特許第6291930号(P6291930)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6291930
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】センサ回路
(51)【国際特許分類】
   G01K 7/24 20060101AFI20180305BHJP
【FI】
   G01K7/24 A
【請求項の数】6
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-52023(P2014-52023)
(22)【出願日】2014年3月14日
(65)【公開番号】特開2015-175711(P2015-175711A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2016年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小林 浩
(72)【発明者】
【氏名】潮田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】在間 清悟
【審査官】 岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0063070(US,A1)
【文献】 特開2002−333793(JP,A)
【文献】 特開平6−249692(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00−19/00
G01J 5/00− 5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源の第1の極に接続される第1の抵抗と前記第1の抵抗に直列接続されるとともに前記電源の第2の極に接続される測定対象の物理量の影響を受ける第1のサーミスタを有する第1の検出回路と、
前記第1の極に接続される第2の抵抗と前記第2の抵抗に直列接続されるとともに前記第2の極に接続される測定対象の物理量の影響が低減された第2のサーミスタを有する第2の検出回路と、
を備えた第1のブリッジ回路と、
前記第1の極に接続される第3の抵抗と前記第3の抵抗に直列接続されるとともに前記第2の極に接続される測定対象の物理量の影響を受ける第3のサーミスタを有する第3の検出回路と、
前記第1の極に接続される第4の抵抗と前記第4の抵抗に直列接続されるとともに前記第2の極に接続される測定対象の物理量の影響が低減された第4のサーミスタを有する第4の検出回路と、
を備えた第2のブリッジ回路を備え、
前記第1のブリッジ回路の出力である第1の検出回路の出力と第2の検出回路の出力の差電圧は、第1の周囲温度で第1のピーク値を持ち、前記第2のブリッジ回路の出力である第3の検出回路の出力と第4の検出回路の出力の差電圧は、前記第1の周囲温度と異なる第2の周囲温度で第2のピーク値を持って、
前記第1、第2のブリッジ回路の出力は、入力電圧の重み付き機能を有する加減算回路に入力されることを特徴とするセンサ回路。
【請求項2】
前記ブリッジ回路を3個以上有することを特徴とする請求項1に記載のセンサ回路。
【請求項3】
電源の第1の極に接続される第1の抵抗手段と前記第1の抵抗手段に直列接続されるとともに前記電源の第2の極に接続される測定対象の物理量の影響を受ける第5のサーミスタを有する第5の検出回路と、
前記第1の極に接続される第2の抵抗手段と前記第2の抵抗手段に直列接続されるとともに前記第2の極に接続される測定対象の物理量の影響が低減された第6のサーミスタを有する第6の検出回路と、
を備えた第3のブリッジ回路を備え、
前記第1、第2の抵抗手段の抵抗値を切り替え可能なスイッチを有し、
前記スイッチがオン状態のとき、前記第3のブリッジ回路の出力の差電圧は、第3の周囲温度で第3のピーク値を持ち、前記スイッチがオフ状態のとき、前記第3のブリッジ回路の出力の差電圧は、前記第3の周囲温度と異なる第4の周囲温度で第4のピーク値を持って、
前記第3のブリッジ回路の出力は、前記スイッチと連動して増幅率が変化する差動増幅回路に入力され、
前記スイッチがオン状態のときの前記差動増幅回路のアナログ出力をデジタル化した第1のデジタル値と、前記スイッチがオフ状態のときの前記差動増幅回路のアナログ出力をデジタル化した第2のデジタル値を加算する手段を有することを特徴とするセンサ回路。
【請求項4】
前記抵抗手段の抵抗値が、前記スイッチにより3つ以上の抵抗値を有することを特徴とする請求項3に記載のセンサ回路。
【請求項5】
周囲温度領域を前記ブリッジ回路の出力数で等分割した時に、分割されたそれぞれの周囲温度領域に前記ピーク値が存在することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のセンサ回路。
【請求項6】
前記測定対象の物理量は、温度であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のセンサ回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
サーミスタの抵抗変化を利用して物理量を検知するセンサ回路が知られている。この種のセンサ回路は、測定対象の物理量の影響を受ける検知用サーミスタと、測定対象の物理量の影響を受けない補償用サーミスタを有し、検知用サーミスタの抵抗値は、測定対象の物理量と測定対象以外の物理量の影響を受けるが、補償用サーミスタの抵抗値は、測定対象以外の物理量の影響のみを受ける。したがって、これら二つのサーミスタの抵抗値の違いにより、測定対象の物理量が検知される。このような原理に基づき、温度、ガス濃度、湿度、流速等の様々な物理量を検知することができる。
【0003】
例えば、特許文献1には、赤外線検知用感熱素子(サーミスタ)と抵抗素子の直列回路の第1の出力電圧と、温度補償用感熱素子(サーミスタ)と抵抗素子の直列回路の第2の出力電圧と、第1の出力電圧と第2の出力電圧の差分を出力した第3の出力電圧のうち、第1と第3出力電圧をデジタル値に変換して、これらの2つのデジタル値をもとに加熱要素の温度を検出する温度検出方法が提案されている。
【0004】
この特許文献1に記載された温度検出方法は、第1の出力電圧と第2の出力電圧の差分を出力した第3の出力電圧が加熱ローラ(熱源)から放射される赤外光(赤外線)の熱量に周囲温度を含めたものと周囲温度との温度差、すなわち加熱ローラから放射される純粋な赤外光の熱量を反映している。この第3の出力電圧は、周囲温度に対してピーク値を持つ特性であり、感度(周囲温度が同一のときの加熱ローラの温度変化分に対する第3の出力電圧変化)も同様に周囲温度に対してピーク値を持つ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−57116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示す温度検出方法では、第3の出力の感度が低い周囲温度が存在し、このとき第3の出力電圧は、温度あたりの出力電圧変化が小さいため、温度検出精度が低いという問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、測定対象の物理量の検出精度の低下を抑制できるセンサ回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るセンサ回路は、電源の第1の極に接続される第1の抵抗と前記第1の抵抗に直列接続されるとともに前記電源の第2の極に接続される測定対象の物理量の影響を受ける第1のサーミスタを有する第1の検出回路と、
前記第1の極に接続される第2の抵抗と前記第2の抵抗に直列接続されるとともに前記第2の極に接続される測定対象の物理量の影響が低減された第2のサーミスタを有する第2の検出回路と、を備えた第1のブリッジ回路と、前記第1の極に接続される第3の抵抗と前記第3の抵抗に直列接続されるとともに前記第2の極に接続される測定対象の物理量の影響を受ける第3のサーミスタを有する第3の検出回路と、前記第1の極に接続される第4の抵抗と前記第4の抵抗に直列接続されるとともに前記第2の極に接続される測定対象の物理量の影響が低減された第4のサーミスタを有する第4の検出回路と、を備えた第2のブリッジ回路を備え、前記第1のブリッジ回路の出力である第1の検出回路の出力と第2の検出回路の出力の差電圧は、第1の周囲温度で第1のピーク値を持ち、前記第2のブリッジ回路の出力である第3の検出回路の出力と第4の検出回路の出力の差電圧は、前記第1の周囲温度と異なる第2の周囲温度で第2のピーク値を持って、前記第1、第2のブリッジ回路の出力は、入力電圧の重み付き機能を有する加減算回路に入力されることを特徴とする。
【0009】
上記構成により、物理量の異なる2つの状態での加減算回路の出力電圧差に、周囲温度に対して2つのピーク値を持たせることが可能となり、広い周囲温度領域で感度の低下を抑制でき、物理量あたりの出力電圧変化を大きくできる。サーミスタを使用した1つのブリッジ回路の出力は、1つのピーク値を持ち、このピーク時の周囲温度から温度差が大きくなると出力電圧が低下し、物理量の異なる2つの状態での出力差である感度も低下する。2つのブリッジ回路を使用し、それぞれの出力に重み付けし、加算することで、1つのブリッジ回路が対応する周囲温度領域を制限でき、その結果、測定対象の物理量の検出精度の低下を抑制することができる。
【0010】
更に、前記ブリッジ回路を3個以上有し、3つ以上のブリッジ回路の出力を入力電圧の重み付き機能を有する加減算回路に入力することにより、物理量の異なる2つの状態での加減算回路の出力電圧差に、周囲温度に対して3つ以上のピーク値を持たせることが可能となり、更に広い周囲温度領域に対しても感度の低下を抑制でき、物理量あたりの出力電圧変化を大きくできる。ブリッジ回路を増やすことで周囲温度あたりのピーク値を増やすことができ、周囲温度に対する感度の平坦化が可能となる。
【0011】
本発明のセンサ回路は、電源の第1の極に接続される第1の抵抗手段と前記第1の抵抗手段に直列接続されるとともに前記電源の第2の極に接続される測定対象の物理量の影響を受ける第5のサーミスタを有する第5の検出回路と、前記第1の極に接続される第2の抵抗手段と前記第2の抵抗手段に直列接続されるとともに前記第2の極に接続される測定対象の物理量の影響が低減された第6のサーミスタを有する第6の検出回路と、を備えた第3のブリッジ回路を備え、前記第1、第2の抵抗手段の抵抗値を切り替え可能なスイッチを有し、前記スイッチがオン状態のとき、前記第3のブリッジ回路の出力の差電圧は、第3の周囲温度で第3のピーク値を持ち、前記スイッチがオフ状態のとき、前記第3のブリッジ回路の出力の差電圧は、前記第3の周囲温度と異なる第4の周囲温度で第4のピーク値を持って、前記第3のブリッジ回路の出力は、前記スイッチと連動して増幅率が変化する差動増幅回路に入力され、前記スイッチがオン状態のときの前記差動増幅回路のアナログ出力をデジタル化した第1のデジタル値と、前記スイッチがオフ状態のときの前記差動増幅回路のアナログ出力をデジタル化した第2のデジタル値を加算する手段を有することを特徴とする。
【0012】
上記構成により、測定対象の物理量の影響を受けるサーミスタと測定対象の物理量の影響が低減されたサーミスタの構成が一組で済むため、少ない部品で回路構成できる。
【0013】
更に、前記抵抗手段の抵抗値が、前記スイッチにより3つ以上の抵抗値を有して、3つ以上のデジタル値を加算することで、周囲温度あたりのピーク値を増やすことができ、周囲温度に対するデジタル化した感度の平坦化が可能となる。
【0014】
また、感度(物理量の異なる2つの状態での加減算回路の出力電圧差)及びデジタル化した感度のピーク値を周囲温度領域を等分割した時に、分割されたそれぞれの周囲温度領域に前記ピーク値を存在させることで、感度の平坦化が更に可能になる。
【0015】
測定対象の物理量は、温度であってもよい。この場合、感度は、赤外線の熱量変化に対するセンサ回路の出力電圧差となり、熱源の温度検出精度の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、測定対象の物理量の検出精度の低下を抑制できるセンサ回路を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施形態に係るセンサ回路を示す回路構成図である。
図2】第1の実施形態に係るセンサ回路の加算回路の出力と差動増幅回路の出力の温度特性を示すグラフである。
図3】測定対象の温度が180℃と160℃のときの第1の実施形態に係るセンサ回路の加算回路の出力と180℃時の加算回路の出力から160℃時の加算回路の出力を引いた電圧の温度特性を示すグラフである。
図4】本発明の第1の実施形態に係るセンサ回路の変形例を示す回路構成図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係るセンサ回路を示す回路構成図である。
図6】第2の実施形態に係るセンサ回路の加算回路の出力と差動増幅回路の出力の温度特性を示すグラフである。
図7】測定対象の温度が180℃と160℃のときの第1の実施形態に係るセンサ回路の加算回路の出力と180℃時の加算回路の出力から160℃時の加算回路の出力を引いた電圧の温度特性を示すグラフである。
図8】本発明の第2の実施形態に係るセンサ回路の変形例を示す回路構成図である。
図9】本発明の第3の実施形態に係るセンサ回路を示す回路構成図である。
図10】本発明の第3の実施形態に係るセンサ回路の変形例を示す回路構成図である。
図11】本発明の第3の実施形態に係るセンサ回路のロジック回路の動作を示すタイミングチャートである。
図12】比較例1に係るセンサ回路を示す回路構成図である。
図13】測定対象の温度が180℃と160℃のときの比較例1に係るセンサ回路の差動増幅回路の出力と180℃時の差動増幅回路の出力から160℃時の差動増幅回路の出力を引いた電圧の温度特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0019】
(第1の実施形態)
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係るセンサ回路100の構成について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係るセンサ回路を示す回路構成図である。なお、本実施形態では、熱源の温度を非接触で測定するセンサ回路を用いて説明する。すなわち、測定対象は熱源であり、測定対象の物理量は温度である。
【0020】
センサ回路100は、図1に示されるように、電源V1と、第1のブリッジ回路11と、第2のブリッジ回路12と、ボルテージフォロワ(21,22)と、差動増幅回路(31,32)と2入力の加算回路41と、A/D(アナログ/デジタル)変換回路51と、を有する。
【0021】
電源V1は、第1のブリッジ回路11および第2のブリッジ回路12に直流電圧を供給する。電源V1としては、それぞれの回路出力へのノイズの影響を抑制するため、安定化した定電圧電源が用いられる。また、電源V1は、第1の極と第2の極を有する。本実施形態では、第1の極を正極、第2の極を負極として説明する。以下、第1の極は「正極」と記し、第2の極は「負極」と記す。
【0022】
第1のブリッジ回路は、熱源から放射される赤外線を検知するための第1の検出回路と周囲温度を検知するための第2の検出回路から構成される。第1検出回路は、電源V1の正極に接続される第1の抵抗R1と電源V1の負極に接続される第1のサーミスタTh1の直列回路で構成されている。
【0023】
第1のサーミスタTh1は、測定対象の物理量である熱源から放射される赤外線の熱量の影響を受けるように配置されている。つまり、第1のサーミスタTh1は、熱源から放射される赤外線の熱量の影響を受けたとき、第1のサーミスタTh1の温度が変化することにより抵抗値が変化することとなる。この第1のサーミスタTh1の温度は、周囲温度と熱源から放射される赤外線の熱量の影響により加わる温度で抵抗値が決まる。
【0024】
第1のサーミスタTh1としては、金属酸化物を主成分とする負の抵抗温度係数を持つNTC(Negative Temperature Coefficient)サーミスタが用いられる。サーミスタの特性は、任意の温度TA[K]およびTB[K]におけるサーミスタの抵抗値をRA、RB、サーミスタ定数をB(B定数)とすると、以下の式(1)のように近似される。なお、B定数はその値が大きいほど、温度変化に対する抵抗変化率が大きいことを意味する。
RA=RB×eB(1/TA−1/TB) 式(1)
【0025】
第1の検出回路は、電源V1から供給される直流電圧を第1の抵抗R1と第1のサーミスタTh1により分圧した電圧を出力P1として出力する。すなわち、第1の検出回路の出力P1は、電源V1から供給される直流電圧値をVr1、第1の抵抗R1の抵抗値をRr1、第1のサーミスタTh1の抵抗値をRth1とすると、第1の検出回路の出力P1は、以下の式(3)の関係を満たすこととなる。
VO1=Vr1×Rth1/(Rth1+Rr1) 式(3)
この第1の検出回路の出力P1は、ボルテージフォロワ21を経由して第1の差動増幅回路31に接続されている。
【0026】
第2の検出回路は、電源V1の正極に接続される第2の抵抗R2と、電源V1の負極に接続される第2のサーミスタTh2の直列回路で構成されている。
【0027】
第2のサーミスタTh2の温度は、周囲温度と同じであり、この温度により抵抗値が決まる。つまり、第2のサーミスタTh2は、測定対象の物理量である熱源から放射される赤外線の熱量の影響が低減されるように配置されている。ここで、第2のサーミスタTh2は、熱源から放射される熱量の影響を全く受けない位置に配置されると好ましいが、第1の検出回路と第2の検出回路とを構造上近接して配置せざるを得ない場合は、機能的に問題ない程度で、第2のサーミスタTh2が熱源から放射される赤外線の熱量の影響を受ける位置に配置しても良い。
【0028】
第2のサーミスタTh2は、第1のサーミスタTh1と同様に、金属酸化物を主成分とする負の抵抗温度係数を持つNTCサーミスタが用いられる。
【0029】
第2の検出回路は、電源V1から供給される直流電圧を第2の抵抗R2と第2のサーミスタTh2により分圧した電圧を出力P2として出力する。すなわち、
第2の検出回路の出力P2は、電源V1から供給される直流電圧値をVr1、第2の抵抗R2の抵抗値をRr2、第2のサーミスタTh2の抵抗値をRth2とすると、以下の式(4)の関係を満たすこととなる。
P2=Vr1×Rth2/(Rth2+Rr2) 式(4)
この第2の検出回路の出力P2は、ボルテージフォロワ21を経由して第1の差動増幅回路31に接続されている。
【0030】
第2のブリッジ回路12は、第1のブリッジ回路11と同様に、熱源から放射される赤外線を検知するための第3の検出回路と周囲温度を検知するための第4の検出回路の2つの検出回路から構成される。第3の検出回路は、電源V1の正極に接続される第3の抵抗R3と電源V1の負極に接続される第3のサーミスタTh3の直列回路で構成されている。第4の検出回路は、電源V1の正極に接続される第4の抵抗R4と、電源V1の負極に接続される第4のサーミスタTh4の直列回路で構成されている。
【0031】
第3のサーミスタTh3と第4のサーミスタTh4は、第1のサーミスタTh1及び第2のサーミスタTh2と同様に金属酸化物を主成分とする負の抵抗温度係数を持つNTCサーミスタが用いられる。
【0032】
第2のブリッジ回路12は、第1のブリッジ回路と同様な回路構成であり、第3の検出回路の出力P3は、電源V1から供給される直流電圧値をVr1、第3の抵抗R3の抵抗値をRr3、第2のサーミスタTh3の抵抗値をRth3とすると、以下の式(5)の関係を満たすこととなる。
P3=Vr1×Rth3/(Rth3+Rr3) 式(5)
同様に、第4の検出回路の出力P4は、電源V1から供給される直流電圧値をVr1、第4の抵抗R4の抵抗値をRr4、第4のサーミスタTh4の抵抗値をRth4とすると、以下の式(6)の関係を満たすこととなる。
P4=Vr1×Rth4/(Rth4+Rr4) 式(6)
第3の検出回路の出力P3及び第4の検出回路の出力P4は、ボルテージフォロワ22を経由して第2の差動増幅回路32に接続されている。
【0033】
ボルテージフォロワ(21,22)は、高インピーダンス信号を低インピーダンス信号に変換する回路である。第1ブリッジ回路の出力(P1,P2)及び第2ブリッジ回路の出力(P3,P4)は、一般的に高インピーダンス信号であるため、ボルテージフォロワ通すことで低インピーダンス信号に変換し、次段に接続される第1の差動増幅回路31及び第2の差動増幅回路32に減衰していない電圧を伝えることができる。電圧値としては、ボルテージフォロワ(21,22)の入力(P1,P2,P3,P4)と対応する出力(P7,P8,P9,P10)は、同じである。ボルテージフォロワは、必ずしも必要ということではない。次段の回路の入力インピーダンスとの関係や、伝えたい電圧の精度などにより、ボルテージフォロワがなくともよい。
【0034】
差動増幅回路(31,32)は、2つの入力電圧の差分を一定係数で増幅する回路である。第1の差動増幅回路31は、第1のボルテージフォロワの出力(P7,P8)を入力として、出力P7の出力電圧と出力P8の出力電圧の差分を取り、この差分のみを増幅させている。つまり、信号成分としては第1のブリッジ回路11の出力(P1、P2)の差分を取り、この差分のみを増幅させる。第1の差動増幅回路31の出力P13は、周囲温度領域を2分割し、高い方の周囲温度領域でピーク値を取るように、第1のブリッジ回路の定数を設定する。第1の差動増幅回路31は、2つの入力電圧の差分を増幅させた電圧を出力P13として出力し、次段の加算回路41に入力される。
【0035】
第2の差動増幅回路32は、第2のボルテージフォロワの出力(P9,P10)を入力として、出力P9の出力電圧と出力P10の出力電圧の差分を取り、この差分のみを増幅させている。つまり、信号成分としては第2のブリッジ回路12の出力(P3、P4)の差分を取り、この差分のみを増幅させることになる。第2の差動増幅回路32の出力P14は、周囲温度領域を2分割し、低い方の周囲温度領域でピーク値を取るように、第2のブリッジ回路の定数を設定する。第2の差動増幅回路32は、2つの入力電圧の差分を増幅させた電圧を出力P14として出力し、次段の加算回路41に入力される。
【0036】
加算回路41は、入力電圧を加算し増幅する回路である。加算回路41は、第1の差動増幅回路31の出力P13と第2の差動増幅回路32の出力P14の2つの入力電圧を加算する。つまり、第1のブリッジ回路11の出力(P1,P2)の差電圧を増幅した信号と、第2のブリッジ回路12の出力(P3,P4)の差電圧を増幅した信号を加算することになる。加算回路41の出力P16は、高い方の周囲温度領域でピーク値を持った電圧と低い方の周囲温度領域にピーク値を持った電圧を加算した出力電圧となる。この出力電圧は、感度(加熱ローラの温度変化分に対する出力電圧変化)においても、2つのピーク値を持つ。このピーク値が略等しくなるように、差動増幅回路(31,32)の増幅率を設定する。以上の回路構成及び定数設定により、周囲温度領域のそれぞれ異なる半分の周囲温度領域でそれぞれ感度を高められるので、ピーク時の周囲温度から極端に離れた周囲温度がなくなり、感度の低下が抑制できる。また、加算回路41の増幅率は、次段の回路の入力電圧範囲内で適宜設定される。加算回路41の出力P16は、A/D変換回路51に接続される。なお、図1では図示していないが、周囲温度を検知した電圧値もA/D変換回路51に取込まれる。この電圧値は、第2の検出回路の出力P2の経路などの単独の検出回路からの信号を利用してもよいし、第2の検出回路の出力P2と第4の検出回路の出力P4との合成信号などを利用してもよい。
【0037】
A/D変換回路51は、アナログ値をデジタル値に変換する回路である。本実施形態では、加算回路51の出力P16をデジタル値に変換する。アナログ値からデジタル値に変換する場合、1ビット分の電圧、つまり非接触温度センサの場合は1ビット分の温度が小さいほど温度精度が上がる。高精度にするには、分解能が高いA/D変換回路51を使うこと、そして入力電圧を大きくすることが考えられる。したがってA/D変換回路51の入力電圧範囲内で出来る限り大きな入力電圧にすると精度を向上することができる。なお、図1では図示していないが、A/D変換回路51によってデジタル値に変換された値は、マイクロコンピュータに取り込まれ、温度変換テーブルもしくは関数により変換して熱源の温度を検出する。
【0038】
以上のように、本実施形態に係るセンサ回路100において、加算回路41の出力P16の出力電圧は、略等しい2つの感度のピーク値を持ち、このピーク値は2等分した周囲温度領域にそれぞれ存在するため、特定の周囲温度における感度の低下を抑制できる。次段のA/D変換回路51の入力電圧の分解能は、周囲温度ごとの感度の差が少なくなるため、熱源の温度の検出精度の低下を抑制することができる。
【0039】
(第1の実施形態の変形例)
次に、図4を参照して、本発明の第1の実施形態に係るセンサ回路100の変形例であるセンサ回路200の構成について説明する。図4は、本発明の第1の実施形態に係るセンサ回路の変形例を示す回路構成図である。
【0040】
本変形例に係るセンサ回路300は、電源V1と、第1のブリッジ回路11と、第2のブリッジ回路12と、ボルテージフォロワ(21,22)と、A/D変換回路51について、第1の実施形態に係るセンサ回路100と同様である。本変形例では、差動増幅回路(31,32)と加算回路41の代わりに、加減算回路42を備えている点において、第1の実施形態の係るセンサ回路100と相違する。以下、第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0041】
加減算回路42は、加算、減算、増幅を行うアナログ演算回路である。本変形例200では、第1のボルテージフォロワ21の出力P8と第2のボルテージフォロワの出力P10を加算し、第1のボルテージフォロワ21の出力P7と第2のボルテージフォロワの出力P9を減算し、増幅率は各信号に対して設定できる。第1の実施形態に係るセンサ回路100では、第1のボルテージフォロワ21の出力(P7,P8)の差電圧である差動増幅回路31の出力P13の出力電圧と第2のボルテージフォロワ22の出力(P9,P10)の差電圧である差動増幅回路32の出力P14の出力電圧を求めてから、こられの出力電圧を加算していた。つまり、本変形例200では、加減算回路42だけで、同じ動作をさせることができるので、回路の簡素化が可能となる。なお、第1のブリッジ回路11の第2の検出回路と第2のブリッジ回路12の第4の検出回路は、どちらか省略しても構わない。つまり、第2の検出回路と第4の検出回路は、周囲温度を測る目的の回路であるため、共通化することが可能である。
【0042】
(第2の実施形態)
次に、図5を参照して、本発明の第2の実施形態に係るセンサ回路300の構成について説明する。図5は、本発明の第2の実施形態に係るセンサ回路を示す回路構成図である。なお、第2の実施形態に係るセンサ回路300も熱源の温度を非接触で測定するセンサ回路を用いて説明する。すなわち、測定対象は熱源であり、測定対象の物理量は温度である。第2の実施形態に係るセンサ回路300は、第3のブリッジ回路13と第3のボルテージフォロワ23と第3の差動増幅回路33と3入力の加算回路43を備えている点において、第1の実施形態に係るセンサ回路100と異なっている。以下、第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0043】
センサ回路300は、図5に示されるように、電源V1と、第1のブリッジ回路11と、第2のブリッジ回路12と、第3のブリッジ回路13と、ボルテージフォロワ(21,22,23)と、差動増幅回路(31,32,33)と、3入力の加算回路43と、A/D(アナログ/デジタル)変換回路51と、を有する。
【0044】
第3のブリッジ回路13は、第1のブリッジ回路11及び第2のブリッジ回路12と同様に、熱源から放射される赤外線を検知するための第5の検出回路と周囲温度を検知するための第6の検出回路の2つの検出回路から構成される。第5の検出回路は、電源V1の正極に接続される第5の抵抗R5と電源V1の負極に接続される第5のサーミスタTh5の直列回路で構成されている。第6の検出回路は、電源V1の正極に接続される第6の抵抗R6と、電源V1の負極に接続される第6のサーミスタTh6の直列回路で構成されている。
【0045】
第5のサーミスタTh5と第6のサーミスタTh6は、第1のサーミスタTh1及び第2のサーミスタTh2及び第3のサーミスタTh3及び第4のサーミスタTh4と同様に金属酸化物を主成分とする負の抵抗温度係数を持つNTCサーミスタが用いられる。
【0046】
第3のブリッジ回路13は、第1のブリッジ回路11及び第2のブリッジ回路12と同様な回路構成であり、第3の検出回路の出力P3は、電源V1から供給される直流電圧値をVr1、第5の抵抗R5の抵抗値をRr5、第5のサーミスタTh5の抵抗値をRth5とすると、以下の式(7)の関係を満たすこととなる。
P5=Vr1×Rth5/(Rth5+Rr5) 式(7)
同様に、第6の検出回路の出力P6は、電源V1から供給される直流電圧値をVr1、第6の抵抗R6の抵抗値をRr6、第6のサーミスタTh6の抵抗値をRth6とすると、以下の式(8)の関係を満たすこととなる。
P6=Vr1×Rth6/(Rth6+Rr6) 式(8)
第5の検出回路の出力P5及び第6の検出回路の出力P6は、ボルテージフォロワ23を経由して第3の差動増幅回路33に接続されている。
【0047】
ボルテージフォロワ(21,22,23)は、高インピーダンス信号を低インピーダンス信号に変換する回路である。第1ブリッジ回路の出力(P1,P2)及び第2ブリッジ回路の出力(P3,P4)及び第3のブリッジ回路(P5,P6)の出力は、一般的に高インピーダンス信号であるため、ボルテージフォロワ通すことで低インピーダンス信号に変換し、次段に接続される差動増幅回路(31,32,33)に減衰しない電圧を入力することができる。電圧値としては、ボルテージフォロワ(21,22,23)の入力(P1,P2,P3,P4,P5,P6)と対応する出力(P7,P8,P9,P10,P11,P12)は、同じである。ブリッジ回路出力が次段の入力インピーダンスに比べ、2桁以上低い場合は、一般的にボルテージフォロワは特に必要ない。
【0048】
差動増幅回路(31,32,33)は、2つの入力電圧の差分を一定係数で増幅する回路である。第3の差動増幅回路33は、第1の差動増幅回路31及び第2の差動増幅回路32と同様な動作であり、第3のボルテージフォロワの出力(P11,P12)を入力として、出力P11の出力電圧と出力P12の出力電圧の差分を取り、この差分のみを増幅させている。ボルテージフォロワの前後は、同じ電圧値であるので、第3のブリッジ回路13の出力(P5、P6)の差分を取り、この差分のみを増幅させていることになる。
【0049】
第1の差動増幅回路31の出力P13は、周囲温度領域を3分割し、中間の周囲温度領域でピーク値を取るように、第1のブリッジ回路の定数を設定する。第1の差動増幅回路31は、2つの入力電圧の差分を増幅させた電圧を出力P13として出力し、次段の加算回路43に入力される。
第2の差動増幅回路32の出力P14は、周囲温度領域を3分割し、低い方の周囲温度領域でピーク値を取るように、第2のブリッジ回路の定数を設定する。第2の差動増幅回路32は、2つの入力電圧の差分を増幅させた電圧を出力P14として出力し、次段の加算回路43に入力される。
第3の差動増幅回路33の出力P15は、周囲温度領域を3分割し、更に高い方の周囲温度領域でピーク値を取るように、第3のブリッジ回路の定数を設定する。第3の差動増幅回路33は、2つの入力電圧の差分を増幅させた電圧を出力P15として出力し、次段の加算回路43に入力される。周囲温度領域を3分割し、3つの差動増幅回路の受持つ周囲温度領域はどのような組合せであっても構わない。つまり、第1の差動増幅回路31の出力P13が高い方の周囲温度領域でピーク値を取るように、第1のブリッジ回路の定数を設定し、第2の差動増幅回路32の出力P14が、中間の周囲温度領域でピーク値を取るように、第2のブリッジ回路の定数を設定し、第3の差動増幅回路33の出力P15が、低い方の周囲温度領域でピーク値を取るように、第3のブリッジ回路の定数を設定してもよい。
【0050】
加算回路43は、入力電圧を加算し増幅する回路である。加算回路43は、第1の差動増幅回路31の出力P13と第2の差動増幅回路32の出力P14と第3の差動増幅回路33の出力P15の3つの入力電圧を加算する。つまり、第1のブリッジ回路11の出力(P1,P2)の差電圧を増幅した信号と、第2のブリッジ回路12の出力(P3,P4)の差電圧を増幅した信号と、第3のブリッジ回路13の出力(P5,P6)の差電圧を増幅した信号とを加算することになる。加算回路43の出力P19は、高い方の周囲温度領域でピーク値を持った電圧と中間の周囲温度領域でピーク値を持った電圧と低い方の周囲温度領域にピーク値を持った電圧を加算した出力電圧となる。この出力電圧は、感度(加熱ローラの温度変化分に対する出力電圧変化)においても、3つのピーク値を持つ。このピーク値が略等しくなるように、差動増幅回路(41,42,43)の増幅率を設定する。また、加算回路43の増幅率は、次段の回路の入力電圧範囲内で適宜設定される。これにより、周囲温度領域が広い場合でも、周囲温度領域全体で感度が均等化されるため、次段に接続されるA/D変換回路51の1ビット分の温度が極端に大きいところが無くなり、熱源の温度の検出精度の低下を抑制することが可能となる。
【0051】
(第2の実施形態の変形例)
次に、図8を参照して、本発明の第2の実施形態に係るセンサ回路300の変形例であるセンサ回路400の構成について説明する。図8は、本発明の第2の実施形態に係るセンサ回路の変形例を示す回路構成図である。
【0052】
本変形例に係るセンサ回路400は、電源V1と、第1のブリッジ回路11と、第2のブリッジ回路12と、第3のブリッジ回路13と、ボルテージフォロワ(21,22,23)と、A/D変換回路51について、第2の実施形態に係るセンサ回路300と同様である。本変形例では、差動増幅回路(31,32、33)と加算回路43の代わりに、加減算回路44を備えている点において、第2の実施形態の係るセンサ回路300と相違する。以下、第2の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0053】
加減算回路44は、加算、減算、増幅を行うアナログ演算回路である。本変形例400では、第1のボルテージフォロワ21の出力P8と第2のボルテージフォロワ22の出力P10と第3のボルテージフォロワ23の出力P12を加算し、第1のボルテージフォロワ21の出力P7と第2のボルテージフォロワ22の出力P9と第3のボルテージフォロワ23の出力P11を減算し、増幅率は各信号に対して設定できる。第2の実施形態に係るセンサ回路300では、第1のボルテージフォロワ21の出力(P7,P8)の差電圧である差動増幅回路31の出力P13の出力電圧と第2のボルテージフォロワ22の出力(P9,P10)の差電圧である差動増幅回路32の出力P14の出力電圧と第3のボルテージフォロワ23の出力(P11,P12)の差電圧である差動増幅回路33の出力P15の出力電圧とを求めてから、こられの出力電圧を加算していた。つまり、本変形例400では、加減算回路43だけで、同じ動作をさせることができるので、回路の簡素化が可能となる。
【0054】
(第3の実施形態)
次に、図9を参照して、本発明の第3の実施形態に係るセンサ回路500の構成について説明する。図9は、本発明の第3の実施形態に係るセンサ回路を示す回路構成図である。なお、第3の実施形態に係るセンサ回路500も熱源の温度を非接触で測定するセンサ回路を用いて説明する。すなわち、測定対象は熱源であり、測定対象の物理量は温度である。
【0055】
センサ回路500は、図9に示されるように、電源V1と、ブリッジ回路14と、ボルテージフォロワ21と、差動増幅回路34と、A/D変換回路51と、第1の記憶装置52と第2の記憶装置53と、加算器54とロジック回路55を有する。
【0056】
ブリッジ回路14は、熱源から放射される赤外線を検知するための第7の検出回路と周囲温度を検知するための第8の検出回路の2つの検出回路とスイッチから構成される。本実施形態では、このスイッチにP型MOS(metal-oxide-semiconductor)スイッチを用いているが、トランスファーゲートなど他のスイッチを用いてもよい。第7の検出回路は、電源V1の正極に接続される第1の抵抗手段と電源V1の負極に接続される第7のサーミスタTh7の直列回路で構成されている。第1の抵抗手段は、直列接続された抵抗(R27,R29)と第1のスイッチM1で構成され、第1のスイッチM1は、抵抗R27と抵抗R29との接点と電源V1の正極との間に接続される。第8の検出回路は、電源V1の正極に接続される第2の抵抗手段と、電源V1の負極に接続される第8のサーミスタTh8の直列回路で構成されている。第2の抵抗手段は、直列接続された抵抗(R28,R30)と第2のスイッチM2で構成され、第2のスイッチM2は、抵抗R28と抵抗R30との接点と電源V1の正極との間に接続される。
【0057】
第7のサーミスタTh7と第8のサーミスタTh8は、サーミスタ(Th1,Th2,Th3,Th4,Th5,Th6)と同様に金属酸化物を主成分とする負の抵抗温度係数を持つNTCサーミスタが用いられる。
【0058】
スイッチ(M1,M2)は、同じタイミングでオン又はオフを行う。スイッチ(M1,M2)がオンのときは、抵抗R27及び抵抗R28が電源V1の正極に短絡するため、抵抗R29とサーミスタTh7の直列回路である第7の検出回路と、抵抗R30とサーミスタTh8の直列回路である第8の検出回路で構成されたブリッジ回路になる。なお、スイッチのオン抵抗は無視している。第7の検出回路の出力P21は、電源V1から供給される直流電圧値をVr1、抵抗R29の抵抗値をRr29、第7のサーミスタTh7の抵抗値をRth7、スイッチのオン抵抗を0Ωとすると、以下の式(9)の関係を満たすこととなる。
P21=Vr1×Rth7/(Rth7+Rr29) 式(9)
同様に、第8の検出回路の出力P22は、電源V1から供給される直流電圧値をVr1、抵抗R30の抵抗値をRr30、第8のサーミスタTh8の抵抗値をRth8とすると、以下の式(10)の関係を満たすこととなる。
P22=Vr1×Rth8/(Rth8+Rr30) 式(10)
MOSスイッチ(M1,M2)がオフのときは、第1の抵抗手段は、抵抗R27と抵抗R29が直列になる。このときの第7の検出回路の出力P21は、電源V1から供給される直流電圧値をVr1、第1の抵抗回路の抵抗値を(Rr27+Rr29)、第7のサーミスタTh7の抵抗値をRth7とすると、以下の式(9)の関係を満たすこととなる。
P21=Vr1×Rth7/(Rth7+(Rr27+Rr29)) 式(11)
同様に、スイッチ(M1,M2)がオフのときの第8の検出回路の出力P22は、電源V1から供給される直流電圧値をVr1、第2の抵抗手段の抵抗値を(Rr28+Rr30)、第8のサーミスタTh8の抵抗値をRth8とすると、以下の式(12)の関係を満たすこととなる。
P22=Vr1×Rth8/(Rth8+(Rr28+Rr30)) 式(12)
スイッチ(M1,M2)のオンオフによって、第4のブリッジ回路を高い方の周囲温度領域でピーク値を持った電圧と低い方の周囲温度領域にピーク値を持った電圧を出力することができる。ブリッジ回路14の出力(P21,P22)は、ボルテージフォロワ21を経由して差動増幅回路34に接続されている。
【0059】
ボルテージフォロワ21は、高インピーダンス信号を低インピーダンス信号に変換する回路である。ブリッジ回路14の出力インピーダンスが差動増幅回路34の入力インピーダンスに比べ、十分に低くない場合に、ボルテージフォロワを置くことで電圧信号を減衰せず伝えることができるようになる。
【0060】
差動増幅回路34は、2つのスイッチ(T1,T2)で増幅率を可変でき、且つ2つの入力電圧の差分を増幅する回路である。本実施形態では、このスイッチ(T1,T2)にトランスファーゲートを用いているが、P型MOSスイッチなどを使用してもよい。
【0061】
スイッチ(T1,T2)は、同じタイミングでオン又はオフを行う。スイッチ(T1,T2)がオンのときは、抵抗R31の両端及び抵抗R34の両端が短絡するため、増幅率が低くなる。差動増幅回路34の増幅率は、抵抗R33と抵抗R36の抵抗値を同じRra、抵抗R32と抵抗R35の抵抗値を同じRrb、増幅率をAv1とすると、以下の式(13)の関係を満たすこととなる。
Av1=Ra/Rrb 式(13)
スイッチ(T1,T2)がオフのときは、抵抗R31の両端及び抵抗R34の両端が開放となるため、抵抗値が高くなり増幅率が高くなる。差動増幅回路34の増幅率は、抵抗R33と抵抗R36の抵抗値を同じRra、抵抗R31と抵抗R32を直列接続した合成抵抗値と、抵抗R34と抵抗R35を直列接続した合成抵抗値を同じ(Rrb+Rrc)、増幅率をAv2とすると、以下の式(14)の関係を満たすこととなる。
Av2=Rra/(Rrb+Rrc) 式(14)
【0062】
第1の実施形態に係るセンサ回路100における差動増幅回路31の増幅率をAv3、差動増幅回路32の増幅率をAv4、加算回路41の増幅率をAv5とすると、Av1とAv2は、以下の式(15)、(16)の関係式を満たすことができる。
Av1=Av3*Av5 式(15)
Av2=Av4*Av5 式(16)
つまり、スイッチのオンオフにより抵抗値を変化させ感度の高低を制御できるため、簡素化した回路で、特にサーミスタペア1組だけでセンサ回路100と同じ動作をさせることが可能となる。式(15)及び式(16)は、センサ回路100とセンサ回路500での増幅の関係を説明するためのもので、センサ回路100の増幅率とセンサ回路500の増幅率が必ずしも一致しているとは限らない。
【0063】
差動増幅回路34の出力P17は、A/D変換回路51でアナログ値からデジタル値に変換される。このデジタル値は、記憶装置(52,53)で記憶される。
【0064】
記憶装置(52,53)は、デジタル値を一時保持するための装置である。本実施形態では、A/D変換回路51の出力であるデジタル値を記憶させる。ブリッジ回路14のスイッチと差動増幅回路34のスイッチがオンのとき、差動増幅回路34から出力されたアナログ値を、A/D変換回路51でデジタル値に変換し、このデジタル値を記憶装置52に記憶させる。ブリッジ回路14のスイッチと差動増幅回路34のスイッチがオフのときは、差動増幅回路34から出力されたアナログ値を、A/D変換回路51でデジタル値に変換し、このデジタル値を記憶装置53に記憶させる。つまり、ブリッジ回路14のスイッチと差動増幅回路34のスイッチがオンのときとオフのときのデータを交互に記憶装置(52,53)に記憶させる。記憶装置(52,53)の出力は、加算器54に接続される。
【0065】
ロジック回路55は、外部からのクロック信号を利用してスイッチのオンオフ及び記憶装置でのラッチのための信号を発生する回路である。データフリップフロップDF1と2つのAND(AND1,AND2)で構成されている。データフリップフロップは、クロック入力が1になったとき、データ入力と同じ値が出力Qに、反転した値が出力Qbに出力されるロジック回路である。ANDは、全ての入力の値が1のとき、1を出力するロジック回路である。ブリッジ回路14のスイッチの切替えと差動増幅回路34のスイッチの切替えは、同じタイミングで切替える。記憶装置のラッチのタイミングは、スイッチがオンのとき、記憶装置52にデータが記憶され、スイッチがオフのとき、記憶装置52に記憶される。
【0066】
加算器54は、加算を行う演算装置である。本実施形態では、第1の記憶装置52と第2の記憶装置53のデジタル値を加算する。第1の実施形態に係るセンサ回路100においては、加算回路41でアナログ加算してからA/D変換回路51でデジタル値に変えていた。第3の実施形態に係るセンサ回路500では、各ブリッジ回路からの信号加算をA/D変換回路後に行っている。これにより、第1の実施形態に係るセンサ回路100のA/D変換回路51の出力OUT1と、第3の実施形態に係るセンサ回路500の加算器54の出力OU2は、同等な信号を得ることが可能となる。記憶、加算などの演算処理は、マイクロコンピュータなどでも可能である。センサ回路100に図示していないが、後段にマイクロコンピュータが使用されているため、このマイクロコンピュータを利用することで、デジタル処理部分の回路は、センサ回路100から増やさなくとも可能である。センサ回路500においても、後段のマイクロブリッジコンピュータを利用することで、ブリッジ回路に使用する2つサーミスタだけを使用し、スイッチ切替えで対応できるため、非常に簡素化した回路構成にすることができる。
【0067】
(第3の実施形態の変形例)
次に、図10を参照して、本発明の第3の実施形態に係るセンサ回路500の変形例であるセンサ回路600の構成について説明する。図10は、本発明の第3の実施形態に係るセンサ回路の変形例を示す回路構成図である。
【0068】
本変形例に係るセンサ回路600は、電源V1と、ボルテージフォロワ21と、A/D変換回路51と、第1の記憶装置52と第2の記憶装置53と、加算器54とロジック回路55について、第3の実施形態に係るセンサ回路500と同様である。本変形例では、ブリッジ回路14と差動増幅回路34の代わりに、ブリッジ回路15と差動増幅回路35を備えている点において、第3の実施形態の係るセンサ回路500と相違する。以下、第3の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0069】
ブリッジ回路15は、熱源から放射される赤外線を検知するための第9の検出回路と周囲温度を検知するための第10の検出回路の2つの検出回路とスイッチから構成される。本実施形態では、このスイッチにP型MOS(metal-oxide-semiconductor)スイッチを用いているが、トランスファーゲートなど他のスイッチを用いてもよい。第9の検出回路は、電源V1の正極に接続される第3の抵抗手段と電源V1の負極に接続される第7のサーミスタTh7の直列回路で構成されている。第3の抵抗手段は、スイッチM3と直列接続された抵抗R37と抵抗39が並列接続されている。第10の検出回路は、電源V1の正極に接続される第4の抵抗手段と、電源V1の負極に接続される第8のサーミスタTh8の直列回路で構成されている。第4の抵抗手段は、スイッチM3と直列接続された抵抗R38と抵抗40が並列接続されている。スイッチM3は、第3の抵抗手段と第4の抵抗手段に共通に使用される。
【0070】
スイッチM3がオンのときは、抵抗R37及び抵抗R38が電源V1の正極に接続されるため、抵抗R37は、抵抗R39と並列接続される。同様に、抵抗R38及び抵抗R40が電源V1の正極に接続されるため、抵抗R38は、抵抗R40と並列接続される。第9の検出回路は、この並列接続された抵抗(R37,R39)とサーミスタTh7が直列接続された構成になる。第9の検出回路の出力P23は、電源V1から供給される直流電圧値をVr1、第3の抵抗回路の抵抗値をRr37*Rr39/(Rr37+Rr39)、第7のサーミスタTh7の抵抗値をRth7、スイッチのオン抵抗を0Ωとすると、以下の式(17)の関係を満たすこととなる。
P21=Vr1×Rth7/(Rth7+Rr37*Rr39/(Rr37+Rr39)) 式(17)
同様に、第10の検出回路の出力P24は、電源V1から供給される直流電圧値をVr1、第4の抵抗回路の抵抗値をRr38*Rr40/(Rr38+Rr40)、第8のサーミスタTh8の抵抗値をRth8とすると、以下の式(18)の関係を満たすこととなる。
P23=Vr1×Rth8/(Rth8+Rr38*Rr40/(Rr38+Rr40)) 式(18)
ブリッジ回路15は、1つのスイッチM3だけで、抵抗値を切替えるように対応させた回路である。スイッチM3のオンオフによって、第5のブリッジ回路を高い方の周囲温度領域でピーク値を持った電圧と低い方の周囲温度領域にピーク値を持った電圧を出力することができる。抵抗手段は、第3の実施形態の係るセンサ回路500では直列接続した場合のブリッジ回路を示し、本変形例に係るセンサ回路600では並列接続した場合のブリッジ回路を示したが、これらは代表的な例であり他の抵抗値を変化させる回路を用いてもよい。ブリッジ回路15の出力(P23,P24)は、ボルテージフォロワ21を経由して差動増幅回路35に接続されている。
【0071】
差動増幅回路35は、2つのスイッチ(T3,T4)で増幅率を可変でき、且つ2つの入力電圧の差分を増幅する回路である。本実施形態では、このスイッチ(T3,T4)にトランスファーゲートを用いているが、P型MOSスイッチなどを使用してもよい。
【0072】
スイッチ(T3,T4)は、同じタイミングでオン又はオフを行う。スイッチ(T3,T4)がオンのときは、抵抗R41と抵抗R42が並列接続となる。同様に、抵抗R44と抵抗R45も並列接続となる。これにより増幅率が低くなる。差動増幅回路34の増幅率は、抵抗R43と抵抗R46の抵抗値を同じRrd、抵抗R41と抵抗R44の抵抗値を同じRre、抵抗R42と抵抗R45の抵抗値を同じRrf、増幅率をAv3とすると、以下の式(19)の関係を満たすこととなる。
Av3=Rd/(Rre*Rrf/(Rre+Rrf)) 式(19)
スイッチ(T3,T4)がオフのときは、抵抗R41及び抵抗R44の一端が開放になるため、抵抗(R41,R42)とスイッチT3で構成する合成抵抗の抵抗値及び抵抗(R44,R45)とスイッチT4で構成する合成抵抗の抵抗値が高くなり増幅率が高くなる。差動増幅回路35の増幅率は、抵抗R43と抵抗R46の抵抗値を同じRrd、抵抗R42と抵抗R45の抵抗値を同じRrf、増幅率をAv4とすると、以下の式(20)の関係を満たすこととなる。
Av4=Rd/Rrf 式(20)
式(19)及び式(20)に示すように、分母の抵抗値を変えることで、増幅率を変化させている。この分母の抵抗値は、第3の実施形態の係るセンサ回路500では抵抗を直列接続した例を示し、本変形例に係るセンサ回路600では並列接続した例を示したが、これらは代表的な例であり他の抵抗値を変化させる回路を用いてもよい。
【0073】
以下、本実施形態によって熱源の温度の検出精度の低下を抑制できることを実施例1、2と比較例1とによって具体的に示す。但し、本発明はこれらに限定されない。実施例1、2と比較例1では、ブリッジ回路の出力、差動増幅回路の出力、加算回路の出力、感度の温度特性をシミュレーションした。
【0074】
実施例1では、上述した第1の実施形態に係るセンサ回路100を用いた。実施例2では、上述した第2の実施形態に係るセンサ回路300を用いた。比較例1では、図12に示されるセンサ回路700を用いた。図12は、比較例1に係るセンサ回路を示す回路構成図である。
【0075】
まず、比較例1に係るセンサ回路700の構成について説明する。センサ回路700は、図12に示されるように、電源V1と、ブリッジ回路11と、ボルテージフォロワ21と、差動増幅回路31と、A/D変換回路51と、を有する。
【0076】
ブリッジ回路は、熱源から放射される赤外線を検知するための第1の検出回路と周囲温度を検知するための第2の検出回路から構成される。第1の検出回路は、電源V1の正極に接続される第1の抵抗R1と電源V1の負極に接続される第1のサーミスタTh1の直列回路で構成されている。第2の検出回路は、電源V1の正極に接続される第2の抵抗R2と電源V1の負極に接続される第2のサーミスタTh2の直列回路で構成されている。ボルテージフォロワ21は、高インピーダンス信号を低インピーダンス信号に変換する回路である。高インピーダンス出力であるブリッジ回路11の出力(P1,P2)を電圧の減衰を防ぐために、低インピーダンスに変換して、次段の差動増幅回路31へ接続する。つまり信号電圧は、ブリッジ回路11の出力P1とボルテージフォロワ21のP7は同じ電圧値となる。同様にブリッジ回路11の出力P2とボルテージフォロワ21のP8も同じ電圧となる。差動増幅回路31は、2つの入力電圧の差分を一定係数で増幅する回路である。この差動増幅回路31の出力P13は、A/D変換回路51に接続される。なお、図11では図示していないが、周囲温度を検知した電圧値もA/D変換回路51に取込まれる。A/D変換回路51は、アナログ値をデジタル値に変換する回路である。つまり、差動増幅回路31の出力P13のアナログ値をデジタル値に変換する。なお、図1では図示していないが、A/D変換回路51によってデジタル値に変換された値は、マイクロコンピュータに取り込まれ、温度変換テーブルもしくは関数により変換して熱源の温度を検出する。
【0077】
続いて、図2及び図3を参照して、実施例1のセンサ回路100の温度特性を示す。図2は、第1の実施形態に係るセンサ回路の第1のブリッジ回路の2つの出力を差動増幅回路で差分を取り増幅した出力と、第2のブリッジ回路の2つ出力を差動増幅回路で差分を取り増幅した出力と、 2つの差動増幅回路の出力を加算した加算回路の出力の温度特性を示すグラフである。
【0078】
センサ回路100の各ブリッジ回路の各定数は、高い方の周囲温度領域にピーク値を持たせる第1のブリッジ回路11の抵抗(R1,R2)の抵抗値を7kΩ、サーミスタ(Th1,Th2)の25℃時の抵抗値を100kΩ、B定数を4485K、低い方の周囲温度領域にピーク値を持たせる第2のブリッジ回路12の抵抗(R3,R4)の抵抗値を45kΩ、サーミスタ(Th3,Th4)の25℃時の抵抗値を10kΩ、B定数を4100Kに設定した。また、第1の差動増幅回路31の増幅率を1.95倍、第2の差動増幅回路32の増幅率を1.01倍、加算回路41の増幅率を1.00倍と設定した。
【0079】
図2は、熱源温度を180℃とした場合である。第1のブリッジ回路の出力の差分を増幅した差動増幅回路31の出力P13は、全体の周囲温度領域をー40℃から100℃とし、2分割した30℃から100℃の間に、63の特性のように70℃付近でピーク値になる。第2のブリッジ回路の出力の差分を増幅した差動増幅回路32の出力P14は、2分割した残りの−40℃から30℃の間に、62の特性のように−20℃付近でピーク値になる。この2つ差動増幅回路を加算した結果が、61の特性である。図2では、61の電圧ピーク値が1Vになるように各増幅率を設定している。
【0080】
図3は、感度の温度特性を示す。熱源温度が180℃時の加算回路出力は図2と同様に61の特性であるが、ここに熱源温度160℃時の加算回路出力の65の特性を追加した。感度は、熱源温度が、180℃時と160℃時の差分とし、66のような特性となる。感度のピーク値が2分割した周囲温度領域にそれぞれ存在し、且つピーク値が略等しい。全周囲温度領域で感度の特性66は、0.12Vから0.16Vの間にあり、周囲温度による感度変化が少ない。これは、後段のA/D変換回路で1ビットあたりの温度変化が周囲温度に対して少ないことを意味する。つまり、周囲温度に対する感度が平均化しているため、ある特定の周囲温度のときに温度変化が小さいことにならず、全周囲温度領域で熱源の温度の検出精度を均一化することができる。
【0081】
続いて、図6および図7を参照して、実施例2のセンサ回路300の温度特性を示す。図6は、第2の実施形態に係るセンサ回路の第1のブリッジ回路の2つの出力を差動増幅回路で差分を取り増幅した出力と、第2のブリッジ回路の2つ出力を差動増幅回路で差分を取り増幅した出力と、第3のブリッジ回路の2つの出力を差動増幅回路で差分を取り増幅した出力と、3つの差動増幅回路の出力を加算した加算回路の出力の温度特性を示すグラフである。
【0082】
センサ回路300の各ブリッジ回路の各定数は、中間の周囲温度領域にピーク値を持たせる第1のブリッジ回路11の抵抗(R1,R2)の抵抗値を33kΩ、サーミスタ(Th1,Th2)の25℃時の抵抗値を100kΩ、B定数を4485K、低い方の周囲温度領域にピーク値を持たせる第2のブリッジ回路12の抵抗(R3,R4)の抵抗値を75kΩ、サーミスタ(Th3,Th4)の25℃時の抵抗値を10kΩ、B定数を4100K、高い方の周囲温度領域にピーク値を持たせる第3のブリッジ回路13の抵抗(R5,R6)の抵抗値を3.6kΩ、サーミスタ(Th5,Th6)の25℃時の抵抗値を330kΩ、B定数を4750Kに設定した。また、第1の差動増幅回路31の増幅率を1.08倍、第2の差動増幅回路32の増幅率を0.85倍、第3の差動増幅回路33の増幅率を2.38倍、加算回路43の増幅率を1.00倍と設定した。
【0083】
図6は、熱源温度を180℃とした場合である。第1のブリッジ回路の出力の差分を増幅した差動増幅回路31の出力P13は、全体の周囲温度領域をー40℃から140℃とし、3分割した20℃から80℃の間に、73の特性のように40℃付近でピーク値になる。第2のブリッジ回路の出力の差分を増幅した差動増幅回路32の出力P14は、3分割した低い方の−40℃から20℃の間に、72の特性のように−20℃付近でピーク値になる。第3のブリッジ回路の出力の差分を増幅した差動増幅回路33の出力P15は、3分割した高い方の80℃から140℃の間に、74の特性のように110℃付近でピーク値になる。この3つ差動増幅回路を加算した結果が、71の特性である。図6では、71の電圧のピーク値が1Vになるように各増幅率を設定している。
【0084】
図7は、感度の温度特性を示す。熱源温度が180℃時の加算回路出力は図6と同様に71の特性であるが、ここに熱源温度160℃時の加算回路出力の75の特性を追加した。感度は、熱源温度が、180℃時と160℃時の差分とし、76のような特性となる。周囲温度領域が−40から140℃と更に広範囲になったのにもかかわらず、3つのブリッジ回路の出力で、高温、中温、低温にピーク値を持たせ、それぞれ増幅率を調整して加算することにより、全周囲温度領域で感度の特性76は、0.14Vから0.16Vの間にあり、周囲温度による感度変化が更に少なくすることが可能になる。周囲温度に対する感度が更に平均化してきため、全周囲温度領域で熱源の温度の検出精度を均一化することができ、ある特定の周囲温度における感度低下に起因する検出精度の低下を抑制することができる。
【0085】
続いて、図11図2を参照して、実施例3のセンサ回路500のロジック回路のタイミングチャートと動作を示す。図11は、実施例3のセンサ回路500のロジック回路55のタイミングチャートを示す。外部からのクロック信号CKを利用して、ブロック回路15の抵抗手段の抵抗値を切替えるためのスイッチ(M1,M2)用信号と、差動増幅回路35の増幅率を切替えるためのスイッチ(T1,T2)用信号と、記憶装置(52,53)のデータラッチ用信号を出力する。DF1の出力Qbが0のときは、スイッチ(M1,M2,T1,T2)が短絡状態になる。このときの差動増幅回路34の出力P17の出力電圧をAND1の出力の立ち上がり波形により記憶装置52にデータが取込まれ記憶される。DF1の出力Qbが1のときは、スイッチ(M1,M2,T1,T2)が開放状態になる。このときの差動増幅回路34の出力P17の出力電圧をAND2の出力の立ち上がり波形により記憶装置53にデータが取込まれ記憶される。周囲温度が10℃のとき、図2のa点の電圧値がデジタル値として記憶装置52に記憶され、b点の電圧値がデジタル値として記憶装置53に記憶される。加算器54では、a点とb点を加算したc点のデジタル値が加算回路54の出力OUT2に出力される。この結果、実施例1のA/D変換回路51の出力OUT1と同等な出力を得ることが可能である。
【0086】
続いて、図13を参照して、比較例1のセンサ回路700の温度特性を示す。センサ回路700の各定数は、ブリッジ回路の抵抗(R1,R2)を18kΩ、サーミスタ(Th1,Th2)の25℃時の抵抗値を100kΩ、B定数を4485K、差動増幅回路の増幅率を2.20倍と設定した。
【0087】
熱源温度が180℃時の差動増幅回路出力は、81の特性となり、熱源温度160℃時の差動増幅回路出力は、85の特性となる。熱源温度が180℃時の差動増幅回路出力と、熱源温度160℃時の差動増幅回路出力の差分は、86の特性となる。差動増幅回路の出力は、周囲温度が50℃のときにピーク値を持ち、この50℃を中心に50℃から離れた周囲温度に行くに従い、感度が低下する。周囲温度が0℃から100℃の領域では、感度の特性86は0.09Vから0.21Vの間あるが、−40℃から140℃まで温度領域を拡張すると、感度の特性86は0.01Vから0.21Vの範囲となり、周囲温度に対する感度が著しく低下している。感度が周囲温度によって異なるため、A/D変換回路の1ビットあたりの温度変化が大きく、感度が低い周囲温度では、温度の検出精度が極めて低くなってしまう。熱源温度180℃と熱源温度160℃の差分20℃を、周囲温度が50℃のときは0.21Vの電圧変化があり、周囲温度が−40℃のときは0.01Vの電圧変化がある。これより、周囲温度が50℃のときは、0.10℃/mVとなり、周囲温度が−40℃のときは、1.60℃/mVとなる。つまり、A/D変換回路の1ビットの分解能が1mVの場合では、周囲温度が−40℃のときは、1.60℃以下の温度検出精度はないことになる。
【0088】
一方、実施例1のセンサ回路100では、最も感度が低い周囲温度である−40℃のときでも0.12Vあるため、0.17℃/mVとなり、比較例1のセンサ回路700に比べて、大幅に熱源の検出精度の低下を抑制できる。更に実施例2のセンサ回路300では、最も感度が低い周囲温度が−40℃のときで0.14Vであるため、0.15℃/mV程度となり、感度がピーク値時の0.13℃/mVと変わらないほど大幅に改善される。全周囲温度領域において、0.15℃/mV以下の高い温度検出精度を持つことになる。
【0089】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。また、記載した構成要素は、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一なものが含まれる。さらに、記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0090】
また、上記実施形態では熱源の温度を非接触で測定する、いわゆる非接触温度センサに本発明に係るセンサ回路を適用した例について説明したが、これに限定されない。例えば、2つのサーミスタの温度差を利用して物理量を検出する、ガスセンサ、湿度センサ、流速センサにおいても、本発明が適用できる。
【0091】
NDIR(non−dispersive infrared detector, 非分散型赤外線センサ)といわれる光学式のガスセンサは、2つのサーミスタのうち第1のサーミスタには測定対象の気体を透過した赤外線を照射し、第2のサーミスタには測定対象のガスを含まない標準気体を透過した赤外線を照射し、2つのサーミスタの温度上昇の違いから測定対象の気体内のガス濃度を検出するものである。すなわち、第1のサーミスタはガス濃度という物理量の影響を受け、第2のサーミスタはその影響が低減されている。このような2つのサーミスタを用いたガスセンサにおいても、上記実施形態に係るセンサ回路を適用することで、測定対象の物理量、すなわちガス濃度の検出精度の低下を緩和することができる。
【0092】
2つのサーミスタを用いた湿度センサは、2つのサーミスタのうち第1のサーミスタは測定対象の雰囲気にさらされ、第2のサーミスタは密閉された乾燥空気の中に配置されているものである。これらの2つのサーミスタを同等の条件にて加熱すると、第1のサーミスタは湿度による雰囲気の熱伝導率の変化に影響され温度が変わるが、第2のサーミスタは湿度の影響を受けない。2つのサーミスタの温度差は湿度を反映している。すなわち、第1のサーミスタは湿度という物理量の影響を受け、第2のサーミスタはその影響が低減されている。このような2つのサーミスタを用いた湿度センサにおいても、上記実施形態に係るセンサ回路を適用することで、測定対象の物理量、すなわち湿度の検出精度の低下を抑制することができる。
【0093】
2つのサーミスタを用いた流速センサは、2つのサーミスタのうち第1のサーミスタは測定対象の流体にさらされ、第2のサーミスタは流体にさらされない位置に配置されるものである。これらの2つのサーミスタを同等の条件にて加熱すると、第1のサーミスタは流速に応じて熱を奪われ温度が変わるが、第2のサーミスタはその影響を受けない。2つのサーミスタの温度差は流速を反映している。すなわち、第1のサーミスタは流速という物理量の影響を受け、第2のサーミスタはその影響が低減されている。このような2つのサーミスタを用いた流速センサにおいても、上記実施形態に係るセンサ回路を適用することで、測定対象の物理量、すなわち流速の検出精度の低下を抑制することができる。
【0094】
以上のように、物理量を2つのサーミスタの温度差として検出する各種センサにおいては、上記実施形態に係るセンサ回路を適用することで、測定対象の物理量の検出精度の低下を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明に係るセンサ回路は、自動車、空調機、複写機、電子レンジなどに利用できる。
【符号の説明】
【0096】
V1…電源、R1,R2,R3,R4,R5,R6,R7,R8,R9,R10,R11,R12,R13,R14,R15,R16,R17,R18,R19,R20,R21,R22,R23,R24,R25,R26,R27,R28,R29,R30,R31,R32,R33,R34,R35,R36,R37,R38,R39,R40,R41,R42,R43,R44,R45,R46…抵抗、Th1,Th2,Th3,Th4,Th5,Th6,Th7,Th8…サーミスタ、M1,M2,M3,M4…P型MOSスイッチ、T1,T2,T3,T4…トランスファーゲート、OP1,OP2,OP3,OP4,OP5,OP6,OP7,OP8,OP9,OP10…オペアンプ、11,12,13,14,15…ブリッジ回路、21,22,23…ボルテージフォロワ、31,32,33,34,35…差動増幅回路、41,43…加算回路、42、44…加減算回路、51…A/D変換回路、52,53…記憶装置、54…加算器、P1,P2,P3,P4,P5,P6,P21,P22,P23,P24…ブリッジ回路の出力、P7,P8,P9,P10,P11,P12…ボルテージフォロワの出力、P13,P14,P15…差動増幅回路の出力、P16,P19…加算回路の出力、OUT1…A/D変換回路の出力、OUT2…加算器の出力、100,200,300,400,500,600,700…センサ回路、61,65,71,75…加算器の出力の電圧特性、62,63,72,73,74…差動増幅回路の出力の電圧特性、66,76…測定対象の温度が180時の加算回路の出力の電圧特性から測定対象の温度が160℃時の加算回路の出力の電圧特性を引いた電圧
図1
図2
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図13