(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の油圧ショベルでは、クイックリターン油路のクイックリターンバルブの下流側の部分を通じて再生油路がタンクに直接接続されているため、再生油路内におけるチェック弁の一次側の圧力が低い。
【0008】
したがって、アームシリンダのロッド側室内の圧力がこのように低い再生油路内の圧力を下回らなければクイックリターン油路からロッド側室へ作動油が供給されず、アームシリンダのキャビテーションを有効に防止することができない。
【0009】
本発明の目的は、油圧シリンダの縮み動作時における作動油の圧損を低減しつつ油圧シリンダのキャビテーションをより有効に防止することができる建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、建設機械であって、
機体と、前記機体に起伏可能に取り付けられたブームと、押し動作及び引き動作可能となるように前記ブームの先端部に回転可能に取り付けられたアームと、アームの先端部に回転可能に取り付けられたバケットと、作動油を吐出可能な油圧ポンプと、前記油圧ポンプからの作動油により伸縮可能な油圧シリンダ
であって、当該油圧シリンダの縮み動作により前記アームの押し動作が行われ、かつ、前記油圧シリンダの伸び動作により前記アームの引き動作が行われるように前記ブームと前記アームとの間に設けられた油圧シリンダと、前記油圧シリンダから導出された作動油が導かれるタンクと、前記油圧ポンプから前記油圧シリンダへの作動油の供給及び前記油圧シリンダから前記タンクへの作動油の導出を調整することにより前記油圧シリンダの動作を制御する制御弁と、前記油圧シリンダの伸び動作時に前記油圧シリンダから導出される作動油が前記タンクに導かれるように前記制御弁と前記タンクとを接続する主リターン油路に設けられた背圧弁と、前記油圧シリンダの縮み動作時に前記油圧シリンダのボトム側室から導出される作動油を、前記背圧弁を迂回して前記タンクに案内可能なクイックリターン油路と、前記クイックリターン油路と前記油圧シリンダのロッド側室とを接続する再生油路と、前記再生油路に設けられ、前記クイックリターン油路から前記油圧シリンダのロッド側室に向けた作動油の流れを許容する一方、その逆向きの流れを規制するチェック弁と、前記クイックリターン油路の前記再生油路の接続点よりも前記タンク側の位置に設けられているとともに、前記接続点における作動油の圧力を上昇可能な圧力上昇手段と
、前記油圧シリンダの縮み速度を検出するための検出手段と、を備え、
前記圧力上昇手段は、開口面積を調整可能な電磁式の開口調整弁と、前記油圧シリンダのキャビテーションが発生する可能性が高い条件として予め設定されたキャビテーション発生条件が成立した場合に、前記キャビテーション発生条件が不成立の場合の開口面積よりも小さな開口面積に調整するための指令を前記開口調整弁に出力するコントローラとをさらに備え、前記キャビテーション発生条件は、前記検出手段により検出された前記油圧シリンダの縮み速度が予め設定された基準速度以上である条件に設定されている、建設機械を提供する。
【0011】
本発明によれば、クイックリターン油路によって油圧シリンダからの戻り油を、背圧弁を迂回してタンクに案内可能であるため、油圧シリンダの縮み動作時に背圧弁における戻り油の圧損を回避することができる。
【0012】
また、圧力上昇手段によってクイックリターン油路の再生油路との接続点における作動油の圧力を上昇可能であるため、圧力上昇手段を有しない従来の場合と比較してチェック弁の一次側の圧力を上げることができる。これにより、油圧シリンダのロッド側室内の圧力が比較的に高い状況で積極的にクイックリターン油路内の作動油をロッド側室に導くことができる。
【0013】
したがって、本発明によれば、油圧シリンダの縮み動作時における作動油の圧損を防止しつつ油圧シリンダのキャビテーションをより有効に防止することができる。
具体的に、前記建設機械は、機体と、前記機体に起伏可能に取り付けられたブームと、押し動作及び引き動作可能となるように前記ブームの先端部に回転可能に取り付けられたアームと、アームの先端部に回転可能に取り付けられたバケットとをさらに備え、前記油圧シリンダは、当該油圧シリンダの縮み動作により前記アームの押し動作が行われ、かつ、前記油圧シリンダの伸び動作により前記アームの引き動作が行われるように前記ブームと前記アームとの間に設けられている。
そのため、ブームに対してアームが引き寄せられた状態からアームが押し動作される場合のように、アームの自重が作用した状態でアームの押し動作(油圧シリンダが縮み動作)が行われる場合に、アームの押し動作の速度増加に伴う油圧シリンダのキャビテーションを有効に防止することができる。
このようなアーム押し動作は、バケットによる掘削時の準備動作として高い頻度で行われるため、この準備動作中にキャビテーションを有効に防止できることにより掘削作業の操作性を格段に向上することができる。
【0014】
本発明における前記圧力上昇手段は、開口面積を調整可能な開口調整弁
である。
【0015】
これにより、キャビテーションが発生する可能性が高い場面とキャビテーションが発生する可能性が低い場面とで開口面積を変更することができる。そのため、キャビテーションが発生する可能性が低い場面において圧損を低減するというクイックリターン油路の本来の機能を維持しながら、キャビテーションが発生する可能性が高い場面においてキャビテーションの発生を有効に防止することができる。
【0016】
具体的に、前記開口調整弁は、電磁弁であり、前記圧力上昇手段は、前記油圧シリンダのキャビテーションが発生する可能性が高い条件として予め設定されたキャビテーション発生条件が成立した場合に、前記キャビテーション発生条件が不成立の場合の開口面積よりも小さな開口面積に調整するための指令を前記開口調整弁に出力するコントローラをさらに備えてい
る。
【0017】
これにより、キャビテーション発生条件が成立した場合に、開口調整弁の開口面積が小さく調整されることによりチェック弁の一次側の圧力を上げて、キャビテーションの発生を有効に防止することができる。一方、キャビテーション発生条件が不成立の場合にはキャビテーション発生条件が成立した場合と比較して大きな開口面積に調整されることにより、戻り油の圧損を低減するというクイックリターン油路の本来の機能を果たすことができる。
【0018】
また、作動油の圧損防止とキャビテーションの発生防止との両立を図ることができる場合には、前記圧力上昇手段は、前記クイックリターン油路の断面積よりも小さな開口面積を有する固定絞りを有していてもよい。
【0019】
この態様によれば、開口面積を調整するための構成(上述した開口調整弁を作動するための構成)を省略することにより、建設機械の構成をさらに簡素化することができる。
【0020】
前記建設機械において、前記開口調整弁は、開口面積が最小に設定された位置と、開口面積が最大に設定された全開位置と、を有し、前記コントローラは、前記キャビテーション発生条件が成立した場合に前記開口面積が最小に設定された位置に前記開口調整弁を切り換えるための指令を出力する一方、前記キャビテーション発生条件が不成立の場合に前記全開位置に前記開口調整弁を切り換えるための指令を出力することが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、油圧シリンダの縮み動作時における作動油の圧損を防止しつつ油圧シリンダのキャビテーションをより有効に防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0024】
<第1実施形態(
図1〜
図3)>
図1を参照して、本発明の実施形態に係る建設機械の一例としての油圧ショベル1は、一対のクローラ2aを有する下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に設けられた上部旋回体3と、上部旋回体3に対して変位可能に取り付けられた作業機4とを備えている。下部走行体2及び上部旋回体3は、作業機4が取り付けられた機体に相当する。
【0025】
作業機4は、上部旋回体3に対して上げ下げ可能(起伏可能)に取り付けられたブーム5と、押し動作及び引き動作可能となるようにブーム5の先端部に対して回転可能に取り付けられたアーム6と、アーム6の先端部に回転可能に取り付けられたバケット7とを備えている。
【0026】
また、作業機4は、上部旋回体3に対してブーム5を上げ下げ駆動するブームシリンダ8と、ブーム5に対してアーム6を回転駆動するアームシリンダ(油圧シリンダの一例)9と、アーム6に対してバケット7を回転駆動するバケットシリンダ10とを備えている。アームシリンダ9は、当該アームシリンダ9の縮み動作によりアーム6の押し動作が行われ、かつ、アームシリンダ9の伸び動作によりアーム6の引き動作が行われるようにブーム5とアーム6との間に設けられている。
【0027】
図2に示すように、上部旋回体3は、下部走行体2に対して上部旋回体3を旋回駆動するための旋回モータ11と、この旋回モータ11及び前記シリンダ8〜10(
図2ではアームシリンダ9のみを示す)を含む油圧回路12と、油圧回路12を制御するコントローラ(圧力上昇手段)13とを備えている。
【0028】
油圧回路12は、作動油を吐出可能な油圧ポンプ14と、旋回モータ11の駆動を制御する旋回用制御弁15と、アームシリンダ9の駆動を制御するアーム用制御弁16と、旋回モータ11及びアームシリンダ9から導出された作動油が導かれるタンク17とを備えている。
【0029】
油圧ポンプ14は、タンデム油路R1を介して旋回用制御弁15及びアーム用制御弁16に設けられたセンターバイパス通路に接続されているとともに、リターン油路R4を介してタンク17に接続されている。リターン油路R4には、両制御弁15、16の二次側に背圧を立てるための背圧弁18が設けられている。
【0030】
旋回用制御弁15は、油圧ポンプ14に対し、パラレル油路R2を介してアーム用制御弁16と並列に接続されている。同様に、アーム用制御弁16は、油圧ポンプ14に対し、パラレル油路R3を介して旋回用制御弁15と並列に接続されている。したがって、油
圧ポンプ14から吐出された作動油は、パラレル油路R2、R3を介して両制御弁15、16に供給可能である。
【0031】
旋回用制御弁15は、旋回モータ11に対する作動油の給排を調整することにより当該旋回モータ11の旋回駆動を制御する。具体的に、旋回用制御弁15は、中立位置(図の中央位置)と、旋回モータ11を右方向に旋回駆動するための右旋回位置(図の右側位置)と、旋回モータ11を左方向に旋回駆動するための左旋回位置(図の左側位置)との間で切換可能である。なお、旋回用制御弁15は、通常中立位置に付勢され、パイロット圧が供給されることにより右旋回位置又は左旋回位置に切り換えられるパイロット式の切換弁である。
【0032】
また、旋回用制御弁15は、右側油路R5を介して旋回モータ11の右側ポートに接続されているとともに、左側油路R6を介して旋回モータ11の左側ポートに接続されている。右側油路R5及び左側油路R6は、連結油路R7を介して互いに連結され、この連結油路R7には2つの補給チェック弁19a、19bが設けられている。連結油路R7の補給チェック弁19a、19bの間の位置とリターン油路R4の背圧弁18の上流側の位置との間には、リターン油路R4内の作動油を油路R5、R6内に補給するための補給油路R8が設けられている。補給チェック弁19aは、補給油路R8から右側油路R5に向かう作動油の流れを許容し、補給用チェック弁19bは、補給油路R8から左側油路R6に向かう作動油の流れを許容する。したがって、旋回用制御弁15が中立位置に切り換えられた旋回制動時に、旋回モータ11の吸入側の油路(右側油路R5又は左側油路R6)に対し、補給油路R8を介してリターン油路R4から作動油を補給することができる。ここで、リターン油路R4には背圧弁18による背圧が発生しているため、旋回制動時に速やかに作動油を補給することが可能となる。なお、旋回用制御弁15とリターン油路R4との間には、右旋回位置又は左旋回位置に切り換えられた状態で戻り側の油路(右側油路R5又は左側油路R6)に接続されるリターン油路が設けられている。
【0033】
アーム用制御弁16は、油圧ポンプ14からアームシリンダ9への作動油の供給及びアームシリンダ9からタンク17への作動油の導出を調整することによりアームシリンダ9の動作を制御する。具体的に、アーム用制御弁16は、中立位置(図の中央位置)と、アームシリンダ9の縮み動作(アーム6による押し動作)を実行するための縮み位置(図の右側位置)と、アームシリンダ9の伸び動作(アーム6による引き動作)を実行するための伸び位置(図の左側位置)との間で切換可能である。なお、アーム用制御弁16は、通常中立位置に付勢され、パイロット圧が供給されることにより縮み位置又は伸び位置に切り換えられるパイロット式の切換弁である。アーム用制御弁16のパイロット回路には、アーム用制御弁16を縮み動作するためのパイロット圧を検出可能なパイロットセンサ16aが設けられている。パイロットセンサ16aによる検出信号は、後述するコントローラ13に出力される。
【0034】
また、アーム用制御弁16は、ボトム側油路R9を介してアームシリンダ9のボトム側室に接続されているとともに、ロッド側油路R10を介してアームシリンダ9のロッド側室に接続されている。ロッド側油路R10には、アームシリンダ9のロッド側室内の圧力(ロッド側油路R10の圧力)を検出するための圧力センサ20が設けられている。圧力センサ20による検出信号は、後述するコントローラ13に出力される。
【0035】
さらに、アーム用制御弁16には、当該アーム用制御弁16が伸び位置に切り換えられた状態で戻り側の油路(ロッド側油路R10)に接続されるリターン油路R11が接続されている。リターン油路R11は、リターン油路R4の背圧弁18の上流の位置に接続されている。リターン油路R4及びR11は、アームシリンダ9の伸び動作時にアームシリンダ9から導出される作動油がタンク17に導かれるようにアーム用制御弁16とタンク17とを接続する主リターン油路に相当する。
【0036】
また、アーム用制御弁16には、当該アーム用制御弁16が縮み位置に切り換えられた状態で戻り側の油路(ボトム側油路R9)に接続されるクイックリターン油路R12が接続されている。クイックリターン油路R12は、アームシリンダ9の縮み動作時にアームシリンダ9のボトム側室から導出される作動油を、背圧弁18迂回してタンク17に案内可能である。具体的に、クイックリターン油路R12は、リターン油路R4を介さずにタンク17に接続されている。
【0037】
クイックリターン油路R12及びアームシリンダ9のロッド側油路R10は、再生油路R13によって互いに接続されている。再生油路R13には、クイックリターン油路R12からロッド側油路R10に向けた作動油の流れを許容する一方、その逆向きの流れを規制するチェック弁22が設けられている。したがって、アームシリンダ9の縮み動作時であってアーム6の自重が作用する動作時に、クイックリターン油路R12からロッド側油路R10に対して作動油を補給することができ、これによりアームシリンダ9のキャビテーションを防止することができる。
【0038】
ここで、従来のように、クイックリターン油路R12を介して再生油路R13がタンク17に直接接続されている場合、チェック弁22の一次側の圧力が低い。そのため、ロッド側油路R10内の圧力がこのように低い再生油路R13内の圧力を下回らなければクイックリターン油路R12からロッド側油路R10へ作動油が供給されず、アームシリンダ9のキャビテーションを有効に防止することができない。
【0039】
そこで、クイックリターン油路R12の再生油路R13の接続点よりもタンク17側の位置には、前記接続点における作動油の圧力を上昇可能な開口調整弁(圧力上昇手段)21が設けられている。開口調整弁21は、開口面積を調整可能な電磁弁である。具体的に、開口調整弁21は、通常時に全開位置(図の左側位置)に付勢され、後述するコントローラ13からの指令電流により全開位置から絞り位置(図の右側位置)に切り換えられる。また、開口調整弁21は、コントローラ13からの指令電流が大きくなることに応じて開口面積が小さく調整される比例弁である。
【0040】
コントローラ13は、アームシリンダ9の縮み動作時においてキャビテーションの発生を防止するように開口調整弁21の動作を制御する。具体的に、コントローラ13は、アームシリンダ9のキャビテーションが発生する可能性が高い状況において、キャビテーションが発生する可能性が低い状況よりも開口面積が小さくなるように開口調整弁21を制御する。
【0041】
以下、
図2及び
図3を参照して、コントローラ13により実行される処理について説明する。
【0042】
まず、パイロットセンサ16aによる検出結果に基づいて、図外の操作レバーによるアーム押し操作が行われたか否か(アーム用制御弁16が縮み位置に切り換えられたか否か)が判定される(ステップS1)。アーム押し操作が行われていないと判定された場合、クイックリターン油路R12はアーム用制御弁16により閉鎖されるため(使用されないため)、開口調整弁21は絞り位置に切り換えられる(指令電流の最大値を出力する:ステップS3)。
【0043】
一方、ステップS1において、アーム押し操作が行われたと判定されると、アームシリンダ9においてキャビテーションが発生する可能性が高い条件として予め設定されたキャビテーション発生条件が成立しているか否かが判定される(ステップS2)。
【0044】
キャビテーション発生条件は、アームシリンダ9のロッド側油路R10内の圧力が予め設定された基準圧力以下である条件に設定されている。コントローラ13は、ステップS2において、圧力センサ20により検出されたロッド側油路R10内の圧力が前記基準圧力以下であるか否かを判定する。なお、キャビテーション発生条件は、ロッド側油路R10内の圧力に限定されず、例えば、アームシリンダ9の縮み速度が予め設定された基準速度以上である条件に設定することもできる。この場合、圧力センサ20に代えて、アームシリンダ9の縮み速度を検出するための手段(ストロークセンサ又はポテンショセンサ)が必要となる。
【0045】
そして、キャビテーション発生条件が成立していると判定された場合(ステップS2でYES)には、ステップS3において開口調整弁21が絞り位置に切り換えられる(ステップS3)。つまり、ステップS3では、開口面積が最小に設定され、これにより、クイックリターン油路R12内に背圧が発生する(チェック弁22の一次側の圧力が上がる)。その結果、作動油が不足する傾向にあるロッド側油路R10に対し、クイックリターン油路R12から作動油が導かれる。したがって、アームシリンダ9のキャビテーションを有効に防止することができる。
【0046】
一方、ステップS2においてキャビテーション発生条件が成立していないと判定されると、開口調整弁21が全開位置に切り換えられる(指令電流の最小値を出力する:ステップS4)。つまり、開口面積が最大に設定される。これにより、アームシリンダ9の縮み動作時に戻り油の圧損を低減するというクイックリターン油路R12の本来の機能を実現することができる。
【0047】
前記ステップS3及びS4の実行後、当該処理はステップS1にリターンする。
【0048】
以上説明したように、クイックリターン油路R12によってアームシリンダ9からの戻り油を、背圧弁18を迂回してタンク17に案内可能であるため、アームシリンダ9の縮み動作時に背圧弁18における戻り油の圧損を回避することができる。
【0049】
また、開口調整弁21によってクイックリターン油路R12の再生油路R13との接続点における作動油の圧力を上昇可能であるため、開口調整弁21を有しない従来の場合と比較してチェック弁22の一次側の圧力を上げることができる。これにより、アームシリンダ9のロッド側室内の圧力が比較的に高い状況で積極的にクイックリターン油路R12内の作動油をロッド側室に導くことができる。
【0050】
したがって、縮み動作時における作動油の圧損を防止しつつアームシリンダ9のキャビテーションをより有効に防止することができる。
【0051】
また、第1実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
【0052】
開口調整弁21が設けられているため、キャビテーションが発生する可能性が高い場面とキャビテーションが発生する可能性が低い場面とで開口面積を変更することができる。したがって、キャビテーションが発生する可能性が低い場面において圧損を低減するというクイックリターン油路の本来の機能を維持しながら、キャビテーションが発生する可能性が高い場面においてキャビテーションの発生を有効に防止することができる。
【0053】
具体的に、キャビテーション発生条件が成立した場合(ステップS2でYES)に、開口調整弁21の開口面積が小さく調整されることによりチェック弁22の一次側の圧力を上げて、キャビテーションの発生を有効に防止することができる。一方、キャビテーション発生条件が不成立の場合(ステップS2でNO)にはキャビテーション発生条件が成立した場合と比較して大きな開口面積に調整されることにより、戻り油の圧損を低減するというクイックリターン油路R12の本来の機能を果たすことができる。
【0054】
第1実施形態では、クイックリターン油路R12がブームシリンダ8に対して設けられている。そのため、ブーム5に対してアーム6が引き寄せられた状態からアーム6が押し動作される場合のように、アーム6の自重が作用した状態でアーム6の押し動作(油圧シリンダが縮み動作)が行われる場合に、アーム6の押し動作の速度増加に伴うアームシリンダ9のキャビテーションを有効に防止することができる。
【0055】
このようなアーム押し動作は、バケット7による掘削時の準備動作として高い頻度で行われるため、この準備動作中にキャビテーションを有効に防止できることにより掘削作業の操作性を格段に向上することができる。
【0056】
<第2実施形態(
図4及び
図5)>
第1実施形態では、キャビテーション発生条件が成立した場合(ステップS2でYESの場合)に、ステップS3において開口調整弁21を絞り位置に切り換えているが、ロッド側油路R10内の圧力に応じて開口調整弁21の開口面積を設定することもできる。
【0057】
具体的に、第2実施形態に係るコントローラ13は、
図4に示すように、ロッド側油路R10内の圧力が大きくなるほど小さな指令電流を出力する。これにより、
図5に示すように、指令電流が大きくなるほど、つまり、ロッド側油路R10内の圧力が小さくなるほど開口調整弁21の開口面積を小さくすることができる。
【0058】
したがって、第2実施形態においてもクイックリターン油路R12での圧損を可及的に低減しながらアームシリンダ9のキャビテーションの発生を有効に防止することができる。
【0059】
なお、
図4において指令電流I1よりも小さい指令電流I0、及び指令電流I2よりも大きい指令電流I3を出力しているのは、開口調整弁21の個体差を考慮しても、全開位置に切り換えられた状態及び絞り位置に切り換えられた状態を確実に担保するためである。
【0060】
つまり、上記『ロッド側油路R10内の圧力が大きくなるほど小さな指令電流を出力する』とは、
図4に示す場合も含み、逆に、開口調整弁21の個体差を無視できるのであれば、コントローラ13は、指令電流I1〜I2の指令電流を出力すればよい。
【0061】
<第3実施形態(
図6〜
図8)>
第1及び第2実施形態では、電磁式の開口調整弁21について説明したが、
図6に示すようにパイロット式の開口調整弁(圧力上昇手段)23を採用することもできる。
【0062】
第3実施形態に係る開口調整弁23は、通常時に絞り位置(図の左側位置)に付勢されているとともに、パイロット圧が供給されることにより全開位置(図の右側位置)に切換可能である。
【0063】
開口調整弁23のパイロットポート及びアームシリンダ9のロッド側油路R10は、パイロット油路R14によって互いに接続されている。これにより、ロッド側油路R10内の圧力をパイロット圧として利用して開口調整弁23を切り換えることができる。
【0064】
具体的に、
図4に示すように、ロッド側油路R10内の圧力が高くなるほど開口調整弁
23の絞り位置から全開位置に向けたストロークが大きくなる。そして、
図5に示すように、開口調整弁23のストロークが大きくなるほど開口調整弁23の開口面積は大きくなり、その結果、ロッド側油路R10内の圧力が低いほど開口調整弁23の開口面積が小さくなる。
【0065】
なお、
図8において、開口調整弁23のストロークがST1よりも小さい領域及びST2よりも大きい領域において開口面積が一定となる領域が設けられているのは、開口調整弁23の設計上の誤差を考慮しても、開口面積が最大の状態及び開口面積が最小の状態を確実に担保するためである。
【0066】
つまり、上記『ロッド側油路R10内の圧力が低いほど開口調整弁23の開口面積が小さくなる』とは、
図8に示す場合も含み、逆に、開口調整弁23の設計上の誤差を無視できるのであれば、開口調整弁23の開口面積は、ストロークが0からFULLまでの間で連続的に増加すればよい。
【0067】
第3実施形態によれば、アームシリンダ9のロッド側室の圧力が低いほど、つまり、キャビテーションが発生する可能性が高いほど、開口調整弁23の開口面積を小さくすることによりチェック弁22の一次側の圧力を上げて、キャビテーションの発生を有効に防止することができる。また、上述したコントローラ13が不要となるため油圧ショベル1の構成を簡素化することができる。
【0068】
<第4実施形態(
図9)>
第1〜第3実施形態では、圧力上昇手段として開口面積を調整可能な開口調整弁21、23を例示したが、作動油の圧損防止とキャビテーションの発生防止との両立を図ることができる場合には、
図9に示すように圧力上昇手段として固定絞り24を採用することもできる。
【0069】
この場合、固定絞り24の開口面積は、クイックリターン油路R12の断面積よりも小さく設定されている。
【0070】
第4実施形態によれば、開口面積を調整するための構成(上述した開口調整弁21、23を作動するための構成)を省略することにより、油圧ショベル1の構成をさらに簡素化することができる。
【0071】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、例えば以下の態様を採用することもできる。
【0072】
アームシリンダ9の縮み動作時にアーム用制御弁16の縮み位置(例えば、
図2の右側位置)を通じてアームシリンダ9の戻り油をクイックリターン油路R12に流す構成について説明したが、特開2013−137062号公報に開示されるようにクイックリターン油路を開閉するためのバルブを別途設けてもよい。この場合、アーム用制御弁16の縮み位置は、ボトム側油路R9とリターン油路R11との接続を許容し、クイックリターン油路R12は、アーム用制御弁16の上流側の位置でボトム側油路R9から分岐する。また、クイックリターン油路R12の再生油路R13との接続点の上流側の位置には、クイックリターン油路R12を通じた作動油の流れを許容する状態とこの流れを規制する状態との間で切換可能なバルブが設けられている。
【0073】
油圧シリンダとしてアームシリンダ9を例示したが、油圧シリンダは、当該油圧シリンダの縮み動作時に、位置エネルギーによって移動する可能性のある駆動対象物を駆動する油圧シリンダであれば特に限定されない。
【0074】
建設機械として油圧ショベル1を例示したが、本発明は、他の建設機械(クレーン、解体機等)に適用することもできる。