、ガラスファイバG1が室温近くまで急速に冷却される。
【0020】
また、冷却装置7の下流側には、例えばレーザ光式の外径測定器8が設けられており、冷却装置7を出たガラスファイバG1は、この外径測定器8によりその外径が測定され、線引き時におけるガラスファイバG1の外径が管理される。
【0021】
上記ガラスファイバの製造装置1の下流側には、ガラスファイバG1に紫外線硬化型樹脂を塗布するダイス9および塗布された紫外線硬化型樹脂を硬化させるための紫外線照射装置10が順に設けられている。このダイス9および紫外線照射装置10を通過したガラスファイバG1は、その外周に紫外線硬化型樹脂の被覆層が形成され、光ファイバG2とされる。
【0022】
その後、光ファイバG2は、ガイドローラ11,12を介してキャプスタン13に引き込まれ、スクリーニング装置14およびダンサローラ15,16を介して巻き取りボビン17に送られて巻き取られる。
【0023】
(冷却装置の構成)
次に、上記のガラスファイバの製造装置1を構成する冷却装置7について説明する。
図2は、冷却装置7の概略断面図である。
【0024】
図2に示すように、冷却装置7は、筒状の冷却管21を備えている。この冷却管21には、上下に貫通する挿通路22が形成されている。この冷却管21は、その上端が入口部21aとされ、下端が出口部21bとされており、ガラス母材Gから線引きされたガラスファイバG1が、入口部21aから引き込まれて出口部21bから引き出される。つまり、冷却管21には、挿通路22の略中心に、線引き方向Aの下流側へ進行するガラスファイバG1が挿通されて通過される。
【0025】
冷却管21には、その上端近傍に、冷却ガス供給管23が接続されており、この冷却ガス供給管23から挿通路22内に、冷却ガスが供給される。冷却ガスとしては、熱伝導性に優れたヘリウムガス等が用いられる。
【0026】
冷却管21の挿通路22は、ガラスファイバGの線引き方向Aの下流側に向かって次第に窄められている。すなわち、この冷却管21は、挿通路22の内面22aと挿通路22を通過するガラスファイバG1との線引き方向Aに直交する距離が、線引き方向Aの下流側に向かうほど小さくなるように形成されている。
【0027】
具体的には、冷却管21は、挿通路22の内面22aとガラスファイバG1との線引き方向Aに直交する距離が、冷却管21の入口部21aで最も大きく、冷却管21の出口部21bで最も小さい。さらに、冷却管21は、挿通路22の内面22aとガラスファイバG1との線引き方向Aに直交する距離が、冷却管21の入口部21aから出口部21bへ向かって徐々に小さくなるように形成されている。
【0028】
本例の冷却管21は、例えば全長(線引き方向Aに沿う長さ)が5m、入口部21aにおける内径が10mm、出口部21bにおける内径が5mm程度であり、挿通路22は、入口部21aから出口部21bへ向かって内径が10mmから5mmとなるようなテーパ面形状とされている。
【0029】
この冷却管21の挿通路22に通されるガラスファイバG1は、ガラス母材Gの下端部から樹脂を塗布するダイス9までの区間が、そのパスライン上での位置が拘束されない無拘束区間Lとされている。一方、冷却管21は、挿通路22が最大径とされた入口部21aが、出口部21bに比べてガラスファイバG1の無拘束区間Lにおける中央部Lcに近い位置に配置されるように設置されている。
【0030】
(ガラスファイバの冷却工程)
このような冷却管21を備えた冷却装置7において、線引きされたガラスファイバG1は、上端近傍から冷却ガスが供給される冷却管21の挿通路22内を線引き方向Aの下流側へ進行して通過する。そして、ガラスファイバG1は、挿通路22内を通過する際に冷却ガスによって室温近くまで急速に冷却される。
【0031】
このとき、挿通路22内では、線引き方向Aの下流側へ進行するガラスファイバG1によって、線引き方向Aの上流側から下流側へ向かう冷却ガスの牽引流が生じる。冷却管21の挿通路22は下流側ほど内径が小さいので、牽引流によって下流側の冷却ガス濃度が高くなって冷却効率が向上し、ガラスファイバG1が効率良く冷却されることとなる。
【0032】
また、線引きされて高速で下流側へ進行するガラスファイバG1は、無拘束区間Lで振動して線振れが生じることがあり、その線振れは通常、無拘束区間Lの中央部Lc付近で大きくなる。本例の冷却管21は、ガラスファイバG1の無拘束区間Lにおける中央部Lcに近い位置に配置される入口部21aが挿通路22の最大径とされ、挿通路22の内面22aとガラスファイバG1との線引き方向Aに直交する距離が最も大きい。そのため、線振れするガラスファイバG1の挿通路22の内面22aへの接触が防止される。
【0033】
本例の冷却管21に対する比較として、図3に、長手方向にわたって同一内径の挿通路を有する冷却管を示す。
図3に示す、長手方向にわたって同一内径の冷却管121において、冷却ガス供給管123から供給される冷却ガスによる冷却効率を向上させるために、挿通路122の内径を小さくすると、特に、線振れが大きくなるガラスファイバG1の無拘束区間Lの中央部Lcに近い位置で挿通路122の内面122aに接触し、ガラスファイバG1が断線するおそれが高くなる。
【0034】
そのため、このような冷却管121では、ガラスファイバG1の挿通路122の内面122aへの接触による断線を防ぐために、長手方向にわたってある程度大きな内径を保つように設計しなければならない。その場合、冷却ガスの使用量を増加させる必要が生じたり、ガラスファイバG1の冷却効率が制限されたりしてしまう。
【0035】
これに対して、上記実施形態の冷却管21によれば、冷却管21の挿通路22の内面22aとガラスファイバG1との線引き方向Aに直交する距離が、線引き方向Aの下流側に向かうほど小さいので、ガラスファイバG1の線振れが大きい箇所での挿通路22の内面22aとの接触を防ぎつつ、冷却ガスの濃度を高くして冷却効率の向上を図ることができ、少ない冷却ガスでも十分に冷却することができる。これにより、断線等の不具合を生じさせることなく、ガラスファイバG1を効率良く冷却することができる。すなわち、高品質のガラスファイバG1をガラス母材Gから線引きして製造することができ、さらには高品質の光ファイバG2を製造することができる。
【0036】
特に、冷却管21の挿通路22の内面22aとガラスファイバG1との線引き方向Aに直交する距離が、冷却管21の入口部21aで最も大きく、冷却管21の出口部21bで最も小さくいので、より確実に、入口部21a側でのガラスファイバG1の挿通路22の内面22aとの接触を抑制しつつ出口部21b側での冷却効率の向上を図ることができる。
【0037】
また、冷却管21の挿通路22の内面22aとガラスファイバG1との線引き方向Aに直交する距離が、冷却管21の入口部21aから冷却管21の出口部21bへ向かって徐々に小さくなるので、冷却ガスの流れが円滑になり、ガラスファイバG1の線振れを抑制しつつ冷却効率をさらに向上させることができる。
【0038】
そして、本実施形態によれば、入口部の内径が本実施形態と同じで全長5mの長手方向にわたって同一内径の冷却管121を用いた場合と比較して、ガラスファイバG1の断線頻度を悪化させることなく、冷却ガスとして同じ流量のヘリウムを用いたときの冷却管21の出口部21bでのガラスファイバG1の温度を、5℃下げることができた。
【0039】
次に、冷却管の他の実施形態例について説明する。
(変形例1)
図4は、変形例1に係る冷却管の概略断面図である。
図4に示すように、変形例1に係る冷却管21Aは、長手方向にわたって外径が同一径である。そして、この冷却管21Aの場合も、挿通路22の内面22aとガラスファイバG1との線引き方向Aに直交する距離が、冷却管21Aの入口部21aから出口部21bへ向かって徐々に小さくなるように形成されている。これにより、冷却管21Aは、挿通路22の内面22aとガラスファイバG1との線引き方向Aに直交する距離が、冷却管21Aの入口部21aで最も大きく、冷却管21Aの出口部21bで最も小さくなっている。
【0040】
上記の製造装置1の冷却管21に代えてこの変形例1に係る冷却管21Aを用いた場合も、冷却管21を用いた場合と同様に、ガラスファイバG1の線振れが大きい箇所での挿通路22の内面22aとの接触を防ぎつつ、下流側で冷却ガスの濃度を高くして冷却効率の向上を図ることができる。
【0041】
(変形例2)
図5は、変形例2に係る冷却管の概略断面図である。
図5に示すように、変形例2に係る冷却管21Bは、筒状に形成された複数の分割体31a,31bがガラスファイバG1の線引き方向Aに沿って連結されて構成されている。それぞれの分割体31a,31bは、下端側へ向かって次第に縮径する貫通孔32a,32bを有しており、冷却管21Bは、各分割体31a,31bを連結することで貫通孔32a,32bが連通し、挿通路22を形成している。
【0042】
この冷却管21Bは、上方側の分割体31aの下端における貫通孔32aの内径と、下方側の分割体31bの上端における貫通孔32bの内径とが同一寸法である。これにより、この冷却管21Bでは、その挿通路22の内面22aとガラスファイバG1との線引き方向Aに直交する距離が、分割体31a,31bの接続部で連続して変化している。
【0043】
したがって、変形例2に係る冷却管21Bも、挿通路22の内面22aとガラスファイバG1との線引き方向Aに直交する距離が、冷却管21Bの入口部21aから出口部21bへ向かって徐々に小さくなるように形成されている。これにより、冷却管21Bは、挿通路22の内面22aとガラスファイバG1との線引き方向Aに直交する距離が、冷却管21Bの入口部21aで最も大きく、冷却管21Bの出口部21bで最も小さくなっている。冷却管21Bには、それぞれの分割体31a,31bの上端近傍に、冷却ガス供給管23が接続されており、これらの冷却ガス供給管23から挿通路22内に、冷却ガスが供給される。
【0044】
上記の製造装置1の冷却管21に代えてこの変形例2に係る冷却管21Bを用いた場合も、冷却管21,21Aを用いた場合と同様に、ガラスファイバG1の線振れが大きい箇所での挿通路22の内面22aとの接触を防ぎつつ、下流側で冷却ガスの濃度を高くして冷却効率の向上を図ることができる。特に、複数の分割体31a,31bを連結させて冷却管21Bが構成されているので、長尺な冷却管21Bを容易に作製することができる。また、挿通路22内には、各分割体31a,31bの上端近傍から冷却ガスが供給されるので、さらなる冷却効率の向上を図ることができる。また、分割体31a,31bの接続部において、挿通路22の内面22aとガラスファイバG1との線引き方向Aに直交する距離が連続して変化しているので、挿通路22における冷却ガスの流れを円滑にしやすくなり、冷却効率を向上させることができる。
【0045】
(変形例3)
図6は、変形例3に係る冷却管の概略断面図である。
図6に示すように、変形例3に係る冷却管21Cは、冷却管21Bと同様に、筒状に形成された複数の分割体35a,35bがガラスファイバG1の線引き方向Aに沿って連結されて構成されている。この冷却管21Cでは、例えば、互いに同一形状の分割体35a,35bが用いられている。それぞれの分割体35a,35bは、下端側へ向かって次第に縮径する貫通孔36a,36bを有しており、冷却管21Cは、各分割体35a,35bを連結することで貫通孔36a,36bが連通し、挿通路22を形成している。
【0046】
冷却管21Cでは、上方側の分割体35aの下端における貫通孔36aの内径が、下方側の分割体35bの上端における貫通孔36bの内径よりも小さい。これにより、冷却管21Cでは、挿通路22の内面22aとガラスファイバG1との線引き方向Aに直交する距離の変化が、分割体35の接続部で不連続となっている。冷却管21Cは、この不連続な部分を有するものの、挿通路22の内面22aとガラスファイバG1との線引き方向Aに直交する距離が、冷却管21Cの入口部21aで最も大きく、線引き方向Aの下流側に向かうほど小さくなり、冷却管21Cの出口部21bで最も小さくなっている。また、冷却管21Cには、それぞれの分割体35a,35bの上端近傍に、冷却管21Bと同様に冷却ガス供給管23が接続されている。
【0047】
上記の製造装置1の冷却管21に代えてこの変形例3に係る冷却管21Cを用いた場合も、冷却管21,21A,21Bを用いた場合と略同様に、ガラスファイバG1の線振れが大きい箇所での挿通路22の内面22aとの接触を防ぎつつ、下流側で冷却ガスの濃度を高くして冷却効率の向上を図ることができる。また、冷却管21Bと同様に、長尺な冷却管21Cを容易に作製することができ、さらなる冷却効率の向上を図ることができる。しかも、分割体35a,35bを同一形状とすることで、部品の共通化によるコスト削減を図ることができる。
【符号の説明】
【0048】
1:製造装置
2:加熱炉
3:炉心管
4:発熱体
5:ガス供給部
6:送り手段
7:冷却装置
8:外径測定器
9:ダイス
10:紫外線照射装置
11,12:ガイドローラ
13:キャプスタン
14:スクリーニング装置
15,16:ダンサローラ
17:巻き取りボビン
21,21A,21B,21C,121:冷却管
21a:入口部
21b:出口部
22,122:挿通路
23,123:冷却ガス供給管
22a,122a:内面
31a,31b,35a,35b:分割体
32a,32b,36a,36b:貫通孔
A:線引き方向
G:ガラス母材
G1:ガラスファイバ
G2:光ファイバ
L:無拘束区間
Lc:中央部
図1
図2
図3
図4
図5
図6