(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
(本発明の一態様にかかる衝撃吸収体1の概要)
まず、
図1〜
図5、
図7〜
図10を参照しながら、本発明の一態様にかかる衝撃吸収体1について説明する。
図1〜
図5は、本発明の一態様にかかる衝撃吸収体1の構成例を示す。
図7〜
図10は、本発明の一態様にかかる衝撃吸収体1の成形方法例を示す。
【0014】
本発明の一態様にかかる衝撃吸収体1は、
図1〜
図5に示すように、樹脂製の矩形薄板状の一重壁構造の衝撃吸収体1である。
【0015】
本発明の一態様にかかる衝撃吸収体1は、
図7〜
図10に示す成形方法で成形することができる。まず、
図7に示すように、一対の分割金型11a,11bの間に筒状のパリソン101を構成する樹脂を配置する。
【0016】
次に、
図8に示すように、ブロー成形により、互いに周囲を溶着された一対の壁部1,1より形成された中空成形品100を成形する。壁部1は、後に、衝撃吸収体1となる部分である。具体的には、
図8に示すように、一方の分割金型11a側に位置する樹脂を一方の分割金型11aのキャビティ12aの形状に引き伸ばし、その樹脂で一方の壁部1を形成し、他方の分割金型11b側に位置する樹脂を他方の分割金型11bのキャビティ12bの形状に引き伸ばし、その樹脂で他方の壁部1を形成し、互いに周囲を溶着された一対の壁部1,1より形成された中空成形品100を成形する。
【0017】
次に、
図9に示すように中空成形品100を一対の分割金型11a,11bから取り出し、その取り出した中空成形品100を
図10に示すように切断し、一対の壁部1,1を個々に切り離す。
【0018】
本発明の一態様にかかる衝撃吸収体1は、ブロー成形により、互いに周囲を溶着された一対の壁部1,1より形成された中空成形品100を成形し、その中空成形品100を切断し、一対の壁部1,1を個々に切り離して形成している。このため、一枚の樹脂シートを用いて一重壁の衝撃吸収体1を成形するよりも効率的に成形することができる。なお、本発明の一態様にかかる衝撃吸収体1は、
図7に示す筒状のパリソン101を構成する樹脂ではなく、
図12に示すように、一対の樹脂シートP1,P2を構成する樹脂を用いて成形することも可能である。但し、筒状のパリソン101を用いてブロー成形で一重壁の衝撃吸収体1を成形することで、一重壁の衝撃吸収体1を成形するための設備改修を軽減できると共に、簡易な構成で一重壁の衝撃吸収体1を効率的に成形することができるため、筒状のパリソン101を用いることが好ましい。以下、添付図面を参照しながら、本発明の一態様にかかる衝撃吸収体1について詳細に説明する。
【0019】
<衝撃吸収体1の構成例>
まず、
図1〜
図5を参照しながら、本実施形態の衝撃吸収体1の構成例について説明する。
図1は、本実施形態の衝撃吸収体1を上面側から見た状態の斜視図であり、
図2は、衝撃吸収体1を底面側から見た状態の斜視図である。
図3は、
図1のA−Aに沿う断面図であり、
図4は、
図1のB−Bに沿う断面図であり、
図5は、
図1のC−Cに沿う断面図である。
【0020】
本実施形態の衝撃吸収体1は、樹脂製の矩形薄板状の一重壁構造であり、
図1に示すように、矩形薄板状の平面部2と、平面部2から突出した複数の突起部3と、複数の突起部3同士を連結する連結部4と、を有している。本実施形態の衝撃吸収体1は、
図1に示すように、同じ形状の突起部3が3条設けられている。また、同じ形状の連結部4が2条設けられており、その2条の連結部4で3つの突起部3同士を連結している。
【0021】
本実施形態の衝撃吸収体1は、熱可塑性樹脂で構成している。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、または非晶性樹脂等があげられる。より具体的にはエチレン、プロピレン、ブテン、イソプレンペンテン、メチルペンテン等のオレフィン類の単独重合体または共重合体であるポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン)等があげられる。
【0022】
平面部2は、衝撃吸収体1をドアパネルや天井パネル等の所望の箇所に設置する際の基礎となる薄板状部分である。本実施形態の平面部2は、矩形状で構成している。但し、平面部2は、衝撃吸収体1を設置する箇所に応じて任意の形状で構成することが可能である。
【0023】
突起部3は、衝撃を受け付けて衝撃を吸収する際の基礎となるリブであり、平面部2の位置から所望の高さだけ突出して構成している。突起部3は、突起部3の根元から立ち上がる4つの側壁31、32と、その4つの側壁31、32の頂同士を連結する頂壁33と、で構成している。頂壁33の上面は平坦になっている。突起部3を構成する4つの側壁31、32は、突起部3の長手方向に沿って設けられる一対の側壁31と、突起部3の短手方向に沿って設けられる一対の側壁32と、がある。突起部3の条数は任意の数で設けることが可能である。
【0024】
連結部4は、複数の突起部3同士を連結するリブである。連結部4は、突起部3の短手方向で突起部3同士を連結している。連結部4は、平面部2の位置から任意の高さだけ突出して構成している。但し、突起部3の高さよりも低く、突起部3の根元付近で連結する高さになっている。連結部4は、連結部4の根元から立ち上がる2つの側壁41と、その2つの側壁41の頂同士を連結する頂壁42と、で構成している。頂壁42の上面は平坦になっている。連結部4の条数は任意の数で設けることが可能である。
【0025】
本実施形態の突起部3及び連結部4の内部は、
図2〜
図5に示すように中空になっており、
図2に示すように、突起部3の中空部34と、連結部4の中空部43と、が互いに連結して一体になっている。
【0026】
突起部3の長手方向に沿って設けられる一対の側壁31は、
図5に示すように、平面部2の位置から頂壁33に向かって互いに近づくように所定傾斜角度αで傾斜しており、突起部3の長手方向に直交する断面の外形は台形状になっている。また、突起部3の短手方向に沿って設けられる側壁32は、
図3に示すように、平面部2の位置から頂壁33に向かって互いに近づくように所定傾斜角度βで傾斜しており、突起部3の短手方向に直交する断面の外形は台形状になっている。
【0027】
突起部3の肉厚は、衝撃吸収体1が所望のエネルギー吸収特性を得ると共に、衝撃吸収体1の軽量化を達成可能なように定める。この場合、
図5に示すように、突起部3の長手方向に直交する断面の外形である台形、及び、
図3に示すように、突起部3の短手方向に直交する断面の外形である台形(以下、これらを纏めて、「台形状のリブ」という。)を構成する側壁31、32の肉厚変動率が40%以上であるように定めることが好ましい。肉厚変動率[%]は、以下の式で求める。
【0028】
肉厚変動率=((最大肉厚−最小肉厚)/最大肉厚)×100
【0029】
最大肉厚は、
図6(B)に示すd1の部分の肉厚である。最小肉厚は、
図6(C)に示すd2の部分の肉厚である。
【0030】
図6は、衝撃吸収体1の突起部3の台形状のリブを示しており、(A)は、突起部3の長手方向に直交する断面の斜視図であり、(B)は、(A)に示す頂壁33近傍で長手方向に平行に切り取ったときの断面の斜視図であり、(C)は、(A)に示す平面部2近傍で長手方向に平行に切り取ったときの断面の斜視図である。
【0031】
(B)の断面は、(A)に示す頂壁33の上辺から所定の曲率半径を有する曲線の終点までの距離sの箇所で、頂壁33の上辺に平行な長手方向に切り取ったときの断面を表している。(C)の断面は、(A)に示す平面部2の下辺から所定の曲率半径を有する曲線の終点までの距離tの箇所で、平面部2の下辺に平行な長手方向に切り取ったときの断面を表している。
【0032】
また、本実施形態の衝撃吸収体1全体の平均肉厚は、1.8mm以下であることが好ましく、少なくとも0.8mm以下の肉厚を有する薄い部分が存在し、どんなに薄い部分であっても0.15mm以上の肉厚を有することが望ましい。
【0033】
さらに、所定傾斜角度α及びβは、衝撃荷重が平面部2に対して斜めに負荷される場合における側壁31、32の倒れ込みの防止、及び衝撃荷重が平面部2に対して直交する向き(正面)に負荷される場合における頂壁33の平面部2への落ち込み(底付き)の防止の観点、及び、上述した台形状のリブを構成する側壁31、32の肉厚変動率を40%以上にする観点から、2°〜15°であることが好ましく、より好ましくは、所定傾斜角度αに関しては3〜7°、所定傾斜角度βに関しては6〜10°であることが望ましい。
【0034】
所定傾斜角度α、βが2°より小さいと、頂壁33の底付き防止には有効であるが、側壁31、32の倒れ込みが引き起こされ、逆に15°より大きいと、側壁31、32の倒れ込み防止には有効であるが、頂壁33の底付きが引き起こされる。さらに、所定傾斜角度α、βは、2°〜15°の範囲で可変して対応可能であることが好ましい。なお、所定傾斜角度α、βの角度調整は、後述する分割金型11a,11bの凸部(凹部)の傾斜角度、すなわち、分割金型11a,11bのテーパ角度(抜き角度)を可変させることによって対応可能である。
【0035】
また、連結部4を構成する一対の側壁41は、
図4に示すように平面部2の位置から頂壁42に向かって互いに近づくように所定傾斜角度で傾斜しており、連結部4の長手方向に直交する断面の外形は台形状になっている。頂壁42の上面の位置は、突起部3の上面の位置よりも低く、突起部3の根元付近で連結している。これにより、衝撃荷重が突起部3に対して斜めに負荷される場合に、突起部3の側壁31の倒れ込みを抑制することができる。
【0036】
本実施形態の衝撃吸収体1は、
図1、
図3〜
図5に示すように、平面部2の周囲は平面部2から上方に向かって屈曲しており、平面部2の周囲の屈曲部21の箇所で切断することで、
図1〜
図5に示す一重壁の衝撃吸収体1を形成することが可能になっている。屈曲部21は、平面部2から上方に向かって屈曲しているため、その屈曲部21の箇所で切断した際に、その切断箇所にバリや凹凸や反り等が発生しても、その切断箇所が平面部2から上方に浮いた状態になる。その結果、平面部2をドアパネルや天井パネル等の所望の箇所に設置する際に平面部2の周囲の切断箇所が設置の支障の妨げにならないようにすることができる。また、衝撃吸収体1を設置した場合でも、衝撃吸収体1のがたつきが発生しないようにすることができる。衝撃吸収体1の設置面は、平面部2の底面側になる。
【0037】
また、本実施形態の衝撃吸収体1は、突起部3を構成する側壁31、32が平面部2の位置から頂壁33に至るに連れて断面の肉厚が増加するように形成されており、突起部3を構成する頂壁33の部分が最も肉厚になっている。これにより、衝撃を受け付ける頂壁33の部分が最も肉厚になっているため、衝撃を受け付けた際に割れにくくすることができ、所望の衝撃吸収性能を得ることができる。また、本実施形態の衝撃吸収体1は、平面部2や屈曲部21を構成する部分が薄肉になっている。このため、屈曲部21の箇所で容易に切断することができる。
【0038】
<衝撃吸収体1の成形方法例>
次に、
図7〜
図10を参照しながら、本実施形態の衝撃吸収体1の成形方法例について説明する。
図7は、円筒状のパリソン101を分割金型11a,11bの間に配置した状態を示す概略図である。
図8は、分割金型11a,11bを型締めし、一対の衝撃吸収体1を有する中空成形品100を成形した状態を示す概略図である。一方の衝撃吸収体1は、一方の分割金型11a側で成形され、他方の衝撃吸収体1は、他方の分割金型11b側で成形される。パリソン101から成形される中空成形品100は、一対の衝撃吸収体1の周囲に形成される溶着部102で一対の衝撃吸収体1の周囲が溶着しており、一対の衝撃吸収体1の内部に中空部200を有している。
図9は、分割金型11a,11bを開いて中空成形品100を取り出す状態を示す概略図である。
図10は、中空成形品100の屈曲部21の箇所を切断し、中空成形品100から2つの衝撃吸収体1を切り出した状態を示す概略図である。
【0039】
まず、
図7に示すように、押出装置10から円筒状のパリソン101を押し出し、円筒状のパリソン101を分割金型11a,11b間に配置する。パリソン101は、衝撃吸収体1を構成するための熱可塑性樹脂を用いて形成する。
【0040】
また、
図7に示すように、押出装置10から押し出したパリソン101の下部側を下ピンチ13で塞ぎ、プリブローによりパリソン101を所定の大きさまで拡張する。これにより、パリソン101のしわを伸ばすことができる。
【0041】
なお、プリブローの方法は特に限定せず、例えば、押出装置10側からプリブロー用のエアーをパリソン101の内部に吹き込むようにすることも可能である。また、下ピンチ13側から吹き込みノズルをパリソン101内に挿入し、下ピンチ13側からプリブロー用のエアーをパリソン101の内部に吹き込むようにすることも可能である。
【0042】
次に、
図8に示すように、分割金型11a,11bを移動させ、パリソン101を分割金型11a,11bで挟み込み型締めする。これにより、パリソン101を分割金型11a,11bのキャビティ12a,12bに収納させる。
【0043】
次に、分割金型11a,11bを型締めした状態で、分割金型11a,11bに設けられた所定の孔に吹き込み針と吹き出し針とを貫通させ、パリソン101に同時に突き刺す。吹き込み針、吹き出し針の先端がパリソン101内に入ると、すぐに吹き込み針から空気等の圧縮気体をパリソン101の内部に吹き込み、パリソン101の内部を経由して吹き出し針から圧縮気体を吹き出し、所定のブロー圧でブロー成形を行う。これにより、パリソン101は、キャビティ12a,12bの壁面に押圧され、パリソン101が引き伸ばされてキャビティ12a,12bの形状になる。それぞれのキャビティ12a,12bの表面には、パリソン101に基づいて成形される衝撃吸収体1の外形、及び表面形状に応じて凹凸部が設けられている。
【0044】
本実施形態の分割金型11a,11bは、突起部3を形成する突起部形成部14と、屈曲部21を形成する屈曲部形成部15と、を有しており、パリソン101がキャビティ12a,12bの形状になることで、突起部形成部14により、突起部形成部14の形状に応じた突起部3を形成することになる。また、屈曲部形成部15により、屈曲部形成部15の形状に応じた屈曲部21を形成することになる。突起部形成部14は、
図8(B)に示すように、側壁31を形成する側壁形成面141と、頂壁33を形成する頂壁形成面142と、を有しており、側壁形成面141により、側壁形成面141に沿った側壁31を形成し、頂壁形成面142により、頂壁形成面142に沿った頂壁33を形成する。
図8(B)は、
図8(A)に示す分割金型11aの一部を拡大した図であり、突起部形成部14と、屈曲部形成部15と、を示している。
【0045】
突起部形成部14は、
図8(B)に示すように、突起部形成部14の根元から立ち上がり互いに対向する一対の側壁形成面141と、一対の側壁形成面141の頂同士を連結する頂壁形成面142と、を有しており、頂壁形成面142は、
図7に示すように、一対の分割金型11a,11bの間にパリソン101を配置した際に、突起部形成部14の根元よりもパリソン101に近い側に位置している。そして、
図8(B)に示すように、パリソン101を突起部形成部14の形状に沿って引き伸ばし、頂壁形成面142で頂壁33を形成し、一対の側壁形成面141で一対の側壁31を形成し、一対の側壁31は、頂壁33から突起部3の根元に至るに連れて断面の肉厚が薄くなるように形成される。なお、
図8(B)に示す突起部形成部14は、側壁31を形成する側壁形成面141と、頂壁33を形成する頂壁形成面142と、を有して構成する部分を示しているが、本実施形態の突起部形成部14は、側壁32を形成する側壁形成面と、頂壁33を形成する頂壁形成面と、を有して構成する部分も存在することは言うまでもない。
【0046】
パリソン101は、キャビティ12a,12bの壁面に押圧されて引き伸ばされ、キャビティ12a,12bの形状になるため、押出装置10から押し出されたパリソン101の配置位置に近くパリソン101が引き伸ばされ難い箇所である頂壁形成面142の箇所で形成される頂壁33は、肉厚が厚くなる。また、押出装置10から押し出されたパリソン101の配置位置から遠くパリソン101が引き伸ばされ易い箇所である側壁形成面141の箇所で形成される側壁31は、頂壁形成面142の箇所から突起部形成部14の根元に向かって肉厚が薄くなる。また、押出装置10から押し出されたパリソン101の配置位置から遠くパリソン101が引き伸ばされ易い箇所で形成される平面部2や屈曲部21は、肉厚が薄くなる。
【0047】
本実施形態では、吹き込み針から圧縮気体をパリソン101内に吹き込むと共に、分割金型11a,11bのキャビティ12a,12bから排気を行い、パリソン101とキャビティ12a,12bとの間の隙間をなくし、負圧状態にさせる。これにより、分割金型11a,11b内部のキャビティ12a,12bに収納されたパリソン101の内外において圧力差(パリソン101の内部が外部よりも高い圧力を意味する)が設定され、パリソン101は、キャビティ12a,12bの壁面に押圧され、パリソン101が引き伸ばされてキャビティ12a,12bの形状になる。
【0048】
なお、上述した成形工程において、パリソン101の内部に圧縮気体を吹き込む工程と、パリソン101の外部に負圧を発生させる工程と、は同時に行う必要はなく、互いの工程を時間的にずらして行うことも可能である。
【0049】
また、本実施形態の分割金型11a,11bは、パリソン101をコンプレッションして溶着部102を形成するための溶着部形成部16を有しており、パリソン101を分割金型11a,11bで型締めした際に溶着部形成部16でパリソン101をコンプレッションして溶着部102を形成している。
【0050】
また、本実施形態の分割金型11a,11bは、溶着部形成部16の一端から分割金型11a,11bの型開き方向に向かって立ち上がる立壁形成面17を有し、立壁形成面17は、溶着部形成部16と屈曲部形成部15との間に位置している。そして、パリソン101を立壁形成面17に沿って引き伸ばし、立壁形成面17の形状に応じた立壁103を溶着部102の一端から形成し、溶着部102と屈曲部21との間に立壁103を形成している。
【0051】
パリソン101から一対の衝撃吸収体1となる部分については、上述のように吹き込み針から空気等の圧縮気体をパリソン101の内部に吹き込み、パリソン101の内部を経由して吹き出し針から圧縮気体を吹き出す。そして、所定のブロー圧により所定の時間だけパリソン101をキャビティ12a,12bに押圧し、パリソン101の一部を冷却固化する。その後は、圧縮気体による冷却を行わず、分割金型11a,11bで型締めした状態で残りの溶融状態のパリソン101を自然固化する。これにより、一対の衝撃吸収体1の内部に中空部200を有する中空成形品100を成形することができる。
【0052】
吹き込み針からパリソン101内に冷却のために供給する圧縮気体の温度は、10℃〜30℃に設定し、室温(例えば、23℃)に設定することが好ましい。圧縮気体の温度を室温に設定することで、圧縮気体の温度を調整するための温調設備を設ける必要がないため、衝撃吸収体1を低コストで成形することができる。また、温調設備を設け、吹き込み針からパリソン101内に供給する圧縮気体の温度を室温よりも低くした場合は、衝撃吸収体1の冷却時間を短縮することができる。なお、圧縮気体の温度にもよるが、圧縮気体による冷却時間(印加時間を意味する)は、35秒以下で行うことが好ましい。これにより、衝撃吸収体1を構成するパリソン101の材料にかかわらず、パリソン101の一部を冷却固化し、パリソン101の残りの部分を溶融状態のままにすることができる。その後は、圧縮気体による冷却を行わず、分割金型11a,11bで型締めした状態で溶融状態の残りのパリソン101を自然に固化することができる。
【0053】
次に、
図9に示すように、分割金型11a,11bの型開きを行い、中空成形品100を分割金型11a,11bから取り出し、外周部のバリを除去する。
【0054】
次に、
図10(A)に示すように、中空成形品100に設けられた屈曲部21の箇所でカッター等の切断刃300で中空成形品100を切断し、
図10(B)に示すように、一対の衝撃吸収体1を分離し、2つの衝撃吸収体1を切り出す。これにより、
図1〜
図5に示す衝撃吸収体1を形成することができる。また、本実施形態の成形方法は、1ショットのパリソン101から一対の衝撃吸収体1を成形することができる。このため、一枚の樹脂シートから衝撃吸収体1を成形するよりも効率的に衝撃吸収体1を成形することができる。
【0055】
中空成形品100は、
図10(A)に示すように、屈曲部21の近傍にパリソン101をコンプレッションして形成した溶着部102を有している。また、屈曲部21と溶着部102との間に立壁103を有している。屈曲部21は、衝撃吸収体1の全周囲に設けられるため、その屈曲部21の周囲に立壁103と溶着部102とを有する中空成形品100を成形することになる。このため、屈曲部21の周囲の剛性が高くなっており、屈曲部21の箇所で中空部200を横断して中空成形品100を切断し易くなっている。また、屈曲部21の周囲の剛性が高くなっているため、中空成形品100を切断する際に大きな力を加えることなく中空成形品100を切断することができるため、切断箇所が変形しないようにすることができる。また、屈曲部21は、中空成形品100の内側に屈曲しているため、切断刃300が屈曲部21に当接し易く、屈曲部21の箇所で切断し易くなっている。屈曲部21の形状は、一部が屈曲していれば、任意の形状で構成することが可能である。但し、屈曲部21の形状は、中空成形品100から切り出した衝撃吸収体1の平面部2から上方に向かって屈曲した形状にすることは必須である。
【0056】
なお、
図10に示す中空成形品100に形成される一方の屈曲部21は、切断刃300の切断方向Aと同一方向に向かって屈曲しており、切断刃300を切断方向Aに案内し易い形状になっている。しかし、一方の屈曲部21に対向する他方の屈曲部21は、切断刃300の切断方向Aと逆方向に向かって屈曲しており、切断刃300を切断方向Aに案内し難い形状になっている。このため、
図11に示すように、他方の屈曲部21に対し、切断刃300の切断方向Aと同一方向に向かって屈曲した案内部22を設け、切断刃300を切断方向Aに案内し易くすることが好ましい。
図11は、他方の屈曲部21を形成する屈曲部形成部15の箇所の構成例を示す図であり、屈曲部形成部15に対し、案内部22を形成するための案内部形成面18を設けた状態を示している。
図11に示すように屈曲部形成部15に案内部形成面18を設けることで、案内部形成面18の形状に応じた案内部22を屈曲部21に設けることが可能となる。これにより、屈曲部21の箇所でさらに切断し易くすることが可能となる。案内部形成面18の形状は、切断刃300の切断方向Aと同一方向に屈曲した形状であれば、任意の形状で構成することが可能である。
【0057】
なお、
図7〜
図10に示す成形方法例では、円筒状のパリソン101を用いて衝撃吸収体1を成形する場合について説明した。しかし、円筒状のパリソン101ではなく、例えば、
図12に示すように、2枚の樹脂シートP1,P2を用いて衝撃吸収体1を成形することも可能である。
【0058】
図12に示す成形装置は、2台の押出装置50a,50bと、上述した成形方法例と同様の分割金型11a,11bと、を有して構成される。
【0059】
押出装置50(50a,50b)は、上述した成形方法例におけるパリソン101と同様の材質の溶融状態の樹脂シートP1,P2を、分割金型11a,11b間に所定の間隔で略平行に垂下させるように配置される。溶融状態の樹脂シートP1,P2を押し出す押出装置50a,50bの下方には調整ローラ60a,60bが配置され、この調整ローラ60a,60bにより厚さ等の調整を行う。こうして押し出された樹脂シートP1,P2を、分割金型11a,11bで挟み込んで型締めし、成形する。
【0060】
2台の押出装置50(50a,50b)の構成は同様であるため、1つの押出装置50について、
図12を参照して説明する。
【0061】
押出装置50は、ホッパ51が付設されたシリンダ52と、シリンダ52内に設けられたスクリュー(図示せず)と、スクリューに連結された油圧モーター53と、シリンダ52と内部が連通したアキュムレータ54と、アキュムレータ54内に設けられたプランジャー56と、Tダイ58と、一対の調整ローラ60と、を有して構成される。
【0062】
ホッパ51から投入された樹脂ペレットが、シリンダ52内で油圧モーター53によるスクリューの回転により溶融、混練され、溶融状態の樹脂がアキュムレータ54に移送されて一定量貯留され、プランジャー56の駆動によりTダイ58に向けて溶融樹脂を送る。こうして、Tダイ58下端の押出スリットから、溶融状態の樹脂による連続的な樹脂シートPが押し出され、間隔を隔てて配置された一対の調整ローラ60によって挟圧されながら下方へ向かって送り出され、分割金型11a,11bの間に垂下される。
【0063】
また、Tダイ58には、押出スリットのスリット間隔を調整するためのダイボルト59が設けられる。スリット間隔の調整機構は、このダイボルト59を用いた機械式の機構に加え、公知の各種調整機構を他に備えてもよい。
【0064】
こうした構成により、2つのTダイ58a,58bの押出スリットから、溶融状態の樹脂シートP1,P2が押し出され、上下方向(押出方向を意味する)に一様な厚みを有する状態に調整され、分割金型11a,11bの間に垂下される。
【0065】
こうして樹脂シートP1,P2が分割金型11a,11b間に配置されると、この分割金型11a,11bを水平方向に前進させ、分割金型11a,11bの外周に位置する型枠61a,61bを、樹脂シートP1,P2に密着させる。こうして分割金型12a,12b外周の型枠61a,61bにより樹脂シートP1,P2を保持した後、分割金型11a,11bのキャビティ12a,12bに樹脂シートP1,P2を真空吸引することで、樹脂シートP1,P2それぞれをキャビティ12a,12bに沿った形状にする。
【0066】
次に、分割金型11a,11bを水平方向に前進させて型締めし、上述した成形方法と同様に、吹き込み針と吹き出し針とを樹脂シートP1,P2に突き刺し、吹き込み針から空気等の圧縮気体を樹脂シートP1,P2の内部に吹き込み、樹脂シートP1,P2の内部を経由して吹き出し針から圧縮気体を吹き出す。こうして、中空成形品100の内側を冷却する。これにより、一対の衝撃吸収体1の内部に中空部200を有する中空成形品100を成形することができる。
【0067】
次に、分割金型11a,11bを水平方向に後退させ、分割金型11a,11bを中空成形品100から離型させる。
【0068】
次に、中空成形品100に設けられた屈曲部21の箇所でカッター等の切断刃300で中空成形品100を切断し、一対の衝撃吸収体1を分離し、2つの衝撃吸収体1を切り出す。これにより、衝撃吸収体1を形成することができる。
【0069】
なお、一対の分割金型11a,11bの間に垂下された樹脂シートP1,P2は、ドローダウン、ネックインなどにより肉厚のバラツキが発生するのを防止するため、樹脂シートの厚み、押出速度、押出方向の肉厚分布などを個別に調整することが必要になる。こうした樹脂シートの厚み、押出速度、押出方向の肉厚等の調整は、公知の各種方法を用いてよい。
【0070】
以上のように、
図12に示す他の成形方法例によっても、
図7〜
図10で説明した成形方法と同様に、衝撃吸収体1を好適に成形することができる。
【0071】
なお、
図12に示す他の成形方法例は、上述のようにTダイ58から押し出した樹脂シートを分割金型で成形する場合に限らない。
【0072】
例えば、予め成形された樹脂シートを再加熱して分割金型で挟み込んで成形する場合にも本発明は適用できる。具体的には、予め成形してある2枚の樹脂シートを再加熱した後、分割金型で軟化した2枚の溶融状態の樹脂シートを挟み込み、溶融状態の樹脂シートを分割金型に吸引する、もしくは、2枚の樹脂シート間にエアーを導入し、エアーの圧力で分割金型に樹脂シートを密着させることになる。
【0073】
図1〜
図5に示す衝撃吸収体1は、
図7や
図12に示す分割金型11a,11bを用いて
図7に示す円筒状のパリソン101または
図12に示す一対の樹脂シートP1,P2を構成する樹脂を型締めし、一方の分割金型11a側に位置する樹脂を一方の分割金型11aのキャビティ12aの形状に引き伸ばし、その樹脂で衝撃吸収体1を形成する。また、他方の分割金型11b側に位置する樹脂を他方の分割金型11aのキャビティ12aの形状に引き伸ばし、その樹脂で衝撃吸収体1を形成する。そして、一対の衝撃吸収体1の間に中空部200を有する中空成形品100を成形する。そして、中空成形品100の中空部200を横断するように中空成形品100に設けられた屈曲部21の箇所で中空成形品100を切断し、一対の衝撃吸収体1を個々の衝撃吸収体1に切り離すことで成形することができる。
【0074】
これにより、
図1〜
図5に示すような所望の衝撃吸収性能を有する衝撃吸収体1を成形することができる。
【0075】
なお、一重壁の衝撃吸収体1は、例えば、
図13、
図14に示す分割金型11a,11bの形状でも形成することができる。この
図13、
図14に示す分割金型11a,11bの形状で中空成形品100を成形することで、一枚の樹脂シートを用いて一重壁の衝撃吸収体1を成形するよりも効率的に成形することができる。
図13、
図14に示す分割金型11a,11bは、突起部形成部14と屈曲部形成部15とを押出装置10から押し出されたパリソン101の位置から遠ざかる方向に窪んだ形状になっており、
図8に示す分割金型11a,11bに設けられた突起部形成部14と屈曲部形成部15との突出方向と逆方向に窪んだ形状になっている。
図13は、分割金型11a,11bを型締めし、一対の衝撃吸収体1を有する中空成形品100を成形した状態を示す概略図である。
図14は、分割金型11a,11bを開いて中空成形品100を取り出す状態を示す概略図である。
【0076】
図13、
図14に示す分割金型11a,11bを用いて成形した中空成形品100は、中空成形品100に設けられた屈曲部21が中空成形品100の外側に向かって突出している。このため、中空成形品100に設けられた屈曲部21の箇所でカッター等の切断刃300で中空成形品100を切断する際に、切断箇所の位置決めができにくくなっている。なお、切断箇所の位置決めは、上述した
図11に示すような案内部22を屈曲部21に設けることで解消することが可能である。しかし、屈曲部21に案内部22を設けても、屈曲部21の周囲に溶着部102や立壁103が存在しないため、屈曲部21の箇所で切断する際に、屈曲部21の部分が中空成形品100の内側に向かってへこみ易くなっており、屈曲部21の箇所で中空成形品100を切断し難くなっている。また、屈曲部21の箇所の肉厚が厚くなっているため、屈曲部21の箇所で中空成形品100を切断し難くなっている。
【0077】
また、
図13(B)に示すように、突起部形成部14の頂壁形成面142の箇所は、押出装置10から押し出されたパリソン101の位置から最も遠ざかっており、突起部形成部14の側壁形成面141の箇所で形成される側壁31は、突起部形成部14の根元から頂壁形成面142に向かって薄肉になっており、突起部形成部14の頂壁形成面142の箇所に接するパリソン101が最も引き伸ばされて頂壁形成面142の箇所で形成される頂壁33の肉厚が最も薄肉になっている。このため、
図13、
図14に示す分割金型11a,11bを用いて成形される衝撃吸収体1は、所望の衝撃吸収性能を確保し難い形状になってしまう場合がある。
【0078】
このため、一重壁の衝撃吸収体1を成形する場合は、
図13、
図14に示す分割金型11a,11bの形状よりも、
図7や
図12に示す分割金型11a,11bの形状で成形することが好ましい。また、一重壁の衝撃吸収体1を成形する場合は、
図12に示す一対の樹脂シートP1,P2を用いるよりも、
図7に示す円筒状のパリソン101を用いてブロー成形にて成形することが好ましい。これは、一重壁の衝撃吸収体1を成形するための設備改修を軽減できると共に、簡易な構成で一重壁の衝撃吸収体1を効率的に成形することができるためである。
【0079】
<本実施形態の衝撃吸収体1の作用・効果>
このように、本実施形態の衝撃吸収体1は、以下の成形方法で成形することができる。まず、一対の分割金型11a,11bの間に円筒状のパリソン101または一対の樹脂シートP1,P2を構成する樹脂を配置する。次に、ブロー成形により、互いに周囲を溶着された一対の壁部1,1より形成された中空成形品100を成形する。具体的には、一方の分割金型11a側に位置する樹脂を一方の分割金型11aのキャビティ12aの形状に引き伸ばし、その樹脂で一方の壁部1を形成し、他方の分割金型11b側に位置する樹脂を他方の分割金型11bのキャビティ12bの形状に引き伸ばし、その樹脂で他方の壁部1を形成し、互いに周囲を溶着された一対の壁部1,1より形成された中空成形品100を成形する。次に、中空成形品100を切断し、一対の壁部1,1を個々に切り離す。これにより、本実施形態の衝撃吸収体1を効率的に成形することができる。
【0080】
なお、本実施形態の衝撃吸収体1は、
図7に示す円筒状のパリソン101を用いてブロー成形で一重壁の衝撃吸収体1を成形することが好ましい。これにより、一重壁の衝撃吸収体1を成形するための設備改修を軽減できると共に、簡易な構成で一重壁の衝撃吸収体1を効率的に成形することができる。
【0081】
また、本実施形態の衝撃吸収体1を成形する一対の分割金型11a,11bは、中空成形品100を切断する切断箇所に樹脂を屈曲させた屈曲部21を形成する屈曲部形成部15を有しており、樹脂を屈曲部形成部15の形状に沿って引き伸ばし、屈曲部21を形成している。中空成形品100に形成される屈曲部21は、個々の衝撃吸収体1に切り離した際に衝撃吸収体1の上方に向かって屈曲した形状になっている。このため、中空成形品100を屈曲部21の箇所で切断した際に、屈曲部21の切断箇所にバリや凹凸や反り等が発生しても、屈曲部21が衝撃吸収体1から上方に浮いた状態になるため、衝撃吸収体1をドアパネルや天井パネル等の所望の箇所に設置する際に屈曲部21が設置の支障の妨げにならないようにすることができる。また、衝撃吸収体1を設置した場合でも、衝撃吸収体1のがたつきが発生しないようにすることができる。
【0082】
なお、上述した実施形態は本発明の好適な実施形態であり、本発明はこれに限定されることなく、本発明の技術的思想に基づいて種々変形して実施することが可能である。