特許第6291852号(P6291852)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6291852局側装置、PONシステムおよび局側装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6291852
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】局側装置、PONシステムおよび局側装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/44 20060101AFI20180305BHJP
【FI】
   H04L12/44 200
【請求項の数】10
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2014-5227(P2014-5227)
(22)【出願日】2014年1月15日
(65)【公開番号】特開2015-133664(P2015-133664A)
(43)【公開日】2015年7月23日
【審査請求日】2016年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】道又 淳一
【審査官】 衣鳩 文彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−016753(JP,A)
【文献】 特開2007−134976(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/109542(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0018335(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
局側装置であって、
マルチキャストフレームを必要に応じて複製して、当該マルチキャストフレームをユニキャストで光回線に送信する第1の方式で、前記マルチキャストフレームの配信処理を実行する第1の配信処理部と、
前記マルチキャストフレームを複製せずにブロードキャストで光回線に送信する第2の方式で、前記マルチキャストフレームの前記配信処理を実行する第2の配信処理部と、
前記マルチキャストフレームを受けるべき端末装置における受信チャネルの単位で、前記配信処理の方式を、前記第1の方式と前記第2の方式との間で動的に切替える制御部とを備え、
前記制御部は、前記端末装置を配下に有する宅側装置が有する、前記第2の方式に従って送られた前記マルチキャストフレームを透過させるためのマルチキャストフィルタを管理し、
前記制御部は、前記光回線における前記マルチキャストフレームの使用帯域、および前記宅側装置における前記マルチキャストフィルタの使用状況のうち少なくとも一方に基づいて、前記第1の方式と前記第2の方式とを動的に切替える、局側装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記宅側装置における前記マルチキャストフィルタの使用可能数と、前記宅側装置における前記マルチキャストフィルタの使用数との比較により、前記第1の方式と前記第2の方式とを切替える、請求項1に記載の局側装置。
【請求項3】
前記宅側装置の数が複数である場合、前記制御部は、各前記宅側装置の前記マルチキャストフィルタの前記使用可能数および前記使用数から、前記マルチキャストフィルタの最小の前記使用可能数と、前記マルチキャストフィルタの最大の前記使用数との間の差を求めて、前記差が所定の閾値に達すると、前記マルチキャストフィルタを最後に設定した前記受信チャネルの前記マルチキャストフィルタの前記配信処理の方式を、前記第2の方式から前記第1の方式へと切替える、請求項2に記載の局側装置。
【請求項4】
前記宅側装置の数が複数である場合、前記制御部は、各前記宅側装置の前記マルチキャストフィルタの前記使用可能数および前記使用数から、前記マルチキャストフィルタの最小の前記使用可能数と、前記マルチキャストフィルタの最大の前記使用数との間の差を求めて、前記差が所定の閾値に達すると、前記複数の宅側装置のうちの1つが、前記第2の方式に従って前記マルチキャストフレームが配信されるチャネルの受信の開始を要求した場合に、前記第2の方式で前記マルチキャストフレームが配信されている別のチャネルの中に前記配信処理の方式を前記第1の方式に切替可能なチャネルが存在すると、前記切替可能なチャネルの前記配信処理の方式を第1の方式に切替えるとともに、前記受信の開始を要求するチャネルの前記配信処理の方式を前記第2の方式に切替える、請求項2に記載の局側装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1の方式に従う前記配信処理を実行する場合において、複製すべき前記マルチキャストフレームの数の増加率が所定の閾値に達した場合に、前記マルチキャストフレームの前記配信処理の方式を、前記第1の方式から前記第2の方式へと切替える、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の局側装置。
【請求項6】
前記宅側装置の数が複数である場合、前記制御部は、前記光回線における帯域の利用効率を高めるための各受信チャネルの前記マルチキャストフレームの配信方式を決定して、決定された配信方式に従って、前記受信チャネルごとに、前記配信処理の方式を、前記第1の方式と前記第2の方式との間で切替える、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の局側装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記配信処理の方式を、前記第1の方式から前記第2の方式へと切替える場合において、前記マルチキャストフィルタの設定が完了するまでは、前記第1の方式で前記配信処理を継続する、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の局側装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記配信処理の方式を、前記第2の方式から前記第1の方式へと切替える場合には、前記第1の方式での前記配信処理が開始された後に、前記マルチキャストフィルタの設定を解除する、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の局側装置。
【請求項9】
局側装置と、
少なくとも1つの宅側装置と、
前記局側装置と、前記少なくとも1つの宅側装置とを接続する受動的光ネットワークとを備え、
前記局側装置は、マルチキャストフレームを受けるべき端末装置における受信チャネルの単位で、前記マルチキャストフレームの配信の方式を、第1の方式と第2の方式との間で動的に切替え、
前記第1の方式は、前記マルチキャストフレームを必要に応じて複製して、当該マルチキャストフレームをユニキャストで光回線に送信する方式であり、
前記第2の方式は、前記マルチキャストフレームを複製せずにブロードキャストで前記光回線に送信する方式であり、
前記局側装置は、前記宅側装置が有する、前記第2の方式に従って送られた前記マルチキャストフレームを透過させるためのマルチキャストフィルタを管理し、前記光回線における前記マルチキャストフレームの使用帯域、および前記宅側装置における前記マルチキャストフィルタの使用状況のうち少なくとも一方に基づいて、前記第1の方式と前記第2の方式とを動的に切替える、PONシステム。
【請求項10】
マルチキャストフレームを必要に応じて複製して、当該マルチキャストフレームをユニキャストで光回線に送信する第1の方式で、前記マルチキャストフレームを局側装置から配信するステップと、
前記マルチキャストフレームを複製せずにブロードキャストで光回線に送信する第2の方式で、前記マルチキャストフレームを前記局側装置から配信するステップと、
前記第1の方式と前記第2の方式とを動的に切替えるステップとを備え、
前記切替えるステップは、
前記光回線における前記マルチキャストフレームの使用帯域、および、宅側装置が有する、前記第2の方式に従って送られた前記マルチキャストフレームを透過させるためのマルチキャストフィルタの使用状況のうち少なくとも一方に基づいて、前記第1の方式と前記第2の方式とを切替える、局側装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局側装置、PON(Passive Optical Network)システムおよび局側装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
FTTH(Fiber To The Home)を実現する形態のひとつにPON(Passive Optical Network)がある。今日では、イーサネット(登録商標)技術を適用したPONであるEPONが、FTTHサービスに広く利用される。
【0003】
PONシステムは、局側装置(OLT;Optical Line Terminal)と、宅側装置(ONU;Optical Network Unit)と、局側装置および宅側装置を接続する光ファイバと、光ファイバを分岐する光スプリッタ(カプラ)によって構成される。光スプリッタによって、1つの局側装置に複数の宅側装置を接続することが可能になる。
【0004】
PONの物理的構成によれば、複数の宅側装置のすべてが、局側装置から送信されたデータを受信可能である。このため局側装置は、送信フレームのプリアンブル部分に、その送信フレームを受信すべき宅側装置の番号を示した識別子(LLID;Logical Link ID)を挿入する。宅側装置の各々は、局側装置から受信したフレームに含まれるLLIDを、予め宅側装置から通知された自己のLLIDと照合する。フレームに含まれるLLIDが自己のLLIDに一致する場合には、宅側装置はそのフレームを受信する。そうでない場合には、宅側装置は、そのフレームを破棄する。
【0005】
PONでは、ブロードキャストLLIDと呼ばれる特別なLLIDも用意される。宅側装置は、受信フレームにブロードキャストLLIDが含まれる場合には、無条件にそのフレームを取り込む(たとえば非特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】"技術講座[GE-PON技術] 第2回 IEEE802.3ah標準規格"、2005年9月、NTT技術ジャーナル、[2013年10月29日検索]、インターネット<URL:http://www.ntt.co.jp/journal/0509/files/jn200509091.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した、局側装置から宅側装置へのフレームの送信方法に基づき、複数の宅側装置に対して、マルチキャストサーバ(たとえば映像配信サーバ)からの下りマルチキャストフレームを転送するための2つの方式が提案されている。
【0008】
1つの方式は、MCB(Multiple Copy Broadcast)と呼ばれる方式である。この方式では、局側装置は、下りマルチキャストフレームを、転送対象となる宅側装置の数だけ複製する。局側装置は、各フレームに、そのフレームを受信すべき宅側装置のLLIDを付与する。この方式によれば、宅側装置は、自己のLLIDが付与されたフレームのみを受信する。このために宅側装置には特別な機能が不要となる。一方で、光ファイバを伝送されるフレームの数が増えるために、システムにおいて使用される帯域が増えるという課題がある。
【0009】
他の方式は、SCB(Single Copy Broadcast)と呼ばれる方式である。この方式では、局側装置は、下りマルチキャストフレームを複製せずに光ファイバに送信する。宅側装置は、配下の端末装置が視聴するチャネルのマルチキャストフレームのみを通過させる。
【0010】
SCB方式によれば、局側装置によるフレームの複製が不要となる。したがってシステムにおいて使用される帯域を節約することができる。しかし宅側装置は、配下の端末装置が視聴するチャネルのマルチキャストフレームのみを通過させるために、フィルタリング機能を持つ必要がある
さらに、宅側装置が持つマルチキャストフィルタの数は、有限である。したがって、たとえばSCB方式では、宅側装置が持つフィルタ数よりも多いチャネルを端末装置で視聴することはできない。
【0011】
したがって、PONシステムで使用される帯域の増大をできるだけ抑えながら、宅側装置において使用されるフィルタの数が上限に達しないように、マルチキャストフレームの配信を制御する必要がある。
【0012】
本発明の目的は、PONシステムで使用される帯域の増大をできるだけ抑えながら、宅側装置において使用されるマルチキャストフィルタの数を制御することを可能にするための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のある局面に係る局側装置は、マルチキャストフレームを必要に応じて複製して、当該マルチキャストフレームをユニキャストで光回線に送信する第1の方式で、マルチキャストフレームの配信処理を実行する第1の配信処理部と、マルチキャストフレームを複製せずにブロードキャストで光回線に送信する第2の方式で、マルチキャストフレームの配信処理を実行する第2の配信処理部と、マルチキャストフレームを受けるべき端末装置における受信チャネルの単位で、配信処理の方式を、第1の方式と第2の方式との間で動的に切替える制御部とを備える。制御部は、端末装置を配下に有する宅側装置が有する、第2の方式に従って送られたマルチキャストフレームを透過させるためのマルチキャストフィルタを管理する。制御部は、光回線におけるマルチキャストフレームの伝送状況、および宅側装置におけるマルチキャストフィルタの使用状況のうち少なくとも一方に基づいて、第1の方式と第2の方式とを動的に切替える。
【0014】
本発明の他の局面に係るPONシステムは、局側装置と、少なくとも1つの宅側装置と、局側装置と、少なくとも1つの宅側装置とを接続する受動的光ネットワークとを備える。局側装置は、マルチキャストフレームを受けるべき端末装置における受信チャネルの単位で、マルチキャストフレームの配信の方式を、第1の方式と第2の方式との間で動的に切替える。第1の方式は、マルチキャストフレームを必要に応じて複製して、当該マルチキャストフレームをユニキャストで光回線に送信する方式であり、第2の方式は、マルチキャストフレームを複製せずにブロードキャストで光回線に送信する方式である。局側装置は、宅側装置が有する、第2の方式に従って送られたマルチキャストフレームを透過させるためのマルチキャストフィルタを管理し、光回線におけるマルチキャストフレームの伝送状況、および宅側装置におけるマルチキャストフィルタの使用状況のうち少なくとも一方に基づいて、第1の方式と第2の方式とを動的に切替える。
【0015】
本発明のさらに他の局面に係る局側装置の制御方法は、マルチキャストフレームを必要に応じて複製して、当該マルチキャストフレームをユニキャストで光回線に送信する第1の方式で、マルチキャストフレームを局側装置から配信するステップと、マルチキャストフレームを複製せずにブロードキャストで光回線に送信する第2の方式で、マルチキャストフレームを局側装置から配信するステップと、第1の方式と第2の方式とを動的に切替えるステップとを備える。切替えるステップは、光回線におけるマルチキャストフレームの伝送状況、および、宅側装置が有する、第2の方式に従って送られたマルチキャストフレームを透過させるためのマルチキャストフィルタの使用状況のうち少なくとも一方に基づいて、第1の方式と第2の方式とを切替える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、PONシステムで使用される帯域の増大をできるだけ抑えながら、宅側装置において使用されるマルチキャストフィルタの数を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係るPONシステムの概略構成を示すブロック図である。
図2図1に示すOLT1に含まれる光回線ユニット(OSU)12の構成例を示すブロック図である。
図3図2に示したOSUにおいて、特にマルチキャストフレームの転送に関する構成を示したブロック図である。
図4】マルチキャストチャネル管理テーブルの構造例を示した図である。
図5】配下ONU視聴状態管理テーブルの構造例を示した図である。
図6】配下ONUマルチキャストフィルタ数管理テーブルの構造例を示した図である。
図7】チャネル別配信方式管理テーブルの構造例を示した図である。
図8】SCB方式での視聴開始処理の概要を説明したシーケンス図である。
図9】MCB方式での視聴開始処理の概要を説明したシーケンス図である。
図10】OLT1の配下にあるONU2のマルチキャストフィルタ数を管理する方法を説明するためのシーケンス図である。
図11】本発明の実施の形態に係る局側装置によって実行される、MCB方式からSCB方式への動的切替を説明するためのシーケンス図である。
図12】本発明の実施の形態に係る局側装置によって実行される、SCB方式からMCB方式への動的切替を説明するためのシーケンス図である。
図13】実施の形態1に従う、SCB方式からMCB方式への動的切替方法を説明するフローチャートである。
図14図13に示す動的切替による、配下ONUマルチキャストフィルタ数管理テーブル36bの変化の一例を示した図である。
図15】実施の形態1に従う、MCB方式からSCB方式への動的切替方法を説明するフローチャートである。
図16】実施の形態1に従う、MCB方式とSCB方式との間の動的切替の別の処理の例を説明する第1のフローチャートである。
図17図16に示された処理に続く処理を説明する第2のフローチャートである。
図18】実施の形態2に従う、SCB方式とMCB方式との間の動的切替方法を説明するフローチャートである。
図19】実施の形態3に従う、SCB方式とMCB方式との間の動的切替方法を説明するフローチャートである。
図20図19のステップS303の処理を詳細に説明したフローチャートである。
図21】本発明の実施の形態に係るOLT1の他の構成例を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[本願発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施形態を列記して説明する。
【0019】
(1)本発明の実施の形態に係る局側装置は、マルチキャストフレームを必要に応じて複製して、当該マルチキャストフレームをユニキャストで光回線に送信する第1の方式で、マルチキャストフレームの配信処理を実行する第1の配信処理部と、マルチキャストフレームを複製せずにブロードキャストで光回線に送信する第2の方式で、マルチキャストフレームの配信処理を実行する第2の配信処理部と、マルチキャストフレームを受けるべき端末装置における受信チャネルの単位で、配信処理の方式を、第1の方式と第2の方式との間で動的に切替える制御部とを備える。制御部は、端末装置を配下に有する宅側装置が有する、第2の方式に従って送られたマルチキャストフレームを透過させるためのマルチキャストフィルタを管理する。制御部は、光回線におけるマルチキャストフレームの伝送状況、および宅側装置におけるマルチキャストフィルタの使用状況のうち少なくとも一方に基づいて、第1の方式と第2の方式とを動的に切替える。
【0020】
上記構成によれば、PONシステムで使用される帯域の増大をできるだけ抑えながら、宅側装置において使用されるマルチキャストフィルタの数を制御することができる。たとえば、第1の方式(MCB方式)でマルチフレームキャストが配信されるチャネルが増大すると、あるチャネルのマルチフレームキャストの配信方式を第1の方式から第2の方式(SCB方式)へと切替えることができる。これにより、PONシステムで使用される帯域の増大を抑えることができる。一方、宅側装置において使用されるマルチキャストフィルタの数が増えると、あるチャネルのマルチフレームキャストの配信方式を第2の方式から第1の方式へと切替えることができる。これにより、宅側装置において使用されるマルチキャストフィルタの数を制御することができる。
【0021】
(2)好ましくは、制御部は、宅側装置におけるマルチキャストフィルタの使用可能数と、宅側装置におけるマルチキャストフィルタの使用数との比較により、第1の方式と第2の方式とを切替える。
【0022】
上記構成によれば、制御部は、未使用のマルチキャストフィルタの数を把握して第1の方式と第2の方式とを切替えることができる。
【0023】
(3)宅側装置の数が複数である場合、制御部は、各宅側装置のマルチキャストフィルタの使用可能数および使用数から、マルチキャストフィルタの最小の使用可能数と、マルチキャストフィルタの最大の使用数との間の差を求めて、上記差が所定の閾値に達すると、マルチキャストフィルタを最後に設定した受信チャネルのマルチキャストフィルタの配信処理の方式を、第2の方式から第1の方式へと切替える。
【0024】
上記構成によれば、宅側装置において、第2の方式でのマルチキャストフレームを受信するために、少なくとも所定の閾値と同じ数の未使用マルチキャストフィルタを確保することができる。
【0025】
(4)好ましくは、宅側装置の数が複数である場合、制御部は、各宅側装置のマルチキャストフィルタの使用可能数および使用数から、マルチキャストフィルタの最小の使用可能数と、マルチキャストフィルタの最大の使用数との間の差を求める。制御部は、前記差が所定の閾値に達すると、複数の宅側装置のうちの1つが、第2の方式に従ってマルチキャストフレームが配信されるチャネルの受信の開始を要求した場合に、第2の方式でマルチキャストフレームが配信されている別のチャネルの中に配信処理の方式を第1の方式に切替可能なチャネルが存在すると、その切替可能なチャネルの配信処理の方式を第1の方式に切替えるとともに、受信の開始を要求するチャネルの配信処理の方式を第2の方式に切替える。
【0026】
上記構成によれば、宅側装置において、第2の方式でのマルチキャストフレームを受信するために、所定の閾値より多くの未使用マルチキャストフィルタを確保することができる。
【0027】
(5)好ましくは、制御部は、第1の方式に従う前記配信処理を実行する場合において、複製すべき前記マルチキャストフレームの数の増加率が所定の閾値に達した場合に、マルチキャストフレームの配信処理の方式を、第1の方式から第2の方式へと切替える。
【0028】
上記構成によれば、PONシステムで使用される帯域の増大をできるだけ抑えながら、宅側装置において使用されるマルチキャストフィルタの数を制御することができる。
【0029】
(6)好ましくは、宅側装置の数が複数である場合、制御部は、光回線における帯域の利用効率を高めるための各受信チャネルのマルチキャストフレームの配信方式を決定して、決定された配信方式に従って、受信チャネルごとに、配信処理の方式を、前記第1の方式と前記第2の方式との間で切替える。
【0030】
上記構成によれば、PONシステムで使用される帯域の増大をできるだけ抑えながら、宅側装置において使用されるマルチキャストフィルタの数を制御することができる。
【0031】
(7)好ましくは、制御部は、配信処理の方式を、第1の方式から第2の方式へと切替える場合において、マルチキャストフィルタの設定が完了するまでは、第1の方式で配信処理を継続する。
【0032】
上記構成によれば、配信方式の切り替えにより、マルチキャストフレームの配信が一時的に停止することを避けることができる。
【0033】
(8)好ましくは、制御部は、配信処理の方式を、第2の方式から第1の方式へと切替える場合には、第1の方式での配信処理が開始された後に、マルチキャストフィルタの設定を解除する。
【0034】
上記構成によれば、配信方式の切り替えにより、マルチキャストフレームの配信が一時的に停止することを避けることができる。
【0035】
(9)本発明の他の実施の形態に係るPONシステムは、局側装置と、少なくとも1つの宅側装置と、局側装置と、少なくとも1つの宅側装置とを接続する受動的光ネットワークとを備える。局側装置は、マルチキャストフレームを受けるべき端末装置における受信チャネルの単位で、マルチキャストフレームの配信の方式を、第1の方式と第2の方式との間で動的に切替える。第1の方式は、マルチキャストフレームを必要に応じて複製して、当該マルチキャストフレームをユニキャストで光回線に送信する方式であり、第2の方式は、マルチキャストフレームを複製せずにブロードキャストで光回線に送信する方式である。局側装置は、宅側装置が有する、第2の方式に従って送られたマルチキャストフレームを透過させるためのマルチキャストフィルタを管理し、光回線におけるマルチキャストフレームの伝送状況、および宅側装置におけるマルチキャストフィルタの使用状況のうち少なくとも一方に基づいて、第1の方式と第2の方式とを動的に切替える。
【0036】
この構成によれば、PONシステムで使用される帯域の増大をできるだけ抑えながら、宅側装置において使用されるマルチキャストフィルタの数を制御することができる。
【0037】
(10)本発明のさらに他の実施の形態に係る局側装置の制御方法は、マルチキャストフレームを必要に応じて複製して、当該マルチキャストフレームをユニキャストで光回線に送信する第1の方式で、マルチキャストフレームを局側装置から配信するステップと、マルチキャストフレームを複製せずにブロードキャストで光回線に送信する第2の方式で、マルチキャストフレームを局側装置から配信するステップと、第1の方式と第2の方式とを動的に切替えるステップとを備える。切替えるステップは、光回線におけるマルチキャストフレームの伝送状況、および、宅側装置が有する、第2の方式に従って送られたマルチキャストフレームを透過させるためのマルチキャストフィルタの使用状況のうち少なくとも一方に基づいて、第1の方式と第2の方式とを切替える。
【0038】
この構成によれば、PONシステムで使用される帯域の増大をできるだけ抑えながら、宅側装置において使用されるマルチキャストフィルタの数を制御することができる。
【0039】
[本願発明の実施形態の詳細]
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一または対応する要素には同一の符号を付して、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0040】
図1は、本発明の一実施形態に係るPONシステムの概略構成を示すブロック図である。図1を参照して、PONシステム100は、イーサネット(登録商標)ベースのPON(EPON)として実現される。PONシステム100は、局側装置(OLT)1と、PON回線3と、光カプラ4と、N個(Nは1以上の整数)の宅側装置(ONU)2_1〜2_Nと、各ONU2に接続される端末装置5とを備える。
【0041】
OLT1は、PON回線(受動的光ネットワーク)3を終端する。PON回線3は、光カプラ4に接続されるとともに、光カプラ4を介して複数のONU2に接続されている。
【0042】
各ONU2には、少なくとも1つの端末装置5が接続される。すなわち各ONU2は、端末装置5を収容する。なお、たとえばハブ(HUB)を介して、複数の端末装置5を1つのONU2に接続することも可能である。
【0043】
この実施の形態において、複数のONU2の中には、映像を視聴可能な端末装置5が接続された、少なくとも1つのONU2が含まれる。当該端末装置5は、視聴チャネルを選択することができる。このような端末装置5の種類は特に限定されるものではない。
【0044】
OLT1は、上位装置6に接続される。上位装置6は、ルータ7およびサーバ8を含む。OLT1は、マルチキャスト通信を用いて、サーバ8からのデータ(たとえば映像データ)を配信する。サーバ8からのデータは、マルチキャストフレームの形態で端末装置5に配信される。
【0045】
ルータ7は、サーバ8からマルチキャストフレームを受信すると、そのマルチキャストフレームをOLT1に送信する。OLT1は、上位装置6からのマルチキャストフレームをPON回線3に送信する。各ONU2におけるマルチキャストフレームの処理については後に詳細に説明する。
【0046】
OLT1は、PON回線3におけるマルチキャストフレームの伝送状況、または、ONU2におけるマルチキャストフィルタの使用状況に基づいて、MCB方式とSCB方式とを動的に切替える。OLT1は、光回線ユニット(OSU)12と制御部14とを含む。
【0047】
OSU12は、PON回線3を終端する。さらにOSU12は、上位装置6に接続される。制御部14は、OSU12を制御する。
【0048】
図2は、図1に示すOLT1に含まれる光回線ユニット(OSU)12の構成例を示すブロック図である。図2を参照して、OSU12は、上位装置IF(Interface)部31と、制御IF部32と、受信処理部33と、送信処理部34と、PON送受信部35と、PON制御部36と、上りフレームを蓄積するFIFO1(37)と、下りフレームを蓄積するFIFO2(38)と、マルチキャストチャネル管理部39とを含む。
【0049】
PON送受信部35は、PON回線3に接続されて双方向通信を行なう。PON送受信部35は、特定の波長、たとえば1310nm帯の上り光信号をPON回線3から受信する。PON送受信部35は、その光信号を電気信号に変換して、受信処理部33にその電気信号を出力する。一方、PON送受信部35は、送信処理部34から出力された電気信号を別波長、たとえば1490nm帯の下り光信号に変換する。PON送受信部35は、その光信号をPON回線3に送信する。
【0050】
受信処理部33は、PON送受信部35から受けた電気信号からフレームを再構成するとともに、フレームの種別に応じて制御IF部32、PON制御部36またはFIFO1(37)にフレームを振り分ける。たとえば受信処理部33は、ユーザフレームをFIFO1(37)に出力し、ループバック試験などの特殊な制御フレームをPON制御部36に出力し、その他一般の制御フレームを制御IF部32に出力する。
【0051】
上位装置IF部31は、FIFO1(37)に蓄積された上りフレームを上位装置6に送るとともに、上位装置6から受けた下りフレームをFIFO2(38)に蓄積する。上位装置の信号形式とOSU内部の信号形式とが異なる場合には、上位装置IF部31は、上位装置の信号形式と内部信号形式との変換を行なってもよい。
【0052】
FIFO2(38)、制御IF部32またはPON制御部36が送信すべきフレーム/メッセージを有する場合、送信処理部34は、優先順位に従ってそのフレーム/メッセージを受け取り、フレームを組み立ててPON送受信部35に出力する。
【0053】
制御IF部32は、受信処理部33から受けた制御メッセージを制御部14に出力するとともに、制御部14から受けた制御メッセージを送信処理部34に出力する。このとき、制御IF部32は、制御部14の信号形式と内部信号形式との変換を行なってもよい。
【0054】
マルチキャストチャネル管理部39は、マルチキャストチャネル管理テーブル39aを記憶する。後に詳細に説明するように、マルチキャストチャネル管理テーブル39aには、チャネルと、そのチャネルに関連付けられたマルチキャストアドレスとが登録される。
【0055】
図3は、図2に示したOSUにおいて、特にマルチキャストフレームの転送に関する構成を示したブロック図である。図3を参照して、PON制御部36は、配下ONU視聴状態管理テーブル36aと、配下ONUマルチキャストフィルタ数管理テーブル36bとを管理する。
【0056】
「テーブルの管理」とは、そのテーブルの記憶および更新を含む。また、テーブルの更新とは、テーブルに登録されたデータの上書き、テーブルへのデータの追加、およびテーブルからのデータの削除を含むことができる。
【0057】
PON制御部36は、ONU2から転送されてきた視聴制御フレームを処理する。視聴制御フレームは、あるチャネルの視聴開始または視聴停止を表すフレームである。
【0058】
PON制御部36は、転送された視聴制御フレームのVIDを用いて、複数のONU2の中から、視聴制御フレームを送信したONU2を判別する。ONU2からの視聴制御フレームが視聴開始フレームの場合、PON制御部36は、そのONU2が、視聴開始フレームにより特定されたチャネルの視聴を開始したことを、配下ONU視聴状態管理テーブル36aに登録する。一方、ONU2からの視聴制御フレームが視聴停止フレームの場合、PON制御部36は、そのONU2が、視聴開始フレームにより特定されたチャネルの視聴を停止したことを、配下ONU視聴状態管理テーブル36aに登録する。
【0059】
PON制御部36は、さらに、必要に応じて、各ONU2に対して、マルチキャストフィルタ数を問合せる制御フレームを送信する。このフレームには、たとえば拡張OAMフレームを用いることができる。
【0060】
送信処理部34は、マルチキャスト判定部41と、マルチキャスト配信方式選択部42と、MCB方式処理部43と、SCB方式処理部44と、送信処理制御部45と、チャネル別配信方式管理テーブル46とを含む。
【0061】
上位装置からのマルチキャストフレームは、上位装置IF部31に送られる。上位装置IF部31は、マルチキャストフレームを受信して、そのマルチキャストフレームをFIFO2(38)に送信する。
【0062】
マルチキャスト判定部41は、FIFO2(38)からフレームを受信して、その受信フレームが、配信方式を選択すべきマルチキャストフレームであるかどうかを判定する。具体的にはマルチキャスト判定部41は、受信したフレームに含まれる宛先アドレスが、マルチキャストチャネル管理テーブル39aに登録されたマルチキャストアドレスと一致するかどうかを判定する。「マルチキャストアドレス」は、マルチキャストフレームを受け取る特定のグループ(マルチキャストグループ)を指定するアドレスである。
【0063】
受信したフレームに含まれる宛先アドレスが、マルチキャストチャネル管理テーブル39aに登録済のアドレスである場合、マルチキャスト判定部41は、当該受信フレームの配信方式を選択すべきと判定する。この場合、マルチキャスト判定部41は、そのマルチキャストフレームをマルチキャスト配信方式選択部42に送信する。
【0064】
一方、受信したフレームに含まれる宛先アドレスが、マルチキャストチャネル管理テーブル39aに登録されたマルチキャストアドレスと一致しない場合、マルチキャスト判定部41は、そのフレームについては、配信方式の選択が不要と判定する。この場合、そのマルチキャストフレームを、MCB方式処理部43に送信する。
【0065】
マルチキャスト配信方式選択部は、マルチキャスト判定部41の判定結果、および、チャネル別配信方式管理テーブル46に基づいて、MCB方式処理部43およびSCB方式処理部44のいずれか一方を、配信処理を行なうべき処理部として選択する。
【0066】
MCB方式処理部43は、フレームにユニキャストLLIDを付与するためのユニキャストLLID付与部として機能する。MCB方式処理部43は、マルチキャスト配信方式選択部42から、あるマルチキャストフレームを受信する。この場合、MCB方式処理部43は、そのマルチキャストフレームを受信すべきONU2の数だけ、当該マルチキャストフレームを複製する。そしてMCB方式処理部43は、各マルチキャストフレームに、ユニキャストLLID、すなわち、そのマルチキャストフレームを受信すべきONUのLLIDを付与する。
【0067】
MCB方式処理部43は、マルチキャスト判定部41から、マルチキャストチャネル管理テーブル39aに登録されていないマルチキャストアドレスを持つマルチキャストフレームを受ける。あるいは、MCB方式処理部43は、マルチキャスト判定部41から、ユニキャストフレームを受ける。これらの場合には、MCB方式処理部43は、受信したフレームにユニキャストLLIDを付与する。
【0068】
SCB方式処理部44は、マルチキャスト判定部41からマルチキャストフレームを受ける。SCB方式処理部44は、そのマルチキャストフレームにブロードキャストLLIDを付与する。
【0069】
MCB方式処理部43およびSCB方式処理部44は、LLID(ユニキャストLLIDまたはブロードキャストLLID)が付与されたマルチキャストフレームをPON送受信部35に送る。PON送受信部35は、そのマルチキャストフレームをPON回線3に送信する。
【0070】
上記のように、MCB方式処理部43は、マルチキャストフレームを必要に応じて複製して、当該マルチキャストフレームをユニキャストで光回線に送信する第1の方式(MCB)で、マルチキャストフレームの配信処理を実行する第1の配信処理部である。SCB方式処理部43は、マルチキャストフレームを複製せずにブロードキャストでPON回線に送信する第2の方式(SCB)で、マルチキャストフレームの配信処理を実行する第2の配信処理部である。
【0071】
送信処理制御部45は、送信処理部34の全体を制御して、上記の配信処理を制御する制御部である。送信処理制御部45は、PON制御部36と、マルチキャストチャネル管理部39とともに、マルチキャストフレームを受けるべき端末装置5における受信チャネル(視聴チャネル)の単位で、配信処理の方式を、MCB方式とSCB方式との間で動的に切替える制御部を構成する。
【0072】
PON制御部36は、端末装置5を配下に有するONU2が有するマルチキャストフィルタを管理する。送信処理制御部45は、PON回線3におけるマルチキャストフレームの伝送状況(たとえば使用される帯域)、およびONU2におけるマルチキャストフィルタの使用状況(たとえば、使用中のマルチキャストフィルタの数)のうちの少なくとも一方に基づいて、MCB方式とSCB方式とを動的に切替える。
【0073】
図4は、マルチキャストチャネル管理テーブルの構造例を示した図である。図4を参照して、マルチキャストチャネル管理テーブル39aには、視聴チャネル(CH1,CH2,・・・)と、マルチキャストアドレス(ADDR1,ADDR2,・・・)とが関連付けて登録される。
【0074】
図5は、配下ONU視聴状態管理テーブルの構造例を示した図である。図5を参照して、配下ONU視聴状態管理テーブル36aには、OLT1の配下にある各ONUについて、チャネルごとの視聴状態(「視聴中」または「未視聴」)が登録される。ONU番号(ONU 1,ONU 2,ONU 3,・・・)は、各ONUを識別するための番号である。なお、ONU番号に代えてLLIDを用いることも可能である。
【0075】
図6は、配下ONUマルチキャストフィルタ数管理テーブルの構造例を示した図である。図6を参照して、配下ONUマルチキャストフィルタ数管理テーブル36bには、OLT1の配下にあるONU2ごとに、現在使用されているマルチキャストフィルタ数(r1,r2,r3,・・・)、および、そのONU2の最大フィルタ数(R1,R2,R3,・・・)が登録される。
【0076】
各ONU2の識別のために、ONU番号(ONU 1,ONU 2,ONU 3,・・・)が配下ONUマルチキャストフィルタ数管理テーブル36bにおいて用いられる。ONU番号は、配下ONU視聴状態管理テーブル36aと配下ONUマルチキャストフィルタ数管理テーブル36bとで共通である。したがって、送信処理制御部45は、あるONUに割り当てられたONU番号に基づいて、そのONUのチャネルごとの視聴状態と、現在のマルチキャストフィルタ数と、最大フィルタ数とを取得することができる。
【0077】
図7は、チャネル別配信方式管理テーブルの構造例を示した図である。図7を参照して、チャネル別配信方式管理テーブル46には、チャネル(CH1,CH2,CH3,CH4,・・・)と、配信方式とが対応付けられて登録されている。配信方式は、固定SCB方式、固定MCB方式、動的SCB方式、動的MCB方式のいずれかである。
【0078】
固定SCB方式とは、SCB方式に固定された配信方式である。同じく固定MCB方式とは、MCB方式に固定された配信方式である。一方、動的SCB方式とは、現在はSCB方式であるが、MCB方式に動的に変更可能な配信方式である。動的MCB方式とは、現在はMCB方式であるが、SCB方式に動的に変更可能な配信方式である。
【0079】
このように、特定のチャネルのマルチキャストフレームの配信方式は、MCB方式およびSCB方式のいずれか一方に固定されていてもよい。なお、いずれかのONU2において、あるチャネルの視聴が停止された場合、OLT1は、当該チャネルのマルチキャストフレームの配信方式は変更しない。
【0080】
なお、同一チャネルでも、通信速度(1Gbps,10Gbps)に応じて配信方式が異なっていてもよい。たとえばチャネルCH1について、通信速度が1Gbpsの場合には、配信方式が固定SCB方式であるのに対して、通信速度が10Gbpsの場合には、配信方式が動的SCB方式である。
【0081】
配信方式の動的切替を説明するに先立ち、SCB方式およびMCB方式での視聴開始処理の概要を説明する。なお、OLT1とONU2との間の処理の理解を容易にするために、以下に説明するシーケンス図では、ONU2の配下の端末装置5は示されていない。
【0082】
図8は、SCB方式での視聴開始処理の概要を説明したシーケンス図である。図8を参照して、シーケンスSQ11において、OLT1のOSU12が、あるONU(「ONU(1)」と表す)に、SCB方式でマルチキャストフレームを送信している。
【0083】
シーケンスSQ12において、別のONU(「ONU(2)」と表す)の配下の端末装置が、あるチャネルの視聴を開始するための視聴開始フレームを送信する。ONU(2)は、その視聴開始フレームを、OSU12にそのまま転送する。
【0084】
シーケンスSQ13において、OSU12(PON制御部36)は、ONU(2)からの視聴開始フレームに基づいて、配下ONU視聴状態管理テーブル36aを更新する。配下ONU視聴状態管理テーブル36aでは、ONU(2)について、視聴開始フレームによって特定される視聴チャネルの視聴状態が「未視聴」から「視聴中」へと更新される。
【0085】
シーケンスSQ14において、OSU12(PON制御部36)は、ONU(2)に対して、マルチキャストフィルタを設定する。この場合、視聴要求によって端末装置から要求されたチャネルのマルチキャストフレームがONU(2)を通過するように、ONU(2)のマルチキャストフィルタが設定される。より具体的には、マルチキャストアドレスが付されたマルチキャストフレームを通過させるように、ONU2のポートが設定される。これにより、端末装置5が視聴開始を要求したチャネルのSCBフレームがONU2を通過することができる。
【0086】
シーケンスSQ15において、OSU12は、SCB方式に従うマルチキャストフレーム(「SCBフレーム」と示される)を配信する。SCBフレームは、光カプラ4において分配されて、ONU(1)およびONU(2)の両方に届けられる。そのSCBフレームでの視聴チャネルが、端末装置5が視聴開始を要求したチャネルに対応している場合には、ONU(2)は、そのSCBフレームを通過する。ONU(2)の配下の端末装置はSCBフレームを受信する。
【0087】
図9は、MCB方式での視聴開始処理の概要を説明したシーケンス図である。図9を参照して、シーケンスSQ21〜SQ23の処理は、シーケンスSQ11〜SQ13の処理と同様である。
【0088】
シーケンスSQ21において、OLT1のOSU12が、ONU(1)にMCB方式でマルチキャストフレームを送信している。シーケンスSQ22において、ONU(2)の配下の端末装置が、視聴開始フレームを送信する。ONU(2)は、その視聴開始フレームを、OSU12にそのまま転送する。
【0089】
シーケンスSQ23において、OSU12(PON制御部36)は、ONU(2)からの視聴開始フレームに基づいて、配下ONU視聴状態管理テーブル36aを更新する。
【0090】
OSU12(送信処理部34)は、ONU(1)およびONU(2)の両方にマルチキャストフレームを配信するために、上位装置6から受信したマルチキャストフレームを複製して2つのマルチキャストフレームを生成する。OSU12(送信処理部34)は、その2つのマルチキャストフレームに、ONU(1)のLLIDおよびONU(2)のLLIDをそれぞれ付与する。
【0091】
シーケンスSQ24,SQ25において、OSU12は、2つのマルチキャストフレームをそれぞれ配信する。ONU(1),ONU(2)の各々は、自己のLLIDに一致したLLIDを有するマルチキャストフレームを受信する。
【0092】
図10は、OLT1の配下にあるONU2のマルチキャストフィルタ数および最大フィルタ数のいずれか一方もしくは両方を管理する方法を説明するためのシーケンス図である。図10を参照して、シーケンスSQ31において、OSU12(PON制御部36)は、制御フレーム(たとえば拡張OAMフレーム)をたとえばONU(1)に送信して、ONU(1)にマルチキャストフィルタ数および最大フィルタ数のいずれか一方もしくは両方を問い合わせる。シーケンスSQ32において、ONU(1)は、マルチキャストフィルタ数および最大フィルタ数のいずれか一方もしくは両方を示した制御フレームをOSU12に送信して、OSU12にマルチキャストフィルタ数および最大フィルタ数のいずれか一方もしくは両方を応答する。シーケンスSQ31において、OSU12(PON制御部36)は、配下ONUマルチキャストフィルタ数管理テーブル36bを更新する。
【0093】
なお、ONU(2)からマルチキャストフィルタ数および最大フィルタ数のいずれか一方もしくは両方を取得する必要が生じた場合には、OSU12(PON制御部36)は、上記のシーケンスSQ31〜SQ33と同様の手順に従って処理を実行する。
【0094】
図11は、本発明の実施の形態に係る局側装置によって実行される、MCB方式からSCB方式への動的切替を説明するためのシーケンス図である。図11を参照して、シーケンスSQ41,SQ42において、OSU12は、ある視聴チャネル(たとえばチャネルCH1)のマルチキャストフレームを、MCB方式でONU(1)、ONU(2)にそれぞれ配信する。
【0095】
シーケンスSQ43において、OSU12は、チャネルCH1のマルチキャストフレームの配信方式をMCB方式からSCB方式へと切替える必要があると判断する。この時点では、MCB方式からSCB方式への切替えが完了していない。したがって、OSUは、次にONU(1)、ONU(2)に配信すべきマルチキャストフレームを、MCB方式で配信する(シーケンスSQ44,SQ45)。
【0096】
シーケンスSQ46において、OSU12は、チャネルCH1のマルチキャストフレームを受信するONUに対して、マルチキャストフィルタの設定を行なう。したがって、ONU(1),ONU(2)では、チャネルCH1のマルチキャストフレームをSCB方式で受信するためのマルチキャストフィルタが設定される。さらに、他のONUでもチャネルCH1のマルチキャストフレームをSCB方式で受信するためのフィルタが設定されてもよい。
【0097】
マルチキャストフィルタの設定は、基本的には図8のシーケンスSQ14の処理である。ただし配信方式の動的切替の際には、OLT(OSU)の主導で、ONUのマルチキャストフィルタが設定される。したがって、ONU(1),ONU(2)からの視聴開始フレームは必ずしも必要ではない。
【0098】
このように、ONU2においてマルチキャストフィルタの設定が完了するまでは、MCB方式でのマルチキャストフレームの配信が継続される。したがって、配信方式の切り替えにより、マルチキャストフレームの配信が一時的に停止することを避けることができる。
【0099】
図12は、本発明の実施の形態に係る局側装置によって実行される、SCB方式からMCB方式への動的切替を説明するためのシーケンス図である。図12を参照して、シーケンスSQ51において、OSU12は、チャネルCH1のSCBフレームをPON回線に送信する。ONU(1)、ONU(2)は、このSCBフレームを通過させるように、そのマルチキャストフィルタが設定されている。
【0100】
シーケンスSQ52において、OSU12は、チャネルCH1のマルチキャストフレームの配信方式をSCB方式からMCB方式へと切替える必要があると判断する。
【0101】
OSU12は、次にONU(1)、ONU(2)に配信すべきマルチキャストフレームを、MCB方式でONU(1)、ONU(2)に配信する(シーケンスSQ53,SQ54)。
【0102】
シーケンスSQ55において、OSU12は、チャネルCH1のマルチキャストフレームを受信するONUに対して、マルチキャストフィルタの解除を行なう。ONU(1)およびONU(2)(さらに、他のONUを含んでもよい)では、チャネルCH1のマルチキャストフレームを受信するためのマルチキャストフィルタが解除される。
【0103】
このように、SCB方式からMCB方式の切替の際には、MCB方式でのマルチキャストフレームの配信が開始されると、マルチキャストフィルタが解除される。これにより、SCB方式からMCB方式の切替の際に、マルチキャストフレームの配信が一時的に停止することを避けることができる。
【0104】
MCB方式とSCB方式との間での切替のタイミングが重要である。MCB方式で配信されるマルチキャストフレームを受信するONUの数が増える場合、PON回線3を伝送されるマルチキャストフレームが増えるため、PONシステムで使用される帯域が増大する。一方、ONUの配下の端末装置での視聴チャネルが増える(たとえば複数の端末装置が別のチャネルの視聴を開始する)ほど、ONUで使用されるマルチキャストフィルタが増える。しかし、ONUが有する(使用可能な)マルチキャストフィルタの数は有限である。
【0105】
本発明の各実施の形態では、以下に説明するようにMCB方式とSCB方式との間の動的切替を判定する。これによって、PONシステム100で使用される帯域の増大をできるだけ抑えながら、ONU2において使用されるマルチキャストフィルタの数を制御することができる。
【0106】
以下、本発明の各実施の形態について詳細に説明する。なお、理解を容易にするために、実施の形態1,2では、複数のONU2に設定された通信速度は、同一種類の通信速度(たとえば1Gbps、あるいは10Gbps)であるとする。
【0107】
<実施の形態1>
実施の形態1では、OSU12は、ONU2におけるマルチキャストフィルタの使用可能数と、ONU2におけるマルチキャストフィルタの使用数との比較により、MCB方式とSCB方式とを動的に切替える。
【0108】
図13は、実施の形態1に従う、SCB方式からMCB方式への動的切替方法を説明するフローチャートである。図3および図13を参照して、処理が開始されると、ステップS101において、PON制御部36は、配下ONUマルチキャストフィルタ数管理テーブル36bから、各ONUの最大フィルタ数を取得する。そして、PON制御部36は、その取得された最大フィルタ数のうち、最小のフィルタ数を、フィルタ数Fiに設定する。これによりフィルタ数Fiが取得される。
【0109】
ステップS102において、複数のONU2のうちの1つからOSU12に、あるチャネルについての視聴開始フレームが送られる。PON制御部36および送信処理部34は、SCB方式に従って、そのチャネルの視聴開始処理を実行する。この処理は、図8のシーケンスSQ12からシーケンスSQ14までの処理と同様である。
【0110】
ステップS103において、PON制御部36は、フィルタ数Fjと閾値Fthとを比較する。フィルタ数Fjは、各ONU2のマルチキャストフィルタの使用数のうちの最大数である。
【0111】
フィルタ数Fjが閾値Fth未満である場合(ステップS103においてNO)、処理は、ステップS102に戻される。言い換えると、フィルタ数Fjが閾値Fthに達するまでは、新しく視聴が開始されるチャネルのマルチキャストフレームの配信方式は、SCB方式である。一方、フィルタ数Fjが閾値Fth以上である場合(ステップS103においてYES)、処理はステップS105に進む。
【0112】
1つの実施形態において、閾値Fthは、(Fi−1)に設定される。つまり(Fi−Fj)の閾値は1である。(Fi−Fj)が1より大きい場合には、処理はステップS102に戻される。一方、(Fi−Fj)が1以下である場合には、処理はステップS104に進む。
【0113】
ステップS104において、送信処理部34は、最後に視聴が開始されたチャネルのマルチキャストフレームの配信方式をSCB方式からMCB方式に切替える。送信処理制御部45は、チャネル別配信方式管理テーブル46に対して、当該チャネルに関連付けられた配信方式を動的SCB方式から動的MCB方式へと切替える。
【0114】
ステップS105において、送信処理制御部45は、以後に視聴が開始されるチャネルについて、マルチキャストフレームの配信方式をMCB方式に切替える。送信処理制御部45は、未視聴のチャネルの視聴が開始される場合には、チャネル別配信方式管理テーブル46を更新して、そのチャネルのマルチキャストフレームの配信方式を動的MCB方式に設定する。
【0115】
図14は、図13に示す動的切替による、配下ONUマルチキャストフィルタ数管理テーブル36bの変化の一例を示した図である。なお、図14に示された数値は、理解を容易にするために用いられるものであり、本発明の実施の形態を限定するものではない。
【0116】
図14(A)は、図13に示される処理が開始されたときの配下ONUマルチキャストフィルタ数管理テーブル36bの例を示す。図14(A)に示した例では、ONU 1,ONU 2,ONU 3の最大のフィルタ数(使用可能数)は、それぞれ6,7,8である。したがって、最小のフィルタ数Fiは6であり、閾値Fth(=Fi−1)は5である。
【0117】
図14(B)は、図13に示されるステップS102,S103の処理が実行されたときの配下ONUマルチキャストフィルタ数管理テーブル36bの例を示す。図14(B)に示した例では、ONU 1が、あるチャネルの視聴を開始する。当該チャネルのマルチキャストフレームの配信方式はSCB方式である。
【0118】
ステップS102において、当該チャネルの視聴開始処理が実行される。ONU 1のマルチキャストフィルタ数は、4から5へと増える。この場合、マルチキャストフィルタの使用数のうちの最大値(フィルタ数Fj)は5である。
【0119】
ステップS103での判定において、フィルタ数Fjが閾値Fth以上であると判定される。これにより、ステップS104の処理が実行される。図14(C)に示されるように、最後に視聴開始されたチャネルのマルチキャストフレームの配信方式がSCB方式からMCB方式に切替えられる。このため、ONU 1の現在のマルチキャストフィルタ数は、5から4へと減少する。
【0120】
図15は、実施の形態1に従う、MCB方式からSCB方式への動的切替方法を説明するフローチャートである。図3および図15を参照して、処理が開始されると、ステップS111において、PON制御部36は、ステップS101の処理と同じ処理により、最小のフィルタ数Fiを取得する。
【0121】
ステップS112において、複数のONU2のうちの1つからOSU12に、あるチャネルについての視聴開始フレームが送られる。PON制御部36および送信処理部34は、MCB方式に従って、そのチャネルの視聴開始処理を実行する。この処理は、図8のシーケンスSQ22,SQ23の処理と同様である。
【0122】
ステップS113において、PON制御部36は、フィルタ数Fjと閾値Fthとを比較する。フィルタ数Fjが閾値Fth以上である場合(ステップS113においてNO)、処理は、ステップS112に戻される。つまり、フィルタ数Fjが閾値Fth未満に減少するまでは、新しく視聴が開始されるチャネルのマルチキャストフレームの配信方式は、MCB方式である。一方、フィルタ数Fjが閾値Fth未満である場合(ステップS113においてYES)、処理はステップS114に進む。
【0123】
上記のように、1つの実施形態において、閾値Fthは、(Fi−1)に設定される。したがって、(Fi−Fj)が1より大きい場合には、処理はステップS114に進む。一方、(Fi−Fj)が1以下である場合には、処理はステップS112に戻される。
【0124】
ステップS114において、送信処理部34は、最後に視聴が開始されたチャネルのマルチキャストフレームの配信方式をMCB方式からSCB方式に切替える。送信処理制御部45は、チャネル別配信方式管理テーブル46に対して、当該チャネルに関連付けられた配信方式を動的MCB方式から動的SCB方式へと切替える。
【0125】
図13および図15に説明される動的切替方法に限らず、他の方法も採用することができる。図16は、実施の形態1に従う、MCB方式とSCB方式との間の動的切替の別の処理の例を説明する第1のフローチャートである。図17は、図16に示された処理に続く処理を説明する第2のフローチャートである。
【0126】
図16および図17を参照して、ステップS121において、送信処理制御部45は、あるチャネル(チャネルCH_Aと称する)の視聴開始フレームを受信する。ステップS122において、送信処理制御部45は、そのチャネルCH_Aを既に視聴しているONU2があるかどうかを判定する。
【0127】
チャネルCH_Aを既に視聴しているONUがある場合(ステップS122においてYES)、処理はステップS124に進む。
【0128】
一方、チャネルCH_Aを既に視聴しているONUがない場合(ステップS122においてNO)、処理は、後述するステップS141に進む。この場合、OSU12にとっては、配下のONUにおいてチャネルCH_Aが初めて視聴開始された状態となる。
【0129】
ステップS124において、送信処理制御部45は、チャネルCH_Aのマルチキャストフレームの配信方式が、MCB方式であるかどうかを判断する。MCB方式の場合(ステップS124においてYES)、処理はステップS125に進む。ステップS125において、送信処理制御部45は、チャネルCH_Aのマルチキャストフレームの配信方式をMCB方式に決定する。MCB方式と異なる方式(つまりSCB方式)の場合(ステップS124においてNO)、処理はステップS126に進む。
【0130】
ステップS126において、送信処理制御部45は、ONU2のマルチキャストフィルタの残りの数(「残りフィルタ数」)が1以上であるかどうかを判定する。残りフィルタ数とは、上記の(Fi−Fj)に相当する。すなわち、残りフィルタ数は、すべてのONU2のマルチキャストフィルタの使用可能数のうちの最小の数Fiと、すべてのONU2のマルチキャストフィルタの使用数のうちの最大の数Fjとの差である。
【0131】
残りフィルタ数が1以上である場合(ステップS126においてYES)、ステップS127において、送信処理制御部45は、CH_Aのマルチキャストフレームの配信方式をSCB方式に決定する。残りフィルタ数が0である場合(ステップS126においてNO)、処理はステップS128に進む。したがって、この場合、(Fi−Fj)の閾値は0である。
【0132】
ステップS128において、PON制御部36は、チャネルCH_Aを視聴するONUの数が、OSU12の配下のONU2のうちの半数未満であるかどうかを判定する。チャネルCH_Aを視聴するONUの数が、配下ONUのうちの半数未満である場合(ステップS128においてYES)、ステップS129において、送信処理制御部45は、チャネルCH_Aのマルチキャストフレームの配信方式をMCB方式に決定する。さらに送信処理制御部45は、チャネル別配信方式管理テーブル46を更新して、チャネルCH_A(たとえばチャネルCH1)のマルチキャスト配信方式として(動的)MCB方式を登録する。
【0133】
一方、チャネルCH_Aを視聴するONUの数が、配下ONUのうちの半数以上である場合(ステップS128においてNO)、処理はステップS131に進む(図17を参照)。ステップS131において送信処理制御部45は、視聴開始したONUの視聴チャネルのうち、SCB方式でマルチキャストフレームが配信されていて、かつ、そのチャネルを視聴しているONUの数が、OSUに接続されているONUの数の半数未満であるかどうかを判定する。
【0134】
SCB方式でマルチキャストフレームが配信されている各チャネルについて、そのチャネルを視聴しているONUの数が、OSUに接続されているONUの数の半数未満であるチャネルがない場合(ステップS131においてNO)、ステップS136において、送信処理制御部45は、チャネルCH_Aのマルチキャストフレームの配信方式をMCB方式に決定する。
【0135】
SCB方式でマルチキャストフレームが配信されている各チャネルについて、そのチャネルを視聴しているONUの数が、OSUに接続されているONUの数の半数未満であるチャネルが1つ以上ある場合(ステップS131においてYES)、処理はステップS132に進む。ステップS132において、送信処理制御部45は、上記の条件を満たすSCB方式のチャネル(SCBフレームが配信されるチャネル)を切替対象のチャネル候補として記憶する。これらの切替対象のチャネル候補から、1つのチャネル候補が選択される。たとえばこのチャネル候補をCH_Bとする。
【0136】
ステップS133において、送信処理制御部45は、切替対象のチャネル候補CH_Bのマルチキャストフレームの配信方式をMCB方式に切替えることで、チャネルCH_Aのマルチキャストフレームの配信方式をSCB方式に切替えることが可能かどうかを判定する。つまり、送信処理制御部45は、チャネルCH_AのマルチキャストフレームをSCB方式で配信するために、チャネルCH_BのマルチキャストフレームをMCB方式で配信可能かどうかを判定する。たとえばチャネルCH_Bを視聴するONUの数が、帯域の使用の観点から定められたある閾値より小さければ、チャネルCH_BのマルチキャストフレームをMCB方式で配信可能と判定してもよい。
【0137】
チャネルCH_Aのマルチキャストフレームの配信方式をSCB方式に切替えることが可能である場合(ステップS133においてYES)、処理はステップS134に進む。ステップS134において、送信処理制御部45は、チャネルCH_Bのマルチキャストフレームの配信方式をMCB方式に切替える。次にステップS135において、送信処理制御部45は、チャネルCH_Aのマルチキャストフレームの配信方式をSCB方式に切替える。
【0138】
CH_Aのマルチキャストフレームの配信方式をSCB方式に切替えることができない場合(ステップS133においてNO)、送信処理制御部45は、チャネルCH_Aのマルチキャストフレームの配信方式をMCB方式に切替える(ステップS136)。
【0139】
図16に戻り、ステップS141の処理について説明する。ステップS141において、チャネルCH_Aの視聴を開始したONUのマルチキャストフィルタの残りフィルタ数が1以上であるかどうかを判断する。残りフィルタ数が1以上である場合(ステップS141においてYES)、送信処理制御部45は、チャネルCH_Aのマルチキャストフレームの配信方法をSCB方式に決定する(ステップS142)。一方、残りフィルタ数が0である場合(ステップS141においてNO)、送信処理制御部45は、チャネルCH_Aのマルチキャストフレームの配信方法をMCB方式に決定する(ステップS143)。
【0140】
マルチキャストフィルタの使用可能数の最小値Fiと、マルチキャストフィルタの使用数の最大値Fjとの差(Fi−Fj)は、未使用のマルチキャストフィルタの数に関する最も厳しい条件である。言い換えると、すべてのONUは、少なくとも、(Fi−Fj)の未使用のマルチキャストフィルタを有する。
【0141】
このように実施の形態1では、ONU2におけるマルチキャストフィルタの使用可能数(最大フィルタ数)と、そのONU2におけるマルチキャストフィルタの使用数との比較により、MCB方式とSCB方式とを切替える。これにより、OLT1は、未使用のマルチキャストフィルタの数を把握して第1の方式と第2の方式とを切替えることができる。図13図15に示された処理では、新しく視聴開始されたチャネルのマルチキャストフィルタがSCB方式で配信されることにより、(Fi−Fj)が1以下になると、そのチャネルのマルチキャストフィルタの配信方式がMCB方式に切替えられる。したがって、すべてのONUは未使用のマルチキャストフィルタを少なくとも1つは有することができる。
【0142】
図16および図17に示されるように、実施の形態1によれば、あるチャネルのマルチキャストフレームの配信方式をMCB方式からSCB方式に切替えた際には、予め別のチャネルのマルチキャストフレームの配信方式をSCB方式からMCB方式に切替える。つまり、図16および図17に示される処理も、ONU2において、SCB方式でのマルチキャストフレームを受信するために、少なくとも1つの未使用マルチキャストフィルタを確保することができる。
【0143】
たとえば、MCB方式でマルチフレームキャストが配信されるチャネルが増大すると、あるチャネルのマルチフレームキャストの配信方式をMCB方式からSCB方式へと切替えることができる。これにより、PONシステムで使用される帯域の増大を抑えることができる。
【0144】
一方、ONU2において使用されるマルチキャストフィルタの数が増えると、あるチャネルのマルチフレームキャストの配信方式をSCB方式からMCB方式へと切替えることができる。すなわちONU2において使用されるマルチキャストフィルタの数を制御することができる。したがって、あるONU2において、すべてのマルチキャストフィルタが使用されているために、新たなチャネルを視聴するためにマルチキャストフィルタを使用できないという状況を避けることができる。
【0145】
<実施の形態2>
実施の形態2では、あるチャネルについて、トリガが発生した場合に、マルチキャストフレームの配信方式をMCB方式とSCB方式との間で動的に切替える。
【0146】
図18は、実施の形態2に従う、SCB方式とMCB方式との間の動的切替方法を説明するフローチャートである。図18を参照して、処理が開始されると、ステップS201において、送信処理制御部45は、マルチキャストフレームの配信方式を切替えるためのトリガが発生したかどうかを判定する。
【0147】
トリガが発生していない場合(ステップS201においてNO)、処理はステップS205に進む。この場合には、マルチキャストフレームの配信方式には変更はない。
【0148】
トリガが発生した場合(ステップS201においてYES)、処理はステップS202に進む。ステップS202において、送信処理制御部45は、切替対象のチャネルのマルチキャストフレームの配信方式がMCB方式およびSCB方式のいずれであるかを判定する。
【0149】
切替対象のチャネルのマルチキャストフレームについて、現在の配信方式がMCB方式である場合、送信処理制御部45は、配信方式をSCB方式に切替える(ステップS203)。逆に、現在の配信方式がSCB方式である場合、送信処理制御部45は、配信方式をMCB方式に切替える(ステップS204)。
【0150】
トリガの一例は、制御者による指示である。制御者による指示は、たとえば、まずOLT1の制御部14(図2参照)が受信する。制御部14は、その指示をOSU12に送信する。OSU12の制御IF部32(図3を参照)は、制御部14からの指示をPON制御部36および送信処理部34に送る。
【0151】
トリガの別の例は、予め指定された切替時刻である。送信処理制御部45は、チャネルごとに配信方式の切替時刻を保持するとともに現在時刻を監視する。現在時刻が、その切替時刻になると配信方式が切替えられる。切替時刻の指定は制御者が行なってもよく、OSU12が各種の条件に基づいて設定してもよい。
【0152】
トリガのさらに別の例は、単位時間あたりの視聴数の変化数、すなわち視聴数の変化率である。PON制御部36または送信処理制御部45は、チャネルごとに、視聴数の変化率を管理する。視聴数とは、ある同一チャネルを視聴するONUの数と言い換えることができる。視聴数の増加率には閾値が予め定められる。
【0153】
ある視聴チャネルについて、マルチキャストフレームがMCB方式で配信されている。この場合の視聴数は、そのチャネルを視聴するONUの数であるとともに、OLT1(送信処理部34)において複製すべきマルチキャストフレームの数でもある。そのチャネルの視聴数の増加率が予め定められた閾値に達した場合に、送信処理制御部45は、配信方式をMCB方式からSCB方式に切替える。
【0154】
同じように、SCB方式でマルチキャストフレームが配信されているチャネルの視聴数の増加率が、予め定められた閾値に達した場合に、送信処理制御部45は、配信方式をSCB方式からMCB方式に切り替えてもよい。
【0155】
さらに、たとえば、制御者による指示、予め指定された時刻、および単位時間あたりの視聴数(あるチャネルを受信するONUの数)の変化率という3つの条件のうちの少なくとも1つが成立することで、配信方式を切替えるためのトリガで発生してもよい。
【0156】
たとえば人気番組の放送が開始された場合には、大量の視聴開始が短時間に発生することが想定される。そのような場合には、帯域の消費量が短時間で急速に変化する。
【0157】
番組の放送開始時刻は基本的に固定されている。したがって、実施の形態2によれば、その時刻にマルチキャストフレームの配信方式をMCB方式からSCB方式へと変更することができる。あるいは、視聴数の増加率が閾値に達すると、マルチキャストフレームの配信方式をMCB方式からSCB方式へと変更することができる。
【0158】
実施の形態2によれば、PONシステム100で使用される帯域の増大をできるだけ抑えながら、ONU2において使用されるマルチキャストフィルタの数を制御することができる。さらに、実施の形態2によれば、帯域の使用量が短時間で急速に増大することを抑えることができる。
【0159】
なお、実施の形態2を実施の形態1と組み合わせてもよい。たとえばトリガが発生していなくても、未使用のマルチキャストフィルタの数(Fi−Fj)が1以上であれば、あるチャネルのマルチキャストフレームの配信方式をMCB方式からSCB方式へと切り替えてもよい。
【0160】
<実施の形態3>
OLTの配下のONUの間では、通信速度が異なる可能性がある。OLTが異なる通信速度のONUを収容し、全ての通信速度で同一波長を用いて下り信号を送信すると仮定する。この場合、同じデータ量を送信する際、低速の通信の方がより多くの帯域を消費する。
【0161】
したがって、実施の形態3では、OLT1は、通信速度が低いONUにはマルチキャストフレームの配信方式にSCB方式を用いる。一方、OLT1は、通信速度が高いONUにはマルチキャストフレームの配信方式にMCB方式を用いる。なお、OLT1は、通信速度が低いONUにはMCB方式を用いる一方で、通信速度が高いONUにSCB方式を用いてもよい。
【0162】
図19は、実施の形態3に従う、SCB方式とMCB方式との間の動的切替方法を説明するフローチャートである。図19を参照して、ステップS301において、送信処理制御部45(PON制御部36でもよい)は、MCB方式の場合に必要なマルチキャストフレームの送信時間とSCB方式の場合に必要なマルチキャストフレームの送信時間との差をチャネルごとに算出する。
【0163】
たとえばMCB方式を採用した場合に必要な送信時間は次のように計算できる。OSU12の配下のONUの各々について、ある長さ(一例では1500byteであるがこれに限定されない)のフレームを送信するために必要な時間を、算出する。ONUごとに算出された送信時間が合計される。
【0164】
SCB方式を採用した場合に必要な送信時間は、次のように見積もることができる。視聴ONUの通信速度のうち、最も遅い通信速度で、MCB方式での送信時間の算出の際に用いた長さ(一例では1500byteであるがこれに限定されない)のフレームを送信するために必要な時間が求められる。その時間が、SCB方式を採用した場合に必要な送信時間とされる。
【0165】
ステップS302において、送信処理制御部45は、その算出結果を降順に並べて、チャネルのリストを作成する。ステップS303において、送信処理制御部45は、そのリストの上位のチャネルから順に配信方式を決定する。
【0166】
図20は、図19のステップS303の処理を詳細に説明したフローチャートである。図20を参照して、ステップS310において、送信処理制御部45は、リストから選んだチャネルを視聴中の全てのONUのマルチキャストフィルタの残りフィルタ数が1以上であるかどうかを判定する。
【0167】
視聴中の全てのONUの残りフィルタ数が1以上である場合(ステップS310においてYES)、ステップS311において、送信処理制御部45は、マルチキャストフレームの配信方式をSCB方式に決定する。一方、視聴中のONUの少なくとも1つにおいて残りフィルタ数が0である場合(ステップS310においてNO)、ステップS312において、送信処理制御部45は、マルチキャストフレームの配信方式をMCB方式に決定する。
【0168】
実施の形態3によれば、OLT1の制御部(PON制御部36および送信処理部34)は、各ONUの通信速度から、PON回線3における帯域の利用効率を最適にするための各受信チャネルのマルチキャストフレームの配信方式を決定する。そして、その決定された配信方式に従って、視聴チャネルごとに、配信処理の方式を、MCB方式とSCB方式との間で切替える。これにより、実施の形態1、実施の形態2と同様に、PONシステム100で使用される帯域の増大をできるだけ抑えながら、ONU2において使用されるマルチキャストフィルタの数を制御することができる。なお、実施の形態3を、実施の形態1および実施の形態2の一方または両方と組み合わせてもよい。
【0169】
実施の形態3では、帯域の利用効率を高める一例として、通信速度を加味して最適な利用効率を求める計算を示した。しかし、本発明の実施形態では、帯域の利用効率の最適解を得るように限定されるものではなく、帯域の利用効率の好適な解が求められるのであってもよい。帯域の利用効率を全体として改善することができるならば、各受信チャンネルの配信処理の方式を、MCB方式とSCB方式との間で動的に切替える意義がある。
【0170】
上記の各実施の形態では、OLT1に含まれるOSUの数は1つであるが、OLT1の構成はこのように限定されるものではない。図21に示されるように、OLT1は複数のOSUを有していてもよい。この場合、集線部15は、たとえば上位装置6から受信した下りフレームを適切なOSUに振り分ける処理を行なう。
【0171】
また、上記実施の形態では、1つのOSUに対して複数のONUがPON回線3を通じて接続されている。しかし、1つのOSUに接続されるONUの数が1つの構成であっても、上記の各実施の形態は適用することができる。ここでの「接続」とは、物理的な接続に限定されず、たとえばディスカバリ処理を通じてOLT1とONU2とが通信可能な状態(リンクアップ)されていることを含む。
【0172】
また、マルチキャストフレームによって配信される情報は、映像に関する情報に限定されるものではない。
【0173】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0174】
1 局側装置(OLT)、2_1〜2_N 宅側装置(ONU)、3 PON回線、4 光カプラ、5 端末装置、6 上位装置、7 ルータ、8 サーバ、12 光回線ユニット(OSU)、14 制御部、15 集線部、31 上位装置IF部、32 制御IF部、33 受信処理部、34 送信処理部、35 送受信部、36 PON制御部、36a 配下ONU視聴状態管理テーブル、36b 配下ONUマルチキャストフィルタ数管理テーブル、39 マルチキャストチャネル管理部、39a マルチキャストチャネル管理テーブル、41 マルチキャスト判定部、42 マルチキャスト配信方式選択部、43 MCB方式処理部、44 SCB方式処理部、45 送信処理制御部、46 チャネル別配信方式管理テーブル46、100 PONシステム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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