(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記算出手段により算出される液面高さを目標値に近づけるために、前記弁体を通して前記蒸発・凝縮器および前記タンクの間で前記反応液を移動させる移動手段(13、41、44、)を備えることを特徴とする請求項1に記載の化学蓄熱システム。
前記移動手段は、前記タンクから前記弁体を通して前記蒸発・凝縮器に前記反応液を移動させるために、前記タンク内の圧力を前記蒸発・凝縮器内の圧力よりも高くする圧力上昇手段(13、40、41、44)であることを特徴とする請求項2に記載の化学蓄熱システム。
前記圧力上昇手段は、前記反応器において前記化学蓄熱材の水和反応に伴い生じる熱を前記タンクに与えることにより、前記タンク内の圧力を上昇させるものであることを特徴とする請求項3に記載の化学蓄熱システム。
前記移動手段は、前記タンクから前記蒸発・凝縮器に前記反応液を移動させるために、前記蒸発・凝縮器内の圧力を前記タンク内の圧力よりも低下させる圧力低下手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の化学蓄熱システム。
前記圧力低下手段は、前記反応液を蒸発させるために前記熱交換器によって前記反応液を加熱した後に、前記熱交換器による前記反応液の加熱を停止することにより、前記蒸発・凝縮器内の圧力を低下させることを特徴とする請求項6に記載の化学蓄熱システム。
前記算出手段により算出される液面高さを目標値に近づけるために、前記弁体を通して前記蒸発・凝縮器および前記タンクの間で前記反応液を移動させる移動手段を備えることを特徴とする請求項8に記載の化学蓄熱システム。
前記移動手段は、前記蒸発・凝縮器から前記タンクに前記反応液を移動させるために、前記タンク内の圧力よりも前記蒸発・凝縮器内の圧力を高くする圧力上昇手段であることを特徴とする請求項9に記載の化学蓄熱システム。
前記開閉弁が前記蒸発・凝縮器および前記タンクの間を開けた状態で、前記タンクから前記開閉弁を通して前記蒸発・凝縮器に前記反応液を移動させるためのポンプ(20)を備えることを特徴とする請求項12に記載の化学蓄熱システム。
前記蒸発・凝縮器および前記タンクの間にて前記開閉弁に対して並列に配置されて、前記蒸発・凝縮器から前記タンクへの前記反応液の移動を許容し、前記タンクから前記蒸発・凝縮器に前記反応液が移動することを妨げる前記弁体としての逆止弁(60)を備えることを特徴とする請求項12または13に記載の化学蓄熱システム。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0021】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、後述する他の実施形態を含め以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0022】
図1は、本発明の化学蓄熱システム10を自動車に適用した第1実施形態の基本構成を示した模式図である。
図1の化学蓄熱システム10は、車両用の空調装置の一部を構成している。反応液である水の蒸発によって車室内空気(以下、内気という)を冷却する。そして、その冷却された内気が車室内へ導入されることよって、車室内が冷房される。一方、後述する化学蓄熱材の水和反応で放熱される熱により内気(或いは、外気)を加熱する。そして、その加熱された内気(或いは、外気)が車室内(或いは、車室外)へ排出される。
【0023】
図1に示すように、化学蓄熱システム10は、反応器12、蒸発・凝縮器16、水タンク18、供給ポンプ20、圧力センサ22、24、およびバルブ26、28を備えている。この化学蓄熱システム10において蒸発と凝縮とを繰り返す反応液は水である。
【0024】
反応器12は、化学蓄熱材14を内蔵している。化学蓄熱材14は、特開2013−204867号公報に記載された化学蓄熱材と同じものであり、脱水反応を生じることで蓄熱する一方、水和反応を生じることで放熱する特性を備えている。本実施形態の化学蓄熱材14としては、酸化カルシウム/水酸化カルシウム(CaO/Ca(OH)
2)が採用されている。したがって、反応器12内では、化学蓄熱材14は、以下に示す反応で蓄熱と放熱とを可逆的に繰り返し得る構成とされている。
【0025】
CaO+H
2O⇔Ca(OH)
2+ΔH(kJ/mol)
ここで、ΔHは反応熱量である。化学蓄熱材14が水和反応を生じる際には発熱を伴う。
【0026】
そこで、本実施形態では、反応器12内には、熱交換器13が配置されている。熱交換器13には、送風機よって内気および外気(車室外空気)のうちいずれか一方が流通される。当該送風機は、内気および外気のうちいずれか一方を熱交換器13に流通させるものである。
【0027】
上記送風機は、電動送風機であって、電子制御装置32(
図2参照)によって制御される。
【0028】
化学蓄熱材14が水和反応を生じる際には、熱交換器13内には、外気(或いは、内気)を流通させて、化学蓄熱材14が水和反応を生じる際に発生する熱を車室内外(或いは、車室内)に排熱する。
【0029】
また、化学蓄熱材14に脱水反応を生じさせるためには化学蓄熱材14を加熱する必要があるので、その際には、例えば内気等の温風が送風機によって熱交換器13に流通させられる。
【0030】
また、反応器12は、水和反応用の反応液の蒸気すなわち水蒸気を発生させる蒸発・凝縮器16と蒸気配管34で接続されている。その反応液の蒸気は、蒸気配管34を介して、蒸発・凝縮器16から反応器12へ供給される。
【0031】
更に、蒸発・凝縮器16は、反応器12で発生した脱水反応時の蒸気を凝縮させ、反応液である水にする。蒸気が凝縮する際には熱を発生する。そこで、この熱を車室外(或いは、車室内)に放熱するために熱交換器17が配置されている。
熱交換器17には、送風機によって外気(或いは、内気)が流通される。そして、この流通された外気が蒸気の凝縮により生じる熱により加熱される。この加熱された外気が車室外に放出される。本実施形態の送風機は、内気および外気のうちいずれか一方を熱交換器17に流通させるものである。当該送風機は、電動送風機であって、電子制御装置32(
図2参照)によって制御される。
蒸気配管34は、気密状態で蒸発・凝縮器16と反応器12とを連通している。蒸気配管34には、蒸気の流れを制御するバルブ26が取り付けられている。このバルブ26は、蒸気配管34を開閉する開閉弁である。蒸気配管34は、バルブ26の閉弁状態で遮断され、バルブ26の開弁状態で開放される。なお、蒸発・凝縮器16から反応器12にわたって気密状態となっているが、詳細には、反応液である水およびその蒸気以外の物質が混入していない気密状態たとえば酸素や窒素等が混入していない気密状態となっている。
【0032】
蒸発・凝縮器16は、熱交換器17により内気から吸熱して反応液である水を加熱して蒸発させる。この場合、送風機によって熱交換器17に内気を流通させて、この流通された内気は、吸熱により冷却される。このことにより、熱交換器17により冷却された内気は、冷風として車室内に導かれる。すなわち、熱交換器17が内気から吸熱することにより、熱交換器17が冷熱として冷風を車室内に出力することになる。
【0033】
水タンク18は、反応液を貯えるタンクである。本実施形態の水タンク18は、蒸発・凝縮器16に対して天地方向下側に配置されている。水タンク18は反応液配管19を介して蒸発・凝縮器16に接続されている。反応液配管19の一方側は水タンク18の底部側に配置され、反応液配管19の他方側は、蒸発・凝縮器16の底部側に配置されている。
【0034】
反応液配管19には、供給ポンプ20およびバルブ28が設けられている。バルブ28は、反応液配管19を開閉する開閉弁である。反応液配管19は、バルブ28の閉弁状態で遮断され、バルブ28の開弁状態で開放される。供給ポンプ20は、水タンク18内および蒸発・凝縮器16の間で反応液を移動させるための電動ポンプである。
【0035】
次に、本実施形態の化学蓄熱システム10の電気的構成について
図2を参照して説明する。
【0036】
電子制御装置32は、CPU、ROM、RAM等からなる周知のマイクロコンピュータとその周辺回路とから構成されたものである。電子制御装置32は、圧力センサ22、24の検出値に基づいて、供給ポンプ20、バルブ26、28、蒸発・凝縮器16の送風機、および反応器12の送風機を制御する。圧力センサ22は、蒸発・凝縮器16内の上側の圧力として、蒸発・凝縮器16内の蒸気圧Peを検出する。圧力センサ24は、水タンク18内の下側の圧力として、反応液の圧力Ptを検出する。
【0037】
次に、本実施形態の化学蓄熱システム10の作動について説明する。
【0038】
まず、電子制御装置32は、バルブ28を開弁して反応液配管19を開けるとともに、供給ポンプ20の作動を開始させる。このため、供給ポンプ20は、水タンク18内の反応液を反応液配管19およびバルブ28を通して蒸発・凝縮器16内に送り出すことができる。
【0039】
その後、電子制御装置32は、供給ポンプ20の作動を所定期間継続させると、
供給ポンプ20を停止させるとともに、バルブ28を閉弁して反応液配管19を閉じる。
【0040】
このとき、電子制御装置32は、圧力センサ22、24の検出値に基づいて蒸発・凝縮器16内の反応液の液面高さHe(水位)を算出する。液面高さHeは、蒸発・凝縮器16内の底部を基準位置とした高さである。
【0041】
まず、重力加速度をg、水の比重をρとし、水タンク18内の底部を基準位置とした蒸発・凝縮器16の底部の高さをHをとする。この高さHは、予め決められた既知の値である。水タンク18内の底部を基準位置とした水タンク18内の反応液の液面高さをHtとする。蒸発・凝縮器16の蒸気圧をPeとし、水タンク18内の蒸気圧をPtとする。
【0042】
すると、水位の測定原理によって、次の数式(1)がする
ρ・g・Ht+Pt=ρ・g・(H+He)+Pe・・・・(数式1)
ここで、圧力センサ24の検出値P1は、(ρ・g・Ht+Pt)と等しく、圧力センサ22の検出値P2は、Peに等しい。このため、高さHおよび圧力センサ24、22の検出値P1、P2を数式1に代入する。このことにより、蒸発・凝縮器16内の反応液の液面高さHeを求めることができる。
【0043】
ここで、液面高さHeが目標値よりも大きい時には、バルブ26を閉じ、バルブ28を開弁して反応液配管19を開ける。このとき、蒸発・凝縮器16から水タンク18内に反応液が重力により流れる。このことにより、蒸発・凝縮器16内の反応液の液面高さHeを調整することができる。
【0044】
一方、液面高さHeが目標値よりも小さいときには、バルブ28を開弁して反応液配管19を開けるとともに、供給ポンプ20の作動を開始させる。このため、供給ポンプ20は、水タンク18内の反応液を反応液配管19を通して蒸発・凝縮器16内に送り出すことができる。このことにより、蒸発・凝縮器16内の反応液の液面高さHeを調整することができる。
【0045】
以上により、蒸発・凝縮器16内の反応液の液面高さHeが目標値に近づけることができる。
【0046】
次に、電子制御装置32は、バルブ26を開弁して蒸気配管34を開ける。その後、電子制御装置32は送風機によって熱交換器17に内気を流通させる。このため、蒸発・凝縮器16内の反応液は、熱交換器17を流通する内気から吸熱する。このことにより、内気は、熱交換器17で冷却されて、冷風として車室内に吹き出される。これにより、冷風により車室内が冷房される。
【0047】
このとき、蒸発・凝縮器16内の反応液は熱交換器17内の内気によって加熱される。これに伴い、反応液は蒸発して蒸気が発生する。この蒸気は、蒸気配管34およびバルブ26を通して反応器12に移動する。反応器12では、化学蓄熱材14が蒸気によって水和反応を生じて熱を発生する。このとき、熱交換器13に送風機が外気(内気)を流通させる。このため、化学蓄熱材14が発生する熱により熱交換器13内の外気(内気)は加熱されて、この加熱された外気は、温風として車室外に放出される。
【0048】
次に、電子制御装置32は、送風機によって熱交換器13に内気を流通させる。このため、熱交換器13内の内気は化学蓄熱材14を加熱する。そして、この化学蓄熱材14を加熱した内気は熱交換器13から車室外に放出される。このとき、この内気によって加熱された化学蓄熱材14は、脱水反応を生じることで蓄熱する。このため、化学蓄熱材14は蒸気を発生させる。この蒸気は、蒸気配管34およびバルブ26を通して蒸発・凝縮器16内に移動する。
【0049】
このとき、電子制御装置32は、送風機によって蒸発・凝縮器16内の熱交換器17には内気(或いは、外気)を流通させる。蒸発・凝縮器16内の蒸気は、熱交換器17内の内気(或いは、外気)に放熱して凝縮する。このため、熱交換器17内の内気(或いは、外気)は蒸気によって加熱されて温風として車室外に放出される。このとき、蒸発・凝縮器16内には、反応液としての水が発生する。
【0050】
その後、電子制御装置32は、かつバルブ28を開弁して反応液配管19を開ける。すると、この反応液は、重力によって、蒸発・凝縮器16から反応液配管19およびバルブ28を通して水タンク18内に流れる。
【0051】
以上説明した本実施形態によれば、化学蓄熱システム10は、反応器12、蒸発・凝縮器16、バルブ28、および供給ポンプ20を備える。反応器12は、加熱により脱水反応を生じることで蓄熱し、水和反応を生じることで放熱する化学蓄熱材14を収納する。蒸発・凝縮器16は、反応器12と連通して、脱水反応で生じた蒸気を凝縮して反応液を生じるとともに、化学蓄熱材14と水和反応を生じる反応液および内気(熱媒体)の間の熱交換により反応液を加熱して蒸発させて反応器12へ蒸気を供給するための熱交換器17を備える。水タンク18は、蒸発・凝縮器16に連通されて、反応液を貯める。バルブ28は、水タンク18および蒸発・凝縮器16の間を開閉する。蒸発・凝縮器16で生じた反応液は、蒸発・凝縮器16からバルブ28を通して水タンク18に供給されるようになっている。蒸発・凝縮器16は、水タンク18から蒸発・凝縮器16に移動した反応液を熱交換器17によって加熱して蒸発させて反応器12へ蒸気を供給するようになっていることを特徴とする。
【0052】
したがって、蒸発・凝縮器16および水タンク18を別々に設けることにより、蒸発・凝縮器16内の反応液の量を減らすことができるので、蒸発・凝縮器16で反応液を蒸発させる際の反応液の顕熱量を低減することができる。よって、起動時において、熱交換器17が反応液を加熱する際に熱交換器17が内気(熱媒体)から吸熱する熱量が定常値に到達するまでに要する時間を短くすることができる。すなわち、熱交換器17が蒸発・凝縮器16内の反応液を加熱する際に熱交換器17から出力される冷熱出力の立ち上がりを向上させることができる。
【0053】
これに加えて、蒸発・凝縮器16において、低温(例えば、25℃以下)では、反応液の気液界面での反応液の蒸発が支配的である。つまり、低温では、気液界面以外で反応液の蒸気が発生し難い。したがって、蒸発・凝縮器16の無駄な伝熱面積を削減できる。このため、蒸発・凝縮器16を小型化することができる。
【0054】
ここで、蒸発・凝縮器16と水タンク18とが一体化している場合には、蒸発・凝縮器16内の反応液の量によって蒸発時の伝熱面積や、凝縮時の伝熱面積が変動する。このため、蒸発時や凝縮時に、蒸発・凝縮器16で熱交換される熱量が変動する。したがって、蒸発・凝縮器16で安定した蒸発、或いは凝縮を実施することができない。
【0055】
これに対して、本実施形態によれば、蒸発・凝縮器16およびタンク18が別々に設けられている。したがって、蒸発・凝縮器16の蒸発を実施する前に、蒸発・凝縮器16内の反応液の液面高さHeを目標値に設定すれば、蒸発時の蒸発・凝縮器16内の反応液の量の変動を抑えることができる。これにより、蒸発・凝縮器16において蒸発時の伝熱面積の変動を抑えることができる。したがって、蒸発時に蒸発・凝縮器16で熱交換される熱量の変動を抑えることができる。よって、蒸発・凝縮器16で安定して蒸発を実施することができる。
【0056】
さらに、本実施形態によれば、凝縮時に、蒸発・凝縮器16で生じた反応液をタンク18に移動させることができる。このため、蒸発・凝縮器16において、凝縮時の伝熱面積は、熱交換器13の表面積によって決まる。これにより、蒸発・凝縮器16において、凝縮時の伝熱面積の変動を抑えることができる。したがって、凝縮時に蒸発・凝縮器16で熱交換される熱量の変動を抑えることができる。よって、蒸発・凝縮器16で安定して凝縮を実施することができる。
【0057】
本実施形態では、蒸発器および凝縮器を1つの容器としての蒸発・凝縮器16で実現している。このため、例えば、
図17に示すように、蒸発器16bおよび凝縮器16aを独立して設ける場合に比べて、化学蓄熱システム10の構成を簡素化することができる。
【0058】
本実施形態において、起動時にて、蒸発・凝縮器16が吸熱する熱量が定常値に到達するのに必要な時間をTaする。上記特許文献1の化学蓄熱システムにおいて、起動時にて、蒸発・凝縮器16が吸熱する熱量が定常値に到達するのに必要な時間をTbとする。本発明者によれば、上述の如く、蒸発・凝縮器16で反応液を蒸発させる際の反応液の顕熱量を低減することができるので、本実施形態の時間Taは、(時間Tb×0.3)になる。
【0059】
さらに、本実施形態において蒸発・凝縮器16および水タンク18を併せた体格をHaとし、上記特許文献1の化学蓄熱システムにおける蒸発・凝縮器16の体格をHbとする。本発明者によれば、本実施形態において体格Haは、(体格Hb×0.6)になる。
【0060】
(第1実施形態の第1変形例)
上記第1実施形態では、蒸発・凝縮器16の下側に水タンク18を配置した例について説明したが、これに代えて、
図3に示すように、蒸発・凝縮器16の底部と水タンク18の底部とを同一高さを配置して、反応液配管19を、蒸発・凝縮器16の底部側と水タンク18の底部側との間に接続してもよい。
【0061】
この場合、圧力センサ22は、蒸発・凝縮器16内の上側圧力として蒸気圧を検出する。圧力センサ24は、水タンク18内の下側圧力として反応液の圧力を検出する。電子制御装置32は、上記第1実施形態と同様に、圧力センサ22、24の検出値に基づいて蒸発・凝縮器16内の反応液の液面高さHe(水位)を算出する。なお、
図3においては、蒸発・凝縮器16の底部と水タンク18の底部とが同一高さに配置されているので、数式1中のHをゼロとする。
【0062】
例えば、液面高さHeが目標値よりも大きいときには、電子制御装置32は、バルブ28を開弁して反応液配管19を開けるとともに、供給ポンプ20を作動させて、蒸発・凝縮器16内から水タンク18内に反応液を移動させる。このことにより、蒸発・凝縮器16内の反応液の液面高さHeを低くすることができる。
【0063】
一方、液面高さHeが目標値よりも小さいときには、バルブ28を開弁して反応液配管19を開ける。これに伴い、水タンク18内の反応液が重力により反応液配管19を通して蒸発・凝縮器16内に移動する。このことにより、蒸発・凝縮器16内の反応液の液面高さHeを高くすることができる。
【0064】
以上により、蒸発・凝縮器16内の反応液の液面高さHeが目標値に近づけることができる。
【0065】
(第1実施形態の第2変形例)
上記第1実施形態では、蒸発・凝縮器16の下側に水タンク18を配置した例について説明したが、これに代えて、
図4に示すように、水タンク18の底部を、蒸発・凝縮器16の底部よりも高い位置に配置して、反応液配管19を、蒸発・凝縮器16の底部側と水タンク18の底部側との間に接続してもよい。
【0066】
この場合、圧力センサ22は、蒸発・凝縮器16内の上側圧力として蒸気圧を検出する。圧力センサ24は、蒸発・凝縮器16の下側圧力として反応液の圧力を検出する。電子制御装置32は、圧力センサ24の検出圧力を(ρ・g・He+Pe)とし、圧力センサ22の検出圧力をPeとして、蒸発・凝縮器16内の反応液の液面高さHe(水位)を算出する。
【0067】
例えば、液面高さHeが目標値よりも大きいときには、電子制御装置32は、バルブ28を開弁して反応液配管19を開けるとともに、供給ポンプ20を作動させて、蒸発・凝縮器16内から水タンク18内に反応液を移動させる。このことにより、蒸発・凝縮器16内の反応液の液面高さHeを低くすることができる。
【0068】
一方、液面高さHeが目標値よりも小さいときには、バルブ28を開弁して反応液配管19を開ける。水タンク18内の反応液は、重力により、反応液配管19を通して蒸発・凝縮器16内に移動する。このことにより、蒸発・凝縮器16内の反応液の液面高さHeを高くすることができる。
【0069】
以上により、蒸発・凝縮器16内の反応液の液面高さHeが目標値に近づけることができる。
【0070】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、供給ポンプ20によって水タンク18から反応液を蒸発・凝縮器16に供給する例について説明したが、これに代えて、本第2実施形態では、水タンク18内の圧力および蒸発・凝縮器16の圧力の圧力差によって、水タンク18から反応液を蒸発・凝縮器16に供給する例について
図5を参照して説明する。
【0071】
図5は、本実施形態の化学蓄熱システム10の構成を示す。
【0072】
本実施形態の化学蓄熱システム10では、化学蓄熱材14が水和反応を生じた際に発生する熱を水タンク18に与えることにより、水タンク18内の圧力を上昇させる。このことにより、水タンク18内の圧力が蒸発・凝縮器16の圧力に比べて高くなる。これに伴い、水タンク18内および蒸発・凝縮器16の間の圧力差によって、水タンク18から反応液を蒸発・凝縮器16に供給することになる。
【0073】
具体的には、化学蓄熱システム10では、化学蓄熱材14が水和反応を生じる際に送風機40によって反応器12の熱交換器13に内気を流通させる。本実施形態の送風機40としては、熱交換器13の出口から吹き出される温風を吸い込んで車室内や水タンク18側に吹き出すものである。このため、熱交換器13内を流通する内気は、化学蓄熱材14の水和反応により生じる熱により加熱されて、温風として熱交換器13から吹き出される。これにより、熱交換器13からの温風を車室内や水タンク18側に送風させることができる。化学蓄熱システム10は、水和反応に伴って熱交換器17から吹き出される温風を水タンク18側および車室側に流通させる空調ダクト41が設けられている。
【0074】
空調ダクト41には、熱交換器13から吹き出される温風を水タンク18側と車室側とに分流させる分流通路42、43が設けられている。分流通路42、43の分岐点付近には、分流通路42の空気入口および分流通路43の空気入口のうち少なくとも一方を開閉するドア44が設けられている。
【0075】
例えば、化学蓄熱材14が水和反応を生じる際に、ドア44によって、分流通路42の空気入口を開けて、かつ分流通路43の空気入口を閉じる。これにより、
熱交換器17から送風機40を通過した温風を矢印a、b、cの如く、水タンク18側に吹き出すことができる。したがって、化学蓄熱材14が水和反応を生じた際に発生する熱を水タンク18に与えることができる。このことにより、水タンク18内の圧力が蒸発・凝縮器16の圧力に比べて高くなる。その後、電子制御装置32がバルブ28を開弁する。これにより、水タンク18および蒸発・凝縮器16の間が反応液配管19を通して連通される。これに伴い、水タンク18内および蒸発・凝縮器16の間の圧力差によって、水タンク18から反応液が蒸発・凝縮器16に移動することになる。
【0076】
そこで、電子制御装置32は、液面高さHeが目標値よりも小さいときには、上述の如く、水タンク18内の圧力を高くして、バルブ28を開弁する。すると、水タンク18内および蒸発・凝縮器16の間の圧力差によって、水タンク18内の反応液を反応液配管19を通して蒸発・凝縮器16内に送り出すことができる。このことにより、蒸発・凝縮器16内の反応液の液面高さHeを調整することができる。
【0077】
一方、液面高さHeが目標値よりも大きい場合において、化学蓄熱材14が水和反応を生じる際に、ドア44によって、分流通路42の空気入口を閉じて、かつ分流通路43の空気入口を開ける。これにより、熱交換器17から送風機40を通過した温風を矢印a、b、dの如く、車室内側に吹き出すことができる。したがって、化学蓄熱材14が水和反応を生じた際に発生する熱を車室内に与えることができる。このことにより、水タンク18内の圧力を蒸発・凝縮器16の圧力以下に維持することができる。もしくは、バルブ26を閉め、蒸発器内の圧力を高めることで、重力で蒸発・凝縮器16内の反応液を反応液配管19を通して水タンク18内に送り出すことができる。
【0078】
このとき、電子制御装置32は、上記第1実施形態と同様、バルブ28を開弁して反応液配管19を開ける。このとき、蒸発・凝縮器16内から水タンク18内に反応液が重力により流れる。このことにより、蒸発・凝縮器16内の反応液の液面高さHeを調整することができる。
【0079】
以上により、蒸発・凝縮器16内の反応液の液面高さHeが目標値に近づけることができる。
【0080】
なお、上記第2実施形態では、化学蓄熱材14が水和反応を生じた熱により水タンク18内の圧力を上昇させる例について説明したが、これに代えて、化学蓄熱材14以外の他の熱源により水タンク18内の圧力を上昇させるようにしてもよい。例えば、水タンク18が配置される環境の温度を利用して、水タンク18内の圧力を上昇させるようにしてもよい。
【0081】
さらに、上記第2実施形態では、送風機40を熱交換器13に対して空気流れ下流側に配置した例について説明したが、これに代えて、送風機40を熱交換器13に対して空気流れ上流側に配置してもよい。
【0082】
なお、上記第2実施形態では、熱交換器13、送風機40、空調ダクト41、およびドア44が移動手段および圧力上昇手段を構成している。
【0083】
(第3実施形態)
上記第2実施形態では、水タンク18内の圧力を上げて、水タンク18内および蒸発・凝縮器16間の圧力差を発生させる例について説明したが、これに代えて、本第3実施形態では、蒸発・凝縮器16内の圧力を下げて、水タンク18内および蒸発・凝縮器16間の圧力差を発生させる例について説明する。
【0084】
図6に本実施形態の化学蓄熱システム10の全体構成を示す。本実施形態の化学蓄熱システム10では、供給ポンプ20、空調ダクト41、およびドア44が設けられていない。
【0085】
以下、本実施形態の化学蓄熱システム10の作動について説明する。
【0086】
まず、電子制御装置32は、バルブ28を閉弁して反応液配管19を閉じるとともに、バルブ26を開弁して、蒸気配管34を開ける。
【0087】
その後、蒸発・凝縮器16内に反応液が有る状態で、送風機40により熱交換器17に内気を流通させる。これにより、蒸発・凝縮器16内の反応液は、熱交換器17内の内気によって加熱されて蒸気が発生する。このため、蒸発・凝縮器16からバルブ26および蒸気配管34を通して反応器12に向けて蒸気が移動する。
【0088】
一方、反応器12では、化学蓄熱材14が蒸気によって水和反応を生じて熱を発生する。このとき、電子制御装置32は、送風機によって熱交換器13に外気を流通させる。このため、熱交換器13内の外気は、加熱されて、この加熱された外気は、車室外に放出される。
【0089】
その後、電子制御装置32は送風機40による送風を停止する。このため、熱交換器17内の内気による反応液の加熱が停止される。このことにより、反応液の温度上昇が抑制される。これに伴い、蒸発・凝縮器16内の圧力が減圧して、蒸発・凝縮器16内の圧力が水タンク18内の圧力に比べて低くなる。その後、電子制御装置32がバルブ28を開弁する。これに伴い、水タンク18および蒸発・凝縮器16の間の圧力差によって、水タンク18から反応液が反応液配管19およびバルブ28を通して蒸発・凝縮器16に移動することになる。
【0090】
そこで、電子制御装置32は、液面高さHeが目標値よりも小さいときには、上述の如く、蒸発・凝縮器16内の圧力を水タンク18内の圧力に比べて低くして、バルブ28を開弁する。すると、水タンク18内および蒸発・凝縮器16の間の圧力差によって、水タンク18内の反応液を反応液配管19を通して蒸発・凝縮器16内に送り出すことができる。このことにより、蒸発・凝縮器16内の反応液の液面高さHeを調整することができる。
【0091】
一方、液面高さHeが目標値よりも大きい場合において、次のように、蒸発・凝縮器16内の圧力を上昇させる。すなわち、電子制御装置32は、バルブ26aを閉弁して蒸気配管34を閉じるとともに、送風機40により熱交換器17に内気を流通させて蒸発・凝縮器16の内部を加熱する。このことにより、蒸発・凝縮器16内の圧力が水タンク18内の圧力よりも高くなる。
【0092】
その後、電子制御装置32は、バルブ28を開弁して反応液配管19を開ける。このため、蒸発・凝縮器16および水タンク18内の間の圧力差、および重力により、蒸発・凝縮器16内からバルブ28および反応液配管19を通して水タンク18内に反応液が流れる。このため、蒸発・凝縮器16内の反応液の液面高さHeを調整することができる。
【0093】
以上により、蒸発・凝縮器16内の反応液の液面高さHeが目標値に近づけることができる。
【0094】
上記第3実施形態では、蒸発・凝縮器16および水タンク18内の間の圧力差、および重力によって、蒸発・凝縮器16内から水タンク18内に反応液を移動させる例について説明したが、これに代えて、重力により、蒸発・凝縮器16内から水タンク18内に反応液を移動させるようにしてもよい。この場合、熱交換器17によって蒸発・凝縮器16内を加熱することを止める。
【0095】
上記第3実施形態では、熱交換器17を介する反応液および内気の間の熱交換を停止することにより、蒸発・凝縮器16内の圧力を減圧した例について説明したが、これに代えて、以下の(1)、(2)のようにしてもよい。
【0096】
(1)蒸発・凝縮器16内を冷却して蒸発・凝縮器16内の圧力を下げるようにしてもよい。例えば、蒸発・凝縮器16の熱交換器17に冷風(例えば、外気)を流通させるようにしてもよい。
【0097】
(2)反応器12内の余分な化学蓄熱材14を充填して、水和反応を生じる化学蓄熱材14を増やす。このことにより、反応器12内の圧力、ひいては蒸発・凝縮器16内の圧力を下げることができる。
【0098】
ここで、反応器12内の圧力損失、蒸気配管34内の圧力損失、および蒸発・凝縮器16内の圧力損失を下げるようにすることが好ましい。
【0099】
(第4実施形態)
本第4実施形態では、上記第1実施形態の化学蓄熱システム10において、反応液配管19内に気泡を発生させて水タンク18から蒸発・凝縮器16に反応液を供給するようにした例について説明する。
【0100】
図7に本実施形態の化学蓄熱システム10において、水タンク18、反応液配管19、および蒸発・凝縮器16の配置関係を示す。本実施形態の水タンク18は、円筒状に形成されている。反応液配管19の一端側は、水タンク18の底部のうち最も低い部位側に接続されている。反応液配管19の他端側は、蒸発・凝縮器16の底部側に接続されている。反応液配管19は、L字状に形成されている。反応液配管19には、反応液配管19内の反応液を加熱するためのヒータ50が加熱手段として配置されている。具体的には、ヒータ50は、反応液配管19のうち水平方向に延びる水平部に配置されている。本実施形態では、ヒータ50として、電子制御装置32により制御される電気ヒータが用いられる。
【0101】
このように構成される本実施形態では、電子制御装置32がバルブ28を開弁し、かつヒータ50により反応液の加熱を開始する。これにより、反応液配管19内には、反応液が蒸発して気泡が発生するとともに、気泡が成長する。この気泡は、反応液配管19内の上側に移動する。このような気泡の移動、および気泡の成長により、反応液配管19内には、水タンク18から蒸発・凝縮器16に反応液が流れる。このため、水タンク18から蒸発・凝縮器16に反応液を供給することができる。
【0102】
上記第4実施形態では、反応液配管19としてL字状に形成されたものを用いた例について説明したが、これに代えて、次の(3)、(4)のようにしてもよい。
(3)
図8に示すように、反応液配管19として上下方向に延びる配管を反応液配管19として採用する。
(4)
図9、
図10に示すように、直方体に形成される直方体部18aと直方体部18aに下側に配置されて四角錐状に形成される四角錐18bとからなるものを水タンク18として採用する。これにより、水タンク18が傾いても水タンク18から蒸発・凝縮器16に反応液を供給できる。
図9では、反応液配管19として上下方向に延びる配管を反応液配管19として採用する。
図10では、反応液配管19としてL字状に形成されたものを用いる。
図10中のヒータ50は、反応液配管19のうち水平方向に延びる水平部に配置されている。
【0103】
(第5実施形態)
上記第2、第3の実施形態では、蒸発・凝縮器16の下側に水タンク18を配置した例について説明したが、これに代えて、本第4実施形態では、蒸発・凝縮器16の底部を水タンク18の底部を同一高さの位置に配置する例について説明する。
【0104】
図11に本実施形態の化学蓄熱システム10の全体構成を示す。本実施形態では、蒸発・凝縮器16で反応水を蒸発させる前に、水タンク18から蒸発・凝縮器16内に反応水を供給する際には、電子制御装置32がバルブ28を開弁すると、重力により反応液が水タンク18から反応液配管19を通して蒸発・凝縮器16に流れる。
【0105】
一方、反応器12内で化学蓄熱材14が脱水反応を生じる際に、電子制御装置32は、蒸発・凝縮器16内の熱交換器17による蒸気および内気の間の熱交換を停止する(移動手段、圧力上昇手段)。具体的には、熱交換器17に外気を流通させる送風機40の作動を停止する。このため、反応器12内の化学蓄熱材14の脱水反応で生じた蒸気は、蒸気配管34およびバルブ26を通して蒸発・凝縮器16内に移動する。これに伴い、蒸発・凝縮器16内の圧力が上昇して、蒸発・凝縮器16内の圧力が水タンク18内の圧力よりも高くなる。その後、電子制御装置32は、バルブ28を開弁して反応液配管19を開ける。このため、蒸気は、蒸発・凝縮器16内からバルブ28および反応液配管19を通して水タンク18に移動する。このとき、蒸気は、水タンク18内で凝縮して反応液としての水になる。
【0106】
以上のように蒸発・凝縮器16および水タンク18の間で反応液、或いは蒸気を移動させることができる。このため、蒸発・凝縮器16内の反応液の液面高さHeを調整することができる。
【0107】
なお、上記第5実施形態では、蒸発・凝縮器16内の熱交換器17による蒸気および内気の間の熱交換を停止して、蒸発・凝縮器16内の圧力を上げるようにした例について説明したが、これに代えて、蒸発・凝縮器16内の圧力を上げるために、(5)、(6)、(7)、(8)のようにしてもよい。
(5)蒸発・凝縮器16内の熱交換器17による蒸気および外気の間の熱交換を抑制して、蒸発・凝縮器16内の圧力を上げるようにしてもよい。この場合、熱交換器17に外気を流通させる送風機40の送風量を少なくする。
(6)反応器12内の圧力を高くすることにより、蒸発・凝縮器16内の圧力を上げるようにする。例えば、反応器12内で脱水反応を生じさせる化学蓄熱材14を増量する。
(7)外部から蒸発・凝縮器16内に熱を加えて蒸発・凝縮器16内の圧力を上げるようにする。
【0108】
例えば、バルブ26を閉弁して蒸気配管34を閉じるとともに、送風機40により熱交換器17に内気を流通させて蒸発・凝縮器16の内部を加熱する。このことにより、蒸発・凝縮器16内の圧力を水タンク18内の圧力よりも高くする。その後、バルブ28を開弁して反応液配管19を開ける。このため、蒸発・凝縮器16および水タンク18内の間の圧力差により、蒸発・凝縮器16内からバルブ28および反応液配管19を通して水タンク18内に反応液を移動させることができる。
【0109】
なお、上記第5実施形態では、重力により反応液を水タンク18から蒸発・凝縮器16に移動させる例について説明したが、これに代えて、水タンク18および蒸発・凝縮器16の間の圧力差および重力によって、反応液を水タンク18から蒸発・凝縮器16に移動させるようにしてもよい。この場合、上記第2、第3実施形態と同様に、水タンク18および蒸発・凝縮器16の間で圧力差を生じさせて、反応液を水タンク18から蒸発・凝縮器16に移動させることができる。
【0110】
(第6実施形態)
上記第5の実施形態では、蒸発・凝縮器16の底部水タンク18の底部を同一高さの位置に配置する例について説明したが、これに代えて、
図12に示すように、蒸発・凝縮器16の底部よりも水タンク18の底部を高い位置に配置してもよい。
【0111】
本実施形態では、上記第5の実施形態と同様、液面高さHeが目標値よりも小さい場合には、バルブ28を開弁する。すると、重力によって、水タンク18内の反応液を反応液配管19を通して蒸発・凝縮器16内に移動させることができる。一方、液面高さHeが目標値よりも大きい場合において、蒸発・凝縮器16内の圧力を水タンク18内の圧力よりも高くして、バルブ28を開弁して反応液配管19を開ける。このため、蒸発・凝縮器16および水タンク18内の間の圧力差により、蒸発・凝縮器16内からバルブ28および反応液配管19を通して水タンク18内に反応液が流れる。
【0112】
以上により、蒸発・凝縮器16内の反応液の液面高さHeを目標値に近づけることができる。
【0113】
(第6実施形態の第1変形例)
本第1変形例では、
図13に示すように、蒸発・凝縮器16および水タンク18の間において、反応液配管19に対して並列に反応液配管19aが配置されている。反応液配管19aには、逆止弁60が配置されている。反応液配管19、19aは、蒸発・凝縮器16の底部側と水タンク18の底部側との間に接続されている。反応液配管19aには、逆止弁60が配置されている。逆止弁60は、蒸発・凝縮器16側から水タンク18側への反応液の移動を許容し、水タンク18側から蒸発・凝縮器16側への反応液の移動を防止する。この場合、バルブ28を閉じた状態で、蒸発・凝縮器16側から逆止弁60を通して水タンク18側への反応液を移動させることになる。
【0114】
なお、上記第6実施形態の第1変形例では、バルブ28を閉じた状態で、蒸発・凝縮器16側から逆止弁60を通して水タンク18側への反応液を移動させる例について説明したが、これに代えて、バルブ28を開けた状態で、蒸発・凝縮器16側からバルブ28および逆止弁60を通して水タンク18側への反応液を移動させてもよい。
【0115】
(他の実施形態)
上記第3実施形態では、蒸発・凝縮器16内の反応液の液面高さHeを算出するために、蒸発・凝縮器16内の上側圧力(すなわち、蒸気圧)を圧力センサ22で検出し、水タンク18内の下側圧力(すなわち、反応液の圧力)を圧力センサ24で検出した例について説明したが、これに代えて、(8)〜(10)のようにしてもよい。
(8)
図14に示すように、蒸発・凝縮器16内の下側圧力として反応液の圧力を圧力センサ22で検出し、水タンク18内の上側圧力として蒸気圧を圧力センサ24で検出する。
【0116】
この場合、Hを既知の値とし、圧力センサ22の検出圧力を(ρ・g・(He)+Pe)とし、圧力センサ24の検出圧力をPtとして、数式1に代入して、水タンク18内の反応液の液面高さHeを求める。
(9)
図15に示すように、蒸発・凝縮器16内の下側圧力として反応液の圧力を圧力センサ22で検出し、水タンク18内の下側圧力として反応液の圧力を圧力センサ24で検出する。この場合、Hを既知の値とし、圧力センサ22の検出圧力をPeとし、圧力センサ24の検出圧力を(ρ・g・(Ht)+Pt)として、数式1に代入して、水タンク18内の反応液の液面高さHeを求める。
【0117】
このように、蒸発・凝縮器16内の蒸気圧、および蒸発・凝縮器16内の反応液の圧力のうちいずれか一方を圧力センサ22で検出する。水タンク18内の蒸気圧、および水タンク18内の反応液の圧力のうちいずれか一方を圧力センサ24で検出する。そして、圧力センサ22、24の検出圧力に基づいて蒸発・凝縮器16内の反応液の液面高さHeを算出することができる。
(10)
図16に示すように、蒸発・凝縮器16内の上側圧力として蒸気圧を圧力センサ22で検出し、蒸発・凝縮器16内の下側圧力として反応液の圧力を圧力センサ24で検出する。この場合、Hを既知の値とし、圧力センサ24の検出圧力を(ρ・g・(He)+Pe)とし、圧力センサ22の検出圧力をPeとすることにより、蒸発・凝縮器16内の反応液の液面高さHeを算出する。
【0118】
以上、(8)〜(10)のように、圧力センサ22、24の検出対象を設定しても、圧力センサ22、24の検出圧力に基づいて蒸発・凝縮器16内の反応液の液面高さHeを算出することができる。
【0119】
さらに、上記第1実施形態では、蒸発・凝縮器16内の反応液の液面高さHeを算出するために、蒸発・凝縮器16内の上側圧力として蒸気圧を圧力センサ22によって検出し、水タンク18内の下側圧力として反応液の圧力を圧力センサ24によって検出したが、これに限らず、上記(8)〜(10)と同様に、圧力センサ22、24の検出対象を適宜設定してもよい。
【0120】
すなわち、蒸発・凝縮器16内の蒸気圧、および蒸発・凝縮器16内の反応液の圧力のうちいずれか一方を圧力センサ22で検出する。水タンク18内の蒸気圧、および水タンク18内の反応液の圧力のうちいずれか一方を圧力センサ24で検出する。或いは、蒸発・凝縮器16内の上側圧力として蒸気圧を圧力センサ22で検出し、蒸発・凝縮器16内の下側圧力として反応液の圧力を圧力センサ24で検出する。
【0121】
上記第1実施形態の第1変形例では、
図3に示すように、蒸発・凝縮器16内の上側圧力として蒸気圧を圧力センサ22によって検出し、水タンク18内の下側圧力として反応液の圧力を圧力センサ24によって検出したが、これに限らず、上記(8)〜(10)と同様に、圧力センサ22、24の検出対象を適宜設定してもよい。
【0122】
上記第6実施形態の第1変形例では、蒸発・凝縮器16および水タンク18の間において、反応液配管19aおよび逆止弁60を配置した例について説明したが、これに代えて、上記第1実施形態の蒸発・凝縮器16および水タンク18の間において、反応液配管19aおよび逆止弁60を配置してもよい。
【0123】
さらに、上記第2、3、4、5、6の実施形態のうちいずれか1つの実施形態において、蒸発・凝縮器16および水タンク18の間に反応液配管19aおよび逆止弁60を配置してもよい。
【0124】
また、上記第1実施形態の第1、第2変形例において、蒸発・凝縮器16および水タンク18の間に反応液配管19aおよび逆止弁60を配置してもよい。
【0125】
上記第1〜第6の実施形態では、化学蓄熱材として、(CaO/Ca(OH)
2)を用いた例について説明したが、これに限らず、化学蓄熱材として、(CaO/Ca(OH)
2)以外の金属酸化物、金属塩化物、或いは吸着材を、化学蓄熱材として用いてもよい。
【0126】
上記第1〜第6の実施形態では、反応器12内の化学蓄熱材14を脱水反応させる際に、熱交換器13に内気を流通させて熱交換器13内の内気によって反応器12内の化学蓄熱材14を加熱した例について説明したが、これに代えて、次の(11)、(12)、(13)のようにしてもよい。
【0127】
(11)電気ヒータ等のヒータを用いて反応器12内の化学蓄熱材14を加熱する。
【0128】
(12)熱交換器13の熱交換によって化学蓄熱材14を加熱し、かつ電気ヒータ等のヒータを用いて反応器12内の化学蓄熱材14を加熱する。
【0129】
(13)内気以外の流体(例えば、走行用エンジンの排気ガス、外気)を熱交換器13に流通させてこの流通した流体によって化学蓄熱材14を加熱する。
【0130】
上記第1〜第6の実施形態、および各変形例では、本発明の化学蓄熱システム10を車両用空調装置に適用した例について説明したが、これに代えて、車両用空調装置以外の他の機器に本発明の化学蓄熱システム10を適用してもよい。
【0131】
上記第1〜第6の実施形態、および各変形例において、夏期と冬季とで、化学蓄熱システム10の作動を切り替えてもよい。
【0132】
まず、夏期では、熱交換器17に内気を流通させることにより、蒸発・凝縮器16内の反応液を加熱して蒸気を発生させる。このとき、熱交換器17を通過した内気が冷風として車室内に吹き出されため、車室内が冷房される。一方、蒸発・凝縮器16で生じた蒸気は、反応器12に流通される。そして、反応器12内の化学蓄熱材14が蒸気によって水和反応を生じる。
【0133】
冬季では、送風機によって反応器12の熱交換器13に内気もしくは外気を流通させる。したがって、化学蓄熱材14は、熱交換器13内の内気もしくは外気を加熱する。このため、化学蓄熱材14は、脱水反応を生じて蒸気を発生させる。そして、この蒸気は、蒸発・凝縮器16に流通させる。
【0134】
このとき、送風機によって蒸発・凝縮器16内の熱交換器17には内気(或いは、外気)を流通させると、蒸発・凝縮器16内の蒸気は、熱交換器17内の内気(或いは、外気)に放熱して凝縮する。このため、内気(或いは、外気)は、加熱されて温風として車室内に吹き出されるため、車室内が暖房される。もしくは外気(すなわち、車室外)に排気しても良い。
【0135】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。