(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6291880
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】包装体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 33/00 20060101AFI20180305BHJP
B65B 9/06 20120101ALI20180305BHJP
【FI】
B65D33/00 C
B65B9/06
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-18351(P2014-18351)
(22)【出願日】2014年2月3日
(65)【公開番号】特開2015-145265(P2015-145265A)
(43)【公開日】2015年8月13日
【審査請求日】2017年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 幸子
【審査官】
小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−239187(JP,A)
【文献】
特開2011−148546(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 33/00
B65B 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
最内層にヒートシール性樹脂層を有する積層体からなる包装材の両側端部を、合掌状にヒートシールして背貼りシール部を縦方向に形成した筒状の胴部を有する包装体であって、
背貼りシール部の基線を略中央に配置し、背貼りシール部を片側に倒して、胴部を扁平に折り畳み、両端をヒートシールしたサイドシール部を有し、
包装体の底部及び天部は、前記背貼りシール部が片側に倒されて、包装体の胴部に密着した状態でヒートシールされており、
背貼りシール部の上部には、開封のきっかけとなる、開封用ノッチが設けられており、
胴部を形成する包装材には、左右一対の開封誘導線が設けられており、
該開封誘導線は、脆弱加工によって形成される、包装材を貫通しない切目線であり、前記背貼りシール部の基線を中心線として左右対称に形成され、前記背貼りシール部の基線の近傍であり、且つ、前記開封用ノッチと天部シール部の間の高さに設定された始点から、前記サイドシール部と底部シール部の交点の内際近傍に設定された終点に到達する連続した線、または、前記始点から水平方向に出発して放物線状または楕円曲線状に下降し、前記終点に到達する連続した線であることを特徴とする包装体。
【請求項2】
最内層にヒートシール性樹脂層を有する積層体からなる包装材の両側端部を、合掌状にヒートシールして背貼りシール部を縦方向に形成した筒状の胴部を有する包装体であって、
背貼りシール部の基線を略中央に配置し、背貼りシール部を片側に倒して、胴部を扁平に折り畳み、両端をヒートシールしたサイドシール部を有し、
包装体の底部及び天部は、前記背貼りシール部が片側に倒されて、包装体の胴部に密着した状態でヒートシールされており、
背貼りシール部の上部には、開封のきっかけとなる、開封用ノッチが設けられており、
胴部を形成する包装材には、左右一対の開封誘導線が設けられており、
該開封誘導線は、脆弱加工によって形成される、包装材を貫通しない切目線であり、前記背貼りシール部の基線を中心線として左右対称に形成され、前記背貼りシール部の基線の近傍であり、且つ、前記開封用ノッチと天部シール部の間の高さに設定された始点から出発して斜め下方に直線的に進行し、前記サイドシール部手前で湾曲して下方に向きを変え、前記サイドシール部に沿って下降し、前記サイドシール部と底部シール部の交点の内
際近傍に設定された終点に到達する連続した線、または、前記始点から出発して一旦下降し、前記開封用ノッチの近傍を通過した後、湾曲してサイドシール部方向に向きを変え、略直線状に広がった後、前記サイドシール部手前で湾曲して再び下方に向きを変え、前記サイドシール部に沿って下降して前記終点に到達する包装袋の左右幅方向に広がる連続した線であることを特徴とする包装体。
【請求項3】
偏平な内容物が収納されており、前記開封誘導線は、該内容物の外周に交叉するように描かれており、開封後の開口部から少なくとも内容物の一辺または外周の50%以上が露出することを特徴とする請求項1または2に記載の包装体。
【請求項4】
最内層のヒートシール樹脂層と、内容物との、JIS K7125に規定する静摩擦係数が0.3以上であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の包装体。
【請求項5】
内容物が水、アルコール、油、薬液等の流体に浸り、少なくとも表面が湿潤な状態であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の包装体。
【請求項6】
内容物の腰強度が包装袋の腰強度より低いことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の包装体。
【請求項7】
前記開封誘導線は、レーザー加工法によって形成され、包装材の最内層のヒートシール性樹脂層を貫通しないことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の包装体。
【請求項8】
以下の工程をこの順序に含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の包装体の製造方法。
印刷を施した包装材原反に、レーザー加工法によつて開封誘導線を形成する工程。
印刷を施した包装材原反を、所定の幅にスリットする工程。
背貼りシール部、サイドシール部を形成し、開封ノッチを設ける工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、易開封性の包装袋に内容物を収納した包装体及びその製造方法に関し、特に包装材を背貼りシール加工により筒状に成形して胴部を形成した後に、背貼りシール部を略中央に配置して折り畳み、両端をヒートシールして扁平にした後、天部と底部をシールしてなる包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、1枚の包装材を筒状に丸めて合掌状の背貼りシール部を形成し、天部と底部のシール部の間に内容物を収納したいわゆるピロー包装体が、さまざまな用途に使用されている。このような構造の包装体を開封する最も一般的な方法としては、天部シール部の端に開封ノッチを設け、ここから下に向って縦方向に開封する方法である。
【0003】
しかしこの方法によると、しばしば包装材の裂け目が横に逸れて下まで連続した開口が得られなかったりすることがあった。また下まで開封できたとしても、例えばあられなどのように、リジッドで滑りの良い内容物であれば問題ないが、例えばコンドームのように、厚みが薄くてしかも滑りの悪い内容物であると開口部から内容物をつまみ出すことが困難な場合があった。
【0004】
この開口部からのつまみ出し性を改善するために、開封位置を内容物に深く入り込むように設定すると、開封の際に内容物を破損する可能性がある。
【0005】
ピロー包装体を開封する他の方法としては、背貼りシール部に2つの開封ノッチを設け、2つの開封ノッチに挟まれた部分を開封開始部として、ここから水平に帯状に開封する方法が知られている。
【0006】
しかし、この方法は、例えばスティック状の菓子のように、縦に細長い棒状の内容物が多数収納されているような場合には有効であるが、例えばウエットティッシュのように、薄くて腰のない内容物が積み重ねられた内容物には、不向きである。
【0007】
このように、同じピロー包装袋であっても、内容物の形状や性状、使用方法によって、さまざまな開封構造が必要とされる。
【0008】
特許文献1に記載された易開封袋は、合掌貼りの背貼り部と前縁溶着部の交点にノッチを設け、ここを開封開始点として、背貼りシール部を開封帯のように除去して開封することができるようにした包装袋である。
【0009】
特許文献1に記載された易開封袋は、極めて簡単な構造でありながら、大きな開口径の取出口が比較的安定して得られるという特徴を有しているが、取出口の形状が直線状であって開口面積が小さいため、ある程度腰のある平板状の物品が重なったような内容物や、滑りの悪い内容物、あるいは繊細で傷付きやすい内容物等には適用することができなかった。
【0010】
特許文献2に記載された易開封性包装袋は、同様にピロータイプの包装袋において、合掌シール部に切込みを設け、ここから端縁シール部に向ってV字状の切目線を設けたものである。
【0011】
特許文献2に記載された易開封性包装袋は、開封開始部から出発した切目が、V字状に
広がるため、開封が自然に無理なく行われ、しかも切目が端縁シール部で停止するため、開封片が解離せず、簡易的な再封止も可能である。
【0012】
しかし、特許文献2に記載された易開封性包装袋は、包装体の頭部を開封する構造であるため、特許文献1に記載された易開封袋と同様に、平板状の物品が重なったような内容物や、滑りの悪い内容物には適用することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】実用新案第3035855号公報
【特許文献2】特開2009−40509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の解決しようとする課題は、特に偏平で厚みが薄く腰のない内容物や、滑り性の悪い内容物、あるいは繊細で傷付きやすい内容物であっても、開封性や取り出し性の良い包装体、及びこの包装体の製造方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、最内層にヒートシール性樹脂層を有する積層体からなる包装材の両側端部を、合掌状にヒートシールして背貼りシール部を縦方向に形成した筒状の胴部を有する包装体であって、
背貼りシール部の基線を略中央に配置し、背貼りシール部を片側に倒して、胴部を扁平に折り畳み、両端をヒートシールしたサイドシール部を有し、
包装体の底部及び天部は、前記背貼
りシール部が片側に倒されて、包装体の胴部に密着した状態でヒートシールされており、
背貼りシール部の上部には、開封のきっかけとなる、開封用ノッチが設けられており、
胴部を形成する包装材には、左右一対の開封誘導線が設けられており、
該開封誘導線は、脆弱加工によって形成される、包装材を貫通しない切目線であり、前記背貼りシール部の基線を中心線として左右対称に形成され、前記背貼
りシール部の基線の近傍であり、且つ、前記開封用ノッチと天部シール部の間の高さに設定された始点から
、前記サイドシール部と底部シール部の交点の内際近傍に設定された終点に到達する連続した線
、または、前記始点から水平方向に出発して放物線状または楕円曲線状に下降し、前記終点に到達する連続した線であることを特徴とする包装体である。
【0016】
本発明に係る包装体は、背貼りシール部に設けた開封用ノッチから開封して、左右幅方向に広がる開封誘導線に沿って大きな開口部が形成できるため、従来、取り出し難かったような内容物の取出しが容易である。
【0017】
また、請求項2に記載の発明は、
最内層にヒートシール性樹脂層を有する積層体からなる包装材の両側端部を、合掌状にヒートシールして背貼りシール部を縦方向に形成した筒状の胴部を有する包装体であって、
背貼りシール部の基線を略中央に配置し、背貼りシール部を片側に倒して、胴部を扁平に折り畳み、両端をヒートシールしたサイドシール部を有し、
包装体の底部及び天部は、前記背貼りシール部が片側に倒されて、包装体の胴部に密着した状態でヒートシールされており、
背貼りシール部の上部には、開封のきっかけとなる、開封用ノッチが設けられており、
胴部を形成する包装材には、左右一対の開封誘導線が設けられており、
該開封誘導線は、脆弱加工によって形成される、包装材を貫通しない切目線であり、前記背貼りシール部の基線を中心線として左右対称に形成され、前記背貼りシール部の基線の近傍であり、且つ、前記開封用ノッチと天部シール部の間の高さに設定された始点から出発して斜め下方に直線的に進行し、前記サイドシール部手前で湾曲して下方に向きを変え、前記サイドシール部に沿って下降し、前記サイドシール部と底部シール部の交点の内際近傍に設定された終点に到達する連続した線、または、前記始点から出発して一旦下降し、前記開封用ノッチの近傍を通過した後、湾曲してサイドシール部方向に向きを変え、略直線状に広がった後、前記サイドシール部手前で湾曲して再び下方に向きを変え、前記サイドシール部に沿って下降して前記終点に到達する包装袋の左右幅方向に広がる連続した線であることを特徴とす
る包装体である。
【0019】
また、請求項
3に記載の発明は、偏平な内容物が収納されており、前記開封誘導線は、該内容物の外周に交叉するように描かれており、開封後の開口部から少なくとも内容物の一辺または外周の50%以上が露出することを特徴とする請求項1
または2に記載の包装体である。
【0020】
また、請求項
4に記載の発明は、最内層のヒートシール樹脂層と、内容物との、JIS
K7125に規定する静摩擦係数が0.3以上であることを特徴とする、請求項1〜
3のいずれか1項に記載の包装体である。
【0021】
また、請求項
5に記載の発明は、内容物が水、アルコール、油、薬液等の流体に浸り、少なくとも表面が湿潤な状態であることを特徴とする、請求項1〜
4のいずれか1項に記載の包装体である。
【0022】
また、請求項
6に記載の発明は、内容物の腰強度が包装袋の腰強度より低いことを特徴とする、請求項1〜
5のいずれか1項に記載の包装体である。
【0023】
また、請求項
7に記載の発明は、前記開封誘導線は、レーザー加工法によって形成され、包装材の最内層のヒートシール性樹脂層を貫通しないことを特徴とする請求項1〜
6のいずれか1項に記載の包装体である。
【0024】
また、請求項
8に記載の発明は、以下の工程をこの順序に含むことを特徴とする請求項1〜
7のいずれか1項に記載の包装体の製造方法である。すなわち、印刷を施した包装材原反に、レーザー加工法によつて開封誘導線を形成する工程。印刷を施した包装材原反を、所定の幅にスリットする工程。背貼
りシール部、サイドシール部を形成し、開封ノッチを設ける工程である。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る包装体は、背貼りシール部の基線を略中央に配置し、背貼りシール部を片側に倒して、胴部を扁平に折り畳み、両端の包装材の輪の部分に沿ってヒートシールを施したサイドシール部を有するので、包装袋が外部応力に対して偏平な形状を保つ力である腰強度が強い。このため、内容物の腰強度が低い場合や、包装袋に比較して内容物の占有率が低い場合であっても、表裏面の包装材が開くことを抑制し、開封用ノッチから開封誘導線に沿って安定的に開封することが可能となる。また開封が円滑であり、開封時に内容物を破損したり、落下させたりすることが生じ難い。また包装袋内で内容物が反転したりすることもない。
【0026】
また本発明に係る包装体は、背貼りシール部から開封するものであるため、表裏面の認識が必要な内容物を収納した場合であっても、表裏面を間違えて取り出すことがない。
【0027】
また、背貼りシール部の上部に、開封のきっかけとなる、開封用ノッチが設けられており、胴部を形成する包装材には、前記開封用ノッチから出発し、左右の包装材の裂け易い方向に進む包装材の裂け目を捕捉して誘導するための、左右一対の開封誘導線が設けられているため、開封用ノッチから開封誘導線に沿って円滑に開封することができる。
【0028】
また、開封誘導線は、前記背貼りシール部の基線を中心線として左右対称に形成され、前記背貼
りシール部基線の近傍であり、且つ、前記開封用ノッチと天部シール部の間の高さに設定された始点から出発して、包装袋の左右幅方向に広がり、サイドシール部と底部シール部の交点の内際近傍に設定された終点に到達する連続した線であるから、広い開口面積をもった開口部が得られる。
【0029】
このため本発明に係る包装袋は、内容物が扁平で、表面が粘性を有し、滑り性が悪いといった性状から、包装袋の開口部から引き出して取り出すことが困難な内容物であっても、背貼りシール部に設けた開封用ノッチから、包装袋の片面を大きく開口することにより、内容物を落とすことなく、清潔に取り出すことが可能である。
【0030】
開封後に、背貼りシール部に付随する開封部分は、千切れて離脱することがないので、ごみにならず、また簡易的に再封止することもできる。
【0031】
請求項
1に記載の発明のように、開封誘導線が、始点から水平方向に出発して放物線状または楕円曲線状に下降し、終点に到達する曲線である場合には、開封誘導線が滑らかな曲線であるため、開封時の包装材の裂け目が逸脱し難く、開封性が良好である。
【0032】
また、請求項
2に記載の発明のように、開封誘導線が、始点から出発して一旦下降し、開封用ノッチの近傍を通過した後、湾曲してサイドシール部方向に向きを変え、略直線状に広がった後、サイドシール部手前で湾曲して再び下方に向きを変え、サイドシール部に沿って下降して前記終点に到達する場合には、内容物の形状に応じて最適な広い開口部が得られる。
【0033】
また、請求項
3に記載の発明のように、偏平な内容物が収納されており、開封誘導線が、内容物の外周に交叉するように描かれており、開封後の開口部から少なくとも内容物の一辺または外周の50%以上が露出するようにした場合は、内容物の取出し性が良好であり、また開封誘導線と内容物の外周が交叉する部分があるため、内容物が落下しにくい。
【0034】
また、請求項
4に記載の発明のように、最内層のヒートシール樹脂層と、内容物との、静摩擦係数が0.3以上で、滑り性が悪い場合、例えば内容物が経皮吸収薬や人工皮膚、口内潮解薬などである場合においては、従来の袋の端部を開口するような開封方法では、内容物の取出しが困難であるが、本発明に係る包装体においては、十分に対応できる。
【0035】
また、請求項
5に記載の発明のように、内容物が水、アルコール、油、薬液等の流体に浸り、少なくとも表面が湿潤な状態であるもの、例えば清浄綿、化粧水綿、芳香不織布などであっても、包装体片面が大きく開口することから、内容物を破損することなく、容易に取り出すことができる。これは、請求項
6に記載の発明のように、内容物の腰強度が包装袋の腰強度より低い場合においても同様である。
【0036】
また、請求項
7に記載の発明のように、開封誘導線が、レーザー加工法によって形成される場合には、包装材の層構成とレーザーの波長を最適に組み合わせることにより、最内層のヒートシール性樹脂層を貫通しないようにすることが容易に可能となり、品質の安定した包装体が得られる。また、開封誘導線の形状の自由度が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1(1)は、本発明に係る包装体の一実施例を示した模式図である。
図1(2)は、
図1(1)の包装体に用いた包装材の展開図である。
【
図2】
図2(1)は、本発明に係る包装体の他の実施例を示した模式図である。
図2(2)は、
図2(1)の包装体に用いた包装材の展開図である。
【
図3】
図3は、本発明に係る包装体の他の実施例を示した模式図である。
【
図4】
図4は、比較例1の包装体を示した模式図である。
【
図5】
図5は、比較例2の包装体を示した模式図である。
【
図6】
図6は、比較例3の包装体を示した模式図である。
【
図7】
図7は、比較例4の包装体を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面を参照しながら本発明に係る包装体について詳細に説明する。
図1(1)は、本発明に係る包装体(1)の一実施例を示した模式図である。
図1(2)は、
図1(1)の包装体に用いた包装材(2)の展開図である。なお、
図1(2)において、斜線部分は、シール予定部(10)を示している。
【0039】
本発明に係る包装体(1)は、
図1に示したように、最内層にヒートシール性樹脂層を有する積層体からなる包装材(2)の両側端部(3、3)を、合掌状にヒートシールして背貼りシール部(4)を縦方向に形成した筒状の胴部を有する包装体である。
【0040】
背貼りシール部の基線(4a)を略中央に配置し、背貼りシール部(4)を片側に倒して、胴部を扁平に折り畳み、両端の包装材の輪の部分に沿ってヒートシールを施したサイドシール部(7)を有する。
【0041】
サイドシール部(7)がなくても、包装袋としては成立つが、サイドシール部(7)が存在することにより、包装袋の平坦性が向上すると共に包装袋の腰強度が強くなり、腰の弱い内容物に対しても安定した取扱性すなわち、開封性、取り出し性などが発揮される。
【0042】
包装体(1)の底部及び天部は、背貼
りシール部(4)が片側に倒されて、包装体の胴部に密着した状態でヒートシールされて、それぞれ天部シール部(5)、底部シール部(6)を形成している。
【0043】
背貼りシール部(4)の上部には、開封のきっかけとなる、開封用ノッチ(9)が設けられており、胴部を形成する包装材には、開封用ノッチ(9)から出発し、左右の包装材の裂け易い方向に進む包装材の裂け目を捕捉して誘導するための、左右一対の開封誘導線(8、8)が設けられている。
【0044】
開封誘導線(8)は、脆弱加工によって形成される、包装材を貫通しない切目線であり、背貼りシール部の基線(4a)を中心線として左右対称に形成される。
【0045】
開封誘導線(8)は、背貼
りシール部(4)の基線(4a)の近傍であり、且つ、開封用ノッチ(9)と天部シール部(5)の間の高さに設定された始点(s)から出発して、包装袋の左右幅方向に広がり、サイドシール部(7)と底部シール部(6)の交点の内際近傍に設定された終点(e)に到達する連続した線である。
【0046】
図1に示した実施態様においては、開封誘導線(8)は、始点(s)から水平方向に出発して放物線状または楕円曲線状に下降し、終点(e)に到達する曲線である。開封誘導線がこのような滑らかな形状であると、包装材の裂け目が逸脱し難く、確実に滑らかに開封することができる。
【0047】
図2に示した実施態様では、開封誘導線(8)の始点(s)と終点(e)の位置は
図1の場合とほぼ同じであるが、途中の経路が異なる。
図2の例では、開封誘導線(8)は、始点(s)から出発して一旦下降し、開封用ノッチ(9)の近傍を通過した後、湾曲してサイドシール部(7)の方向に向きを変え、略直線状に広がった後、サイドシール部手前で湾曲して再び下方に向きを変え、サイドシール部(7)に沿って下降して終点(e)に到達する。
【0048】
また、
図3に示した実施態様では、開封誘導線(8)は、始点(s)から出発して斜め下方に直線的に進行し、サイドシール部(7)手前で湾曲して下方に向きを変え、サイドシール部に沿って下降して終点(e)に到達する。
【0049】
このように、開封誘導線(8)の形状そのものについては、特に限定されないが、広い開口径と十分な開口面積を確保できるような形状であることが必要である。このため、特に内容物(11)が偏平で水平投影面積が大きい内容物である場合には、開封誘導線(8)が、内容物(11)の外周に交叉するように描かれており、しかも開封後の開口部から少なくとも内容物(11)の一辺または外周の50%以上が露出するようにすることが望ましい。
【0050】
このように開封誘導線(8)を設計することにより、滑りが悪くて取り出し難いような内容物であっても、容易に取り出すことが可能となる。また開封誘導線が内容物の外周に交叉することにより、引っ掛かりが生じ、開封時に意図せずに内容物が落下したりすることを防止できる。
【0051】
本発明に係る包装体(1)は、特に内容物(11)が水、アルコール、油、薬液等の流体に浸り、少なくとも表面が湿潤な状態であるものや、表面が粘着性や付着性を有するもので、内容物と包装材の最内層であるヒートシール性樹脂層との摩擦係数(JIS K7125に規定する静摩擦係数)が0.3以上であるようなものである場合、特にその効果が発揮される。
【0052】
また、本発明に係る包装体(1)は、内容物(11)の腰強度が低くて、包装袋の腰強度よりも弱いようなものの場合にもその効果を発揮する。背貼りシール部の開封用ノッチ(9)から手切り開封する際、包装袋の腰強度が内容物の腰強度に勝る場合、開封の際、ノッチ配置付近で包装袋の胴部が折れてしまい、手切れ線が開封誘導線に追随せず胴部幅方向に逸脱してしまい、包装袋が思わぬ方向に二分された結果、内容物を落下させてしまうなどの不具合が生じる。包装袋の内容積に対し、内容物の占有率が小さい場合にも、同様の不具合が発生する。本発明に係る包装体では、このような問題が生じにくい。
【0053】
開封誘導線(8)を形成する方法としては、ダイカッターなどの刃物による方法と、レーザーによる方法がある。レーザー加工によって形成する場合には、レーザーの波長と積層体の層構成を組み合わせることにより、特定の層のみを選択的に切断することができる。これにより最内層のヒートシール性樹脂層を貫通しないようにすることが容易に可能となり、安定した品質の製品が得られる。
【0054】
また、レーザーによる開封誘導線の描画は、形状の自由度が高く、目的に合せて最適な開封誘導線を設計することができる。
【0055】
次に本発明に係る包装体(1)に用いる材料について説明する。
包装材(2)を構成する積層体の層構成としては、最内層にヒートシール性樹脂層を有する以外は、特に限定されない。最も基本的な層構成としては、基材フィルム/ヒートシール性樹脂層からなる構成である。但し、これらを貼り合せるための接着剤層や、印刷層などは当然含まれても良い。
【0056】
上記の2層に追加される層としては、ガスバリア層、中間層などが挙げられる。特殊な用途としては、遮光層、紫外線吸収層などが追加される場合もある。また基材層がガスバリア層を兼ねる場合もある。
【0057】
基材層としては、通常、印刷加工適性を考慮して、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(PET)や、延伸ポリプロピレン樹脂フィルム(OPP)、延伸ナイロンフィルム(ONy)等の2軸延伸フィルムが一般的に用いられる。
【0058】
ガスバリア層としては、アルミニウム箔、アルミニウム蒸着フィルム、金属酸化物蒸着フィルム、各種ガスバリア性樹脂フィルム等が使用される。
【0059】
ヒートシール性樹脂層としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂が最も一般的に用いられる。本発明に係る包装袋の場合には特に易剥離性を必要としないので、上記の中でも、シール適性の良い低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)や、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、無延伸ポリプロピレン樹脂(CPP)等の単体樹脂で十分である。ヒートシール性樹脂層は、樹脂を溶融して基材層に押出して積層してもよいし、フィルムに成形されたものを貼り合せても良い。
【0060】
これらの各層の貼り合せには、接着剤を用いたドライラミネート法や、接着性樹脂をTダイから押し出して貼り合せる押出しラミネート法、およびこれらの組み合わせが用いられる。
【0061】
包装材(2)の製造には、まず基材層に必要な印刷加工を施し、中間層やヒートシール性樹脂層と貼り合せて積層体とする。次にこの包装材(2)に開封誘導線(8)を形成し、所定の幅にスリット加工する。なおスリット加工後に開封誘導線(8)を形成してもよいが、広幅の状態で開封誘導線をまとめて形成する方が効率的である。以上の工程はすべて巻取の状態で連続的に行われる。
【0062】
充填工場においては、巻取られた包装材(2)を巻き出し、背貼りシール部(4)を形成して筒状に加工すると共に内容物を充填し、サイドシール部(7)、天部シール部(5)、底部シール部(6)を形成する。なお天部シール部(5)と底部シール部(6)は、同時に形成して、中央部で切り分けてもよい。最後に開封用ノッチ(9)を形成して、包装体が完成する。
以下実施例に基いて、本発明に係る包装体についてさらに具体的に説明する。
【実施例】
【0063】
包装材の構成として、次のA、B2種類の積層体を準備した。略号の意味は次の通りである。
PET:ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム
PAN:ポリアクリロニトリル樹脂フィルム
PE:ポリエチレン樹脂
LDPE:低密度ポリエチレン樹脂
AL:アルミニウム箔
EX:押出しラミネート(アンカー処理含む)
DL:ドライラミネート
【0064】
<積層体の層構成> 数字は厚さ(μm)を示す。
A:PET12/酸化アルミニウム蒸着層/インキ/DL接着剤/PANフィルム30
B:PET12/インキ/EX(PE15)/AL7/EX(PE15)/LDPE30
【0065】
上記2種類の包装材に、
図1〜3に示したような開封誘導線をレーザー加工によって形成し、所定の幅にスリットした後、製袋し、以下に示す内容物を収納した。内容物は、いずれも表裏の区別のあるものである。
【0066】
<内容物>
経皮吸収薬:基材(不織布)/粘着層(薬効成分)
コンドーム:表面に潤滑油(シリコーンオイル)を塗布したウレタンゴム製
【0067】
包装材、開封誘導線、内容物の組合わせにより、実施例1〜3の包装体を作成した。この包装体について、手による開封を行い、開封適性および取り出し適性について評価した。開封性については、開封誘導線に沿って予定通りの開封口が得られた場合には○、得られなかった場合には×とした。包装袋からの内容物の取り出し性については、内容物を表裏認識して取り出せた場合は○、表裏認識できない場合、あるいは取り出せない場合は×とした。
【0068】
<比較例>
比較例として、実施例1〜3に用いた包装材と同じものを用いて、同サイズの包装袋を作製し、同じ内容物を収納した。サイドシール部のないもの(比較例1)、開封誘導線の始点の位置が低いもの(比較例2)、開封誘導線の終点の位置が異なるもの(比較例3)、従来の開封構造のもの(比較例4)の4つの比較例の包装体を作成した。
【0069】
実施例1〜3、比較例1〜4に用いた包装材、開封誘導線形状、内容物等の組合わせ、並びに評価結果について、表1に示す。
【表1】
【0070】
表1から分るように、本発明に係る実施例1〜3の包装体は、開封適性、取り出し適性いずれも良好な結果であるのに対して、比較例1〜3の包装体は、開封適性が悪く、取り出し適性の評価に至らなかった。また比較例4の包装体は、開封適性は良いものの、取り出すことができなかった。
【0071】
このように、本発明に係る包装体は、薄くて腰が弱く、しかも表面の滑り性が悪いような内容物を収納しても、良好な開封適性や取り出し適性を発揮するものである。
【符号の説明】
【0072】
1・・・包装体
2・・・包装材
3・・・側端部
4・・・背貼りシール部
5・・・天部シール部
6・・・底部シール部
7・・・サイドシール部
8・・・開封誘導線
9・・・開封用ノッチ
10・・・シール予定部
11・・・内容物
s・・・始点
e・・・終点